本発明の第1の情報記録媒体においては、材料層が、Sn、Ga及びZnから成る群GMより選ばれる少なくとも一つの元素と、Al、Si及びBから成る群GLより選ばれる少なくとも一つの元素と、酸素(O)と、を含んでいる。材料層は、さらに窒素(N)を含んでいてもよい。材料層をこのような材料で形成することにより、従来の情報記録媒体の誘電体層に使用していた(ZnS)80(SiO2)20(mol%)と同等以上の成膜速度を実現できるとともに、材料層を構成する元素にSを含まないため材料層を誘電体層に適用する場合に別途界面層を設ける必要がなく、且つ記録再生する波長の光に対してある程度の透明性を有する誘電体層を形成できる。さらに、このような材料層を誘電体層に用いれば、界面層を介さずに直接記録層の上下に誘電体層を設けても、十分な記録感度と書き換え性能を確保することができる。なお、本発明の第1の情報記録媒体は、光を照射することによって、あるいは電気的エネルギーを印加することによって、情報を記録再生する媒体である。一般に、光の照射は、レーザ光を照射することにより実施され、電気的エネルギーの印加は記録層に電圧を印加することにより実施される。以下、本発明の第1の情報記録媒体を構成する材料層の材料について、より具体的に説明する。
本発明の第1の情報記録媒体において、材料層が、下記の組成式:
MHOILJNK(原子%)…(1)
(式中、Mは前記群GMより選ばれる少なくとも一つの元素を示し、Lは前記群GLより選ばれる少なくとも一つの元素を示し、H、I、J及びKは、10≦H≦50、10≦I≦70、0<J≦40、0≦K≦50を満たす。)
で表される材料を含んでいてもよい。ここで、「原子%」とは、組成式(1)が、「M」原子、酸素原子、「L」原子、及び窒素原子を合わせた数を基準(100%)として表された組成式であることを示している。以下の組成式においても「原子%」の表示は、同様の趣旨で使用している。また、組成式(1)は、材料層に含まれる、「M」原子、酸素原子、「L」原子、及び窒素原子のみをカウントして表したものである。したがって、組成式(1)で示される材料を含む材料層に、これらの原子以外の成分を含むことがある。さらに、組成式(1)で表される材料において、各原子がどのような化合物として存在しているかは問われない。このような組成式で材料を特定しているのは、薄膜に形成した層の組成を調べるに際し、化合物の組成を求めることは難しく、現実には、元素組成(即ち、各原子の割合)のみを求める場合が多いことによる。組成式(1)で表される材料において、元素Mの殆どは酸素原子とともに酸化物として存在し、元素Lの殆どは酸素原子又は窒素原子とともに酸化物又は窒化物として存在していると考えられる。
本発明の第1の情報記録媒体において、材料層に含まれる元素MはSn及びGaのうちの少なくとも一方であることが好ましい。Snを含む材料層は、群GMを構成する元素を含む材料層の中でも特に高い成膜速度を有するので、生産性の点から好ましい。また、Gaを含む材料層は、群GMを構成する元素を含む材料層の中でも特に書き換え特性に優れているため、より好ましい。
本発明の第1の情報記録媒体が光情報記録媒体である場合、群GMより選ばれる元素と、群GLより選ばれる元素と、酸素(O)又は酸素(O)及び窒素(N)とを含む材料層(以下、「酸化物系材料層」もしくは「酸化物−窒化物系材料層」と称する。)を用いて、記録層と隣接する2つの誘電体層のうちの何れか一方もしくは両方の誘電体層を形成することが好ましい。例えば、相変化による記録媒体の場合、記録層を構成する主材料系の融点は500〜700℃くらいに対し、群GMを構成する元素、即ちSn、Ga及びZnの酸化物はいずれも、融点が1000℃以上あり、熱安定性に優れる。熱的安定性に優れた材料を含む誘電体層は、この誘電体層を含む情報記録媒体に情報が繰り返し書き換えられる場合でも、劣化しにくく、耐久性に優れる。また、群GLを構成する元素、即ち、Al、Si及びBの窒化物及び酸化物は、耐湿性も良好である。また、上記酸化物及び窒化物はいずれも、カルコゲナイド材料にて形成される記録層との密着性が良好である。したがって、この酸化物系材料層もしくは酸化物−窒化物系材料層を誘電体層として形成した情報記録媒体においては、
(1)Sを含まない誘電体層を、記録層に良好に密着させて形成できるので、界面層が不要である
(2)図6に示す従来の情報記録媒体と同程度又はそれ以上の繰り返し書き換えに対する耐久性、及び耐湿性を情報記録媒体に付与できる
(3)複数の酸化物又は窒化物とが混合されて構造が複雑となるため、誘電体層の熱伝導率が小さくなり、それにより記録層が急冷されやすくなり、記録感度が高くなる
という効果が得られる。
本発明の第1の情報記録媒体では、材料層が、上記組成式(1)で表される材料であって、MとしてSnを含む材料を含んでいてもよい。Snは、群GMを構成する元素の中でも、より高い成膜速度を可能とし、高い生産性を可能とする元素である。したがって、Snを含む材料層を、情報記録媒体の記録層に隣接する二つの誘電体層のうち何れか一方もしくは両方に適用することにより、より優れた繰り返し書き換え性能を有し、生産性に優れた情報記録媒体を、安価に製造できる。
本発明の第1の情報記録媒体では、材料層が、上記組成式(1)で表される材料であって、MとしてGaを含む材料を含んでいてもよい。Gaは、群GMを構成する元素の中でも、特に良好な書き換え特性を得る効果が優れている。Gaを含む材料層を、情報記録媒体の記録層に隣接する二つの誘電体層のうち何れか一方もしくは両方に適用することにより、より優れた繰り返し書き換え特性を発揮する信頼性の高い情報記録媒体を実現できる。
本発明の第1の情報記録媒体では、材料層が、上記組成式(1)で表される材料であって、MとしてSnを含み、且つLとしてSi及びAlのうち少なくとも一方の元素を含む材料を含んでいてもよい。Snについては上述の通りだが、Siは、群GLを構成する元素の中でも特に記録感度を改善する効果が優れている。また、Siの酸化物が含まれることにより材料層の膜質が軟らかくなるので、繰り返し書き換え記録による材料層の膜割れ及び膜破壊を抑制する。Snを含み、且つSi及びAlのうち少なくとも一方を含む材料層を、情報記録媒体の記録層に隣接する二つの誘電体層のうち何れか一方もしくは両方に適用することにより、より良好な記録感度を備え、さらなる高密度化、高速記録化技術に有益な情報記録媒体を実現できる。
本発明の第1の情報記録媒体では、材料層が、上記組成式(1)で表される材料であって、MとしてGaを含み、且つLとしてSi及びAlのうち少なくとも一方の元素を含む材料を含んでいてもよい。Ga、SiおよびAlについては上述のとおりであるため、この材料を含む材料層を、情報記録媒体の記録層に隣接する二つの誘電体層のうち何れか一方もしくは両方に適用することにより、より優れた繰り返し書き換え特性を発揮する信頼性の高い、良好な記録感度を有する情報記録媒体を実現できる。
本発明の第1の情報記録媒体では、材料層が、上記組成式(1)で表される材料であって、MとしてSn及びGaを含み、且つLとしてSi及びAlのうち少なくとも一方の元素を含む材料を含んでいてもよい。このような材料を含む材料層を、情報記録媒体の記録層に隣接する二つの誘電体層のうち何れか一方もしくは両方に適用することにより、良好な記録感度と優れた繰り返し書き換え性能と高い生産性を有する、信頼性の高い情報記録媒体を安価に製造できる。
本発明の第2の情報記録媒体では、材料層が、Sn、Ga及びZnから成る群GMより選ばれる少なくとも一つの元素と、酸素(O)と、La又はCeからなる群GAより選ばれる少なくとも一つの元素と、フッ素(F)とを含んでいる。第2の情報記録媒体に含まれる材料層は、例えば、下記の組成式:
MHOIADFE(原子%)…(2)
(式中、Mは前記群GMより選ばれる少なくとも一つの元素を示し、Aは前記群GAより選ばれる少なくとも一つの元素を示し、H、I、D及びEは、10≦H≦50、10≦I≦70、0<D≦40、0<E≦50を満たす。)
で表される材料を含むことができる。La及びCeは、前記群GMの酸化物と混合することにより、良好な記録感度が得られることに加え、希土類金属のフッ化物の中でも価格がより安いことから、好ましく用いられる。なお、第2の情報記録媒体に含まれる上記材料層を、以下、「酸化物−フッ化物系材料層」と称する。
本発明の第2の情報記録媒体において、材料層に含まれる元素MはSn及びGaのうちの少なくとも一方であることが好ましい。Snを含む材料層は、群GMを構成する元素を含む材料層の中でも特に高い成膜速度を有するので、生産性の点から好ましい。また、Gaを含む材料層は、群GMを構成する元素を含む材料層の中でも特に書き換え特性に優れているため、より好ましい。
上述のように、酸化物系材料層、酸化物−窒化物系材料層及び酸化物−フッ化物系材料層では、Sn、Ga及びZnから成る群GMから選択される少なくとも一つの元素は、酸素と共に酸化物として存在し、Al、Si及びBから成る群GLから選択される少なくとも一つの元素は、酸素又は窒素と共に酸化物又は窒化物として存在し、La及びCeから成る群GAから選択される少なくとも一つの元素はフッ化物として存在していると考えられ、これらの化合物を含む層として特定され得る。このように特定される材料層において、群GMから選択される少なくとも一つの元素の酸化物群は、群GMから選択される元素の酸化物群と群GLから選択される元素の酸化物群もしくは窒化物群とを合わせた量を基準(100mol%)としたときに、50mol%以上含まれることが好ましく、50mol%〜95mol%含まれることがより好ましい。また、群GAから選択される元素のフッ化物群とを合わせた量を基準にした場合も同様である。
ここで、「酸化物群」という用語は、群GMから選択される元素が2以上であって、2種以上の酸化物が層に含まれている場合には、すべての酸化物を総称するために用いられる。あるいは、「酸化物群」という用語は、群GMから選択される元素が1つのみであって、1種の酸化物が層に含まれる場合には、その酸化物のみを指す。「窒化物群」や「フッ化物群」という用語についても同様である。換言すれば、酸化物系材料層、酸化物−窒化物系材料層、酸化物−フッ化物系材料層は、上記に特定された以外の化合物(そのような化合物を「第三成分」とも呼ぶ。)を10mol%まで含んでよい。これは、第三成分の占める割合が10mol%を超えると、材料層の熱的安定性が低減し、記録感度や書き換え特性の悪化や、耐湿性の低下を招きやすくなり、上記所定の効果を得ることが難しくなることがあるからである。
なお、上記に特定された材料層にて形成された誘電体層に、数mol%以下の不純物や、近隣する層を構成する材料組成の元素が多少混じっていてもよい。
群GMから選択される元素の酸化物群の割合が50mol%未満になると、成膜速度と、耐湿性が低下する傾向にある。これは、材料層の膜の内部応力が大きく成りすぎ、形成する膜厚によって、局部的に他の層との剥離が発生しやすくなるためである。
この群GMから選ばれる少なくとも1つの元素の酸化物群として、Snの酸化物やGaの酸化物を含んでよく、また群GLから選ばれる少なくとも一つの元素の酸化物群もしくは窒化物群としてSiの窒化物やSiの酸化物を含んでよく、その効果は上述したとおりである。
また、本発明の第1の情報記録媒体において、材料層は、群GMから選ばれる少なくとも1つの元素の酸化物、好ましくは、SnO2、Ga2O3及びZnOから選択される少なくとも1つの酸化物と、群GLから選ばれる少なくとも一つの元素の酸化物及び窒化物のうちの少なくとも一方としてAlN、Si3N4、Al2O3及びSiO2から選択される少なくとも1つの化合物とを含み、具体的には、下記の組成式:
(D)X(E)100-X(mol%)…(3)
(式中、DはSnO2、Ga2O3及びZnOから選択される少なくとも1つの酸化物を示し、EはAlN、Si3N4、Al2O3及びSiO2から選択される少なくとも1つの化合物を示し、Xは、50≦X≦95を満たす。)
で表される材料を含んでいてもよい。SnO2、Ga2O3及びZnOは、融点がいずれも1000℃以上と高く、熱的に安定で、且つ成膜速度が高い。AlN、Si3N4、Al2O3及びSiO2は、耐湿性が良好で、上述の酸化物群と混合すると、特に熱伝導を小さくする効果が高く、結果として記録感度を向上させる作用に優れている。また価格も安いことから、最も実用に適している。各化合物の好ましい割合は、上記のようにXで規定される。このような酸化物−窒化物系材料層を記録層と接する誘電体層に適用することにより、誘電体層と記録層との間の界面層を無くすことが可能となる。したがって、このような材料層を誘電体層として含む情報記録媒体は、繰り返し記録性能、耐湿性、記録感度、記録及び書き換え保存性が良好である。
また、本発明の第1の情報記録媒体において、材料層は、下記の組成式:
(SnO2)A1(Ga2O3)A2(E1)B(mol%)…(4)
(式中、E1はAlN及びSi3N4のうち少なくとも一方の窒化物を示し、A1及びA2は、50≦A1+A2≦95、且つA1,A2はどちらか一方が0でもよく、Bは、5≦B≦50を満たす。また、A1+A2+B=100である。)
で表される材料を含んでいれば、より望ましい。その好ましい割合は、上記のようにA1及びA2で規定される。
また、本発明の第1の情報記録媒体において、材料層が、群GMから選ばれる少なくとも一つの元素の酸化物を含み、さらにSiO2を含む下記の組成式:
(D)X(SiO2)Y(E1)100-X-Y(mol%)…(5)
(式中、DはSnO2、Ga2O3及びZnOから選択される少なくとも一つの酸化物を示し、E1はAlN及びSi3N4のうちの少なくとも一方の窒化物を示し、X及びYは、50≦X≦95、5≦Y≦35、55≦X+Y≦100を満たす。)
で表される材料を含んでいてもよい。その好ましい割合は、上記のようにX及びYで規定される。なお、ここで、X+Y≦100と示しているのは、窒化物E1を含まない場合を含んで表記しているためである。SiO2の効果は上記で説明したとおりである。
本発明の第2の情報記録媒体において、材料層は、下記の組成式:
(D)X(A)100-X(mol%)…(6)
(式中、DはSnO2、Ga2O3及びZnOから選択される少なくとも一つの酸化物を示し、AはLaF3及びCeF3から選択される少なくとも一つを示し、Xは、50≦X≦95を満たす。)
で表される材料を含むものが好ましい。その割合は、上記のようにXで規定され、群GMから選ばれる少なくとも一つの元素の酸化物については、上述の酸化物もしくは酸化物−窒化物層と同様である。
本発明の第1及び第2の情報記録媒体に含まれる酸化物系材料層、酸化物−窒化物系材料層又は酸化物−フッ化物系材料層の組成分析は、例えば、X線マイクロアナライザーを用いて実施することができる。分析される組成は、各元素の原子濃度として得られる。
以上説明した酸化物系材料層、酸化物−窒化物系材料層又は酸化物−フッ化物系材料層は、本発明の第1及び第2の情報記録媒体において、記録層の少なくとも一方の面と接するように設けられることが好ましく、記録層の両方の面に接するように設けてもよい。本発明の情報記録媒体において、酸化物系材料層、酸化物−窒化物系材料層又は酸化物−フッ化物系材料層は、記録層と誘電体層との間に位置する界面層として存在してもよい。
本発明の第1及び第2の情報記録媒体は、その記録層において相変化が可逆的に生じるものであることが好ましく、即ち、書き換え型情報記録媒体として好ましく提供される。相変化が可逆的に生じる記録層は、具体的には、Ge−Sb−Te、Ge−Sn−Sb−Te、Ge−Bi−Te、Ge−Sn−Bi−Te、Ge−Sb−Bi−Te、Ge−Sn−Sb−Bi−Te、Ag−In−Sb−Te及びSb−Teから選択される、何れか1つの材料を含むことが好ましい。これらはいずれも高速結晶化材料である。したがって、これらの材料で記録層を形成すると、高密度且つ高転送速度で記録でき、信頼性(具体的には記録保存性又は書き換え保存性)の点でも優れた情報記録媒体が得られる。
また、本発明の第1及び第2の情報記録媒体において、記録層が相変化を可逆的に生じるためには、記録層の膜厚は15nm以下であることが望ましい。15nmを超えると、記録層に加えられた熱が面内に拡散し、厚さ方向に拡散しにくくなり、情報の書き換えに支障をきたすことがあるからである。
より具体的には、本発明の第1及び第2の情報記録媒体は、基板の一方の表面に、第1の誘電体層、記録層、第2の誘電体層及び反射層がこの順に形成された構成を有するものであってよい。この構成を有する情報記録媒体は、光の照射により記録される媒体である。本明細書において、「第1の誘電体層」とは、入射される光に対してより近い位置にある誘電体層をいい、「第2の誘電体層」とは、入射される光に対してより遠い位置にある誘電体層をいう。即ち、照射される光は、第1の誘電体層から記録層を経由して、第2の誘電体層に到達する。この構成の情報記録媒体は、例えば、波長660nm付近のレーザ光で記録再生する場合に用いられる。本発明の第1及び第2の情報記録媒体がこの構成を有する場合、第1の誘電体層及び第2の誘電体層のうち少なくとも1つの誘電体層が、上述した酸化物系材料層、酸化物−窒化物系材料層又は酸化物−フッ化物系材料層であることが好ましい。また、両方の誘電体層が、上述の何れかの材料層にて形成されていてもよく、同一組成の材料層はもちろん、異なる組成の材料層で形成されていてもよい。
この構成を有する情報記録媒体の一形態として、基板の一方の表面に、第1の誘電体層、界面層、記録層、第2の誘電体層、光吸収補正層及び反射層がこの順に形成されており、第2の誘電体層が前記酸化物系材料層、酸化物−窒化物系材料層又は酸化物−フッ化物系材料層にて形成されて、記録層と接している情報記録媒体が挙げられる。
次に、本発明の第1及び第2の情報記録媒体の製造方法について説明する。
本発明の第1の情報記録媒体の製造方法は、本発明の第1の情報記録媒体に含まれる材料層を、スパッタリング法で形成する工程を含む。スパッタリング法によれば、スパッタリングターゲットの組成と略同じ組成を有する材料層を形成できる。したがって、この製造方法によれば、スパッタリングターゲットを適切に選択することによって所望の組成の酸化物系材料層、酸化物−窒化物系材料層又は酸化物−フッ化物系材料層を容易に形成できる。具体的には、スパッタリングターゲットとして、下記の組成式:
MhOiLjNk(原子%)…(7)
(式中、Mは前記群GMより選ばれる少なくとも一つの元素を示し、Lは前記群GLより選ばれる少なくとも一つの元素を示し、h、i、j及びkは、10≦h≦50、10≦i≦70、0<j≦40、0≦k≦50を満たす。)
で表される材料を含むものを使用できる。組成式(7)は、群GMから選ばれる元素Mのほとんどが酸化物の形態で存在し、群GLから選ばれる元素Lの殆どが窒化物の形態で存在し、Siについては酸化物の形態で存在してもよい材料を元素組成で表した式に相当する。このスパッタリングターゲットによれば、組成式(1)で表される材料を含む誘電体層を形成できる。
上記組成式(7)で表される材料を含むスパッタリングターゲットは、MとしてSnを含むものであってもよい。このようなスパッタリングターゲットによれば、組成式(1)で表される材料においてMとしてSnを含む材料層を形成できる。
上記組成式(7)で表される材料を含むスパッタリングターゲットは、MとしてGaを含むものであってもよい。このようなスパッタリングターゲットによれば、組成式(1)においてMとしてGaを含む材料層を形成できる。
上記組成式(7)で表される材料を含むスパッタリングターゲットは、MとしてSnを含み、且つLとしてSi及びAlのうちの少なくとも一方を含むものであってもよい。このようなスパッタリングターゲットによれば、組成式(1)においてMとしてSnを含み、且つLとしてSi及びAlのうちの少なくとも一方を含む材料層を形成できる。
上記組成式(7)で表される材料を含むスパッタリングターゲットは、MとしてGaを含み、且つLとしてSi及びAlのうちの少なくとも一方の元素を含むものであってもよい。このようなスパッタリングターゲットによれば、組成式(1)においてMとしてGaを含み、且つLとしてSi及びAlのうちの少なくとも一方の元素を含む材料層を形成できる。
上記組成式(7)で表される材料を含むスパッタリングターゲットは、MとしてSn及びGaを含み、且つLとしてSi及びAlのうちの少なくとも一方の元素を含むものであってもよい。このようなスパッタリングターゲットによれば、組成式(1)においてMとしてSn及びGaを含み、且つLとしてSi及びAlのうち少なくとも一方の元素を含む材料層を形成できる。
本発明の第2の情報記録媒体の製造方法で用いられるスパッタリングターゲットとして、下記の組成式:
MhOiAdFe(原子%)…(8)
(式中、Mは前記群GMより選ばれる少なくとも一つの元素を示し、Aは前記群GAより選ばれる少なくとも一つの元素を示し、h、i、d及びeは、10≦h≦50、10≦i≦70、0<d≦40、0<e≦50を満たす。)
で表される材料を含むものも使用できる。このスパッタリングターゲットによれば、組成式(2)で表される材料層を形成できる。
本発明の第1の情報記録媒体の製造方法において用いられるスパッタリングターゲットとしては、Sn、Ga及びZnから成る群GMより選ばれる少なくとも一つの元素の酸化物と、Al、Si及びBから成る群GLより選ばれる少なくとも一つの元素の酸化物及び窒化物のうち少なくとも一方とを含むものが使用できる。また、本発明の第2の情報記録媒体の製造方法において用いられるスパッタリングターゲットとしては、Sn、Ga及びZnから成る群GMより選ばれる少なくとも一つの元素の酸化物と、La及びCeから成る群GAより選ばれる少なくとも一つの元素のフッ化物とを含むものが使用できる。このようにスパッタリングターゲットを特定しているのは、群GMより選ばれる元素、酸素、群GLより選ばれる元素、群GAより選ばれる元素、窒素、及びフッ素を含むスパッタリングターゲットは、通常、群GMより選ばれる元素の酸化物と、群GLより選ばれる元素の酸化物もしくは窒化物や、群GAより選ばれる元素のフッ化物の組成が表示されて供給されていることによる。また、本願発明者らは、組成がそのように表示されたスパッタリングターゲットをX線マイクロアナライザーで分析して得た元素組成が、表示されている組成から算出される元素組成と略等しくなることを(即ち、組成表示(公称組成)が適正であること)を確認している。したがって、酸化物、酸化物と窒化物、酸化物とフッ化物との混合物として提供されるスパッタリングターゲットもまた、本発明の情報記録媒体の製造方法において好ましく用いられる。
酸化物又は酸化物と窒化物との混合物として提供されるスパッタリングターゲットは、群GMから選択される元素の酸化物群と群GLから選択される元素の窒化物群又は酸化物群とを合わせた量を基準(100mol%)としたときに、群GMから選択される元素の酸化物群を50mol%以上含むことが好ましく、50mol%〜95mol%含むことがより好ましい。酸化物群の占める割合が50mol%未満であるスパッタリングターゲットを用いると、得られる酸化物系材料層もしくは酸化物−窒化物系材料層もまた群GMから成る酸化物群の割合が50mol%未満となり、所期の効果を与える情報記録媒体を得ることが困難となる場合がある。このことは、酸化物とフッ化物との混合物として提供されるスパッタリングターゲットについても同様である。
酸化物、酸化物と窒化物又は酸化物とフッ化物の混合物として提供されるスパッタリングターゲットは、群GMより選ばれる元素の酸化物として、Snの酸化物とGaの酸化物とを合わせて、50mol%以上含むものであれば、生産性も高く、より好ましい。酸化物もしくは酸化物と窒化物の混合物として提供されるスパッタリングターゲットは、群GLより選ばれる元素の窒化物としてSiの窒化物を含むものや、酸化物としてSiの酸化物を含んで成むものであれば、より好ましい特性を有する情報記録媒体を作製できる。
より具体的に説明すれば、好ましく用いられるスパッタリングターゲットは、群GMより選ばれる元素の酸化物として、SnO2、Ga2O3及びZnOから選択される少なくとも1つの酸化物を含み、群GLより選ばれる元素の酸化物及び窒化物のうちの少なくとも一方としてAlN、Si3N4、Al2O3及びSiO2から選択される少なくとも1つの化合物を含んで成る。そのようなスパッタリングターゲットは、下記の組成式:
(D)x(E)100-x(mol%)…(9)
(式中、DはSnO2、Ga2O3及びZnOから選択される少なくとも1つの酸化物を示し、EはAlN、Si3N4、Al2O3及びSiO2から選択される少なくとも1つの化合物を示し、xは、50≦x≦95を満たす。)
で表される材料を含むものであることが好ましい。このスパッタリングターゲットを用いれば、組成式(3)で表される材料を含む材料層を形成できる。
組成式(9)で表される材料を含むスパッタリングタ−ゲットは、DとしてSnO2とGa2O3とを含むものであってよい。そのようなスパッタリングタ−ゲットは、下記の組成式:
(SnO2)a1(Ga2O3)a2(E1)b(mol%)…(10)
(式中、E1はAlN及びSi3N4のうちの少なくとも一方の窒化物を示し、a1及びa2は、50≦a1+a2≦95、且つa1,a2はどちらか一方が0でもよく、bは、5≦b≦50を満たす。また、a1+a2+b=100である。)
で表される材料を含むものであることが好ましい。このスパッタリングターゲットを用いれば、組成式(4)で表される材料を含む材料層を形成できる。
組成式(9)で表される材料を含むスパッタリングタ−ゲットは、SiO2を含む組成式:
(D)x(SiO2)y(E1)100-x-y(mol%)…(11)
(式中、DはSnO2、Ga2O3及びZnOから選択される少なくとも一つの酸化物を示し、E1はAlN及びSi3N4のうちの少なくとも一方の窒化物を示し、x及びyは、50≦x≦95、5≦y≦35、55≦x+y≦100を満たす。)
で表される材料を含むものであってもよい。このスパッタリングターゲットを用いれば、組成式(5)で表される材料を含む材料層を形成できる。
また、群GMより選ばれる元素の酸化物と、群GAより選ばれる元素のフッ化物とを含んで成るスパッタリングターゲットを用いてもよい。このようなスパッタリングタ−ゲットは、下記の組成式:
(D)x(A)100-x(mol%)…(12)
(式中、DはSnO2、Ga2O3及びZnOから選択される少なくとも一つの酸化物を示し、AはLaF3及びCeF3から選択される少なくとも一つを示し、xは、50≦x≦95を満たす。)
で表される材料を含むものであってよい。このスパッタリングターゲットを用いれば、組成式(6)で表される材料を含む材料層を形成できる。
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。以下の実施の形態は例示的なものであり、本発明は以下の実施の形態に限定されない。
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1として、レーザ光を用いて情報の記録及び再生を実施する情報記録媒体の一例について説明する。図1に、その情報記録媒体の一部断面を示す。
図1に示すように、本実施の形態の情報記録媒体は、基板1の一方の表面に、第1の誘電体層2、記録層4、第2の誘電体層6、光吸収補正層7及び反射層8がこの順に積層され、さらに貼り合せ基板10が接着層9で反射層8に接着された構成を有する。この構成の情報記録媒体は、波長660nm付近の赤色域のレーザ光で記録再生する、4.7GB/DVD−RAMとして使用できる。この構成の情報記録媒体には、基板1側からレーザ光が入射され、入射されたレーザ光により情報の記録及び再生が実施される。本実施の形態の情報記録媒体は、記録層4と第1及び第2の誘電体層2,6との間にそれぞれ界面層を有していない点において、図6に示した従来の情報記録媒体と相違する。
基板1は、通常、透明な円盤状の板である。基板1において、第1の誘電体層2及び記録層4等を形成する側の表面には、図1に示すようにレーザ光を導くための案内溝が形成されていてもよい。案内溝を基板1に形成した場合、基板1の断面を見ると、グルーブ部とランド部とが形成される。グルーブ部は2つの隣接するランド部の間に位置するともいえる。したがって、案内溝が形成された基板1の表面は、側壁でつながれた頂面と底面とを有することとなる。本明細書においては、レーザ光入射側からみて近い側にある面を便宜的に「グルーブ面」と呼び、遠い側にある面を便宜的に「ランド面」と呼ぶ。図1においては、基板1の案内溝の底面20がグルーブ面に相当し、頂面21がランド面に相当する。なお、後述の実施の形態2で説明する図2に示す情報記録媒体おいても同様である。
基板1のグルーブ面20とランド面21の段差は、40nm〜60nmであることが好ましい。なお、後述する図2に示す情報記録媒体を構成する基板1においても、グルーブ面20とランド面21との段差はこの範囲であることが好ましい。また、基板1において、他の層を形成しない側の表面は、平滑であることが望ましい。基板1の材料として、例えば、ポリカーボネート、アモルファスポリオレフィンあるいはポリメチルメタクリレート(PMMA)等の樹脂、又はガラス等の光透過性を有する材質のものを挙げることができる。成形性、価格及び機械強度を考慮すると、ポリカーボネートが好ましく使用される。なお、本実施の形態の情報記録媒体において、基板1の厚さは、0.5〜0.7mm程度である。
本実施の形態における記録層4は、光の照射又は電気的エネルギーの印加によって、結晶相と非晶質相との間で相変化を起こし、記録マークが形成される層である。相変化が可逆的であれば、消去や書き換えを行うことができる。可逆的相変化材料としては、高速結晶化材料である、Ge−Sb−Te又はGe−Sn−Sb−Teを用いることが好ましい。具体的には、Ge−Sb−Teの場合、GeTe−Sb2Te3擬二元系組成であることが好ましく、その場合、4Sb2Te3≦GeTe≦50Sb2Te3であることが好ましい。GeTe<4Sb2Te3の場合、記録前後の反射光量の変化が小さく、読み出し信号の品質が低下し、50Sb2Te3<GeTeの場合、結晶相と非晶質相間の体積変化が大きく、繰り返し書き換え性能が低下してしまうからである。Ge−Sn−Sb−Teは、Ge−Sb−Teよりも結晶化速度が速い。Ge−Sn−Sb−Teは、例えば、GeTe−Sb2Te3擬二元系組成のGeの一部をSnで置換したものである。記録層4において、Snの含有量は、20原子%以下であることが好ましい。Snの含有量が20原子%を越えると、結晶化速度が速すぎて、非晶質相の安定性が損なわれ、記録マークの信頼性が低下するからである。なお、Snの含有量は、記録条件に合わせて調整することが可能である。
また、記録層4は、Ge−Bi−Te、Ge−Sn−Bi−Te、Ge−Sb−Bi−Te、又はGe−Sn−Sb−Bi−Teのような、Biを含む材料で形成することもできる。BiはSbよりも結晶化しやすい。したがって、Ge−Sb−TeやGe−Sn−Sb−TeのSbの少なくとも一部をBiで置換することによっても、記録層の結晶化速度を向上させることができる。
Ge−Bi−Teは、GeTeとBi2Te3との混合物である。この混合物においては、8Bi2Te3≦GeTe≦25Bi2Te3であることが好ましい。GeTe<8Bi2Te3の場合、結晶化温度が低下し、記録保存性が劣化しやすくなり、25Bi2Te3<GeTeの場合、結晶相と非晶質相間の体積変化が大きく、繰り返し書き換え性能が低下するからである。
Ge−Sn−Bi−Teは、Ge−Bi−TeのGeの一部をSnで置換したものに相当する。Snの置換濃度を調整して、記録条件に合わせて結晶化速度を制御することが可能である。Sn置換は、Bi置換と比較して、記録層4の結晶化速度の微調整に、より適している。記録層4において、Snの含有量は10原子%以下であることが好ましい。10原子%を越えると、結晶化速度が速くなりすぎるために、非晶質相の安定性が損なわれ、記録マークの保存性が低下するからである。
Ge−Sn−Sb−Bi−Teは、Ge−Sb−TeのGeの一部をSnで置換し、さらにSbの一部をBiで置換したものに相当する。これは、GeTe、SnTe、Sb2Te3及びBi2Te3の混合物に相当する。この混合物においては、Sn置換濃度とBi置換濃度を調整して、記録条件に合わせて結晶化速度を制御することが可能である。Ge−Sn−Sb−Bi−Teにおいては、4(Sb−Bi)2Te3≦(Ge−Sn)Te≦25(Sb−Bi)2Te3であることが好ましい。(Ge−Sn)Te<4(Sb−Bi)2Te3の場合、記録前後の反射光量の変化が小さく、読み出し信号品質が低下する。25(Sb−Bi)2Te3<(Ge−Sn)Teの場合、結晶相と非晶質相間の体積変化が大きく、繰り返し書き換え性能が低下する。また、記録層4において、Biの含有量は10原子%以下であることが好ましく、Snの含有量は20原子%以下であることが好ましい。Bi及びSnの含有量がそれぞれこの範囲内にあれば、良好な記録マークの保存性が得られるからである。
その他の可逆的に相変化を起こす材料としては、例えば、Ag−In−Sb−Te、Ag−In−Sb−Te−Ge及びSbを70原子%以上含むSb−Te等が挙げられる。
非可逆的相変化材料としては、例えば、TeOx+α(αはPd、Ge等である。)を用いることが好ましい(日本国特許公報平7−25209公報(特許第2006849号)参照。)。記録層4が非可逆的相変化材料である情報記録媒体は、記録が一度だけ可能である、いわゆるライトワンス型のものである。そのような情報記録媒体においても、記録時の熱により誘電体層中の原子が記録層中に拡散して、信号の品質を低下させるという問題がある。したがって、本発明の情報記録媒体の構成は、書き換え可能な情報記録媒体だけでなく、ライトワンス型の情報記録媒体にも好ましく適用される。
記録層4が可逆的に相変化する材料から成る場合には、前述のように、記録層4の厚さは15nm以下であることが好ましく、12nm以下であることがより好ましい。記録層4の厚みの下限は特に限定されないが、3nm以上であることが好ましい。
本実施の形態における第1の誘電体層2及び第2の誘電体層6は、Sn、Ga及びZnから成る群GMより選ばれる少なくとも一つの元素の酸化物と、Al、Si及びBから成る群GLより選ばれる少なくとも一つの元素の酸化物及び窒化物の少なくとも一方とを含む材料にて形成された酸化物系材料層又は酸化物−窒化物系材料層である。また、第1の誘電体層2及び第2の誘電体層6は、Sn、Ga及びZnから成る群GMより選ばれる少なくとも一つの元素の酸化物と、La及びCeから成る群GAより選ばれる少なくとも一つの元素のフッ化物とを含む材料にて形成された酸化物−フッ化物系材料層であってもよい。
一般に、情報記録媒体を構成する誘電体層の材料には、(1)透明性があること、(2)誘電体層と記録層との間に界面層が設けられた構成と同等かそれ以上の記録感度が得られること、(3)融点が高く、記録の際に溶融しないこと、(4)成膜速度が大きいこと、及び(5)カルコゲナイド材料にて形成される記録層4との密着性が良好であること、が要求される。透明性があることは、基板1側から入射されたレーザ光を通過させて記録層4に到達させるために必要な特性である。この特性は、特に入射側の第1の誘電体層2に要求される。また、第1及び第2の誘電体層2,6の材料は、得られる情報記録媒体が、従来の、(ZnS)80(SiO2)20(mol%)から成る誘電体層と記録層との間に界面層が位置する情報記録媒体と同等かそれ以上の記録感度を有するように選択する必要がある。また、融点が高いことは、ピークパワーレベルのレーザ光を照射したときに、第1及び第2の誘電体層2,6の材料が記録層4に混入しないことを確保するために必要な特性であり、第1及び第2の誘電体層2,6の両方に求められる。第1及び第2の誘電体層2,6の材料が記録層4に混入すると、繰り返し書き換え性能が著しく低下する。良好な生産性を得るために、成膜速度が大きいことも要求される。また、カルコゲナイド材料である記録層4との密着性が良好であることは、情報記録媒体の信頼性を確保するために必要な特性であり、第1及び第2の誘電体層2,6の両方に求められる。
上記酸化物系材料層、酸化物−窒化物系材料層及び酸化物−フッ化物系材料層に含まれる成分のうち、群GMを構成する元素の酸化物はいずれも、透明性があり、融点が高く、熱的安定性に優れ、記録層との密着性がよい。したがって、これらの酸化物によれば、情報記録媒体の良好な繰り返し書き換え性能を確保することができる。また、群GLを構成する元素であるSi及びAlの酸化物は、耐湿性に優れ、群GMを構成する元素の酸化物に混合することにより熱伝導を小さくして記録感度を向上させると共に、膜質を軟らかくするので、繰り返し書き換え記録による膜割れ及び膜破壊を抑制できる。したがって、Si及びAlの酸化物によれば、情報記録媒体の記録感度と信頼性を確保できる。群GMを構成する元素の酸化物には、例えば、SnO2、Ga2O3及びZnOが含まれる。また、Si及びAlの酸化物としては、例えばSiO2,Al2O3等が含まれる。
以上の酸化物を混合して成る、Sを含まない材料を用いて、第1の誘電体層2及び第2の誘電体層6を記録層4と接するように形成することによって、繰り返し書き換え性能に優れ、且つ記録層4と第1及び第2の誘電体層2,6との間の密着性が良好である情報記録媒体を実現できる。また、群GMを構成する元素の酸化物にSiやAlの酸化物を混ぜて層の構造を複雑化することにより、第1及び第2の誘電体層2,6における熱伝導が抑制される。したがって、上記酸化物系材料層を第1及び第2の誘電体層2,6に用いれば、記録層4の急冷効果を高めることができるので、情報記録媒体の記録感度を高くし得る。
また、上記酸化物−窒化物系材料層に含まれる成分のうち、群GLを構成する元素の窒化物には、例えば、AlN、Si3N4、BN等が含まれる。これら窒化物はいずれも、融点が高く、耐湿性が良好で、群GMを構成する元素の酸化物に混合することにより、酸化物の構造を複雑化して熱伝導を低減し、記録感度を向上させることができる。
このような酸化物−窒化物系材料層の具体例としては、例えば、組成式(3)、即ち、(D)X(E)100-X(mol%)で表される材料において、Eとして窒化物を用いた場合の材料を含むものが挙げられる。この式において、Dは、SnO2、Ga2O3及びZnOから選択される少なくとも1つの酸化物である。Eは窒化物であり、Si3N4及びAlNから選択される少なくとも一つである。各化合物の混合割合を示すxは、50≦X≦95を満たす。Dの混合割合が50mol%未満であれば、記録層との密着性が不十分となり、書き換え特性の低下を招きやすく、成膜速度が遅くなり、生産性が上がりにくくなる。Dの混合割合が95mol%より大きいとき、Si3N4及びAlNの混合効果が発揮されにくく、特に記録感度の向上改善には不十分となる。
また、酸化物−窒化物系材料層の他のより好ましい具体例は、組成式(4)、即ち、(SnO2)A1(Ga2O3)A2(E1)B(mol%)で表される材料を含むものである。E1は、Si3N4及びAlNから選択される少なくとも一つの窒化物である。ここで、A1及びA2は、50≦A1+A2≦95であり、且つA1、A2はどちらか一方が0でもよく、少なくともSnO2及びGa2O3の一方が含まれていればよい。Bは、5≦B≦50を満たす。A1+A2のこのような数値範囲とする理由は、組成式(3)と同様である。また、Si3N4及びAlNが上限値(50mol%)を超えると記録層4との密着性が低下し、5mol%未満では、記録感度が不十分となる。
さらに、Siの酸化物を含む組成式(5)、即ち、(D)X(SiO2)Y(E1)100-X-Y(mol%)で表される酸化物もしくは酸化物−窒化物系材料にて誘電体層を形成してもよい。ここで、DはSnO2、Ga2O3及びZnOから選択される少なくとも一つの酸化物を示し、E1はSi3N4及びAlNから選択される少なくとも一つの窒化物を示す。混合割合を示すX及びYは、50≦X≦95、5≦Y≦35、55≦X+Y≦100を満たす。Xをこのような数値範囲とする理由については、組成式(3)の場合と同様である。また、Yをこのような範囲とする理由は、Yが5未満であれば、膜を軟らかくして書き換えによる膜の剥離を抑制する効果が不足し、Yが上限値の35を超えると、記録感度の向上効果が得にくく、且つ成膜速度が低下するので生産性が上がらないからである。
上記の酸化物−フッ化物系材料の具体例については、組成式(6)、即ち、(D)X(A)100-X(mol%)で表される材料である。ここで、DはSnO2、Ga2O3及びZnOから選択される少なくとも一つの酸化物を示し、AはLaF3及びCeF3から選択される少なくとも一つのフッ化物を示し、混合割合を示すXは、50≦X≦95である。Xの数値範囲をこのようにする理由は、組成式(3)〜(5)の場合と同様である。
上述のような酸化物系材料、酸化物−窒化物系材料又は酸化物−フッ化物系材料にて誘電体層を形成することにより、誘電体層を記録層に接して形成しても、良好な記録感度、書き換え特性及び信頼性を確保できる。
上記の酸化物系材料、酸化物−窒化物系材料及び酸化物−フッ化物系材料は、以上に示した化合物以外の第三成分を含んでいてもよく、特に数%以下の不純物を含んでいても構わない。また、近隣に形成される層の組成元素が多少混じっても、その熱安定性及び耐湿性は変わらず、第1の誘電体層2及び第2の誘電体層6として好ましく用いられる。第三成分は、酸化物系材料、酸化物−窒化物系材料又は酸化物−フッ化物系材料にて誘電体層を形成する際に不可避的に含まれるもの、又は不可避的に形成されるものである。第三成分として、例えば、誘電体、金属、半金属、半導体及び非金属等のうちの少なくとも1つが挙げられる。
第三成分として含まれる誘電体は、例えば、Al2O3、Bi2O3、CeO2、CoO、Cr2O3、CuO、Cu2O、Er2O3、FeO、Fe2O3、Fe3O4、Ho2O3、In2O3、La2O3、MnO、MgSiO3、Nb2O5、Nd2O3、NiO、Sc2O3、Sm2O3、SnO、Ta2O5、Tb4O7、TeO2、TiO2、VO、WO3、Y2O3、Yb2O3、ZrO2、ZrSiO4、CrB2、LaB6、ZrB2、CrN、Cr2N、HfN、NbN、TaN、TiN、VN、ZrN、B4C、Cr3C2、HfC、Mo2C、NbC、SiC、TaC、TiC、VC、W2C、WC、及びZrC等である。
第三成分として含まれる金属は、例えば、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、La、Ce、Nd、Sm、Gd、Tb、Dy及びYb等がある。
第三成分として含まれる半金属及び半導体は、例えばC、Ge等であり、非金属では、例えばSb、Bi、Te及びSe等が挙げられる。
第1の誘電体層2及び第2の誘電体層6は、それぞれ互いに異なる組成の酸化物系材料層、酸化物−窒化物系材料層又は酸化物−フッ化物系材料層にて形成されていてもよい。第1の誘電体層2は、より優れた耐湿性を有するように組成された材料で形成されることが好ましく、例えば、組成式(5)、即ち、(D)X(SiO2)Y(E1)100-X-Y(mol%)で表される材料において、DがSnO2及びGa2O3であり、且つE1を含まない場合の例である(SnO2)40(Ga2O3)40(SiO2)20(mol%)で形成されることが好ましい。第2の誘電体層6は、記録層の急冷効果が大きくなるように組成された材料で形成されることが好ましく、例えば、組成式(4)、即ち、(SnO2)A1(Ga2O3)A2(E1)B(mol%)で表される材料において、E1がSi3N4の場合の例である(SnO2)35(Ga2O3)40(Si3N4)25(mol%)で形成されることが好ましい。
第1の誘電体層2及び第2の誘電体層6は、同じ材料で形成されていてもよく、互いに異なる材料で形成されていてもよい。例えば、第1の誘電体層2をZnO−Si3N4−SiO2の混合系材料で形成し、第2の誘電体層6をSnO2−Ga2O3−LaF3の混合系材料で形成することも可能である。このように、第1の誘電体層2及び第2の誘電体層6に用いられる酸化物系材料、酸化物−窒化物系材料及び酸化物−フッ化物系材料は、所望の機能に応じて、酸化物、窒化物及びフッ化物の種類やそれらの混合割合を最適化して形成できる。
第1の誘電体層2及び第2の誘電体層6は、各々の光路長(即ち、誘電体層の屈折率nと誘電体層の膜厚dとの積nd)を変えることにより、結晶相の記録層4の光吸収率Ac(%)と非晶質相の記録層4の光吸収率Aa(%)、記録層4が結晶相であるときの情報記録媒体の光反射率Rc(%)と記録層4が非晶質相であるときの情報記録媒体の光反射率Ra(%)、記録層4が結晶相である部分と非晶質相である部分の情報記録媒体の光の位相差Δφ、を調整することができる。記録マークの再生信号振幅を大きくして、信号品質を上げるためには、反射率差(|Rc−Ra|)又は反射率比(Rc/Ra)が大きいことが望ましい。また、記録層4がレーザ光を吸収するように、Ac及びAaも大きいことが望ましい。これらの条件を同時に満足するように第1の誘電体層2及び第2の誘電体層6の光路長を決定する。それらの条件を満足する光路長は、例えばマトリクス法(例えば、久保田広著「波動光学」岩波新書、1971年、第3章を参照。)に基づく計算によって正確に決定することができる。
以上において説明した、酸化物系材料層、酸化物−窒化物系材料層及び酸化物−フッ化物系材料層が用いられた誘電体層は、それぞれ、その組成に応じて異なる屈折率を有する。誘電体層の屈折率をn、膜厚をd(nm)、レーザ光の波長をλ(nm)とした場合、光路長ndは、nd=aλで表される。ここで、aは正の数とする。情報記録媒体の記録マークの再生信号振幅を大きくして信号品質を向上させるには、例えば、15%≦Rc、且つ、Ra≦2%であることが好ましい。また、書き換えによるマーク歪みを無くす、又は小さくするには、1.1≦Ac/Aaであることが好ましい。これらの好ましい条件が同時に満たされるように第1の誘電体層2及び第2の誘電体層6の光路長(aλ)を、マトリクス法に基づく計算により求めた。得られた光路長(aλ)、ならびにλ及びnから、誘電体層の厚さdを求めた。その結果、例えば、組成式(4)、即ち、(SnO2)A1(Ga2O3)A2(E1)B(mol%)で表され、屈折率nが1.8〜2.3である材料で第1の誘電体層2を形成する場合、その厚さは、好ましくは110nm〜160nmであることが判った。また、この材料で第2の誘電体層6を形成する場合、その厚さは、好ましくは35〜60nmであることが判った。
光吸収補正層7は、前述のように、記録層4が結晶状態であるときの光吸収率Acと非晶質状態であるときの光吸収率Aaの比Ac/Aaを調整し、書き換え時にマーク形状が歪まないようにする働きがある。光吸収補正層7は、屈折率が高く、且つ適度に光を吸収する材料で形成されることが好ましく、例えば、屈折率nが3以上5以下、消衰係数kが1以上4以下である材料を用いて形成できる。具体的には、Ge−Cr及びGe−Mo等の非晶質のGe合金、Si−Cr、Si−Mo及びSi−W等の非晶質のSi合金、Te化物、ならびにTi、Zr、Nb、Ta、Cr、Mo、W、SnTe及びPbTe等の結晶性の金属、半金属及び半導体材料から選択される材料を使用することが好ましい。光吸収補正層7の膜厚は、20nm〜60nmであることが好ましい。
反射層8は、光学的には記録層4に吸収される光量を増大させ、熱的には記録層4で生じた熱を速やかに拡散させて記録層4を急冷し、非晶質化し易くする機能を有する。さらに、反射層8は、記録層4及び誘電体層2,6を含む多層膜を使用環境から保護する機能も有する。反射層8の材料としては、例えば、Al、Au、Ag、及びCu等の熱伝導率の高い単体金属材料が挙げられる。反射層8は、その耐湿性を向上させる目的で、ならびに/あるいは熱伝導率又は光学特性(例えば、光反射率、光吸収率又は光透過率)を調整する目的で、上記の金属材料から選択される1つ又は複数の元素に、他の1つ又は複数の元素を添加した材料を使用して形成してよい。具体的には、Al−Cr、Al−Ti、Ag−Pd、Ag−Pd−Cu、Ag−Pd−Ti又はAu−Cr等の合金材料を用いることができる。これらの材料は何れも耐食性に優れ、且つ急冷機能を有する優れた材料である。同様の目的は、反射層8を2以上の層で形成することによっても達成され得る。反射層8の厚さは50〜180nmであることが好ましく、60nm〜100nmであることがより好ましい。
接着層9は、耐熱性及び接着性の高い材料、例えば、紫外線硬化性樹脂等を用いて形成してよい。具体的には、アクリレート樹脂やメタクリレート樹脂等を主成分とする光硬化材料や、エポキシ樹脂を主成分とする材料や、ホットメルト材料等が使用可能である。また、必要に応じて、接着層9を形成する前に、紫外線硬化性樹脂よりなる、厚さ2〜20μmの保護コート層を反射層8の表面に設けてもよい。接着層9の厚さは、好ましくは15〜40μmであり、より好ましくは20〜35μmである。
貼り合せ基板10は、情報記録媒体の機械的強度を高めるとともに、第1の誘電体層2から反射層8までの積層体を保護する機能を有する。貼り合せ基板10の好ましい材料は、基板1の好ましい材料と同じである。
本実施の形態の情報記録媒体は、1つの記録層を有する片面構造ディスクであるが、これに限るものではなく、2つ以上の記録層を有してもよい。
続いて、本実施の形態の情報記録媒体を製造する方法を説明する。
本実施の形態の情報記録媒体は、案内溝(グルーブ面20とランド面21)が形成された基板1(例えば、厚さ0.6mm)を成膜装置に配置し、基板1の案内溝が形成された表面に第1の誘電体層2を成膜する工程(工程a)、記録層4を成膜する工程(工程b)、第2の誘電体層6を成膜する工程(工程c)、光吸収補正層7を成膜する工程(工程d)及び反射層8を成膜する工程(工程e)を順次実施し、さらに、反射層8の表面に接着層9を形成する工程、及び貼り合せ基板10を貼り合わせる工程を実施することにより、製造される。なお、本明細書において、各層に関して「表面」というときは、特に断りのない限り、各層が形成されたときに露出している表面(厚さ方向に垂直な表面)を指すものとする。
まず、基板1の案内溝が形成された面に、第1の誘電体層2を成膜する工程aを実施する。工程aは、スパッタリング法により実施される。ここで、まず、本実施の形態において用いられるスパッタリング装置の一例について説明する。図5にはスパッタ装置を用いて成膜する様子が示されている。図5に示すように、このスパッタ装置では、真空容器39に排気口32を通して真空ポンプ(図示せず)が接続され、真空容器39内を高真空に保つことができるようになっている。ガス供給口33からは、一定流量のガスを供給できるようになっている。基板35(ここでの基板とは、膜を体積させるための基材のことである。)は陽極34に載置されている。真空容器39を接地することにより、真空容器39及び基板35が陽極に保たれている。スパッタリングターゲット36は陰極37に接続されており、スイッチ(図示せず)を介して電源に接続されている。陽極34と陰極37との間に所定の電圧を加えることにより、スパッタリングターゲット36から放出された粒子により基板35上に薄膜が形成できる。なお、以下の工程のスパッタリングでも、同様の装置を用いることができる。工程aでのスパッタリングは、高周波電源を用いて、Arガス雰囲気で実施する。スパッタリングで導入するガスは、形成する材料層に応じて、Arガスの他に、酸素ガスや窒素ガス等、混合したガス雰囲気中で実施してよい。
工程aで使用されるスパッタリングターゲットとしては、Sn、Ga及びZnから成る群GMより選ばれる少なくとも一つの元素の酸化物と、Al、Si及びBから成る群GLより選ばれる少なくとも一つの元素の酸化物及び窒化物のうちの少なくとも1つとを含むスパッタリングターゲットか、もしくは、群GMより選ばれる少なくとも一つの元素の酸化物と、La及びCeから成る群GAより選ばれる少なくとも一つの元素のフッ化物とを含むスパッタリングターゲットが用いられる。かかるスパッタリングターゲットとして、好ましくは、元素分析の結果、例えば組成式(7)、(8)で表される材料を用いる。かかるスパッタリングターゲットによれば、組成式(1)、(2)で表される材料を含む酸化物系材料層、酸化物−窒化物系材料層又は酸化物−フッ化物系材料層にて誘電体層2,6を形成できる。
上述の通り、群GMより選ばれる1又は複数の元素と、群GLより選ばれる1又は複数の元素又は群GAより選ばれる1又は複数の元素と、酸素(O)とを含み、さらに必要に応じて窒素(N)やフッ素(F)を含むスパッタリングターゲットは、群GMの元素の酸化物と、群GLの元素の酸化物及び窒化物のうち少なくとも一方もしくは群GAの元素のフッ化物との混合物の形態で提供される。本実施の形態における製造方法で使用されるスパッタリングターゲットは、群GMから選択される元素の酸化物群を、混合物に対して50mol%以上含むことが好ましく、50〜95mol%含むことがより好ましい。
上記特定の酸化物及び窒化物を含むスパッタリングターゲットとして、SnO2、Ga2O3及びZnOから選択される少なくとも1つの酸化物と、AlN、Si3N4、Al2O3及びSiO2から選択される少なくとも1つの化合物を含む材料を使用できる。より具体的には、組成式(9)、即ち、(D)x(E)100-x(mol%)(組成式中、DはSnO2、Ga2O3及びZnOから選択される少なくとも1つの酸化物を示し、EはAlN、Si3N4、Al2O3及びSiO2から選択される少なくとも1つの化合物を示し、xは、50≦x≦95を満たす。)で表される材料を含むターゲットを使用できる。このターゲットによれば、組成式(3)で表される材料を含む層が形成できる。
また、スパッタリングターゲットとして、SnO2とGa2O3とを含むものを用いてもよい。より具体的には、組成式(10)即ち、(SnO2)a1(Ga2O3)a2(E1)b(mol%)(組成式中、E1はAlN及びSi3N4から選択される少なくとも1つの窒化物を示し、a1及びa2は、50≦a1+a2≦95、且つa1,a2はどちらか一方が0でもよく、bは、5≦b≦50を満たす。)で表される材料を含むものであることが好ましい。このスパッタリングターゲットを用いれば、組成式(4)で表される材料を含む層を形成できる。
さらに、スパッタリングターゲットとしてSiO2を含むものを用いてもよく、組成式(11)、即ち、(D)x(SiO2)y(E1)100-x-y(mol%)(組成式中、DはSnO2、Ga2O3及びZnOから選択される少なくとも一つの酸化物を示し、E1はAlN及びSi3N4から選択される少なくとも1つの窒化物を示し、x及びyは、50≦x≦95、5≦y≦35、55≦x+y≦100を満たす。)で表される材料を含むものであってもよい。このスパッタリングターゲットを用いれば、組成式(5)で表される材料を含む層を形成できる。
また、群GMより選ばれる元素の酸化物と、群GAより選ばれる元素のフッ化物とを含むスパッタリングターゲットを用いてもよい。より具体的には、組成式(12)、即ち、
(D)x(A)100-x(mol%)(組成式中、DはSnO2、Ga2O3及びZnOから選択される少なくとも一つの酸化物を示し、AはLaF3及びCeF3から選択される少なくとも一つを示し、xは、50≦x≦95を満たす。)で表される材料を含むものであってよい。このスパッタリングターゲットを用いれば、組成式(6)で表される材料を含む層を形成できる。
上記の材料を含む層には、これらの化合物以外の第三成分を含んでいてもよく、特に数%以下の不純物があってもよい。また、近隣に形成される層の組成元素が多少混じってもよい。第三成分として含まれ得る成分は先に例示したとおりである。
次に、工程bを実施して、第1の誘電体層2の表面に、記録層4を成膜する。工程bもまた、スパッタリングにより実施される。スパッタリングは、直流電源を用いて、Arガス雰囲気中、又はArガスとN2ガスの混合ガス雰囲気中で実施する。工程aと同様に、目的に応じて他のガスを導入してもよい。スパッタリングターゲットは、Ge−Sb−Te、Ge−Sn−Sb−Te、Ge−Bi−Te、Ge−Sn−Bi−Te、Ge−Sb−Bi−Te、Ge−Sn−Sb−Bi−Te、Ag−In−Sb−Te及びSb−Teのうち、何れか1つの材料を含むものを使用する。成膜後の記録層4は非晶質状態である。
次に、工程cを実施して、記録層4の表面に、第2の誘電体層6を成膜する。工程cは、工程aと同様に実施される。第2の誘電体層6は、第1の誘電体層2と同じ化合物を含むがその混合比率が異なるスパタリングターゲット、又は異なる化合物を含むスパッタリングターゲットを用いて形成してもよい。例えば、第1の誘電体層2を、ZnO−Si3N4−SiO2の混合系材料で形成し、第2の誘電体層6を、SnO2−Ga2O3−LaF3の混合系材料で形成することもできる。このように、第1の誘電体層2と第2の誘電体層6は、所望の機能に応じて、含まれる酸化物、窒化物及びフッ化物の種類、ならびに/又はそれらの混合割合を最適化して形成できる。
次に、工程dを実施して、第2の誘電体層6の表面に、光吸収補正層7を成膜する。工程dにおいては、直流電源又は高周波電源を用いて、スパッタリングを実施する。スパッタリングターゲットとして、Ge−Cr及びGe−Mo等の非晶質Ge合金、Si−Cr、Si−Mo及びSi−W等の非晶質Si合金、Te化物、ならびにTi、Zr、Nb、Ta、Cr、Mo、W、SnTe及びPbTe等の結晶性の金属、半金属及び半導体材料から選択される材料から成るものを用いる。スパッタリングは、一般には、Arガス雰囲気中で実施する。
次に、工程eを実施して、光吸収補正層7の表面に、反射層8を成膜する。工程eはスパッタリングにより実施される。スパッタリングは、直流電源又は高周波電源を用いて、Arガス雰囲気中で実施する。スパッタリングターゲットとしては、Al−Cr、Al−Ti、Ag−Pd、Ag−Pd−Cu、Ag−Pd−Ti又はAu−Cr等の合金材料より成るものを使用できる。
上記のように、工程a〜eは、いずれもスパッタリング工程である。したがって、工程a〜eは、1つのスパッタリング装置内において、ターゲットを順次変更して連続的に実施できる。また、工程a〜eは、それぞれ独立したスパッタリング装置を用いて実施することも可能である。
反射層8を成膜した後、第1の誘電体層2から反射層8までが順次積層された基板1をスパッタリング装置から取り出す。それから、反射層8の表面に、紫外線硬化性樹脂を、例えばスピンコート法により塗布する。塗布した紫外線硬化性樹脂に、貼り合せ基板10を密着させて、紫外線を貼り合せ基板10側から照射して樹脂を硬化させ、貼り合わせ工程を終了させる。
貼り合せ工程が終了した後は、必要に応じて初期化工程を実施する。初期化工程は、非晶質状態である記録層4を、例えば半導体レーザを照射して、結晶化温度以上に昇温して結晶化させる工程である。初期化工程は貼り合せ工程の前に実施してもよい。このように、工程a〜e、接着層の形成工程、及び貼り合せ基板10の貼り合せ工程を順次実施することにより、実施の形態1の情報記録媒体を製造することができる。
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2として、レーザ光を用いて情報の記録及び再生を実施する、情報記録媒体の一例を説明する。図2に、その情報記録媒体の一部断面を示す。
図2に示す本実施の形態の情報記録媒体は、基板1の一方の表面に、第1の誘電体層102、界面層103、記録層4、第2の誘電体層6、光吸収補正層7及び反射層8がこの順に形成され、さらに接着層9で反射層8に貼り合せ基板10が接着された構成を有する。本実施の形態の情報記録媒体は、記録層4と第2の誘電体層6との間に界面層を有していない点において、図6に示した従来の情報記録媒体と相違する。また、基板1と記録層4との間に第1の誘電体層102と界面層103とがこの順に積層されている点において、図1に示す情報記録媒体と相違する。本実施の形態おいて、第2の誘電体層6は、実施の形態1の情報記録媒体における第1及び第2の誘電体層と同様の、酸化物系材料層、酸化物−窒化物系材料層又は酸化物−フッ化物系材料層である。その他、図2において、図1で使用した符号と同じ符号は同じ機能を有する構成要素を表し、図1を参照して説明した材料及び方法にて形成されるものである。したがって、図1で既に説明した構成要素については、ここではその詳細な説明を省略する。
本実施の形態の情報記録媒体において、第1の誘電体層102は、従来の情報記録媒体を構成していた誘電体層に使用されていた材料((ZnS)80(SiO2)20(mol%))で形成されている。したがって、界面層103は、繰り返しの記録により第1の誘電体層102と記録層4との間で生じる物質移動を防止するために設けられている。界面層103の好ましい材料及び厚さは、例えば、ZrO2−SiO2−Cr2O3やGe−Cr等の混合材料で、その厚さは、1〜10nmであることが好ましく、2〜7nmであればより好ましい。界面層103が厚すぎると、基板1の表面に形成された第1の誘電体層102から反射層8までの積層体の光学的反射率及び吸収率が変化して、記録消去性能に影響を及ぼすからである。
続いて、本実施の形態の情報記録媒体の製造方法を説明する。本実施の形態では、基板1の案内溝が形成された面に第1の誘電体層102を成膜する工程(工程h)、第1の界面層103を成膜する工程(工程i)、記録層4を成膜する工程(工程b)、第2の誘電体層6を成膜する工程(工程c)、光吸収補正層7を成膜する工程(工程d)及び反射層8を成膜する工程(工程e)を順次実施し、さらに反射層8の表面に接着層9を形成する工程及び貼り合せ基板10を貼り合わせる工程を実施することにより、情報記録媒体が製造される。工程b、c、d、及びeは、実施の形態1において説明したとおりであるから、ここではその詳細な説明を省略する。貼り合せ基板10を貼り合わせる工程が終了した後、実施の形態1に関連して説明したように、必要に応じて初期化工程を実施して、情報記録媒体を得る。
以上、実施の形態1及び2にて、図1及び図2を参照し、本発明の情報記録媒体の実施の形態として、レーザ光で記録再生する情報記録媒体を説明したが、本発明の情報記録媒体はこれらの形態に限定されない。本発明の情報記録媒体は、記録層に接する誘電体層に、上述したような酸化物系材料層、酸化物−窒化物系材料層又は酸化物−フッ化物系材料層を用いる限りにおいて、任意の形態をとりうる。即ち、本発明は、基板上に層を形成する順序、記録層の数、記録条件、及び記録容量等にかかわらず適用可能である。また、本発明の情報記録媒体は、種々の波長で記録するのに適している。したがって、本発明の情報記録媒体の構成及び製造方法は、例えば、波長630〜680nmのレーザ光で記録再生するDVD−RAMやDVD−RW、又は波長400〜450nmのレーザ光で記録再生する大容量光ディスク等に適用可能である。
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3として、電気的エネルギーを印加して情報の記録及び再生を実施する情報記録媒体の一例を示す。図3に、本実施の形態の情報記録媒体の斜視図を示す。
図3に示すように、本実施の形態の情報記録媒体は、基板201の表面に、下部電極202、記録部203及び上部電極204がこの順に形成されたメモリである。メモリの記録部203は、円柱状の記録層205及び記録層205を取り囲む誘電体層206を含む構成を有する。実施の形態1及び2において図1及び図2を参照して説明した情報記録媒体とは異なり、この形態のメモリにおいては、記録層205及び誘電体層206は同一面上に形成され、それらは積層された関係にない。しかし、記録層205及び誘電体層206はともに、メモリにおいては、基板201、下部電極202及び上部電極204を含む積層体の一部を構成しているので、それぞれ「層」と呼び得るものである。したがって、本発明の情報記録媒体には、記録層と誘電体層が同一面上にある形態のものも含まれる。
基板201として、具体的には、例えば、Si基板等の半導体基板、ポリカーボネート樹脂又はアクリル樹脂等から成る基板、SiO2基板及びAl2O3基板等の絶縁性基板、等を使用できる。下部電極202及び上部電極204は、適当な導電材料で形成される。下部電極202及び上部電極204は、例えば、Au、Ag、Pt、Al、Ti、W、Cr等の金属、又はこれらの混合物をスパッタリングすることにより形成される。
記録部203を構成する記録層205は、電気的エネルギーを印加することによって相変化する材料から成り、記録部203における相変化部と称することもできる。記録層205は、電気的エネルギーを印加することによって生じるジュール熱によって、結晶相と非晶質相との間で相変化する材料で形成される。記録層205の材料としては、例えば、Ge−Sb−Te、Ge−Sn−Sb−Te、Ge−Bi−Te、Ge−Sn−Bi−Te、Ge−Sb−Bi−Te及びGe−Sn−Sb−Bi−Te系材料が使用され、より具体的には、例えばGeTe−Sb2Te3系材料又はGeTe−Bi2Te3系材料等が使用できる。
記録部203を構成する誘電体層206は、上部電極204及び下部電極202との間に電圧を印加することによって、記録層205に流れた電流が周辺部に逃げることを防止し、記録層205を電気的及び熱的に絶縁する機能を有する。したがって、誘電体層206は、断熱部と称することもできる。誘電体層206には、酸化物系材料層、酸化物−窒化物系材料層又は酸化物−フッ化物系材料層、具体的には、上記組成式(1)又は(2)で表される材料を含む層が用いられている。これらの材料層は、高融点であること、加熱された場合でも材料層中の原子が拡散しにくいこと、ならびに熱伝導率が低いこと等から、誘電体層206に好ましく用いられる。
本実施の形態については、後述の実施例において、その作動方法とともにさらに説明する。
本発明をより具体的に説明する。
まず、本発明の情報記録媒体の誘電体層を形成する際に用いられる酸化物系材料、酸化物−窒化物系材料及び酸化物−フッ化物系材料からなるターゲットに対し、公称組成(換言すれば、供給に際してターゲットメーカーが公に表示している組成)と分析組成との関係を、予め試験により確認した。
本試験では、その一例として、組成式(10)に相当する(SnO2)30(Ga2O3)40(Si3N4)30(mol%)で公称組成が表示された、スパッタリングターゲットを用いた。このスパッタリングターゲットを粉末状にし、X線マイクロアナライザー法により組成分析を実施した。この結果、スパッタリングターゲットの分析組成が、各元素の割合(原子%)で示される組成式として得られた。分析結果を表1に示す。さらに、表1には、公称組成から算出される元素組成である、換算組成も示す。
表1に示すように、分析組成は換算組成とほぼ等しかった。この結果から、組成式(10)により表記されるスパッタリングターゲットの実際の組成(即ち、分析組成)は、計算により求められる元素組成(即ち、換算組成)とほぼ一致し、したがって公称組成が適正であることが確認された。そこで、以下の実施例においては、スパッタリングターゲットの組成を公称組成(mol%)で表す。また、スパッタリングターゲットの公称組成と、このスパッタリングターゲットを用いてスパッタリング法により形成した酸化物系材料層、酸化物−窒化物系材料層、及び酸化物−フッ化物系材料層の組成(mol%)とは、同じものとみなして差し支えないことも確認した。したがって、以下の実施例では、スパッタリングターゲットの組成の表示を以って、このスパッタリングターゲットを用いて形成された層の組成とした。
(実施例1)
実施例1では、実施の形態1で説明した図1に示す情報記録媒体において、第1の誘電体層2及び第2の誘電体層6を、(SnO2)95(AlN)5(mol%)で公称組成が表示されたスパッタリングターゲットを用いて形成した。第1の誘電体層2及び第2の誘電体層6は同じ材料で形成した。以下、本実施例の情報記録媒体の作製方法を説明する。以下の説明においては、図1に示した各構成要素と同じ参照番号を用いる。
まず、基板1として、深さ56nm、トラックピッチ(基板1の主面に平行な面内におけるグルーブ表面及びランド表面の中心間距離)0.615μmの案内溝が片側表面に予め設けられた、直径120mm、厚さ0.6mmの円形のポリカーボネート基板を準備した。
基板1上に、厚さ150nmの第1の誘電体層2、厚さ8nmの記録層4、厚さ50nmの第2の誘電体層6、厚さ40nmの光吸収補正層7及び厚さ80nmの反射層8を、この順に、スパッタリング法により以下に説明する方法で成膜した。
第1の誘電体層2と第2の誘電体層6を構成する材料として、(SnO2)95(AlN)5(mol%)を用いた。
第1の誘電体層2及び第2の誘電体層6を形成する工程においては、上述の材料から成るスパッタリングターゲット(直径100mm、厚さ6mm)を成膜装置に取り付けて、0.13Pa圧力下、Arガスと酸素ガスとの混合ガス(酸素ガス分圧3%)雰囲気中で400Wの高周波スパッタリングを実施して成膜した。
記録層4を形成する工程は、GeTe−Sb2Te3擬二元系組成のGeの一部をSnで置換したGe−Sn−Sb−Te系材料から成るスパッタリングターゲット(直径100mm、厚み6mm)を成膜装置に取り付けて、0.13Pa圧力下、Arガスと窒素ガスとの混合ガス(窒素ガス分圧3%)雰囲気中で100Wの直流スパッタリングを実施した。記録層の組成は、Ge27Sn8Sb12Te53(原子%)であった。
光吸収補正層7を形成する工程は、組成がGe80Cr20(原子%)の材料から成るスパッタリングターゲット(直径100mm、厚さ6mm)を成膜装置に取り付けて、約0.4Pa圧力下、Arガス雰囲気中で300Wの直流スパッタリングを実施した。
反射層8を形成する工程は、Ag−Pd−Cu合金から成るスパッタリングターゲット(直径100mm、厚さ6mm)を成膜装置に取り付けて、約0.4Pa圧力下、Arガス雰囲気中で200Wの直流スパッタリングを実施した。
反射層8を形成した後、紫外線硬化性樹脂を反射層8上に塗布した。塗布した紫外線硬化性樹脂の上に、直径120mm、厚さ0.6mmのポリカーボネート製の貼り合せ基板10を密着させた。次いで、貼り合せ基板10の側から紫外線を照射して樹脂を硬化させ、貼り合せ基板10を反射層8に貼り合わせた。
貼り合せ基板10を反射層8に貼り合わせた後、波長810nmの半導体レーザを使用して初期化工程を実施し、記録層4を結晶化させた。初期化工程の終了により、情報記録媒体の作製が完了した。
(実施例2)
実施例2の情報記録媒体は、第1の誘電体層2及び第2の誘電体層6を、(Ga2O3)80(Si3N4)20(mol%)で公称組成が表示されたスパッタリングターゲットを用いて形成する以外は、実施例1の情報記録媒体の場合と同様に作製した。
(実施例3)
実施例3の情報記録媒体は、第1の誘電体層2及び第2の誘電体層6を、(SnO2)50(Si3N4)50(mol%)で公称組成が表示されたスパッタリングターゲットを用いて形成する以外は、実施例1の情報記録媒体の場合と同様に作製した。
(実施例4)
実施例4の情報記録媒体は、第1の誘電体層2及び第2の誘電体層6を、(SnO2)30(Ga2O3)40(Si3N4)30(mol%)で公称組成が表示されたスパッタリングターゲットを用いて形成する以外は、実施例1の情報記録媒体の場合と同様に作製した。
(実施例5)
実施例5の情報記録媒体は、第1の誘電体層2及び第2の誘電体層6を、(SnO2)40(Ga2O3)40(SiO2)20(mol%)で公称組成が表示されたスパッタリングターゲットを用いて形成する以外は、実施例1の情報記録媒体の場合と同様に作製した。
(実施例6)
実施例6の情報記録媒体は、第1の誘電体層2及び第2の誘電体層6を、(SnO2)30(Ga2O3)30(SiO2)20(Si3N4)20(mol%)で公称組成が表示されたスパッタリングターゲットを用いて形成する以外は、実施例1の情報記録媒体の場合と同様に作製した。
(実施例7)
実施例7の情報記録媒体は、第1の誘電体層2及び第2の誘電体層6を、(ZnO)40(Ga2O3)40(SiO2)10(Si3N4)10(mol%)で公称組成が表示されたスパッタリングターゲットを用いて形成する以外は、実施例1の情報記録媒体の場合と同様に作製した。
(実施例8)
実施例8の情報記録媒体は、第1の誘電体層2及び第2の誘電体層6を、(ZnO)20(SnO2)60(BN)20(mol%)で公称組成が表示されたスパッタリングターゲットを用いて形成する以外は、実施例1の情報記録媒体の場合と同様に作製した。
(実施例9)
実施例9の情報記録媒体は、第1の誘電体層2及び第2の誘電体層6を、(ZnO)30(SnO2)30(AlN)20(SiO2)20(mol%)で公称組成が表示されたスパッタリングターゲットを用いて形成する以外は、実施例1の情報記録媒体の場合と同様に作製した。
(実施例10)
実施例10の情報記録媒体は、第1の誘電体層2及び第2の誘電体層6を、(ZnO)20(SnO2)20(Ga2O3)40(AlN)20(mol%)で公称組成が表示されたスパッタリングターゲットを用いて形成する以外は、実施例1の情報記録媒体の場合と同様に作製した。
(実施例11)
実施例11の情報記録媒体は、第1の誘電体層2及び第2の誘電体層6を、(SnO2)70(Al2O3)30(mol%)で公称組成が表示されたスパッタリングターゲットを用いて形成する以外は、実施例1の情報記録媒体の場合と同様に作製した。
(実施例12)
実施例12の情報記録媒体は、第1の誘電体層2及び第2の誘電体層6を、(SnO2)70(AlN)30(mol%)で公称組成が表示されたスパッタリングターゲットを用いて形成する以外は、実施例1の情報記録媒体の場合と同様に作製した。
(実施例13)
実施例13の情報記録媒体は、第1の誘電体層2及び第2の誘電体層6を、(SnO2)60(Ga2O3)20(Al2O3)20(mol%)で公称組成が表示されたスパッタリングターゲットを用いて形成する以外は、実施例1の情報記録媒体の場合と同様に作製した。
(実施例14)
実施例14の情報記録媒体は、第1の誘電体層2及び第2の誘電体層6を、(SnO2)40(Ga2O3)40(AlN)20(mol%)で公称組成が表示されたスパッタリングターゲットを用いて形成する以外は、実施例1の情報記録媒体の場合と同様に作製した。
(実施例15)
実施例15の情報記録媒体は、第1の誘電体層2及び第2の誘電体層6を、(SnO2)70(LaF3)30(mol%)で公称組成が表示されたスパッタリングターゲットを用いて形成する以外は、実施例1の情報記録媒体の場合と同様に作製した。
(実施例16)
実施例16の情報記録媒体は、第1の誘電体層2及び第2の誘電体層6を、(ZnO)50(CeF3)50(mol%)で公称組成が表示されたスパッタリングターゲットを用いて形成する以外は、実施例1の情報記録媒体の場合と同様に作製した。
(実施例17)
実施例17の情報記録媒体は、第1の誘電体層2及び第2の誘電体層6を、(SnO2)30(Ga2O3)40(LaF3)30(mol%)で公称組成が表示されたスパッタリングターゲットを用いて形成する以外は、実施例1の情報記録媒体の場合と同様に作製した。
(比較例1)
比較例1の情報記録媒体として、図6に示す構成の情報記録媒体を作製した。ここで、第1の誘電体層102及び第2の誘電体層106は、(ZnS)80(SiO2)20(mol%)のスパッタリングタ−ゲットで形成した。また、第1の界面層103及び第2の界面層105は、それぞれZrO2−SiO2−Cr2O3から成る、厚さ5nmの層とした。
第1の誘電体層102及び第2の誘電体層106は、(ZnS)80(SiO2)20(mol%)から成るスパッタリングターゲット(直径100mm、厚さ6mm)を使用して、圧力0.13Paにて高周波スパッタリングを実施して形成した。
第1の界面層103及び第2の界面層105は、(ZrO2)25(SiO2)25(CrO2)50(mol%)の組成を有する材料から成るスパッタリングターゲット(直径100mm、厚さ6mm)を成膜装置に取り付けて、高周波スパッタリングで形成した。それ以外の光吸収補正層7、反射層8及び貼り合せ基板10との貼り合せは、実施例1の情報記録媒体の場合と同様である。
(比較例2)
比較例2の情報記録媒体は、第1の誘電体層2及び第2の誘電体層6を、SnO2のみの公称組成が表示されたスパッタリングターゲットを用いて形成する以外は、実施例1の情報記録媒体の場合と同様に作製した。
(比較例3)
比較例3の情報記録媒体は、第1の誘電体層2及び第2の誘電体層6を、Ga2O3のみの公称組成が表示されたスパッタリングターゲットを用いて形成する以外は、実施例1の情報記録媒体の場合と同様に作製した。
(比較例4)
比較例4の情報記録媒体は、第1の誘電体層2及び第2の誘電体層6を、ZnOのみの公称組成が表示されたスパッタリングターゲットを用いて形成する以外は、実施例1の情報記録媒体の場合と同様に作製した。
(比較例5)
比較例5の情報記録媒体は、第1の誘電体層2及び第2の誘電体層6を、(SnO2)50(Ga2O3)50(mol%)の公称組成が表示されたスパッタリングターゲットを用いて形成する以外は、実施例1の情報記録媒体の場合と同様に作製した。
次に、以上の実施例1〜17及び比較例1〜5の情報記録媒体に対して評価を行った。以下に評価方法について説明する。評価項目は、(1)誘電体層と記録層との密着性、(2)記録感度、(3)書き換え性能、の3つとした。
まず、(1)の密着性は、高温高湿条件下での剥離の有無に基づいて評価した。具体的には、初期化工程後の情報記録媒体を、温度90℃で相対湿度80%の高温高湿槽に100時間放置した後、記録層4とこれに接する誘電体層2,6との界面の少なくとも一方で剥離が発生していないかどうかを、光学顕微鏡で目視観察した。
(2)記録感度と(3)繰り返し書き換え性能は、記録再生評価装置を用い、最適パワーと、その記録パワーでの繰り返し回数を評価した。
情報記録媒体の信号評価は、情報記録媒体を回転させるスピンドルモータと、レーザ光を発する半導体レーザを備えた光学ヘッドと、レーザ光を情報記録媒体の記録層4上に集光させる対物レンズとを具備した一般的な構成の情報記録システムを用いた。具体的には、波長660nmの半導体レーザと開口数0.6の対物レンズを使用し、4.7GB容量相当の記録を行った。このとき、情報記録媒体を回転させる線速度は8.2m/秒とした。また、後述の平均ジッタ値を求める際のジッタ値の測定には、タイムインターバルアナライザーを用いた。
まず、繰り返し回数を決定する際の測定条件を決めるために、ピークパワー(Pp)及びバイアスパワー(Pb)を以下の手順で設定した。上記のシステムを用いて、レーザ光を、高パワーレベルのピークパワー(mW)と低パワーレベルのバイアスパワー(mW)との間でパワー変調しながら情報記録媒体に向けて照射して、マーク長0.42μm(3T)〜1.96μm(14T)のランダム信号を(グルーブ記録により)記録層4の同一のグルーブ表面に10回記録した。そして、前端間のジッタ値(記録マーク前端部におけるジッタ)及び後端間のジッタ値(記録マーク後端部におけるジッタ)を測定し、これらの平均値として平均ジッタ値を求めた。バイアスパワーを一定の値に固定し、ピークパワーを種々変化させた各記録条件について平均ジッタ値を測定し、ピークパワーを徐々に増加させて、ランダム信号の平均ジッタ値が13%に達したとき、ピークパワーの1.3倍のパワーを仮にPp1と決めた。次に、ピークパワーをPp1に固定し、バイアスパワーを種々変化させた各記録条件について平均ジッタ値を測定し、ランダム信号の平均ジッタ値が13%以下となったときの、バイアスパワーの上限値及び下限値の平均値をPbに設定した。このバイアスパワーをPbに固定し、ピークパワーを種々変化させた各記録条件について平均ジッタ値を測定し、ピークパワーを徐々に増加させて、ランダム信号の平均ジッタ値が13%に達したとき、ピークパワーの1.3倍のパワーをPpに設定した。このようにして設定したPp及びPbの条件で記録した場合、例えば10回繰り返し記録において、8〜9%の平均ジッタ値が得られた。システムのレーザパワー上限値を考慮すれば、Pp≦14mW、Pb≦8mWを満足することが望ましい。
繰り返し回数は、本実施例では平均ジッタ値に基づいて決定した。上記のようにして設定されPpとPbとでレーザ光をパワー変調しながら情報記録媒体に向けて照射して、マーク長0.42μm(3T)〜1.96μm(14T)のランダム信号を(グルーブ記録により)同一のグルーブ表面に所定回数繰り返して連続記録した後、平均ジッタ値を測定した。平均ジッタ値は、繰り返し回数が1、2、3、5、10、100、200、500回で測定し、1000回以上は1000回毎に測定して10000回まで評価した。繰り返し書き換え性能は、平均ジッタ値が13%に達したときの繰り返し回数により評価した。繰り返し回数が大きいほど、繰り返し書き換え性能が高く、上記のような情報記録媒体を、例えば画像音声レコーダで用いる場合には、繰り返し回数は1万回以上であることが好ましい。
表2に、実施例1〜17及び比較例1〜5の情報記録媒体における(1)密着性、(2)記録感度、(3)書き換え性能の評価結果を示す。なお、実施例1〜17と比較例2〜6の情報記録媒体について、誘電体層に用いた材料の原子%も併記しておく。ここでは、密着性の評価結果として上記高温高湿試験後の剥離の有無を示した。記録感度は、設定されたピークパワーを示し、14mW以下であれば良好であると評価した。また、書き換え性能は、繰り返し回数が1000回未満を×、1000回以上1万回未満のものを△、1万回以上のものを○と評価した。
表2からも明らかなように、まず、誘電体層2,6の材料がSnO2、Ga2O3、ZnOの場合は、記録層4と誘電体層2,6との密着性は良好だが、記録感度が不十分であった(比較例2〜5)。これに対し、実施例1〜17のように、SnO2、Ga2O3及びZnOからなる酸化物群に、SiO2、AlN、BN、Si3N4、LaF3、CeF3を本発明において規定した範囲内で混合することにより、良好な記録感度が得られた。
また、記録感度と書き換え性能の均衡を考慮すると、SnO2、Ga2O及びZnOの酸化物群の割合は、50mol%以上であることが好ましく、SiO2、AlN、BN、Si3N4、LaF3、CeF3の割合は、記録感度を考慮すると少なくとも5mol%以上であることが好ましいことが確認された。
次に、実施の形態2で示す構成の情報記録媒体の実施例について以下に説明する。
(実施例18)
本実施例の情報記録媒体は、実施の形態2で説明した図2に示す情報記録媒体であり、第1の誘電体層102は(ZnS)80(SiO2)20(mol%)を用いて形成し、界面層103はZrO2−SiO2−Cr2O3を用いて2〜5nmの厚さで形成した。これ以外の構成については、実施例1の情報記録媒体の場合と同様に作製した。実施例18では、記録層4上に接して配置された第2の誘電体層6を、実施例1で用いた材料のスパッタリングターゲットを用いて形成した。
(実施例19)
実施例19の情報記録媒体は、第2の誘電体層6を、実施例2で用いた材料のスパッタリングターゲットを用いて形成した以外は、実施例18の情報記録媒体の場合と同様に作製した。
(実施例20)
実施例20の情報記録媒体は、第2の誘電体層6を、実施例3で用いた材料のスパッタリングターゲットを用いて形成した以外は、実施例18の情報記録媒体の場合と同様に作製した。
(実施例21)
実施例17の情報記録媒体は、第2の誘電体層6を、実施例4で用いた材料のスパッタリングターゲットを用いて形成した以外は、実施例21の情報記録媒体の場合と同様に作製した。
(実施例22)
実施例22の情報記録媒体は、第2の誘電体層6を、実施例5で用いた材料のスパッタリングターゲットを用いて形成した以外は、実施例18の情報記録媒体の場合と同様に作製した。
(実施例23)
実施例23の情報記録媒体は、第2の誘電体層6を、実施例7で用いた材料のスパッタリングターゲットを用いて形成した以外は、実施例18の情報記録媒体の場合と同様に作製した。
(実施例24)
実施例24の情報記録媒体は、第2の誘電体層6を、実施例9で用いた材料のスパッタリングターゲットを用いて形成した以外は、実施例18の情報記録媒体の場合と同様に作製した。
(実施例25)
実施例25の情報記録媒体は、第2の誘電体層6を、実施例10で用いた材料のスパッタリングターゲットを用いて形成した以外は、実施例18の情報記録媒体の場合と同様に作製した。
(実施例26)
実施例26の情報記録媒体は、第2の誘電体層6を、実施例11で用いた材料のスパッタリングターゲットを用いて形成した以外は、実施例18の情報記録媒体の場合と同様に作製した。
(実施例27)
実施例27の情報記録媒体は、第2の誘電体層6を、実施例12で用いた材料のスパッタリングターゲットを用いて形成した以外は、実施例18の情報記録媒体の場合と同様に作製した。
(実施例28)
実施例28の情報記録媒体は、第2の誘電体層6を、実施例13で用いた材料のスパッタリングターゲットを用いて形成した以外は、実施例18の情報記録媒体の場合と同様に作製した。
(実施例29)
実施例29の情報記録媒体は、第2の誘電体層6を、実施例14で用いた材料のスパッタリングターゲットを用いて形成した以外は、実施例18の情報記録媒体の場合と同様に作製した。
(比較例6)
比較例6の情報記録媒体は、第2の誘電体層6を、比較例2で用いた材料のスパッタリングターゲットを用いて形成した以外は、実施例18の情報記録媒体の場合と同様に作製した。
(比較例7)
比較例7の情報記録媒体は、第2の誘電体層6を、比較例3で用いた材料のスパッタリングターゲットを用いて形成した以外は、実施例18の情報記録媒体の場合と同様に作製した。
(比較例8)
比較例8の情報記録媒体は、第2の誘電体層6を、比較例5で用いた材料のスパッタリングターゲットを用いて形成した以外は、実施例18の情報記録媒体の場合と同様に作製した。
表3に、実施例18〜29及び比較例6〜8の情報記録媒体における(1)密着性、(2)記録感度、(3)書き換え性能を示す。ここでの表記の基準は、表2に示したものと同様である。
表3からも明らかなように、基板1と記録層4との間に第1の誘電体層102と界面層103を設け、第2の誘電体層6のみに本発明の材料を適用した場合も、表2とほぼ同様の傾向が認められた。すなわち、SnO2、Ga2O3及びZnOから成る酸化物群は、記録層4と誘電体層6との密着性は良好だが、記録感度が不十分であった(比較例6〜8)。これに対し、実施例18〜29のように、SnO2、Ga2O3及びZnOから成る酸化物群にSiO2、AlN、BN、Si3N4、LaF3、CeF3を本発明で規定した範囲内で混合することにより、良好な記録感度が得られた。
また、密着性と記録感度との均衡を考慮すると、SnO2、Ga2O3及びZnOの酸化物群の割合は、50mol%以上であることが好ましく、SiO2、AlN、BN、Si3N4、LaF3、CeF3の割合は、記録感度を考慮すると少なくとも5mol%以上であることが好ましいことが確認された。
実施例1〜29の情報記録媒体のように、記録層に接して形成される誘電体層として上述のような酸化物系材料層、酸化物−窒化物系材料層及び酸化物−フッ化物系材料層を用いたとき、層数を減少させることができるという目的が達成されるとともに、良好な書き換え性能が得られる。なお、本発明はこれらの実施例に限定されない。本発明の情報記録媒体は、記録層に接して形成される層のうち、少なくとも1つが上述のような酸化物系材料層、酸化物−窒化物系材料層又は酸化物−フッ化物系材料層にて形成されていればよい。
(実施例30)
以上の実施例1〜29では、光学的手段によって情報を記録する情報記録媒体を作製した。実施例30では、図3に示すような、電気的手段によって情報を記録する情報記録媒体を作製した。これはいわゆるメモリである。
本実施例の情報記録媒体は、次のようにして作製した。まず、表面を窒化処理した、長さ5mm、幅5mm及び厚さ1mmのSi基板201を準備した。この基板201の上に、Auの下部電極202を1.0mm×1.0mmの領域に厚さ0.1μmで形成した。下部電極202の上に、Ge38Sb10Te52(化合物としてはGe8Sb2Te11と表記される)の材料にて相変化部として機能する記録層205(以下、相変化部205と称する。)を直径0.2mmの円形領域に厚さ0.1μmとなるように形成し、(ZnO)40(Ga2O3)40(SiO2)10(Si3N4)10(mol%)の材料を用いて、断熱部として機能する誘電体層206(以下、断熱部206と称する。)を、0.6mm×0.6mmの領域(但し相変化部205を除く)に、相変化部205と同じ厚さとなるように形成した。さらに、Auの上部電極204を0.6mm×0.6mmの領域に厚さ0.1μmで形成した。下部電極202、相変化部205、断熱部206及び上部電極204は、いずれも、スパッタリング法で形成した。
相変化部205を成膜する工程では、Ge−Sb−Te系材料から成るスパッタリングターゲット(直径100mm、厚さ6mm)を成膜装置に取り付け、パワー100Wで、Arガスを導入して直流スパッタリングを行った。スパッタ時の圧力は約0.13Paとした。また、断熱部206を成膜する工程では、(ZnO)40(Ga2O3)40(SiO2)10(Si3N4)10(mol%)の組成を有する材料から成るスパッタリングターゲット(直径100mm、厚さ6mm)を成膜装置に取り付けて、約0.13Paの圧力下で、高周波スパッタリングを行った。パワーは400Wとした。スパッタリング中、Arガスを導入した。これら工程でのスパッタリングは、相変化部205及び断熱部206が互いに積層しないように、成膜すべき面以外の領域をマスク治具で覆って各々行った。なお、相変化部205及び断熱部206の形成の順序は問わず、いずれを先に行ってもよい。また、相変化部205及び断熱部206により記録部203を構成する。相変化部205は本発明に言うところの記録層に該当し、断熱部206は本発明に言うところの材料層に該当する。
なお、下部電極202及び上部電極204は、電極形成技術の分野において一般的に採用されているスパッタリング方法によって成膜できるので、それらの成膜工程についての詳細な説明は省略する。
以上のようにして作製した情報記録媒体に電気的エネルギーを印加することによって相変化部205にて相変化が起こることを、図4に示すシステムにより確認した。図4に示す情報記録媒体の断面図は、図3に示す情報記録媒体をI−I線に沿って厚さ方向に切断した断面である。
より詳細には、図4に示すように、2つの印加部212を下部電極202及び上部電極204にAuリード線でそれぞれボンディングすることによって、印加部212を介して、電気的書き込み/読み出し装置214を情報記録媒体(メモリ)に接続した。この電気的書き込み/読み出し装置214において、下部電極202と上部電極204に各々接続されている印加部212の間には、パルス発生部208がスイッチ210を介して接続され、また、抵抗測定器209がスイッチ211を介して接続されていた。抵抗測定器209は、抵抗測定器209によって測定される抵抗値の高低を判定する判定部213に接続されていた。パルス発生部208によって印加部212を介して上部電極204及び下部電極202の間に電流パルスを流し、下部電極202と上部電極204との間の抵抗値を抵抗測定器209によって測定し、この抵抗値の高低を判定部213で判定した。一般に、相変化部205の相変化によって抵抗値が変化するため、この判定結果に基づいて、相変化部205の相の状態を知ることができる。
実施例30の場合、相変化部205の融点は630℃、結晶化温度は170℃、結晶化時間は130nsであった。下部電極202と上部電極204の間の抵抗値は、相変化部205が非晶質相状態では1000Ω、結晶相状態では20Ωであった。相変化部205が非晶質相状態(即ち高抵抗状態)のとき、下部電極202と上部電極204との間に、20mA、150nsの電流パルスを印加したところ、下部電極202と上部電極204の間の抵抗値が低下し、相変化部205が非晶質相状態から結晶相状態に転移した。次に、相変化部205が結晶相状態(即ち低抵抗状態)のとき、下部電極202と上部電極204の間に、200mA、100nsの電流パルスを印加したところ、下部電極202と上部電極204の間の抵抗値が上昇し、相変化部205が結晶相から非晶質相に転移した。
以上の結果から、相変化部205の周囲の断熱部206として、(ZnO)40(Ga2O3)40(SiO2)10(Si3N4)10(mol%)の組成を有する材料を含む層を形成した場合、電気的エネルギーを付与することによって、相変化部205に相変化を生起させることができ、情報を記録する機能を持たせることができることが確認できた。この現象は、実施例1〜29の記録感度を鑑みると、実施例1〜29で用いた酸化物系材料層、酸化物−フッ化物系材料層でも同様の効果が得られると考えられる。
実施例30のように、円柱状の相変化部205の周囲に、誘電体である(ZnO)40(Ga2O3)40(SiO2)10(Si3N4)10(mol%)の断熱部206を設けると、上部電極204及び下部電極202との間に電圧を印加することによって相変化部205に流れた電流がその周辺部に逃げることを効果的に抑制し得る。その結果、電流により生じるジュール熱によって相変化部205の温度を効率的に上昇させることができる。特に、相変化部205を非晶質相状態に転移させる場合には、相変化部205のGe38Sb10Te52を一旦溶融させて急冷する過程が必要である。相変化部205のこの溶融は、相変化部205の周囲に断熱部206を設けることによって、より小さい電流で生起し得る。
断熱部206に用いた(ZnO)40(Ga2O3)40(SiO2)10(Si3N4)10(mol%)は、高融点であり、熱による原子拡散も生じにくいので、上述のような電気的メモリに適用することが可能である。また、相変化部205の周囲に断熱部206が存在すると、断熱部206が障壁となるので、相変化部205は記録部203の面内において電気的及び熱的に実質的に隔離される。このことを利用して、情報記録媒体に、複数の相変化部205を断熱部206で互いに隔離された状態で設けて、情報記録媒体のメモリ容量を増やすこと、ならびにアクセス機能及びスイッチング機能を向上させることが可能となる。あるいは、情報記録媒体自体を複数個つなぐことも可能である。
以上、種々の実施例を通じて本発明の情報記録媒体について説明してきたように、光学的手段で記録する情報記録媒体及び電気的手段で記録する情報記録媒体のいずれにも、本発明で規定した酸化物系材料層、酸化物−窒化物系材料層又は酸化物−フッ化物系材料層を記録層に接するように設けること(誘電体層又は断熱部に適用すること)により、これまで実現されなかった構成を実現でき、従来の情報記録媒体よりも優れた性能が得られる。