JP4141914B2 - グレーテッドインデックス型マルチモードファイバおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、グレーテッドインデックス型マルチモードファイバに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
マルチモードファイバのうち、グレーテッドインデックス(Graded Index)型マルチモードファイバ(以下、「GIマルチモードファイバ」と略す。)は、コアにゲルマニウム(Ge)などのドーパントを添加し、屈折率を純粋石英よりも上昇させて、屈折率(Index)がコアの中心において最も高く、コアとクラッドとの境界に向かって、コアの中心からの距離の増加に従って連続的に減少するように形成されたものである。
【0003】
これにより、GIマルチモードファイバでは、その中心を移動する光よりも、外側を移動する光を速く移動させることができるため、マルチモードにおける伝送速度の差が極力抑えられ、モード分散が小さく、伝送帯域幅が大きくなる。
【0004】
このようなGIマルチモードファイバは、高い開口数を有し、光LANの伝送線路として広く用いられている。GIマルチモードファイバは、光LANの高速化の要求に従って、その屈折率プロファイルの制御における精度を向上させてきた。
【0005】
現在、GIマルチモードファイバは、ほぼ性能限界に達しており、GIマルチモードファイバの伝送帯域幅をこれ以上に大きくするためには、波長分割多重(Wavelength Division Multiplexing、WDM)しなければならない。
【0006】
従来のコアにゲルマニウムを含むGIマルチモードファイバでは、最適な屈折率プロファイルが、ファイバ内を伝搬する信号光の波長に大きく依存する。そのため、特定の波長において最適化された屈折率プロファイルを有するファイバは、異なる波長においては伝送帯域幅が非常に小さくなるから、波長分割多重には適用できないという問題がある(例えば、非特許文献1参照。)。
また、0.85μm帯のような零分散波長から大きく外れた波長領域では、ゲルマニウムによる波長分散が大きいため、伝送帯域幅は非常に小さくなる。
【0007】
【非特許文献1】
大越、岡本、保位、“光ファイバ”、第7章、オーム社、1984年
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたもので、ファイバ内を伝搬する信号光の波長に依存することなく、広い波長領域において、広い伝送帯域幅が得られるグレーテッドインデックス型マルチモードファイバおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するために、石英系ガラスからなるコアと、該コアの外周に設けられたクラッドとを備え、以下の式(1)を満足する屈折率プロファイルを有するグレーテッドインデックス型マルチモードファイバであって、前記コアは、使用波長領域において伝送帯域幅を最大とするためにWKB法を用いて最適化された以下の式(1)における屈折率分布次数αの最適値が波長が長くなるに伴って概ね単調減少する物質Aと、前記最適値が波長が長くなるに伴って概ね単調増加する少なくとも1種の物質Bとを含み、前記物質Aはゲルマニウム、前記物質Bはフッ素であり、前記コアにおける前記物質Aの濃度分布は、コアとクラッドとの境界に向かってコアの中心からの距離の増加に従って単調減少し、コアとクラッドとの境界において零となるようになっており、前記コアにおける前記物質Bの濃度分布は、コアの中心において零となり、コアとクラッドとの境界に向かってコアの中心からの距離の増加に従って単調増加するようになっているグレーテッドインデックス型マルチモードファイバを提供する。
【0010】
【数3】
【0011】
ただし、n(r)は光ファイバのコア中心からの距離rにおける屈折率、n1はコア中心における屈折率、Δはクラッドに対するコア中心の比屈折率差、aはコア半径、αは屈折率分布次数を表す。
【0012】
本発明は、石英系ガラスからなるコアと、該コアの外周に設けられたクラッドとを備え、以下の式(1)を満足する屈折率プロファイルを有するグレーテッドインデックス型マルチモードファイバの製造方法において、前記コアに、使用波長領域において伝送帯域幅を最大とするためにWKB法を用いて最適化された以下の式(1)における屈折率分布次数αの最適値が波長が長くなるに伴って概ね単調減少する物質Aと、前記最適値が波長が長くなるに伴って概ね単調増加する少なくとも1種の物質Bとを添加し、前記物質Aはゲルマニウム、前記物質Bはフッ素であり前記コアにおける前記物質Aの濃度分布を、コアとクラッドとの境界に向かってコアの中心からの距離の増加に従って単調減少し、コアとクラッドとの境界において零となるようにするとともに、前記コアにおける前記物質Bの濃度分布を、コアの中心において零となり、コアとクラッドとの境界に向かってコアの中心からの距離の増加に従って単調増加するようにして、前記最適値の波長変化に伴う変化が少ないようにするグレーテッドインデックス型マルチモードファイバの製造方法を提供する。
【0013】
【数4】
【0014】
ただし、n(r)は光ファイバのコア中心からの距離rにおける屈折率、n 1 はコア中心における屈折率、Δはクラッドに対するコア中心の比屈折率差、aはコア半径、αは屈折率分布次数を表す。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明のGIマルチモードファイバは、中心に設けられ、石英系ガラスからなるコアと、このコアの周囲にコアと同心円状に設けられ純粋石英ガラスからなるクラッドとを備え、以下の式(1)を満足する屈折率プロファイルを有する光ファイバであり、コアは使用波長領域において伝送帯域幅を最大とするためにWKB法(Wentzel−Kramers−Brillouin method、R.Olshansky and D.B.Keck,“Pulse broadening in graded−index optical fibers” ,Appl.Opt.,vol.15,pp.483−491,1976.参照。)を用いて最適化された以下の式(1)における屈折率分布次数αの最適値αoptが波長が長くなるに伴って概ね単調減少する物質(ドーパント、以下、「物質A」と略す。)と、この最適値αoptが波長が長くなるに伴って概ね単調増加する少なくとも1種の物質(ドーパント、以下、「物質B」と略す。)とを含むものである。
【0017】
【数5】
【0018】
ただし、上記の式(1)において、n(r)は光ファイバのコア中心からの距離rにおける屈折率、n1はコア中心における屈折率、Δはクラッドに対するコア中心の比屈折率差、aはコア半径、αは屈折率分布次数を表している。
また、屈折率分布次数αは、所望の波長における伝送帯域幅が最大になるように制御されるが、その最適値αoptは、石英ガラスに添加されるドーパントの種類によって異なる。
【0019】
上記の式(1)で表される本発明のGIマルチモードファイバの屈折率プロファイルは、コアの中心において最大屈折率を有し、半径が大きくなるに従って屈折率が徐々に低下するような形状である。そのため、このGIマルチモードファイバ内を低次モードで伝搬する信号光は、伝搬経路は短いが、低い速度で伝搬することになる。これに対して、高次モードで伝搬する信号光は、伝搬経路は長いが、コアとクラッドとの境界付近では屈折率が小さく、高い速度で伝搬することになる。
【0020】
したがって、形状を決めるα値を適宜調節することによって、各伝搬モードでGIマルチモードファイバ内を伝搬した信号光の出力端における到達時間を揃えることができる。このとき、モード分散は理論上最小となり、信号光の波長における最大の伝送帯域幅を実現できる。
一方、αの最適値αoptは使用する波長によって変化する。また、その変化はコアに添加するドーパントの種類や濃度によって異なる。ドーパントが1種類のみの場合、最適値αoptが概ね波長が長くなるに伴い小さくなる物質Aと、逆に波長が長くなるに伴い大きくなる物質Bとに分けられる。
【0021】
物質Aとしては、例えば、ゲルマニウム(Ge)、リン(P2O5)、臭素(B2O3)などが用いられ、低損失、制御性などの観点(理由)から、ゲルマニウムが好ましい。
【0022】
物質Bとしては、フッ素(F)が用いられる。
【0023】
また、本発明のGIマルチモードファイバでは、最適値αoptの変化の幅は、所望の波長領域内で、0.025以下であることが好ましく、0.01以下であることがより好ましい。
最適値αoptの変化の幅が0.025を超えると、所望の波長領域内で伝送帯域幅が波長の変化とともに大きく変化してしまう。
【0024】
さらに、本発明のGIマルチモードファイバでは、上記の式(1)におけるコア半径aが、10μm≦a≦35μmであることが好ましく、20μm≦a≦30μmであることがより好ましい。
コア半径aが10μm未満では、ファイバ同士や、ファイバと光源との接続が難しくなる。一方、aが35μmを超えると、モードの数が増えすぎて、モード間分散が大きくなり、伝送帯域幅が小さくなる。
【0025】
また、本発明のGIマルチモードファイバでは、クラッドに対するコア中心の比屈折率差Δは、Δ=Δ1+Δ2で表される。ここで、Δ1は物質Aのクラッドに対する比屈折率差、Δ2は物質Bのクラッドに対する比屈折率差を表している。
所望の屈折率分布および最適値αoptが上記の関係を満たすように、Δ1とΔ2とを最適化することにより比屈折率差Δが設定される。
Δ1とΔ2との関係は、Δ1/Δ2=1/1〜0/1が望ましく、Δ1/Δ2=1/4がより望ましい。Δ1/Δ2=1/4未満では、最適値αoptは波長が長くなるに伴って単調増加する。一方、Δ1/Δ2=1/4を超えると、最適値αoptは波長が長くなるに伴って単調減少する。
【0026】
さらに、上記のΔ1とΔ2と関係を満たすように、コアには、物質Aと物質Bとが添加される。具体的には、添加によって屈折率を上げるドーパントの濃度分布は、コアとクラッドとの境界に向かってコアの中心からの距離の増加に従って単調減少し、コアとクラッドとの境界において零となるようになっている。一方、添加によって屈折率を下げるドーパントは、コアの中心において零となり、コアとクラッドとの境界に向かってコアの中心からの距離の増加に従って単調増加するようになっている。
【0027】
本発明のGIマルチモードファイバは、その屈折率プロファイルを表す上記の式(1)における屈折率分布次数αが最適な値に制御されており、この最適値αoptは略平ら、すなわち、波長依存性がほとんどなく、全波長領域における変化の幅が非常に小さい。したがって、ある特定の波長におけるαを最適化し、伝送帯域幅が最大となるように作製されたGIマルチモードファイバであっても、ほぼ全波長領域において、伝送帯域幅が大きいものとなる。
例えば、短波長側におけるαを最適化し、伝送帯域幅が最大となるように作製されたコアにフッ素を含むGIマルチモードファイバは、従来のゲルマニウム添加型のGIマルチモードファイバと比較すると、長波長側において格段に大きい伝送帯域幅を有するものとなる。
【0028】
また、本発明のGIマルチモードファイバは、波長0.8〜1.3μmにおいて、クラッドに対するコア中心の比屈折率差Δが0.009以上、伝送帯域幅が3GHz・kmを超えるものである。ここで、伝送帯域幅は、伝送可能な伝送レートと光ファイバの距離の積で表され、光ファイバの伝送容量を示している。
したがって、本発明のGIマルチモードファイバは、波長0.8〜1.3μmにおいて、伝送速度が高く、波長分割多重伝送を可能とする光ファイバである。
【0029】
さらに、本発明のGIマルチモードファイバは、波長0.8〜1.4μmにおいて、クラッドに対するコア中心の比屈折率差Δが0.019以上、伝送帯域幅が2GHz・kmを超えるものである。
したがって、本発明のGIマルチモードファイバは、波長0.8〜1.4μmにおいて、伝送速度が高く、波長分割多重伝送を可能とする光ファイバである。
【0030】
次に、本発明に係るGIマルチモードファイバの製造方法について説明する。
本発明に係るGIマルチモードファイバの製造方法は、PCVD(Plasma Chemical Vapor Deposition Method:プラズマ化学気相溶着法)あるいはMCVD(Modified Chemical Vapor Deposition Method:内付け化学気相溶着法)を用いて、2種類のドーパントを同時に添加し、添加濃度を正確に制御し、所望の屈折率プロファイルを有する母材を作製する。その母材に高温を加え、細長く線引きすることにより、GIマルチモードファイバを作製する。
【0031】
以下、実験例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実験例に限定されるものではない。
【0032】
(実験例1)
ゲルマニウムを含む石英系ガラスからなるコアと、このコアの周囲にコアと同心円状に設けられた石英系ガラスからなるクラッドとを有する、Δ=0.01、a=25μmのGIマルチモードファイバを作製した。
また、フッ素を含む石英系ガラスからなるコアと、このコアの周囲にコアと同心円状に設けられた石英系ガラスからなるクラッドとを有する、Δ=0.01、a=25μmのGIマルチモードファイバを作製した。
それぞれのGIマルチモードファイバについて、使用波長において伝送帯域幅を最大とするためにWKB法を用いて最適化されたGIマルチモードファイバの屈折率プロファイルを表す上記の式(1)における屈折率分布次数αの最適値αoptの波長依存性を調べた。結果を図1に示す。
【0033】
図1の結果から、コアにゲルマニウムを含むGIマルチモードファイバでは、最適値αoptは波長が長くなるに伴って単調減少することが確認された。一方、コアにフッ素を含むGIマルチモードファイバでは、最適値αoptは波長1.1μm付近で極小となるが、波長が長くなるに伴って概ね単調増加することが確認された。
この結果から、コアにゲルマニウムを含むGIマルチモードファイバは、波長0.85μm付近の短波長領域において最適化した場合、波長1.30μmの長波長領域では大きな伝送帯域幅が得られないことが分かった。
【0034】
(実験例2)
ゲルマニウムをおよびフッ素を含む石英系ガラスからなるコアと、このコアの周囲にコアと同心円状に設けられた純粋石英ガラスからなるクラッドとを有するGIマルチモードファイバを作製した。
また、このGIマルチモードファイバのクラッドに対するコア中心の比屈折率差Δを0.01、コア半径aを25μmとした。なお、Δ=ΔGe(ゲルマニウムのクラッドに対する比屈折率差)+ΔF(ゲルマニウムのクラッドに対する比屈折率差)とし、ΔGeとΔFとの比率を変化させた。
波長0.81〜0.89μmにおける入射光のパルス半値全幅(FWHM)を1ns、RMSスペクトルを0.5nm、入射光FWHMビームサイズを70μmとし、波長1.30μmにおける入射光のパルス半値全幅(FWHM)を1ns、RMSスペクトルを3nm、入射光FWHMビームサイズを70μmとして、GIマルチモードファイバの伝送帯域幅と、使用波長において伝送帯域幅を最大とするためにWKB法を用いて最適化されたGIマルチモードファイバの屈折率プロファイルを表す上記の式(1)における屈折率分布次数αの最適値αoptとの関係を調べた。結果を図2に示す。
【0035】
図2の結果から、ΔGeとΔFとの比率、すなわち、ゲルマニウムとフッ素との添加量の比率を変えることにより、最適値αoptの波長特性が変化し、GIマルチモードファイバの波長特性を改善できることが確認された。特に、ΔGe=0.002、ΔF=0.008とした場合、最適値αoptがほぼ平坦になっていることが確認された。
【0036】
また、ΔGe=0.002、ΔF=0.008とした場合について、このGIマルチモードファイバを構成するコアのクラッドに対する非屈折率差Δを調べた。結果を図3に示す。
図3の結果から、このGIマルチモードファイバの非屈折率差Δは、コア中心において最大(0.01)となり、コアとクラッドとの境界において零となることが確認された。
【0037】
さらに、ΔGe=0.002、ΔF=0.008とした場合について、コアにおけるゲルマニウムの濃度分布CGe(r)と、フッ素の濃度分布CF(r)を調べた。結果を図4に示す。
図4の結果から、CGe(r)は、コアとクラッドとの境界に向かってコアの中心からの距離の増加に従って単調減少し、コアとクラッドとの境界において零となっていることが確認された。一方、CF(r)は、コアの中心において零となり、コアとクラッドとの境界に向かってコアの中心からの距離の増加に従って単調増加していることが確認された。
【0038】
(実験例3)
ゲルマニウムをおよびフッ素を含む石英系ガラスからなるコアと、このコアの周囲にコアと同心円状に設けられた純粋石英ガラスからなるクラッドとを有するGIマルチモードファイバを作製した。
また、このGIマルチモードファイバのクラッドに対するコア中心の比屈折率差Δを0.01、コア半径aを25μmとした。なお、Δ=ΔGe+ΔFとし、ΔGeとΔFとの比率を変化させた。
さらに、このGIマルチモードファイバを波長0.85μmにおいて最適化し、使用波長において伝送帯域幅を最大とするためにWKB法を用いて最適化されたGIマルチモードファイバの屈折率プロファイルを表す上記の式(1)における屈折率分布次数αの最適値αoptを決定した。
得られたGIマルチモードファイバの伝送帯域幅の波長依存性を調べた。結果を図5に示す。
【0039】
図5の結果から、ΔGe=0.002、ΔF=0.008とした場合、コアにゲルマニウム単体あるいはフッ素単体を添加した場合よりも広波長領域において非常に大きな伝送帯域幅が得られ、波長0.8〜1.3μmにおいて、伝送帯域幅が3GHz・kmを超えることが確認された。
【0040】
(実験例4)
ゲルマニウムをおよびフッ素を含む石英系ガラスからなるコアと、このコアの周囲にコアと同心円状に設けられた純粋石英ガラスからなるクラッドとを有するGIマルチモードファイバを作製した。
また、このGIマルチモードファイバのクラッドに対するコア中心の比屈折率差Δを0.01、コア半径aを25μmとした。なお、Δ=ΔGe+ΔFとし、ΔGeとΔFとの比率を変化させた。
さらに、このGIマルチモードファイバを波長1.30μmにおいて最適化し、使用波長において伝送帯域幅を最大とするためにWKB法を用いて最適化されたGIマルチモードファイバの屈折率プロファイルを表す上記の式(1)における屈折率分布次数αの最適値αoptを決定した。
得られたGIマルチモードファイバの伝送帯域幅の波長依存性を調べた。結果を図6に示す。
【0041】
図6の結果から、ΔGe=0.002、ΔF=0.008とした場合、コアにゲルマニウム単体あるいはフッ素単体を添加した場合よりも広波長領域において非常に大きな伝送帯域幅が得られ、波長0.8〜1.3μmにおいて、伝送帯域幅が3GHz・kmを超えることが確認された。
【0042】
(実験例5)
ゲルマニウムをおよびフッ素を含む石英系ガラスからなるコアと、このコアの周囲にコアと同心円状に設けられた純粋石英ガラスからなるクラッドとを有するGIマルチモードファイバを作製した。
また、このGIマルチモードファイバのクラッドに対するコア中心の比屈折率差Δを0.02、コア半径aを32.5μmとした。なお、Δ=ΔGe+ΔFとし、ΔGeとΔFとの比率を変化させた。
波長0.81〜0.89μmにおける入射光のパルス半値全幅(FWHM)を1ns、RMSスペクトルを0.5nm、入射光FWHMビームサイズを70μmとし、波長1.30μmにおける入射光のパルス半値全幅(FWHM)を1ns、RMSスペクトルを3nm、入射光FWHMビームサイズを70μmとして、GIマルチモードファイバの伝送帯域幅と、使用波長において伝送帯域幅を最大とするためにWKB法を用いて最適化されたGIマルチモードファイバの屈折率プロファイルを表す上記の式(1)における屈折率分布次数αの最適値αoptとの関係を調べた。結果を図7に示す。
【0043】
図7の結果から、ΔGeとΔFとの比率、すなわち、ゲルマニウムとフッ素との添加量の比率を変えることにより、最適値αoptの波長特性が変化し、GIマルチモードファイバの波長特性を改善できることが確認された。特に、ΔGe=0.004、ΔF=0.016とした場合、最適値αoptがほぼ平坦になっていることが確認された。
【0044】
(実験例6)
ゲルマニウムをおよびフッ素を含む石英系ガラスからなるコアと、このコアの周囲にコアと同心円状に設けられた純粋石英ガラスからなるクラッドとを有するGIマルチモードファイバを作製した。
また、このGIマルチモードファイバのクラッドに対するコア中心の比屈折率差Δを0.02、コア半径aを32.5μmとした。なお、Δ=ΔGe+ΔFとし、ΔGeとΔFとの比率を変化させた。
さらに、このGIマルチモードファイバを波長0.85μmにおいて最適化し、使用波長において伝送帯域幅を最大とするためにWKB法を用いて最適化されたGIマルチモードファイバの屈折率プロファイルを表す上記の式(1)における屈折率分布次数αの最適値αoptを決定した。
得られたGIマルチモードファイバの伝送帯域幅の波長依存性を調べた。結果を図8に示す。
【0045】
図8の結果から、ΔGe=0.004、ΔF=0.016とした場合、コアにゲルマニウム単体あるいはフッ素単体を添加した場合よりも広波長領域において非常に大きな伝送帯域幅が得られ、波長0.8〜1.4μmにおいて、伝送帯域幅が2GHz・kmを超えることが確認された。
【0046】
(実験例7)
ゲルマニウムをおよびフッ素を含む石英系ガラスからなるコアと、このコアの周囲にコアと同心円状に設けられた純粋石英ガラスからなるクラッドとを有するGIマルチモードファイバを作製した。
また、このGIマルチモードファイバのクラッドに対するコア中心の比屈折率差Δを0.02、コア半径aを32.5μmとした。なお、Δ=ΔGe+ΔFとし、ΔGeとΔFとの比率を変化させた。
さらに、このGIマルチモードファイバを波長1.30μmにおいて最適化し、使用波長において伝送帯域幅を最大とするためにWKB法を用いて最適化されたGIマルチモードファイバの屈折率プロファイルを表す上記の式(1)における屈折率分布次数αの最適値αoptを決定した。
得られたGIマルチモードファイバの伝送帯域幅の波長依存性を調べた。結果を図9に示す。
【0047】
図9の結果から、ΔGe=0.004、ΔF=0.016とした場合、コアにゲルマニウム単体あるいはフッ素単体を添加した場合よりも広波長領域において非常に大きな伝送帯域幅が得られ、波長0.8〜1.4μmにおいて、伝送帯域幅が2GHz・kmを超えることが確認された。
【0048】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のGIマルチモードファイバは、コアに使用波長領域において伝送帯域幅を最大とするためにWKB法を用いて最適化された以下の式(1)における屈折率分布次数αの最適値が波長が長くなるに伴って概ね単調減少する物質と、前記最適値が波長が長くなるに伴って概ね単調増加する少なくとも1種の物質とを含むものであるから、広波長領域において伝送帯域幅が大きくなり、波長分割多重に適した光ファイバとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のGIマルチモードファイバに関し、使用波長において伝送帯域幅を最大とするためにWKB法を用いて最適化されたGIマルチモードファイバの屈折率プロファイルを表す上記の式(1)における屈折率分布次数αの最適値αoptと波長との関係を示すグラフである。
【図2】 本発明のGIマルチモードファイバに関し、使用波長において伝送帯域幅を最大とするためにWKB法を用いて最適化されたGIマルチモードファイバの屈折率プロファイルを表す上記の式(1)における屈折率分布次数αの最適値αoptと波長との関係を示すグラフである。
【図3】 本発明のGIマルチモードファイバを構成するコアのクラッドに対する非屈折率差Δを示すグラフである。
【図4】 本発明のGIマルチモードファイバを構成するコアにおけるゲルマニウムまたはフッ素の濃度分布を示すグラフである。
【図5】 本発明のGIマルチモードファイバの伝送帯域幅と波長との関係を示すグラフである。
【図6】 本発明のGIマルチモードファイバの伝送帯域幅と波長との関係を示すグラフである。
【図7】 本発明のGIマルチモードファイバに関し、使用波長において伝送帯域幅を最大とするためにWKB法を用いて最適化されたGIマルチモードファイバの屈折率プロファイルを表す上記の式(1)における屈折率分布次数αの最適値αoptと波長との関係を示すグラフである。
【図8】 本発明のGIマルチモードファイバの伝送帯域幅と波長との関係を示すグラフである。
【図9】 本発明のGIマルチモードファイバの伝送帯域幅と波長との関係を示すグラフである。
Claims (2)
- 石英系ガラスからなるコアと、該コアの外周に設けられたクラッドとを備え、以下の式(1)を満足する屈折率プロファイルを有するグレーテッドインデックス型マルチモードファイバであって、
前記コアは、使用波長領域において伝送帯域幅を最大とするためにWKB法を用いて最適化された以下の式(1)における屈折率分布次数αの最適値が波長が長くなるに伴って概ね単調減少する物質Aと、前記最適値が波長が長くなるに伴って概ね単調増加する少なくとも1種の物質Bとを含み、前記物質Aはゲルマニウム、前記物質Bはフッ素であり、前記コアにおける前記物質Aの濃度分布は、コアとクラッドとの境界に向かってコアの中心からの距離の増加に従って単調減少し、コアとクラッドとの境界において零となるようになっており、前記コアにおける前記物質Bの濃度分布は、コアの中心において零となり、コアとクラッドとの境界に向かってコアの中心からの距離の増加に従って単調増加するようになっていることを特徴とするグレーテッドインデックス型マルチモードファイバ。
- 石英系ガラスからなるコアと、該コアの外周に設けられたクラッドとを備え、以下の式(1)を満足する屈折率プロファイルを有するグレーテッドインデックス型マルチモードファイバの製造方法において、
前記コアに、使用波長領域において伝送帯域幅を最大とするためにWKB法を用いて最適化された以下の式(1)における屈折率分布次数αの最適値が波長が長くなるに伴って概ね単調減少する物質Aと、前記最適値が波長が長くなるに伴って概ね単調増加する少なくとも1種の物質Bとを添加し、前記物質Aはゲルマニウム、前記物質Bはフッ素であり前記コアにおける前記物質Aの濃度分布を、コアとクラッドとの境界に向かってコアの中心からの距離の増加に従って単調減少し、コアとクラッドとの境界において零となるようにするとともに、前記コアにおける前記物質Bの濃度分布を、コアの中心において零となり、コアとクラッドとの境界に向かってコアの中心からの距離の増加に従って単調増加するようにして、前記最適値の波長変化に伴う変化が少ないようにすることを特徴とするグレーテッドインデックス型マルチモードファイバの製造方法。
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