JP4142900B2 - 点火コイルおよび内燃機関用点火装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の気筒毎に装着された点火プラグに印加するための点火用高電圧を発生する点火コイル、および当該点火コイルを備えて混合気への着火を行うための火花放電を発生する内燃機関用点火装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、自動車エンジン等に使用される内燃機関において混合気への着火(点火)を行う内燃機関用点火装置は、点火用高電圧を発生する点火コイルと、点火用高電圧が印加されることで火花放電を発生する点火プラグとを備えて構成されている。
【0003】
そして、点火プラグは、一般的に、絶縁体の軸孔の先端側に挿設された中心電極と、絶縁体の外側に設けられた主体金具と、一端が主体金具に結合されて他端が中心電極と火花放電ギャップを隔てて対向する接地電極と、絶縁体の軸孔の後端側に挿設されると共に該中心電極に電気的に接続される端子電極とを備えて構成されている。
【0004】
また、点火コイルは、一般的に、一次巻線と二次巻線、両巻線を磁気的に結合するコイルコアとからなるコイル本体部を備え、一次巻線に流れる電流の通電・遮断によりコイルコアの磁束密度が変化することで、二次巻線の両端に点火用高電圧が発生するように構成されている。そして、点火コイルは、ハイテンションケーブル等の配線ケーブル(通電経路)を介して点火プラグと電気的に接続されることにより、点火用高電圧を点火プラグに印加する。
【0005】
ところで、点火プラグが固定されるシリンダヘッドの上部とシリンダヘッドカバーとの間に形成される内部空間には、吸気弁および排気弁を駆動するためのカムシャフト等からなる吸排気弁駆動機構が備えられ、この吸排気弁駆動機構を円滑に動作させるための潤滑油が循環されている。
【0006】
これに対し、点火プラグは、高電圧の印加により火花放電を発生する構造であるため、潤滑油が付着した場合には、漏電などの影響により正常に火花放電が発生できない虞がある。このため、シリンダヘッドとシリンダヘッドカバーとの間に形成される内部空間に、点火プラグを挿通可能な内径に形成された円筒形状のプラグホールパイプを備えることで、点火プラグの設置スペースを確保して点火プラグを潤滑油から隔離している。なお、プラグホールパイプは、その軸方向が点火プラグの軸方向と同一方向となる状態でシリンダヘッドに固定されている。
【0007】
そして、プラグホールパイプにより形成された設置スペースに点火プラグを装着した後、点火コイルと点火プラグとの間に前述した配線ケーブルを配線することで、点火コイルと点火プラグとが電気的に接続される。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、点火コイルと点火プラグとをハイテンションケーブル等の配線ケーブルを介して接続する場合、点火コイルと点火プラグとの距離が長くなるほど配線ケーブルの抵抗値が大きくなり、また、外部ノイズ等の影響により、配線ケーブルでの損失が大きくなるという問題がある。このように配線ケーブルでの損失が大きくなると、点火用高電圧を発生させるためのエネルギが配線ケーブルで無駄に消費されることになり、また、場合によっては、点火プラグに印加される電圧値が不足して火花放電が発生できない虞もある。
【0009】
このような問題に対しては、点火コイルと点火プラグとを直接に接続する構造(いわゆる、ダイレクトイグニッションタイププラグ)を採用することが有効である。しかし、この構造を採用するためには、シリンダヘッドとシリンダヘッドカバーとで形成される内部空間に、点火コイルの配置スペースを確保する必要が生じることとなる。そして、前述したように、シリンダヘッドとシリンダヘッドカバーとで形成される内部空間には、点火プラグの他に吸排気弁駆動機構等が備えられていることから、点火コイルを設置するための設置スペースをシリンダヘッドに確保することは決して容易とはいえない。
【0010】
そこで、本発明は、点火プラグと直接に接続することが可能な構造を有し、シリンダヘッドに装着するにあたって設置スペースを大きく変更することのない点火コイルを提供し、また、この点火コイルを備える内燃機関用点火装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するためになされた請求項1に記載の発明は、同心状に巻回される一次巻線、二次巻線と、コイルコアとを有するコイル本体部と、自身の内部にコイル本体部を収容して保護する筒形状の保護外筒とを備える点火コイルであって、保護外筒が、シリンダヘッドに固定されるプラグホールパイプであって、点火プラグを内燃機関の潤滑油から隔離するプラグホールパイプとして構成されていることを特徴とする。
【0012】
この点火コイルは、保護外筒が「点火プラグを内燃機関の潤滑油から隔離するプラグホールパイプ」として、即ちプラグホールパイプとしての機能を兼ねて構成されていることから、点火コイルをシリンダヘッドに設置するにあたり別途プラグホールパイプをシリンダヘッドに備えておく必要が無いため、内燃機関用点火装置を構成する部品点数を削減できる。また、この点火コイルを用いることで、点火コイルの保護外筒とプラグホールパイプとを別個に備える場合に比べて、プラグホールパイプの外径寸法を縮小することができ、シリンダヘッドにおける点火コイルの占有領域を従来より縮小化して、吸排気弁機構などの他機器の設置スペースを広く確保することが可能となる。もしくは、従来のプラグホールパイプの外径および内径寸法を変更しない場合にも、従来のように、別途に保護外筒を必要としないため、コイル本体部のスペースを大きく確保することができ、一次巻線や二次巻線の巻き数を増すなどして、点火コイルの設置スペースを変更することなく、点火コイル自体の能力を高めたり、あるいは絶縁の信頼性を高めることも可能となる。
【0013】
このように、一次巻線と二次巻線、コイルコアからなるコイル本体部をプラグホールパイプとして構成される保護外筒の内部に収納させることにより、シリンダヘッドとシリンダヘッドカバーとで形成される内部空間において、点火コイルを設置するための設置スペースを有効に確保することができる。それにより、シリンダヘッドに装着される点火プラグとの接続(電気的な接続含む)を図るにあたって、配線ケーブルなどを介することなく、直接に両者を接続する構造(いわゆる、ダイレクトイグニッションタイププラグ)を図ることができる。なお、点火コイルの保護外筒は、プラグホールパイプとしての機能を兼ね備えるものであることから、点火コイルと点火プラグとが直接に接続され、かつこの保護外筒がシリンダヘッドに固定されることで、点火プラグを内燃機関の潤滑油から隔離するといった機能は発揮されることになる。
【0014】
さらに、点火コイルの保護外筒がプラグホールパイプとして構成されることから、点火コイルをシリンダヘッドに装着することで、点火コイル自身(コイル本体部)の装着作業およびプラグホールパイプの装着作業を同時に実施することができ、作業工数を簡略化することもできる。
【0015】
よって、本発明(請求項1)の点火コイルによれば、点火プラグと直接に接続することができ、点火プラグに印加される点火用高電圧の損失を低減でき、ひいては失火の発生を防止することができる。また、点火コイルの保護外筒をプラグホールパイプとして構成することにより、点火コイルの装着作業とプラグホールパイプの装着作業を同時に実行できるため組み立て作業工数を削減でき、さらには部品点数についても従来よりも削減することができる。
【0016】
そして、上述(請求項1)の点火コイルにおいては、請求項2に記載のように、コイル本体部とプラグホールパイプとして構成される保護外筒とが、軸方向に対して回転不能に一体化されているとよい。
このように、コイル本体部と保護外筒とが軸方向に対して回転不能に一体化されていることにより、点火コイルをシリンダヘッドに固定するに際して回転等が生じた場合にも、コイル本体部と保護外筒との間の位置ズレに伴う不具合(例えば、コイル本体部と外部機器を接続する配線の捻れ等)が生じることがなく、点火コイルとしての信頼性を向上させることができる。また、シリンダヘッドに固定される保護外筒に対してコイル本体部が一体化されることで、内燃機関の使用時においても、コイル本体部は安定して保持されることになる。
【0017】
なお、保護外筒に対してコイル本体部を回転不能に一体化させる手法としては、特に限定されないが、例えば、中空状の保護外筒の内側にコイル本体部を収容させて、絶縁性樹脂を充填してモールドさせる方法が挙げられる。なお、コイル本体部と保護外筒とを一体化させるに際して、コイル本体部と保護外筒との間に他部材(例えば、後述する強磁性部材)を介して一体化させてもよい。
【0018】
さらに、保護外筒に対してコイル本体部を一体化させることにより、保護外筒からのコイル本体部の配線(コイル本体部と外部機器を接続する配線)の取り出し位置を所定の位置に固定させることができることから、点火コイルをシリンダヘッドに対して予め所定の位置に配置させることで、配線の取り出し位置を特定位置に設定することができる。
【0019】
ところで、一次巻線、二次巻線と、コイルコアとを有するコイル本体部は、各種部品との絶縁を図るために、絶縁性樹脂でモールドさせることが一般的である。ここで、従来では、保護外筒内にコイル本体部を配置させた上で、この保護外筒内に絶縁性樹脂を充填して点火コイルを構成し、その状態の点火コイルをシリンダヘッドに装着されたプラグホールパイプ内に遊嵌状に挿入する構造であった。即ち、点火コイルの保護外筒の外側面とプラグホールパイプの内側面との間に隙間(空間)が介在してしまう構造であった。そのために、従来の構造では、コイル本体部の一次巻線、二次巻線が通電に伴い熱を発生しても、上記隙間に存在する空気が断熱層として機能してしまい、コイル本体部から外部への放熱が妨げられることになる。そして、通電により発生した熱によりコイル本体部の温度が上昇すると、コイル本体部をモールドする絶縁性樹脂の絶縁抵抗値が低下することになる。その結果、二次巻線に発生した電圧が他部材(例えば、一次巻線やコイルコア)にリーク電流となって損失し、また最悪の場合にはコイル本体部の破損を招く虞がある。
【0020】
そこで、上述(請求項1または請求項2)の点火コイルは、請求項3に記載のように、プラグホールパイプとして構成される保護外筒の内部に絶縁材が充填されているとよい。
このような絶縁材を備える点火コイルは、絶縁材がコイル本体部と保護外筒との間の熱伝導経路として機能するため、コイル本体部で発生した熱を絶縁材および保護外筒を介して外部に放出できる。つまり、本発明では、保護外筒がプラグホールパイプとして構成されるため、従来のように、プラグホールパイプと保護外筒との間に断熱層となり得る空間を介在させる必要がない。そのため、コイル本体部で発生した熱を、シリンダヘッド、シリンダヘッドカバーあるいは保護外筒(プラグホールパイプ)の外側面に付着する吸排気弁機構を動作させるための潤滑油に直接放熱させることができる。このようにコイル本体部の放熱性を向上することで、必要以上の温度上昇に伴うリーク電流の発生を防ぐことができるため、コイル本体部の出力電圧値が低下するのを防止でき、点火コイルの性能低下および破損を抑制できる。
【0021】
よって、本発明(請求項3)の点火コイルによれば、コイル本体部と保護外筒との間に絶縁材を備えることで、放熱性の向上を図ることができ、出力電圧の低下を防いで点火コイルとしての性能低下を抑制することができる。
なお、絶縁材は、例えば、絶縁性樹脂や絶縁性油などを用いて構成することができる。
【0022】
次に、上述(請求項1から請求項3のいずれか)の点火コイルは、請求項4に記載のように、保護外筒の内部での軸方向におけるコイル本体部の位置決めを行う位置規制部を備えるとよい。
つまり、保護外筒の内部での軸方向にてコイル本体部が所定位置に配置されるように位置規制部を形成することで、コイル本体部を保護外筒の内部に容易に位置決めすることができる。なお、軸方向とは、筒型に形成された保護外筒の中心軸の延びる方向のことである。
【0023】
また、保護外筒はプラグホールパイプとして構成されるため、点火プラグの一部が保護外筒の内部に配置されるが、位置規制部によりコイル本体部と点火プラグとを保護外筒の内部の適切な位置(軸方向における位置)に配置させることができる。
【0024】
さらに、この位置規制部を備えることで、保護外筒の内部の軸方向においてコイル本体部を位置決めした状態で絶縁材を充填した場合に、絶縁材の充填圧力によるコイル本体部の移動を効果的に抑制することができる。
よって、本発明(請求項4)の点火コイルによれば、保護外筒の内部でのコイル本体部の位置決めが可能となり、コイル本体部と点火プラグとを保護外筒の内部の適切な位置に配置できるという利点がある。
【0025】
そして、点火用高電圧を発生する点火コイルと、この点火コイルからの点火用高電圧が印加されることで火花放電を発生する点火プラグとを直接に接続し、混合気への着火を行うための火花放電を点火プラグに発生する内燃機関用点火装置については、請求項5に記載のように、点火コイルとして、請求項1から請求項4のいずれかに記載の点火コイルを備えるとよい。
【0026】
つまり、請求項1から請求項4のいずれかに記載の点火コイルを備えて構成される内燃機関用点火装置であれば、点火プラグへの印加電圧の低下を防ぐことができるため、失火の発生を防止することができる。
さらに、請求項1から請求項4のいずれかに記載の点火コイルを用いることで、内燃機関用点火装置を組み立てるにあたり、点火コイルの装着作業とプラグホールパイプの装着作業を同時に実行できるため、組み立て作業工数を従来よりも削減させ、さらに部品点数を低減することができる。
【0027】
よって、本発明(請求項5)の内燃機関用点火装置によれば、火花放電をより確実に発生させることができるため、失火が発生し難い内燃機関用点火装置を実現することができ、内燃機関の安定した運転状態を維持することができる。また、組み立て作業工数を従来よりも削減させることができるため、内燃機関の製造コストの抑制を図ることができる。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施例を図面と共に説明する。
図1(a)は、第1実施例の内燃機関用点火装置1に備えられる点火コイル9が、点火プラグ11に対して直接に接続された状態で、シリンダヘッド51とシリンダヘッドカバー53との間に装着される状態を表す説明図であり、図1(b)は、点火コイル9および点火プラグ11が装着された後のシリンダヘッド51およびシリンダヘッドカバー53の断面図である。また、図2(a)は、それぞれ別々に分離された状態の点火コイル9および点火プラグ11についての断面図を示す説明図である。
【0029】
そして、点火コイル9および点火プラグ11は、図2(a)に示すように、それぞれ別々に形成されているが、点火コイル9は、図1(b)に示すように内燃機関のシリンダヘッド51に装着されている状態では、点火プラグ11と直接に接続されている。そして、点火コイル9および点火プラグ11は、点火プラグ11がシリンダヘッド51に設けられたプラグ配置孔51aに配置される状態で、シリンダヘッド51とシリンダヘッドカバー53との間に配置される。
【0030】
なお、シリンダヘッド51とシリンダヘッドカバー53との間に形成される空間には、吸気弁、排気弁を駆動するためのカムシャフト等からなる吸排気弁駆動機構(図1(a)および図1(b)では図示省略)が備えられており、この吸排気弁駆動機構を円滑に動作させるための潤滑油が循環されている。
【0031】
また、シリンダヘッド51は、点火プラグ11を配置するためのプラグ配置孔51aを備え、点火プラグ11と直接または他部材(本実施例ではガスケット71)を介して間接的に接触する段差面51bと、段差面51bよりも燃焼室55に近い側(図1(b)における下側)に設けられた第1壁面51cと、段差面51bよりもシリンダヘッドカバー53に近い側(図1(b)における上側)に設けられた第2壁面51dおよび第3壁面51eと、を備えている。
【0032】
そして、内燃機関用点火装置1は、点火コイル9や点火プラグ11の他に、パワースイッチング素子を有するイグナイタ(図1(a)および図1(b)では図示省略)等を備えている。そして、イグナイタが点火指令信号に基づき点火コイル9の一次巻線L1への通電電流の通電・遮断制御を行うことにより、二次巻線L2に点火用高電圧が発生し、この点火用高電圧が点火プラグ11に印加されると、点火プラグ11の中心電極17と接地電極21との間に形成される火花放電ギャップgに火花放電が発生する。つまり、内燃機関用点火装置1は、点火プラグ11の火花放電ギャップgに火花放電を発生し、この火花放電によって混合気への着火を行うための装置である。
【0033】
次に、点火コイル9は、図1(b)または図2(a)に示すように、長尺形状の鉄芯であるコイルコアCOと、コイルコアCOの周囲に配置される二次巻線L2と、二次巻線L2の周囲に配置される一次巻線L1とからなるコイル本体部37を備えている。なお、一次巻線L1と二次巻線L2とはコイルコアCOを中心にして同心状に巻回されており、本実施例では二次巻線L2の外側に一次巻線L1が配置される構造であるが、二次巻線L2の内側に一次巻線L1を配置する構造を有してもよい。また、本実施例では、コイルコアCOが長尺状に形成されており、いわゆる開磁路型の点火コイルを構成するものである。そして、点火コイル9は、コイル本体部37の外側の周囲に強磁性体からなる強磁性部材45を備えており、コイル本体部37および強磁性部材45が筒形状の保護外筒31に収容されて構成されている。
【0034】
ここで、強磁性部材45は、長方形の板状に形成された強磁性体を、曲げ加工によって一対の対向する二辺を向かい合わせるように筒形状に形成したものであり、コイル本体部37の外側の周囲を覆うように配置される。このようにコイル本体部37の周囲を覆うように強磁性部材45を配置した際の、コイル本体部37および強磁性部材45の軸方向に対して垂直な方向における概略断面図は、図2(b)に示すようになる。なお、強磁性体としては、Fe、CoやNi、さらにはフェライト等のフェロ磁性またはフェリ磁性を有する物質が挙げられる。
【0035】
また、コイル本体部37および強磁性部材45が保護外筒31に収容された時における、コイル本体部37、強磁性部材45および保護外筒31の軸方向に対して垂直な方向における概略断面図は、図2(c)のように表すことができる。つまり、点火コイル9の中心から外側に向かう順に、コイル本体部37、強磁性部材45、保護外筒31が配置されることになる。なお、コイル本体部37および強磁性部材45は、保護外筒31の内部に充填(真空充填)される絶縁性樹脂(例えば、エポキシ樹脂)によって、保護外筒31と軸方向に対して回転不能に一体化されている。そして、この時、強磁性部材45は、コイル本体部37の全周を覆うことになる。なお、図2(c)は、図2(a)の点火コイル9におけるA−A視断面図である。
【0036】
そして、図1(b)および図2(a)に示すように、強磁性部材45の軸方向長さは、コイル本体部37(詳細には、長尺状のコイルコアCO)の軸方向長さとほぼ等しいことから、一次巻線L1への通電により磁束が発生した場合、この磁束が通過する磁路として、コイルコアCO自体は上述したように開磁路を構成するものの、コイルコアCOと強磁性部材45とが組み合わさることで実質的に閉磁路が形成されることとなる。
【0037】
次に、コイル本体部37の上部(図1(b)における上部)には、一次巻線L1とバッテリなどの外部機器とを電気的に接続するためのコネクタ部39が備えられ、また、コイル本体部37の先端側(図1(b)における下側)には、二次巻線L2に発生する点火用高電圧の出力端子である高電圧出力端子41が備えられている。この点火コイル9においては、上述したように一次巻線L1への通電電流の通電・遮断制御により、コイルコアCOの磁束密度が急峻に変化することで、二次巻線L2に点火用高電圧が発生し、この点火用高電圧が高電圧出力端子41を介して点火プラグ11(詳細には、点火プラグ11の端子電極13)に供給される。
【0038】
そして、点火コイル9の保護外筒31は、弱磁性体で形成され、後端31aおよび先端31bがそれぞれ開口した筒形状に形成されている。なお、保護外筒31のうち、後端31aは、外径が円筒部分よりも拡径して、シリンダヘッドカバー53の開口部53aの周囲内壁に当接可能な形状に形成されている。また、点火コイル9の保護外筒31のうち、先端31bは、円筒部分よりも縮径しており、点火プラグ11の後端側を内部に収容可能で、かつシリンダヘッド51のプラグ配置孔51aに挿入可能な形状に形成されている。そして、この点火コイル9の保護外筒31は、シリンダヘッド51に固定されることにより、コイル本体部37を保護する機能を果たす一方で、点火プラグ11を内燃機関の潤滑油から隔離するためのプラグホールパイプとしての機能をも果たすことになる。なお、弱磁性体としては、Cr、Mn、FeO、Al等の物質が挙げられる。
【0039】
また、点火コイル9の保護外筒31は、コネクタ部39を後端31aから突出させる一方、二次巻線L2に電気的に接続される高電圧出力端子41を内部に収容する状態で、コイル本体部37および強磁性部材45を内部に軸方向に回転不能に一体化して収容している。更に、保護外筒31の内部のうち、コイル本体部37の先端側には、高電圧出力端子41の周囲を覆うように形成された絶縁性部材43が配置されている。なお、絶縁性部材43は、樹脂やゴムなどの絶縁性材料で形成されており、後述する点火プラグ11の端子電極13、絶縁体15の後端側の周囲も覆うように形成されている。
【0040】
次に、点火プラグ11は、図1(b)または図2(a)に示すように、絶縁体15の軸孔の先端側に挿設された中心電極17と、絶縁体15の外側に設けられた主体金具19と、主体金具19の先端部から延設されて中心電極17との間で火花放電ギャップgを形成する接地電極21と、絶縁体15の軸孔の後端側に挿設されると共に中心電極17と電気的に接続される端子電極13と、を備えて構成されている。
【0041】
このうち、主体金具19には、シリンダヘッド51(詳細には、プラグ配置孔51aの段差面51b)と直接または他部材(本実施例では、ガスケット71)を介して間接的に接触するプラグ座面23aを先端側に有する鍔部23と、この鍔部23のプラグ座面23aから軸方向先端側に延設された外周表面にネジ溝が設けられていない外周面円筒状の先端部25と、が備えられている。また、鍔部23のプラグ座面23aの反対側には、後端面23bが形成されている。さらに、主体金具19は、自身の後端部周縁を絶縁体15の外周部に向けて加締めてなる加締め部27を形成しており、この加締め部27により、主体金具19の内部に形成された金具側係合部(図示せず)に係合される絶縁体15の抜き止めがなされ、絶縁体15は主体金具19に対して保持される。
【0042】
また、点火コイル9の保護外筒31は、点火プラグ11のうち主体金具19における鍔部23の後端面23bよりも後端側部分を、先端31bから内部に収容可能に構成されている。そして、この保護外筒31は、先端31bの内径が主体金具19の鍔部23の外径よりも小さく形成され、先端31bの端部が主体金具19の鍔部23の後端面23bに当接するよう形成されている。
【0043】
そして、点火プラグ11を先端31b側から点火コイル9の保護外筒31の内部に挿入することで、高電圧出力端子41と端子電極13とが嵌合され、また、絶縁性部材43が点火プラグ11における絶縁体15の後端側の周囲を被覆することとなり、点火コイル9と点火プラグ11とが直接に接続される(図1(b)参照)。このとき、保護外筒31の先端31bは、主体金具19の鍔部23の後端面23bに当接すると共に、保護外筒31の外周がプラグ配置孔51aに対して圧入されて、保護外筒(即ち、点火コイル9)がシリンダヘッド51に固定されることになる。
【0044】
なお、高電圧出力端子41は、略円柱形状に形成されると共に点火コイル9の径方向に弾性変形する複数の接触部を備えており、この接触部は、点火コイル9の中心軸を中心として放射状に配置されると共に中心軸に向かう弾性力を有している。そして、端子電極13が略円柱形状に形成されていることから、高電圧出力端子41と端子電極13とを嵌合接続する際には、端子電極13が高電圧出力端子41の内部において放射状に配置された複数の接触部の中心部分に配置され、複数の接触部が自身の弾性力によって端子電極13に当接する状態となる。
【0045】
このように、複数の接触部が端子電極13に接触することから、高電圧出力端子41と端子電極13との接触面積が大きくなり、接触抵抗を低く抑えることができる。また、複数の接触部が弾性変形することから、内燃機関の振動が発生した場合でも、弾性変形によりいずれかの接触部が端子電極13との接触を維持することができ、高電圧出力端子41と端子電極13との接触不良が起こり難くなり、接触抵抗の変化を抑制することができる。さらに、このような接続構造であれば、高電圧出力端子41と端子電極13とが着脱可能となり、点火コイル9と点火プラグ11とを直接に接続した後に、両者を分離することが可能となる。
【0046】
そして、点火コイル9および点火プラグ11を直接に接続した後、点火コイル9の保護外筒31が先端31b側からシリンダヘッド51のプラグ配置孔51aに対して圧入されることで、保護外筒31の先端31b側の外側表面が、プラグ配置孔51aの第2壁面51dに対して締まり嵌め状態にて圧入され、直接に接続された点火コイル9および点火プラグ11がシリンダヘッド51に固定される。
【0047】
なお、点火コイル9の保護外筒31をプラグ配置孔51aに圧入する際には、ガスケット71が、点火プラグ11の鍔部23のプラグ座面23aと段差面51bとの間に配置され、オイルシール63が、保護外筒31とプラグ配置孔51aの第3壁面51eとの間に配置される。また、プラグ配置孔51aのうち第1壁面51cは、点火プラグ11の先端部25と対向することになる。
【0048】
ここで、オイルシール63は、耐熱性を有する弾性変形可能な材料からなる環状に形成された部材であり、保護外筒31と第3壁面51eとの間で挟持されて断面形状が変形することで、保護外筒31とシリンダヘッド51(詳細には、第3壁面51e)との間に生じる間隙を封鎖する。よって、オイルシール63により、保護外筒31とシリンダヘッド51との間を潤滑油が浸透するのを防ぐことができる。また、このオイルシール63は、保護外筒31の外周側面に周方向に形成された有底筒状の凹部(図示せず)に嵌め込まれた状態で配置されており、保護外筒31をプラグ配置孔51aに圧入する際に、プラグ配置孔51aの第3壁面51eとの間で弾性変形しつつ、第3壁面51eとの間に挟持される。なお、図1(a)では、オイルシール63の図示を省略している。
【0049】
このあと、シリンダヘッドカバー53がシリンダヘッド51の上部に固定されることにより、保護外筒31の後端31aがシリンダヘッドカバー53の開口部53aの周囲内壁と当接する状態となる。
この結果、直接に接続された点火コイル9および点火プラグ11は、図1(b)に示すように、点火プラグ11がシリンダヘッド51のプラグ配置孔51aに配置され、点火コイル9の保護外筒31の先端31b側がプラグ配置孔51aに圧入されると共に後端31aがシリンダヘッドカバー53の内面と当接する状態で、シリンダヘッド51とシリンダヘッドカバー53との間に挟持される。このようにして、主体金具19の鍔部23の後端面23bに点火コイル9の保護外筒31の先端31bが当接しつつ、保護外筒31が主体金具19の鍔部23のプラグ座面23aをシリンダヘッド51に対して押圧するように当該シリンダヘッド51に固定されることになり、主体金具19の先端部25の外周表面にネジ溝を有さない点火プラグ11を、混合気の燃焼により燃焼圧が発生した場合でも、安定してシリンダヘッド51に固定することができる。
【0050】
なお、このとき、点火コイル9の保護外筒31の後端31aとシリンダヘッドカバー53の開口部53aの周囲内壁との間には、潤滑油の浸透を防止するための第2オイルシール64(図1(a)および図1(b)参照)が配置されている。この第2オイルシール64により、保護外筒31の後端31aとシリンダヘッドカバー53との間から潤滑油が漏洩するのを防ぎ、潤滑油が後端31aから侵入して点火プラグ11に付着するのを防止している。また、エンジン外部に潤滑油が漏洩するのを防止している。
【0051】
以上、説明したように、第1実施例の内燃機関用点火装置においては、点火コイル9が点火プラグ11と直接に接続された状態で備えられている。また、点火コイル9の保護外筒31がプラグホールパイプとしての機能を兼ねて構成されていることから、保護外筒31とは別にプラグホールパイプを配する必要がなくなり、このため、保護外筒31の外径寸法を従来のプラグホールパイプの外径寸法まで拡大することができる。この結果、保護外筒31の内部にコイル本体部37の配置スペースを大きく確保することができ、点火コイルをシリンダヘッドに装着するにあたって設置スペースを大きく変更する必要がなくなる。
【0052】
また、点火コイル9の保護外筒31をプラグホールパイプとして構成することから、プラグホールパイプ(本実施例では保護外筒31)のシリンダヘッド51への固定作業も、点火コイル9のシリンダヘッド51への装着作業と同時に実施することができる。つまり、点火コイル9およびプラグホールパイプ(本実施例では保護外筒31)のシリンダヘッド51への固定作業を1回の作業で済ませることができる。
【0053】
さらに、点火コイル9の保護外筒31が、プラグ配置孔51aへの圧入により第2壁面51dに挟持されると共に、さらにシリンダヘッド51とシリンダヘッドカバー53との間で挟持されることから、直接に接続された点火コイル9および点火プラグ11は、強固にシリンダヘッド51に固定されることになる。このため、直接に接続された点火コイル9および点火プラグ11は、混合気の燃焼により燃焼圧が発生した場合でも、プラグ配置孔51aから脱落することなく、確実にシリンダヘッド51に固定される。
【0054】
次に、第2実施例として、一部が強磁性体で構成された第2保護外筒47を用いて形成された第2点火コイル9aについて説明する。そして、第2点火コイル9aの軸断面図を図3に示す。なお、第2実施例の第2点火コイル9aは、第1実施例の点火プラグ11と一体に結合可能に構成されると共に、シリンダヘッド51およびシリンダヘッドカバー53との間に配置可能に構成されている。なお、点火プラグ11、並びにシリンダヘッド51、シリンダヘッドカバー53の構造については、第1実施例と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0055】
第2点火コイル9aは、コイル本体部37、第2保護外筒47および絶縁性部材43を備えて構成されている。
まず、コイル本体部37については、第1実施例で説明した点火コイル9と同様に、開磁路を構成する長尺状のコイルコアCO、同心状に巻回されると共にコイルコアCOの周囲に配置される二次巻線L2および一次巻線L1を備えて構成されており、また、絶縁性部材43についても第1実施例で説明した点火コイル9と同様に構成されている。
【0056】
そして、第2保護外筒47は、強磁性体で形成された筒形状の後方側外筒47cと、弱磁性体で形成された筒形状の前方側外筒47dとが、それぞれの中心軸が同一線上で重なるように軸方向の上下に積層した後、互いに当接する端部を接合することで一体に構成されている。なお、第2保護外筒47は、後方側外筒47cと前方側外筒47dとが接合された時の全体形状が、第1実施例における点火コイル9の保護外筒31と同様の形状に構成されている。そして、第2保護外筒47は、点火コイルの内部に収容されるコイル本体部37を保護すると共に、点火プラグ(図示せず)を潤滑油から隔離するプラグホールパイプとしての機能も備えて構成されている。
【0057】
このうち、後方側外筒47cは、コイル本体部37の周囲を覆うと共に、軸方向長さがコイル本体部37の軸方向長さとほぼ等しくなるよう形成されており、一次巻線L1への通電により磁束が発生した場合に、この磁束が通過する磁路としてコイルコアCOと合わせて実質的に閉磁路を形成することができる。また、前方側外筒47dは、弱磁性体で形成されており、コイル本体部37に発生する磁束の磁路を形成することは無い。
【0058】
つまり、第2保護外筒47は、後端47aから先端47bまでの全体にわたり磁路を形成するのではなく、コイル本体部37の周囲に対応する部分のみに磁路を形成するように強磁性体を配置して構成されている。そして、コイル本体部37のうち、特にコイルコアCOの周囲に対応する部分に強磁性体からなる後方側外筒47cが配置されるように構成されていることから、一次巻線L1への通電により磁束が発生した場合に、実質的に閉磁路を形成することができる。また、この時の磁路の長さは、第2保護外筒47の後端47aから先端47bの全体にわたり磁路が形成される場合に比べて短縮されることから、磁路が無駄に長く形成されることがない。
【0059】
なお、コイル本体部37については、第1実施例の点火コイル9と同様に、第2保護外筒47の内部に充填される絶縁性樹脂(例えば、エポキシ樹脂)により、第2保護外筒47と軸方向に対して回転不能に一体化されている。また、この第2点火コイル9aは、シリンダヘッドのプラグ配置孔に圧入されて当該シリンダヘッドに固定されるが、第2保護外筒47の外周には、図示していなが、第1実施例と同様にシリンダヘッドとの間で挟持されて、潤滑油の浸透を防止するオイルシールが備えられていてもよい。
【0060】
よって、この第2実施例に示す第2点火コイル9aを備えて構成された内燃機関用点火装置によれば、失火が発生し難い内燃機関用点火装置を実現することができ、内燃機関の安定した運転状態を維持することができる。また、組み立て作業工数を従来よりも削減させることができるため、内燃機関の製造コストの抑制を図ることができる。
【0061】
次に、第3実施例として、コイル本体部37の軸方向における配置位置を位置決めする位置規制部83を有する第3保護外筒72を用いて形成された第3点火コイル10について説明する。第3点火コイル10の軸断面図を図4に示す。
なお、第3実施例の第3点火コイル10は、第1実施例の点火プラグ11と一体に結合可能に構成されると共に、シリンダヘッド51およびシリンダヘッドカバー53との間に配置可能に構成されている。なお、点火プラグ11、並びにシリンダヘッド51、シリンダヘッドカバー53の構造については、第1実施例と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0062】
第3点火コイル10は、コイル本体部37、第3保護外筒72および絶縁性部材43を備えて構成されている。
まず、コイル本体部37については、第1実施例で説明した点火コイル9と同様に、開磁路を構成する長尺状のコイルコアCO、同心状に巻回されると共にコイルコアCOの周囲に配置される二次巻線L2および一次巻線L1を備えて構成されており、また、絶縁性部材43についても第1実施例で説明した点火コイル9と同様に構成されている。
【0063】
なお、図4では、コイル本体部37の構成をより詳細に記載しており、図4から判るように、一次巻線L1は、絶縁性材料からなる略筒状の一次ボビン75の外周に巻回されており、二次巻線L2は、絶縁性材料からなる略筒状の二次ボビン91の外周に巻回されている。
【0064】
また、第3点火コイル10のうち、第3保護外筒72の後端72aの近傍における拡大図を、図5に示す。
図5に示すように、一次巻線L1が巻回される一次ボビン75は、後端に、一次巻線L1の外径よりも径方向寸法が拡大されたフランジ形状の当接部76が備えられており、当接部76は、径方向端部が強磁性部材45と当接するように径方向寸法が設定されている。この当接部76を備えることで、プラグホールパイプとして構成される第3保護外筒72の内部での軸線に対する垂直方向におけるコイル本体部37の位置が設定されることになり、コイル本体部37を第3保護外筒72の内部のうち軸線中心位置に容易に配置することができる。
【0065】
また、コイル本体部37と第3保護外筒72(本実施形態では、強磁性部材45)との間には、絶縁性樹脂(例えば、エポキシ樹脂)からなる絶縁材79が充填されており、絶縁材79は、第3保護外筒72の内周面(詳細には、強磁性部材45の内周面)に対して隙間無く充填されている。このように隙間無く絶縁材79が充填されることで、電流通電により一次巻線L1および二次巻線L2などで発生する熱は、絶縁材79を通じて熱伝導されて、絶縁材79、強磁性部材45および第3保護外筒72を介して速やかにシリンダヘッド、シリンダヘッドカバーあるいは第3保護外筒72の外側面に付着する吸排気弁機構を動作させるための潤滑油に向けて放熱される。
【0066】
なお、絶縁材79を真空充填するにあたり、絶縁材79からコイル本体部37に対して充填圧力が印加されるが、当接部76によりコイル本体部37は、安定して保持されることから、コイル本体部37の配置位置は、第3保護外筒72の軸線中心位置に維持することができる。
【0067】
ここで、図8に、図4の第3点火コイル10におけるB−B視断面図を示す。この図8から分かるように、一次巻線L1の外径を巻回する一次ボビン75におけるフランジ形状の当接部76が、周方向に3箇所等間隔に形成されている。この3箇所の当接部76の径方向端部が強磁性部材45と当接するように形成されている。そして、第3保護外筒72の内部への絶縁材79の充填作業は、一次ボビンの隣り合う当接部76の間に位置することになる開口部77から行うようにしている。これにより、第3保護外筒72(詳細には強磁性部材45)の内周面に隙間が生じないように、当該第3保護外筒72の内部に絶縁材79を充填をすることができる。
【0068】
次に、第3保護外筒72は、図4に示すように、軸方向中央位置と先端72bとの略中間位置に、加締め加工により外側から内側に向けて突出するように形成された位置規制部83を備えて構成されている。位置規制部83は、樹脂製の封止部材81を介してコイル本体部37に当接するように構成されており、封止部材81は、絶縁材79の充填作業時に、絶縁材79が先端72bの側に漏洩するのを防止するために備えられている。
【0069】
この位置規制部83は、第3保護外筒72の内部での後端72aから先端72bに向かう軸方向において、コイル本体部37の位置決めを行うために備えられている。また、位置規制部83は、コイル本体部37と点火プラグ11とを第3保護外筒72の内部において適切な配置位置に配置させる機能を有している。
【0070】
以上説明したように、第3点火コイル10においては、絶縁材79が、コイル本体部37(詳細には、一次巻線L1)から第3保護外筒72に至る熱伝導経路を形成するため、コイル本体部37で発生した熱を、絶縁材79、強磁性部材45および第3保護外筒72を介して、効率よく外部に放出できる。このように放熱性を向上することで、コイル本体部37の温度上昇に伴うリーク電流の発生を防ぐことができ、コイル本体部37の出力電圧値(二次電圧値)が低下するのを防止できるため、点火コイルとしての性能低下を抑制できる。
【0071】
なお、絶縁材79の熱伝導率は、フィラーの種類や含有量を変更することで調整することができ、点火コイルの用途に応じた熱伝導率となるように、絶縁材を適宜選択すると良い。
また、第3点火コイル10は、第3保護外筒72に位置規制部83を備えることから、コイル本体部37を第3保護外筒72の内部に配置するにあたり、第3保護外筒72の内部での軸方向におけるコイル本体部37の配置位置を容易に所定位置に配置することができる。
【0072】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明は、こうした実施例に限定されることなく、種々の態様をとることができる。
例えば、保護外筒の一部が強磁性体で形成される点火コイルとしては、保護外筒の外形寸法を第2点火コイル9aの第2保護外筒47の外形寸法よりも縮小して構成すると良い。
【0073】
つまり、第2保護外筒47の円筒部分の厚さは、第1実施例の点火コイル9における保護外筒31の厚さと強磁性部材45の厚さとを合計した寸法であるが、保護外筒としての強度を維持できる範囲において円筒部分を薄く形成することにより、保護外筒の外形寸法を縮小することができる。このように、保護外筒を形成することで、強磁性部材を保護外筒とは別体に備える場合に比べて、保護外筒の外形寸法を小さくすることができ、点火コイルの外形寸法を小さくすることができる。
【0074】
また、強磁性部材を保護外筒とは別体に備える場合には、保護外筒を弱磁性体で構成した上で、強磁性部材を保護外筒の内部に配置するようにしてもよい。なお、このとき、強磁性部材は、コイル本体部のコアの周囲に対応する部分に配置することで、磁束の漏れなどを防ぐよう磁路を適切に設定することができる。また、筒状の保護外筒のうちで内側(コイル本体部を収容する側)を構成する部材を強磁性体とし、他方外側を構成する部材を弱磁性体として保護外筒を構成してもよい。これらの保護外筒を備える点火コイルは、磁束の漏れを最小限に抑えることができ、点火用高電圧を効率よく発生することができる。
【0075】
さらに、シリンダヘッドに固定される点火コイルの保護外筒については、上記実施例のように保護外筒をシリンダヘッドのプラグ配置孔に圧入させる構造には限定されず、各種の構造を図ることができる。例えば、点火コイルの保護外筒の外周にネジ溝を設けると共に、シリンダヘッドにも上記ネジ溝に対応するネジ溝を設けて、保護外筒を螺合によりシリンダヘッドに固定させるようにしてもよい。また、点火コイルの保護外筒の外周表面から外向きに突出するフランジ部を形成し、ボルト等を用いてこのフランジ部をシリンダヘッドにネジ止めするといったように、フランジ部を利用して保護外筒をシリンダヘッドに固定させるようにしてもよい。加えて、シリンダヘッドとシリンダヘッドカバーとの間で点火コイルを挟持することで、点火コイルをシリンダヘッドに固定するようにしてもよい。
【0076】
また、上記第3実施例では、保護外筒の内部でのコイル本体部の軸方向における位置決めを行うための位置規制部として、加締加工により内側に突出した突起状の位置規制部83を示したが、位置規制部は、加締加工により形成したものに限ることはない。例えば、図6に示す第4保護外筒84のように、保護外筒の内面を切削加工する際に、所定位置に内側方向に突出した部分を残すように加工を行い、その突出部分を第2位置規制部85として形成しても良い。第4保護外筒84は、第3保護外筒72と同様に、封止部材81を介してコイル本体部に当接するように構成されている。なお、図6では、コイル本体部37や高電圧出力端子41などの図示を省略している。
【0077】
さらに、位置規制部は、図7に示す第5保護外筒86のように、径方向寸法に差を設けることで段差面87を形成し、この段差面87を位置規制部として備えるようにしてもよい。この段差形状は、特に限定されず、テーパ形状を呈しても良い。なお、図7においても、コイル本体部37などの図示を省略している。
【0078】
なお、位置規制部(位置規制部83、第2位置規制部85、段差面87)は、必ずしも保護外筒の内面全周にわたり形成する必要はない。つまり、位置規制部は、コイル本体部が傾いた状態にならないよう、コイル本体部の中心軸線と保護外筒の中心軸線とが平行となるように形成されていれば良い。例えば、保護外筒の内面において周方向に略等間隔に3箇所に分離して形成された位置規制部として備えても良い。なお、位置規制部を分離して形成する場合には、コイル本体部を安定して支持するために、3箇所以上に形成することが望ましく、また、分離された各部分は、内面周方向に略均等に配置することが望ましい。
【0079】
また、絶縁材79は、樹脂に限らず、絶縁性油で構成しても良い。さらに、位置規制部にてコイル本体部37を位置決めするにあたっては、封止部材81を介することなく、一次ボビンおよび二次ボビンを当接させるようにして、コイル本体部37を位置決めしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (a)は、点火コイルが点火プラグと一体に結合された状態でシリンダヘッドとシリンダヘッドカバーとの間に装着される状態を表す説明図であり、(b)は、点火コイルおよび点火プラグが装着された後のシリンダヘッドおよびシリンダヘッドカバーの断面図である。
【図2】 (a)は、それぞれ別々に分離された状態の点火コイルおよび点火プラグを示す説明図であり、(b)は、コイル本体部および強磁性部材の概略断面図であり、(c)は、コイル本体部および強磁性部材が保護外筒に収容された時の概略断面図である。
【図3】 第2点火コイルの側方から見た場合の断面図である。
【図4】 第3点火コイルの側方から見た場合の断面図である。
【図5】 第3点火コイルのうち、第3保護外筒の後端の近傍における拡大図である。
【図6】 第4保護外筒のうち第2位置規制部が形成される部分の断面図である。
【図7】 第5保護外筒のうち段差面が形成される部分の断面図である。
【図8】 図4における第3点火コイルのB−B視断面図である。
【符号の説明】
1…内燃機関用点火装置、9…点火コイル、9a…第2点火コイル、11…点火プラグ、17…中心電極、21…接地電極、31…保護外筒、37…コイル本体部、41…高電圧出力端子、43…絶縁性部材、45…強磁性部材、47…第2保護外筒、47c…後方側外筒、47d…前方側外筒、51…シリンダヘッド、53…シリンダヘッドカバー、63…オイルシール、71…ガスケット、CO…コア、L1…一次巻線、L2…二次巻線、72…第3保護外筒、75…一次ボビン、76…当接部、79…絶縁材、81…封止部材、83…位置規制部、84…第4保護外筒、85…第2位置規制部、86…第5保護外筒、87…段差面、91…二次ボビン。
Claims (5)
- 同心状に巻回される一次巻線、二次巻線と、コイルコアとを有するコイル本体部と、自身の内部に前記コイル本体部を収容して保護する筒形状の保護外筒とを備える点火コイルであって、
前記保護外筒が、シリンダヘッドに固定されるプラグホールパイプであって、点火プラグを内燃機関の潤滑油から隔離するプラグホールパイプとして構成されていること、
を特徴とする点火コイル。 - 前記コイル本体部と前記保護外筒とが軸方向に対して回転不能に一体化されていること、
を特徴とする請求項1に記載の点火コイル。 - 前記保護外筒の内部に絶縁材が充填されていること、
を特徴とする請求項1または請求項2に記載の点火コイル。 - 前記保護外筒は、自身の内部での軸方向における前記コイル本体部の位置決めを行う位置規制部を備えたこと、
を特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の点火コイル。 - 点火用高電圧を発生する点火コイルと、該点火コイルからの点火用高電圧が印加されることで火花放電を発生する点火プラグとを直接に接続し、混合気への着火を行うための火花放電を前記点火プラグに発生する内燃機関用点火装置であって、
前記点火コイルとして、請求項1から請求項4のいずれかに記載の点火コイルを備えたこと、
を特徴とする内燃機関用点火装置。
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