JP4142477B2 - 空燃比制御システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料制御弁、スロットル弁、燃料増量弁、空燃比センサ、及び制御手段を具備するガスエンジンの空燃比制御システムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、図1に示すようなガスエンジンの一例であるエンジン60に供給される混合気を制御するための空燃比制御システムがある。図1に示す従来の空燃比制御システムに関するハードウェアの概略構成について簡単に説明する。先ず、ベンチュリ23がエアクリーナ30を介して空気を取り入れる吸気通路に配置され、該ベンチュリ23部分を通過するときに発生する負圧を利用して燃料が吸入されて、該空気と燃料との混合気を生成する。上記ベンチュリ23に供給される燃料は燃料制御弁22によってその量が調節される。具体的には、燃料制御弁22が具備するアクチュエータとしてのステッピングモータを制御手段の一例であるECU10(電子制御装置)で制御することによって該燃料の量を調節している。尚、燃料制御弁22を通過してベンチュリ23に燃料を供給する系統の他に、固定弁21を通過してベンチュリ23に燃料を供給する系統がある。ベンチュリ23で生成された混合気はスロットル弁25に到達し、該スロットル弁25の開度によって、スロットル弁25を通過する混合気の流量が変化する。具体的には、スロットル弁25の開度が開くことによって混合気の流量が増加し、他方該開度が閉じることによって混合気の流量が減少する。更に、スロットル弁25の下流側(エンジン60側)には、燃料増量弁27によって調節された燃料が供給される。この燃料増量弁27が設けられる目的は以下である。一般的に、スロットル弁25の開度が全開に近づくと、混合気の流路の断面積の変化量が鈍化するため、図3に示すように、スロットル弁25を通過する「混合気の流量」の増加量(変化量)が鈍化する特性がある。(即ち、混合気の流路の正味の断面積は、混合気の流路となる管の全段面積からスロットル弁25の弁体の断面積面に対する射影像の面積を引いたものである。)そのため、「混合気の流量」の増加量が鈍化することによって、エンジン60へ供給する「混合気中の燃料量」も抑制される。即ち、スロットル弁25の開度が全閉から中程度であると、図3に示すように線形性(スロットル弁25の開度と「混合気中の燃料量」とが比例する)を示すが、中程度から全開の領域では該線形性が失われて非線形特性となる。つまり、スロットル弁25の開度を大きくしても、エンジン出力があまり伸びなくなってしまう。
【0003】
そこで、上記非線形特性となる領域(スロットル弁25の開度が中程度から全開)において、図4に示す如く、混合気に燃料を補うことによって混合気中の燃料量が近似的に線形性を示すように、上記燃料増量弁27をスロットル弁25の下流側に設けている。該燃料増量弁27は、スロットル弁25の開度が中程度(図4における「燃料増量弁作動開始開度」)から全開となるときに弁が開くように機械的に(歯車等を介して)スロットル弁25と連動する構成となっている。つまり、図4に示すように、スロットル弁25の開度が中程度になったときに、連動して燃料増量弁27の開度が開くことによって、混合気に燃料を補うことで「混合気中の燃料量」を近似的に線形性となるように補償することが可能となる。このような制御を行っている従来の空燃比制御システムの具体例としては下記特許文献1、2に示すものがある。また、このように含有する燃料量が制御された混合気は、エンジン60のシリンダ40内に吸入弁41を介して吸入され、吸入弁41及び排気弁42が閉じた状態でピストン45によって圧縮されて点火プラグ43による点火によって爆発する。そして、このピストン45の昇降によりクランク軸が回転され、その回転数が回転数センサ44により検知され、ECU10に入力される。上記爆発後の排気は排気弁42を介して排出される。このとき排気ガス中の空燃比(一般的に酸素)を計測するのが空燃比センサ50であり、ECU10はこの空燃比センサ50の検出結果に基づいて、シリンダ40に吸入される混合気の空燃比を算出することを可能にしている。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−295299号公報
【特許文献2】
特開平6−341335号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、エンジンの一般的な制御モデルは、図2に示すようなブロック線図で表現できる。エンジン60の出力の一例である目標回転数70がECU10に目標値として入力され、エンジン60の現状の回転数との偏差が加え合わせ点74で算出され、該偏差はECU10内部に設けられるコントローラ71に入力されて制御信号が出力される。尚、コントローラ71は、一般的なPI制御、PID制御、若しくはその他の制御手法で制御を行うものである。更に、コントローラ71より出力された制御信号は、制御対象であるスロットル弁25を駆動するステッピングモータに入力されてスロットル弁25の開度(操作量)が変更され、エンジン60はそのスロットル弁25の開度(操作量)に応じた回転数に近づこうとし、その出力回転数がセンサ44で検知される。この出力回転数は、再び加え合わせ点74にフィードバックされて上述のフィードバック制御を繰り返す。該フィードバック制御を以下では「回転数制御」と呼ぶ。基本的には上述したようなプロセスで、エンジン60の回転数を目標回転数に近づける回転数制御を行っているが、実際には図2に示すようにスロットル弁25の開度(操作量)に外乱1が入ることが知られている(加え合わせ点75)。この外乱1は、シリンダ40に入る混合気の空燃比の変動によって生じるものである。
【0006】
上記空燃比は次のように制御されている(図2下段参照)。空燃比センサ50の出力目標値80がECU10に目標値として入力され、現状の空燃比センサ50の出力値との偏差が加え合わせ点84で算出され、該偏差がECU10内部に設けられるコントローラ81に入力されて制御信号が出力される。コントローラ81は、一般的なPI制御、PID制御、若しくはその他の制御手法で制御を行うものである。更に、コントローラ81より出力された制御信号は、制御対象である燃料制御弁22を駆動するステッピングモータに入力されて燃料制御弁22の開度(操作量)が変更され、エンジン60はその燃料制御弁22の開度(操作量)に応じた回転数に近づこうとし、そのときの空燃比センサ50で検知した出力値が再び加え合わせ点84にフィードバックされて上述のフィードバック制御を繰り返す。該フィードバック制御を以下では「空燃比制御」と呼ぶ。基本的には上述のしたようなプロセスで空燃比センサ50の出力値を出力目標値に近づける制御を行っているが、この場合も既に上述したエンジン60の回転数制御の場合と同様に、燃料制御弁22の開度(操作量)に外乱2が入ることが知られている(加え合わせ点85)。即ち、この外乱2は、エンジン60の回転数の変動によって生じるものである。
【0007】
つまり、エンジン60の回転数と空燃比センサ50の出力値とは相互に干渉し合う関係にあることがわかる。具体的には、エンジン60の回転数を目標値に定めるようにスロットル弁25を制御する際に、例えば、スロットル弁25の開度が上記「燃料増量弁作動開始開度」(図4参照)に以上になると、燃料制御弁22によって空燃比センサ50の出力目標値に近づける制御が実行されているにも関わらず、燃料増量弁27が「混合気中の燃料量」を補償するため混合気が出力目標値と比べてリッチになる。ここで、スロットル弁25の開度が燃料増量弁作動開始開度を超えた場合における、スロットル弁25と燃料制御弁22の開度の時間的変化を示した図5を用いて、上記干渉による不具合を具体的に説明する。
(1);このとき、図5に示すように、リッチになった混合気を出力目標値にするための「空燃比制御」の働きによって、時間T1(点線1)を基点として燃料制御弁22は閉じる動作を開始する。
(2);しかし、上記(1)と相反して、エンジン60の出力を目標値に維持するための「回転数制御」の働きによって、スロットル弁25が開かれ、それに連動して燃料増量弁27も更に開度を増加する動作が開始され、その基点が時間T1となる。
換言すれば、上記(1)は混合気中の燃料量を減少させる制御であるが、一方、上記(2)は混合気中の燃料量を増加させる制御と言える。つまり、(1)は「回転数制御」に対する外乱1の発生因子となり、他方、(2)は「空燃比制御」に対する外乱2の発生因子となる。このため、上記「回転数制御」と上記「空燃比制御」とを具備する制御モデルでは、スロットル弁25の開度が燃料増量弁作動開始開度以上になると、上記外乱1及び外乱2が共に発生する。この外乱1、2が共に発生する状態で制御を続けると、最終的には(制御の極限は)図5中の時間T2(点線2)以降に示すように、燃料制御弁22の開度は閉じてしまい(エンジン60を運転するのに必要な開度)、他方、スロットル弁25は全開状態になるので、エンジン60を制御することができなくなる不具合が発生する。そこで、本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、エンジン60の回転数と空燃比センサ50の出力値との干渉を解消して、エンジン60の運転を容易に維持できる空燃比制御システムを提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明は、次の如く構成したものである。
【0010】
空気と燃料との混合気を生成するベンチュリ(23)に供給する燃料の量を制御する燃料制御弁(22)と、上記混合気の量を制御するスロットル弁(25)と、上記スロットル弁(25)を通過した混合気に燃料を供給するための燃料増量弁(27)と、上記燃料制御弁(22)、上記スロットル弁(25)、及び上記燃料増量弁(27)を制御する電子制御装置(10)とを具備する空燃比制御システムにおいて、前記燃料増量弁(27)は、スロットル弁(25)の開度が、中程度から全開の領域では、線形性が失われ非線形特性となるので、該非線形特性となるスロットル弁(25)の開度の領域において、「燃料増量弁作動開始開度」に達すると混合気に燃料を補ない『混合気中の燃料量』を近似的に線形性とすべく、スロットル弁(25)の下流側に設け、該スロットル弁(25)の開閉動作と連動して開閉すべく構成し、前記スロットル弁(25)の開度が、燃料増量弁(27)の「燃料増量弁作動開始開度」よりも更に所定量開いた開度である「燃料制御弁補助開度」を設定し、該電子制御装置(10)は、検出した現状のスロットル弁(25)の開度と、予め記憶させた「燃料増量弁作動開始開度」とを比較し、該スロットル弁(25)の開度が「燃料増量弁作動開始開度」でないと判断した場合に、通常の「回転数制御」及び「空燃比制御」(S300)を行い、該スロットル弁(25)の開度が「燃料増量弁作動開始開度」に達したと判断した場合は、次に、スロットル弁(25)の開度が上記「燃料制御弁補助開度」に達したか否かを判断し、現状のスロットル弁25の開度が上記「燃料制御弁補助開度」に達してないと判断された場合に、該電子制御装置(10)は燃料制御弁(22)の開度を作動させない制御(S200)を行い、現状のスロットル弁(25)の開度が上記「燃料制御弁補助開度」を超えたと判断された場合に、次に、該燃料制御弁(22)の開度を、予め定められたベース開度と比較し、現状の燃料制御弁(22)の開度が上記ベース開度以下と判断された場合に、電子制御装置(10)は予め電子制御装置(10)に定められた所定量分だけベース開度側に開く制御(S110)を行い、他方、現状の燃料制御弁(22)の開度が前記ベース開度に達してないと判断された場合に、電子制御装置(10)は燃料制御弁22の開度を作動させない制御(S200)を行うものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明し、本発明の理解に供する。尚、以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0012】
図1は本発明の実施の形態に係る空燃比制御システムの概略構成図(従来の空燃比制御システムの概略構成図も兼ねる)、図2はエンジンの一般的な制御モデルの一例を示したブロック線図、図3はスロットル弁25の開度と混合気中の燃料量との関係を示した図(燃料増量弁27が無い場合)である。
【0013】
図4はスロットル弁25の開度と混合気中の燃料量との関係を示した図(燃料増量弁27が有る場合)、図5は従来の制御モデルにおけるスロットル弁25と燃料制御弁22の時間的変化を示す制御経過図、図6はECU10が行う一連の処理の一例を示すフローチャート、図7はECU10が行う一連の処理の一例を示すフローチャート、図8はECU10が行う一連の処理の一例を示すフローチャートである。
【0014】
先ず、本発明の実施の形態に係る空燃比制御システムの概略構成について図1を用いて説明する。本発明の実施の形態に係る空燃比制御システムのハードウェアの概略構成は、既に上述した空燃比制御システムと同様の構成を有しているが、再度ここで更に詳しく説明する。先ず、エアクリーナ30より取り入れた空気(外気)と、ガス等の燃料とを混合させることによって混合気を生成するミキサ20について説明する。ミキサ20は、主として、ベンチュリ23、燃料制御弁22、固定弁21、燃料増量弁27、及びスロットル弁25を具備して概略構成されるものである。上記エンジン60のピストン45が下降してシリンダ(燃焼室)40内が負圧となってエアクリーナ30からベンチュリ23を介して空気を取り入れ、該ベンチュリ23において、空気通路を狭くし、その狭い部分に燃料供給路と連通し、空気流の流れが速くなる部分で負圧を利用して燃料供給路から燃料を吸入して、空気と燃料との混合気を生成する。上記ベンチュリ23に供給される燃料は、燃料制御弁22によってその量が調節される。具体的には、燃料制御弁22の弁体を駆動するアクチュエータとしてのソレノイドを、制御手段の一例であるECU10(電子制御装置)で制御することによって該燃料の量を調節している。また、図1に示すように、ベンチュリ23に燃料を供給する系統としては、上記燃料制御弁22を通過する系統の他に固定弁21を通過する系統がある。この固定弁21は、予め定められた量の燃料だけをベンチュリ23に供給するためのものであり、燃料の種類等により設定される。したがって、固定弁21の弁はECU10等によって制御されることなく、ミキサ20の製造時若しくは据え付け時等のメンテナンス時に予め調整されるのみであり運用時は一定の開度で固定されるものである。つまり、ECU10が燃料制御弁22を制御することによって、ベンチュリ23で生成される混合気中の空燃比を変化させることが可能となる。このようにして生成された混合気は、スロットル弁25に到達し、該スロットル弁25の開度によってスロットル弁25を通過する混合気の流量が変化する。具体的には、スロットル弁25の弁体はアクチュエータとしてのステッピングモータの駆動によりその開度が変更され、該ステッピングモータは上記ECU10によって制御され、スロットル弁25の開度が開くことによって通過する混合気の流量が増加し、他方該開度が閉じることによって通過する混合気の流量が減少する。更に、スロットル弁25の下流側(エンジン60側)には、燃料増量弁27によって調節された燃料が供給される。該燃料増量弁27もその弁体はアクチュエータとしてのステッピングモータの駆動によりその開度が変更され、該ステッピングモータは上記ECU10によって制御される。
【0015】
この燃料増量弁27が設けられる目的は以下である。一般的に、スロットル弁25の開度が全開に近づくと、混合気の流路の断面積の変化量が鈍化するため、図3に示すように、スロットル弁25を通過する「混合気の流量」の増加量(変化量)が鈍化する特性がある。(即ち、混合気の流路の正味の断面積は、混合気の流路となる管の全段面積からスロットル弁25の弁体の断面積面に対する射影像の面積を引いたものである。)そのため、「混合気の流量」の増加量が鈍化することによって、エンジン60へ供給する「混合気中の燃料量」も抑制される。即ち、スロットル弁25の開度が全閉から中程度であると、図3に示すように線形性(スロットル弁25の開度と「混合気中の燃料量」とが比例する)を示すが、中程度から全開の領域では該線形性が失われて非線形特性となる。つまり、スロットル弁25の開度を大きくしても、エンジン出力があまり伸びなくなってしまう。
【0016】
そこで、上記非線形特性となる領域(スロットル弁25の開度が中程度から全開)において、図4に示す如く、混合気に燃料を補うことによって混合気中の燃料量が近似的に線形性を示すように、上記燃料増量弁27をスロットル弁25の下流側に設けている。該燃料増量弁27は、スロットル弁25の開度が中程度(図4における「燃料増量弁開始開度」)から全開となるときに弁が開くように機械的に(歯車等を介して)スロットル弁25と連動する構成となっている。つまり、図4に示すように、スロットル弁25の開度が中程度になったときに、連動して燃料増量弁27の開度が開くことによって、混合気に燃料を補うことで「混合気中の燃料量」を近似的に線形性となるように補償することが可能となる。また、このように含有する燃料量が制御された混合気は、エンジン60のシリンダ40内に吸入弁41を介して吸入され、吸入弁41及び排気弁42が閉じた状態でピストン45によって圧縮されて点火プラグ43による点火によって爆発する。上記爆発後の排気は排気弁42を介して排出される。このとき排気ガス中の空燃比を計測するのが空燃比センサ50であり、ECU10はこの空燃比センサ50の検出結果に基づいて、シリンダ40に吸入される混合気の空燃比を算出することを可能にしている。
【0017】
また、上記燃料制御弁22、上記スロットル弁25、及び上記燃料増量弁27の開度はそれぞれ角度センサ等の検知手段を用いて検出し、ECU10に入力すると共に、エンジン60の回転数を検知する回転数センサ44や空燃比センサ50の出力値も併せてECU10に入力する。これら入力値に基づいて、上記燃料制御弁22、上記スロットル弁25、及び上記点火プラグ43をECU10が制御する。したがって、ECU10は、上記各部と通信する通信機能、上記制御に関するデータやプログラムの記憶機能、該データやプログラムを実行するための展開機能及び演算機能等を具備するものである。具体的には、上記ECU10は、CPU、ROM、及びRAM等がバスで接続される構成であっても良いし、或いは、ワンチップのLSI等で上記機能を全て具備する構成であっても良い。また、ECU10に予め記憶されるデータの具体例としては、後述する「燃料増量弁作動開始開度」、「ベース開度」、「所定量(単位作動量)」、「燃料制御弁補助開度」、「略無変化流量開度」等である。
【0018】
このように構成されている本発明の実施の形態に係る空燃比制御システムは、以下説明する図6から図8に示す一連の処理を実行する。この図6から図8のフローチャートに示される一連の処理を実行する実行主体の一例が上記ECU10である。
<1;スロットル弁25の開度に応じて燃料制御弁22をベース開度にする>
先ず、図6を用いて説明する。エンジン運転中において、ECU10は、現状のスロットル弁25の開度を検出し、その検出したスロットル弁25の開度が燃料増量弁27の作動開始開度(即ち、図4、5に示す「燃料増量弁作動開始開度」)に達したか否かを判断する(S10)。このステップS10の判断は次のようにして行う。ECU10に上記「燃料増量弁作動開始開度」を予め記憶させておくことによって、ECU10が現状のスロットル弁25の開度を検出した際に、該検出した現状のスロットル弁25の開度と上記「燃料増量弁作動開始開度」とを比較する。この比較の結果、ECU10が現状のスロットル弁25の開度が上記「燃料増量弁作動開始開度」を越えたと判断した場合に、ECU10はスロットル弁25の開度が上記「燃料増量弁作動開始開度」に達したと判断する。上記ステップS10の判断において、スロットル弁25の開度が上記「燃料増量弁作動開始開度」に達したと判断された場合は、ECU10は燃料制御弁22の開度を予めECU10に記憶されたベース開度まで開いて固定する(S100)。即ち、上記ステップS100の処理の結果、燃料制御弁22の開度をベース開度に固定することは燃料制御弁22の開度調節制御が停止することになるので、図2に示した「回転数制御」と「空燃比制御」のうち「空燃比制御」が停止することになる。尚、上記ベース開度とは、エンジン60を運転させるための混合気を生成するのに十分な安全量を織り込んだ燃料をベンチュリ23に供給できる開度のことであり、空燃比制御で制御された場合の燃料制御弁22の開度よりも大きい開度である。(即ち、燃料制御弁22の開度がベース開度になると混合気はリッチになる。)他方、上記ステップS10の判断において、スロットル弁25の開度が上記作業開始開度に達してないと判断された場合は、上記ステップS100の処理とは異なって、ECU10は「回転数制御」及び「空燃比制御」を行う(S300)。即ち、処理がステップS100に移行した場合、ECU10が燃料制御弁22の開度を上記ベース開度で固定して「空燃比制御」を停止させるので、図2に示す「外乱1」は発生しなくなる。したがって、処理がステップS100に移行した場合、図2に示す従来の制御モデルにおける「外乱1」が必然的に無くなるので、スロットル弁25の開度が「燃料増量弁作動開始開度」に達した場合における従来の「回転数制御」と「空燃比制御」との干渉が解消されて、エンジン60の運転を維持することが容易となる。また、ECU10は、上記ステップS100、S300の処理を行うと共に、再度上記ステップS10の処理を行う。
【0019】
<2;スロットル弁25の開度に応じて燃料制御弁22をベース開度にする>
ところで上述したように、ECU10は、上記ステップS10の判断→上記ステップS100若しくはS300のいずれかの処理→上記ステップS10の処理を繰り返すが、この処理を繰り返すと以下の場合に不具合が発生する可能性がある。例えば、エンジン60の負荷の状況によっては、スロットル弁25の開度が「燃料増量弁作動開始開度」近傍で安定する場合がある。この場合に、上記ステップS10の判断によって、上記ステップS100の処理とS300の処理との切替が頻繁に発生してしまう可能性がある。この切替は、換言すれば、空燃比制御の作動若しくは停止を頻繁に切り替えることになるので、混合気の空燃比が頻繁に大きく変化する状態となる。この結果、スロットル弁25と燃料制御弁22の開閉動作のハンチングが発生して、エンジン60の運転が不安定になる問題が発生する可能性がある。そこで上記問題を解消するために、上記ステップS10の判断を行った後に、燃料制御弁22の開度を鑑みて燃料制御弁22を徐々にベース開度にすることによってエンジン60を安定させて運転する手法について図7を用いて説明する。先ず、ECU10は上記ステップS10の判断処理を行う(S10)。このステップS10の判断処理で、スロットル弁25の開度が上記「燃料増量弁作動開始開度」に達したと判断された場合に処理がステップS30へ移行し、他方、スロットル弁25の開度が上記「燃料増量弁作動開始開度」に達してないと判断された場合にはECU10は上記ステップS300の処理を行う。次に、処理がステップS30へ移行した場合に、ECU10は燃料制御弁22の開度が上記ベース開度以下か否かを判断する(S30)。このステップS30における判断では、先ず、ECU10は予めECU10に記憶されたベース開度と現状の燃料制御弁22の開度とを比較する。その比較の結果、現状の燃料制御弁22の開度が上記ベース開度以下と判断された場合に、ECU10は燃料制御弁22の開度を予めECU10に定められた所定量分だけベース開度側に開き(S110)、他方、現状の燃料制御弁22の開度が上記ベース開度に達してないと判断された場合に、ECU10は燃料制御弁22の開度を作動させない(S200)。上記ステップS110の処理における、「所定量」の具体例としては、燃料制御弁22の弁体を駆動するステッピングモータの分解能における最小の作動量であっても良いし、或いは、開発段階等で予め定まる燃料制御弁22の仕様における単位作動量の1つであっても良く、ECU10に予め記憶されている。換言するならば、ECU10が燃料制御弁22の開度を徐々にベース開度側に変化できる程度の単位作動量を上記所定量として予めECU10に記憶させておく。このように上記所定量を予め定めて、ECU10が上記ステップS110の処理を行うことにより、スロットル弁25の開度が「燃料増量弁作動開始開度」近傍に位置する場合であっても、混合気の空燃比が徐々に変化するので、スロットル弁25と燃料制御弁22とのハンチングを解消できて、エンジン60の運転が安定する。また、ECU10は、上記ステップS110、S200、S300の処理を行うと共に、再度ステップS10の処理を行う。
【0020】
<3;スロットル弁25の開度に応じて燃料制御弁22をベース開度にする>
上述した2つの手法による制御は、基本的にスロットル弁25の開度が燃料増量弁作動開始開度に達した場合に、燃料制御弁22の開度をベース開度にするものである。しかし、スロットル弁25の開度が燃料増量弁作動開始開度に達した段階では、まだスロットル弁25の開度を更に開くことによって混合気の流量を増加させる余地があるにも関わらず、混合気の流量が少ないこの段階で燃料増量弁27及び燃料制御弁22より燃料を供給すると、混合気が過剰にリッチ(濃く)になりすぎる問題がある。その結果、排気ガス中のNOxが多くなると共にエンジン60の出力がダウンする問題が発生する。そこで、例えば図5に示すように、スロットル弁25の開度が燃料増量弁作動開始開度よりも更に所定量開いた開度である「燃料制御弁補助開度」になった段階で燃料制御弁22の開度をベース開度にする制御を行えば、混合気の流量も増加しているので、混合気が過剰にリッチになることない。尚、この燃料増量弁作動開始開度よりも更に所定量開いた開度である「燃料制御弁補助開度」は、ミキサ20やエンジン60の開発段階等で予め定められる開度であって、ECU10に予め記憶されている。そこで、上記混合気が過剰にリッチになることを防止するために図8に示す手法による制御を行う。先ず、ECU10は上記ステップS10の判断処理を行う(S10)。上記ステップS10の処理で、スロットル弁25の開度が燃料増量弁作動開始開度でないと判断された場合に、ECU10は上記ステップS300の処理を行い、他方、上記ステップS10の処理でスロットル弁25の開度が燃料増量弁作動開始開度に達したと判断された場合は処理がステップS20へ移行する。次に、処理がステップS20へ移行した場合に、ECU10はスロットル弁25の開度が上記「燃料制御弁補助開度」に達したか否かを判断する(S20)。このステップS20における判断では、先ず、ECU10は予めECU10に記憶された「燃料制御弁補助開度」と現状のスロットル弁25の開度とを比較する。その比較の結果、現状のスロットル弁25の開度が上記「燃料制御弁補助開度」を超えたと判断された場合に処理はステップS30へ移行し、他方、現状のスロットル弁25の開度が上記「燃料制御弁補助開度」に達してないと判断された場合に、ECU10は燃料制御弁22の開度を作動させない(S200)。更に、上記ステップS30の判断では、既に上述したように、現状の燃料制御弁22の開度が上記ベース開度以下と判断された場合に、ECU10は燃料制御弁22の開度を予めECU10に定められた所定量分だけベース開度側に開き(S110)、他方、現状の燃料制御弁22の開度が上記ベース開度に達してないと判断された場合に、ECU10は燃料制御弁22の開度を作動させない(S200)処理を行う。このようにステップS10の判断でスロットル弁25の開度が燃料増量弁作動開始開度に達したと判断された後に、更に、上記ステップS20の判断でスロットル弁25の開度が燃料制御弁補助開度に達したか否かを判断することによって、混合気の流量がステップS10の段階よりも増加した段階で燃料制御弁22による燃料の供給が行われるので、混合気が過剰にリッチになることを防止でき、排気ガス中のNOxを抑制すると共にエンジン60の出力がダウンすることを防止できる。また、ECU10は、上記ステップS110、S200、S300の処理を行うと共に、再度ステップS10の処理を行う。
【0021】
また、一般的に、エンジン60が混合気をシリンダ40に吸入する際における吸入抵抗(又は、「ポンプ損失」と称される)は、スロットル弁25の開度が開くほど低減できることが一般的に知られており、この吸入抵抗を低減することによってエンジン60の熱効率もアップできるので高効率運転が可能となる。そこで、上記ステップS10の判断において、スロットル弁25の開度が燃料増量弁作動開始開度に達した場合に、図4に示すように、ECU10はスロットル弁25の開度を混合気の流量がほとんど変化しなくなる「略無変化流量開度」まで強制的に開く操作を行った後に、上記ステップS20、S30、S100、S110、S200、又はS300のいずれかの処理に移行しても良い。このような処理を行うことによって、既に上述してきた制御手法による効果の他に、吸入効率を低減したことによるエンジン60の高効率運転が可能となって、NOxの低減を図ることが可能となる。
【0022】
【発明の効果】
本発明は、以上のように構成したので、以下に示すような効果を奏する。
【0023】
空気と燃料との混合気を生成するベンチュリ(23)に供給する燃料の量を制御する燃料制御弁(22)と、上記混合気の量を制御するスロットル弁(25)と、上記スロットル弁(25)を通過した混合気に燃料を供給するための燃料増量弁(27)と、上記燃料制御弁(22)、上記スロットル弁(25)、及び上記燃料増量弁(27)を制御する電子制御装置(10)とを具備する空燃比制御システムにおいて、前記燃料増量弁(27)は、スロットル弁(25)の開度が、中程度から全開の領域では、線形性が失われ非線形特性となるので、該非線形特性となるスロットル弁(25)の開度の領域において、「燃料増量弁作動開始開度」に達すると混合気に燃料を補ない『混合気中の燃料量』を近似的に線形性とすべく、スロットル弁(25)の下流側に設け、該スロットル弁(25)の開閉動作と連動して開閉すべく構成し、前記スロットル弁(25)の開度が、燃料増量弁(27)の「燃料増量弁作動開始開度」よりも更に所定量開いた開度である「燃料制御弁補助開度」を設定し、該電子制御装置(10)は、検出した現状のスロットル弁(25)の開度と、予め記憶させた「燃料増量弁作動開始開度」とを比較し、該スロットル弁(25)の開度が「燃料増量弁作動開始開度」でないと判断した場合に、通常の「回転数制御」及び「空燃比制御」(S300)を行い、該スロットル弁(25)の開度が「燃料増量弁 作動開始開度」に達したと判断した場合は、次に、スロットル弁(25)の開度が上記「燃料制御弁補助開度」に達したか否かを判断し、現状のスロットル弁25の開度が上記「燃料制御弁補助開度」に達してないと判断された場合に、該電子制御装置(10)は燃料制御弁(22)の開度を作動させない制御(S200)を行い、現状のスロットル弁(25)の開度が上記「燃料制御弁補助開度」を超えたと判断された場合に、次に、該燃料制御弁(22)の開度を、予め定められたベース開度と比較し、現状の燃料制御弁(22)の開度が上記ベース開度以下と判断された場合に、電子制御装置(10)は予め電子制御装置(10)に定められた所定量分だけベース開度側に開く制御(S110)を行い、他方、現状の燃料制御弁(22)の開度が前記ベース開度に達してないと判断された場合に、電子制御装置(10)は燃料制御弁22の開度を作動させない制御(S200)を行うものである。
このように構成することによって、制御手段が燃料制御弁の開度を上記ベース開度で固定して空燃比制御を停止させるので、従来の制御モデルにおける回転数制御に対する外乱が必然的に無くなるので、スロットル弁の開度が燃料増量弁の作動が開始する開度に達しても、「回転数制御」と「空燃比制御」とが干渉することなく、エンジンの運転を安定的に維持することが容易となる。
【0024】
また、前記制御手段は、前記燃料制御弁の開度が前記ベース開度以下か否かを判断し、前記ベース開度以下と判断した場合に、前記燃料制御弁の開度を予め定められた所定量だけ作動させてなる空燃比制御システムとして構成している。
このような処理を行うことにより、スロットル弁の開度が燃料増量弁の作動が開始する開度近傍に位置する場合であっても、混合気の空燃比が徐々に変化するので、スロットル弁と燃料制御弁とのハンチングを解消できて、エンジンの運転が安定する。
【0025】
また、前記制御手段は、スロットル弁の開度が燃料増量弁の作動開始開度に達し、更に前記スロットル弁の開度が所定量開いた状態である「燃料制御弁補助開度」を設け、該「燃料制御弁補助開度」においては、前記燃料制御弁の開度を予め定められたベース開度にしてなる空燃比制御システムとして構成している。
このように制御することによって、燃料増量弁の作動が開始するスロットル弁の開度よりも混合気の流量が増加した「燃料制御弁補助開度」の段階で、燃料制御弁による燃料の供給が行われるので、混合気が過剰にリッチになることを防止でき、排気ガス中のNOxを抑制すると共にエンジン60の出力がダウンすることを防止できる。
即ち、ステップS10の判断でスロットル弁25の開度が燃料増量弁作動開始開度に達したと判断された後に、更に、上記ステップS20の判断でスロットル弁25の開度が燃料制御弁補助開度に達したか否かを判断することによって、混合気の流量が、増加した段階でも、燃料制御弁22による燃料の供給が行われるので、混合気が過剰にリッチになることを防止でき、排気ガス中のNOxを抑制すると共にエンジン60の出力がダウンすることを防止できる。
【0026】
また、前記制御手段は、スロットル弁の開度が燃料増量弁の作動開始開度に達した場合に、前記スロットル弁の開度を前記混合気の流量が変化しなくなる開度まで開けてなる空燃比制御システムとして構成している。
このような処理を行うことによって、既に上述してきた制御手法による効果の他に、吸入効率を低減したことによるエンジンの高効率運転が可能となって、NOxの低減を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態に係る空燃比制御システムの概略構成図(従来の空燃比制御システムの概略構成図も兼ねる)。
【図2】 エンジンの一般的な制御モデルの一例を示したブロック線図。
【図3】 スロットル弁25の開度と混合気中の燃料量との関係を示した図(燃料増量弁27が無い場合)。
【図4】 スロットル弁25の開度と混合気中の燃料量との関係を示した図(燃料増量弁27が有る場合)。
【図5】 従来の制御モデルにおけるスロットル弁25と燃料制御弁22の時間的変化を示す制御経過図。
【図6】 ECU10が行う一連の処理の一例を示すフローチャート。
【図7】 ECU10が行う一連の処理の一例を示すフローチャート。
【図8】 ECU10が行う一連の処理の一例を示すフローチャート。
【符号の説明】
10 ECU(制御手段)
20 ミキサ
22 燃料制御弁
23 ベンチュリ
25 スロットル弁
27 燃料増量弁
30 エアクリーナ
40 シリンダ
50 空燃比センサ
60 エンジン
Claims (1)
- 空気と燃料との混合気を生成するベンチュリ(23)に供給する燃料の量を制御する燃料制御弁(22)と、上記混合気の量を制御するスロットル弁(25)と、上記スロットル弁(25)を通過した混合気に燃料を供給するための燃料増量弁(27)と、上記燃料制御弁(22)、上記スロットル弁(25)、及び上記燃料増量弁(27)を制御する電子制御装置(10)とを具備する空燃比制御システムにおいて、前記燃料増量弁(27)は、スロットル弁(25)の開度が、中程度から全開の領域では、線形性が失われ非線形特性となるので、該非線形特性となるスロットル弁(25)の開度の領域において、「燃料増量弁作動開始開度」に達すると混合気に燃料を補ない『混合気中の燃料量』を近似的に線形性とすべく、スロットル弁(25)の下流側に設け、該スロットル弁(25)の開閉動作と連動して開閉すべく構成し、前記スロットル弁(25)の開度が、燃料増量弁(27)の「燃料増量弁作動開始開度」よりも更に所定量開いた開度である「燃料制御弁補助開度」を設定し、該電子制御装置(10)は、検出した現状のスロットル弁(25)の開度と、予め記憶させた「燃料増量弁作動開始開度」とを比較し、該スロットル弁(25)の開度が「燃料増量弁作動開始開度」でないと判断した場合に、通常の「回転数制御」及び「空燃比制御」(S300)を行い、該スロットル弁(25)の開度が「燃料増量弁作動開始開度」に達したと判断した場合は、次に、スロットル弁(25)の開度が上記「燃料制御弁補助開度」に達したか否かを判断し、現状のスロットル弁25の開度が上記「燃料制御弁補助開度」に達してないと判断された場合に、該電子制御装置(10)は燃料制御弁(22)の開度を作動させない制御(S200)を行い、現状のスロットル弁(25)の開度が上記「燃料制御弁補助開度」を超えたと判断された場合に、次に、該燃料制御弁(22)の開度を、予め定められたベース開度と比較し、現状の燃料制御弁(22)の開度が上記ベース開度以下と判断された場合に、電子制御装置(10)は予め電子制御装置(10)に定められた所定量分だけベース開度側に開く制御(S110)を行い、他方、現状の燃料制御弁(22)の開度が前記ベース開度に達してないと判断された場合に、電子制御装置(10)は燃料制御弁22の開度を作動させない制御(S200)を行うことを特徴とする空燃比制御システム。
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