JP4242674B2 - 情報記録媒体とその製造方法 - Google Patents

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    • G11B7/24Record carriers characterised by shape, structure or physical properties, or by the selection of the material
    • G11B7/2403Layers; Shape, structure or physical properties thereof
    • G11B7/24035Recording layers
    • G11B7/24038Multiple laminated recording layers

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学的もしくは電気的に情報を記録し、消去し、書き換え、および再生する情報記録媒体ならびにその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
発明者は、データファイルおよび画像ファイルとして使える、大容量な書き換え型相変化情報記録媒体である、4.7GB/DVD−RAMを開発した。これは既に商品化されている。
【0003】
この4.7GB/DVD−RAMは、例えば日本国特許公開公報2001−322357号(特許文献1)に開示されている。この公報に開示されているDVD−RAMの構成を、図10に示す。図10に示す情報記録媒体31は、基板1の一方の表面に、第1の誘電体層102、第1の界面層103、記録層4、第2の界面層105、第2の誘電体層106、光吸収補正層7、および反射層8がこの順に形成されている7層構造を有する。この情報記録媒体において、第1の誘電体層は、第2の誘電体層よりも、入射されるレーザ光により近い位置に存在する。第1の界面層と第2の界面層も同じ関係を有する。このように、本明細書においては、情報記録媒体が、同じ機能を有する層を2以上含む場合、入射されるレーザ光から見て近い側にあるものから、順に「第1」「第2」「第3」・・・と称する。
【0004】
第1の誘電体層102と第2の誘電体層106は、光学距離を調節して記録層4の光吸収効率を高め、結晶相の反射率と非晶質相の反射率との差を大きくして信号振幅を大きくする機能を有する。従来誘電体層の材料として使用している、ZnS−20mol%SiO2(本明細書において(ZnS)80(SiO220で表されることがある)は非晶質材料で、熱伝導率が低く、透明であって且つ高屈折率を有する。また、ZnS−20mol%SiO2は、膜形成時の成膜速度が大きく、機械特性および耐湿性も良好である。このように、ZnS−20mol%SiO2は、誘電体層を形成するのに適した優れた材料である。
【0005】
第1の誘電体層102および第2の誘電体層106の熱伝導率が低いと、記録層4にレーザ光が入射した際に生じる熱が、誘電体層102または106の面内方向に拡散しにくく、記録層4から反射層8の方へ厚さ方向において速やかに拡散する。特に、第2の誘電体層106の熱伝導率が低い場合には、第2の誘電体層106によって記録層4と反射層8との間がより断熱される。記録層4と反射層8と間の断熱の度合いが大きいほど、記録層4がより短い時間で冷却されることとなり、非晶質マーク(記録マーク)が形成され易くなる。記録マークが形成されにくい場合は、高いピークパワーで記録する必要があり、記録マークが形成され易い場合は低いピークパワーで記録できる。誘電体層の熱伝導率が低い場合は、低いピークパワーで記録できるので、情報記録媒体の記録感度は高くなる。一方、誘電体層の熱伝導率が高い場合は、高いピークパワーで記録するので、情報記録媒体の記録感度は低くなる。情報記録媒体中の誘電体層は、熱伝導率を精度良く測定できないほど、薄い膜の形態で存在する。そのため、発明者らは、誘電体層の熱伝導率の大きさを知る相対的な判断基準として、情報記録媒体の記録感度を採用している。
【0006】
記録層4は、Ge−Sn−Sb−Teを含む、高速で結晶化する材料を用いて形成する。かかる材料を記録層4として有する情報記録媒体は、優れた初期記録性能を有するだけでなく、優れた記録保存性および書き換え保存性をも有する。相変化情報記録媒体は、記録層4が結晶相と非晶質相との間で可逆的相変態を生じることを利用して情報の記録、消去および書き換えを行う。高パワーのレーザ光(ピークパワー)を記録層4に照射して急冷すると、照射部が非晶質相となり記録マークが形成される。低パワーのレーザ光(バイアスパワー)を照射して記録層を昇温して徐冷すると、照射部が結晶相となり記録されていた情報は消去される。ピークパワーレベルとバイアスパワーレベルとの間でパワー変調したレーザ光を記録層に照射することにより、既に記録されている情報を消去しながら新しい情報に書き換えていくことができる。繰り返し書き換え性能は、ジッタ値が実用上問題の無い範囲で書き換えを繰り返し得る最大回数で表される。この回数が多いほど、繰り返し書き換え性能が良いといえる。特に、データファイル用の情報記録媒体は、優れた繰り返し書き換え性能を有することが望まれる。
【0007】
第1の界面層103および第2の界面層105は、第1の誘電体層102と記録層4との間、および第2の誘電体層106と記録層4との間で生じる物質移動を防止する機能を有する。ここで物質移動とは、レーザ光を記録層に照射して繰り返し書き換えている間に、第1及び第2の誘電体層に含まれるZnS−20mol%SiO2のSが記録層に拡散していく現象をいう。多量のSが記録層に拡散すると、記録層の反射率低下を引き起こし、繰り返し書き換え性能が悪化する。この現象は既に知られている(非特許文献1、N. Yamada et al. Japanese Journal of Applied Physics Vol.37 (1998) pp. 2104-2110参照)。また、日本国特許公開公報平10−275360号(特許文献2)および国際公開第WO97/34298パンフレット(特許文献3)には、この現象を防止する界面層を、Geを含む窒化物を使用して形成することが開示されている。
【0008】
光吸収補正層107は、記録層4が結晶状態であるときの光吸収率Acと非晶質状態であるときの光吸収率Aaの比Ac/Aaを調整し、書き換え時にマーク形状が歪まないようにする働きがある。反射層8は、光学的には記録層4に吸収される光量を増大させる機能を有し、熱的には記録層4で生じた熱を速やかに拡散させて急冷し、記録層4を非晶質化し易くするという機能を有する。反射層8はまた、多層膜を使用環境から保護する機能を有している。
【0009】
このように、図10に示す情報記録媒体は、それぞれが上述のように機能する7つの層を積層した構造とすることによって、4.7GBという大容量において、優れた繰り返し書き換え性能と高い信頼性を確保し、商品化に至ったものである。
【0010】
また、情報記録媒体の誘電体層に適した材料としては、予てより種々のものが提案されている。例えば、日本国特許公開公報平5−109115号(特許文献4)には、光情報記録媒体において、耐熱保護層が、1600K以上の融点をもつ高融点元素と低アルカリガラスとの混合物により形成されていることが開示されている。同公報には、高融点元素として、Nb、Mo、Ta、Ti、Cr、Zr、およびSiが挙げられている。また、同公報には、低アルカリガラスはSiO2、BaO、B23またはAl23を主成分とするものであることが開示されている。
【0011】
日本国特許公開公報平5−159373号(特許文献5)には、光情報記録媒体において、耐熱保護層がSiよりも融点の高い窒化物、炭化物、酸化物、硫化物のうちの少なくとも1種の化合物と、低アルカリガラスとの混合物により形成されていることが開示されている。同公報には、高融点の化合物として、Nb、Zr、Mo、Ta、Ti、Cr、Si、Zn、Alの炭化物、酸化物、硫化物が例示されている。また、同公報には、低アルカリガラスがSiO2、BaO、B23、Al23を主成分とするものであることが開示されている。
【0012】
日本国特許公開公報平8−77604号(特許文献6)には、再生専用の情報記録媒体において、誘電体層がCe、La、Si、In、Al、Ge、Pb、Sn、Bi、Te、Ta、Sc、Y、Ti、Zr、V、Nb、Cr、およびWより成る群より選ばれた少なくとも一元素の酸化物、Cd、Zn、Ga、In、Sb、Ge、Sn、Pb、Biより成る群より選ばれた少なくとも一元素の硫化物、またはセレン化物等より成ることが開示されている。
【0013】
日本国特許公開公報2001−67722号(特許文献7)には、光記録媒体において、第1の界面制御層および第2の界面制御層が、Al、Si、Ti、Co、Ni、Ga、Ge、Sb、Te、In、Au、Ag、Zr、Bi、Pt、Pd、Cd、P、Ca、Sr、Cr、Y、Se、La、Liから成る元素群のうち1種以上を含む窒化物、酸化物、炭化物、および硫化物から選択されることが開示されている。
【0014】
日本国特許公開公報平8−180458号(特許文献8)には、カルコゲン化合物(具体的には、ZnS、ZnSe、ZnTeから成る群から選ばれた少なくとも一種)と、希土類弗化物(具体的には、PmF3、SmF3、EuF3、GdF3、TbF3、DyF3、LaF3、CaF3、PrF3及びNdF3からなる群から選ばれた少なくとも一種)と、金属酸化物(具体的には、SiO2、Ta25、ZrO2及びY23から成る群より選ばれた少なくとも一種)とを含有する誘電体層が開示され、多数回の繰り返し記録消去に有効であることが示されている。
【0015】
日本国特許公開公報平9−259468号(特許文献9)には、IIa属元素の硫化物もしくはセレン化物(MgS、CaS、SrS、BaS、RaS、MgSe、CaSe、SrSe、BaSe、RaSe)の中から選ばれた少なくとも一種と、耐熱化合物(Al、Si、Ge、Y、Zr、Ba、Ta、Nb、V、W、Hf、Sc、もしくはランタノイドの酸化物、Al、Si、Ge、Ta、Bの窒化物、Mg、Ca、Nd、Tb、Laの弗化物、Si、Bの炭化物)から選ばれた少なくとも一種とを含有する誘電体層が開示されている。この誘電体層を含む情報記録媒体が追記型媒体である場合にはデータ保存安定性に優れ、書き換え形媒体である場合には、多数回の繰り返し記録消去を行える。
【0016】
【特許文献1】
特開2001−322357号公報
【特許文献2】
特開平10−275360号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】
WO97/34298(特許請求の範囲)
【特許文献4】
特開平5−109115号公報(特許請求の範囲)
【特許文献5】
特開平5−159373号公報(特許請求の範囲)
【特許文献6】
特開平8−77604号公報(特許請求の範囲)
【特許文献7】
特開2001−67722号公報(特許請求の範囲)
【特許文献8】
特開平8−180458号公報(特許請求の範囲)
【特許文献9】
特開平9−259468号公報(特許請求の範囲)
【非特許文献1】
N. Yamada et al. Japanese Journal of Applied Physics Vol.37(1998) pp. 2104-2110
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように、第1及び第2の誘電体層をZnS−20mol%SiO2を用いて形成した場合、Sの拡散防止のために誘電体層と記録層との間には界面層が必然的に必要となる。しかしながら、媒体の価格を考慮すると、媒体を構成する層の数は1つでも少ないことが望ましい。層の数が少ないと、材料費の削減、製造装置の小型化、および製造時間短縮による生産量の増加を実現することができ、媒体の価格低減につながる。
【0018】
発明者は、発明者は、層数を減らす一つの方法として、第1の界面層および第2の界面層のうち、少なくとも1つの界面層を無くす可能性について検討した。界面層は厚さ2nm〜5nmの極めて薄い層であり、構造的に弱い。そのため、繰り返し記録の間に膜破壊が生じ、その結果、原子拡散が起こり易くなる。したがって、界面層を無くすことは、情報記録媒体の安定性の点からも望ましい。尤も、界面層を無くす場合には、繰り返し記録による誘電体層から記録層へのSの拡散が生じないよう、ZnS−20mol%SiO2以外の材料で誘電体層を形成する必要があると、発明者は考えた。さらに、誘電体層の材料については、カルコゲナイド材料である記録層との密着性が良いこと、上記7層構造のものと同等かそれ以上の高記録感度が得られること、透明であること、記録の際に溶けないように高融点を有すること、および熱により分解しないように安定していることが望まれる。
【0019】
本発明は、界面層を設けずに記録層と直接接するように形成された場合でも、誘電体層から記録層へ物質が移動せず、且つ記録層との密着性が良好である誘電体層が設けられた、優れた繰り返し書き換え性能を有する情報記録媒体を提供することを主たる課題としてなされたものである。
【0020】
なお、上記特許文献4〜7はいずれも、誘電体層から記録層へ物質が移動する問題については言及していない。したがって、これらの公報は、本発明が解決しようとする課題、および当該課題を解決する手段、即ち具体的な組成を教示していないことに留意すべきである。
【0021】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、後述の実施例で説明するように、種々の化合物を使用して、誘電体層を形成し、誘電体層の記録層への密着性、および情報記録媒体の繰り返し書き換え性能を評価した。その結果、界面層を介さずに直接記録層の上下に誘電体層を設ける場合、記録層に拡散し易い誘電体層、例えば従来のZnS−20mol%SiO2で誘電体層を形成した場合、記録層への密着性は良いが、媒体の繰り返し書き換え性能が悪いということが判った。また、例えば、ZrO2は、熱伝導率が低く、また融点が高いため、これを誘電体層として使用すれば、情報記録媒体の記録感度を高くでき、また優れた繰り返し書き換え性能を確保できる。しかし、ZrO2を用いて誘電体層を形成した場合、記録層への密着性が悪いという結果が得られた。その他の種々の酸化物、窒化物、硫化物、セレン化物およびフッ化物を用いて、誘電体層を記録層に接して形成した情報記録媒体について、誘電体層の記録層への密着性および繰り返し書き換え性能を評価した。しかし、1種類の酸化物、窒化物、硫化物、セレン化物またはフッ化物を用いて誘電体層を形成した場合には、良好な密着性と良好な繰り返し書き換え性能とを両立させることはできなかった。
【0022】
そこで、発明者は、まず、Sを含まない2種類以上の化合物を組み合わせて、誘電体層を形成することを検討した。その結果、特定の酸化物と特定のフッ化物との組み合わせが、記録層と接する誘電体層の構成材料として適していることを見出し、本発明に至った。
【0023】
即ち、本発明は、基板および記録層を含み、前記記録層が光の照射または電気的エネルギーの印加によって、結晶相と非晶質相との間で相変態を生じる情報記録媒体であって、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、CrおよびSiから成る群GMより選ばれる少なくとも一つの元素と、酸素原子(即ち、O)と、La、Ce、Pr、Nd、Gd、Dy、Ho、ErおよびYbから成る群GLより選ばれる少なくとも一つの元素と、フッ素原子(即ち、F)とを含む酸化物−フッ化物系材料層をさらに含む情報記録媒体を提供する。
【0024】
本発明の情報記録媒体は、光を照射することによって、あるいは電気的エネルギーを印加することによって、情報を記録再生する媒体である。一般に、光の照射は、レーザ光(即ち、レーザビーム)を照射することにより実施され、電気的エネルギーの印加は記録層に電圧を印加することにより実施される。以下、本発明の情報記録媒体を構成する酸化物−フッ化物系材料層を、より具体的に説明する。
【0025】
本発明の情報記録媒体を構成する酸化物−フッ化物系材料層は、具体的には、
【化11】
(原子%)...(1)
(式中、MはTi、Zr、Hf、Nb、Ta、CrおよびSiから成る群GMより選ばれる少なくとも一つの元素を示し、LはLa、Ce、Pr、Nd、Gd、Dy、Ho、ErおよびYbから成る群GLより選ばれる少なくとも一つの元素を示し、H、I、JおよびKは、10≦H≦45、24≦I≦76、0<J≦19、0<K≦48を満たす)
で表される酸化物−フッ化物系材料を含む。ここで、「原子%」とは、式(1)が、「M」原子、酸素原子、「L」原子、およびフッ素原子を合わせた数を基準(100%)として表された組成式であることを示している。以下の式においても「原子%」の表示は、同様の趣旨で使用されている。また、式(1)は、酸化物−フッ化物系材料層に含まれる、「M」原子、酸素原子、「L」原子、およびフッ素原子のみをカウントして表したものである。したがって、式(1)で示される材料を含む酸化物−フッ化物系材料は、これらの原子以外の成分を含むことがある。
【0026】
式(1)において、各原子がどのような化合物として存在しているかは問われない。このような式で材料を特定しているのは、薄膜に形成した層の組成を調べるに際し、化合物の組成を求めることは難しく、現実には、元素組成(即ち、各原子の割合)のみを求める場合が多いことによる。式(1)で表される材料において、元素Mの殆どは酸素原子とともに酸化物として存在し、元素Lの殆どはフッ素原子とともにフッ化物として存在していると考えられる。そのため、本明細書においては、式(1)で表される材料を含む層であっても、これを便宜的に「酸化物−フッ化物系材料層」と称している。
【0027】
本発明の情報記録媒体が光記録媒体である場合、群GMより選ばれる元素、酸素原子、群GLより選ばれる元素およびフッ素原子を含む酸化物−フッ化物系材料層(以下、単に「酸化物−フッ化物系材料層」とも呼ぶ)は、記録層と隣接する2つの誘電体層のうち、いずれか一方の誘電体層として存在することが好ましく、両方の誘電体層として存在することがより好ましい。群GMを構成する元素、即ちTi、Zr、Hf、Nb、Ta、CrおよびSiの酸化物はいずれも、融点が高く、熱安定性に優れる。熱安定性に優れた材料を含む層は、当該層を含む情報記録媒体に情報が繰り返し書き換えられる場合でも、劣化しにくく、耐久性に優れる。また、群GLを構成する元素、即ち、La、Ce、Pr、Nd、Gd、Dy、Ho、ErおよびYbのフッ化物はいずれも、水に不溶で、優れた耐湿性を示す。また、これらのフッ化物はいずれも、カルコゲナイド材料である記録層と良好に密着する。したがって、この酸化物とこのフッ化物とを混合した酸化物−フッ化物系材料で誘電体層が形成された情報記録媒体においては、
1)Sを含まない誘電体層を、記録層に良好に密着させて形成できるので、界面層が不要である;
2)図10に示す従来の情報記録媒体と同程度またはそれ以上の繰り返し書き換えに対する耐久性、および耐湿性を情報記録媒体に付与できる;
3)酸化物とフッ化物とが混合されて構造が複雑となるため、層の熱伝導率が小さくなり、それにより記録層が急冷されやすくなり、記録感度が高くなる
という効果が得られる。
【0028】
本発明の情報記録媒体において、酸化物−フッ化物系材料層は、前記群GMより選ばれる元素として、Ti、Zr、HfおよびTaから成る群GM1より選ばれる少なくとも一つの元素およびCrを含み、群GLより選ばれる元素として、La、Ce、PrおよびNdから成る群GL1より選ばれる少なくとも一つの元素を含み、式(2):
【化12】
1 Cr1 (原子%)...(2)
(式中、M1は群GM1より選ばれる少なくとも一つの元素を示し、L1は群GL1より選ばれる少なくとも一つの元素を示し、P、Q、I、JおよびKは、0<P≦38、0<Q≦45、24≦I≦76、0<J≦19、0<K≦48を満たす)
で表される材料を含むものであってよい。
【0029】
Ti、Zr、HfおよびTaは、群GMを構成する元素の中でも、より高い融点を有し、且つより優れた熱安定性を示す酸化物を形成する。そのため、本明細書においては、これらの元素から成る群を特にGM1と称して、他の元素と区別している。Crは、その酸化物がカルコゲナイド材料から成る記録層との密着性に優れていることから、群GMから選択される元素として酸化物−フッ化物系材料層を構成するのに適している。La、Ce、PrおよびNdは、上述のように、そのフッ化物が水に不溶で耐湿性に優れていることに加え、希土類金属のフッ化物の中でも価格がより安いことから、好ましく用いられる。そのため、本明細書においては、これらの元素から成る群を特にGL1と称して、他の元素と区別している。
【0030】
上記式(2)で示される材料を含む酸化物−フッ化物系材料層も、光記録媒体において記録層と隣接する2つの誘電体層のうち、いずれか一方の誘電体層として存在することが好ましく、両方の誘電体層として存在することがより好ましい。式(2)で表される材料を含む誘電体層を含む情報記録媒体は、より優れた繰り返し書き換え性能を示し、また、誘電体層の記録層への密着性においてより優れている。また、酸化物−フッ化物系材料層を安価に形成できるので、情報記録媒体そのもののを安価に製造できる。
【0031】
本発明の情報記録媒体において、酸化物−フッ化物系材料層は、前記群GMより選ばれる元素として、前記群GM1より選ばれる少なくとも1つの元素およびCrに加えて、Siを更に含み、式(3):
【化13】
1 CrSi1 (原子%)...(3)
(式中、M1は群GM1より選ばれる少なくとも一つの元素を示し、L1は群GL1より選ばれる少なくとも一つの元素を示し、R、S、T、U、VおよびWは、0<R≦28、0<S≦33、0<T≦19、25≦U≦70、0<V≦18、0<W≦45を満たす)
で表される材料を含んでよい。式(3)で表される材料を含む酸化物−フッ化物系材料層も、光記録媒体において記録層と隣接する2つの誘電体層のうち、いずれか一方の誘電体層として存在することが好ましく、両方の誘電体層として存在することがより好ましい。Siの酸化物は酸化物−フッ化物系材料層を軟らかくするので、繰り返し記録が実施される場合に生じ得る膜割れおよび膜破壊を抑制する。
【0032】
上述のように、上記酸化物−フッ化物系材料層において、群GMから選択される少なくとも一つの元素は、酸素とともに酸化物として存在し、群GLから選択される少なくとも一つの元素は、フッ素とともにフッ化物として存在していると考えられる。したがって、上記酸化物−フッ化物系材料層は、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、CrおよびSiから成る群GMより選ばれる少なくとも一つの元素の酸化物と、La、Ce、Pr、Nd、Gd、Dy、Ho、ErおよびYbから成る群GLより選ばれる少なくとも一つの元素のフッ化物を含む層として特定され得る。
【0033】
このように特定される層において、群GMから選択される元素の酸化物群と、群GLから選択される元素のフッ化物群とは、合わせて90モル%以上含まれることが好ましい。ここで、「酸化物群」という用語は、群GMから選択される元素が2以上であって、2種以上の酸化物が層に含まれている場合には、すべての酸化物を総称するために用いられる。あるいは、「酸化物群」という用語は、群GMから選択される元素が1つのみであって、1種の酸化物が層に含まれる場合には、その酸化物のみを指す。「フッ化物群」という用語についても同様である。換言すれば、酸化物−フッ化物系材料層は、群GMから選択される元素の酸化物と群GLから選択される元素のフッ化物以外の化合物(そのような化合物を「第三成分」とも呼ぶ)を10モル%まで含んでよい。酸化物−フッ化物系において、第三成分の占める割合が10モルを超えると、層の熱安定性および耐湿性が低減し、上記所定の効果を得ることが難しくなることがある。
【0034】
上記のように特定される層において、群GMから選択される少なくとも1つの元素の酸化物は、群GMから選択される元素の酸化物群と群GLから選択される元素のフッ化物群とを合わせた量を基準(100モル%)としたときに、50モル%以上含まれることが好ましく、50モル%〜90モル%含まれることがより好ましい。群GMから選択される元素の酸化物群の割合が50モル%未満であると、例えば、酸化物−フッ化物系材料層を記録層と接する誘電体層とした場合に、繰り返し書き換え性能が低下する傾向にある。
【0035】
上記のように酸化物とフッ化物の混合物を含む層として特定される層は、好ましくは、群GMより選ばれる元素の酸化物として、Ti、Zr、HfおよびTaから成る群GM1より選ばれる少なくとも一つの元素の酸化物、およびCrの酸化物を含み、群GLより選ばれる元素のフッ化物として、La、Ce、PrおよびNdから成る群GL1より選ばれる少なくとも一つの元素のフッ化物を含む。この層によりもたらされる効果は、上記式(2)で表される材料に関して先に説明したとおりである。
【0036】
この層において、群GM1から選ばれる元素の酸化物群とCrの酸化物は、それらの酸化物と群GL1から選ばれる元素のフッ化物とを合わせた量を基準(100モル%)としたときに、50モル%以上含まれることが好ましく、50〜90モル%含まれることがより好ましい。それらの酸化物の割合が50モル%未満であると、例えば、酸化物−フッ化物系材料層を記録層と接する誘電体層とした場合に、繰り返し書き換え性能が低下する傾向にある。さらに好ましくは、群GM1より選ばれる元素の酸化物群およびCrの酸化物はそれぞれ、前記基準に対し、10モル%以上含まれることが好ましい。
【0037】
また、この層は、群GM1から選ばれる少なくとも1つの元素の酸化物とCrの酸化物に加えて、Siの酸化物を含んでよい。Siの酸化物がもたらす効果は式(3)で表される材料に関して先に説明したとおりである。
【0038】
群GM1から選ばれる少なくとも1つの元素の酸化物とCrの酸化物とSiの酸化物とを含む層は、好ましくは、ZrO2、HfO2およびTa25から選択される少なくとも1つの酸化物、SiO2およびCr23を含み、群GLより選ばれる元素のフッ化物としてLaF3を含む。そのような酸化物−フッ化物系材料層は、具体的には、下記の式(4):
【化14】
(D)X(SiO2Y(Cr23Z(LaF3100-X-Y-Z(mol%)...(4)
(式中、DはZrO2、HfO2およびTa25から選択される少なくとも1つの酸化物を示し、X、YおよびZは、20≦X≦70、10≦Y≦50、10≦Z≦60、50≦X+Y+Z≦90を満たす)
で表される材料を含む層である。ZrO2、HfO2およびTa25は、融点がいずれも高く、熱的に安定している。LaF3は、水に不溶なフッ化物の中でも融点が約1500℃と最も高いこと、および価格が安いことから、最も実用に適している。各化合物の好ましい割合は、上記のようにX、YおよびZで規定される。このような酸化物−フッ化物系材料層を記録層と接する誘電体層とすることにより、界面層を無くすことが可能となる。また、この層を誘電体層として含む情報記録媒体は、優れた記録信号品質を実現するとともに、繰り返し記録性能、耐湿性、記録感度、記録及び書き換え保存性の点において優れている。
【0039】
上述のZrO2、SiO2、Cr23およびLaF3を含む酸化物−フッ化物系材料層において、ZrO2とSiO2の含有量が略等しい場合には、ZrSiO4が含まれていることが好ましい。ZrSiO4は化学量論組成の安定した複合酸化物である。ZrSiO4は、高い構造安定性を有し、熱伝導率が低いため、これを含む酸化物−フッ化物系材料層で記録層と接する誘電体層を形成すると、繰り返し性能に優れ、且つより高い記録感度を有する情報記録媒体を実現できる
【0040】
ZrSiO4、Cr23およびLaF3を含む酸化物−フッ化物系材料層は、好ましくは、下記の式(5):
【化15】
(ZrSiO4A(Cr23B(LaF3100-A-B(mol%)...(5)
(式中、AおよびBは、20≦A≦70、10≦B≦50、50≦A+B≦90を満たす)
で表される材料を含む層である。各化合物の好ましい割合は、上記のようにAおよびBで規定される。このような酸化物−フッ化物系材料層を記録層と接する誘電体層とすることにより、界面層を無くすことが可能となる。また、この層を誘電体層として含む情報記録媒体は、優れた記録信号品質を実現するとともに、繰り返し記録性能、耐湿性、記録感度、記録及び書き換え保存性の点において優れている。
【0041】
本発明の情報記録媒体において存在する酸化物−フッ化物系材料層の組成分析は、例えば、X線マイクロアナライザーを用いて実施することができる。その場合、組成は、各元素の原子濃度として得られる。
【0042】
例えば、後述の式(40)、即ち、(ZrO2x(SiO2y(Cr23(LaF3100-x-y- (mol%)で表されるスパッタリングターゲットを用いてスパッタリングにより炭素基板上に形成した膜を分析すると、Zr、Si、Cr、La、OおよびFの原子濃度を測定できる。その結果、得られた実際の分析値が、ZrO2、SiO2、Cr23、LaF3のような化学量論組成と一致しておらず、式(4)、即ち、(ZrO2X(SiO2Y(Cr23Z(LaF3100-X-Y-Z(mol%)で表されないことがある。そのような場合でも、酸化物−フッ化物系材料層が、群GMから選択される少なくとも1つの元素、酸素原子、群GLから選ばれる少なくとも1つの元素、およびフッ素原子を含み、好ましくは上記式(1)〜(3)で表される材料を含む限りにおいて、本発明の目的は達成される。
【0043】
以上説明した酸化物−フッ化物系材料層はいずれも、本発明の情報記録媒体において、記録層と接するように設けられる誘電体層として存在することが好ましい。その場合、誘電体層は、記録層の両方の面に接するように設けてよい。あるいは、上記の酸化物−フッ化物系材料層はいずれも、本発明の情報記録媒体において、記録層と誘電体層との間に位置する界面層として存在してよい。換言すれば、上記の酸化物−フッ化物系材料層はいずれも、本発明の情報記録媒体において、記録層と接するように設けられることが好ましい。
【0044】
上記本発明の情報記録媒体は、その記録層において、相変態が可逆的に生じるものであることが好ましい。即ち、本発明の情報記録媒体は、書き換え型情報記録媒体として好ましく提供される。
【0045】
相変態が可逆的に生じる記録層は、具体的には、Ge−Sb−Te、Ge−Sn−Sb−Te、Ge−Bi−Te、Ge−Sn−Bi−Te、Ge−Sb−Bi−Te、Ge−Sn−Sb−Bi−Te、Ag−In−Sb−TeおよびSb−Teから選択される、いずれか1つの材料を含むことが好ましい。これらはいずれも高速結晶化材料である。したがって、これらの材料で記録層を形成すると、高密度且つ高転送速度で記録でき、また、信頼性(具体的には記録保存性または書き換え保存性)の点でも優れた情報記録媒体が得られる。
【0046】
本発明の情報記録媒体において、記録層が、相変態が可逆的に生じるものである場合には、記録層の膜厚は15nm以下であることが望ましい。15nmを超えると、記録層に加えられた熱が面内に拡散し、厚さ方向に拡散しにくくなり、情報の書き換えに支障をきたすことがある。
【0047】
本発明の情報記録媒体は、基板の一方の表面に、第1の誘電体層、記録層、第2の誘電体層、および反射層がこの順に形成された構成を有するものであってよい。この構成を有する情報記録媒体は、光の照射により記録される媒体である。本明細書において、「第1の誘電体層」とは、入射される光に対してより近い位置にある誘電体層をいい、「第2の誘電体層」とは、入射される光に対してより遠い位置にある誘電体層をいう。即ち、照射される光は、第1の誘電体層から、記録層を経由して、第2の誘電体層に到達する。この構成の情報記録媒体は、例えば、波長660nm付近のレーザ光で記録再生する場合に用いられる。
【0048】
本発明の情報記録媒体がこの構成を有する場合、第1の誘電体層および第2の誘電体層のうち少なくとも1つの誘電体層が、上述した酸化物−フッ化物系材料層である。両方の誘電体層が、上述の酸化物−フッ化物系材料層であってよい。その場合、両方の誘電体層は、同一組成の層としてよく、あるいは異なる組成の層としてよい。
【0049】
この構成を有する情報記録媒体の一形態として、基板の一方の表面に、第1の誘電体層、界面層、記録層、第2の誘電体層、光吸収補正層、および反射層がこの順に形成されており、第2の誘電体層が前記酸化物−フッ化物系材料層であって、記録層と界面を接している情報記録媒体が挙げられる。
【0050】
本発明の情報記録媒体は、基板の一方の表面に、反射層、第2の誘電体層、記録層、および第1の誘電体層がこの順に形成された構成を有するものであってよい。この構成は、光が入射する基板の厚さを薄くする必要がある場合に採用される。具体的には、波長405nm付近の短波長のレーザ光で記録再生する場合に、対物レンズの開口数NAを例えば0.85と大きくして、焦点位置を浅くする場合に、この構成の情報記録媒体が使用される。このような波長および開口数NAを使用するには、光が入射する基板の厚さを、例えば60〜120μm程度にする必要がある。そのような薄い基板の表面には、層を形成することが困難である。したがって、この構成の情報記録媒体は、光が入射されない基板を支持体として、その一方の表面に反射層等を順次形成することにより形成されたものとして特定される。
【0051】
本発明の情報記録媒体がこの構成を有する場合、第1の誘電体層および第2の誘電体層のうち少なくとも1つの誘電体層が、上述した酸化物−フッ化物系材料層である。両方の誘電体層が、上述の酸化物−フッ化物系材料層であってよい。その場合、両方の誘電体層は、同一組成の層としてよく、あるいは異なる組成の層としてよい。
【0052】
この構成を有する情報記録媒体の一形態として、基板の一方の表面に、反射層、光吸収補正層、第2の誘電体層、記録層、界面層、および第1の誘電体層がこの順に形成されており、前記第2の誘電体層が前記酸化物−フッ化物系材料層であって、前記記録層と界面を接している情報記録媒体が挙げられる。
【0053】
本発明の情報記録媒体は、2つ以上の記録層を有するものであってよい。そのような情報記録媒体は、例えば、基板の一方の表面の側に、2つの記録層が誘電体層および中間層等を介して積層された、片面2層構造を有するものである。片面2層構造の情報記録媒体は、片側から光を照射して、2つの記録層に情報を記録するものである。この構造によれば、記録容量を大きくすることが可能となる。あるいは、本発明の情報記録媒体は、基板の両方の面に記録層が形成されたものであってよい。
【0054】
記録層を2つ以上有する情報記録媒体の一形態として、基板の一方の表面に、少なくとも第2の反射層、第5の誘電体層、第2の記録層、第4の誘電体層、中間層、第3の誘電体層、第1の反射層、第2の誘電体層、第1の記録層、および第1の誘電体層がこの順に形成され、第1の誘電体層、第2の誘電体層、第4の誘電体層、および第5の誘電体層のうち少なくとも1つの誘電体層が前記酸化物−フッ化物系材料層であって、第1の記録層または第2の記録層と界面を接して形成されている情報記録媒体が挙げられる。
【0055】
本発明はまた、本発明の情報記録媒体を製造する方法として、上述した酸化物−フッ化物系材料層を、スパッタリング法で形成する工程を含む製造方法を提供する。スパッタリング法によれば、スパッタリングターゲットの組成と略同じ組成を有する酸化物−フッ化物系材料層を形成できる。したがって、この製造方法によれば、スパッタリングターゲットを適切に選択することによって所望の組成の酸化物−フッ化物系材料層を容易に形成できる。
【0056】
具体的には、スパッタリングターゲットとして、下記の式(10):
【化16】
i(原子%)...(10)
(式中、MはTi、Zr、Hf、Nb、Ta、CrおよびSiから成る群GMより選ばれる少なくとも一つの元素を示し、LはLa、Ce、Pr、Nd、Gd、Dy、Ho、ErおよびYbから成る群GLより選ばれる少なくとも一つの元素を示し、h、i、jおよびkは、10≦h≦45、24≦i≦76、0<j≦19、0<k≦48を満たす)
で表される材料を含むものを使用できる。式(10)は、群GMから選ばれる元素Mの殆どが酸化物の形態で存在し、群GLから選ばれる元素Lの殆どがフッ化物の形態で存在する材料を元素組成で表した式に相当する。このスパッタリングターゲットによれば、上記式(1)で表される材料を含む酸化物−フッ化物系材料層を形成できる。
【0057】
あるいは、スパッタリングターゲットとして、下記の式(20):
【化17】
1 Cr1 (原子%)...(20)
(式中、M1はTi、Zr、HfおよびTaから成る群GM1より選ばれる少なくとも一つの元素を示し、L1はLa、Ce、PrおよびNdから成る群GL1より選ばれる少なくとも一つの元素であり、p、q、i、jおよびkは、0<p≦38、0<q≦45、24≦i≦76、0<j≦19、0<k≦48を満たす)
で表される材料を含むものを使用できる。このスパッタリングターゲットによれば、上記式(2)で表される材料を含む酸化物−フッ化物系材料層を形成できる。
【0058】
あるいは、スパッタリングターゲットとして、下記の式(30):
【化18】
1 CrSi1 (原子%)...(30)
(式中、M1はTi、Zr、HfおよびTaから成る群GM1より選ばれる少なくとも一つの元素を示し、L1はLa、Ce、PrおよびNdから成る群GL1より選ばれる少なくとも一つの元素であり、r、s、t、u、vおよびwは、0<r≦28、0<s≦33、0<t≦19、25≦u≦70、0<v≦18、0<w≦45を満たす)
で表される材料を含むものを使用できる。このスパッタリングターゲットによれば、上記式(3)で表される材料を含む酸化物−フッ化物系材料層を形成できる。
【0059】
あるいは、スパッタリングターゲットとして、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、CrおよびSiから成る群GMより選ばれる少なくとも一つの元素の酸化物と、La、Ce、Pr、Nd、Gd、Dy、Ho、ErおよびYbから成る群GLより選ばれる少なくとも一つの元素のフッ化物とを含んで成るものを使用することができる。このようにスパッタリングターゲットを特定しているのは、群GMより選ばれる元素、酸素、群GLより選ばれる元素、およびフッ素を含むスパッタリングターゲットは、通常、群GMより選ばれる元素の酸化物と、群GLより選ばれる元素のフッ化物の組成が表示されて供給されていることによる。また、発明者は、組成がそのように表示されたスパッタリングターゲットをX線マイクロアナライザーで分析して得た元素組成が、表示されている組成から算出される元素組成と略等しくなることを(即ち、組成表示(公称組成)が適正であること)を確認している。したがって、酸化物とフッ化物との混合物として提供されるスパッタリングターゲットもまた、本発明の製造方法において好ましく用いられる。
【0060】
酸化物とフッ化物の混合物として提供されるスパッタリングターゲットは、群GMより選ばれる元素の酸化物群と、群GLより選ばれる元素のフッ化物群とを合わせて90モル%以上含むものであることが好ましい。換言すれば、スパッタリングターゲットは、第三成分を10モル%以下含んでよい。スパッタリングターゲットが第三成分を10モル%を超えて含むと、得られる酸化物−フッ化物系材料層もまた10モル%を超える第三成分を含み、所期の効果を与える情報記録媒体を得ることが困難となる場合がある。
【0061】
酸化物とフッ化物の混合物として提供されるスパッタリングターゲットは、群GMから選択される元素の酸化物群と群GLから選択される元素のフッ化物群とを合わせた量を基準(100モル%)としたときに、群GMから選択される元素の酸化物群を50モル%以上含むことが好ましく、50モル%〜90モル%含むことがより好ましい。酸化物群の占める割合が50モル%未満であるスパッタリングターゲットを用いると、得られる酸化物−フッ化物もまた酸化物群の割合が50モル%未満となり、所期の効果を与える情報記録媒体を得ることが困難となる場合がある。
【0062】
酸化物とフッ化物の混合物として提供されるスパッタリングターゲットは、群GMより選ばれる元素の酸化物として、Ti、Zr、HfおよびTaから成る群GM1より選ばれる少なくとも一つの元素の酸化物およびCrの酸化物を含み、群GLより選ばれる元素のフッ化物として、La、Ce、PrおよびNdから成る群GL1より選ばれる少なくとも一つの元素のフッ化物を含んで成るものであってよい。このスパッタリングターゲットを用いれば、群GM1より選ばれる少なくとも一つの元素の酸化物およびCrの酸化物、ならびに群GL1より選ばれる少なくとも一つの元素のフッ化物を含む層を形成できる。
【0063】
このCrを含むスパッタリングターゲットにおいて、群GM1より選ばれる元素の酸化物群とCrの酸化物は、それらの酸化物と群GL1から選ばれる元素のフッ化物とを合わせた量を基準(100モル%)としたときに、50モル%以上含まれることが好ましく、50〜90モル%含まれることが好ましい。それらの酸化物を50モル%未満で含むスパッタリングターゲットを用いれば、得られる層もそれらの酸化物を50モル%未満で含み、所期の効果を与える情報記録媒体を得ることが困難となる場合がある。
【0064】
このCrを含むスパッタリングターゲットはまた、Siの酸化物をさらに含むものであってよい。Siの酸化物を含むスパッタリングターゲットを用いれば、得られる層もSiの酸化物を含み、好ましい特性を情報記録媒体に付与する。
【0065】
より具体的には、好ましく用いられるスパッタリングターゲットは、群GMより選ばれる元素の酸化物として、ZrO2、HfO2およびTa25から選択される少なくとも1つの酸化物、SiO2およびCr23を含み、群GLより選ばれる元素のフッ化物としてLaF3を含んで成る。そのようなスパッタリングターゲットは、式(40):
【化19】
(D)x(SiO2y(Cr23z(LaF3100-x-y-z(mol%)...(40)
(式中、DはZrO2、HfO2およびTa25から選択される少なくとも1つの酸化物を示し、x、yおよびzは、20≦x≦70、10≦y≦50、10≦z≦60、50≦x+y+z≦90を満たす)
で表される材料を含むものであることが好ましい。このスパッタリングターゲットを用いれば、上記式(4)で表される材料を含む酸化物−フッ化物系材料層を形成できる。
【0066】
上記式(40)で表される材料を含むスパッタリングターゲットは、ZrO2とSiO2を略等しい割合で含み、それらにより形成されたZrSiO4を含むものであってよい。そのようなスパッタリングターゲットは、式(50):
【化20】
(ZrSiO4a(Cr23b(LaF3100-a-b(mol%)...(50)
(式中、aおよびbは、20≦a≦70、10≦b≦50、50≦a+b≦90を満たす)
で表される材料を含むものであることが好ましい。このスパッタリングターゲットを使用すれば、上記式(5)で表される材料を含む酸化物−フッ化物系材料層を形成できる。
【0067】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。以下の実施の形態は例示的なものであり、本発明は以下の実施の形態に限定されない。
【0068】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1として、レーザ光を用いて情報の記録および再生を実施する、光情報記録媒体の一例を説明する。図1に、その光情報記録媒体の一部断面を示す。
【0069】
図1に示す情報記録媒体25は、基板1の一方の表面に、第1の誘電体層2、記録層4、第2の誘電体層6、光吸収補正層7、および反射層8がこの順に形成され、さらに接着層9でダミー基板10が反射層8に接着された構成を有する。すなわち、反射層8は光吸収補正層7の上に形成され、光吸収補正層7は第2の誘電体層6の上に形成され、第2の誘電体層6は記録層4の上に形成され、記録層4は第1の誘電体層2の上に形成されている。この構成の情報記録媒体は、波長660nm付近の赤色域のレーザビームで記録再生する、4.7GB/DVD−RAMとして使用できる。この構成の情報記録媒体には、基板1側からレーザ光12が入射され、それにより情報の記録及び再生が実施される。情報記録媒体25は、第1の界面層103および第2の界面層105を有していない点において図10に示す従来の情報記録媒体31と相違する。
【0070】
実施の形態1においては、第1の誘電体層2および第2の誘電体層6がともに酸化物−フッ化物系材料層である。酸化物−フッ化物系材料層は、前述のように、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、CrおよびSiから成る群GMより選ばれる少なくとも一つの元素の酸化物と、La、Ce、Pr、Nd、Gd、Dy、Ho、ErおよびYbから成る群GLより選ばれる少なくとも一つの元素のフッ化物を含む層である。
【0071】
一般に、誘電体層の材料には、1)透明であること、2)融点が高く、記録の際に溶融しないこと、および3)カルコゲナイド材料である記録層との密着性が良好であることが要求される。透明であることは、基板1側から入射されたレーザ光12を通過させて記録層4に到達させるために必要な特性である。この特性は、特に入射側の第1の誘電体層に要求される。高い融点は、ピークパワーレベルのレーザ光を照射したときに、誘電体層の材料が記録層に混入しないことを確保するために必要な特性であり、第1および第2の誘電体層の両方に求められる。誘電体層の材料が記録層に混入すると、繰り返し書き換え性能が著しく低下する。カルコゲナイド材料である記録層との密着性が良好であることは、情報記録媒体の信頼性を確保するために必要な特性であり、第1および第2の誘電体層の両方に求められる。さらに、誘電体層の材料は、得られる情報記録媒体が、従来の情報記録媒体(即ち、ZnS−20mol%SiO2から成る誘電体層と記録層との間に界面層が位置する媒体)と同等かそれ以上の記録感度を有するように選択する必要がある。
【0072】
上記酸化物−フッ化物系材料層に含まれる成分のうち、群GMを構成する元素の酸化物はいずれも、透明で融点が高く、熱安定性に優れる。したがって、この化合物は、情報記録媒体の繰り返し書き換え性能を確保する。群GLを構成する元素のフッ化物はいずれも、水に不溶で、耐湿性に優れている。したがって、この化合物は、情報記録媒体の耐湿性を確保する。群GMを構成する元素の酸化物には、例えば、TiO2、ZrO2、HfO2、Nb25、Ta25、Cr23、およびSiO2が含まれる。群GLを構成する元素のフッ化物には、例えば、LaF3、CeF3、PrF3、NdF3、GdF3、DyF3、HoF3、ErF3、およびYbF3が含まれる。これらの酸化物とフッ化物とを混合して成る、Sを含まない材料を含む層を、第1の誘電体層2および第2の誘電体層6とし、これらを図示するように記録層4と接するように形成することによって、繰り返し書き換え性能に優れ、且つ記録層と誘電体層との間の密着性が良好である情報記録媒体25を実現できる。また、酸化物とフッ化物とを混ぜて層の構造を複雑化することにより、誘電体層における熱伝導が抑制される。したがって、上記酸化物−フッ化物系材料層を用いれば、記録層の急冷効果の高い誘電体層を形成でき、情報記録媒体の記録感度を高くし得る。
【0073】
上記酸化物−フッ化物系材料層は、群GMから選択される2以上の元素の酸化物、即ち2種類以上の酸化物を含んでよい。2種以上の酸化物は複合酸化物を形成していてよい。上記酸化物−フッ化物系材料層は、群GLから選択される2以上の元素のフッ化物、即ち2種類以上のフッ化物を含んでよい。2種類以上の酸化物を含む層の例は、上記式(4)で表される材料を含む層である。2種以上の酸化物は複合酸化物を形成している層の例は、上記式(5)で表される材料を含む層である。
【0074】
第1の誘電体層2および第2の誘電体層6は、群GMより選択される元素の酸化物として、Ti、Zr、HfおよびTaから成る群GM1より選ばれる少なくとも一つの元素の酸化物とCrの酸化物とを含み、群GLより選択される元素のフッ化物として、La、Ce、PrおよびNdから成る群GL1より選ばれる少なくとも一つの元素のフッ化物を含む酸化物−フッ化物系材料層であることが好ましい。群GM1を構成する元素の酸化物はいずれも、より融点が高く、熱安定性の点でさらに優れている。Crの酸化物は、カルコゲン材料よりなる記録層との密着性に優れている。群GL1を構成する元素のフッ化物はいずれも、コスト的に有利である。したがって、これら特定の酸化物およびフッ化物を含む酸化物−フッ化物系材料層を第1の誘電体層2および第2の誘電体層6とすれば、繰り返し記録性能にさらに優れ、且つより安価な情報記録媒体を提供できる。この酸化物−フッ化物系材料層がSiの酸化物をさらに含む場合には、誘電体層を軟らかくすることができ、情報記録媒体を繰り返しの記録に付する場合でも、誘電体層の膜割れおよび膜破壊を抑制できる。
【0075】
より具体的には、酸化物−フッ化物系材料層は、群GM1より選ばれる元素の酸化物としてZrO2、HfO2およびTa25から選択される少なくとも1つの酸化物を含み、さらにSiO2およびCr23を含み、群GL1より選ばれる元素のフッ化物としてLaF3を含む層であることが好ましい。ZrO2およびHfO2は、透明で、高い融点(約2700℃)を有し、且つ熱的に安定である。また、ZrO2、HfO2およびTa25は、酸化物の中では熱伝導率が低い材料である。LaF3は、水に不溶なフッ化物の中でも融点が約1500℃と最も高く、価格が安いので、誘電体層を構成するフッ化物として最も実用に適している。ZrO2、HfO2およびTa25から選択される少なくとも1つの酸化物、SiO2、Cr23およびLaF3を含む材料は、上記式(4)、即ち、(D)X(SiO2Y(Cr23Z(LaF3100-X-Y-Z(mol%)で表される。この式において、DはZrO2、HfO2およびTa25から選択される1または2以上の酸化物を示す。また、この式において、各化合物の混合割合を示す、X、YおよびZは、20≦X≦70、10≦Y≦50、10≦Z≦60、および50≦X+Y+Z≦90を満たす。X(ZrO2、HfO2およびTa25から選択される1つの酸化物の混合割合または2以上の酸化物を合わせた混合割合)およびY(SiO2の混合割合)が上記範囲内にあれば、情報記録媒体は優れた繰り返し書き換え性能を示す。Z(Cr23の混合割合)が上記範囲内にあれば、記録層との密着性に優れた酸化物−フッ化物系材料層を得ることができる。X+Y+Zが上記範囲内にあれば、100−X−Y−Zが10以上50以下となる。100−X−Y−Z(LaF3の混合割合)が上記範囲内にあれば、情報記録媒体は優れた記録感度を示す。
【0076】
酸化物−フッ化物系材料層は、ZrSiO4、Cr23およびLaF3を含む層であってよい。ZrSiO4は、ZrO2とSiO2とが1:1で混合している場合に形成される複合酸化物で、高い構造安定性を有する。ZrSiO4、Cr23およびLaF3を含む材料は、上記式(5)、即ち、(ZrSiO4A(Cr23B(LaF3100-A-B(mol%)で表される。この式において、各化合物の混合割合を示すAおよびBは、20≦A≦70、10≦B≦50、および50≦A+B≦90を満たす。A(ZrSiO4の混合割合)が上記範囲内にあれば、情報記録媒体は優れた繰り返し書き換え性能を示す。B(Cr23の混合割合)が上記範囲内にあれば、記録層との密着性に優れた酸化物−フッ化物系材料層を得ることができる。A+Bが上記範囲内にあれば、100−A−Bが10以上50以下となる。100−A−B(LaF3の混合割合)が上記範囲内にあれば、情報記録媒体は優れた記録感度を示す。
【0077】
図7に、式(5)で表される材料の組成範囲を示す。図7において、座標は、(ZrSiO4、Cr23、LaF3)である。この図において、式(5)で表される材料は、a(70、10、20)、b(40、10、50)、c(20、30、50)、d(20、50、30)、e(40、50、10)、f(70、20、10)で囲まれる範囲(線上を含む)内の材料である。
【0078】
酸化物−フッ化物系材料層は、上記群GMより選ばれる元素の酸化物と、上記群GLより選ばれる元素のフッ化物とを、合わせて90モル%以上含むことが好ましい。これらの化合物を合わせて90モル%以上含む層は、それ以外の第三成分を含んでいても、その熱安定性および耐湿性は変わらず、第1の誘電体層2および第2の誘電体層6として好ましく用いられる。第三成分は、酸化物−フッ化物系材料層を形成する際に不可避的に含まれるもの、または不可避的に形成されるものである。第三成分として、例えば、誘電体、金属、半金属、半導体および/または非金属が酸化物−フッ化物系材料層に含まれる。
【0079】
第三成分として含まれる誘電体は、より具体的には、Al23、CeO2、CuO、Cu2O、Er23、FeO、Fe23、Fe34、Ga23、Ho23、In23、In23とSnO2の混合物、La23、Mn34、Nd23、NiO、Sc23、Sm23、SnO、SnO2、Tb47、WO3、Y23、Yb23、ZnO、AlN、BN、CrN、Cr2N、HfN、NbN、Si34、TaN、TiN、VN、ZrN、B4C、Cr32、HfC、Mo2C、NbC、SiC、TaC、TiC、VC、W2C、WC、およびZrCである。
【0080】
第三成分として含まれる金属は、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、La、Ce、Nd、Sm、Gd、Tb、DyおよびYbである。
【0081】
第三成分として含まれる半金属および半導体は、より具体的には、B、Al、C、Si、GeおよびSnである。第三成分として含まれる非金属は、より具体的には、Sb、Bi、TeおよびSeである。
【0082】
第1の誘電体層2および第2の誘電体層6は、それぞれ異なる組成の酸化物−フッ化物系材料層で構成してよい。例えば、式(4)、即ち、(D)X(SiO2Y(Cr23Z(LaF3100-X-Y-Z(mol%)で表される材料を用いる場合、第1の誘電体層2は、より優れた耐湿性を有するように組成された材料で形成することが好ましく、例えば(ZrO220(SiO210(Cr2350(LaF320(mol%)で形成される。第2の誘電体層6は、記録層の急冷効果が大きくなるように組成された材料で形成することが好ましく、例えば、(ZrO230(SiO210(Cr2320(LaF340(mol%)で形成される。また、第1の誘電体層2および第2の誘電体層6は、群GMより選ばれる元素の酸化物および/または群GLより選ばれる元素のフッ化物が互いに異なる材料で形成してもよい。例えば、第1の誘電体層2を、Ta25−Cr23−CeF3混合系材料で形成し、第2の誘電体層6を、HfO2−SiO2−Cr23−LaF3混合系材料で形成してよい。このように酸化物−フッ化物系材料層は、所望の機能に応じて、酸化物およびフッ化物の種類、ならびに/またはそれらの混合割合を最適化して形成できる。
【0083】
第1の誘電体層2および第2の誘電体層6は、各々の光路長(即ち、誘電体層の屈折率nと誘電体層の膜厚dとの積nd)を変えることにより、結晶相の記録層4の光吸収率Ac(%)と非晶質相の記録層4の光吸収率Aa(%)、記録層4が結晶相であるときの情報記録媒体25の光反射率Rc(%)と記録層4が非晶質相であるときの情報記録媒体25の光反射率Ra(%)、記録層4が結晶相である部分と非晶質相である部分の情報記録媒体25の光の位相差Δφを調整する機能を有する。記録マークの再生信号振幅を大きくして、信号品質を上げるためには、反射率差(|Rc−Ra|)または反射率比(Rc/Ra)が大きいことが望ましい。また、記録層4がレーザ光を吸収するように、AcおよびAaも大きいことが望ましい。これらの条件を同時に満足するように第1の誘電体層2および第2の誘電体層6の光路長を決定する。それらの条件を満足する光路長は、例えばマトリクス法(例えば久保田広著「波動光学」岩波新書、1971年、第3章を参照)に基づく計算によって正確に決定することができる。
【0084】
以上において説明した、酸化物−フッ化物系材料は、その組成に応じて異なる屈折率を有する。誘電体層の屈折率をn、膜厚をd(nm)、レーザ光12の波長をλ(nm)とした場合、光路長ndは、nd=aλで表される。ここで、aは正の数とする。情報記録媒体25の記録マークの再生信号振幅を大きくして信号品質を向上させるには、例えば、15%≦Rc且つRa≦2%であることが好ましい。また、書き換えによるマーク歪みを無くす又は小さくするには、1.1≦Ac/Aaであることが好ましい。これらの好ましい条件が同時に満たされるように第1の誘電体層2および第2の誘電体層6の光路長(aλ)を、マトリクス法に基づく計算により正確に求めた。得られた光路長(aλ)、ならびにλおよびnから、誘電体層の厚さdを求めた。その結果、例えば、上記式(5)、即ち、(ZrSiO4A(Cr23B(LaF3100-A-B(mol%)で表され、屈折率nが1.8〜2.3である材料で、第1の誘電体層2を形成する場合、その厚さは、好ましくは130nm〜170nmであることが判った。また、この材料で第2の誘電体層6を形成する場合、その厚さは、好ましくは、40〜70nmであることが判った。
【0085】
基板1は、通常、透明な円盤状の板である。誘電体層および記録層等を形成する側の表面には、レーザ光を導くための案内溝が形成されていてもよい。案内溝を基板に形成した場合、基板の断面を見ると、グルーブ部とランド部とが形成される。グルーブ部は2つの隣接するランド部の間に位置するともいえる。したがって、案内溝が形成された表面は、側壁でつながれた頂面と底面とを有することとなる。本明細書においては、レーザ光12の方向において、レーザ光12に近い側にある面を便宜的に「グルーブ面」と呼び、レーザ光から遠い側にある面を便宜的に「ランド面」と呼ぶ。図1においては、基板の案内溝の底面23がグルーブ面に相当し、頂面24がランド面に相当する。後述の図2、3および6においても同様である。これに対し、図4および図5においては、底面である面24が「ランド面」に相当し、頂面である面23が「グルーブ面」に相当する。これは、後述するように、図4および図5に示す情報記録媒体は、反射層および記録層の形成順序が、図1に示す情報記録媒体のそれとは逆であることによる。記録マークは、記録層において、グルーブ面に相当する記録層の表面に記録されるか(グルーブ記録)、ランド面に相当する記録層の表面に記録されるか(ランド記録)、あるいはグルーブおよびランド両方の面に相当する記録層の表面に記録される(ランド−グルーブ記録)。
【0086】
図1に示す態様において基板1のグルーブ面23とランド面24の段差は、40nm〜60nmであることが好ましい。後述する図2、図3および図6に示す態様の情報記録媒体を構成する基板1においても、グルーブ面23とランド面24との段差はこの範囲であることが好ましい。また、層を形成しない側の表面は、平滑であることが望ましい。基板1の材料として、ポリカーボネート、アモルファスポリオレフィンもしくはPMMAのような樹脂、またはガラスを挙げることができる。成形性、価格、および機械強度を考慮すると、ポリカーボネートが好ましく使用される。図示した形態において、基板1の厚さは、0.5〜0.7mm程度である。
【0087】
記録層4は、光の照射または電気的エネルギーの印加によって、結晶相と非晶質相との間で相変態を起こし、記録マークが形成される層である。相変態が可逆的であれば、消去や書き換えを行うことができる。可逆的相変態材料としては、高速結晶化材料である、Ge−Sb−TeもしくはGe−Sn−Sb−Teを用いることが好ましい。具体的には、Ge−Sb−Teの場合、GeTe−Sb2Te3擬二元系組成であることが好ましく、その場合、4Sb2Te3≦GeTe≦50Sb2Te3であることが好ましい。GeTe<4Sb2Te3の場合、記録前後の反射光量の変化が小さく、読み出し信号の品質が低下する。50Sb2Te3<GeTeの場合、結晶相と非晶質相間の体積変化が大きく、繰り返し書き換え性能が低下する。Ge−Sn−Sb−Teは、Ge−Sb−Teよりも結晶化速度が速い。Ge−Sn−Sb−Teは、例えば、GeTe−Sb2Te3擬二元系組成のGeの一部をSnで置換したものである。記録層4において、Snの含有量は、20原子%以下であることが好ましい。20原子%を越えると、結晶化速度が速すぎて、非晶質相の安定性が損なわれ、記録マークの信頼性が低下する。Snの含有量は記録条件に合わせて調整することができる。
【0088】
また、記録層4は、Ge−Bi−Te、Ge−Sn−Bi−Te、Ge−Sb−Bi−Te、またはGe−Sn−Sb−Bi−TeのようなBiを含む材料で形成することもできる。BiはSbよりも結晶化しやすい。したがって、Sbの少なくとも一部をBiで置換することによっても、記録層の結晶化速度を向上させることができる。
【0089】
Ge−Bi−Teは、GeTeとBi2Te3の混合物である。この混合物においては、8Bi2Te3≦GeTe≦25Bi2Te3であることが好ましい。GeTe<8Bi2Te3の場合、結晶化温度が低下し、記録保存性が劣化しやすくなる。25Bi2Te3<GeTe の場合、結晶相と非晶質相間の体積変化が大きく、繰り返し書き換え性能が低下する。
【0090】
Ge−Sn−Bi−Teは、Ge−Bi−TeのGeの一部をSnで置換したものに相当する。Snの置換濃度を調整して、記録条件に合わせて結晶化速度を制御することが可能である。Sn置換は、Bi置換と比較して、記録層の結晶化速度の微調整により適している。記録層において、Snの含有量は10原子%以下であることが好ましい。10原子%を越えると、結晶化速度が速くなりすぎるために、非晶質相の安定性が損なわれ、記録マークの保存性が低下する。
【0091】
Ge−Sn−Sb−Bi−Teは、Ge−Sb−TeのGeの一部をSnで置換し、さらにSbの一部をBiで置換したものに相当する。これは、GeTe、SnTe、Sb2Te3およびBi2Te3の混合物に相当する。この混合物においては、Sn置換濃度とBi置換濃度を調整して、記録条件に合わせて結晶化速度を制御することが可能である。Ge−Sn−Sb−Bi−Teにおいては、4(Sb−Bi)2Te3≦(Ge−Sn)Te≦25(Sb−Bi)2Te3であることが好ましい。(Ge−Sn)Te<4(Sb−Bi)2Te3の場合、記録前後の反射光量の変化が小さく、読み出し信号品質が低下する。25(Sb−Bi)2Te3<(Ge−Sn)Teの場合、結晶相と非晶質相間の体積変化が大きく、繰り返し書き換え性能が低下する。また、記録層において、Biの含有量は10原子%以下であることが好ましく、Snの含有量は20原子%以下であることが好ましい。BiおよびSnの含有量がそれぞれこの範囲内にあれば、良好な記録マークの保存性が得られる。
【0092】
可逆的に相変態を起こす材料としては、その他に、Ag−In−Sb−Te、Ag−In−Sb−Te−Ge、およびSbを70原子%以上含むSb−Teが挙げられる。
【0093】
非可逆的相変態材料としては、日本国特許公報平7−25209公報(特許第2006849号)に開示されるように、TeOx+α(αはPd、Ge等である)を用いることが好ましい。記録層が非可逆的相変態材料である情報記録媒体は、記録が一度だけ可能である、いわゆるライトワンスタイプのものである。そのような情報記録媒体においても、記録時の熱により誘電体層中の原子が記録層中に拡散して、信号の品質を低下させるという問題がある。したがって、本発明は、書き換え可能な情報記録媒体だけでなく、ライトワンス型の情報記録媒体にも好ましく適用される。
【0094】
記録層4が可逆的に相変態する材料から成る場合(即ち、情報記録媒体が書き換え可能な情報記録媒体である場合)には、前述のように、記録層4の厚さは15nm以下であることが好ましく、12nm以下であることがより好ましい。
【0095】
光吸収補正層7は、前述のように、記録層4が結晶状態であるときの光吸収率Acと非晶質状態であるときの光吸収率Aaの比Ac/Aaを調整し、書き換え時にマーク形状が歪まないようにする働きがある。光吸収補正層7は、屈折率が高く、且つ適度に光を吸収する材料で形成されることが好ましい。例えば、屈折率nが3以上6以下、消衰係数kが1以上4以下である材料を用いて、光吸収補正層7を形成できる。具体的には、Ge−Cr、およびGe−Mo等の非晶質のGe合金、Si−Cr、Si−Mo、およびSi−W等の非晶質のSi合金、Te化物、ならびにTi、Zr、Nb、Ta、Cr、Mo、W、SnTe、およびPbTe等の結晶性の金属、半金属及び半導体材料から選択される材料を使用することが好ましい。光吸収補正層7の膜厚は、20nm〜60nmであることが好ましい。
【0096】
反射層8は、光学的には記録層4に吸収される光量を増大させ、熱的には記録層4で生じた熱を速やかに拡散させて記録層4を急冷し、非晶質化し易くする機能を有する。さらに、反射層8は、記録層4および誘電体層2および6を含む多層膜を使用環境から保護する。反射層8の材料としては、例えば、Al、Au、Ag、およびCu等の熱伝導率の高い単体金属材料が挙げられる。反射層8は、その耐湿性を向上させる目的で、ならびに/あるいは熱伝導率または光学特性(例えば、光反射率、光吸収率または光透過率)を調整する目的で、上記の金属材料から選択される1つまたは複数の元素に、他の1つまたは複数の元素を添加した材料を使用して形成してよい。具体的には、Al−Cr、Al−Ti、Ag−Pd、Ag−Pd−Cu、Ag−Pd−Ti、またはAu−Cr等の合金材料を用いることができる。これらの材料は何れも耐食性に優れ且つ急冷機能を有する優れた材料である。同様の目的は、反射層8を2以上の層で形成することによっても達成され得る。反射層8の厚さは50〜180nmであることが好ましく、60nm〜100nmであることがより好ましい。
【0097】
図示した情報記録媒体25において、接着層9は、ダミー基板10を反射層8に接着するために設けられる。接着層9は、耐熱性及び接着性の高い材料、例えば、紫外線硬化性樹脂等の接着樹脂を用いて形成してよい。具体的には、アクリル樹脂を主成分とする材料またはエポキシ樹脂を主成分とする材料で、接着層9を形成してよい。また、必要に応じて、接着層9を形成する前に、紫外線硬化性樹脂よりなる、厚さ5〜20μmの保護層を反射層8の表面に設けてもよい。接着層9の厚さは好ましくは15〜40μmであり、より好ましくは20〜35μmである。
【0098】
ダミー基板10は、情報記録媒体25の機械的強度を高めるとともに、第1の誘電体層2から反射層8までの積層体を保護する。ダミー基板10の好ましい材料は、基板1の好ましい材料と同じである。ダミー基板10を貼り合わせた情報記録媒体25において、機械的な反り、および歪み等が発生しないように、ダミー基板10と基板1は、実質的に同一材料で形成され、同じ厚さを有することが好ましい。
【0099】
実施の形態1の情報記録媒体は、1つの記録層を有する片面構造ディスクである。本発明の情報記録媒体は、2つの記録層を有してよい。例えば、実施の形態1において反射層8まで積層したものを、反射層8同士を対向させて、接着層を介して貼り合わせることによって、両面構造の情報記録媒体が得られる。この場合、2つの積層体の貼り合わせは、接着層を遅効性樹脂で形成し、圧力と熱の作用を利用して実施する。反射層8の上に保護層を設ける場合には、保護層まで形成した積層体を、保護層同士を対向させて貼り合わせることにより、両面構造の情報記録媒体を得る。
【0100】
続いて、実施の形態1の情報記録媒体25を製造する方法を説明する。情報記録媒体25は、案内溝(グルーブ面23とランド面24)が形成された基板1(例えば、厚さ0.6mm)を成膜装置に配置し、基板1の案内溝が形成された表面に第1の誘電体層2を成膜する工程(工程a)、記録層4を成膜する工程(工程b)、第2の誘電体層6を成膜する工程(工程c)、光吸収補正層7を成膜する工程(工程d)および反射層8を成膜する工程(工程e)を順次実施し、さらに、反射層8の表面に接着層9を形成する工程、およびダミー基板10を貼り合わせる工程を実施することにより、製造される。以下の説明を含む本明細書において、各層に関して、「表面」というときは、特に断りのない限り、各層が形成されたときに露出している表面(厚さ方向に垂直な表面)を指すものとする。
【0101】
最初に、基板1の案内溝が形成された面に、第1の誘電体層2を成膜する工程aを実施する。工程aは、スパッタリングにより実施される。スパッタリングは、高周波電源を用いて、Arガス雰囲気で実施する。スパッタリングは、Arガスに5%以下の酸素ガスが混合された混合ガス雰囲気中で実施してよい。
【0102】
工程aで使用されるスパッタリングターゲットとしては、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、CrおよびSiから成る群GMより選ばれる少なくとも一つの元素の酸化物と、La、Ce、Pr、Nd、Gd、Dy、Ho、ErおよびYbから成る群GLより選ばれる少なくとも一つの元素のフッ化物を含む材料から成るスパッタリングターゲットが用いられる。かかるスパッタリングターゲットは、好ましくは、元素分析の結果、上記式(10)、(20)または(30)で表される材料を含む。かかるスパッタリングターゲットによれば、上記式(1)、(2)または(3)で表される材料を含む酸化物−フッ化物系材料層が形成される。
【0103】
前述の通り、群GMより選ばれる1または複数の元素、酸素原子、群GLより選ばれる1または複数の元素、およびフッ素原子を含むスパッタリングターゲットは、群GMの元素の酸化物と群GLの元素のフッ化物との混合物の形態で提供される。本発明の製造方法で使用されるスパッタリングターゲットは、群GMから選択される元素の酸化物群を、群GMから選択される元素の酸化物群と群GLから選択されるフッ化物群とを合わせた量に対して、50モル%以上含むことが好ましく、50〜90モル%含むことがより好ましい。スパッタリングターゲットにおいて、群GMから選択される元素の酸化物群の割合が小さいと、スパッタリングにより形成される層においても群GMから選択される元素の酸化物群の割合が小さくなる。その場合、所期の効果を情報記録媒体において得ることが困難となることがある。
【0104】
上記特定の酸化物およびフッ化物を含むスパッタリングターゲットとして、ZrO2、HfO2およびTa25から選択される少なくとも1つの酸化物、SiO2、Cr23およびLaF3を含むターゲットを使用できる。より具体的には、上記の式(40)、即ち、(D)x(SiO2y(Cr23z(LaF3100-x-y-z(mol%)(式中、DはZrO2、HfO2およびTa25から選択される少なくとも1つの酸化物を示し、x、yおよびzは、20≦x≦70、10≦y≦50、10≦z≦60、50≦x+y+z≦90を満たす)で表わされる材料を含むターゲットを使用できる。このターゲットによれば、上記式(4)で表される材料を含む層が形成される。
【0105】
あるいは、スパッタリングターゲットして、ZrSiO4、Cr23およびLaF3を含むターゲットを使用できる。より具体的には、式(50)、即ち、(ZrSiO4a(Cr23b(LaF3100-a-b(mol%)で表され、aおよびbが20≦a≦70、10≦b≦50、50≦a+b≦90を満たす材料を含むターゲットを使用できる。このターゲットによれば、上記式(5)で表される材料を含む層が形成される。
【0106】
群GMから選択される元素の酸化物および群GLから選択されるフッ化物を含むスパッタリングターゲットはいずれも、これらの酸化物およびフッ化物以外の第三成分を10モル%以下含んでよい。第三成分として含まれ得る成分は先に例示したとおりである。
【0107】
次に、工程bを実施して、第1の誘電体層2の表面に、記録層4を成膜する。工程bもまた、スパッタリングにより実施される。スパッタリングは、直流電源を用いて、Arガス雰囲気中、またはArガスとN2ガスの混合ガス雰囲気中で実施する。スパッタリングターゲットは、Ge−Sb−Te、Ge−Sn−Sb−Te、Ge−Bi−Te、Ge−Sn−Bi−Te、Ge−Sb−Bi−Te、Ge−Sn−Sb−Bi−Te、Ag−In−Sb−TeおよびSb−Teのうち、いずれか1つの材料を含むものを使用する。成膜後の記録層4は非晶質状態である。
【0108】
次に、工程cを実施して、記録層4の表面に、第2の誘電体層6を成膜する。工程cは、工程aと同様に実施される。第2の誘電体層6は、第1の誘電体層2とは、同じ酸化物およびフッ化物を含むが混合割合の異なるスパッタリングターゲット、または異なる酸化物および/またはフッ化物を含むスパッタリングターゲットを用いて形成してよい。例えば、工程aで(ZrO220(SiO210(Cr2350(LaF320(mol%)を含むターゲットを使用し、工程cで(ZrO230(SiO210(Cr2320(LaF340(mol%)を用いてもよい。あるいは、工程aでTa25−Cr23−CeF3混合系材料を含むターゲットを使用し、工程cでHfO2−SiO2−Cr23−LaF3混合系材料を含むターゲットを使用してよい。
【0109】
次に、工程dを実施して、第2の誘電体層6の表面に、光吸収補正層7を成膜する。工程dにおいては、直流電源または高周波電源を用いて、スパッタリングを実施する。スパッタリングターゲットとして、Ge−Cr、およびGe−Mo等の非晶質Ge合金、Si−Cr、Si−MoおよびSi−W等の非晶質Si合金、Te化物、ならびにTi、Zr、Nb、Ta、Cr、Mo、W、SnTe、およびPbTe等の結晶性の金属、半金属、および半導体材料から選択される材料から成るものを用いる。スパッタリングは、一般には、Arガス雰囲気中で実施する。
【0110】
次に、工程eを実施して、光吸収補正層7の表面に、反射層8を成膜する。工程eはスパッタリングにより実施される。スパッタリングは、直流電源または高周波電源を用いて、Arガス雰囲気中で実施する。スパッタリングターゲットとしては、Al−Cr、Al−Ti、Ag−Pd、Ag−Pd−Cu、Ag−Pd−Ti、またはAu−Cr等の合金材料より成るものを使用できる。
【0111】
上記のように、工程a〜eは、いずれもスパッタリング工程である。したがって、工程a〜eは、1つのスパッタリング装置内において、ターゲットを順次変更して連続的に実施してよい。あるいは、工程a〜eはそれぞれ独立したスパッタリング装置を用いて実施してよい。
【0112】
反射層8を成膜した後、第1誘電体層2から反射層8まで順次積層した基板1をスパッタリング装置から取り出す。それから、反射層8の表面に、紫外線硬化性樹脂を例えばスピンコート法により塗布する。塗布した紫外線硬化性樹脂に、ダミー基板10を密着させて、紫外線をダミー基板10側から照射して、樹脂を硬化させ、貼り合わせ工程を終了させる。
【0113】
貼り合わせ工程が終了した後は、必要に応じて初期化工程を実施する。初期化工程は、非晶質状態である記録層4を、例えば半導体レーザを照射して、結晶化温度以上に昇温して結晶化させる工程である。初期化工程は貼り合わせ工程の前に実施してもよい。このように、工程a〜e、接着層の形成工程、およびダミー基板の貼り合わせ工程を順次実施することにより、実施の形態1の情報記録媒体25を製造することができる。
【0114】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2として、レーザ光を用いて情報の記録および再生を実施する、光情報記録媒体の別の例を説明する。図2に、その光情報記録媒体の一部断面を示す。
【0115】
図2に示す情報記録媒体26は、基板1の一方の表面に、第1の誘電体層2、記録層4、第2の界面層105、第2の誘電体層106、光吸収補正層7、および反射層8がこの順に形成され、さらに接着層9でダミー基板10が反射層8に接着された構成を有する。図2に示す情報記録媒体26は、第1の界面層103を有していない点において、図10に示す従来の情報記録媒体31と相違する。また、情報記録媒体26は、記録層4の上に第2の界面層105を介して第2の誘電体層106が積層されている点において、図1に示す実施の形態1の情報記録媒体25と相違する。情報記録媒体26においては、第1の誘電体層2が、実施の形態1と同様に、酸化物−フッ化物系材料層である。その他、図2において、図1で使用した符号と同じ符号は、同じ要素を表し、図1を参照して説明した材料および方法で形成されるものである。したがって、図1に関連して既に説明した要素については、その詳細な説明を省略する。なお、この形態において、界面層は1つだけ設けられているが、それが第2の誘電体層106と記録層4との間に位置していることから、この界面層を便宜的に第2の界面層と呼ぶ。
【0116】
この形態の情報記録媒体26は、第2の誘電体層106を、従来の情報記録媒体で使用されていたZnS−20mol%SiO2で形成した構成に相当する。したがって、第2の界面層105は、繰り返しの記録により第2の誘電体層106と記録層4との間で生じる物質移動を防止するために設けられる。第2の界面層105はSi−N、Al−N、Zr−N、Ti−N、Ge−NもしくはTa−N等の窒化物またはこれらを含む窒化酸化物、SiC等の炭化物、またはC(炭素)で形成される。あるいは、第2の界面層105は、上記群GMから選択される元素の酸化物を複数種含んで成るものであってよく、具体的には、ZrO2−SiO2−Cr23混合系材料またはHfO2−SiO2−Cr23混合系材料で形成されてよい。界面層の厚さは1〜10nmであることが好ましく、2〜7nmであることがより好ましい。界面層の厚さが大きいと、基板1の表面に形成された第1の誘電体層2から反射層8までの積層体の光反射率および光吸収率が変化して、記録消去性能に影響を与える。
【0117】
続いて、実施の形態2の情報記録媒体26を製造する方法を説明する。情報記録媒体26は、基板1の案内溝が形成された表面に第1の誘電体層2を成膜する工程(工程a)、記録層4を成膜する工程(工程b)、第2の界面層105を成膜する工程(工程f)、第2の誘電体層106を成膜する工程(工程g)、光吸収補正層7を成膜する工程(工程d)および反射層8を成膜する工程(工程e)を順次実施し、さらに反射層8の表面に接着層9を形成する工程、およびダミー基板10を貼り合わせる工程を実施することにより、製造される。工程a、b、d、およびeは、実施の形態1に関連して説明したとおりであるから、ここではその説明を省略する。以下、実施の形態1の情報記録媒体の製造において実施されない工程のみ、説明する。
【0118】
工程fは、記録層4を形成した後で実施され、記録層4の表面に第2の界面層105を成膜する工程である。工程fにおいては、高周波電源を用いて、スパッタリングを実施する。スパッタリングは、例えば、Ge−Crを含むスパッタリングターゲットを用いて、ArガスとN2ガスの混合ガス雰囲気中で実施する、反応性スパッタリングであってよい。この反応性スパッタリングによれば、Ge−Cr−Nを含む界面層が記録層4の表面に形成される。
【0119】
次に、工程gを実施して、第2の界面層105の表面に、第2の誘電体層106を成膜する。工程gにおいては、高周波電源を使用し、例えばZnS−20mol%SiO2から成るスパッタリングターゲットを用いて、Arガス雰囲気中、またはArガスとO2ガスの混合ガス雰囲気中で、スパッタリングを実施する。それにより、ZnS−20mol%SiO2から成る層が形成される。その後、ダミー基板10を貼り合わせる工程が終了した後、実施の形態1に関連して説明したように、必要に応じて初期化工程を実施して、情報記録媒体26を得る。
【0120】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3として、レーザ光を用いて情報の記録および再生を実施する、光情報記録媒体のさらに別の例を説明する。図3に、その光情報記録媒体の一部断面を示す。
【0121】
図3に示す情報記録媒体27は、基板1の一方の表面に、第1の誘電体層102、第1の界面層103、記録層4、第2の誘電体層6、光吸収補正層7、および反射層8がこの順に形成され、さらに接着層9で反射層8にダミー基板10が接着された構成を有する。図3に示す情報記録媒体27は、第2の界面層105を有していない点において、図10に示す従来の情報記録媒体31と相違する。また、情報記録媒体27は、基板1と記録層4の間に第1の誘電体層102と第1の界面層103がこの順に積層されている点において、図1に示す実施の形態1の情報記録媒体25と相違する。情報記録媒体27においては、第2の誘電体層6が、実施の形態1と同様に、酸化物−フッ化物系材料層である。その他、図3において、図1で使用した符号と同じ符号は、同じ要素を表し、図1を参照して説明した材料および方法で形成されるものである。したがって、図1で既に説明した要素については、その詳細な説明を省略する。
【0122】
この形態の情報記録媒体27は、第1の誘電体層102を、従来の情報記録媒体で使用されていたZnS−20mol%SiO2で形成した構成に相当する。したがって、第1の界面層103は、繰り返しの記録により第1の誘電体層102と記録層4との間で生じる物質移動を防止するために設けられる。第1の界面層103の好ましい材料および厚さは、図2を参照して説明した実施の形態2の情報記録媒体26の第2の界面層105と同じである。したがって、それについての詳細な説明は省略する。
【0123】
続いて、実施の形態3の情報記録媒体27を製造する方法を説明する。情報記録媒体27は、基板1の案内溝が形成された面に第1の誘電体層102を成膜する工程(工程h)、第1の界面層103を成膜する工程(工程i)、記録層4を成膜する工程(工程b)、第2の誘電体層6を成膜する工程(工程c)、光吸収補正層7を成膜する工程(工程d)および反射層8を成膜する工程(工程e)を順次実施し、さらに反射層8の表面に接着層9を形成する工程、およびダミー基板10を貼り合わせる工程を実施することにより、製造される。工程b、c、d、およびeは、実施の形態1に関連して説明したとおりであるから、ここではその説明を省略する。以下、実施の形態1の情報記録媒体の製造において実施されない工程のみ、説明する。
【0124】
工程hは、基板1の表面に第1の誘電体層102を成膜する工程である。その具体的な方法は、実施の形態2の製造方法に関連して説明した工程gと同様である。工程iは、第1の誘電体層102の表面に第1の界面層103を成膜する工程である。その具体的な方法は、実施の形態2の製造方法に関連して説明した工程fと同様である。その後、ダミー基板10を貼り合わせる工程が終了した後、実施の形態1に関連して説明したように、必要に応じて初期化工程を実施して、情報記録媒体27を得る。
【0125】
(実施の形態4)
本発明の実施の形態4として、レーザ光を用いて情報の記録および再生を実施する、光情報記録媒体のさらに別の例を説明する。図4に、その光情報記録媒体の一部断面を示す。
【0126】
図4に示す情報記録媒体28は、基板101の一方の表面に反射層8、第2の誘電体層6、記録層4、および第1の誘電体層2をこの順に形成し、さらに接着層9でダミー基板110が第1の誘電体層2に接着された構成を有する。この情報記録媒体28は、第1の界面層103および第2の界面層105を有していない点において図10に示す従来の情報記録媒体31と相違する。また、この構成の情報記録媒体は、光吸収補正層7を有していない点において図1に示す構成の情報記録媒体25と相違する。
【0127】
この構成の情報記録媒体28には、ダミー基板110側からレーザ光12が入射され、それにより情報の記録および再生が実施される。情報記録媒体の記録密度を高くするためには、短波長のレーザ光を使用するとともに、レーザビームをより絞り込んで、記録層に小さな記録マークを形成する必要がある。ビームを絞り込むためには、対物レンズの開口数NAをより大きくすることが必要となる。しかし、NAが大きくなると、焦点位置が浅くなる。そこで、レーザ光が入射する基板を薄くする必要がある。図4に示す情報記録媒体28において、レーザ光が入射される側のダミー基板110は、記録層等を形成する際の支持体として機能する必要がないため、その厚さを小さくすることができる。したがって、この構成によれば、より高密度の記録が可能な大容量情報記録媒体28を得ることができる。具体的には、この構成によれば、波長約405nmの青紫色域のレーザ光を記録再生に使用する、容量が25GBの情報記録媒体を得ることができる。
【0128】
この情報記録媒体においても、第1および第2の誘電体層2および6は、実施の形態1と同様に、酸化物−フッ化物系材料層である。酸化物−フッ化物系材料層は、反射層等の形成順序および記録容量に関係無く、誘電体層として適用される。酸化物−フッ化物系材料層に含まれる材料は、実施の形態1に関連して説明したとおりであるから、それらについての詳細な説明は省略する。
【0129】
前述のように、この情報記録媒体28は、短い波長のレーザ光で記録再生するのに適している。したがって、第1および第2の誘電体層2および6の厚さは、例えば、λ=405nmであるときの好ましい光路長から求める。情報記録媒体28の記録マークの再生信号振幅を大きくして信号品質を向上させるために、例えば20%≦Rc且つRa≦5%を満足するように第1の誘電体層2および第2の誘電体層6の光路長ndをマトリクス法に基づく計算により厳密に決定した。その結果、屈折率が1.8〜2.5である酸化物−フッ化物系材料層を第1および第2の誘電体層2および6とする場合、第1の誘電体層2の厚さは好ましくは30nm〜100nmであり、より好ましくは50nm〜80nmであることが判った。また、第2の誘電体層6の厚さは、好ましくは3nm〜50nmであり、より好ましくは10nm〜30nmであることが判った。
【0130】
基板101は、実施の形態1の基板1と同様、透明な円盤状の板である。基板101の反射層等を形成する側の表面には、レーザ光を導くための案内溝が形成されていてもよい。案内溝を形成した場合、実施の形態1に関連して説明したように、レーザ光12に近い側にある面23を便宜的にグルーブ面23と呼び、レーザ光12から遠い側にある面24をランド面と呼ぶ。基板101においてグル−ブ面23とランド面24の段差は、10nm〜30nmであることが好ましく、15nm〜25nmであることがより好ましい。また、層を形成しない側の表面は、平滑であることが望ましい。基板101の材料としては、実施の形態1の基板1の材料と同じ材料を挙げることができる。基板101の厚さは、好ましくは1.0〜1.2mm程度である。基板101の好ましい厚さは、実施の形態1の基板1のそれよりも大きい。これは、後述するように、ダミー基板110の厚さが薄いために、基板101で情報記録媒体の強度を確保する必要があることによる。
【0131】
ダミー基板110は、基板101同様、透明な円盤状の板である。前述のように、図4に示す構成によれば、ダミー基板110の厚さを小さくすることによって、短波長のレーザ光で記録することが可能となる。したがって、ダミー基板110の厚さは、40μm〜110μmであることが好ましい。接着層9とダミー基板110を合わせた厚さが50μm〜120μmであることがより好ましい。
【0132】
ダミー基板110は薄いので、ポリカーボネート、アモルファスポリオレフィン、またはPMMAのような樹脂で形成することが好ましく、特にポリカーボネートで形成することが好ましい。また、ダミー基板110は、レーザ光12入射側に位置するため、光学的には短波長域における複屈折が小さいものであることが好ましい。
【0133】
接着層9は、透明な紫外線硬化性樹脂で形成することが好ましい。接着層9の厚さは5〜15μmであることが好ましい。接着層9がダミー基板110の機能を兼ね備え、50μm〜120μmの厚さとなるように形成できれば、ダミー基板110を省略することもできる。
【0134】
その他、実施の形態1と同一の符号を付した要素は、既に実施の形態1に関連して説明したとおりであるので、その説明を省略する。
【0135】
この形態の情報記録媒体の変形例においては、例えば、第1の誘電体層のみを酸化物−フッ化物系材料層とし、第2の誘電体層をZnS−20mol%SiO2で形成して、第2の誘電体層と記録層との間に第2の界面層を形成し得る。また、この形態の情報記録媒体の別の変形例においては、第2の誘電体層のみを酸化物−フッ化物系材料層とし、第1の誘電体層をZnS−20mol%SiO2として、第1の誘電体層と記録層との間に第1の界面層を形成し得る。
【0136】
続いて、実施の形態4の情報記録媒体28の製造方法を説明する。情報記録媒体28は、案内溝(グルーブ面23とランド面24)が形成された基板101(例えば、厚さ1.1mm)を成膜装置に配置し、基板101の案内溝が形成された表面に反射層8を成膜する工程(工程e)、第2の誘電体層6を成膜する工程(工程c)、記録層4を成膜する工程(工程b)、および第1の誘電体層2を成膜する工程(工程a)を順次実施し、さらに、第1の誘電体層2の表面に接着層9を形成する工程、およびダミー基板110を貼り合わせる工程を実施することにより、製造される。
【0137】
最初に、工程eを実施して、基板101の案内溝が形成された面に、反射層8を成膜する。工程eを実施する具体的な方法は、実施の形態1に関連して説明したとおりである。次に、工程c、工程b、および工程aをこの順に実施する。工程c、bおよびaを実施する具体的な方法は、実施の形態1に関連して説明したとおりである。実施の形態1の情報記録媒体と同様、この形態の情報記録媒体の製造においても、工程cで使用するスパッタリングターゲットと、工程aで使用するスパッタリングターゲットとは異なるものであってよい。この形態の情報記録媒体の製造方法においては、各工程の実施順序が、実施の形態1の情報記録媒体の製造方法におけるそれと異なる。
【0138】
第1の誘電体層2を成膜した後、反射層8から第1の誘電体層2まで順次積層した基板101を、スパッタリング装置から取り出す。それから、第1の誘電体層2の上に、紫外線硬化性樹脂を例えばスピンコート法により塗布する。塗布した紫外線硬化性樹脂に、ダミー基板110を密着させて、紫外線をダミー基板110側から照射して樹脂を硬化させ、貼り合わせ工程を終了させる。接着層9を、50μm〜120μmの厚さとなるように形成し、これに紫外線を照射することによって、ダミー基板110を貼り合わせる工程を省略することができる。
【0139】
貼り合わせ工程が終了した後は、必要に応じて初期化工程を実施する。初期化工程の方法は、実施の形態1に関連して説明したとおりである。
【0140】
(実施の形態5)
本発明の実施の形態5として、レーザ光を用いて記録および再生を実施する、光情報記録媒体のさらに別の例を説明する。図5に、その光情報記録媒体の一部断面を示す。
【0141】
図5に示す情報記録媒体29は、基板101の一方の表面に第2情報層22、中間層16、および第1情報層21がこの順に形成され、さらに接着層9を介してダミー基板110が第1情報層21に積層された構成である。より詳しくは、第2情報層22は、基板101の一方の表面に第2の反射層20、第5の誘電体層19、第2の記録層18、および第4の誘電体層17がこの順に形成されて成る。中間層16は、第4の誘電体層17の表面に形成される。第1情報層21は、この中間層16の表面に、第3の誘電体層15、第1の反射層14、第2の誘電体層6、第1の記録層13、および第1の誘電体層2がこの順に形成されて成る。この形態においても、レーザ光12は、ダミー基板110の側から入射される。また、この形態の情報記録媒体においては、2つの記録層にそれぞれ情報を記録できる。したがって、この構成によれば、上記実施の形態4の2倍程度の容量を有する、情報記録媒体を得ることができる。具体的には、この構成によれば、例えば、波長405nm付近の青紫色域のレーザ光を記録再生に使用する、容量が50GBの情報記録媒体を得ることができる。
【0142】
第1情報層21における記録再生は、ダミー基板110を通過したレーザ光12によって行われる。第2情報層22における記録再生は、ダミー基板110、第1情報層21および中間層16を通過したレーザ光12によって実施される。
【0143】
図5に示す形態の情報記録媒体29において、第5の誘電体層19、第4の誘電体層17、第2の誘電体層6、および第1の誘電体層2はすべて酸化物−フッ化物系材料層であることが好ましい。酸化物−フッ化物系材料層を使用すれば、第1の記録層13と第1の誘電体層2との間、第1の記録層13と第2の誘電体層6との間、第2の記録層18と第4の誘電体層17との間、第2の記録層18と第5の誘電体層19との間の界面層が不要となる。酸化物−フッ化物系材料層の具体的な材料は、実施の形態1に関連して説明したとおりであるから、それらについての詳細な説明は省略する。
【0144】
第5の誘電体層19と第2の誘電体層6は、反射層と記録層との間で断熱層として機能する。そのため、第5および第2の誘電体層19および6は、層の熱伝導率が低く、第2および第1の記録層18および13を急冷する効果が高くなるように材料を選択して形成することが好ましい。具体的には、それらの層は、例えば、(ZrSiO450(Cr2320(LaF330(mol%)で表される材料を含む層であることが好ましい。また、第5および第2の誘電体層19および6の膜厚は、好ましくは3nm〜50nmであり、より好ましくは10nm〜30nmである。
【0145】
第2情報層22および第1情報層21において、レーザ光12は、第2の記録層18および第1の記録層13に到達する前に、第4の誘電体層17および第1の誘電体層2に入射される。そのため、第4および第1の誘電体層17および2は、透明で、且つ熱伝導率の低い材料から成ることが望ましい。具体的には、それらの層は、例えば、(ZrO220(SiO240(Cr2310(LaF33 0(mol%)で表される材料を含む層であることが好ましい。第4および第1の誘電体層17および2の膜厚は、好ましくは30nm〜80nmである。
【0146】
このように、図5に示すような片面2層構造の情報記録媒体においても、記録層の両側に位置する誘電体層を酸化物−フッ化物系材料層とすることによって、誘電体層を界面層を介することなく、記録層と直接的に接するように形成できる。したがって、本発明によれば、片面2層構造の情報記録媒体についても、全体を構成する層の数を減らすことができる。また、誘電体層を構成する材料に含まれる酸化物およびフッ化物を複数種とすることにより、ならびに/または酸化物およびフッ化物の種類を適切に選択することにより、屈折率や媒体の記録感度を調整して、情報記録媒体の種類に応じて最適化することができる。
【0147】
第3の誘電体層15は、中間層16と第1の反射層14との間に位置する。第3の誘電体層15は、第1情報層21の光透過率を高める機能を有するよう、透明で、高い屈折率を有することが好ましい。また、第3の誘電体層15は、反射層と同様に、第1の記録層13の熱を速やかに拡散させる機能を有するように、熱伝導率がより高い材料から成ることが好ましい。これらの条件を満足する材料は、TiO2を含む材料(即ち、TiO2系材料)である。TiO2系材料は、具体的には、TiO2を50モル%以上含む材料である。TiO2系材料は、TiO2を好ましくは80モル%以上含み、より好ましくは90モル%以上含む。TiO2系材料を使用すると、約2.7の大きい屈折率を有する層が形成される。第3の誘電体層15の膜厚は10nm〜30nmであることが好ましい。
【0148】
基板101は、実施の形態4の基板101と同様のものである。したがって、ここでは、基板101に関する詳細な説明を省略する。
【0149】
第2の反射層20は、実施の形態1の反射層8と同様のものである。また、第2の記録層18は、実施の形態1の記録層4と同様のものである。したがって、ここでは、第2の反射層20および第2の記録層18に関する詳細な説明を省略する。
【0150】
中間層16は、第1情報層21におけるレーザ光の焦点位置と、第2情報層22における焦点位置とが有意に異なるようにするために設けられる。中間層16には、必要に応じて第1情報層21側に案内溝が形成されている。中間層16は、紫外線硬化性樹脂で形成することができる。中間層16は、レーザ光12が効率よく第2情報層22に到達するよう、記録再生する波長λの光に対して透明であることが望ましい。中間層16の厚さは、対物レンズの開口数NAとレーザ光波長λにより決定される焦点深度ΔZ以上であることを要する。ΔZは、ΔZ=λ/{2(NA)2}で近似できる。λ=405nm、NA=0.85の時、ΔZ=0.28μmとなる。さらに、この値の±0.3μmの範囲内は焦点深度の範囲に含まれるので、中間層16は、0.8μm以上の厚さであることを要する。また、中間層16の厚さは、第1情報層21の第1の記録層13および第2情報層22の第2の記録層18間の距離が、対物レンズの集光可能な範囲内にあるように、ダミー基板110の厚さと合わせて、使用する対物レンズについて許容できる基板厚公差内にすることが好ましい。したがって、中間層の厚さは10μm〜40μmであることが好ましい。
【0151】
中間層16は、必要に応じて樹脂層を複数層、積層して構成してよい。具体的には、第4の誘電体層17を保護する層と、案内溝を有する層との2層構成にしてよい。
【0152】
第1の反射層14は、第1の記録層13の熱を速やかに拡散させる機能を有する。また、第2情報層22を記録再生する際には、第1情報層21を透過したレーザ光12を使用するので、第1情報層21は全体として高い光透過率を有する必要があり、好ましくは、45%以上の光透過率を有する。そのため、第1の反射層14は、第2の反射層20と比較して、その材料および厚さが限定される。第1の反射層14の光吸収を少なくするために、第1の反射層14は、厚さを薄くして、小さい消衰係数、および大きい熱伝導率を有することが望ましい。具体的には、第1の反射層14は、好ましくは、Agを含む合金で、膜厚が5nm以上15nm以下となるように形成される。
【0153】
第1の記録層13もまた、第1情報層21の高い光透過率を確保するために、第2の記録層18と比較して、その材料および膜厚が限定される。第1の記録層13は、好ましくは、その結晶相における透過率とその非晶質相における透過率の平均が45%以上になるように形成する。そのため、第1の記録層13の膜厚は7nm以下とすることが好ましい。第1の記録層13を構成する材料は、このように薄い膜厚であっても、溶融急冷によって良好な記録マークが形成され、品質の高い信号が再生できること、ならびに昇温徐冷により記録マークを消去できることを確保し得るように、選択される。具体的には、可逆的相変態材料であるGeTe−Sb2Te3系材料のようなGe−Sb−Te、またはGeTe−Sb2Te3系材料のGeの一部をSnで置換したGe−Sn−Sb−Teで、第1の記録層13を形成することが好ましい。GeTe−Bi2Te3系材料のようなGe−Bi−Te、またはGe−Bi−TeのGeの一部をSnで置換したGe−Sn−Bi−Teを用いることもできる。具体的には、例えば、GeTe:Sb2Te3=22:1であるGe22Sb2Te25、またはGe19Sn3Sb2Te25が好ましく用いられる。
【0154】
接着層9は、実施の形態4の接着層9と同様、透明な紫外線硬化性樹脂で形成することが好ましい。接着層9の厚さは5〜15μmであることが好ましい。
【0155】
ダミー基板110は、実施の形態4のダミー基板110と同様のものである。したがって、ここではダミー基板に関する詳細な説明を省略する。また、この形態においても、接着層9がダミー基板110の機能を兼ね備え、50μm〜120μmの厚さとなるように形成できれば、ダミー基板110を省略することもできる。
【0156】
この形態の情報記録媒体においては、第1の誘電体層2、第2の誘電体層6、第4の誘電体層17、および第5の誘電体層19のうち、1つの誘電体層のみが酸化物−フッ化物系材料層であってよい。あるいは、2つ又は3つの誘電体層が、酸化物−フッ化物系材料層であってよい。1つの誘電体層が酸化物−フッ化物系材料層である場合には、少なくとも1つの界面層が不要となり、2つの誘電体層が酸化物−フッ化物系材料層である場合には、少なくとも2つの界面層が不要となる。したがって、この形態の情報記録媒体においては、最大で4つの界面層を無くすことができる。酸化物−フッ化物系材料層でない誘電体層と記録層との間には必要に応じて、記録層と誘電体層との間の物質移動を防止するための界面層を設けてよい。その場合には、界面層を、厚さ5nm程度の極めて薄い膜の形態の酸化物−フッ化物系材料層とすることができる。
【0157】
以上において、記録層を有する情報層を2つ有する構成の情報記録媒体を説明した。複数の記録層を有する情報記録媒体は、この構成に限定されず、情報層を3つ以上含む構成とすることも可能である。また、図示した形態の変形例は、例えば2つの情報層のうち、一つを可逆的相変態を生じる記録層を有する情報層とし、一つを非可逆的相変態を生じる記録層を有する情報層としたものである。
【0158】
また、情報層を3つ有する情報記録媒体においては、3つの情報層のうち一つを再生専用の情報層とし、一つを可逆的相変態を生じる記録層を有する情報層とし、一つを非可逆的相変態を生じる記録層を有する情報層とすることも可能である。このように、情報層を2以上有する情報記録媒体には、種々の形態のものがある。いずれの形態においても、誘電体層を酸化物−フッ化物系材料層とすることによって、記録層と誘電体層との間に界面層を設ける必要を無くすことができる。
【0159】
また、2以上の記録層を有する情報記録媒体において、酸化物−フッ化物系材料層は、記録層と誘電体層との間に位置する界面層として存在してよい。そのような界面層は、5nm程度の厚さを有する極めて薄い膜に形成される。
【0160】
続いて、実施の形態5の情報記録媒体29を製造する方法を説明する。情報記録媒体29は、基板101に第2の反射層20を成膜する工程(工程j)、第5の誘電体層19を成膜する工程(工程k)、第2の記録層18を成膜する工程(工程l)、および第4の誘電体層17を成膜する工程(工程m)を順次実施した後、第4の誘電体層17の表面に中間層16を形成する工程を実施し、それから中間層16の表面に第3の誘電体層15を成膜する工程(工程n)、第1の反射層14を成膜する工程(工程o)、第2の誘電体層6を成膜する工程(工程p)、第1の記録層13を成膜する工程(工程q)、および第1の誘電体層2を成膜する工程(工程r)を順次実施し、さらに、第1の誘電体層2の表面に接着層9を形成する工程、およびダミー基板110を貼り合わせる工程を実施することにより、製造される。
【0161】
工程j〜mは、第2情報層22を形成する工程に相当する。工程jは、基板101の案内溝が形成された面に、第2の反射層20を成膜する工程である。工程jは、実施の形態1の工程eと同様にして実施される。次に、工程kを実施して、第2の反射層20の表面に、第5の誘電体層19を成膜する。工程kは、実施の形態1の工程cと同様にして実施される。次に、工程lを実施して、第5の誘電体層19の表面に、第2の記録層18を成膜する。工程lは、実施の形態1の工程bと同様にして実施される。最後に、工程mを実施して、第2の記録層18の表面に、第4の誘電体層17を成膜する。工程mは、実施の形態1の工程aと同様にして実施される。
【0162】
工程j〜mにより第2情報層22を形成した基板101を、スパッタリング装置から取り出し、中間層16を形成する。中間層16は次の手順で形成される。まず、第4の誘電体層17の表面に、紫外線硬化性樹脂を例えばスピンコートにより塗布する。次に、中間層に形成すべき案内溝と相補的である凹凸を有するポリカーボネート基板の凹凸形成面を、紫外線硬化性樹脂に密着させる。その状態で紫外線を照射して樹脂を硬化させた後、凹凸を有するポリカーボネート基板を剥離する。それにより、当該凹凸に相補的な形状の案内溝が紫外線硬化性樹脂に形成されて、図示するような案内溝を有する中間層16が形成される。別法において、中間層16は、第4の誘電体層17を保護する層を紫外線硬化性樹脂で形成し、その上に案内溝を有する層を形成することにより、形成してよい。その場合、得られる中間層は2層構造である。あるいは、中間層は、3以上の層を積層して構成してよい。
【0163】
中間層16まで形成した基板101を再びスパッタリング装置に配置して、中間層16の表面に第1情報層21を形成する。第1情報層21を形成する工程は、工程n〜rに相当する。
【0164】
工程nは、中間層16の案内溝を有する面に、第3の誘電体層15を成膜する工程である。工程nにおいては、高周波電源を使用し、TiO2系材料から成るスパッタリングターゲットを用いて、Arガス雰囲気中またはArガスとO2ガスの混合ガス雰囲気中で、スパッタリングを実施する。
【0165】
次に、工程oを実施して、第3の誘電体層15の表面に第1の反射層14を成膜する。工程oにおいては、直流電源を使用し、Agを含む合金のスパッタリングターゲットを用いて、Arガス雰囲気中でスパッタリングを実施する。
【0166】
次に、工程pを実施して、第1の反射層14の表面に第2の誘電体層6を成膜する。工程pは、工程kと同様にして実施される。
【0167】
次に、工程qを実施して、第2の誘電体層6の表面に第1の記録層13を成膜する。工程qにおいては、直流電源を使用し、例えばGeTe−Sb2Te3系材料であるGe−Sb−Te、例えばGeTe−Sb2Te3系材料のGeの一部をSnで置換した材料であるGe−Sn−Sb−Te、Ge−Bi−Te、Ge−Sn−Bi−Te、Ge−Sb−Bi−Te、およびGe−Sn−Sb−Bi−Teから選択されるいずれか1つの材料を含むスパッタリングターゲットを用いて、Arガス雰囲気中またはArガスとN2ガスの混合ガス雰囲気中でスパッタリングを実施する。
【0168】
次に、工程rを実施して、第1の記録層13の表面に第1の誘電体層2を成膜する。工程rは工程mと同様にして実施される。このように、工程n〜rを順次実施して、第1情報層21を形成する。
【0169】
第1情報層21まで形成した基板101をスパッタリング装置から取り出す。それから、第1の誘電体層2の表面に、紫外線硬化性樹脂を例えばスピンコート法により塗布する。塗布した紫外線硬化性樹脂に、ダミー基板110を密着させて、紫外線をダミー基板110側から照射して樹脂を硬化させ、貼り合わせ工程を終了させる。実施の形態5の情報記録媒体の製造方法においても、実施の形態4の情報記録媒体の製造方法と同様にして、ダミー基板110を貼り合わせる工程を省略することもできる。
【0170】
貼り合わせ工程が終了した後は、必要に応じて、第2情報層22および第1情報層21の初期化工程を実施する。初期化工程は、中間層を形成する前もしくは後に、第2情報層22について実施し、ダミー基板110の貼り合わせ工程の前もしくは後に、第1情報層21について実施してよい。初期化工程を実施する方法は、実施の形態1に関連して説明したとおりである。
【0171】
(実施の形態6)
本発明の実施の形態6として、レーザ光を用いて情報の記録および再生を実施する情報記録媒体のさらに別の例を説明する。図6に、その光情報記録媒体の一部断面を示す。
【0172】
図6に示す情報記録媒体30は、基板1の一方の表面に、第1の誘電体層102、第1の界面層3、記録層4、第2の界面層5、第2の誘電体層106、光吸収補正層7、および反射層8がこの順に形成され、さらに接着層9でダミー基板10が反射層8に接着された構成を有する。図6に示す情報記録媒体30においては、第1および第2の界面層3および5を、酸化物−フッ化物系材料層としている。その他、図6において、図1で使用した符号と同じ符号は、同じ要素を表し、図1を参照して説明した材料および方法で形成されるものである。したがって、図1を参照して既に説明した要素については、その詳細な説明を省略する。
【0173】
この形態の情報記録媒体は、第1および第2の誘電体層102および106を、従来の情報記録媒体で使用されていたZnS−20mol%SiO2で形成した構成に相当する。このような構成において、酸化物−フッ化物系材料層は、第1および第2の界面層3および5として使用できる。第1および第2の界面層3および5の好ましい材料は、実施の形態1の第1および第2の誘電体層2および6のそれと同じである。したがって、それらについての詳細な説明は省略する。第1および第2の界面層3および5の厚さは、記録消去性能に影響を与えないように、1〜10nmであることが好ましく、約2〜7nmであることがより好ましい。酸化物−フッ化物系材料層である界面層は、従来のGeを含む窒化物から成る界面層と比較して、材料コストが安価である、消衰係数が小さい(透明性が高い)、ならびに融点が高く熱的に安定であるといった利点を有する。
【0174】
続いて、実施の形態6の情報記録媒体30を製造する方法を説明する。情報記録媒体30は、基板1の案内溝が形成された面に第1の誘電体層102を成膜する工程(工程h)、第1の界面層3を成膜する工程(工程s)、記録層4を成膜する工程(工程b)、第2の界面層5を成膜する工程(工程t)、第2の誘電体層106を成膜する工程(工程g)、光吸収補正層7を成膜する工程(工程d)および反射層8を成膜する工程(工程e)を順次実施し、さらに反射層8の表面に接着層9を形成する工程、およびダミー基板10を貼り合わせる工程を実施することにより、製造される。工程b、dおよびeは、実施の形態1に関連して説明したとおりであり、工程gは実施の形態2に関連して説明したとおりであり、工程hは実施の形態3に関連して説明したとおりであるから、ここでは、その説明を省略する。
【0175】
工程sは、第1の誘電体層102の表面に第1の界面層3を成膜する工程である。工程sは、実施の形態1の工程aと同様にして実施される。工程tは、記録層4の表面に第2の界面層5を成膜する工程である。工程tは、実施の形態1の工程cと同様にして実施される。
【0176】
以上、図1〜図6を参照して、本発明の情報記録媒体の実施形態として、レーザ光で記録再生する光情報記録媒体を説明した。本発明の光情報記録媒体はこれらの形態に限定されない。本発明の光情報記録媒体は、酸化物−フッ化物系材料層を、構成層の1つとして、好ましくは記録層と接するように設ける限りにおいて、任意の形態をとりうる。即ち、本発明は、基板上に層を形成する順序、記録層の数、記録条件、および記録容量等にかかわらず、適用される。また、本発明の光情報記録媒体は、種々の波長で記録するのに適している。したがって、本発明の光情報記録媒体は、例えば、波長630〜680nmのレーザ光で記録再生するDVD−RAMまたはDVD−R、または波長400〜450nmのレーザ光で記録再生する大容量光ディスク等であってよい。
【0177】
(実施の形態7)
本発明の実施の形態7として、電気的エネルギーを印加して情報の記録および再生を実施する情報記録媒体の一例を示す。図8に、その情報記録媒体の一部断面を示す。
【0178】
図8は、基板201の表面に、下部電極202、記録部203および上部電極204がこの順に形成されたメモリ207である。メモリ207の記録部203は、円柱状の記録層205および記録層205を取り囲む誘電体層206を含む構成を有する。先に図1〜図6を参照して説明した光情報記録媒体とは異なり、この形態のメモリ207においては、記録層205および誘電体層206は、同一面上に形成され、それらは積層された関係にない。しかし、記録層205および誘電体層206はともに、メモリ207においては、基板201、下部および上部電極202および204を含む積層体の一部を構成しているから、それぞれ「層」と呼び得るものである。したがって、本発明の情報記録媒体には、記録層と誘電体層が同一面上にある形態のものも含まれる。
【0179】
基板201として、具体的には、Si基板などの半導体基板、またはポリカーボネート基板、SiO2基板およびAl23基板などの絶縁性基板を、基板201として使用できる。下部電極202および上部電極204は、適当な導電材料で形成される。下部電極202および上部電極204は、例えば、Au、Ag、Pt、Al、Ti、WおよびCrならびにこれらの混合物のような金属をスパッタリングすることにより形成される。
【0180】
記録部203を構成する記録層205は、電気的エネルギーを印加することによって、相変化する材料から成り、相変化部と称することもできる。記録層205は、電気的エネルギーを印加することによって生じるジュール熱によって、結晶相と非晶質相との間で相変化する材料で形成される。記録層205の材料としては、例えば、Ge−Sb−Te、Ge−Sn−Sb−Te、Ge−Bi−Te、Ge−Sn−Bi−Te、Ge−Sb−Bi−TeおよびGe−Sn−Sb−Bi−Te系材料が使用され、より具体的には、GeTe−Sb2Te3系又はGeTe−Bi2Te3系材料が使用される。
【0181】
記録部203を構成する誘電体層206は、上部電極204および下部電極202との間に電圧を印加することによって、記録層205に流れた電流が周辺部に逃げることを防止し、記録層205を電気的および熱的に絶縁する機能を有する。したがって、誘電体層206は、断熱部と称することもできる。誘電体層206は、酸化物−フッ化物系材料層であり、具体的には、上記式(1)、(2)、(3)、(4)または(5)で表される材料を含む層である。酸化物−フッ化物系材料層は、高融点であること、加熱された場合でも材料層中の原子が拡散しにくいこと、ならびに熱伝導率が低いことから、好ましく用いられる。
【0182】
このメモリ207については、後述の実施例において、その作動方法とともにさらに説明する。
【0183】
【実施例】
次に、実施例を用いて本発明を詳細に説明する。
【0184】
(試験1)
本発明の情報記録媒体の製造において用いられる酸化物−フッ化物系材料から成るターゲットの公称組成(換言すれば、供給に際してターゲットメーカーが公に表示している組成)と、その分析組成との関係を、試験により確認した。
【0185】
本試験では、上記式(50)に相当する(ZrSiO440(Cr2330(LaF330(mol%)で公称組成が表示された、スパッタリングターゲットを粉末状にし、X線マイクロアナライザー法により組成分析を実施した。この結果、スパッタリングターゲットの分析組成が、化合物の割合(mol%)で示される式(50)ではなく、各元素の割合(原子%)で示される式(30)として得られた。分析結果を、表1に示す。さらに、表1には、公称組成から算出される元素組成である、換算組成を示す。
【0186】
【表1】
Figure 0004242674
【0187】
表1に示すように、分析組成は換算組成とほぼ等しかった。この結果から、式(50)により表記されるスパッタリングターゲットの実際の組成(即ち、分析組成)は、計算により求められる元素組成(即ち、換算組成)とほぼ一致し、したがって公称組成が適正であることが確認された。
【0188】
(試験2)
本発明の情報記録媒体の製造において用いられる酸化物−フッ化物系材料から成るターゲットの公称組成と、このターゲットを用いて形成した酸化物−フッ化物系材料層の分析組成との関係を、試験により確認した。具体的には、上記式(50)に相当する、(ZrSiO430(Cr2350(LaF320(mol%)で公称組成が表示されたスパッタリングターゲット(直径100mm、厚さ6mm)を成膜装置(即ち、スパッタリング装置)に取り付け、0.13Paの圧力下、Arガス雰囲気中で、高周波電源を用いて、500Wのパワーでスパッタリングした。このスパッタリングにより、Si基板上に500nmの厚さの酸化物−フッ化物系材料層が形成された。この酸化物−フッ化物系材料層の組成分析もまた、X線マイクロアナライザー法により実施した。酸化物−フッ化物系材料層の分析組成も、化合物の割合(mol%)で示される式(5)ではなく、各元素の割合(原子%)で示される式(3)として得られた。分析結果を表2に示す。さらに、表2に、ターゲットの公称組成から算出される換算組成を示す。
【0189】
【表2】
Figure 0004242674
【0190】
表2に示すように、層の分析組成は、ターゲットの換算組成とほぼ等しかった。この結果から、式(50)により表記されるスパッタリングターゲットを用いて形成した酸化物−フッ化物系材料層の実際の組成は、スパッタリングターゲットの公称組成から計算される換算組成とほぼ一致し、したがって、式(50)により表記されるスパッタリングターゲットを用いれば、ほぼ同じ組成を有する膜が形成されることを確認した。
【0191】
試験1および2と同様の結果は、群GMから選択される元素の酸化物の混合割合と、群GLから選択される元素のフッ化物の混合割合とが表記されて提供される、他のスパッタリングターゲットについても得られると考えられる。したがって、以下の実施例においては、スパッタリングターゲットの組成を公称組成(mol%)で表す。また、スパッタリングターゲットの公称組成と該スパッタリングターゲットを用いるスパッタリング法により形成した酸化物−フッ化物系材料層の組成(mol%)は同じものとみなして差し支えないと考えた。したがって、以下の実施例では、スパッタリングターゲットの組成の表示を以って、誘電体層の組成をも表示することとした。また、以下の実施例では、スパッタリングターゲットおよび酸化物−フッ化物系材料層の組成を化合物の割合(mol%)でのみ表記する。当業者であれば各化合物の割合(mol%)に基づいて、スパッタリングターゲットおよび酸化物−フッ化物系材料層の元素組成(原子%)を容易に算出することができるであろう。
【0192】
(実施例1)
実施例1では、本発明を完成するに至るまでの予備試験を実施した。具体的には、上記において説明した実施の形態1に相当する図1に示す情報記録媒体25において、第1の誘電体層2および第2の誘電体層6を、種々の材料で形成した14種類のサンプルを作製した。いずれのサンプルも第1の誘電体層2および第2の誘電体層6は同じ材料で形成した。以下、情報記録媒体25の作製方法を説明する。以下の説明においては、理解の容易のために、各構成要素の参照番号として、図1に示した各構成要素と同じ参照番号を用いる。後述の実施例の情報記録媒体においても、同様に、各構成要素の参照符号として、対応する情報記録媒体における構成要素と同じ参照番号を用いる。
【0193】
まず、基板1として、深さ56nm、トラックピッチ(基板の主面に平行な面内におけるグルーブ表面およびランド表面の中心間距離)0.615μmの案内溝が片側表面に予め設けられた、直径120mm、厚さ0.6mmの円形のポリカーボネート基板を準備した。
【0194】
基板1上に、厚さ150nmの第1の誘電体層2、厚さ9nmの記録層4、厚さ50nmの第2の誘電体層6、厚さ40nmの光吸収補正層7、および厚さ80nmの反射層8を、この順にスパッタリング法により以下に説明する方法で成膜した。
【0195】
第1の誘電体層2と第2の誘電体層6を構成する材料として、TiO2(サンプル1−1)、ZrO2(サンプル1−2)、HfO2(サンプル1−3)、V25(サンプル1−4)、Nb25(サンプル1−5)、Ta25(サンプル1−6)、Cr23(サンプル1−7)、MoO3(サンプル1−8)、WO3(サンプル1−9)、SiO2(サンプル1−10)、ZnO(サンプル1−11)、ZnS(サンプル1−12)、LaF3(サンプル1−13)、TeO2(サンプル1−14)を用いた。
【0196】
第1の誘電体層2および第2の誘電体層6を形成する工程においては、上述の材料から成るスパッタリングターゲット(直径100mm、厚さ6mm)を成膜装置に取り付けて、圧力0.13Paにて高周波スパッタリングを実施した。各サンプルにおいて採用した、スパッタリング時のパワーおよび雰囲気ガスは表3に示すとおりである。
【0197】
記録層4を形成する工程においては、GeTe−Sb2Te3擬二元系組成のGeの一部をSnで置換したGe−Sn−Sb−Te系材料から成るスパッタリングターゲット(直径100mm、厚み6mm)を成膜装置に取り付けて、直流スパッタリングを実施した。パワーは100Wとした。スパッタリング中、Arガス(97%)とN2ガス(3%)との混合ガスを導入した。スパッタ時の圧力は0.13Paとした。記録層の組成は、Ge27Sn8Sb12Te53(原子%)であった。
【0198】
光吸収補正層7を形成する工程においては、組成がGe80Cr20(原子%)である材料から成るスパッタリングターゲット(直径100mm、厚さ6mm)を成膜装置に取り付けて、直流スパッタリングを実施した。パワーは300Wとした。スパッタリング中、Arガスを導入した。スパッタ時の圧力は約0.4Paとした。
【0199】
反射層8を形成する工程においては、Ag−Pd−Cu合金から成るスパッタリングターゲット(直径100mm、厚さ6mm)を成膜装置に取り付けて、直流スパッタリングを実施した。パワーは200Wとした。スパッタリング中、Arガスを導入した。スパッタ時の圧力は約0.4Paとした。
【0200】
反射層8を形成した後、紫外線硬化性樹脂を反射層8上に塗布した。塗布した紫外線硬化性樹脂の上に、直径120mm、厚さ0.6mmのポリカーボネート製のダミー基板10を密着させた。次いで、ダミー基板10の側から紫外線を照射して樹脂を硬化させた。これにより、硬化した樹脂から成る接着層9を30μmの厚さで形成すると同時に、ダミー基板10を接着層9を介して反射層8の上に貼り合わせた。
【0201】
ダミー基板10を貼り合わせた後、波長810nmの半導体レーザを使用して初期化工程を実施した。初期化工程においては、情報記録媒体25の半径22〜60mmの範囲の環状領域内に位置する記録層4を、ほぼ全面に亘って結晶化させた。初期化工程の終了により、情報記録媒体25の作製が完了した。
【0202】
比較サンプルとして、図10に示す構成の情報記録媒体31を作製した。比較サンプルにおいて、第1の誘電体層102および第2の誘電体層106は、(ZnS)80(SiO220で形成した。また、第1の界面層103および第2の界面層105は、それぞれGe−Cr−Nから成る、厚さ5nmの層とした。
【0203】
第1の誘電体層102は、(ZnS)80(SiO220から成るスパッタリングターゲット(直径100mm、厚さ6mm)を使用して、圧力0.13Paにて、表3に示す条件を採用して高周波スパッタリングを実施して形成した。第2の誘電体層106もこれと同様にして形成した。
【0204】
第1の界面層103を形成する工程においては、Ge90Cr10(原子%)の組成を有する材料から成るスパッタリングターゲット(直径100mm、厚さ6mm)を成膜装置に取り付けて、約1.33Paの圧力にて高周波スパッタリングを実施した。パワーは300Wとした。雰囲気ガスとして、Arガス(60%)とN2ガス(40%)との混合ガスを導入した。この結果、混合ガス中のN2がスパッタリングターゲットからスパッタされたGeおよびCrと反応してGe−Cr−Nの層が第1の界面層103として形成された。第2の界面層105もこれと同様にして形成した。
【0205】
光吸収補正層7および反射層8は、情報記録媒体25の光吸収補正層7および反射層8と同様にして形成した。接着層9の形成およびダミー基板10の貼り合わせも、情報記録媒体25で採用した方法と同様の方法で実施した。
【0206】
次に情報記録媒体の評価手法について説明する。情報記録媒体25における誘電体層の密着性は、高温高湿条件下での剥離の有無に基づいて評価した。具体的には、初期化工程後の情報記録媒体25を、温度90℃で相対湿度80%の高温高湿槽に100時間放置した後、記録層とこれに接する誘電体層の間、より詳細には記録層4と第1の誘電体層2の界面および記録層4と第2の誘電体層6の界面の少なくとも一方で剥離が発生していないかどうかを、光学顕微鏡を使って目視で調べた。当然のことではあるが、剥離の無いサンプルは良好な密着性を有すると評価され、剥離の有るサンプルは密着性に劣ると評価される。
【0207】
情報記録媒体25の繰り返し書き換え性能は、繰り返し回数に基づいて評価した。繰り返し回数は以下の条件で決定した。
【0208】
情報記録媒体25に情報を記録するために、情報記録媒体25を回転させるスピンドルモータと、レーザ光12を発する半導体レーザを備えた光学ヘッドと、レーザ光12を情報記録媒体25の記録層4上に集光させる対物レンズとを具備した一般的な構成の情報記録システムを用いた。情報記録媒体25の評価においては、波長660nmの半導体レーザと開口数0.6の対物レンズを使用し、4.7GB容量相当の記録を行った。情報記録媒体25を回転させる線速度は8.2m/秒とした。また、後述の平均ジッタ値を求める際のジッタ値の測定には、タイムインターバルアナライザーを用いた。
【0209】
まず、繰り返し回数を決定する際の測定条件を決めるために、ピークパワー(Pp)およびバイアスパワー(Pb)を以下の手順で設定した。上記のシステムを用いて、レーザ光12を、高パワーレベルのピークパワー(mW)と低パワーレベルのバイアスパワー(mW)との間でパワー変調しながら情報記録媒体25に向けて照射して、マーク長0.42μm(3T)〜1.96μm(14T)のランダム信号を(グルーブ記録により)記録層4の同一のグルーブ表面に10回記録した。そして、前端間のジッタ値および後端間のジッタ値を測定し、これらの平均値として平均ジッタ値を求めた。バイアスパワーを一定の値に固定し、ピークパワーを種々変化させた各記録条件について平均ジッタ値を測定し、ピークパワーを徐々に増加させて、ランダム信号の平均ジッタ値が13%に達したときのピークパワーの1.3倍のパワーを仮にPp1と決めた。次に、ピークパワーをPp1に固定し、バイアスパワーを種々変化させた各記録条件について平均ジッタ値を測定し、ランダム信号の平均ジッタ値が13%以下となったときの、バイアスパワーの上限値および下限値の平均値をPbに設定した。そして、バイアスパワーをPbに固定し、ピークパワーを種々変化させた各記録条件について平均ジッタ値を測定し、ピークパワーを徐々に増加させて、ランダム信号の平均ジッタ値が13%に達したときのピークパワーの1.3倍のパワーをPpに設定した。このようにして設定したPpおよびPbの条件で記録した場合、例えば10回繰り返し記録において、8〜9%の平均ジッタ値が得られた。システムのレーザパワー上限値を考慮すれば、Pp≦14mW、Pb≦8mWを満足することが望ましい。
【0210】
繰り返し回数は、本実施例では平均ジッタ値に基づいて決定した。上記のようにして設定したPpとPbとでレーザ光をパワー変調しながら情報記録媒体25に向けて照射して、マーク長0.42μm(3T)〜1.96μm(14T)のランダム信号を(グルーブ記録により)同一のグルーブ表面に所定回数繰り返して連続記録した後、平均ジッタ値を測定した。平均ジッタ値は、繰り返し回数が1、2、3、5、10、100、200および500回であるときに測定し、繰り返し回数が1000〜10000回の範囲では1000回毎に測定し、繰り返し回数が20000〜100000回の範囲では10000回毎に測定した。平均ジッタ値が13%に達したときを繰り返し書き換えの限界として判断し、このときの繰り返し回数により繰り返し書き換え性能を評価した。当然のことならがら、繰り返し回数が大きいほど、繰り返し書き換え性能が高いと評価される。情報記録媒体が、コンピュータの外部メモリとして用いられる場合には、繰り返し回数は10万回以上であることが好ましい。情報記録媒体が、画像音声レコーダで用いられる場合には、繰り返し回数は1万回以上であることが好ましい。
【0211】
【表3】
Figure 0004242674
【0212】
表3に示すように、サンプル1−4、1−8、1−9、1−14は、書き換えが困難であった。具体的には、1回目ランダム信号の記録マークを形成後、2回目の重ね書きを行うと、元の記録マークが消えずに残っていた。従って、V25、MoO3、WO3、TeO2は、誘電体層として使用することは困難であることが分かった。他のサンプルにおいても比較サンプルと同程度の特性は得られなかった。即ち、サンプル1−1から1−14のいずれも、良好な密着性、良好な繰り返し書き換え性能、および良好な記録感度(Pp≦14mW)のすべてを同時に満足するものではなかった。
【0213】
このことから、サンプル1−1から1−14で使用した材料はいずれも、それだけでは記録層と接する誘電体層を形成するのに適していないことが判った。しかしながら、本実施例の結果から、Cr23、ZnO、ZnSおよびLaF3から成る誘電体層は記録層との密着性が良好であること、ならびにTiO2、ZrO2、HfO2、Nb25、Ta25、Cr23およびSiO2から成る誘電体層を有する情報記録媒体は繰り返し書き換え性能が良好であることが判った。したがって、本発明者は、Cr23、ZnO、ZnSおよびLaF3から選択される1以上の化合物と、TiO2、ZrO2、HfO2、Nb25、Ta25、Cr23およびSiO2から選択される1以上の化合物とを混合することにより、良好な密着性と良好な繰り返し書き換え性能を同時に達成することが期待できると考えた。
【0214】
(実施例2)
実施例2では、良好な密着性と良好な繰り返し書き換え性能を同時に達成するため、実施例1で使用した材料から、記録層との密着性に優れた材料と情報記録媒体の繰り返し書き換え性能を実用可能な程度にし得る材料とを選択して混合した材料で誘電体層を形成した。具体的には、実施例1と同様に、図1に示す情報記録媒体25において、第1の誘電体層2および第2の誘電体層6を、種々の2成分混合材料で形成した27種類のサンプルを作製した。各サンプルにおいて、第1の誘電体層2と第2の誘電体層6は、同じ材料で形成した。
【0215】
本実施例において、各サンプルは、第1および第2の誘電体層が表4に示す材料から成る点を除いて、実施例1と同様、図1に示す情報記録媒体25と同じ構成を有するように作製した。基板1として、実施例1で使用した基板と同じものを使用した。記録層4、光吸収補正層7および反射層8の形成は、実施例1と同様にして実施した。第1の誘電体層2および第2の誘電体層6は、それぞれ表4に示す材料から成るスパッタリングターゲット(直径100mm、厚さ6mm)を用いて、0.13Paの圧力下で高周波スパッタリングを実施して形成した。各サンプルにおいて採用した、スパッタリング時の雰囲気ガスおよびパワーは表4に示すとおりである。
【0216】
得られた各サンプルについて、誘電体層の密着性と繰り返し書き換え性能を評価した。その評価結果を表2に示す。密着性および繰り返し書き換え性能の評価方法は、先に説明したとおりである。
【0217】
【表4】
Figure 0004242674
【0218】
表4に示すように、サンプル2−1から2−27まで、全て剥離が発生せず、密着性が改善された。また、Cr23を混合した材料を用いたサンプルは良好な繰り返し書き換え性能を示した。特に、Cr23をZrO2、HfO2、SiO2に混合した材料を使用したサンプルでは、10万回の繰り返し回数を達成できた。また、LaF3を混合した材料を用いたサンプルは、Pp<14mWであり、良好な記録感度を示した。一方、ZnOおよびZnSを混合した材料を用いたサンプルは、いずれも繰り返し書き換え性能に劣っていた。これらの結果から、繰り返し書き換え性能に好ましく寄与する誘電体材料、即ち、TiO2、ZrO2、HfO2、Nb25、Ta25、Cr23またはSiO2に混合する材料としては、Cr23またはLaF3が好ましいことが判った。さらに、2種類の酸化物を組み合わせるよりも、フッ化物と酸化物とを組み合わせる方が、層の熱伝導性を低下させるのにより有効であると考えられる。
【0219】
さらに、表4より、LaF3と酸化物とを組み合わせることにより、良好な密着性、良好な繰り返し書き換え性能、および良好な記録感度を同時に満たす情報記録媒体が得られることが判った。このことから、本発明者は、希土類金属のフッ化物を混合すると、同様に良好な結果が得られるのではないかと考えた。
【0220】
(実施例3)
実施例3では、良好な記録感度を達成するため、繰り返し書き換え性能に特に好ましく寄与するZrO2、HfO2およびSiO2に、希土類金属のフッ化物を混合した材料で誘電体層を形成した。具体的には、実施例1と同様に、図1に示す情報記録媒体25において、第1の誘電体層2および第2の誘電体層6を種々の2成分混合材料で形成した24種類のサンプルを作製した。この実施例においても、第1の誘電体層2と第2の誘電体層6は、同じ材料で形成した。
【0221】
本実施例において、各サンプルは、第1および第2の誘電体層が表5に示す材料から成る点を除いて、実施例1と同様、図1に示す情報記録媒体25と同じ構成を有するように作製した。基板1として、実施例1で使用した基板と同じものを使用した。記録層4、光吸収補正層7および反射層8の形成は、実施例1と同様にして実施した。第1の誘電体層2および第2の誘電体層6は、それぞれ表5に示す材料から成るスパッタリングターゲット(直径100mm、厚さ6mm)を用いて、0.13Paの圧力下で高周波スパッタリングを実施して形成した。いずれのサンプルについても、誘電体層の形成工程において、スパッタリングは400Wのパワーを使用して、Arガス雰囲気中で実施した。
【0222】
得られた各サンプルについて、誘電体層の密着性と繰り返し書き換え性能を評価した。その評価結果を表5に示す。密着性および繰り返し書き換え性能の評価方法は、先に説明したとおりである。
【0223】
【表5】
Figure 0004242674
【0224】
表5に示すように、サンプル3−1から3−24まで、全て剥離が発生せず、密着性が良好であった。また、いずれのサンプルにおいても、繰り返し回数は1万回以上であり、画像音声レコーダ用途の情報記録媒体であれば十分に使用できる繰り返し書き換え性能が確保されていた。さらに、いずれのサンプルにおいても、Pp<14mWであり、記録感度は良好であった。このように、酸化物と希土類金属のフッ化物とを混合することにより、記録層と接して誘電体層を形成した場合でも、情報記録媒体に必要とされる性能を確保し得ることが判った。
【0225】
比較サンプルと、サンプル3−1から3−24を比較すると、比較サンプルにおいては10万回以上の繰り返し回数が達成されるとともに、Pp=11mWという高記録感度が実現されている。情報記録媒体がコンピュータの外部メモリとして使用される場合があることを考慮すると、10万回以上の繰り返し回数が実現されることが望ましい。そこで、比較サンプル(即ち、従来構成の情報記録媒体)と同等かそれ以上の性能を実現するために、複数の酸化物にフッ化物を混合した材料の使用を試みた。
【0226】
(実施例4)
実施例4では、ZrO2−LaF3混合系材料について、誘電体層の形成に適した組成範囲を決定した。具体的には、上記において説明した実施の形態3に相当する図3に示す情報記録媒体27において、第2の誘電体層6を、上記2つの化合物の混合割合が異なる材料で形成した7種類のサンプルを作製した。以下、情報記録媒体27の作製方法を説明する。
【0227】
まず、基板1として、実施例1で使用したものと同じ基板を準備した。この基板1上に、厚さ150nmの第1の誘電体層102、厚さ5nmの第1の界面層103、厚さ9nmの記録層4、厚さ50nmの第2の誘電体層6、厚さ40nmの光吸収補正層7、および厚さ80nmの反射層8を、この順にスパッタリング法により以下に説明する方法で成膜した。
第1の誘電体層102は、先に実施例1にて説明した情報記録媒体31(比較サンプル)の第1の誘電体層102と同様にして(ZnS)80(SiO220(mol%)で形成した。第1の界面層103は、先に実施例1にて説明した情報記録媒体31(比較サンプル)の第1の界面層103と同様にして形成し、Ge−Cr−N層とした。記録層4は、実施例1と同様にして形成した。したがって、その組成は、Ge27Sn8Sb12Te53(原子%)であった。
第2の誘電体層6は、それぞれ表6に示す材料から成るスパッタリングターゲット(直径100mm、厚さ6mm)を用いて、Arガス雰囲気中で0.13Paの圧力下で高周波スパッタリングを実施して形成した。また、使用したパワーは、サンプル4−1において500Wであり、サンプル4−2〜4−7において400Wであった。
光吸収補正層7および反射層8は、実施例1にて説明した情報記録媒体25のそれらと同様にして形成した。
【0228】
比較のため、実施例1で作製したものと同様の情報記録媒体31を比較サンプルとして作製した。得られた各サンプルについて、誘電体層の密着性と繰り返し書き換え性能を評価した。その評価結果を表6に示す。密着性および繰り返し書き換え性能の評価方法は、先に説明したとおりである。但し、本実施例では、密着性の評価は、記録層4とこれに接する第2の誘電体層6との間で剥離が発生していないかどうか調べることにより実施した。
【0229】
【表6】
Figure 0004242674
【0230】
表6に示すように、LaF3が10モル%以上含まれると、剥離が生じず、良好な密着性が確保されることが確認された。また、ZrO2の割合が小さいほど(即ち、LaF3の混合割合が大きいほど)、繰り返し回数は小さくなるが、Ppは小さくなり記録感度が良くなる傾向にあった。上記表の結果から、繰り返し書き換え性能と記録感度との均衡を考慮すると、ZrO2の割合は50モル%以上であることが好ましく、密着性を考慮するとZrO2の割合は90モル%以下であることが好ましいことが判った。
【0231】
(実施例5)
実施例5では、記録感度と繰り返し書き換え性能をより向上させるために、2以上の酸化物と、群GLから選択される元素のフッ化物としてLaF3を混合した材料で誘電体層を形成した。具体的には、実施例1と同様に、図1に示す情報記録媒体25において、第1の誘電体層2および第2の誘電体層6を、種々の3成分混合材料で形成した8種類のサンプルを作製した。この実施例においても、第1の誘電体層2と第2の誘電体層6は、同じ材料で形成した。本実施例においてLaF3を採用したのは、融点が高いこと、およびコスト的に有利であることによる。
【0232】
本実施例において、各サンプルは、第1および第2の誘電体層が表7に示す材料から成る点を除いて、実施例1と同様、図1に示す情報記録媒体25と同じ構成を有するように作製した。基板1として、実施例1で使用した基板と同じものを使用した。記録層4、光吸収補正層7および反射層8の形成は、実施例1と同様にして実施した。第1の誘電体層2および第2の誘電体層6は、それぞれ表7に示す材料から成るスパッタリングターゲット(直径100mm、厚さ6mm)を用いて、0.13Paの圧力下で高周波スパッタリングを実施して形成した。いずれのサンプルについても、誘電体層の形成工程において、スパッタリングは400Wのパワーを使用して、Arガス雰囲気中で実施した。
【0233】
得られた各サンプルについて、誘電体層の密着性と繰り返し書き換え性能を評価した。その評価結果を表7に示す。密着性および繰り返し書き換え性能の評価方法は、先に実施例1で説明したとおりである。
【0234】
【表7】
Figure 0004242674
【0235】
表7に示すように、ZrO2−Cr23−LaF3混合系(サンプル5−1)、SiO2−Cr23−LaF3混合系(サンプル5−2)、HfO2−Cr23−LaF3混合系(サンプル5−3)、ZrO2−SiO2−Cr23−LaF3混合系(サンプル5−5)、およびHfO2−SiO2−Cr23−LaF3混合系(サンプル5−6)を使用したサンプルにおいて、10万回以上の繰り返し回数、およびRp≦14を達成できた。特に、SiO2を混合した系はPpがより低く、より高記録感度であった。即ち、これらの混合系を用いて、記録層と接するように誘電体層を形成して情報記録媒体を構成することにより、第1及び第2の界面層の無い構成、即ち層数の少ない構成で、従来の界面層を有する構成と同等の性能を実現することができた。
【0236】
TiO2−Cr23−LaF3混合系およびTiO2−SiO2−Cr23−LaF3混合系を使用したサンプル5−4および5−7は、繰り返し回数が10万回未満であるものの、表2に示すサンプル2−4と比較して優れた繰り返し書き換え性能を示した。TiO2−SiO2−Cr23−LaF3混合系を使用したサンプル5−7は、サンプル5−4と同等の繰り返し書き換え性能を示し、且つサンプル5−4よりもRpが低く高い記録感度を示した。これら表7の結果から、Cr23の添加が繰り返し書き換え性能の向上に寄与し、SiO2の添加が記録感度の向上に寄与することが判った。
【0237】
(実施例6)
実施例6では、ZrO2−Cr23−LaF3混合系材料について、誘電体層の形成に適した組成範囲を決定した。具体的には、実施例4と同様に、図3に示す情報記録媒体27において、第2の誘電体層6を上記3つの化合物の混合割合が異なる材料で形成した12種類のサンプルを作製した。
【0238】
本実施例において、各サンプルは、第2の誘電体層6が表8に示す材料から成る点を除いて、実施例4と同様、図3に示す情報記録媒体27と同じ構成を有するように作製した。基板1として、実施例1で使用した基板と同じものを使用した。第1の誘電体層102、第1の界面層103、記録層4、光吸収補正層7および反射層8の形成は、実施例4と同様にして実施した。第2の誘電体層6は、それぞれ表8に示す材料から成るスパッタリングターゲット(直径100mm、厚さ6mm)を用いて、0.13Paの圧力下で高周波スパッタリングを実施して形成した。いずれのサンプルについても、第2の誘電体層6の形成工程において、スパッタリングは400Wのパワーを使用して、Arガス雰囲気中で実施した。
【0239】
得られた各サンプルについて、誘電体層の密着性と繰り返し書き換え性能を評価した。その評価結果を表8に示す。密着性および繰り返し書き換え性能の評価方法は、先に実施例4に関連して説明したとおりである。
【0240】
【表8】
Figure 0004242674
【0241】
表8に示すように、Cr23が含まれると、LaF3の混合割合が小さくても剥離が生じず、良好な密着性が確保されることが確認された。また、ZrO2とCr23とを合わせた混合割合が小さいほど(即ち、LaF3の混合割合が大きいほど)、Ppは小さくなり記録感度が良くなる傾向にあった。また、ZrO2とCr23とを合わせた混合割合が一定である場合、Cr23の混合割合が大きいほど、繰り返し回数が小さくなり、かつPpが大きくなる傾向にあった。上記表の結果から、繰り返し書き換え性能と記録感度との均衡を考慮すると、ZrO2とCr23とを合わせた混合割合は50モル%以上であることが好ましいことが判った。また、ZrO2およびCr23の混合割合はそれぞれ10モル%以上であることが好ましいことが判った。
【0242】
(実施例7)
実施例7では、ZrO2−SiO2−Cr23−LaF3混合系材料について、誘電体層の形成に適した組成範囲を決定した。具体的には、実施例1と同様に、図1に示す情報記録媒体25において、第1の誘電体層2および第2の誘電体層6を、上記4つの化合物の混合割合が異なる材料で形成した6種類のサンプルを作製した。この実施例においても、第1の誘電体層2と第2の誘電体層6は、同じ材料で形成した。
【0243】
本実施例において、各サンプルは、第1および第2の誘電体層が表9に示す材料から成る点を除いて、実施例1と同様、図1に示す情報記録媒体25と同じ構成を有するように作製した。基板1として、実施例1で使用した基板と同じものを使用した。記録層4、光吸収補正層7および反射層8の形成は、実施例1と同様にして実施した。第1の誘電体層2および第2の誘電体層6は、それぞれ表9に示す材料から成るスパッタリングターゲット(直径100mm、厚さ6mm)を用いて、0.13Paの圧力下で高周波スパッタリングを実施して形成した。いずれのサンプルについても、誘電体層の形成工程において、スパッタリングは、400Wのパワーを使用して、Arガス雰囲気中で実施した。
【0244】
得られた各サンプルについて、誘電体層の密着性と繰り返し書き換え性能を評価した。その評価結果を表9に示す。密着性および繰り返し書き換え性能の評価方法は、先に実施例1で説明したとおりである。組成範囲の決定には、実施例5で作製したサンプル5−5の評価結果も利用したので、その結果を表9に再度示す。
【0245】
【表9】
Figure 0004242674
【0246】
表9に示すように、式(4)、即ち、(D)X(SiO2Y(Cr23Z(LaF3100-X-Y-Z(mol%)で表される系において、DがZrO2であり、X、YおよびZが、20≦X≦70、10≦Y≦50、10≦Z≦60、および50≦X+Y+Z≦90を満たすと、情報記録媒体25において、良好な密着性、良好な繰り返し書き換え性能(繰り返し回数10万回以上)、およびPp<14mWの良好な記録感度が実現されることが確認された。また、Cr23の割合が大きい混合物系を採用すると、記録感度がやや低下し、LaF3の割合が大きい混合物系を採用すると、記録感度が高くなるという、各特性の組成依存性も確認された。
【0247】
(実施例8)
実施例8では、HfO2−SiO2−Cr23−LaF3混合系材料について、誘電体層の形成に適した組成範囲を決定した。具体的には、実施例1と同様に、図1に示す情報記録媒体25において、第1の誘電体層2および第2の誘電体層6を、上記4つの化合物の混合割合が異なる材料で形成した6種類のサンプルを作製した。この実施例においても、第1の誘電体層2と第2の誘電体層6は、同じ材料で形成した。
【0248】
本実施例において、各サンプルは、第1および第2の誘電体層が表10に示す材料から成る点を除いて、実施例1と同様、図1に示す情報記録媒体25と同じ構成を有するように作製した。基板1として、実施例1で使用した基板と同じものを使用した。記録層4、光吸収補正層7および反射層8の形成は、実施例1と同様にして実施した。第1の誘電体層2および第2の誘電体層6は、それぞれ表10に示す材料から成るスパッタリングターゲット(直径100mm、厚さ6mm)を用いて、0.13Paの圧力下で高周波スパッタリングを実施して形成した。いずれのサンプルにおいても、スパッタリングは、400Wのパワーを使用して、Arガス雰囲気中で実施した。
【0249】
得られた各サンプルについて、誘電体層の密着性と繰り返し書き換え性能を評価した。その評価結果を表10に示す。密着性および繰り返し書き換え性能の評価方法は、先に実施例1で説明したとおりである。組成範囲の決定には、実施例5で作製したサンプル5−6の評価結果も利用したので、その結果を表10に再度示す。
【0250】
【表10】
Figure 0004242674
【0251】
表10に示すように、式(4)、即ち、(D)X(SiO2Y(Cr23Z(LaF3100-X-Y-Z(mol%)で表される系において、DがHfO2であり、X、YおよびZが、20≦X≦70、10≦Y≦50、10≦Z≦60、および50≦X+Y+Z≦90を満たすと、情報記録媒体25において、良好な密着性、良好な繰り返し書き換え性能(繰り返し回数10万回以上)、およびPp<14mWの良好な記録感度が実現されることが確認された。
【0252】
(実施例9)
実施例9では、Ta25−SiO2−Cr23−LaF3混合系材料について、誘電体層の形成に適した組成範囲を決定した。具体的には、実施例1と同様に、図1に示す情報記録媒体25において、第1の誘電体層2および第2の誘電体層6を、上記4つの化合物の混合割合が異なる材料で形成した6種類のサンプルを作製した。この実施例においても、第1の誘電体層2と第2の誘電体層6は、同じ材料で形成した。
【0253】
本実施例において、各サンプルは、第1および第2の誘電体層が表11に示す材料から成る点を除いて、実施例1と同様、図1に示す情報記録媒体25と同じ構成を有するように作製した。基板1として、実施例1で使用した基板と同じものを使用した。記録層4、光吸収補正層7および反射層8の形成は、実施例1と同様にして実施した。第1の誘電体層2および第2の誘電体層6は、それぞれ表11に示す材料から成るスパッタリングターゲット(直径100mm、厚さ6mm)を用いて、0.13Paの圧力下で高周波スパッタリングを実施して形成した。いずれのサンプルにおいても、スパッタリングは、400Wのパワーを使用して、Arガス雰囲気中で実施した。
【0254】
得られた各サンプルについて、誘電体層の密着性と繰り返し書き換え性能を評価した。その評価結果を表11に示す。密着性および繰り返し書き換え性能の評価方法は、先に実施例1で説明したとおりである。組成範囲の決定には、実施例5で作製したサンプル5−8の評価結果も利用したので、その結果を表11に再度示す。
【0255】
【表11】
Figure 0004242674
【0256】
表11に示すように、(4)、即ち、(D)X(SiO2Y(Cr23Z(LaF3100-X-Y-Z(mol%)で表される系において、DがTa25であり、X、YおよびZが、20≦X≦70、10≦Y≦50、10≦Z≦60、および50≦X+Y+Z≦90を満たすと、、情報記録媒体25において、良好な密着性およびPp<14mWの良好な記録感度が実現されることが確認された。サンプル9−1、2、3、5、6は、実施例7および8のサンプルと比較して、繰り返し回数が小さいものの、特定の用途(例えば、画像音声レコーダ用)の情報記録媒体として実用可能なものであった。
【0257】
(実施例10)
実施例10では、ZrSiO4−Cr23−LaF3混合系材料について、誘電体層の形成に適した組成範囲を決定した。具体的には、実施例1と同様に、図1に示す情報記録媒体25において、第1の誘電体層2および第2の誘電体層6を、上記3つの化合物の混合割合が異なる材料で形成した7種類のサンプルを作製した。この実施例においても、第1の誘電体層2と第2の誘電体層6は、同じ材料で形成した。
【0258】
本実施例において、各サンプルは、第1および第2の誘電体層が表12に示す材料から成る点を除いて、実施例1と同様、図1に示す情報記録媒体25と同じ構成を有するように作製した。基板1として、実施例1で使用した基板と同じものを使用した。記録層4、光吸収補正層7および反射層8の形成は、実施例1と同様にして実施した。第1の誘電体層2および第2の誘電体層6は、それぞれ表12に示す材料から成るスパッタリングターゲット(直径100mm、厚さ6mm)を用いて、0.13Paの圧力下で高周波スパッタリングを実施して形成した。いずれのサンプルにおいても、スパッタリングは、400Wのパワーを使用して、Arガス雰囲気中で実施した。
【0259】
得られた各サンプルについて、誘電体層の密着性と繰り返し書き換え性能を評価した。その評価結果を表12に示す。密着性および繰り返し書き換え性能の評価方法は、先に実施例1で説明したとおりである。
【0260】
【表12】
Figure 0004242674
【0261】
表12に示すように、式(5)、即ち、(ZrSiO4A(Cr23B(LaF3100-A-B(mol%)で表される系において、AおよびBが、20≦A≦70、10≦B≦50、および50≦A+B≦90を満たすと、情報記録媒体25において、良好な密着性、良好な繰り返し書き換え性能(繰り返し回数10万回以上)、およびPp<14mWが実現されることが確認された。また、Cr23の割合が大きい混合物系を採用すると、記録感度がやや低下し、LaF3の割合が大きい混合物系を採用すると、記録感度が高くなるという、各特性の組成依存性も確認された。
【0262】
(実施例11)
実施例11では、実施例10で作製したサンプル10−2の情報記録媒体に、ランド−グルーブ記録を実施し、グルーブ記録およびランド記録のそれぞれについて実施例1で記載した方法に従って繰り返し回数を求めて、繰り返し書き換え性能を評価した。その結果を、繰り返し書き換え性能の評価の際に求めたピークパワー(Pp)およびバイアスパワー(Pb)とともに表13に示す。この実施例においても、比較のために、実施例1で作製したものと同じ構成の図10に示す情報記録媒体31について、同じ評価を行った。
【0263】
【表13】
Figure 0004242674
【0264】
表13に示すように、サンプル10−2の繰り返し書き換え性能は、グルーブ記録およびランド記録の両方について、比較サンプルと同じであった。サンプル10−2はまた、比較サンプルよりもPpが低く、より高い記録感度を示した。したがって、本発明の情報記録媒体はランドグルーブ記録に用いる情報記録媒体として有用であることが確認された。
【0265】
このように、(ZrSiO450(Cr2330(LaF320(mol%)等で表される酸化物とフッ化物との混合物を含む層は、Sを含まないために、記録層と接して形成できる。また、酸化物−フッ化物系材料層を、第1の誘電体層2および第2の誘電体層6とした図1に示すような情報記録媒体25は、第1の界面層103および第2の界面層105を含む、図10に示すような情報記録媒体31と同等以上の良好な性能を有する。このことは、上記実施例3〜11の結果から明らかである。即ち、上記実施例により、本発明によれば、従来の情報記録媒体よりも層数を減らしても、それと同等以上の性能を有する情報記録媒体が得られることが検証できた。
【0266】
(実施例12)
実施例12では、上記において説明した実施の形態2に相当する図2に示す情報記録媒体26において、第1の誘電体層2のみが酸化物−フッ化物系材料層である情報記録媒体(サンプル12−1)を作製した。以下、情報記録媒体26の作製方法を説明する。
【0267】
まず、基板1として、実施例1で使用したものと同じ基板を準備した。この基板1上に、厚さ150nmの第1の誘電体層2、厚さ9nmの記録層4、厚さ3nmの第2の界面層105、厚さ50nmの第2の誘電体層106、厚さ40nmの光吸収補正層7を40nm、および厚さ80nmの反射層8を、この順にスパッタリング法により以下に説明する方法で成膜した。
【0268】
第1の誘電体層2を形成する工程においては、(ZrSiO430(Cr2340(LaF330(mol%)から成るスパッタリングターゲット(直径100mm、厚さ6mm)を成膜装置に取り付けて、圧力0.13Paにて、Arガス雰囲気中で高周波スパッタリングを実施した。パワーは400Wであった。
【0269】
記録層4は、実施例1と同様にして形成した。したがって、その組成は、Ge27Sn8Sb12Te53(原子%)であった。
【0270】
第2の界面層105は、先に実施例1にて説明した情報記録媒体31(比較サンプル)の第1の界面層103と同様にして形成した。第2の誘電体層106もまた、先に説明した情報記録媒体31(比較サンプル)の第1の誘電体層102と同様にして(ZnS)80(SiO220(mol%)で形成した。光吸収補正層7および反射層8は、実施例1にて説明した情報記録媒体25のそれらと同様にして形成した。
【0271】
比較のため、実施例1で作製したものと同様の情報記録媒体31を比較サンプルとして作製した。各サンプルの第1の誘電体層2の密着性を実施例1と同様の条件で測定した。また、各サンプルにグルーブ記録およびランド記録を実施し、グルーブ記録およびランド記録の繰り返し回数を実施例1で記載した方法に従って求めることにより、繰り返し書き換え性能を評価した。評価結果を表14に示す。
【0272】
【表14】
Figure 0004242674
【0273】
表14に示すように、第1の誘電体層2のみを酸化物−フッ化物系材料層とした6層構成の情報記録媒体26も、7層構成の情報記録媒体31と同等の密着性、繰り返し書き換え性能、ピークパワー、およびバイアスパワーを実現した。(ZrSiO430(Cr2340(LaF330(mol%)は、情報記録媒体26を構成する層の組成の一例である。実施例10で使用したZrSiO4−Cr23−LaF3混合系材料を用いて作製した情報記録媒体26は、いずれも良好な性能を示した。他の実施例で使用した材料についても同様である。
【0274】
(実施例13)
実施例13では、上記において説明した実施の形態3に相当する図3に示す情報記録媒体27において、第2の誘電体層6のみが(ZrSiO450(Cr2320(LaF330(mol%)から成る酸化物−フッ化物系材料層である情報記録媒体(サンプル13−1)を作製した。
【0275】
本実施例において、サンプル13−1は、第2の誘電体層6の形成工程を除いては、実施例4と同様にして形成した。第2の誘電体層6の形成工程においては、(ZrSiO450(Cr2320(LaF330(mol%)から成るスパッタリングターゲットを成膜装置に取り付けて、圧力0.13Paにて、Arガス雰囲気中で高周波スパッタリングを実施した。パワーは400Wであった。
【0276】
比較のため、実施例1で作製したものと同様の情報記録媒体31を比較サンプルとして作製した。各サンプルの第2の誘電体層6の密着性を実施例1と同様の条件で評価した。また、各サンプルの繰り返し書き換え性能を、各サンプルにグルーブ記録およびランド記録を実施し、グルーブ記録およびランド記録の繰り返し回数を実施例1で記載した方法に従って求めることにより、評価した。評価結果を表15に示す。
【0277】
【表15】
Figure 0004242674
【0278】
表15に示すように、第2の誘電体層6のみを(ZrSiO450(Cr2320(LaF330(mol%)とした6層構成の情報記録媒体27は、7層構成の情報記録媒体31と同等の密着性、繰り返し書き換え性能、ピークパワー、およびバイアスパワーを実現した。(ZrSiO450(Cr2320(LaF330(mol%)は、情報記録媒体27を構成する層の組成の一例である。実施例10で使用したZrSiO4−Cr23−LaF3混合系材料を用いて作製した情報記録媒体27は、いずれも良好な性能を示した。他の実施例で使用した材料についても同様である。
【0279】
(実施例14)
実施例14では、上記において説明した実施の形態4に相当する図4に示す情報記録媒体28において、第1および第2の誘電体層2および6が酸化物−フッ化物系材料層である情報記録媒体(サンプル14−1)を作製した。以下、情報記録媒体28の作製方法を説明する。
【0280】
まず、基板101として、深さ21nm、トラックピッチ(基板の主面に平行な面内におけるグルーブ表面およびグルーブ表面の中心間距離)0.32μmの案内溝が片側表面に予め設けられた、直径120mm、厚さ1.1mmの円形のポリカーボネート基板を準備した。
【0281】
基板101上に、厚さ80nmの反射層8、厚さ16nmの第2の誘電体層6、厚さ11nmの記録層4、および厚さ68nmの第1の誘電体層2を、この順にスパッタリング法により以下に説明する方法で成膜した。
【0282】
反射層8は、実施例1と同様にして形成した。第2の誘電体層6を形成する工程においては、(ZrSiO450(Cr2330(LaF320(mol%)から成るスパッタリングターゲット(直径100mm、厚さ6mm)を成膜装置に取り付けて、圧力0.13Paにて、Arガス雰囲気中で高周波スパッタリングを実施した。パワーは400Wであった。第1の誘電体層2も同様にして形成した。
【0283】
記録層4を形成する工程においては、Ge−Sb−Te系材料から成るスパッタリングターゲット(直径100mm、厚さ6mm)を成膜装置に取り付けて、直流スパッタリングを実施した。パワーは100Wとした。スパッタリング中、Arガス(97%)とN2ガス(3%)の混合ガスを導入した。スパッタ時の圧力は約0.13Paとした。記録層4の組成は、Ge45Sb4Te51であった。
【0284】
第1の誘電体層2を形成した後、紫外線硬化性樹脂を第1の誘電体層2の上に塗布した。塗布した紫外線硬化性樹脂の上に、直径120mm、厚さ90μmの円形のポリカーボネート基板をダミー基板110として密着させた。次いで、ダミー基板110の側から紫外線を照射して樹脂を硬化させた。これにより、硬化した樹脂から成る接着層9を10μmの厚さで形成すると同時に、ダミー基板110を接着層9を介して第1の誘電体層2の上に貼り合わせた。
【0285】
ダミー基板110を貼り合わせた後、波長670nmの半導体レーザを使用して初期化工程を実施した。初期化工程においては、情報記録媒体28の半径22mmから60mmの範囲の環状領域内に位置する記録層4を、ほぼ全面に亘って結晶化させた。初期化工程の終了により、情報記録媒体28(サンプル14−1)の作製が完了した。
【0286】
比較サンプルとして、第1の誘電体層と記録層との間および第2の誘電体層と記録層との間に、第1の界面層および第2の界面層を有する点を除いては、情報記録媒体28と同様の構成である情報記録媒体を作製した(図示せず)。この比較サンプルにおいて、第1の誘電体層および第2の誘電体層は、(ZnS)80(SiO220(mol%)から成る。これらの誘電体層は、先に実施例1にて説明した情報記録媒体31(比較サンプル)の第1の誘電体層102と同様にして形成した。第1の界面層および第2の界面層は、Ge−Cr−Nから成り、5nmの厚さを有する。これらの界面層は、先に実施例1にて説明した情報記録媒体31(比較サンプル)の第1の界面層103と同様にして形成した。その他の層は、情報記録媒体28のそれらの層と同様にして形成した。
【0287】
得られた各サンプルについて、密着性および繰り返し書き換え性能を評価した。その評価結果を表16に示す。密着性の評価方法は、実施例1にて説明したとおりである。繰り返し書き換え性能は、実施例1で採用した方法とは異なる方法で評価した。以下にその方法を説明する。
【0288】
情報記録媒体28の繰り返し書き換え性能は、実施例1で使用したものと同様の構成の情報記録システムを用いて評価した。情報記録媒体28の評価においては、波長405nmの半導体レーザと開口数0.85の対物レンズを使用し、23GB容量相当の記録を行った。情報記録媒体28を回転させる線速度は5m/秒とした。また、CNR(即ち、信号振幅とノイズの比)および消去率の測定には、スペクトラムアナライザーを用いた。
【0289】
まず、繰り返し回数を決定する際の測定条件を決めるために、ピークパワー(Pp)およびバイアスパワー(Pb)を以下の手順で設定した。レーザ光12を、高パワーレベルのピークパワー(mW)と低パワーレベルのバイアスパワー(mW)との間でパワー変調しながら情報記録媒体28に向けて照射して、マーク長0.16μmの2T信号を記録層4の同一のグルーブ表面に10回記録した。2T信号を10回記録した後、CNRを測定した。2T信号の10回記録の際、バイアスパワーを一定の値に固定し、ピークパワーを種々変化させた各記録条件についてCNRを測定し、信号振幅が飽和するときの最小のピークパワーの1.2倍のパワーをPpに設定した。
【0290】
次に、上記と同様にして2T信号を10回記録した後、信号を再生して2T信号の振幅を測定した。さらに、該グルーブ表面に9T信号を1回重ね書きし、信号を再生して2T信号の振幅を測定し、10回記録後に測定した振幅を基準とする2T信号の減衰率を消去率として求めた。2T信号の10回記録および9T信号の1回重ね書きの際、ピークパワーを先に設定したPpに固定し、バイアスパワーを種々変化させた各パワー条件について、以上のように定義される消去率を求め、消去率が25dB以上となるバイアスパワー範囲の中心値をPbに設定した。システムのレーザパワー上限値を考慮すれば、Pp≦6mW、Pb≦3mWを満足することが望ましい。
【0291】
繰り返し回数は、本実施例ではCNRおよび消去率に基づいて決定した。上記のようにして設定したPpとPbとでレーザ光をパワー変調しながら情報記録媒体28に向けて照射して、2T信号を同一のグルーブ表面に所定回数繰り返して連続記録した。それから、CNRを測定し、また、消去率を求めた。消去率は、上記と同様に、所定回数記録した後およびその上に9T信号を1回重ね書きした後に2T信号を測定して、所定回数記録した後に測定した2T信号の振幅に対する、9T信号を1回重ね書きした後に測定した2T信号の振幅の減衰率により求めた。CNRおよび消去率は、繰り返し回数が、1、2、3、5、10、100、200、500、1000、2000、3000、5000、7000、10000回であるときに求めた。10回繰り返した場合のCNRおよび消去率を基準として、CNRが2dB低下するか、または消去率が5dB低下したときを繰り返し書き換えの限界と判断し、このときの繰り返し回数により繰り返し書き換え性能を評価した。当然のことながら、繰り返し回数が大きいほど繰り返し書き換え性能が高い。情報記録媒体28の繰り返し回数は1万回以上が好ましい。
【0292】
【表16】
Figure 0004242674
【0293】
本実施例のサンプル14−1の情報記録媒体28は、図1に示す情報記録媒体25とは、基板上への各層の成膜順序、記録条件(レーザ波長やレンズの開口数)、ならびに記録容量が異なる。サンプル14−1の記録容量は、図1に示す情報記録媒体25の約5倍である。しかしながら、これらの相違点に関係なく、第1の誘電体層2および第2の誘電体層6として、(ZrSiO450(Cr2330(LaF320(mol%)から成る層を用いることによって、界面層を設けなくとも、界面層を有する比較サンプルと同等の性能を有する情報記録媒体が得られることが確認された。作製した情報記録媒体28の(凹凸のない平面部における)Rc実測値は20%、Raは3%であった。
【0294】
情報記録媒体28の構成で、第1の誘電体層2または第2の誘電体層6のみが酸化物−フッ化物系材料層であっても、同様な結果が得られた。即ち、酸化物−フッ化物系材料層を用いることにより、従来用いていた界面層を少なくとも一層は減らすことができ、且つ従来構成と同等の性能を確保することができる。また、本発明で採用される酸化物−フッ化物系材料層は、S(硫黄)を含まないので、Agを含む反射層8と界面を接しても原子拡散は生じない。それにより、4層構成が可能となった。当然のことながら、反射層8と第2の誘電体層6との間には、必要に応じて、記録層における光の吸収を調節するための層を形成してよい。そのような層は、金属、非金属、半金属、半導体および誘電体、ならびにそれらの化合物から選択される1種の材料または2種以上の材料の混合物で形成される。そのような層は、好ましくは、波長405nm付近の光に対して4以下の屈折率および4以下の消衰係数を有する。
【0295】
(実施例15)
実施例15では、上記において説明した実施の形態5に相当する図5に示す情報記録媒体29において、第5の誘電体層19、第4の誘電体層17、第2の誘電体層6および第1の誘電体層2が酸化物フッ化物系材料層である情報記録媒体(サンプル15−1)を作製した。以下、情報記録媒体29の作製方法を説明する。
【0296】
まず、基板101として、実施例14で使用した基板101と同じ基板を用意した。基板101上に、厚さ80nmの第2の反射層20、厚さ16nmの第5の誘電体層19、厚さ11nmの第2の記録層18、厚さ68nmの第4の誘電体層17を、この順にスパッタリング法により成膜し、第2情報層22を形成した。
【0297】
第2の反射層20は、実施例1と同様にして、Ag−Pd−Cu合金で形成した。第5の誘電体層19を形成する工程においては、(ZrSiO450(Cr2330(LaF320(mol%)から成るスパッタリングターゲット(直径100mm、厚さ6mm)を成膜装置に取り付けて、圧力0.13Paにて、Arガス雰囲気中で高周波スパッタリングを実施した。パワーは400Wであった。第4の誘電体層17も同様にして形成した。第2の記録層18は、実施例14と同様にして、Ge−Sb−Te系材料から成るスパッタリングターゲットを使用して形成した。
【0298】
次に、第2情報層22の上に、溝を有する厚さ30μmの中間層16を形成した。中間層16を以下の手順に従って形成した。まず、スピンコートにより、紫外線硬化性樹脂を塗布した。塗布した紫外線硬化性樹脂の上に、表面に凹凸が設けられたポリカーボネート基板を、当該凹凸を密着させて配置した。この凹凸は、中間層16に形成すべき案内溝と相補的な形状を有するものであった。その後、ポリカーボネート基板の側から紫外線を照射して樹脂を硬化させ、ポリカーボネート基板を中間層16から剥離した。これにより、紫外線硬化性樹脂が硬化されて成る、案内溝が転写により形成された中間層16を得た。
【0299】
中間層16の形成後、第2情報層22の初期化工程を実施した。初期化工程においては、波長670nmの半導体レーザを使用して、半径22mmから60mmの範囲の環状領域内に位置する第2の記録層18を、ほぼ全面に亘って結晶化させた。
【0300】
次に、中間層16上に、厚さ15nmの第3の誘電体層15、厚さ10nmの第1の反射層14、厚さ12nmの第2の誘電体層6、厚さ6nmの第1の記録層13、および厚さ45nmの第1の誘電体層2を、この順にスパッタリング法により成膜して、第1情報層21を形成した。
【0301】
第3の誘電体層15を形成する工程においては、TiO2から成るスパッタリングターゲット(直径100mm、厚さ6mm)を用いて、圧力約0.13Paにて高周波スパッタリングを実施した。パワーは400Wとした。スパッタリング中、Arガス(97%)とO2ガス(3%)との混合ガスを導入した。
【0302】
第1の反射層14も、第2の反射層20と同様にして形成し、Ag−Pd−Cu合金の層として形成した。第2の誘電体層6は、第5の誘電体層19と同様にして、(ZrSiO450(Cr2330(LaF320(mol%)で形成した。
第1の誘電体層2も同様にして形成した。したがって、この実施例において、第5、第4、第2および第1の誘電体層19、17、6および2は、すべて同じ組成を有する。
【0303】
第1の記録層13を形成する工程においては、Ge−Sn−Sb−Te系材料から成るスパッタリングターゲット(直径100mm、厚さ6mm)を成膜装置に取り付けて、圧力0.13Paにて、直流スパッタリングを実施した。パワーは50Wとした。スパッタリング中、Arガス(100%)を導入した。スパッタ時の圧力は約0.13Paとした。記録層の組成は、Ge40Sn5Sb4Te51(原子%)であった。
【0304】
第1の誘電体層2を形成した後、紫外線硬化性樹脂を第1の誘電体層2上に塗布した。塗布した紫外線硬化性樹脂の上に、直径120mm、厚さ65μmの円形のポリカーボネート基板をダミー基板110として密着させた。次いで、ダミー基板110の側から紫外線を照射して樹脂を硬化させた。これにより、硬化した樹脂から成る接着剤層9を10μmの厚さで形成すると同時に、ダミー基板110を接着層を介して第1の誘電体層2の上に貼り合わせた。
【0305】
ダミー基板110を貼り合わせた後、波長670nmの半導体レーザを使用して、第1の情報層21の初期化工程を実施した。初期化工程においては、半径22mmから60mmの範囲の環状領域内に位置する第1の記録層13を、ほぼ全面に亘って結晶化させた。初期化工程の終了により、情報記録媒体29(サンプル15−1)の作製が完了した。
【0306】
サンプル15−1の第1情報層21および第2情報層22それぞれについて、誘電体層の密着性および情報記録媒体の繰り返し書き換え性能を評価した。これらの結果を、繰り返し書き換え性能の評価の際に求めたピークパワー(Pp)およびバイアスパワー(Pb)とともに表17に示す。
【0307】
本実施例にて、誘電体層の密着性の評価は実施例1と同様の条件で、第1情報層21と第2情報層22のそれぞれについて剥離の有無を調べて実施した。情報記録媒体29の繰り返し書き換え性能の評価は、実施例14と同様の条件にて、第1情報層21と第2情報層22のそれぞれに23GB容量相当の記録を行って、第1情報層21と第2情報層22のそれぞれについて繰り返し回数を調べた。第1情報層21に記録する際には、レーザ光12を第1の記録層13に焦点させ、第2情報層22を記録する際には、レーザ光12を第2の記録層18に焦点させた。システムのレーザパワー上限値を考慮すれば、第1の情報層21でPp≦11mW、Pb≦5.5mWを満足することが望ましい。
【0308】
【表17】
Figure 0004242674
【0309】
本実施例のサンプル15−1の情報記録媒体29は、図1に示す情報記録媒体25とは、基板上への各層の形成順序、情報層(即ち、記録層)の数が2であること、および記録条件(レーザ波長やレンズの開口数)が異なる。また、サンプル15−1の記録容量は、図1に示す情報記録媒体25の約10倍である。しかしながら、これらの相違点に関係なく、第1、第2、第4および第5の誘電体層2、6、17および19として、(ZrSiO450(Cr2330(LaF320(mol%)から成る層を用いることによって、界面層を設けなくとも、良好な性能を有する情報記録媒体が得られることが確認された。作製した情報記録媒体29の(凹凸のない平面部における)第1情報層21のRc設計値は6%、Raは0.7%であった。第2情報層22のRc設計値は25%、Raは3%であった。
【0310】
本実施例においては、情報記録媒体29を構成する、第1、第2、第4および第5の誘電体層2、6、17および19を全て酸化物−フッ化物系材料層としたが、本発明はこれに限定されない。1つの変形例において、本発明の情報記録媒体は、これら4つの誘電体層のうち、少なくとも1つが酸化物−フッ化物系材料層であり、他の誘電体層が(ZnS)80(SiO220(mol%)から成るものであってよい。その場合、(ZnS)80(SiO220(mol%)の誘電体層と記録層との間には界面層を形成する必要がある。かかる変形例の情報記録媒体ににおいても、層の数が減少するという目的が達成されるとともに、上記サンプル15−1と同様に良好な性能が得られる。
【0311】
また、本実施例では、第1、第2、第4および第5の誘電体層2、6、17、および19を、すべて同じ組成の酸化物−フッ化物系材料層としたが、本発明はこれに限定されない。1つの変形例として、これら4つの誘電体層が互いに異なる組成を有する情報記録媒体29を作製してよい。そのような情報記録媒体もまた、上記サンプル15−1と同様に、良好な性能を示す。
【0312】
(実施例16)
実施例16では、上記において説明した実施の形態6に相当する図6に示す情報記録媒体30において、第1の界面層3および第2の界面当5が酸化物−フッ化物系材料層である情報記録媒体(サンプル16−1)を作製した。以下、情報記録媒体30の作製方法を説明する。
【0313】
まず、基板1として、実施例1で使用した基板と同じ基板を用意した。基板1上に、厚さ150nmの第1の誘電体層102、厚さ5nmの第1の界面層3、厚さ9nmの記録層4、厚さ3nmの第2の界面層5、厚さ50nmの第2の誘電体層106、厚さ40nmの光吸収補正層7、および厚さ80nmの反射層8を、この順にスパッタリング法により成膜した。
【0314】
第1の誘電体層102は、先に実施例1にて説明した情報記録媒体31(比較サンプル)の第1の誘電体層102と同様にして(ZnS)80(SiO220(mol%)で形成した。第2の誘電体層106も同様にして形成した。
【0315】
第1の界面層3の形成工程においては、(ZrSiO450(Cr2340(LaF310(mol%)から成るスパッタリングターゲット(直径100mm、厚さ6mm)を成膜装置に取り付けて、圧力0.13Paにて、Arガス雰囲気中で高周波スパッタリングを実施した。パワーは400Wであった。第2の界面層5も同様にして形成した。
【0316】
記録層4は、実施例1と同様にして形成した。したがって、その組成は、Ge27Sn8Sb12Te53(原子%)であった。光吸収補正層7も、実施例1と同様にしてGe80Cr20を用いて形成した。反射層8も、実施例1と同様にして、Ag−Pd−Cu合金で形成した。
【0317】
比較のため、実施例1で作製したものと同様の情報記録媒体31を比較サンプルとして作製した。得られたサンプルについて、密着性および繰り返し書き換え性能を評価した。密着性の評価は、記録層4とこれに接する界面層の間、より詳細には記録層と第1の界面層3および第2の界面層5の少なくとも一方との間で剥離が発生していないかどうか調べることにより実施した。繰り返し書き換え性能の評価は、グルーブ記録およびランド記録を実施し、グルーブ記録およびランド記録の繰り返し回数を実施例1で記載した方法に従って求めることにより実施した。評価結果を表18に示す。
【0318】
【表18】
Figure 0004242674
【0319】
表18に示すように、酸化物−フッ化物系材料層を界面層として用いたサンプル16−1の性能は、比較サンプルと同等であった。このサンプル16−1を構成する層の数は従来の情報記録媒体と同じである。したがって、サンプル16−1においては層数の減少による効果を得ることはできない。しかし、酸化物−フッ化物系材料層を界面層とする場合には、Ge−Cr−Nの界面層を形成するときのように反応性スパッタリングに依らず、Arガスのみの雰囲気下でスパッタリングすることにより界面層を形成できる。従って、1つの酸化物−フッ化物系材料の界面層内での組成のバラツキおよび膜厚のバラツキがGe−Cr−Nの界面層よりも小さくなる。これにより、製造の容易性および安定性が向上する。また、酸化物−フッ化物系材料層は、膜質の装置依存性が小さいため、当該膜の形成条件はより速く最適化することができる。したがって、酸化物−フッ化物系材料層を界面層とすることにより、情報記録媒体の量産立ち上げがより速く進行するという効果ももたらされる。
【0320】
(実施例17)
実施例17では、群GMから選択される元素の酸化物および群GLから選択される元素のフッ化物以外の第三成分を含む酸化物−フッ化物系材料層を有する情報記録媒体の性能を評価した。この実施例では、第2の誘電体層6の材料を除いては実施例4と同様にして、図3に示す情報記録媒体27を作製した。
【0321】
第2の誘電体層6の形成に際しては、(ZrO229(SiO229(Cr2321(LaF321(mol%)から成るスパッタリングターゲット(直径100mm、厚さ6mm)を成膜装置に取り付け、さらにそのスパッタリングターゲット表面に、それぞれ10mm×10mm×1mmの寸法を有する、Si34、Ge、C、Au、Ni、PdおよびAlのスパッタリングチップを置いた。このスパッタリングチップを有するスパッタリングターゲットを用いて、圧力0.13Paにて、Arガス雰囲気中で高周波スパッタリングを実施して第2の誘電体層6を形成した。パワーは400Wであった。形成された層を分析したところ、当該層には(ZrO229(SiO229(Cr2321(LaF321が90モル%含まれ、第三成分として、Si34が3モル%、Geが3モル%、Auが0.5モル%、Niが0.5モル%、Pdが0.5モル%、およびAlが0.5モル%が含まれていた。
【0322】
比較のため、実施例1で作製したものと同様の情報記録媒体31を比較サンプルとして作製した。各サンプルの第2の誘電体層6の密着性を実施例1と同様の条件で評価した。また、各サンプルの繰り返し書き換え性能を、各サンプルにグルーブ記録およびランド記録を実施し、グルーブ記録およびランド記録の繰り返し回数を実施例1で記載した方法に従って求めることにより、評価した。評価結果を表19に示す。
【0323】
【表19】
Figure 0004242674
【0324】
表19に示すように、サンプル17−1は、比較サンプルと同程度の密着性および繰り返し書き換え性能を示した。また、サンプル17−1のPpおよびPbは比較サンプルよりも高いものの、Pp<14mWおよびPb<7mWを満たし、十分に実用可能なものであった。この結果から、誘電体層が群GMから選択される元素の酸化物と群GLから選択される元素のフッ化物とを合わせて90モル%以上含む場合には、良好な密着性、良好な繰り返し書き換え性能、および良好な記録感度が確保されることが確認された。
【0325】
(実施例18)
以上の実施例1〜17では、光学的手段によって情報を記録する情報記録媒体を作製した。実施例18では、図8に示すような、電気的手段によって情報を記録する情報記録媒体207を作製した。これはいわゆるメモリである。
【0326】
本実施例の情報記録媒体207は次のようにして作製した。まず、表面を窒化処理した、長さ5mm、幅5mmおよび厚さ1mmのSi基板201を準備した。この基板201の上に、Auの下部電極202を1.0mm×1.0mmの領域に厚さ0.1μmで形成した。下部電極202の上に、Ge38Sb10Te52(化合物としてはGe8Sb2Te11と表記される)の相変化部205を直径0.2mmの円形領域に厚さ0.1μmとなるように形成し、(ZrSiO440(Cr2330(LaF330(mol%)の断熱部206を、0.6mm×0.6mmの領域(但し相変化部205を除く)に、相変化部205と同じ厚さとなるように形成した。さらに、Auの上部電極204を0.6mm×0.6mmの領域に厚さ0.1μmで形成した。下部電極202、相変化部205、断熱部206および上部電極204はいずれも、スパッタリング法で形成した。
【0327】
相変化部205を成膜する工程では、Ge−Sb−Te系材料から成るスパッタリングターゲット(直径100mm、厚さ6mm)を成膜装置に取り付け、パワー100Wで、Arガスを導入して直流スパッタリングを行った。スパッタ時の圧力は約0.13Paとした。また、断熱部206を成膜する工程では、(ZrSiO440(Cr2330(LaF330(mol%)の組成を有する材料から成るスパッタリングターゲット(直径100mm、厚さ6mm)を成膜装置に取り付けて、約0.13Paの圧力下で、高周波スパッタリングを行った。パワーは400Wとした。スパッタリング中、Arガスを導入した。これら工程でのスパッタリングは、相変化部205および断熱部206が互いに積層しないように、成膜すべき面以外の領域をマスク治具で覆って各々行った。相変化部205および断熱部206の形成の順序は問わず、いずれを先に行ってもよい。
【0328】
相変化部205および断熱部206は記録部203を構成する。相変化部205は本発明に言うところの記録層に該当し、断熱部206は本発明に言うところの酸化物−フッ化物系材料層に該当する。
【0329】
尚、下部電極202および上部電極204は、電極形成技術の分野において一般的に採用されているスパッタリング方法によって成膜できるので、それらの成膜工程についての詳細な説明は省略する。
【0330】
以上のようにして作製した情報記録媒体207に電気的エネルギーを印加することによって相変化部205にて相変化が起こることを、図9に示すシステムにより確認した。図9に示す情報記録媒体207の断面図は、図8に示す情報記録媒体207の線A−Bに沿って厚さ方向に切断した断面を示している。
【0331】
より詳細には、図9に示すように、2つの印加部212を下部電極202および上部電極204にAuリード線でそれぞれボンディングすることによって、印加部212を介して電気的書き込み/読み出し装置214を情報記録媒体(メモリ)207に接続した。この電気的書き込み/読み出し装置214において、下部電極202と上部電極204に各々接続されている印加部212の間には、パルス発生部208がスイッチ210を介して接続され、また、抵抗測定器209がスイッチ211を介して接続されていた。抵抗測定器209は、抵抗測定器209によって測定される抵抗値の高低を判定する判定部213に接続されていた。パルス発生部208によって印加部212を介して上部電極204および下部電極202の間に電流パルスを流し、下部電極202と上部電極204との間の抵抗値を抵抗測定器209によって測定し、この抵抗値の高低を判定部213で判定した。一般に、相変化部205の相変化によって抵抗値が変化するため、この判定結果に基づいて、相変化部205の相の状態を知ることができる。
【0332】
本実施例の場合、相変化部205の融点は630℃、結晶化温度は170℃、結晶化時間は130nsであった。下部電極202と上部電極204の間の抵抗値は、相変化部205が非晶質相状態では1000Ω、結晶相状態では20Ωであった。相変化部205が非晶質相状態(即ち高抵抗状態)のとき、下部電極202と上部電極204の間に、20mA、150nsの電流パルスを印加したところ、下部電極202と上部電極204の間の抵抗値が低下し、相変化部205が非晶質相状態から結晶相状態に転移した。次に、相変化部205が結晶相状態(即ち低抵抗状態)のとき、下部電極202と上部電極204の間に、200mA、100nsの電流パルスを印加したところ、下部電極202と上部電極204の間の抵抗値が上昇し、相変化部205が結晶相から非晶質相に転移した。
【0333】
以上の結果から、相変化部205の周囲の断熱部206として(ZrSiO440(Cr2330(LaF330(mol%)の組成を有する材料を含む層を用い、電気的エネルギーを付与することによって、相変化部(記録層)にて相変態を生起させることができ、よって、情報記録媒体207が、情報を記録する機能を有することが確認できた。
【0334】
本実施例のように、円柱状の相変化部205の周囲に、誘電体である(ZrSiO440(Cr2330(LaF330(mol%)の断熱部206を設けると、上部電極204および下部電極202との間に電圧を印加することによって相変化部205に流れた電流がその周辺部に逃げることを効果的に抑制し得る。その結果、電流により生じるジュール熱によって相変化部205の温度を効率的に上昇させることができる。特に、相変化部205を非晶質相状態に転移させる場合には、相変化部205のGe38Sb10Te52を一旦溶融させて急冷する過程が必要である。相変化部205のこの溶融は、相変化部205の周囲に断熱部206を設けることによって、より小さい電流で生起し得る。
【0335】
断熱部206の(ZrSiO440(Cr2330(LaF330(mol%)は、高融点であり、熱による原子拡散も生じにくいので、情報記録媒体207のような電気的メモリに適用することが可能である。また、相変化部205の周囲に断熱部206が存在すると、断熱部206が障壁となって相変化部205は記録部203の面内において電気的および熱的に実質的に隔離される。このことを利用して、情報記録媒体207に、複数の相変化部205を断熱部206で互いに隔離された状態で設けて、情報記録媒体207のメモリ容量を増やすこと、ならびにアクセス機能およびスイッチング機能を向上させることが可能となる。あるいは、情報記録媒体207自体を複数個つなぐことも可能である。
【0336】
以上、種々の実施例を通じて本発明の情報記録媒体について説明してきたように、光学的手段で記録する情報記録媒体および電気的手段で記録する情報記録媒体のいずれにも酸化物−フッ化物系材料層を用いることができる。この酸化物−フッ化物系材料層を含む本発明の情報記録媒体によれば、これまで実現されなかった構成を実現でき、ならびに/または従来の情報記録媒体よりも優れた性能が得られる。
【0337】
【発明の効果】
本発明は、好ましくは記録層と直接接して形成する層を、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、CrおよびSiから成る群GMより選ばれる少なくとも一つの元素の酸化物と、La、Ce、Pr、Nd、Gd、Dy、Ho、ErおよびYbから成る群GLより選ばれる少なくとも一つの元素のフッ化物とを混合した材料で形成することを特徴とする。この特徴によれば、従来の光情報記録媒体が有していた、記録層と誘電体層との間の界面層を無くして、層数を減少できるとともに、信頼性が高く、優れた繰り返し書き換え性能および高記録感度が確保された光情報記録媒体を実現することができる。また、この酸化物−フッ化物系材料層を、電気的エネルギーを印加する情報記録媒体において、記録層を断熱するための誘電体層として使用すれば、小さい電気的エネルギーで記録層の相変化を生じさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の光情報記録媒体の一例を示す部分断面図である。
【図2】 本発明の光情報記録媒体の別の例を示す部分断面図である。
【図3】 本発明の光情報記録媒体のさらに別の例を示す部分断面図である。
【図4】 本発明の光情報記録媒体のさらに別の例を示す部分断面図である。
【図5】 本発明の光情報記録媒体のさらに別の例を示す部分断面図である。
【図6】 本発明の光情報記録媒体のさらに別の例を示す部分断面図である。
【図7】 式(5)で表される材料の組成範囲を示す三角図である。
【図8】 電気的エネルギーの印加により情報が記録される本発明の情報記録媒体の一例を示す模式図である。
【図9】 図8に示す情報記録媒体を使用するシステムの一例を示す模式図である。
【図10】 従来の情報記録媒体の一例を示す部分断面図である。
【符号の説明】
1,101,201 基板
2,102 第1の誘電体層
3,103 第1の界面層
4 記録層
5,105 第2の界面層
6,106 第2の誘電体層
7 光吸収補正層
8 反射層
9 接着層
10,110 ダミー基板
12 レーザ光
13 第1の記録層
14 第1の反射層
15 第3の誘電体層
16 中間層
17 第4の誘電体層
18 第2の記録層
19 第5の誘電体層
20 第2の反射層
21 第1情報層
22 第2情報層
23 グルーブ面
24 ランド面
25,26,27,28,29,30,31,207 情報記録媒体
202 下部電極
203 記録部
204 上部電極
205 相変化部(記録層)
206 断熱部(誘電体層)
208 パルス発生部
209 抵抗測定器
210,211 スイッチ
212 印加部
213 判定部
214 電気的書き込み/読み出し装置

Claims (36)

  1. 基板および記録層を含み、当該記録層が光の照射または電気的エネルギーの印加によって、結晶相と非晶質相との間で相変態を生じる情報記録媒体であって、Ti、Zr、Hf、Nb、TaおよびSiから成る群GMより選ばれる少なくとも一つの元素と、Crと、酸素原子と、La、Ce、Pr、Nd、Gd、Dy、Ho、ErおよびYbから成る群GLより選ばれる少なくとも一つの元素と、フッ素原子とを含む酸化物−フッ化物系材料層をさらに含み、
    前記酸化物−フッ化物系材料層が、下記の式:
    Figure 0004242674
    (式中、Mは前記群GMより選ばれる少なくとも一つの元素を示し、Lは前記群GLより選ばれる少なくとも一つの元素を示し、P、Q、I、JおよびKは、0<P≦38、0<Q≦45、24≦I≦76、0<J≦19、0<K≦48を満たす)
    で表される材料を含む、情報記録媒体
  2. 前記酸化物−フッ化物系材料層が、前記群GMより選ばれる元素として、Ti、Zr、HfおよびTaから成る群GM1より選ばれる少なくとも一つの元素およびCrを含み、前記群GLより選ばれる元素として、La、Ce、PrおよびNdから成る群GL1より選ばれる少なくとも一つの元素を含み、下記の式:
    Figure 0004242674
    (式中、M1前記群GM1より選ばれる少なくとも一つの元素を示し、L1前記群GL1より選ばれる少なくとも一つの元素を示し、P、Q、I、JおよびKは、0<P≦38、0<Q≦45、24≦I≦76、0<J≦19、0<K≦48を満たす)
    で表される材料を含む、請求項1に記載の情報記録媒体。
  3. 前記酸化物−フッ化物系材料層が、前記群GMより選ばれる元素として、Ti、Zr、HfおよびTaから成る群GM1より選ばれる少なくとも一つの元素、Cr、およびSiを含み、前記群GLより選ばれる元素として、La、Ce、PrおよびNdから成る群GL1より選ばれる少なくとも一つの元素を含み、下記の式:
    Figure 0004242674
    (式中、M1前記群GM1より選ばれる少なくとも一つの元素を示し、L1前記群GL1より選ばれる少なくとも一つの元素を示し、R、S、T、U、VおよびWは、0<R≦28、0<S≦33、0<T≦19、25≦U≦70、0<V≦18、0<W≦45を満たす)
    で表される材料を含む、請求項1に記載の情報記録媒体。
  4. 前記酸化物−フッ化物系材料層が、(a)Ti、Zr、Hf、Nb、TaおよびSiから成る前記群GMより選ばれる少なくとも一つの元素の酸化物と、(b)La、Ce、Pr、Nd、Gd、Dy、Ho、ErおよびYbから成る前記群GLより選ばれる少なくとも一つの元素のフッ化物と、(c)Crの酸化物とを含む請求項1に記載の情報記録媒体。
  5. 前記酸化物−フッ化物系材料層が、前記群GMより選ばれる元素の酸化物群と、前記群GLより選ばれる元素のフッ化物群と、Crの酸化物とを合わせて90モル%以上含む請求項に記載の情報記録媒体。
  6. 前記酸化物−フッ化物系材料層が、前記群GMより選ばれる元素の酸化物群と、Crの酸化物と合わせて50モル%以上含む請求項または請求項に記載の情報記録媒体。
  7. 前記酸化物−フッ化物系材料層が、前記群GMより選ばれる元素の酸化物として、Ti、Zr、HfおよびTaから成る群GM1より選ばれる少なくとも一つの元素の酸化物、およびCrの酸化物を含み、前記群GLより選ばれる元素のフッ化物として、La、Ce、PrおよびNdから成る群GL1より選ばれる少なくとも一つの元素のフッ化物を含む請求項に記載の情報記録媒体。
  8. 前記酸化物−フッ化物系材料層が、前記群GMより選ばれる元素の酸化物として、Ti、Zr、HfおよびTaから成る前記群GM1より選ばれる元素の酸化物群と、Crの酸化物とを合わせて50モル%以上含む、請求項に記載の情報記録媒体。
  9. 前記酸化物−フッ化物系材料層が、前記群GMより選ばれる元素の酸化物として、Siの酸化物をさらに含む請求項に記載の情報記録媒体。
  10. 前記酸化物−フッ化物系材料層が、前記群GMより選ばれる元素の酸化物として、ZrO2、HfO2およびTa25から選択される少なくとも1つの酸化物、ならびにSiO2を含み、前記群GLより選ばれる元素のフッ化物として、LaF3を含み、前記Crの酸化物としてCr 2 3 を含む、請求項に記載の情報記録媒体。
  11. 前記酸化物−フッ化物系材料層が、下記の式:
    Figure 0004242674
    (式中、DはZrO2、HfO2およびTa25から選択される少なくとも1つの酸化物を示し、X、YおよびZは、20≦X≦70、10≦Y≦50、10≦Z≦60、50≦X+Y+Z≦90を満たす)
    で表される材料を含む、請求項1に記載の情報記録媒体。
  12. 前記酸化物−フッ化物系材料層が、前記群GMより選ばれる元素の酸化物として、ZrSi 4 含み、前記群GLより選ばれる元素のフッ化物としてLaF3を含み、前記Crの酸化物としてCr23 を含む請求項に記載の情報記録媒体。
  13. 前記酸化物−フッ化物系材料層が、下記の式:
    Figure 0004242674
    (式中、AおよびBは、20≦A≦70、10≦B≦50、50≦A+B≦90を満たす)
    で表される材料を含む、請求項1に記載の情報記録媒体。
  14. 前記記録層において相変態が可逆的に生じる請求項1〜1のいずれか1項に記載の情報記録媒体。
  15. 前記記録層が、Ge−Sb−Te、Ge−Sn−Sb−Te、Ge−Bi−Te、Ge−Sn−Bi−Te、Ge−Sb−Bi−Te、Ge−Sn−Sb−Bi−Te、Ag−In−Sb−TeおよびSb−Teから選択される、いずれか1つの材料を含む請求項1に記載の情報記録媒体。
  16. 前記記録層の膜厚が、15nm以下である請求項1または請求項1に記載の情報記録媒体。
  17. 前記記録層を2つ以上備えている請求項1〜1のいずれか1項に記載の情報記録媒体。
  18. 基板の一方の表面に、第1の誘電体層、記録層、第2の誘電体層、および反射層がこの順に形成されており、当該第1の誘電体層および当該第2の誘電体層のうち少なくとも1つの誘電体層が、前記酸化物−フッ化物系材料層であって、当該記録層と界面を接している請求項1〜1のいずれか1項に記載の情報記録媒体。
  19. 基板の一方の表面に、第1の誘電体層、界面層、記録層、第2の誘電体層、光吸収補正層、および反射層がこの順に形成されており、当該第2の誘電体層が前記酸化物−フッ化物系材料層であって、当該記録層と界面を接している請求項1〜1のいずれか1項に記載の情報記録媒体。
  20. 基板の一方の表面に、反射層、第2の誘電体層、記録層、および第1の誘電体層がこの順に形成されており、当該第1の誘電体層および当該第2の誘電体層のうち少なくとも1つの誘電体層が、前記酸化物−フッ化物系材料層であって、当該記録層と界面を接している請求項1〜1のいずれか1項に記載の情報記録媒体。
  21. 基板の一方の表面に、反射層、光吸収補正層、第2の誘電体層、記録層、界面層、および第1の誘電体層がこの順に形成され、当該第2の誘電体層が前記酸化物−フッ化物系材料層であって、当該記録層と界面を接している請求項1〜1のいずれか1項に記載の情報記録媒体。
  22. 基板の一方の表面に、少なくとも第2の記録層と第1の記録層がこの順に形成され、少なくとも1つの前記酸化物−フッ化物系材料層が当該第1の記録層または当該第2の記録層と界面を接して形成されている請求項1〜17のいずれか1項に記載の情報記録媒体。
  23. 基板の一方の表面に、少なくとも第2の反射層、第5の誘電体層、第2の記録層、第4の誘電体層、中間層、第3の誘電体層、第1の反射層、第2の誘電体層、第1の記録層、および第1の誘電体層がこの順に形成され、当該第1の誘電体層、当該第2の誘電体層、当該第4の誘電体層、および当該第5の誘電体層のうち少なくとも1つの誘電体層が前記酸化物−フッ化物系材料層であって、当該第1の記録層または当該第2の記録層と界面を接して形成されている、請求項1〜17のいずれか1項に記載の情報記録媒体。
  24. 基板および記録層を含み、Ti、Zr、Hf、Nb、TaおよびSiから成る群GMより選ばれる少なくとも一つの元素と、Crと、酸素原子と、La、Ce、Pr、Nd、Gd、Dy、Ho、ErおよびYbから成る群GLより選ばれる少なくとも一つの元素と、フッ素原子とを含む酸化物−フッ化物系材料層をさらに含む情報記録媒体の製造方法であって、当該酸化物−フッ化物系材料層を、前記群GMより選ばれる少なくとも一つの元素と、Cr原子と、酸素原子と、前記群GLより選ばれる少なくとも一つの元素と、フッ素原子とを含むスパッタリングターゲットを用いて、スパッタリング法で形成する工程を含み、
    前記スパッタリングターゲットが下記の式:
    Figure 0004242674
    (式中、Mは前記群GMより選ばれる少なくとも一つの元素を示し、Lは前記群GL1より選ばれる少なくとも一つの元素を示し、p、q、i、jおよびkは、0<p≦38、0<q≦45、24≦i≦76、0<j≦19、0<k≦48を満たす)
    で表される材料を含む、情報記録媒体の製造方法。
  25. 前記スパッタリングターゲットが前記群GMより選ばれる元素として、Ti、Zr、HfおよびTaから成る群GM1より選ばれる少なくとも一つの元素およびCr含み、前記群GLより選ばれる元素として、La、Ce、PrおよびNdから成る群GL1より選ばれる少なくとも一つの元素を含み、下記の式:
    Figure 0004242674
    (式中、M1前記群GM1より選ばれる少なくとも一つの元素を示し、L1前記群GL1より選ばれる少なくとも一つの元素を示し、p、q、i、jおよびkは、0<p≦38、0<q≦45、24≦i≦76、0<j≦19、0<k≦48を満たす)
    で表される材料を含む、請求項2に記載の情報記録媒体の製造方法。
  26. 前記スパッタリングターゲットが、前記群GMより選ばれる元素として、Ti、Zr、HfおよびTaから成る群GM1より選ばれる少なくとも一つの元素、CrおよびSiを含み、前記群GLより選ばれる元素として、La、Ce、PrおよびNdから成る群GL1より選ばれる少なくとも一つの元素を含み、下記の式:
    Figure 0004242674
    (式中、M1前記群GM1より選ばれる少なくとも一つの元素を示し、L1前記群GL1より選ばれる少なくとも一つの元素を示し、r、s、t、u、vおよびwは、0<r≦28、0<s≦33、0<t≦19、25≦u≦70、0<v≦18、0<w≦45を満たす)
    で表される材料を含む、請求項2に記載の情報記録媒体の製造方法。
  27. 前記スパッタリングターゲットが、(a)Ti、Zr、Hf、Nb、TaおよびSiから成る前記群GMより選ばれる少なくとも一つの元素の酸化物と、(b)La、Ce、Pr、Nd、Gd、Dy、Ho、ErおよびYbから成る前記群GLより選ばれる少なくとも一つの元素のフッ化物と、(c)Crの酸化物とを含む、請求項2に記載の情報記録媒体の製造方法。
  28. 前記スパッタリングターゲットが、前記群GMより選ばれる元素の酸化物群と、前記群GLより選ばれる元素のフッ化物群と、Crの酸化物とを合わせて90モル%以上含む請求項2に記載の情報記録媒体の製造方法。
  29. スパッタリングターゲットが、前記群GMより選ばれる元素の酸化物群と、Crの酸化 物とを合わせて50モル%以上含む、請求項2または請求項28に記載の情報記録媒体の製造方法。
  30. 前記スパッタリングターゲットが、前記群GMより選ばれる元素の酸化物として、Ti、Zr、HfおよびTaから成る群GM1より選ばれる少なくとも一つの元素の酸化物およびCrの酸化物を含み、前記群GLより選ばれる元素のフッ化物として、La、Ce、PrおよびNdから成る群GL1より選ばれる少なくとも一つの元素のフッ化物を含む、請求項2に記載の情報記録媒体の製造方法。
  31. 前記スパッタリングターゲットが、前記群GMより選ばれる元素の酸化物として、Ti、Zr、HfおよびTaから成る前記群GM1より選ばれる元素の酸化物群と、Crの酸化物とを合わせて50モル%以上含む、請求項30に記載の情報記録媒体の製造方法。
  32. 前記スパッタリングターゲットが、前記群GMより選ばれる元素の酸化物として、Siの酸化物をさらに含む請求項3に記載の情報記録媒体の製造方法。
  33. 前記スパッタリングターゲットが、前記群GMより選ばれる元素の酸化物として、ZrO2、HfO2およびTa25から選択される少なくとも1つの酸化物、ならびにSiO2を含み、前記群GLより選ばれる元素のフッ化物としてLaF3を含前記Crの酸化物としてCr 2 3 を含む請求項2に記載の情報記録媒体の製造方法。
  34. 前記スパッタリングターゲットが下記の式:
    Figure 0004242674
    (式中、DはZrO2、HfO2およびTa25から選択される少なくとも1つの酸化物を示し、x、yおよびzは、20≦x≦70、10≦y≦50、10≦z≦60、50≦x+y+z≦90を満たす)
    で表される材料を含む、請求項3に記載の情報記録媒体の製造方法。
  35. 前記スパッタリングターゲットが、前記群GMより選ばれる元素の酸化物としてZrSiO4を含み、前記群GLより選ばれる元素のフッ化物としてLaF3を含前記Crの酸化物としてCr 2 3 を含む、請求項2に記載の情報記録媒体の製造方法。
  36. 前記スパッタリングターゲットが下記の式:
    Figure 0004242674
    (式中、aおよびbは、20≦a≦70、10≦b≦50、50≦a+b≦90を満たす)
    で表される材料を含む、請求項3に記載の情報記録媒体の製造方法。
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