JP4141652B2 - 相変化光記録媒体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、銀を主成分とする反射放熱層を有する相変化光記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、記録・消去が何度でも可能な書き換え型光ディスクとして、可逆的な結晶状態の変化を利用した相変化光記録媒体が開発されている。このような相変化光記録媒体は、基板と、この基板上に設けられた記録層とから構成され、この記録層は誘電体保護層により挟まれており、その一面には反射放熱層が設けられている。このような相変化光記録媒体はレーザー光のパワーを変化させるだけで、記録・消去が可能であるという利点を有する。
【0003】
このような相変化記録方式では、記録膜を非晶質化させることによって記録ビットを形成し、結晶化させることによって消去を行う場合が一般的である。
【0004】
ここで、初期化(消去、結晶化)は、レーザー光を照射して、記録層の結晶化温度より高く融点よりは低い温度で加熱し、ついで結晶化が十分なされる程度に遅い速度で冷却することにより行われる。
【0005】
この誘電体保護層を構成する材料は、レーザー光に対して光学的に透明であること、融点・軟化点・分解温度が高いこと、形成が容易であること等の観点から選定されている。十分な耐熱性及び機械的強度を有する誘電体保護層としては、まず、金属の酸化物や窒化物等の誘電体薄膜が一般に用いられている。
【0006】
これらの誘電体保護層とプラスチック基板とは熱膨張率や弾性的性質が大きく異なるため、記録・消去を繰り返すうちに、基板から誘電体保護層が剥がれてピンホールやクラックを生じる原因となる。また、プラスチック基板は、湿度によって反りを生じやすいが、これによっても誘電体保護層の剥がれが生じることがある。それ故、この観点も踏まえた誘電体保護層を形成する材料の選定についても種々研究され、近年、ZnSを主成分とし、SiO2やY2O3等を混入させた誘電体保護層が提案され、この誘電体保護層は更に種々の改良が施されている(例えば、特開平8−180458号公報)。このような誘電体保護層はGeTeSb等のカルコゲナイド系合金薄膜からなる記録層との密着性に優れているという利点を備えている。
【0007】
一方、非晶質化(記録)は、レーザー光を照射して記録層を融点よりも高い温度まで加熱し、その記録層を急冷することによって記録ビットを形成することにより行われる。このため、記録層に隣接されて放熱層が設けられ、この放熱層は反射層と兼用されて一般には反射放熱層として設けられている。
【0008】
ここで、一般に光記録媒体の反射層としては金またはアルミニウム合金が古くから広く用いられ、近年、銀合金も用いられつつある。
【0009】
金は化学的に安定で反射率も高く、熱伝導率も高いためCD-Recordable(CD-R)などに用いられているが、高価であるという欠点を備えている。これに対して、アルミニウム合金は安価で比較的高い反射率を有することからCD(copact disc)、DVD(digital veratile disc)をはじめ、光磁気(MO:magneto-optical)ディスクやCD-Rewritable(CD-RW)などの記録系の光記録媒体にも広く用いられている。
【0010】
銀は金と同等の反射率を備え、金よりも高い熱伝導率を有するために再生専用型、記録型を問わず、銀反射層を用いた光記録媒体では優れた初期特性を得ることができ、あらゆるタイプの光記録媒体に有用と考えられ、また金に比べれば安価であるという利点を備えている。さらに、銀はスパッタリングでの成膜速度がアルミニウムの約3倍早く高速で成膜できるという利点も備えている。
【0011】
しかしながら、銀は化学的安定性に劣り、隣接する層からの各種の物質の影響や環境から取り込まれる水分などの影響で特性が変化し、経時的劣化により反射率が低下して再生できなくなったり、再生時のエラー発生が多くなり、光記録媒体の信頼性が落ちる。これを解決するために光記録媒体に銀を用いる場合には、パラジウム(Pd)やロジウム等の添加物が添加された銀合金として用いるのが一般的である。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、銀にパラジウムやロジウム等を添加すれば化学的安定性は改善するが、これらの添加物は高価であるという最大の欠点を備えている。
【0013】
そこで、この発明は、このような従来の問題点に鑑み、廉価に構成できる銀を主体にした反射放熱層を備えた相変化光記録媒体を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者等の研究によれば、記録層を構成する材料、及びその記録層を覆う誘電体保護層を構成する材料を適切に選択することにより、反射放熱層の材料として廉価な銀を主体とした材料を用いた場合にも、光記録材料としての信頼性の高い相変化光記録媒体が提供できることを見出した。
【0015】
すなわち、請求項1記載の発明は、記録層の少なくとも一方の層面に誘電体保護層を介して設けられた反射放熱層を有する光記録媒体において、前記記録層がSb3Te準安定相を有する相変化記録材料であり、前記誘電体保護層がCrO 2 、Nb 2 O 5 、Y 2 O 3 、MgO及びCaOから選択された材料を含むZrO2を主成分とした材料であり、前記反射放熱層がAg主成分とした材料であることを特徴とする相変化光記録媒体である。
【0016】
このように構成すれば、Sb3Te準安定相を有する相変化記録材料から形成される記録層と反射放熱層との間に介在される誘電体保護層を構成する材料が化学的に安定でかつ低熱伝導率であるZrO2を主成分とし、特定の添加物が添加された材料が選択されたので、反射放熱層としてAg主成分とした材料から相変化光記録媒体が形成でき、相変化光記録媒体を廉価に提供できるようになった。
【0017】
請求項2記載の発明は、前記ZrO2を主成分とした材料が安定化ジルコニアであることを特徴とする請求項1記載の相変化光記録媒体である。
【0018】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の相変化光記録媒体におけるZrO2を主成分とした材料の中で安定性に優れた最適材料が選択された。
【0019】
請求項3記載の発明は、前記ZrO2を主成分とした材料が、(ZrO2)100-x(CrO2)x(式中、添え字xは0<x≦50を満たすモル%で示された組成比を表す。)、(ZrO2)100-x(Nb2O5)x(式中、添え字xは0<x≦30を満たすモル%で示された組成比を表す。)、(ZrO2)100-x(MgO)x、(ZrO2)100-x(CaO)x 、及び(ZrO2)100-x(Y2O3)x(前記式中、添え字xは0<x≦20を満たすモル%で示された組成比を表す。)から選択されることを特徴とする請求項1記載の相変化光記録媒体である。
【0020】
誘電体保護層を構成する材料としてのZrO2はZrO2単体よりもNb2O5,Y2O3,MgO、CaOから選択された添加物を混合させることが好ましい。これらの特定の添加物をZrO2に混合することにより、硫黄を含有させなくてもZrO2の熱伝導率を低下されることができる。
一方、これらの添加物の混合量が大きくなることは、誘電体保護層を主成分とするという本願発明とは異なるのみならず、たとえば、誘電体保護層の光の吸収が大きくなりすぎてディスクの反射率を低下させる場合がある。
これにより、請求項3記載の発明によれば、請求項1記載の相変化光記録媒体におけるZrO2を主成分とした材料の中で最適材料の具体的組成が選択された。
【0021】
請求項4記載の発明は、前記反射放熱層がAg-Cu合金であって、Cuの含有率が0.1≦Cu/Ag≦10(式中、Cu/Agはモル比を表す。)であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の相変化光記録媒体である。
【0022】
このように構成すれば、請求項1〜3記載の作用効果に加え、反射放熱層の安定性及び熱伝導率が増大するので、ある時間の断熱とその直後のAg-Cu合金だけに実現できる急冷効果を組み合わせることで極めて良好なジッターと、信頼性の高い繰り返し書き換え性を備えた相変化光記録媒体が提供される。
【0023】
請求項5記載の発明は、前記記録層は、ZrO2を主成分とした材料から形成される誘電体保護層により両面から挟まれることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の相変化光記録媒体である。
【0024】
このように構成することにより、相変化光記録媒体の高感度化が期待される。特に、請求項5記載の相変化光記録媒体の発明を請求項3記載の相変化光記録媒体の発明に組み合わせた構成では、Sb3Te準安定相を有する相変化記録材料から形成される記録層が低熱伝導率である誘電体保護層により挟まれることになり、これにより一層高感度化が図れた相変化光記録媒体が提供される。
【0025】
【発明の実施の形態】
本発明においては、記録層はSb3Te準安定相を有する相変化記録材料が選択された。この相変化記録材料は、DVD−RAMやDVD−ROM以上の高密度記録が可能で、かつ、繰り返し記録回数が優れた材料として知られている(例えば、特開2000−43415号公報)。また、その公報によれば、このような相変化記録材料は、空間群Fm3mに属する準安定Sb3Te相を有する材料と説明され、その格子定数は約0.62nmである。また、その公報によれば、このような準安定相は溶融後の急冷などにより生成し、Sb-Te共晶構造の記録層と異なり、SbとSb2Te3とに相分離せず、結晶粒界に起因する記録マークの乱れが生じずに高密度記録に適する結晶相となることが説明されている。
【0026】
このような相変化記録材料では、記録時の非晶質化、消去時の結晶化は共に一旦溶融モードに入ることになり、記録及び消去のいずれの場合も記録膜が一旦熔けやすくなる。このため、Sb3Te準安定相を形成する記録時には、記録層では熱を溜められること、また、その後記録層を急冷できることが求められる。
【0027】
このことから、本発明における誘電体保護層はある一定時間熱を遮断することができ、かつ、その後、この誘電体保護層があっても急冷ができることが必要となる。それ故、この誘電体保護層は適度に低熱伝導率であることが必要であると考えた。
【0028】
そこで従来一般に用いられているZnS-SiO2と同様な低熱伝導率を持つ材料を探索した。ここで、誘電体保護層を形成するような薄膜の熱伝導率の測定は一般には困難であるが、膜厚を一定に固定し誘電体保護層を形成する材料の種類を変えた場合の記録感度を調べることにより定性的に熱伝導率の序列を付けることを試みた。
【0029】
その結果、例えば、SiNxやSiO2などの材料は熱伝導率が大きく、本発明には適切でなかったが、ZrO2(酸化ジルコニウム)を主成分とした材料はZnS−SiO2に比べて熱伝導率が低く、本発明で用いるSb3Te準安定相を有する相変化記録材料を記録層とした相変化光記録媒体における誘電体保護層を構成する材料として適切であることが確認された。
【0030】
このようなZrO2を主成分とした材料を用いた場合、記録時に熱が拡散しすぎないためか低いジッターでマークを書き込めることが確認された。また、隣接トラックへの熱のにじみが少ないためか、クロスライトが生じにくいという長所も認めた。
【0031】
さらに、酸化ジルコニウム系の材料は化学的に極めて安定であり、書き換えの熱で硫黄が乖離するような現象や、相変化光記録媒体を作成後、環境中から取り込まれる水分で潮解性をもつことも無く、したがって繰り返し書き換え性、保存信頼性ともに向上させられる。
【0032】
また、ZrO2にNb2O5,Y2O3,MgO、CaOを混合したものはZrO2単体よりも熱伝導率が低下し、ZrO2−CrO2と同等の低熱伝導率を示し、本発明に用いる誘電体保護層を形成する材料として一層適切であることが確認された。
【0033】
また、このようなZrO2を主成分とした誘電体保護層を選択した場合、この誘電体保護層を構成する材料中に硫黄を含有させる必要がないので、反射放熱層を形成する材料として銀を主体としても、必ずしもパラジウムなどの貴金属を含有させなくてもよいことが確認された。
【0034】
換言すれば、本発明によれば、誘電体保護層として一般的に広く使用されているZnS−SiO2を用いなくても、繰り返し記録の優れた相変化光記録媒体が得られた。この相変化光記録媒体によれば、誘電体保護層に硫黄を含むZnS−SiO2を用いなくてもよいので、銀を主体とする反射放熱層が硫化劣化されることがない。これにより、反射放熱層の化学的安定性を向上することができた。
【0035】
また、本発明者等によれば、銀の高反射率、高熱伝導率、高速成膜などの特質を保ち、かつ化学的安定性を改善する安価な合金系として銀−銅合金が、銀の耐食性を向上させるが、合金化による熱伝導率の低下をきたさないという、本発明の相変化光記録媒体の反射放熱層を構成する材料として最適であることが見出された。
【0036】
すなわち、Cuの添加により銀の耐蝕性は向上されるが、合金化による熱伝導率の低下は抑制できる。この耐蝕性向上作用はPdやRhに比べて少ないが、このような反射放熱層はZrO2を主成分とした材料から形成される誘電体保護層を介して高熱となる記録層と接することになり、この記録層には硫黄を含まなくてもよい。これにより、Sb3Te準安定相を有する相変化記録材料を記録層とする相変化光記録媒体では銀-銅合金を材料として選択することにより反射放熱層としての耐食性には十分となる。これにより、このような構成によれば、反射層の耐蝕性と良好な記録特性、繰り返し書き換えの信頼性がすべて同時に向上する。
【0037】
また、このような、銀−銅合金は、アルミニウム合金より反射率が高く、高速成膜でき、かつ 金や銀−パラジウム合金、銀−ロジウム合金よりも安価である。
【0038】
ここで誘電体保護層は極力熱を遮断することで、記録層が充分溶融した後に急冷すると、マークエッジの揺らぎが小さくできる。また 冷却速度を大きくするためにあまり最高温度を高くしなくてもよいため、書き換えでの熱ダメージが減り、書き換え回数が向上する。
【0039】
つぎに、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0040】
図1は本発明の相変化光記録媒体の実施形態の一例である、相変化光記録媒体10の構造を示す断面図である。
【0041】
この相変化光記録媒体10では、基板1の上に、下部誘電体保護層2(第1下部誘電体保護層21、第2下部誘電体保護層22)、相変化型記録層3、上部誘電体保護層4、反射放熱層5、樹脂保護層6、貼り合わせよう基板7が積層されている。
【0042】
ここで、本発明において、記録層と反射放熱層との間に介在される誘電体保護層は上述の図1では上部誘電体保護層4に相当する。ここで、誘電体保護層を上部と下部とに分けたのは、便宜的であり上下関係を説明するものではない。本発明の本質は、相変化型記録層3としてSb3Te準安定相を有する相変化記録材料が選択され、上部誘電体保護層4として低熱伝導率と化学的安定性にすぐれた酸化ジルコニウム系が選択され、反射放熱層5として高熱伝導率と化学的安定性の良好なAg主成分とした材料を選択したことにある。それ故、成膜の順序が逆になる表面記録型の相変化光記録媒体であっても、本発明の本質は全く同様に適用できる。
【0043】
また、本発明の相変化光記録媒体は、以下の実施例又はDVD系の相変化光記録媒体に見られるように、貼り合わせ用基板7に代えて樹脂保護層6等を介して同一又は異なる光記録媒体が互いに2枚貼り合わされた構造であってもよい。
【0044】
下部誘電体保護層2、相変化型記録層3、上部誘電体保護4、反射放熱層5は一般的にスパッタリング法で真空中で連続成膜される。成膜方法はイオンプレーティング、真空蒸着なども考えられるが、コスト、成膜の制御性の良さなどからマグネトロンスパッタリング法での作成が一般的である。
【0045】
基板1は、記録再生用の光が透過する透明な物質であり、一般的にはポリカーボネート樹脂やガラスが用いられる。基板1の厚みは限定されないが、例えばCD系では1.2mm、DVD系では0.6mmである。特殊な相変化光記録媒体ではこれに限らない。また基板1にはアドレス情報を記録したり、トラッキングサーボのために、凹凸のピットやグルーブが形成されていてもよい。
【0046】
下部誘電体保護層2は、通常スパッタリング法で形成され、光学的に透明で記録膜を水分やガスから遮断する能力が求められる。相変化光記録媒体の場合はZnS-SiO2やTaOxが一般的であり、本発明においては、この下部誘電体保護層2は通常の材料を用いることができる。
【0047】
この下部誘電体保護層2の膜厚も特には限定されずに、40nm〜250nmの範囲が一般的である。CD系では40nm〜90nmの範囲、DVD系では50nm〜100nmの範囲が一般的である。光学的な光閉じ込めと、基板への熱遮断および相変化型記録層へのガスや水分の遮断の3要素から膜厚は決定される。したがって記録再生の光波長が変わればこの膜厚は変動する。
【0048】
このような下部誘電体保護層2としては、一般的にはZnS−SiO2単層で構成されるが、2層以上の複層であってもよい。
【0049】
この下部誘電体保護層2では、相変化型記録層3に一旦熱をためる必要性があるので、可能ならば相変化型記録層3に隣接する位置に10nm程度の薄い層でよいので酸化ジルコニウム系のバリヤ層がある方が好ましい。この図1では、一例として下部誘電体保護層2を第1下部誘電体保護層21及び第2下部誘電体保護層22の2層構造の例が示され、この第2下部誘電体保護層22はこのバリア層に該当する。この酸化ジルコニウム系のバリア層としての好ましい例示は、上述の誘電体保護層(又は以下に説明される上部誘電体保護層4)に用いられる材料が例示される。
【0050】
相変化型記録層3は記録時の熱によって光学定数が変化して記録マークを形成する物質で前述のように溶融消去型相変化材料のうち、融点が低く、記録感度の良いSb3Te準安定相ベースの材料を用いる。代表的なものはCD-RWなどに実用化されている、AgInSbTeであり、その他、GeInSbTe,GeGaSbTe,GeBiInSbTeなどがある。これらのカルコゲナイド化合物の場合は、結晶と非晶質状態で記録、未記録の違いを作り、再生可能とされる。
【0051】
この相変化型記録層3の膜厚は一般的には5nm〜100nm程度の範囲を用いるが、10nm〜30nm程度の範囲であるのが好ましい。膜厚が100nmよりも厚いと、記録時の熱干渉が大きくなり、小さなマークの大きさのばらつきが大きくなって、信号の時間軸揺らぎが大きくなり、結果としてエラー率が大きくなる場合がある。
【0052】
また、10nm程度より薄いと、再生光での弱い熱でも記録マークが熱揺らぎを引き起こして消去され易くなる場合がある。
【0053】
上部誘電体保護層4は、主に化学的安定性と熱遮断のために上述した誘電体保護層に用いられる酸化ジルコニウム系の材料が選択される。この上部誘電体保護層4の膜厚は、熱遮断するため10nm〜100nm程度の範囲である。記録時の熱を相変化型記録層3から速やかに反射放熱層5へ流すためはこの膜厚を10nm〜30nm付近の厚さにするのが好ましい。
【0054】
青色光を用い、かつ対物レンズの開口数(NA)が0.8以上になるような、極めて光が絞られているピックアップを備えたドライブにより書き込みが行われる光記録装置の場合は上部誘電体保護層4の膜厚はさらに薄く、5nm〜10nmの範囲でよい。
【0055】
記録密度や繰り返し書き換えをあまり重視しない場合は、この上部誘電体保護層4を厚くしてもよい。これにより記録感度が良くなる。また、記録マークと消去部の反射率がほぼ同等で位相差が大きく、消し残りの生じにくい位相差再生メディアを作ることができる。
【0056】
反射放熱層5は、主に高熱伝導率と化学的安定性の観点から、上述したように銀を主体とする材料から選択され、好ましくは銅を0.5at%〜10at%の範囲で含有した銀−銅合金である。この反射放熱層5は、通常スパッタリング法で形成することができる。
【0057】
この反射放熱層5の膜厚は反射率の面では50nm程度あれば十分であるが、放熱の面からはこれより厚い方が良く、80nm〜250nm程度の範囲が一般的である。あまり厚すぎるのは生産上、タクトが長くなり好ましくない。
【0058】
反射率、放熱の面からは純銀が最良であるが、銅は銀の次に熱伝導率の大きな材料であり、銀に加えてもあまり熱伝導率が下がらない。銀の耐蝕性を向上するためにはアルミニウム(Al)やインジウム(In)などのように、他に耐食性を向上させる効果のある材料は多い。しかし、反射放熱層5の熱伝導率が相変化光記録媒体の繰り返し書き換え回数と密接に関係しており、熱伝導率が小さくなると、正比例して繰り返し書き換え回数も小さくなっていくことが本発明者等の研究により判明した。
【0059】
この傾向は相変化型記録層3に本発明に類似のSb及びTeを含む相変化記録材料であっても、例えば、化合物組成のGe2Sb2Te5組成の材料を用いた相変化光記録媒体では顕著ではなく、Sb3Teをベースとした記録層を用いた相変化光記録媒体に固有の現象である。これは、このGe2Sb2Te5をベースとする化合物組成の場合、消去するための結晶化過程は固相で行われるため、平均記録温度がやや低くなるためと考えられる。
【0060】
また、本発明者らの研究によれば、AlやIn、Sbなどのように銀の耐蝕性向上の効果が期待される添加元素は、僅か数%の添加で銀の熱伝導率を低くしてしまうことが判明した。
【0061】
これに対し、Cuを添加したAg-Cu合金では、銅の添加量を多くしても、ほとんど熱伝導率が下がらないことが確認された。従来の追記型CDである、CD-Rなどでも反射率などに着目してAgに対する、PdやCuの添加が検討されているが、熱伝導率の詳細な挙動に注目し、極力大きい熱伝導率である耐蝕性合金として考えられたものは皆無であった。
【0062】
銅の添加量は耐蝕性の面から 多すぎると逆に耐蝕性が劣化する。0.1at%〜10at%程度の範囲がよく、特に0.5at%〜3at%程度の範囲が最適量である。
【0063】
樹脂保護層6はCD系のような単板メディアでは、成膜された膜を保護するために設けられている。DVD系では保護のためと、2枚貼り合せるための接着層としての働きを兼ねている。一般的に有機系の紫外線硬化型樹脂などが用いられる。厚さは1μm〜100μm程度が一般的であり、スピンコート法で塗布される。スプレー式、ロールコート式でも差し支えない。樹脂フィルムをロールで貼ることもある。
【0064】
この相変化光記録媒体では基板1側から記録用の光を照射して、相変化型記録層3を相変化させて、光学定数を変えて情報信号を記録する。そして記録時より弱い再生光をあて、記録層の光学定数変化を光の反射率変化として再生する。
【0065】
反射放熱層5の成膜時間はアルミニウム合金を同じ厚さ成膜するのに比べ 約1/3でよい。これは光記録媒体の製造上のタクトタイム短縮に大きく効果的であり、コスト低減につながる。
【0066】
さらに本発明の銀−銅合金を用いた相変化光記録媒体は純銀反射放熱層を備えた相変化光記録媒体に比べて銀の耐腐食性が良いために信頼性と耐久性が改善している。高温高質下での保存試験を行ったときのエラー率の増加が抑えられる。
【0067】
【実施例】
以下、実施例により本発明の効果を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例の構成に限定されるものではない。
【0068】
酸化ジルコニウムに対して混合する材料のうち、Y2O3,MgO,CaOはいわゆる安定化ジルコニアにするための材料であって、組成比はそれらに倣って作成した。組成範囲もこの知見から導くものである。
【0069】
なお、以下の実施例では断りのない限り以下の方法にて相変化光記録媒体を試作し、その特性を評価した。
[相変化光記録媒体の試作]
直径120mm、板厚0.6mm、ピッチ0.74μmの螺旋状のグルーブが形成された ポリカーボネート基板1を用い、相変化光記録媒体を、下部誘電体保護層2、記録層3、上部誘電体保護層4及び反射放熱層5の膜組成等を種々変更して試作した。
【0070】
成膜はすべてアネルバ製インラインスパッタリング装置ILC−3105を用いてスパッタリング法で行った。ガス圧力は2ミリTorrである。反射放熱層の組成はあらかじめこの組成で作成した合金ターゲットを用いた。
【0071】
スパッタの後、紫外線硬化樹脂(大日本インキ社製SD301)をスピンコートし、紫外線で硬化させて樹脂保護層6を形成した。
[特性評価]
660nm、NA0.65の光ピックアップをもつドライブで記録再生した。記録線速度は3.5m/sであり、ランダムなデジタル信号をEFM変調し、0.267μm/bitの記録密度で記録した。なお、記録ピークパワーは12mW、消去パワーは6.8mW、ボトムパワーは0.1mW、再生パワーは0.7mWを用いた。また、記録パルスはDVD−RW規格で規定されているものを用いた。
[保存試験]
ディスクの半径30mmの位置に10トラック、1000回繰り返し書き換えを行った後、80℃85%RHの環境に500時間放置して再度ジッターを測定した。
実施例1
実施例1では以下の膜組成の相変化光記録媒体を試作した。
下部誘電体保護層:
第1下部誘電体保護層:ZnS-SiO2、膜厚65nm
第2下部誘電体保護層:(ZrO2)100-x(CrO2)x(添え字xはモル%であり、0,10,20,30,40又は50)、膜厚5nm
記録層:Ag3In5Sb60Te30Ge2(at%)、膜厚15nm
上部誘電体保護層:(ZrO2)100-x(CrO2)x(添え字xは上記の第2下部誘電体保護層に同じ)、膜厚15nm
反射放熱層:Ag-2at%Cu合金、膜厚150nm
なお、誘電体保護層の形成は、ZrO2-CrO2をターゲットとして用いて、高周波でスパッタリングをして成膜した。
【0072】
以上の相変化光記録媒体の紫外線硬化樹脂からなる樹脂保護層の上面に膜のないクリヤ盤(貼り合わせ用基板7)を粘着シートにより貼り合せて評価ディスクとした。この紫外線硬化樹脂と貼り合せシートの合計厚さは約50μmであった。
【0073】
この評価ディスクをレーザー光で溶融結晶化させて、初期化して記録特性を評価した。
【0074】
記録パワーが12mW程度でよいためにはZnS-SiO2のみのときの13mW以上に比べ、感度が向上している。
【0075】
この評価ディスクの特性は良いものでは、初回記録後のジッター(σ/Tw)は6.5%であった。また1000回の繰り返し書き換え後のジッターは7.2%であり、10万回の繰り返し後のジッターも9%以下であって、極めて繰り返し書き換え性も良好であった。
【0076】
この評価ディスクの保存試験では、初期ジッターが7.2%であったのに対し、保存後の真ん中3トラックの平均ジッターは8%であって、劣化は小さかった。また、目視でこの保存試験後の評価ディスクをランプにかざしてピンホールの出来方を観察したが、ピンホールは発生していなかった。
【0077】
誘電体保護層の二酸化クロムの比率を増大すると、光の吸収が大きくなってディスクの反射率が低下した。したがって2酸化クロムを過大に含有させることは好ましくなく、xの値がモル%で10〜20程度の範囲で繰り返し書換性及び感度が良好であった。また、この範囲では反射率低下も充分に許容できる程度であった。
【0078】
また酸化ジルコニウム単体で使うよりは何かを混合する方が良い結果であった。これは異種の材料の混合で結晶性が悪くなり、非晶質様になっていくからと考えている。
実施例2
実施例2では、以下の膜組成の相変化光記録媒体を試作した。
下部誘電体保護層:
第1下部誘電体保護層:ZnS-Nb2O5(15wt%)、膜厚65nm
第2下部誘電体保護層:(ZrO2)80(Nb2O5)20(添え字はモル%)、膜厚5nm
記録層:Ge3In5Sb62Te30(添え字はat%)、膜厚15nm
上部誘電体保護層:(ZrO2)80(Nb2O5)20(添え字はモル%)、膜厚16nm
反射放熱層:Ag-2at%Cu合金、膜厚150nm
なお、誘電体保護層の形成は、(ZrO2)80(Nb2O5)20(添え字はモル%)をターゲットとして用いて、高周波でスパッタリングをして成膜した。
【0079】
以上の相変化光記録媒体をおなじプロセスで作成した別のディスクと記録面同士を粘着シートで貼り合せて評価ディスクとした。紫外線硬化樹脂と貼り合せシートの合計厚さは約50μmであった。
【0080】
この評価ディスクをレーザー光で溶融結晶化させて、初期化して記録特性を評価した。
【0081】
この評価ディスクの特性は初回記録後のジッター(σ/Tw)は6.9%であり、1000回の繰り返し書き換え後のジッターは7.8%であった。
【0082】
この評価ディスクの保存試験では、初期のジッターが7.8%に対し、真ん中3トラックの保存後のジッターは平均8.2%であって、劣化は小さかった。目視でこの保存試験後のディスクをランプにかざしてピンホールの出来方を観察したが、ピンホールは発生していなかった。
【0083】
誘電体保護層の酸化ジルコニウム中の酸化ニオブの比率を5モル%から35モル%まで10%ステップで振ると、酸化ニオブの含有量が多すぎると光の吸収が大きくなって評価ディスクの反射率が低下した。したがってあまりたくさん入れることはできず、酸化ニオブの含有量は5〜20モル%程度の範囲が繰り返し書き換え性が良く、感度が良く反射率低下も充分に許容できる程度であった。
実施例3
実施例3では、以下の膜組成の相変化光記録媒体を試作した。
下部誘電体保護層(単層):ZnS−SiO2(20at%)、膜厚75nm
記録層:Ag3In5Sb60Te30Ge2(at%)、膜厚15nm
上部誘電体保護層:(ZrO2)90(Y2O3)10(添え字はモル%)、膜厚15nm
反射放熱層:Ag−2at%Cu合金、膜厚150nm
以上の相変化光記録媒体を実施例2と同様に、おなじプロセスで作成した別のディスクと記録面同士を粘着シートで貼り合せて評価ディスクとした。紫外線硬化樹脂と貼り合せシートの合計厚さは約50μmであった。
【0084】
この評価ディスクをレーザー光で溶融結晶化させて、初期化して特性評価を行った。
【0085】
この評価ディスクの特性は初回記録後のジッター(σ/Tw)は7.0%であっり、1000回の繰り返し書き換え後は7.6%であった。
【0086】
また、この評価ディスクの保存試験では、初期のジッターが7.6%であるのに対し、真ん中3トラックの保存後のジッターは平均8.2%であって、劣化は小さかった。また、目視でこの保存試験後の評価ディスクをランプにかざしてピンホールのでき方を観察したが、ピンホールは発生していなかった。
【0087】
酸化ジルコニウムと酸化イットリウムの混合体はスパッタ率が特に低く、成膜性の点でイットリウム系があまり多いと成膜中に熱で基板がダメージを受ける場合がある。本発明の酸化ジルコニウムの利点を引き出すにはいわゆる安定化ジルコニアが形成される10モル%程度の酸化イットリウムの添加がよいと考えている。
実施例4
実施例3では、以下の膜組成の相変化光記録媒体を試作した。
下部誘電体保護層(単層):ZnS-SiO2(20at%)、膜厚75nm
記録層:Ag3In5Sb60Te30Ge2(at%)、膜厚15nm
上部誘電体保護層:(ZrO2)90(MgO)10(添え字はモル%)、膜厚15nm
反射放熱層:Ag-2at%Cu合金、膜厚150nm
以上の相変化光記録媒体を実施例2と同様に、おなじプロセスで作成した別のディスクと記録面同士を粘着シートで貼り合せて評価ディスクとした。紫外線硬化樹脂と貼り合せシートの合計厚さは約50μmであった。
【0088】
この評価ディスクをレーザー光で溶融結晶化させて、初期化して記録特性を評価した。
【0089】
この評価ディスクの特性は初回記録後のジッター(σ/Tw)は7.5%であり、1000回の繰り返し書き換え後のジッターは8.2%であった。
【0090】
この評価ディスクの保存試験では、初期のジッターが8.2%であるのに対し、真ん中3トラックの保存後のジッターは平均8.6%であって、劣化は小さかった。また、目視でこの保存試験後の評価ディスクをランプにかざしてピンホールの出来方を観察したが、ピンホールは発生していなかった。
実施例5
実施例5では、以下の膜組成の相変化光記録媒体を試作した。
下部誘電体保護層(単層):ZnS-SiO2(20at%)、膜厚75nm
記録層:Ag3In5Sb60Te30Ge2(at%)、膜厚15nm
上部誘電体保護層:(ZrO2)90(CaO)10(添え字はモル%)、膜厚15nm
反射放熱層:Ag-1at%Cu合金、膜厚150nm
以上の相変化光記録媒体を、実施例2と同様に、おなじプロセスで作成した別のディスクと記録面同士を粘着シートで貼り合せて評価ディスクとした。紫外線硬化樹脂と貼り合せシートの合計厚さは約50μmであった。
【0091】
この評価ディスクをレーザー光で溶融結晶化させて、初期化した。
【0092】
この評価ディスクの特性は初回記録後のジッター(σ/Tw)は7.3%であり、1000回の繰り返し書き換え後は7.7%であった。
【0093】
この評価ディスクの保存試験では、初期のジッターが7.7%であるのに対し、真ん中3トラックの保存後のジッターは平均8.7%であって、劣化は小さかった。また、目視でこの保存試験後の評価ディスクをランプにかざしてピンホールの出来方を観察したが、ピンホールは発生していなかった。
実施例6
上部誘電体保護層に含まれる膜組成を(ZrO2)77(Y2O3)3(TiO2)20(添え字はモル%)として酸化ジルコニウムに含有される酸化物を複数混合したものを用いた以外は実施例5と同様にして相変化光記録媒体を試作し、評価ディスクを得た。
【0094】
この評価ディスクの特性は良好であり、また、保存試験後の評価ディスクをランプにかざしてピンホールの出来方を観察したが、ピンホールは発生していなく、ジッター劣化は小さかった。
実施例7
実施例1同様の相変化光記録媒体であるが、反射放熱層を純Agとした。
記録再生、保存試験も実施例1と全く同様に行った。初期のジッタ、繰り返し記録での劣化の様子はほぼ同等であった。
【0095】
1000回書き換えたトラックの保存試験後のジッターは9.4%になっており、Ag-Cu合金のときより劣化が大きかった。目視でのピンホール観察でピンホールが認められた。ディスク全面に数10μmのピンホールが多数発生していた。
実施例8
実施例1同様の相変化光記録媒体であるが、反射放熱層をAg-40at%Cuとして評価ディスクを試作した。
【0096】
記録再生、保存試験も実施例1と全く同様に行った。初期のジッタ、繰り返し記録での劣化の様子は実施例1とほぼ同等であった。
【0097】
1000回書き換えたトラックの保存試験後のジッターは13%になっており、Ag-2at%Cu合金のときより劣化が大きかった。ドロップアウトがやや観察された。なお、目視でのピンホール観察ではピンホールは認められなかった。
【0098】
以上の実施例1,7,8から、反射放熱層を構成する材料として、銅の所定量を配合した銀−銅合金が適していることが確認された。
比較例1
実施例1同様の相変化光記録媒体であるが、上部誘電体保護層をZnS-SiO2とした。
記録再生、保存試験も実施例1と全く同様に行った。初期のジッタ、繰り返し記録での劣化の様子はほぼ同等であった。
【0099】
1000回書き換えたトラックの保存試験後では信号に多数のドロップアウトが発生し、バーストエラーになっていた。また、目視でのピンホール観察ではピンホールは認められなかったが、光学顕微鏡で反射層側を観察すると、多数の黒点が観察された。これはAgの硫化物と推定され、これがエラーの原因と考えられる。
【0100】
以上の実施例及び比較例から、本発明のAg-Cu合金反射層と硫黄を含まない、酸化ジルコニウムを主成分とする上部誘電体保護層の組み合わせは、反射放熱層の添加物としての銅の低コストと、誘電体保護層に硫黄が無いことによる反射放熱層の銀の劣化が防止できるので、従来のAgPd系合金を反射放熱層とした相変化光記録媒体を作成するよりも低コストで提供できる。
【0101】
また記録層としてSb3Teベースのものを選択し、ある時間の断熱と、その直後のAg-Cu合金だけに実現できる急冷効果を組み合わせることで、極めて良好なジッターと、信頼性の高い繰り返し書き換え性を獲得できた。
【0102】
以上、発明の実施の形態につき説明したが本発明はこの実施の形態に限定されない。例えば、以上の説明では、書き換え型の相変化光記録媒体につき説明したが、書き換え型とほとんど同じ材料・層構成により、追記型の相変化光記録媒体も実現できる。この場合、可逆性が無いという点でより長期にわたって情報を記録・保存でき、原理的にはほぼ半永久的な保存が可能となる。
【0103】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1記載の発明によれば、記録層を構成する材料、及びその記録層を覆う誘電体保護層を構成する材料を適切に選択することにより、反射放熱層の材料として廉価な銀を主体とした材料を用いた場合にも、光記録材料としての信頼性の高い相変化光記録媒体が提供できる。
【0104】
請求項2記載の発明によれば、ZrO2を主成分とした材料として安定化ジルコニアを選択することで、ZrO2を主成分とした材料の中で安定性に優れた最適材料が選択された。
【0105】
請求項3記載の発明によれば、請求項1記載の相変化光記録媒体におけるZrO2を主成分とした材料の中で最適材料の具体的組成が選択された。
【0106】
請求項4記載の発明によれば、反射放熱層がAg-Cu合金であって、Cuの含有率が0.1≦Cu/Ag≦10(式中、Cu/Agはモル比を表す。)であることにより、請求項1〜3記載の作用効果に加え、反射放熱層の安定性及び熱伝導率が増大するので、ある時間の断熱とその直後のAg-Cu合金だけに実現できる急冷効果を組み合わせることで極めて良好なジッターと、信頼性の高い繰り返し書き換え性を備えた相変化光記録媒体が提供できた。
【0107】
請求項5記載の発明によれば、記録層はZrO2を主成分とした材料から形成される誘電体保護層により両面から挟まれることにより、相変化光記録媒体の高感度化が期待される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態の一例である相変化光記録媒体の断面図である。
【符号の説明】
1 基板
2 下部誘電体保護層
21 第1下部誘電体保護層
22 第2下部誘電体保護層(バリア層)
3 相変化型記録層(記録層)
4 上部誘電体保護層(誘電体保護層)
5 反射放熱層
6 樹脂保護層
7 貼り合わせ用基板
Claims (5)
- 記録層の少なくとも一方の層面に誘電体保護層を介して設けられた反射放熱層を有する光記録媒体において、前記記録層がSb3Te準安定相を有する相変化記録材料であり、前記誘電体保護層がCrO 2 、Nb 2 O 5 、Y 2 O 3 、MgO及びCaOから選択された材料を含むZrO2を主成分とした材料であり、前記反射放熱層がAg主成分とした材料であることを特徴とする相変化光記録媒体。
- 前記ZrO2を主成分とした材料が安定化ジルコニアであることを特徴とする請求項1記載の相変化光記録媒体。
- 前記ZrO2を主成分とした材料が、(ZrO2)100-x(CrO2)x(式中、添え字xは0<x≦50を満たすモル%で示された組成比を表す。)、(ZrO2)100-x(Nb2O5)x(式中、添え字xは0<x≦30を満たすモル%で示された組成比を表す。)、(ZrO2)100-x(MgO)x、(ZrO2)100-x(CaO)x 、及び(ZrO2)100-x(Y2O3)x(前記式中、添え字xは0<x≦20を満たすモル%で示された組成比を表す。)から選択されることを特徴とする請求項1記載の相変化光記録媒体。
- 前記反射放熱層がAg−Cu合金であって、Cuの含有率が0.1≦Cu/Ag≦10(式中、Cu/Agはモル比を表す。)であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の相変化光記録媒体。
- 前記記録層は、ZrO2を主成分とした材料から形成される誘電体保護層により両面から挟まれることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の相変化光記録媒体。
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