JP2003341241A - 情報記録媒体とその製造方法 - Google Patents

情報記録媒体とその製造方法

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JP2003341241A JP2003063080A JP2003063080A JP2003341241A JP 2003341241 A JP2003341241 A JP 2003341241A JP 2003063080 A JP2003063080 A JP 2003063080A JP 2003063080 A JP2003063080 A JP 2003063080A JP 2003341241 A JP2003341241 A JP 2003341241A
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Noboru Yamada
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    • G11B7/00Recording or reproducing by optical means, e.g. recording using a thermal beam of optical radiation by modifying optical properties or the physical structure, reproducing using an optical beam at lower power by sensing optical properties; Record carriers therefor
    • G11B7/24Record carriers characterised by shape, structure or physical properties, or by the selection of the material
    • G11B7/2403Layers; Shape, structure or physical properties thereof
    • G11B7/24035Recording layers
    • G11B7/24038Multiple laminated recording layers

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  • Thermal Transfer Or Thermal Recording In General (AREA)
  • Optical Record Carriers And Manufacture Thereof (AREA)
  • Manufacturing Optical Record Carriers (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 記録層と誘電体層の間に界面層を設けなくて
も、高い信頼性と良好な繰り返し書き換え性能が確保さ
れた情報記録媒体を提供する。 【解決手段】 基板1の表面に、記録層4ならびに誘電
体層2および6が形成され、記録層4が光の照射または
電気的エネルギーの印加によって、結晶相と非晶質相と
の間で相変態を生じるものであり、誘電体層2および6
が、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、CrおよびSiか
ら成る群GMより選ばれる少なくとも一つの元素の酸化
物と、La、Ce、Pr、Nd、Gd、Dy、Ho、E
rおよびYbから成る群GLより選ばれる少なくとも一
つの元素のフッ化物を含む酸化物―フッ化物系材料層で
ある。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光学的もしくは電
気的に情報を記録し、消去し、書き換え、および再生す
る情報記録媒体ならびにその製造方法に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】発明者は、データファイルおよび画像フ
ァイルとして使える、大容量な書き換え型相変化情報記
録媒体である、4.7GB/DVD−RAMを開発し
た。これは既に商品化されている。
【0003】この4.7GB/DVD−RAMは、例え
ば日本国特許公開公報2001−322357号(特許
文献1)に開示されている。この公報に開示されている
DVD−RAMの構成を、図10に示す。図10に示す
情報記録媒体31は、基板1の一方の表面に、第1の誘
電体層102、第1の界面層103、記録層4、第2の
界面層105、第2の誘電体層106、光吸収補正層
7、および反射層8がこの順に形成されている7層構造
を有する。この情報記録媒体において、第1の誘電体層
は、第2の誘電体層よりも、入射されるレーザ光により
近い位置に存在する。第1の界面層と第2の界面層も同
じ関係を有する。このように、本明細書においては、情
報記録媒体が、同じ機能を有する層を2以上含む場合、
入射されるレーザ光から見て近い側にあるものから、順
に「第1」「第2」「第3」・・・と称する。
【0004】第1の誘電体層102と第2の誘電体層1
06は、光学距離を調節して記録層4の光吸収効率を高
め、結晶相の反射率と非晶質相の反射率との差を大きく
して信号振幅を大きくする機能を有する。従来誘電体層
の材料として使用している、ZnS−20mol%Si
2(本明細書において(ZnS)80(SiO220で表
されることがある)は非晶質材料で、熱伝導率が低く、
透明であって且つ高屈折率を有する。また、ZnS−2
0mol%SiO2は、膜形成時の成膜速度が大きく、
機械特性および耐湿性も良好である。このように、Zn
S−20mol%SiO2は、誘電体層を形成するのに
適した優れた材料である。
【0005】第1の誘電体層102および第2の誘電体
層106の熱伝導率が低いと、記録層4にレーザ光が入
射した際に生じる熱が、誘電体層102または106の
面内方向に拡散しにくく、記録層4から反射層8の方へ
厚さ方向において速やかに拡散する。特に、第2の誘電
体層106の熱伝導率が低い場合には、第2の誘電体層
106によって記録層4と反射層8との間がより断熱さ
れる。記録層4と反射層8と間の断熱の度合いが大きい
ほど、記録層4がより短い時間で冷却されることとな
り、非晶質マーク(記録マーク)が形成され易くなる。
記録マークが形成されにくい場合は、高いピークパワー
で記録する必要があり、記録マークが形成され易い場合
は低いピークパワーで記録できる。誘電体層の熱伝導率
が低い場合は、低いピークパワーで記録できるので、情
報記録媒体の記録感度は高くなる。一方、誘電体層の熱
伝導率が高い場合は、高いピークパワーで記録するの
で、情報記録媒体の記録感度は低くなる。情報記録媒体
中の誘電体層は、熱伝導率を精度良く測定できないほ
ど、薄い膜の形態で存在する。そのため、発明者らは、
誘電体層の熱伝導率の大きさを知る相対的な判断基準と
して、情報記録媒体の記録感度を採用している。
【0006】記録層4は、Ge−Sn−Sb−Teを含
む、高速で結晶化する材料を用いて形成する。かかる材
料を記録層4として有する情報記録媒体は、優れた初期
記録性能を有するだけでなく、優れた記録保存性および
書き換え保存性をも有する。相変化情報記録媒体は、記
録層4が結晶相と非晶質相との間で可逆的相変態を生じ
ることを利用して情報の記録、消去および書き換えを行
う。高パワーのレーザ光(ピークパワー)を記録層4に
照射して急冷すると、照射部が非晶質相となり記録マー
クが形成される。低パワーのレーザ光(バイアスパワ
ー)を照射して記録層を昇温して徐冷すると、照射部が
結晶相となり記録されていた情報は消去される。ピーク
パワーレベルとバイアスパワーレベルとの間でパワー変
調したレーザ光を記録層に照射することにより、既に記
録されている情報を消去しながら新しい情報に書き換え
ていくことができる。繰り返し書き換え性能は、ジッタ
値が実用上問題の無い範囲で書き換えを繰り返し得る最
大回数で表される。この回数が多いほど、繰り返し書き
換え性能が良いといえる。特に、データファイル用の情
報記録媒体は、優れた繰り返し書き換え性能を有するこ
とが望まれる。
【0007】第1の界面層103および第2の界面層1
05は、第1の誘電体層102と記録層4との間、およ
び第2の誘電体層106と記録層4との間で生じる物質
移動を防止する機能を有する。ここで物質移動とは、レ
ーザ光を記録層に照射して繰り返し書き換えている間
に、第1及び第2の誘電体層に含まれるZnS−20m
ol%SiO2のSが記録層に拡散していく現象をい
う。多量のSが記録層に拡散すると、記録層の反射率低
下を引き起こし、繰り返し書き換え性能が悪化する。こ
の現象は既に知られている(非特許文献1、N. Yamada
et al. Japanese Journal of Applied Physics Vol.37
(1998) pp. 2104-2110参照)。また、日本国特許公開公
報平10−275360号(特許文献2)および国際公
開第WO97/34298パンフレット(特許文献3)
には、この現象を防止する界面層を、Geを含む窒化物
を使用して形成することが開示されている。
【0008】光吸収補正層107は、記録層4が結晶状
態であるときの光吸収率Acと非晶質状態であるときの
光吸収率Aaの比Ac/Aaを調整し、書き換え時にマ
ーク形状が歪まないようにする働きがある。反射層8
は、光学的には記録層4に吸収される光量を増大させる
機能を有し、熱的には記録層4で生じた熱を速やかに拡
散させて急冷し、記録層4を非晶質化し易くするという
機能を有する。反射層8はまた、多層膜を使用環境から
保護する機能を有している。
【0009】このように、図10に示す情報記録媒体
は、それぞれが上述のように機能する7つの層を積層し
た構造とすることによって、4.7GBという大容量に
おいて、優れた繰り返し書き換え性能と高い信頼性を確
保し、商品化に至ったものである。
【0010】また、情報記録媒体の誘電体層に適した材
料としては、予てより種々のものが提案されている。例
えば、日本国特許公開公報平5−109115号(特許
文献4)には、光情報記録媒体において、耐熱保護層
が、1600K以上の融点をもつ高融点元素と低アルカ
リガラスとの混合物により形成されていることが開示さ
れている。同公報には、高融点元素として、Nb、M
o、Ta、Ti、Cr、Zr、およびSiが挙げられて
いる。また、同公報には、低アルカリガラスはSi
2、BaO、B23またはAl23を主成分とするも
のであることが開示されている。
【0011】日本国特許公開公報平5−159373号
(特許文献5)には、光情報記録媒体において、耐熱保
護層がSiよりも融点の高い窒化物、炭化物、酸化物、
硫化物のうちの少なくとも1種の化合物と、低アルカリ
ガラスとの混合物により形成されていることが開示され
ている。同公報には、高融点の化合物として、Nb、Z
r、Mo、Ta、Ti、Cr、Si、Zn、Alの炭化
物、酸化物、硫化物が例示されている。また、同公報に
は、低アルカリガラスがSiO2、BaO、B23、A
23を主成分とするものであることが開示されてい
る。
【0012】日本国特許公開公報平8−77604号
(特許文献6)には、再生専用の情報記録媒体におい
て、誘電体層がCe、La、Si、In、Al、Ge、
Pb、Sn、Bi、Te、Ta、Sc、Y、Ti、Z
r、V、Nb、Cr、およびWより成る群より選ばれた
少なくとも一元素の酸化物、Cd、Zn、Ga、In、
Sb、Ge、Sn、Pb、Biより成る群より選ばれた
少なくとも一元素の硫化物、またはセレン化物等より成
ることが開示されている。
【0013】日本国特許公開公報2001−67722
号(特許文献7)には、光記録媒体において、第1の界
面制御層および第2の界面制御層が、Al、Si、T
i、Co、Ni、Ga、Ge、Sb、Te、In、A
u、Ag、Zr、Bi、Pt、Pd、Cd、P、Ca、
Sr、Cr、Y、Se、La、Liから成る元素群のう
ち1種以上を含む窒化物、酸化物、炭化物、および硫化
物から選択されることが開示されている。
【0014】日本国特許公開公報平8−180458号
(特許文献8)には、カルコゲン化合物(具体的には、
ZnS、ZnSe、ZnTeから成る群から選ばれた少
なくとも一種)と、希土類弗化物(具体的には、PmF
3、SmF3、EuF3、GdF3、TbF3、DyF3、L
aF3、CaF3、PrF3及びNdF3からなる群から選
ばれた少なくとも一種)と、金属酸化物(具体的には、
SiO2、Ta25、ZrO2及びY23から成る群より
選ばれた少なくとも一種)とを含有する誘電体層が開示
され、多数回の繰り返し記録消去に有効であることが示
されている。
【0015】日本国特許公開公報平9−259468号
(特許文献9)には、IIa属元素の硫化物もしくはセレ
ン化物(MgS、CaS、SrS、BaS、RaS、M
gSe、CaSe、SrSe、BaSe、RaSe)の
中から選ばれた少なくとも一種と、耐熱化合物(Al、
Si、Ge、Y、Zr、Ba、Ta、Nb、V、W、H
f、Sc、もしくはランタノイドの酸化物、Al、S
i、Ge、Ta、Bの窒化物、Mg、Ca、Nd、T
b、Laの弗化物、Si、Bの炭化物)から選ばれた少
なくとも一種とを含有する誘電体層が開示されている。
この誘電体層を含む情報記録媒体が追記型媒体である場
合にはデータ保存安定性に優れ、書き換え形媒体である
場合には、多数回の繰り返し記録消去を行える。
【0016】
【特許文献1】特開2001−322357号公報
【特許文献2】特開平10−275360号公報(特許
請求の範囲)
【特許文献3】WO97/34298(特許請求の範
囲)
【特許文献4】特開平5−109115号公報(特許請
求の範囲)
【特許文献5】特開平5−159373号公報(特許請
求の範囲)
【特許文献6】特開平8−77604号公報(特許請求
の範囲)
【特許文献7】特開2001−67722号公報(特許
請求の範囲)
【特許文献8】特開平8−180458号公報(特許請
求の範囲)
【特許文献9】特開平9−259468号公報(特許請
求の範囲)
【非特許文献1】N. Yamada et al. Japanese Journal
of Applied Physics Vol.37(1998) pp. 2104-2110
【0017】
【発明が解決しようとする課題】上述のように、第1及
び第2の誘電体層をZnS−20mol%SiO2を用
いて形成した場合、Sの拡散防止のために誘電体層と記
録層との間には界面層が必然的に必要となる。しかしな
がら、媒体の価格を考慮すると、媒体を構成する層の数
は1つでも少ないことが望ましい。層の数が少ないと、
材料費の削減、製造装置の小型化、および製造時間短縮
による生産量の増加を実現することができ、媒体の価格
低減につながる。
【0018】発明者は、発明者は、層数を減らす一つの
方法として、第1の界面層および第2の界面層のうち、
少なくとも1つの界面層を無くす可能性について検討し
た。界面層は厚さ2nm〜5nmの極めて薄い層であ
り、構造的に弱い。そのため、繰り返し記録の間に膜破
壊が生じ、その結果、原子拡散が起こり易くなる。した
がって、界面層を無くすことは、情報記録媒体の安定性
の点からも望ましい。尤も、界面層を無くす場合には、
繰り返し記録による誘電体層から記録層へのSの拡散が
生じないよう、ZnS−20mol%SiO2以外の材
料で誘電体層を形成する必要があると、発明者は考え
た。さらに、誘電体層の材料については、カルコゲナイ
ド材料である記録層との密着性が良いこと、上記7層構
造のものと同等かそれ以上の高記録感度が得られるこ
と、透明であること、記録の際に溶けないように高融点
を有すること、および熱により分解しないように安定し
ていることが望まれる。
【0019】本発明は、界面層を設けずに記録層と直接
接するように形成された場合でも、誘電体層から記録層
へ物質が移動せず、且つ記録層との密着性が良好である
誘電体層が設けられた、優れた繰り返し書き換え性能を
有する情報記録媒体を提供することを主たる課題として
なされたものである。
【0020】なお、上記特許文献4〜7はいずれも、誘
電体層から記録層へ物質が移動する問題については言及
していない。したがって、これらの公報は、本発明が解
決しようとする課題、および当該課題を解決する手段、
即ち具体的な組成を教示していないことに留意すべきで
ある。
【0021】
【課題を解決するための手段】発明者らは、後述の実施
例で説明するように、種々の化合物を使用して、誘電体
層を形成し、誘電体層の記録層への密着性、および情報
記録媒体の繰り返し書き換え性能を評価した。その結
果、界面層を介さずに直接記録層の上下に誘電体層を設
ける場合、記録層に拡散し易い誘電体層、例えば従来の
ZnS−20mol%SiO2で誘電体層を形成した場
合、記録層への密着性は良いが、媒体の繰り返し書き換
え性能が悪いということが判った。また、例えば、Zr
2は、熱伝導率が低く、また融点が高いため、これを
誘電体層として使用すれば、情報記録媒体の記録感度を
高くでき、また優れた繰り返し書き換え性能を確保でき
る。しかし、ZrO2を用いて誘電体層を形成した場
合、記録層への密着性が悪いという結果が得られた。そ
の他の種々の酸化物、窒化物、硫化物、セレン化物およ
びフッ化物を用いて、誘電体層を記録層に接して形成し
た情報記録媒体について、誘電体層の記録層への密着性
および繰り返し書き換え性能を評価した。しかし、1種
類の酸化物、窒化物、硫化物、セレン化物またはフッ化
物を用いて誘電体層を形成した場合には、良好な密着性
と良好な繰り返し書き換え性能とを両立させることはで
きなかった。
【0022】そこで、発明者は、まず、Sを含まない2
種類以上の化合物を組み合わせて、誘電体層を形成する
ことを検討した。その結果、特定の酸化物と特定のフッ
化物との組み合わせが、記録層と接する誘電体層の構成
材料として適していることを見出し、本発明に至った。
【0023】即ち、本発明は、基板および記録層を含
み、前記記録層が光の照射または電気的エネルギーの印
加によって、結晶相と非晶質相との間で相変態を生じる
情報記録媒体であって、Ti、Zr、Hf、Nb、T
a、CrおよびSiから成る群GMより選ばれる少なく
とも一つの元素と、酸素原子(即ち、O)と、La、C
e、Pr、Nd、Gd、Dy、Ho、ErおよびYbか
ら成る群GLより選ばれる少なくとも一つの元素と、フ
ッ素原子(即ち、F)とを含む酸化物−フッ化物系材料
層をさらに含む情報記録媒体を提供する。
【0024】本発明の情報記録媒体は、光を照射するこ
とによって、あるいは電気的エネルギーを印加すること
によって、情報を記録再生する媒体である。一般に、光
の照射は、レーザ光(即ち、レーザビーム)を照射する
ことにより実施され、電気的エネルギーの印加は記録層
に電圧を印加することにより実施される。以下、本発明
の情報記録媒体を構成する酸化物−フッ化物系材料層
を、より具体的に説明する。
【0025】本発明の情報記録媒体を構成する酸化物−
フッ化物系材料層は、具体的には、
【化11】M(原子%)...(1) (式中、MはTi、Zr、Hf、Nb、Ta、Crおよ
びSiから成る群GMより選ばれる少なくとも一つの元
素を示し、LはLa、Ce、Pr、Nd、Gd、Dy、
Ho、ErおよびYbから成る群GLより選ばれる少な
くとも一つの元素を示し、H、I、JおよびKは、10
≦H≦45、24≦I≦76、0<J≦19、0<K≦
48を満たす)で表される酸化物−フッ化物系材料を含
む。ここで、「原子%」とは、式(1)が、「M」原
子、酸素原子、「L」原子、およびフッ素原子を合わせ
た数を基準(100%)として表された組成式であるこ
とを示している。以下の式においても「原子%」の表示
は、同様の趣旨で使用されている。また、式(1)は、
酸化物−フッ化物系材料層に含まれる、「M」原子、酸
素原子、「L」原子、およびフッ素原子のみをカウント
して表したものである。したがって、式(1)で示され
る材料を含む酸化物−フッ化物系材料は、これらの原子
以外の成分を含むことがある。
【0026】式(1)において、各原子がどのような化
合物として存在しているかは問われない。このような式
で材料を特定しているのは、薄膜に形成した層の組成を
調べるに際し、化合物の組成を求めることは難しく、現
実には、元素組成(即ち、各原子の割合)のみを求める
場合が多いことによる。式(1)で表される材料におい
て、元素Mの殆どは酸素原子とともに酸化物として存在
し、元素Lの殆どはフッ素原子とともにフッ化物として
存在していると考えられる。そのため、本明細書におい
ては、式(1)で表される材料を含む層であっても、こ
れを便宜的に「酸化物−フッ化物系材料層」と称してい
る。
【0027】本発明の情報記録媒体が光記録媒体である
場合、群GMより選ばれる元素、酸素原子、群GLより
選ばれる元素およびフッ素原子を含む酸化物−フッ化物
系材料層(以下、単に「酸化物−フッ化物系材料層」と
も呼ぶ)は、記録層と隣接する2つの誘電体層のうち、
いずれか一方の誘電体層として存在することが好まし
く、両方の誘電体層として存在することがより好まし
い。群GMを構成する元素、即ちTi、Zr、Hf、N
b、Ta、CrおよびSiの酸化物はいずれも、融点が
高く、熱安定性に優れる。熱安定性に優れた材料を含む
層は、当該層を含む情報記録媒体に情報が繰り返し書き
換えられる場合でも、劣化しにくく、耐久性に優れる。
また、群GLを構成する元素、即ち、La、Ce、P
r、Nd、Gd、Dy、Ho、ErおよびYbのフッ化
物はいずれも、水に不溶で、優れた耐湿性を示す。ま
た、これらのフッ化物はいずれも、カルコゲナイド材料
である記録層と良好に密着する。したがって、この酸化
物とこのフッ化物とを混合した酸化物−フッ化物系材料
で誘電体層が形成された情報記録媒体においては、 1)Sを含まない誘電体層を、記録層に良好に密着させ
て形成できるので、界面層が不要である; 2)図10に示す従来の情報記録媒体と同程度またはそ
れ以上の繰り返し書き換えに対する耐久性、および耐湿
性を情報記録媒体に付与できる; 3)酸化物とフッ化物とが混合されて構造が複雑となる
ため、層の熱伝導率が小さくなり、それにより記録層が
急冷されやすくなり、記録感度が高くなるという効果が
得られる。
【0028】本発明の情報記録媒体において、酸化物−
フッ化物系材料層は、前記群GMより選ばれる元素とし
て、Ti、Zr、HfおよびTaから成る群GM1より
選ばれる少なくとも一つの元素およびCrを含み、群G
Lより選ばれる元素として、La、Ce、PrおよびN
dから成る群GL1より選ばれる少なくとも一つの元素
を含み、式(2):
【化12】M1 Cr1 (原子%)...
(2) (式中、M1は群GM1より選ばれる少なくとも一つの
元素を示し、L1は群GL1より選ばれる少なくとも一
つの元素を示し、P、Q、I、JおよびKは、0<P≦
38、0<Q≦45、24≦I≦76、0<J≦19、
0<K≦48を満たす)で表される材料を含むものであ
ってよい。
【0029】Ti、Zr、HfおよびTaは、群GMを
構成する元素の中でも、より高い融点を有し、且つより
優れた熱安定性を示す酸化物を形成する。そのため、本
明細書においては、これらの元素から成る群を特にGM
1と称して、他の元素と区別している。Crは、その酸
化物がカルコゲナイド材料から成る記録層との密着性に
優れていることから、群GMから選択される元素として
酸化物−フッ化物系材料層を構成するのに適している。
La、Ce、PrおよびNdは、上述のように、そのフ
ッ化物が水に不溶で耐湿性に優れていることに加え、希
土類金属のフッ化物の中でも価格がより安いことから、
好ましく用いられる。そのため、本明細書においては、
これらの元素から成る群を特にGL1と称して、他の元
素と区別している。
【0030】上記式(2)で示される材料を含む酸化物
−フッ化物系材料層も、光記録媒体において記録層と隣
接する2つの誘電体層のうち、いずれか一方の誘電体層
として存在することが好ましく、両方の誘電体層として
存在することがより好ましい。式(2)で表される材料
を含む誘電体層を含む情報記録媒体は、より優れた繰り
返し書き換え性能を示し、また、誘電体層の記録層への
密着性においてより優れている。また、酸化物−フッ化
物系材料層を安価に形成できるので、情報記録媒体その
もののを安価に製造できる。
【0031】本発明の情報記録媒体において、酸化物−
フッ化物系材料層は、前記群GMより選ばれる元素とし
て、前記群GM1より選ばれる少なくとも1つの元素お
よびCrに加えて、Siを更に含み、式(3):
【化13】 M1 CrSi1 (原子%)...(3) (式中、M1は群GM1より選ばれる少なくとも一つの
元素を示し、L1は群GL1より選ばれる少なくとも一
つの元素を示し、R、S、T、U、VおよびWは、0<
R≦28、0<S≦33、0<T≦19、25≦U≦7
0、0<V≦18、0<W≦45を満たす)で表される
材料を含んでよい。式(3)で表される材料を含む酸化
物−フッ化物系材料層も、光記録媒体において記録層と
隣接する2つの誘電体層のうち、いずれか一方の誘電体
層として存在することが好ましく、両方の誘電体層とし
て存在することがより好ましい。Siの酸化物は酸化物
−フッ化物系材料層を軟らかくするので、繰り返し記録
が実施される場合に生じ得る膜割れおよび膜破壊を抑制
する。
【0032】上述のように、上記酸化物−フッ化物系材
料層において、群GMから選択される少なくとも一つの
元素は、酸素とともに酸化物として存在し、群GLから
選択される少なくとも一つの元素は、フッ素とともにフ
ッ化物として存在していると考えられる。したがって、
上記酸化物−フッ化物系材料層は、Ti、Zr、Hf、
Nb、Ta、CrおよびSiから成る群GMより選ばれ
る少なくとも一つの元素の酸化物と、La、Ce、P
r、Nd、Gd、Dy、Ho、ErおよびYbから成る
群GLより選ばれる少なくとも一つの元素のフッ化物を
含む層として特定され得る。
【0033】このように特定される層において、群GM
から選択される元素の酸化物群と、群GLから選択され
る元素のフッ化物群とは、合わせて90モル%以上含ま
れることが好ましい。ここで、「酸化物群」という用語
は、群GMから選択される元素が2以上であって、2種
以上の酸化物が層に含まれている場合には、すべての酸
化物を総称するために用いられる。あるいは、「酸化物
群」という用語は、群GMから選択される元素が1つの
みであって、1種の酸化物が層に含まれる場合には、そ
の酸化物のみを指す。「フッ化物群」という用語につい
ても同様である。換言すれば、酸化物−フッ化物系材料
層は、群GMから選択される元素の酸化物と群GLから
選択される元素のフッ化物以外の化合物(そのような化
合物を「第三成分」とも呼ぶ)を10モル%まで含んで
よい。酸化物−フッ化物系において、第三成分の占める
割合が10モルを超えると、層の熱安定性および耐湿性
が低減し、上記所定の効果を得ることが難しくなること
がある。
【0034】上記のように特定される層において、群G
Mから選択される少なくとも1つの元素の酸化物は、群
GMから選択される元素の酸化物群と群GLから選択さ
れる元素のフッ化物群とを合わせた量を基準(100モ
ル%)としたときに、50モル%以上含まれることが好
ましく、50モル%〜90モル%含まれることがより好
ましい。群GMから選択される元素の酸化物群の割合が
50モル%未満であると、例えば、酸化物−フッ化物系
材料層を記録層と接する誘電体層とした場合に、繰り返
し書き換え性能が低下する傾向にある。
【0035】上記のように酸化物とフッ化物の混合物を
含む層として特定される層は、好ましくは、群GMより
選ばれる元素の酸化物として、Ti、Zr、Hfおよび
Taから成る群GM1より選ばれる少なくとも一つの元
素の酸化物、およびCrの酸化物を含み、群GLより選
ばれる元素のフッ化物として、La、Ce、Prおよび
Ndから成る群GL1より選ばれる少なくとも一つの元
素のフッ化物を含む。この層によりもたらされる効果
は、上記式(2)で表される材料に関して先に説明した
とおりである。
【0036】この層において、群GM1から選ばれる元
素の酸化物群とCrの酸化物は、それらの酸化物と群G
L1から選ばれる元素のフッ化物とを合わせた量を基準
(100モル%)としたときに、50モル%以上含まれ
ることが好ましく、50〜90モル%含まれることがよ
り好ましい。それらの酸化物の割合が50モル%未満で
あると、例えば、酸化物−フッ化物系材料層を記録層と
接する誘電体層とした場合に、繰り返し書き換え性能が
低下する傾向にある。さらに好ましくは、群GM1より
選ばれる元素の酸化物群およびCrの酸化物はそれぞ
れ、前記基準に対し、10モル%以上含まれることが好
ましい。
【0037】また、この層は、群GM1から選ばれる少
なくとも1つの元素の酸化物とCrの酸化物に加えて、
Siの酸化物を含んでよい。Siの酸化物がもたらす効
果は式(3)で表される材料に関して先に説明したとお
りである。
【0038】群GM1から選ばれる少なくとも1つの元
素の酸化物とCrの酸化物とSiの酸化物とを含む層
は、好ましくは、ZrO2、HfO2およびTa25から
選択される少なくとも1つの酸化物、SiO2およびC
23を含み、群GLより選ばれる元素のフッ化物とし
てLaF3を含む。そのような酸化物−フッ化物系材料
層は、具体的には、下記の式(4):
【化14】 (D)X(SiO2Y(Cr23Z(LaF3100-X-Y-Z(mol%)...(4) (式中、DはZrO2、HfO2およびTa25から選択
される少なくとも1つの酸化物を示し、X、YおよびZ
は、20≦X≦70、10≦Y≦50、10≦Z≦6
0、50≦X+Y+Z≦90を満たす)で表される材料
を含む層である。ZrO2、HfO2およびTa25は、
融点がいずれも高く、熱的に安定している。LaF
3は、水に不溶なフッ化物の中でも融点が約1500℃
と最も高いこと、および価格が安いことから、最も実用
に適している。各化合物の好ましい割合は、上記のよう
にX、YおよびZで規定される。このような酸化物−フ
ッ化物系材料層を記録層と接する誘電体層とすることに
より、界面層を無くすことが可能となる。また、この層
を誘電体層として含む情報記録媒体は、優れた記録信号
品質を実現するとともに、繰り返し記録性能、耐湿性、
記録感度、記録及び書き換え保存性の点において優れて
いる。
【0039】上述のZrO2、SiO2、Cr23および
LaF3を含む酸化物−フッ化物系材料層において、Z
rO2とSiO2の含有量が略等しい場合には、ZrSi
4が含まれていることが好ましい。ZrSiO4は化学
量論組成の安定した複合酸化物である。ZrSiO
4は、高い構造安定性を有し、熱伝導率が低いため、こ
れを含む酸化物−フッ化物系材料層で記録層と接する誘
電体層を形成すると、繰り返し性能に優れ、且つより高
い記録感度を有する情報記録媒体を実現できる
【0040】ZrSiO4、Cr23およびLaF3を含
む酸化物−フッ化物系材料層は、好ましくは、下記の式
(5):
【化15】 (ZrSiO4A(Cr23B(LaF3100-A-B(mol%)...(5) (式中、AおよびBは、20≦A≦70、10≦B≦5
0、50≦A+B≦90を満たす)で表される材料を含
む層である。各化合物の好ましい割合は、上記のように
AおよびBで規定される。このような酸化物−フッ化物
系材料層を記録層と接する誘電体層とすることにより、
界面層を無くすことが可能となる。また、この層を誘電
体層として含む情報記録媒体は、優れた記録信号品質を
実現するとともに、繰り返し記録性能、耐湿性、記録感
度、記録及び書き換え保存性の点において優れている。
【0041】本発明の情報記録媒体において存在する酸
化物−フッ化物系材料層の組成分析は、例えば、X線マ
イクロアナライザーを用いて実施することができる。そ
の場合、組成は、各元素の原子濃度として得られる。
【0042】例えば、後述の式(40)、即ち、(Zr
2x(SiO2y(Cr23(LaF3
100-x-y-z(mol%)で表されるスパッタリングター
ゲットを用いてスパッタリングにより炭素基板上に形成
した膜を分析すると、Zr、Si、Cr、La、Oおよ
びFの原子濃度を測定できる。その結果、得られた実際
の分析値が、ZrO2、SiO2、Cr23、LaF3
ような化学量論組成と一致しておらず、式(4)、即
ち、(ZrO2X(SiO2Y(Cr23Z(La
3100-X-Y-Z(mol%)で表されないことがある。
そのような場合でも、酸化物−フッ化物系材料層が、群
GMから選択される少なくとも1つの元素、酸素原子、
群GLから選ばれる少なくとも1つの元素、およびフッ
素原子を含み、好ましくは上記式(1)〜(3)で表さ
れる材料を含む限りにおいて、本発明の目的は達成され
る。
【0043】以上説明した酸化物−フッ化物系材料層は
いずれも、本発明の情報記録媒体において、記録層と接
するように設けられる誘電体層として存在することが好
ましい。その場合、誘電体層は、記録層の両方の面に接
するように設けてよい。あるいは、上記の酸化物−フッ
化物系材料層はいずれも、本発明の情報記録媒体におい
て、記録層と誘電体層との間に位置する界面層として存
在してよい。換言すれば、上記の酸化物−フッ化物系材
料層はいずれも、本発明の情報記録媒体において、記録
層と接するように設けられることが好ましい。
【0044】上記本発明の情報記録媒体は、その記録層
において、相変態が可逆的に生じるものであることが好
ましい。即ち、本発明の情報記録媒体は、書き換え型情
報記録媒体として好ましく提供される。
【0045】相変態が可逆的に生じる記録層は、具体的
には、Ge−Sb−Te、Ge−Sn−Sb−Te、G
e−Bi−Te、Ge−Sn−Bi−Te、Ge−Sb
−Bi−Te、Ge−Sn−Sb−Bi−Te、Ag−
In−Sb−TeおよびSb−Teから選択される、い
ずれか1つの材料を含むことが好ましい。これらはいず
れも高速結晶化材料である。したがって、これらの材料
で記録層を形成すると、高密度且つ高転送速度で記録で
き、また、信頼性(具体的には記録保存性または書き換
え保存性)の点でも優れた情報記録媒体が得られる。
【0046】本発明の情報記録媒体において、記録層
が、相変態が可逆的に生じるものである場合には、記録
層の膜厚は15nm以下であることが望ましい。15n
mを超えると、記録層に加えられた熱が面内に拡散し、
厚さ方向に拡散しにくくなり、情報の書き換えに支障を
きたすことがある。
【0047】本発明の情報記録媒体は、基板の一方の表
面に、第1の誘電体層、記録層、第2の誘電体層、およ
び反射層がこの順に形成された構成を有するものであっ
てよい。この構成を有する情報記録媒体は、光の照射に
より記録される媒体である。本明細書において、「第1
の誘電体層」とは、入射される光に対してより近い位置
にある誘電体層をいい、「第2の誘電体層」とは、入射
される光に対してより遠い位置にある誘電体層をいう。
即ち、照射される光は、第1の誘電体層から、記録層を
経由して、第2の誘電体層に到達する。この構成の情報
記録媒体は、例えば、波長660nm付近のレーザ光で
記録再生する場合に用いられる。
【0048】本発明の情報記録媒体がこの構成を有する
場合、第1の誘電体層および第2の誘電体層のうち少な
くとも1つの誘電体層が、上述した酸化物−フッ化物系
材料層である。両方の誘電体層が、上述の酸化物−フッ
化物系材料層であってよい。その場合、両方の誘電体層
は、同一組成の層としてよく、あるいは異なる組成の層
としてよい。
【0049】この構成を有する情報記録媒体の一形態と
して、基板の一方の表面に、第1の誘電体層、界面層、
記録層、第2の誘電体層、光吸収補正層、および反射層
がこの順に形成されており、第2の誘電体層が前記酸化
物−フッ化物系材料層であって、記録層と界面を接して
いる情報記録媒体が挙げられる。
【0050】本発明の情報記録媒体は、基板の一方の表
面に、反射層、第2の誘電体層、記録層、および第1の
誘電体層がこの順に形成された構成を有するものであっ
てよい。この構成は、光が入射する基板の厚さを薄くす
る必要がある場合に採用される。具体的には、波長40
5nm付近の短波長のレーザ光で記録再生する場合に、
対物レンズの開口数NAを例えば0.85と大きくし
て、焦点位置を浅くする場合に、この構成の情報記録媒
体が使用される。このような波長および開口数NAを使
用するには、光が入射する基板の厚さを、例えば60〜
120μm程度にする必要がある。そのような薄い基板
の表面には、層を形成することが困難である。したがっ
て、この構成の情報記録媒体は、光が入射されない基板
を支持体として、その一方の表面に反射層等を順次形成
することにより形成されたものとして特定される。
【0051】本発明の情報記録媒体がこの構成を有する
場合、第1の誘電体層および第2の誘電体層のうち少な
くとも1つの誘電体層が、上述した酸化物−フッ化物系
材料層である。両方の誘電体層が、上述の酸化物−フッ
化物系材料層であってよい。その場合、両方の誘電体層
は、同一組成の層としてよく、あるいは異なる組成の層
としてよい。
【0052】この構成を有する情報記録媒体の一形態と
して、基板の一方の表面に、反射層、光吸収補正層、第
2の誘電体層、記録層、界面層、および第1の誘電体層
がこの順に形成されており、前記第2の誘電体層が前記
酸化物−フッ化物系材料層であって、前記記録層と界面
を接している情報記録媒体が挙げられる。
【0053】本発明の情報記録媒体は、2つ以上の記録
層を有するものであってよい。そのような情報記録媒体
は、例えば、基板の一方の表面の側に、2つの記録層が
誘電体層および中間層等を介して積層された、片面2層
構造を有するものである。片面2層構造の情報記録媒体
は、片側から光を照射して、2つの記録層に情報を記録
するものである。この構造によれば、記録容量を大きく
することが可能となる。あるいは、本発明の情報記録媒
体は、基板の両方の面に記録層が形成されたものであっ
てよい。
【0054】記録層を2つ以上有する情報記録媒体の一
形態として、基板の一方の表面に、少なくとも第2の反
射層、第5の誘電体層、第2の記録層、第4の誘電体
層、中間層、第3の誘電体層、第1の反射層、第2の誘
電体層、第1の記録層、および第1の誘電体層がこの順
に形成され、第1の誘電体層、第2の誘電体層、第4の
誘電体層、および第5の誘電体層のうち少なくとも1つ
の誘電体層が前記酸化物−フッ化物系材料層であって、
第1の記録層または第2の記録層と界面を接して形成さ
れている情報記録媒体が挙げられる。
【0055】本発明はまた、本発明の情報記録媒体を製
造する方法として、上述した酸化物−フッ化物系材料層
を、スパッタリング法で形成する工程を含む製造方法を
提供する。スパッタリング法によれば、スパッタリング
ターゲットの組成と略同じ組成を有する酸化物−フッ化
物系材料層を形成できる。したがって、この製造方法に
よれば、スパッタリングターゲットを適切に選択するこ
とによって所望の組成の酸化物−フッ化物系材料層を容
易に形成できる。
【0056】具体的には、スパッタリングターゲットと
して、下記の式(10):
【化16】Mi(原子%)...(10) (式中、MはTi、Zr、Hf、Nb、Ta、Crおよ
びSiから成る群GMより選ばれる少なくとも一つの元
素を示し、LはLa、Ce、Pr、Nd、Gd、Dy、
Ho、ErおよびYbから成る群GLより選ばれる少な
くとも一つの元素を示し、h、i、jおよびkは、10
≦h≦45、24≦i≦76、0<j≦19、0<k≦
48を満たす)で表される材料を含むものを使用でき
る。式(10)は、群GMから選ばれる元素Mの殆どが
酸化物の形態で存在し、群GLから選ばれる元素Lの殆
どがフッ化物の形態で存在する材料を元素組成で表した
式に相当する。このスパッタリングターゲットによれ
ば、上記式(1)で表される材料を含む酸化物−フッ化
物系材料層を形成できる。
【0057】あるいは、スパッタリングターゲットとし
て、下記の式(20):
【化17】 M1 Cr1 (原子%)...(20) (式中、M1はTi、Zr、HfおよびTaから成る群
GM1より選ばれる少なくとも一つの元素を示し、L1
はLa、Ce、PrおよびNdから成る群GL1より選
ばれる少なくとも一つの元素であり、p、q、i、jお
よびkは、0<p≦38、0<q≦45、24≦i≦7
6、0<j≦19、0<k≦48を満たす)で表される
材料を含むものを使用できる。このスパッタリングター
ゲットによれば、上記式(2)で表される材料を含む酸
化物−フッ化物系材料層を形成できる。
【0058】あるいは、スパッタリングターゲットとし
て、下記の式(30):
【化18】 M1 CrSi1 (原子%)...(30) (式中、M1はTi、Zr、HfおよびTaから成る群
GM1より選ばれる少なくとも一つの元素を示し、L1
はLa、Ce、PrおよびNdから成る群GL1より選
ばれる少なくとも一つの元素であり、r、s、t、u、
vおよびwは、0<r≦28、0<s≦33、0<t≦
19、25≦u≦70、0<v≦18、0<w≦45を
満たす)で表される材料を含むものを使用できる。この
スパッタリングターゲットによれば、上記式(3)で表
される材料を含む酸化物−フッ化物系材料層を形成でき
る。
【0059】あるいは、スパッタリングターゲットとし
て、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、CrおよびSiか
ら成る群GMより選ばれる少なくとも一つの元素の酸化
物と、La、Ce、Pr、Nd、Gd、Dy、Ho、E
rおよびYbから成る群GLより選ばれる少なくとも一
つの元素のフッ化物とを含んで成るものを使用すること
ができる。このようにスパッタリングターゲットを特定
しているのは、群GMより選ばれる元素、酸素、群GL
より選ばれる元素、およびフッ素を含むスパッタリング
ターゲットは、通常、群GMより選ばれる元素の酸化物
と、群GLより選ばれる元素のフッ化物の組成が表示さ
れて供給されていることによる。また、発明者は、組成
がそのように表示されたスパッタリングターゲットをX
線マイクロアナライザーで分析して得た元素組成が、表
示されている組成から算出される元素組成と略等しくな
ることを(即ち、組成表示(公称組成)が適正であるこ
と)を確認している。したがって、酸化物とフッ化物と
の混合物として提供されるスパッタリングターゲットも
また、本発明の製造方法において好ましく用いられる。
【0060】酸化物とフッ化物の混合物として提供され
るスパッタリングターゲットは、群GMより選ばれる元
素の酸化物群と、群GLより選ばれる元素のフッ化物群
とを合わせて90モル%以上含むものであることが好ま
しい。換言すれば、スパッタリングターゲットは、第三
成分を10モル%以下含んでよい。スパッタリングター
ゲットが第三成分を10モル%を超えて含むと、得られ
る酸化物−フッ化物系材料層もまた10モル%を超える
第三成分を含み、所期の効果を与える情報記録媒体を得
ることが困難となる場合がある。
【0061】酸化物とフッ化物の混合物として提供され
るスパッタリングターゲットは、群GMから選択される
元素の酸化物群と群GLから選択される元素のフッ化物
群とを合わせた量を基準(100モル%)としたとき
に、群GMから選択される元素の酸化物群を50モル%
以上含むことが好ましく、50モル%〜90モル%含む
ことがより好ましい。酸化物群の占める割合が50モル
%未満であるスパッタリングターゲットを用いると、得
られる酸化物−フッ化物もまた酸化物群の割合が50モ
ル%未満となり、所期の効果を与える情報記録媒体を得
ることが困難となる場合がある。
【0062】酸化物とフッ化物の混合物として提供され
るスパッタリングターゲットは、群GMより選ばれる元
素の酸化物として、Ti、Zr、HfおよびTaから成
る群GM1より選ばれる少なくとも一つの元素の酸化物
およびCrの酸化物を含み、群GLより選ばれる元素の
フッ化物として、La、Ce、PrおよびNdから成る
群GL1より選ばれる少なくとも一つの元素のフッ化物
を含んで成るものであってよい。このスパッタリングタ
ーゲットを用いれば、群GM1より選ばれる少なくとも
一つの元素の酸化物およびCrの酸化物、ならびに群G
L1より選ばれる少なくとも一つの元素のフッ化物を含
む層を形成できる。
【0063】このCrを含むスパッタリングターゲット
において、群GM1より選ばれる元素の酸化物群とCr
の酸化物は、それらの酸化物と群GL1から選ばれる元
素のフッ化物とを合わせた量を基準(100モル%)と
したときに、50モル%以上含まれることが好ましく、
50〜90モル%含まれることが好ましい。それらの酸
化物を50モル%未満で含むスパッタリングターゲット
を用いれば、得られる層もそれらの酸化物を50モル%
未満で含み、所期の効果を与える情報記録媒体を得るこ
とが困難となる場合がある。
【0064】このCrを含むスパッタリングターゲット
はまた、Siの酸化物をさらに含むものであってよい。
Siの酸化物を含むスパッタリングターゲットを用いれ
ば、得られる層もSiの酸化物を含み、好ましい特性を
情報記録媒体に付与する。
【0065】より具体的には、好ましく用いられるスパ
ッタリングターゲットは、群GMより選ばれる元素の酸
化物として、ZrO2、HfO2およびTa25から選択
される少なくとも1つの酸化物、SiO2およびCr2
3を含み、群GLより選ばれる元素のフッ化物としてL
aF3を含んで成る。そのようなスパッタリングターゲ
ットは、式(40):
【化19】 (D)x(SiO2y(Cr23z(LaF3100-x-y-z(mol%)...(40) (式中、DはZrO2、HfO2およびTa25から選択
される少なくとも1つの酸化物を示し、x、yおよびz
は、20≦x≦70、10≦y≦50、10≦z≦6
0、50≦x+y+z≦90を満たす)で表される材料
を含むものであることが好ましい。このスパッタリング
ターゲットを用いれば、上記式(4)で表される材料を
含む酸化物−フッ化物系材料層を形成できる。
【0066】上記式(40)で表される材料を含むスパ
ッタリングターゲットは、ZrO2とSiO2を略等しい
割合で含み、それらにより形成されたZrSiO4を含
むものであってよい。そのようなスパッタリングターゲ
ットは、式(50):
【化20】 (ZrSiO4a(Cr23b(LaF3100-a-b(mol%)...(50) (式中、aおよびbは、20≦a≦70、10≦b≦5
0、50≦a+b≦90を満たす)で表される材料を含
むものであることが好ましい。このスパッタリングター
ゲットを使用すれば、上記式(5)で表される材料を含
む酸化物−フッ化物系材料層を形成できる。
【0067】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を、図
面を参照しながら説明する。以下の実施の形態は例示的
なものであり、本発明は以下の実施の形態に限定されな
い。
【0068】(実施の形態1)本発明の実施の形態1と
して、レーザ光を用いて情報の記録および再生を実施す
る、光情報記録媒体の一例を説明する。図1に、その光
情報記録媒体の一部断面を示す。
【0069】図1に示す情報記録媒体25は、基板1の
一方の表面に、第1の誘電体層2、記録層4、第2の誘
電体層6、光吸収補正層7、および反射層8がこの順に
形成され、さらに接着層9でダミー基板10が反射層8
に接着された構成を有する。すなわち、反射層8は光吸
収補正層7の上に形成され、光吸収補正層7は第2の誘
電体層6の上に形成され、第2の誘電体層6は記録層4
の上に形成され、記録層4は第1の誘電体層2の上に形
成されている。この構成の情報記録媒体は、波長660
nm付近の赤色域のレーザビームで記録再生する、4.
7GB/DVD−RAMとして使用できる。この構成の
情報記録媒体には、基板1側からレーザ光12が入射さ
れ、それにより情報の記録及び再生が実施される。情報
記録媒体25は、第1の界面層103および第2の界面
層105を有していない点において図10に示す従来の
情報記録媒体31と相違する。
【0070】実施の形態1においては、第1の誘電体層
2および第2の誘電体層6がともに酸化物−フッ化物系
材料層である。酸化物−フッ化物系材料層は、前述のよ
うに、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、CrおよびSi
から成る群GMより選ばれる少なくとも一つの元素の酸
化物と、La、Ce、Pr、Nd、Gd、Dy、Ho、
ErおよびYbから成る群GLより選ばれる少なくとも
一つの元素のフッ化物を含む層である。
【0071】一般に、誘電体層の材料には、1)透明で
あること、2)融点が高く、記録の際に溶融しないこ
と、および3)カルコゲナイド材料である記録層との密
着性が良好であることが要求される。透明であること
は、基板1側から入射されたレーザ光12を通過させて
記録層4に到達させるために必要な特性である。この特
性は、特に入射側の第1の誘電体層に要求される。高い
融点は、ピークパワーレベルのレーザ光を照射したとき
に、誘電体層の材料が記録層に混入しないことを確保す
るために必要な特性であり、第1および第2の誘電体層
の両方に求められる。誘電体層の材料が記録層に混入す
ると、繰り返し書き換え性能が著しく低下する。カルコ
ゲナイド材料である記録層との密着性が良好であること
は、情報記録媒体の信頼性を確保するために必要な特性
であり、第1および第2の誘電体層の両方に求められ
る。さらに、誘電体層の材料は、得られる情報記録媒体
が、従来の情報記録媒体(即ち、ZnS−20mol%
SiO2から成る誘電体層と記録層との間に界面層が位
置する媒体)と同等かそれ以上の記録感度を有するよう
に選択する必要がある。
【0072】上記酸化物−フッ化物系材料層に含まれる
成分のうち、群GMを構成する元素の酸化物はいずれ
も、透明で融点が高く、熱安定性に優れる。したがっ
て、この化合物は、情報記録媒体の繰り返し書き換え性
能を確保する。群GLを構成する元素のフッ化物はいず
れも、水に不溶で、耐湿性に優れている。したがって、
この化合物は、情報記録媒体の耐湿性を確保する。群G
Mを構成する元素の酸化物には、例えば、TiO2、Z
rO2、HfO2、Nb25、Ta25、Cr23、およ
びSiO2が含まれる。群GLを構成する元素のフッ化
物には、例えば、LaF3、CeF3、PrF3、Nd
3、GdF3、DyF3、HoF3、ErF3、およびY
bF3が含まれる。これらの酸化物とフッ化物とを混合
して成る、Sを含まない材料を含む層を、第1の誘電体
層2および第2の誘電体層6とし、これらを図示するよ
うに記録層4と接するように形成することによって、繰
り返し書き換え性能に優れ、且つ記録層と誘電体層との
間の密着性が良好である情報記録媒体25を実現でき
る。また、酸化物とフッ化物とを混ぜて層の構造を複雑
化することにより、誘電体層における熱伝導が抑制され
る。したがって、上記酸化物−フッ化物系材料層を用い
れば、記録層の急冷効果の高い誘電体層を形成でき、情
報記録媒体の記録感度を高くし得る。
【0073】上記酸化物−フッ化物系材料層は、群GM
から選択される2以上の元素の酸化物、即ち2種類以上
の酸化物を含んでよい。2種以上の酸化物は複合酸化物
を形成していてよい。上記酸化物−フッ化物系材料層
は、群GLから選択される2以上の元素のフッ化物、即
ち2種類以上のフッ化物を含んでよい。2種類以上の酸
化物を含む層の例は、上記式(4)で表される材料を含
む層である。2種以上の酸化物は複合酸化物を形成して
いる層の例は、上記式(5)で表される材料を含む層で
ある。
【0074】第1の誘電体層2および第2の誘電体層6
は、群GMより選択される元素の酸化物として、Ti、
Zr、HfおよびTaから成る群GM1より選ばれる少
なくとも一つの元素の酸化物とCrの酸化物とを含み、
群GLより選択される元素のフッ化物として、La、C
e、PrおよびNdから成る群GL1より選ばれる少な
くとも一つの元素のフッ化物を含む酸化物−フッ化物系
材料層であることが好ましい。群GM1を構成する元素
の酸化物はいずれも、より融点が高く、熱安定性の点で
さらに優れている。Crの酸化物は、カルコゲン材料よ
りなる記録層との密着性に優れている。群GL1を構成
する元素のフッ化物はいずれも、コスト的に有利であ
る。したがって、これら特定の酸化物およびフッ化物を
含む酸化物−フッ化物系材料層を第1の誘電体層2およ
び第2の誘電体層6とすれば、繰り返し記録性能にさら
に優れ、且つより安価な情報記録媒体を提供できる。こ
の酸化物−フッ化物系材料層がSiの酸化物をさらに含
む場合には、誘電体層を軟らかくすることができ、情報
記録媒体を繰り返しの記録に付する場合でも、誘電体層
の膜割れおよび膜破壊を抑制できる。
【0075】より具体的には、酸化物−フッ化物系材料
層は、群GM1より選ばれる元素の酸化物としてZrO
2、HfO2およびTa25から選択される少なくとも1
つの酸化物を含み、さらにSiO2およびCr23を含
み、群GL1より選ばれる元素のフッ化物としてLaF
3を含む層であることが好ましい。ZrO2およびHfO
2は、透明で、高い融点(約2700℃)を有し、且つ
熱的に安定である。また、ZrO2、HfO2およびTa
25は、酸化物の中では熱伝導率が低い材料である。L
aF3は、水に不溶なフッ化物の中でも融点が約150
0℃と最も高く、価格が安いので、誘電体層を構成する
フッ化物として最も実用に適している。ZrO2、Hf
2およびTa25から選択される少なくとも1つの酸
化物、SiO2、Cr23およびLaF3を含む材料は、
上記式(4)、即ち、(D)X(SiO2Y(Cr
23Z(LaF3100-X-Y-Z(mol%)で表される。こ
の式において、DはZrO2、HfO2およびTa25
ら選択される1または2以上の酸化物を示す。また、こ
の式において、各化合物の混合割合を示す、X、Yおよ
びZは、20≦X≦70、10≦Y≦50、10≦Z≦
60、および50≦X+Y+Z≦90を満たす。X(Z
rO2、HfO2およびTa25から選択される1つの酸
化物の混合割合または2以上の酸化物を合わせた混合割
合)およびY(SiO2の混合割合)が上記範囲内にあ
れば、情報記録媒体は優れた繰り返し書き換え性能を示
す。Z(Cr23の混合割合)が上記範囲内にあれば、
記録層との密着性に優れた酸化物−フッ化物系材料層を
得ることができる。X+Y+Zが上記範囲内にあれば、
100−X−Y−Zが10以上50以下となる。100
−X−Y−Z(LaF3の混合割合)が上記範囲内にあ
れば、情報記録媒体は優れた記録感度を示す。
【0076】酸化物−フッ化物系材料層は、ZrSiO
4、Cr23およびLaF3を含む層であってよい。Zr
SiO4は、ZrO2とSiO2とが1:1で混合してい
る場合に形成される複合酸化物で、高い構造安定性を有
する。ZrSiO4、Cr2 3およびLaF3を含む材料
は、上記式(5)、即ち、(ZrSiO4A(Cr
23B(LaF3100-A-B(mol%)で表される。
この式において、各化合物の混合割合を示すAおよびB
は、20≦A≦70、10≦B≦50、および50≦A
+B≦90を満たす。A(ZrSiO4の混合割合)が
上記範囲内にあれば、情報記録媒体は優れた繰り返し書
き換え性能を示す。B(Cr23の混合割合)が上記範
囲内にあれば、記録層との密着性に優れた酸化物−フッ
化物系材料層を得ることができる。A+Bが上記範囲内
にあれば、100−A−Bが10以上50以下となる。
100−A−B(LaF3の混合割合)が上記範囲内に
あれば、情報記録媒体は優れた記録感度を示す。
【0077】図7に、式(5)で表される材料の組成範
囲を示す。図7において、座標は、(ZrSiO4、C
23、LaF3)である。この図において、式(5)
で表される材料は、a(70、10、20)、b(4
0、10、50)、c(20、30、50)、d(2
0、50、30)、e(40、50、10)、f(7
0、20、10)で囲まれる範囲(線上を含む)内の材
料である。
【0078】酸化物−フッ化物系材料層は、上記群GM
より選ばれる元素の酸化物と、上記群GLより選ばれる
元素のフッ化物とを、合わせて90モル%以上含むこと
が好ましい。これらの化合物を合わせて90モル%以上
含む層は、それ以外の第三成分を含んでいても、その熱
安定性および耐湿性は変わらず、第1の誘電体層2およ
び第2の誘電体層6として好ましく用いられる。第三成
分は、酸化物−フッ化物系材料層を形成する際に不可避
的に含まれるもの、または不可避的に形成されるもので
ある。第三成分として、例えば、誘電体、金属、半金
属、半導体および/または非金属が酸化物−フッ化物系
材料層に含まれる。
【0079】第三成分として含まれる誘電体は、より具
体的には、Al23、CeO2、CuO、Cu2O、Er
23、FeO、Fe23、Fe34、Ga23、Ho2
3、In23、In23とSnO2の混合物、La
23、Mn34、Nd23、NiO、Sc23、Sm2
3、SnO、SnO2、Tb47、WO3、Y23、Y
23、ZnO、AlN、BN、CrN、Cr2N、H
fN、NbN、Si34、TaN、TiN、VN、Zr
N、B4C、Cr32、HfC、Mo2C、NbC、Si
C、TaC、TiC、VC、W2C、WC、およびZr
Cである。
【0080】第三成分として含まれる金属は、Sc、
Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、
W、Mn、Fe、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、A
u、Zn、La、Ce、Nd、Sm、Gd、Tb、Dy
およびYbである。
【0081】第三成分として含まれる半金属および半導
体は、より具体的には、B、Al、C、Si、Geおよ
びSnである。第三成分として含まれる非金属は、より
具体的には、Sb、Bi、TeおよびSeである。
【0082】第1の誘電体層2および第2の誘電体層6
は、それぞれ異なる組成の酸化物−フッ化物系材料層で
構成してよい。例えば、式(4)、即ち、(D)X(S
iO2Y(Cr23Z(LaF3100-X-Y-Z(mol
%)で表される材料を用いる場合、第1の誘電体層2
は、より優れた耐湿性を有するように組成された材料で
形成することが好ましく、例えば(ZrO220(Si
210(Cr2350(LaF320(mol%)で形
成される。第2の誘電体層6は、記録層の急冷効果が大
きくなるように組成された材料で形成することが好まし
く、例えば、(ZrO230(SiO210(Cr23
20(LaF340(mol%)で形成される。また、第
1の誘電体層2および第2の誘電体層6は、群GMより
選ばれる元素の酸化物および/または群GLより選ばれ
る元素のフッ化物が互いに異なる材料で形成してもよ
い。例えば、第1の誘電体層2を、Ta25−Cr23
−CeF 3混合系材料で形成し、第2の誘電体層6を、
HfO2−SiO2−Cr23−LaF3混合系材料で形
成してよい。このように酸化物−フッ化物系材料層は、
所望の機能に応じて、酸化物およびフッ化物の種類、な
らびに/またはそれらの混合割合を最適化して形成でき
る。
【0083】第1の誘電体層2および第2の誘電体層6
は、各々の光路長(即ち、誘電体層の屈折率nと誘電体
層の膜厚dとの積nd)を変えることにより、結晶相の
記録層4の光吸収率Ac(%)と非晶質相の記録層4の
光吸収率Aa(%)、記録層4が結晶相であるときの情
報記録媒体25の光反射率Rc(%)と記録層4が非晶
質相であるときの情報記録媒体25の光反射率Ra
(%)、記録層4が結晶相である部分と非晶質相である
部分の情報記録媒体25の光の位相差Δφを調整する機
能を有する。記録マークの再生信号振幅を大きくして、
信号品質を上げるためには、反射率差(|Rc−Ra
|)または反射率比(Rc/Ra)が大きいことが望ま
しい。また、記録層4がレーザ光を吸収するように、A
cおよびAaも大きいことが望ましい。これらの条件を
同時に満足するように第1の誘電体層2および第2の誘
電体層6の光路長を決定する。それらの条件を満足する
光路長は、例えばマトリクス法(例えば久保田広著「波
動光学」岩波新書、1971年、第3章を参照)に基づ
く計算によって正確に決定することができる。
【0084】以上において説明した、酸化物−フッ化物
系材料は、その組成に応じて異なる屈折率を有する。誘
電体層の屈折率をn、膜厚をd(nm)、レーザ光12
の波長をλ(nm)とした場合、光路長ndは、nd=
aλで表される。ここで、aは正の数とする。情報記録
媒体25の記録マークの再生信号振幅を大きくして信号
品質を向上させるには、例えば、15%≦Rc且つRa
≦2%であることが好ましい。また、書き換えによるマ
ーク歪みを無くす又は小さくするには、1.1≦Ac/
Aaであることが好ましい。これらの好ましい条件が同
時に満たされるように第1の誘電体層2および第2の誘
電体層6の光路長(aλ)を、マトリクス法に基づく計
算により正確に求めた。得られた光路長(aλ)、なら
びにλおよびnから、誘電体層の厚さdを求めた。その
結果、例えば、上記式(5)、即ち、(ZrSiO4A
(Cr23B(LaF3100-A-B(mol%)で表さ
れ、屈折率nが1.8〜2.3である材料で、第1の誘
電体層2を形成する場合、その厚さは、好ましくは13
0nm〜170nmであることが判った。また、この材
料で第2の誘電体層6を形成する場合、その厚さは、好
ましくは、40〜70nmであることが判った。
【0085】基板1は、通常、透明な円盤状の板であ
る。誘電体層および記録層等を形成する側の表面には、
レーザ光を導くための案内溝が形成されていてもよい。
案内溝を基板に形成した場合、基板の断面を見ると、グ
ルーブ部とランド部とが形成される。グルーブ部は2つ
の隣接するランド部の間に位置するともいえる。したが
って、案内溝が形成された表面は、側壁でつながれた頂
面と底面とを有することとなる。本明細書においては、
レーザ光12の方向において、レーザ光12に近い側に
ある面を便宜的に「グルーブ面」と呼び、レーザ光から
遠い側にある面を便宜的に「ランド面」と呼ぶ。図1に
おいては、基板の案内溝の底面23がグルーブ面に相当
し、頂面24がランド面に相当する。後述の図2、3お
よび6においても同様である。これに対し、図4および
図5においては、底面である面24が「ランド面」に相
当し、頂面である面23が「グルーブ面」に相当する。
これは、後述するように、図4および図5に示す情報記
録媒体は、反射層および記録層の形成順序が、図1に示
す情報記録媒体のそれとは逆であることによる。記録マ
ークは、記録層において、グルーブ面に相当する記録層
の表面に記録されるか(グルーブ記録)、ランド面に相
当する記録層の表面に記録されるか(ランド記録)、あ
るいはグルーブおよびランド両方の面に相当する記録層
の表面に記録される(ランド−グルーブ記録)。
【0086】図1に示す態様において基板1のグルーブ
面23とランド面24の段差は、40nm〜60nmで
あることが好ましい。後述する図2、図3および図6に
示す態様の情報記録媒体を構成する基板1においても、
グルーブ面23とランド面24との段差はこの範囲であ
ることが好ましい。また、層を形成しない側の表面は、
平滑であることが望ましい。基板1の材料として、ポリ
カーボネート、アモルファスポリオレフィンもしくはP
MMAのような樹脂、またはガラスを挙げることができ
る。成形性、価格、および機械強度を考慮すると、ポリ
カーボネートが好ましく使用される。図示した形態にお
いて、基板1の厚さは、0.5〜0.7mm程度であ
る。
【0087】記録層4は、光の照射または電気的エネル
ギーの印加によって、結晶相と非晶質相との間で相変態
を起こし、記録マークが形成される層である。相変態が
可逆的であれば、消去や書き換えを行うことができる。
可逆的相変態材料としては、高速結晶化材料である、G
e−Sb−TeもしくはGe−Sn−Sb−Teを用い
ることが好ましい。具体的には、Ge−Sb−Teの場
合、GeTe−Sb2Te3擬二元系組成であることが好
ましく、その場合、4Sb2Te3≦GeTe≦50Sb
2Te3であることが好ましい。GeTe<4Sb2Te3
の場合、記録前後の反射光量の変化が小さく、読み出し
信号の品質が低下する。50Sb2Te3<GeTeの場
合、結晶相と非晶質相間の体積変化が大きく、繰り返し
書き換え性能が低下する。Ge−Sn−Sb−Teは、
Ge−Sb−Teよりも結晶化速度が速い。Ge−Sn
−Sb−Teは、例えば、GeTe−Sb2Te3擬二元
系組成のGeの一部をSnで置換したものである。記録
層4において、Snの含有量は、20原子%以下である
ことが好ましい。20原子%を越えると、結晶化速度が
速すぎて、非晶質相の安定性が損なわれ、記録マークの
信頼性が低下する。Snの含有量は記録条件に合わせて
調整することができる。
【0088】また、記録層4は、Ge−Bi−Te、G
e−Sn−Bi−Te、Ge−Sb−Bi−Te、また
はGe−Sn−Sb−Bi−TeのようなBiを含む材
料で形成することもできる。BiはSbよりも結晶化し
やすい。したがって、Sbの少なくとも一部をBiで置
換することによっても、記録層の結晶化速度を向上させ
ることができる。
【0089】Ge−Bi−Teは、GeTeとBi2
3の混合物である。この混合物においては、8Bi2
3≦GeTe≦25Bi2Te3であることが好まし
い。GeTe<8Bi2Te3の場合、結晶化温度が低下
し、記録保存性が劣化しやすくなる。25Bi2Te3
GeTe の場合、結晶相と非晶質相間の体積変化が大
きく、繰り返し書き換え性能が低下する。
【0090】Ge−Sn−Bi−Teは、Ge−Bi−
TeのGeの一部をSnで置換したものに相当する。S
nの置換濃度を調整して、記録条件に合わせて結晶化速
度を制御することが可能である。Sn置換は、Bi置換
と比較して、記録層の結晶化速度の微調整により適して
いる。記録層において、Snの含有量は10原子%以下
であることが好ましい。10原子%を越えると、結晶化
速度が速くなりすぎるために、非晶質相の安定性が損な
われ、記録マークの保存性が低下する。
【0091】Ge−Sn−Sb−Bi−Teは、Ge−
Sb−TeのGeの一部をSnで置換し、さらにSbの
一部をBiで置換したものに相当する。これは、GeT
e、SnTe、Sb2Te3およびBi2Te3の混合物に
相当する。この混合物においては、Sn置換濃度とBi
置換濃度を調整して、記録条件に合わせて結晶化速度を
制御することが可能である。Ge−Sn−Sb−Bi−
Teにおいては、4(Sb−Bi)2Te3≦(Ge−S
n)Te≦25(Sb−Bi)2Te3であることが好ま
しい。(Ge−Sn)Te<4(Sb−Bi)2Te3
場合、記録前後の反射光量の変化が小さく、読み出し信
号品質が低下する。25(Sb−Bi) 2Te3<(Ge
−Sn)Teの場合、結晶相と非晶質相間の体積変化が
大きく、繰り返し書き換え性能が低下する。また、記録
層において、Biの含有量は10原子%以下であること
が好ましく、Snの含有量は20原子%以下であること
が好ましい。BiおよびSnの含有量がそれぞれこの範
囲内にあれば、良好な記録マークの保存性が得られる。
【0092】可逆的に相変態を起こす材料としては、そ
の他に、Ag−In−Sb−Te、Ag−In−Sb−
Te−Ge、およびSbを70原子%以上含むSb−T
eが挙げられる。
【0093】非可逆的相変態材料としては、日本国特許
公報平7−25209公報(特許第2006849号)
に開示されるように、TeOx+α(αはPd、Ge等
である)を用いることが好ましい。記録層が非可逆的相
変態材料である情報記録媒体は、記録が一度だけ可能で
ある、いわゆるライトワンスタイプのものである。その
ような情報記録媒体においても、記録時の熱により誘電
体層中の原子が記録層中に拡散して、信号の品質を低下
させるという問題がある。したがって、本発明は、書き
換え可能な情報記録媒体だけでなく、ライトワンス型の
情報記録媒体にも好ましく適用される。
【0094】記録層4が可逆的に相変態する材料から成
る場合(即ち、情報記録媒体が書き換え可能な情報記録
媒体である場合)には、前述のように、記録層4の厚さ
は15nm以下であることが好ましく、12nm以下で
あることがより好ましい。
【0095】光吸収補正層7は、前述のように、記録層
4が結晶状態であるときの光吸収率Acと非晶質状態で
あるときの光吸収率Aaの比Ac/Aaを調整し、書き
換え時にマーク形状が歪まないようにする働きがある。
光吸収補正層7は、屈折率が高く、且つ適度に光を吸収
する材料で形成されることが好ましい。例えば、屈折率
nが3以上6以下、消衰係数kが1以上4以下である材
料を用いて、光吸収補正層7を形成できる。具体的に
は、Ge−Cr、およびGe−Mo等の非晶質のGe合
金、Si−Cr、Si−Mo、およびSi−W等の非晶
質のSi合金、Te化物、ならびにTi、Zr、Nb、
Ta、Cr、Mo、W、SnTe、およびPbTe等の
結晶性の金属、半金属及び半導体材料から選択される材
料を使用することが好ましい。光吸収補正層7の膜厚
は、20nm〜60nmであることが好ましい。
【0096】反射層8は、光学的には記録層4に吸収さ
れる光量を増大させ、熱的には記録層4で生じた熱を速
やかに拡散させて記録層4を急冷し、非晶質化し易くす
る機能を有する。さらに、反射層8は、記録層4および
誘電体層2および6を含む多層膜を使用環境から保護す
る。反射層8の材料としては、例えば、Al、Au、A
g、およびCu等の熱伝導率の高い単体金属材料が挙げ
られる。反射層8は、その耐湿性を向上させる目的で、
ならびに/あるいは熱伝導率または光学特性(例えば、
光反射率、光吸収率または光透過率)を調整する目的
で、上記の金属材料から選択される1つまたは複数の元
素に、他の1つまたは複数の元素を添加した材料を使用
して形成してよい。具体的には、Al−Cr、Al−T
i、Ag−Pd、Ag−Pd−Cu、Ag−Pd−T
i、またはAu−Cr等の合金材料を用いることができ
る。これらの材料は何れも耐食性に優れ且つ急冷機能を
有する優れた材料である。同様の目的は、反射層8を2
以上の層で形成することによっても達成され得る。反射
層8の厚さは50〜180nmであることが好ましく、
60nm〜100nmであることがより好ましい。
【0097】図示した情報記録媒体25において、接着
層9は、ダミー基板10を反射層8に接着するために設
けられる。接着層9は、耐熱性及び接着性の高い材料、
例えば、紫外線硬化性樹脂等の接着樹脂を用いて形成し
てよい。具体的には、アクリル樹脂を主成分とする材料
またはエポキシ樹脂を主成分とする材料で、接着層9を
形成してよい。また、必要に応じて、接着層9を形成す
る前に、紫外線硬化性樹脂よりなる、厚さ5〜20μm
の保護層を反射層8の表面に設けてもよい。接着層9の
厚さは好ましくは15〜40μmであり、より好ましく
は20〜35μmである。
【0098】ダミー基板10は、情報記録媒体25の機
械的強度を高めるとともに、第1の誘電体層2から反射
層8までの積層体を保護する。ダミー基板10の好まし
い材料は、基板1の好ましい材料と同じである。ダミー
基板10を貼り合わせた情報記録媒体25において、機
械的な反り、および歪み等が発生しないように、ダミー
基板10と基板1は、実質的に同一材料で形成され、同
じ厚さを有することが好ましい。
【0099】実施の形態1の情報記録媒体は、1つの記
録層を有する片面構造ディスクである。本発明の情報記
録媒体は、2つの記録層を有してよい。例えば、実施の
形態1において反射層8まで積層したものを、反射層8
同士を対向させて、接着層を介して貼り合わせることに
よって、両面構造の情報記録媒体が得られる。この場
合、2つの積層体の貼り合わせは、接着層を遅効性樹脂
で形成し、圧力と熱の作用を利用して実施する。反射層
8の上に保護層を設ける場合には、保護層まで形成した
積層体を、保護層同士を対向させて貼り合わせることに
より、両面構造の情報記録媒体を得る。
【0100】続いて、実施の形態1の情報記録媒体25
を製造する方法を説明する。情報記録媒体25は、案内
溝(グルーブ面23とランド面24)が形成された基板
1(例えば、厚さ0.6mm)を成膜装置に配置し、基
板1の案内溝が形成された表面に第1の誘電体層2を成
膜する工程(工程a)、記録層4を成膜する工程(工程
b)、第2の誘電体層6を成膜する工程(工程c)、光
吸収補正層7を成膜する工程(工程d)および反射層8
を成膜する工程(工程e)を順次実施し、さらに、反射
層8の表面に接着層9を形成する工程、およびダミー基
板10を貼り合わせる工程を実施することにより、製造
される。以下の説明を含む本明細書において、各層に関
して、「表面」というときは、特に断りのない限り、各
層が形成されたときに露出している表面(厚さ方向に垂
直な表面)を指すものとする。
【0101】最初に、基板1の案内溝が形成された面
に、第1の誘電体層2を成膜する工程aを実施する。工
程aは、スパッタリングにより実施される。スパッタリ
ングは、高周波電源を用いて、Arガス雰囲気で実施す
る。スパッタリングは、Arガスに5%以下の酸素ガス
が混合された混合ガス雰囲気中で実施してよい。
【0102】工程aで使用されるスパッタリングターゲ
ットとしては、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、Crお
よびSiから成る群GMより選ばれる少なくとも一つの
元素の酸化物と、La、Ce、Pr、Nd、Gd、D
y、Ho、ErおよびYbから成る群GLより選ばれる
少なくとも一つの元素のフッ化物を含む材料から成るス
パッタリングターゲットが用いられる。かかるスパッタ
リングターゲットは、好ましくは、元素分析の結果、上
記式(10)、(20)または(30)で表される材料
を含む。かかるスパッタリングターゲットによれば、上
記式(1)、(2)または(3)で表される材料を含む
酸化物−フッ化物系材料層が形成される。
【0103】前述の通り、群GMより選ばれる1または
複数の元素、酸素原子、群GLより選ばれる1または複
数の元素、およびフッ素原子を含むスパッタリングター
ゲットは、群GMの元素の酸化物と群GLの元素のフッ
化物との混合物の形態で提供される。本発明の製造方法
で使用されるスパッタリングターゲットは、群GMから
選択される元素の酸化物群を、群GMから選択される元
素の酸化物群と群GLから選択されるフッ化物群とを合
わせた量に対して、50モル%以上含むことが好まし
く、50〜90モル%含むことがより好ましい。スパッ
タリングターゲットにおいて、群GMから選択される元
素の酸化物群の割合が小さいと、スパッタリングにより
形成される層においても群GMから選択される元素の酸
化物群の割合が小さくなる。その場合、所期の効果を情
報記録媒体において得ることが困難となることがある。
【0104】上記特定の酸化物およびフッ化物を含むス
パッタリングターゲットとして、ZrO2、HfO2およ
びTa25から選択される少なくとも1つの酸化物、S
iO 2、Cr23およびLaF3を含むターゲットを使用
できる。より具体的には、上記の式(40)、即ち、
(D)x(SiO2y(Cr23z(LaF3100-x-y
-z(mol%)(式中、DはZrO2、HfO2およびTa2
5から選択される少なくとも1つの酸化物を示し、
x、yおよびzは、20≦x≦70、10≦y≦50、
10≦z≦60、50≦x+y+z≦90を満たす)で
表わされる材料を含むターゲットを使用できる。このタ
ーゲットによれば、上記式(4)で表される材料を含む
層が形成される。
【0105】あるいは、スパッタリングターゲットし
て、ZrSiO4、Cr23およびLaF3を含むターゲ
ットを使用できる。より具体的には、式(50)、即
ち、(ZrSiO4a(Cr23b(LaF3
100-a-b(mol%)で表され、aおよびbが20≦a
≦70、10≦b≦50、50≦a+b≦90を満たす
材料を含むターゲットを使用できる。このターゲットに
よれば、上記式(5)で表される材料を含む層が形成さ
れる。
【0106】群GMから選択される元素の酸化物および
群GLから選択されるフッ化物を含むスパッタリングタ
ーゲットはいずれも、これらの酸化物およびフッ化物以
外の第三成分を10モル%以下含んでよい。第三成分と
して含まれ得る成分は先に例示したとおりである。
【0107】次に、工程bを実施して、第1の誘電体層
2の表面に、記録層4を成膜する。工程bもまた、スパ
ッタリングにより実施される。スパッタリングは、直流
電源を用いて、Arガス雰囲気中、またはArガスとN
2ガスの混合ガス雰囲気中で実施する。スパッタリング
ターゲットは、Ge−Sb−Te、Ge−Sn−Sb−
Te、Ge−Bi−Te、Ge−Sn−Bi−Te、G
e−Sb−Bi−Te、Ge−Sn−Sb−Bi−T
e、Ag−In−Sb−TeおよびSb−Teのうち、
いずれか1つの材料を含むものを使用する。成膜後の記
録層4は非晶質状態である。
【0108】次に、工程cを実施して、記録層4の表面
に、第2の誘電体層6を成膜する。工程cは、工程aと
同様に実施される。第2の誘電体層6は、第1の誘電体
層2とは、同じ酸化物およびフッ化物を含むが混合割合
の異なるスパッタリングターゲット、または異なる酸化
物および/またはフッ化物を含むスパッタリングターゲ
ットを用いて形成してよい。例えば、工程aで(ZrO
220(SiO210(Cr2350(LaF320(m
ol%)を含むターゲットを使用し、工程cで(ZrO
230(SiO210(Cr2320(LaF340(m
ol%)を用いてもよい。あるいは、工程aでTa25
−Cr23−CeF3混合系材料を含むターゲットを使
用し、工程cでHfO2−SiO2−Cr23−LaF3
混合系材料を含むターゲットを使用してよい。
【0109】次に、工程dを実施して、第2の誘電体層
6の表面に、光吸収補正層7を成膜する。工程dにおい
ては、直流電源または高周波電源を用いて、スパッタリ
ングを実施する。スパッタリングターゲットとして、G
e−Cr、およびGe−Mo等の非晶質Ge合金、Si
−Cr、Si−MoおよびSi−W等の非晶質Si合
金、Te化物、ならびにTi、Zr、Nb、Ta、C
r、Mo、W、SnTe、およびPbTe等の結晶性の
金属、半金属、および半導体材料から選択される材料か
ら成るものを用いる。スパッタリングは、一般には、A
rガス雰囲気中で実施する。
【0110】次に、工程eを実施して、光吸収補正層7
の表面に、反射層8を成膜する。工程eはスパッタリン
グにより実施される。スパッタリングは、直流電源また
は高周波電源を用いて、Arガス雰囲気中で実施する。
スパッタリングターゲットとしては、Al−Cr、Al
−Ti、Ag−Pd、Ag−Pd−Cu、Ag−Pd−
Ti、またはAu−Cr等の合金材料より成るものを使
用できる。
【0111】上記のように、工程a〜eは、いずれもス
パッタリング工程である。したがって、工程a〜eは、
1つのスパッタリング装置内において、ターゲットを順
次変更して連続的に実施してよい。あるいは、工程a〜
eはそれぞれ独立したスパッタリング装置を用いて実施
してよい。
【0112】反射層8を成膜した後、第1誘電体層2か
ら反射層8まで順次積層した基板1をスパッタリング装
置から取り出す。それから、反射層8の表面に、紫外線
硬化性樹脂を例えばスピンコート法により塗布する。塗
布した紫外線硬化性樹脂に、ダミー基板10を密着させ
て、紫外線をダミー基板10側から照射して、樹脂を硬
化させ、貼り合わせ工程を終了させる。
【0113】貼り合わせ工程が終了した後は、必要に応
じて初期化工程を実施する。初期化工程は、非晶質状態
である記録層4を、例えば半導体レーザを照射して、結
晶化温度以上に昇温して結晶化させる工程である。初期
化工程は貼り合わせ工程の前に実施してもよい。このよ
うに、工程a〜e、接着層の形成工程、およびダミー基
板の貼り合わせ工程を順次実施することにより、実施の
形態1の情報記録媒体25を製造することができる。
【0114】(実施の形態2)本発明の実施の形態2と
して、レーザ光を用いて情報の記録および再生を実施す
る、光情報記録媒体の別の例を説明する。図2に、その
光情報記録媒体の一部断面を示す。
【0115】図2に示す情報記録媒体26は、基板1の
一方の表面に、第1の誘電体層2、記録層4、第2の界
面層105、第2の誘電体層106、光吸収補正層7、
および反射層8がこの順に形成され、さらに接着層9で
ダミー基板10が反射層8に接着された構成を有する。
図2に示す情報記録媒体26は、第1の界面層103を
有していない点において、図10に示す従来の情報記録
媒体31と相違する。また、情報記録媒体26は、記録
層4の上に第2の界面層105を介して第2の誘電体層
106が積層されている点において、図1に示す実施の
形態1の情報記録媒体25と相違する。情報記録媒体2
6においては、第1の誘電体層2が、実施の形態1と同
様に、酸化物−フッ化物系材料層である。その他、図2
において、図1で使用した符号と同じ符号は、同じ要素
を表し、図1を参照して説明した材料および方法で形成
されるものである。したがって、図1に関連して既に説
明した要素については、その詳細な説明を省略する。な
お、この形態において、界面層は1つだけ設けられてい
るが、それが第2の誘電体層106と記録層4との間に
位置していることから、この界面層を便宜的に第2の界
面層と呼ぶ。
【0116】この形態の情報記録媒体26は、第2の誘
電体層106を、従来の情報記録媒体で使用されていた
ZnS−20mol%SiO2で形成した構成に相当す
る。したがって、第2の界面層105は、繰り返しの記
録により第2の誘電体層106と記録層4との間で生じ
る物質移動を防止するために設けられる。第2の界面層
105はSi−N、Al−N、Zr−N、Ti−N、G
e−NもしくはTa−N等の窒化物またはこれらを含む
窒化酸化物、SiC等の炭化物、またはC(炭素)で形
成される。あるいは、第2の界面層105は、上記群G
Mから選択される元素の酸化物を複数種含んで成るもの
であってよく、具体的には、ZrO2−SiO2−Cr2
3混合系材料またはHfO2−SiO2−Cr23混合
系材料で形成されてよい。界面層の厚さは1〜10nm
であることが好ましく、2〜7nmであることがより好
ましい。界面層の厚さが大きいと、基板1の表面に形成
された第1の誘電体層2から反射層8までの積層体の光
反射率および光吸収率が変化して、記録消去性能に影響
を与える。
【0117】続いて、実施の形態2の情報記録媒体26
を製造する方法を説明する。情報記録媒体26は、基板
1の案内溝が形成された表面に第1の誘電体層2を成膜
する工程(工程a)、記録層4を成膜する工程(工程
b)、第2の界面層105を成膜する工程(工程f)、
第2の誘電体層106を成膜する工程(工程g)、光吸
収補正層7を成膜する工程(工程d)および反射層8を
成膜する工程(工程e)を順次実施し、さらに反射層8
の表面に接着層9を形成する工程、およびダミー基板1
0を貼り合わせる工程を実施することにより、製造され
る。工程a、b、d、およびeは、実施の形態1に関連
して説明したとおりであるから、ここではその説明を省
略する。以下、実施の形態1の情報記録媒体の製造にお
いて実施されない工程のみ、説明する。
【0118】工程fは、記録層4を形成した後で実施さ
れ、記録層4の表面に第2の界面層105を成膜する工
程である。工程fにおいては、高周波電源を用いて、ス
パッタリングを実施する。スパッタリングは、例えば、
Ge−Crを含むスパッタリングターゲットを用いて、
ArガスとN2ガスの混合ガス雰囲気中で実施する、反
応性スパッタリングであってよい。この反応性スパッタ
リングによれば、Ge−Cr−Nを含む界面層が記録層
4の表面に形成される。
【0119】次に、工程gを実施して、第2の界面層1
05の表面に、第2の誘電体層106を成膜する。工程
gにおいては、高周波電源を使用し、例えばZnS−2
0mol%SiO2から成るスパッタリングターゲット
を用いて、Arガス雰囲気中、またはArガスとO2
スの混合ガス雰囲気中で、スパッタリングを実施する。
それにより、ZnS−20mol%SiO2から成る層
が形成される。その後、ダミー基板10を貼り合わせる
工程が終了した後、実施の形態1に関連して説明したよ
うに、必要に応じて初期化工程を実施して、情報記録媒
体26を得る。
【0120】(実施の形態3)本発明の実施の形態3と
して、レーザ光を用いて情報の記録および再生を実施す
る、光情報記録媒体のさらに別の例を説明する。図3
に、その光情報記録媒体の一部断面を示す。
【0121】図3に示す情報記録媒体27は、基板1の
一方の表面に、第1の誘電体層102、第1の界面層1
03、記録層4、第2の誘電体層6、光吸収補正層7、
および反射層8がこの順に形成され、さらに接着層9で
反射層8にダミー基板10が接着された構成を有する。
図3に示す情報記録媒体27は、第2の界面層105を
有していない点において、図10に示す従来の情報記録
媒体31と相違する。また、情報記録媒体27は、基板
1と記録層4の間に第1の誘電体層102と第1の界面
層103がこの順に積層されている点において、図1に
示す実施の形態1の情報記録媒体25と相違する。情報
記録媒体27においては、第2の誘電体層6が、実施の
形態1と同様に、酸化物−フッ化物系材料層である。そ
の他、図3において、図1で使用した符号と同じ符号
は、同じ要素を表し、図1を参照して説明した材料およ
び方法で形成されるものである。したがって、図1で既
に説明した要素については、その詳細な説明を省略す
る。
【0122】この形態の情報記録媒体27は、第1の誘
電体層102を、従来の情報記録媒体で使用されていた
ZnS−20mol%SiO2で形成した構成に相当す
る。したがって、第1の界面層103は、繰り返しの記
録により第1の誘電体層102と記録層4との間で生じ
る物質移動を防止するために設けられる。第1の界面層
103の好ましい材料および厚さは、図2を参照して説
明した実施の形態2の情報記録媒体26の第2の界面層
105と同じである。したがって、それについての詳細
な説明は省略する。
【0123】続いて、実施の形態3の情報記録媒体27
を製造する方法を説明する。情報記録媒体27は、基板
1の案内溝が形成された面に第1の誘電体層102を成
膜する工程(工程h)、第1の界面層103を成膜する
工程(工程i)、記録層4を成膜する工程(工程b)、
第2の誘電体層6を成膜する工程(工程c)、光吸収補
正層7を成膜する工程(工程d)および反射層8を成膜
する工程(工程e)を順次実施し、さらに反射層8の表
面に接着層9を形成する工程、およびダミー基板10を
貼り合わせる工程を実施することにより、製造される。
工程b、c、d、およびeは、実施の形態1に関連して
説明したとおりであるから、ここではその説明を省略す
る。以下、実施の形態1の情報記録媒体の製造において
実施されない工程のみ、説明する。
【0124】工程hは、基板1の表面に第1の誘電体層
102を成膜する工程である。その具体的な方法は、実
施の形態2の製造方法に関連して説明した工程gと同様
である。工程iは、第1の誘電体層102の表面に第1
の界面層103を成膜する工程である。その具体的な方
法は、実施の形態2の製造方法に関連して説明した工程
fと同様である。その後、ダミー基板10を貼り合わせ
る工程が終了した後、実施の形態1に関連して説明した
ように、必要に応じて初期化工程を実施して、情報記録
媒体27を得る。
【0125】(実施の形態4)本発明の実施の形態4と
して、レーザ光を用いて情報の記録および再生を実施す
る、光情報記録媒体のさらに別の例を説明する。図4
に、その光情報記録媒体の一部断面を示す。
【0126】図4に示す情報記録媒体28は、基板10
1の一方の表面に反射層8、第2の誘電体層6、記録層
4、および第1の誘電体層2をこの順に形成し、さらに
接着層9でダミー基板110が第1の誘電体層2に接着
された構成を有する。この情報記録媒体28は、第1の
界面層103および第2の界面層105を有していない
点において図10に示す従来の情報記録媒体31と相違
する。また、この構成の情報記録媒体は、光吸収補正層
7を有していない点において図1に示す構成の情報記録
媒体25と相違する。
【0127】この構成の情報記録媒体28には、ダミー
基板110側からレーザ光12が入射され、それにより
情報の記録および再生が実施される。情報記録媒体の記
録密度を高くするためには、短波長のレーザ光を使用す
るとともに、レーザビームをより絞り込んで、記録層に
小さな記録マークを形成する必要がある。ビームを絞り
込むためには、対物レンズの開口数NAをより大きくす
ることが必要となる。しかし、NAが大きくなると、焦
点位置が浅くなる。そこで、レーザ光が入射する基板を
薄くする必要がある。図4に示す情報記録媒体28にお
いて、レーザ光が入射される側のダミー基板110は、
記録層等を形成する際の支持体として機能する必要がな
いため、その厚さを小さくすることができる。したがっ
て、この構成によれば、より高密度の記録が可能な大容
量情報記録媒体28を得ることができる。具体的には、
この構成によれば、波長約405nmの青紫色域のレー
ザ光を記録再生に使用する、容量が25GBの情報記録
媒体を得ることができる。
【0128】この情報記録媒体においても、第1および
第2の誘電体層2および6は、実施の形態1と同様に、
酸化物−フッ化物系材料層である。酸化物−フッ化物系
材料層は、反射層等の形成順序および記録容量に関係無
く、誘電体層として適用される。酸化物−フッ化物系材
料層に含まれる材料は、実施の形態1に関連して説明し
たとおりであるから、それらについての詳細な説明は省
略する。
【0129】前述のように、この情報記録媒体28は、
短い波長のレーザ光で記録再生するのに適している。し
たがって、第1および第2の誘電体層2および6の厚さ
は、例えば、λ=405nmであるときの好ましい光路
長から求める。情報記録媒体28の記録マークの再生信
号振幅を大きくして信号品質を向上させるために、例え
ば20%≦Rc且つRa≦5%を満足するように第1の
誘電体層2および第2の誘電体層6の光路長ndをマト
リクス法に基づく計算により厳密に決定した。その結
果、屈折率が1.8〜2.5である酸化物−フッ化物系
材料層を第1および第2の誘電体層2および6とする場
合、第1の誘電体層2の厚さは好ましくは30nm〜1
00nmであり、より好ましくは50nm〜80nmで
あることが判った。また、第2の誘電体層6の厚さは、
好ましくは3nm〜50nmであり、より好ましくは1
0nm〜30nmであることが判った。
【0130】基板101は、実施の形態1の基板1と同
様、透明な円盤状の板である。基板101の反射層等を
形成する側の表面には、レーザ光を導くための案内溝が
形成されていてもよい。案内溝を形成した場合、実施の
形態1に関連して説明したように、レーザ光12に近い
側にある面23を便宜的にグルーブ面23と呼び、レー
ザ光12から遠い側にある面24をランド面と呼ぶ。基
板101においてグル−ブ面23とランド面24の段差
は、10nm〜30nmであることが好ましく、15n
m〜25nmであることがより好ましい。また、層を形
成しない側の表面は、平滑であることが望ましい。基板
101の材料としては、実施の形態1の基板1の材料と
同じ材料を挙げることができる。基板101の厚さは、
好ましくは1.0〜1.2mm程度である。基板101
の好ましい厚さは、実施の形態1の基板1のそれよりも
大きい。これは、後述するように、ダミー基板110の
厚さが薄いために、基板101で情報記録媒体の強度を
確保する必要があることによる。
【0131】ダミー基板110は、基板101同様、透
明な円盤状の板である。前述のように、図4に示す構成
によれば、ダミー基板110の厚さを小さくすることに
よって、短波長のレーザ光で記録することが可能とな
る。したがって、ダミー基板110の厚さは、40μm
〜110μmであることが好ましい。接着層9とダミー
基板110を合わせた厚さが50μm〜120μmであ
ることがより好ましい。
【0132】ダミー基板110は薄いので、ポリカーボ
ネート、アモルファスポリオレフィン、またはPMMA
のような樹脂で形成することが好ましく、特にポリカー
ボネートで形成することが好ましい。また、ダミー基板
110は、レーザ光12入射側に位置するため、光学的
には短波長域における複屈折が小さいものであることが
好ましい。
【0133】接着層9は、透明な紫外線硬化性樹脂で形
成することが好ましい。接着層9の厚さは5〜15μm
であることが好ましい。接着層9がダミー基板110の
機能を兼ね備え、50μm〜120μmの厚さとなるよ
うに形成できれば、ダミー基板110を省略することも
できる。
【0134】その他、実施の形態1と同一の符号を付し
た要素は、既に実施の形態1に関連して説明したとおり
であるので、その説明を省略する。
【0135】この形態の情報記録媒体の変形例において
は、例えば、第1の誘電体層のみを酸化物−フッ化物系
材料層とし、第2の誘電体層をZnS−20mol%S
iO 2で形成して、第2の誘電体層と記録層との間に第
2の界面層を形成し得る。また、この形態の情報記録媒
体の別の変形例においては、第2の誘電体層のみを酸化
物−フッ化物系材料層とし、第1の誘電体層をZnS−
20mol%SiO2として、第1の誘電体層と記録層
との間に第1の界面層を形成し得る。
【0136】続いて、実施の形態4の情報記録媒体28
の製造方法を説明する。情報記録媒体28は、案内溝
(グルーブ面23とランド面24)が形成された基板1
01(例えば、厚さ1.1mm)を成膜装置に配置し、
基板101の案内溝が形成された表面に反射層8を成膜
する工程(工程e)、第2の誘電体層6を成膜する工程
(工程c)、記録層4を成膜する工程(工程b)、およ
び第1の誘電体層2を成膜する工程(工程a)を順次実
施し、さらに、第1の誘電体層2の表面に接着層9を形
成する工程、およびダミー基板110を貼り合わせる工
程を実施することにより、製造される。
【0137】最初に、工程eを実施して、基板101の
案内溝が形成された面に、反射層8を成膜する。工程e
を実施する具体的な方法は、実施の形態1に関連して説
明したとおりである。次に、工程c、工程b、および工
程aをこの順に実施する。工程c、bおよびaを実施す
る具体的な方法は、実施の形態1に関連して説明したと
おりである。実施の形態1の情報記録媒体と同様、この
形態の情報記録媒体の製造においても、工程cで使用す
るスパッタリングターゲットと、工程aで使用するスパ
ッタリングターゲットとは異なるものであってよい。こ
の形態の情報記録媒体の製造方法においては、各工程の
実施順序が、実施の形態1の情報記録媒体の製造方法に
おけるそれと異なる。
【0138】第1の誘電体層2を成膜した後、反射層8
から第1の誘電体層2まで順次積層した基板101を、
スパッタリング装置から取り出す。それから、第1の誘
電体層2の上に、紫外線硬化性樹脂を例えばスピンコー
ト法により塗布する。塗布した紫外線硬化性樹脂に、ダ
ミー基板110を密着させて、紫外線をダミー基板11
0側から照射して樹脂を硬化させ、貼り合わせ工程を終
了させる。接着層9を、50μm〜120μmの厚さと
なるように形成し、これに紫外線を照射することによっ
て、ダミー基板110を貼り合わせる工程を省略するこ
とができる。
【0139】貼り合わせ工程が終了した後は、必要に応
じて初期化工程を実施する。初期化工程の方法は、実施
の形態1に関連して説明したとおりである。
【0140】(実施の形態5)本発明の実施の形態5と
して、レーザ光を用いて記録および再生を実施する、光
情報記録媒体のさらに別の例を説明する。図5に、その
光情報記録媒体の一部断面を示す。
【0141】図5に示す情報記録媒体29は、基板10
1の一方の表面に第2情報層22、中間層16、および
第1情報層21がこの順に形成され、さらに接着層9を
介してダミー基板110が第1情報層21に積層された
構成である。より詳しくは、第2情報層22は、基板1
01の一方の表面に第2の反射層20、第5の誘電体層
19、第2の記録層18、および第4の誘電体層17が
この順に形成されて成る。中間層16は、第4の誘電体
層17の表面に形成される。第1情報層21は、この中
間層16の表面に、第3の誘電体層15、第1の反射層
14、第2の誘電体層6、第1の記録層13、および第
1の誘電体層2がこの順に形成されて成る。この形態に
おいても、レーザ光12は、ダミー基板110の側から
入射される。また、この形態の情報記録媒体において
は、2つの記録層にそれぞれ情報を記録できる。したが
って、この構成によれば、上記実施の形態4の2倍程度
の容量を有する、情報記録媒体を得ることができる。具
体的には、この構成によれば、例えば、波長405nm
付近の青紫色域のレーザ光を記録再生に使用する、容量
が50GBの情報記録媒体を得ることができる。
【0142】第1情報層21における記録再生は、ダミ
ー基板110を通過したレーザ光12によって行われ
る。第2情報層22における記録再生は、ダミー基板1
10、第1情報層21および中間層16を通過したレー
ザ光12によって実施される。
【0143】図5に示す形態の情報記録媒体29におい
て、第5の誘電体層19、第4の誘電体層17、第2の
誘電体層6、および第1の誘電体層2はすべて酸化物−
フッ化物系材料層であることが好ましい。酸化物−フッ
化物系材料層を使用すれば、第1の記録層13と第1の
誘電体層2との間、第1の記録層13と第2の誘電体層
6との間、第2の記録層18と第4の誘電体層17との
間、第2の記録層18と第5の誘電体層19との間の界
面層が不要となる。酸化物−フッ化物系材料層の具体的
な材料は、実施の形態1に関連して説明したとおりであ
るから、それらについての詳細な説明は省略する。
【0144】第5の誘電体層19と第2の誘電体層6
は、反射層と記録層との間で断熱層として機能する。そ
のため、第5および第2の誘電体層19および6は、層
の熱伝導率が低く、第2および第1の記録層18および
13を急冷する効果が高くなるように材料を選択して形
成することが好ましい。具体的には、それらの層は、例
えば、(ZrSiO450(Cr2320(LaF330
(mol%)で表される材料を含む層であることが好ま
しい。また、第5および第2の誘電体層19および6の
膜厚は、好ましくは3nm〜50nmであり、より好ま
しくは10nm〜30nmである。
【0145】第2情報層22および第1情報層21にお
いて、レーザ光12は、第2の記録層18および第1の
記録層13に到達する前に、第4の誘電体層17および
第1の誘電体層2に入射される。そのため、第4および
第1の誘電体層17および2は、透明で、且つ熱伝導率
の低い材料から成ることが望ましい。具体的には、それ
らの層は、例えば、(ZrO220(SiO240(Cr
2310(LaF33 0(mol%)で表される材料を
含む層であることが好ましい。第4および第1の誘電体
層17および2の膜厚は、好ましくは30nm〜80n
mである。
【0146】このように、図5に示すような片面2層構
造の情報記録媒体においても、記録層の両側に位置する
誘電体層を酸化物−フッ化物系材料層とすることによっ
て、誘電体層を界面層を介することなく、記録層と直接
的に接するように形成できる。したがって、本発明によ
れば、片面2層構造の情報記録媒体についても、全体を
構成する層の数を減らすことができる。また、誘電体層
を構成する材料に含まれる酸化物およびフッ化物を複数
種とすることにより、ならびに/または酸化物およびフ
ッ化物の種類を適切に選択することにより、屈折率や媒
体の記録感度を調整して、情報記録媒体の種類に応じて
最適化することができる。
【0147】第3の誘電体層15は、中間層16と第1
の反射層14との間に位置する。第3の誘電体層15
は、第1情報層21の光透過率を高める機能を有するよ
う、透明で、高い屈折率を有することが好ましい。ま
た、第3の誘電体層15は、反射層と同様に、第1の記
録層13の熱を速やかに拡散させる機能を有するよう
に、熱伝導率がより高い材料から成ることが好ましい。
これらの条件を満足する材料は、TiO2を含む材料
(即ち、TiO2系材料)である。TiO2系材料は、具
体的には、TiO2を50モル%以上含む材料である。
TiO2系材料は、TiO 2を好ましくは80モル%以上
含み、より好ましくは90モル%以上含む。TiO2
材料を使用すると、約2.7の大きい屈折率を有する層
が形成される。第3の誘電体層15の膜厚は10nm〜
30nmであることが好ましい。
【0148】基板101は、実施の形態4の基板101
と同様のものである。したがって、ここでは、基板10
1に関する詳細な説明を省略する。
【0149】第2の反射層20は、実施の形態1の反射
層8と同様のものである。また、第2の記録層18は、
実施の形態1の記録層4と同様のものである。したがっ
て、ここでは、第2の反射層20および第2の記録層1
8に関する詳細な説明を省略する。
【0150】中間層16は、第1情報層21におけるレ
ーザ光の焦点位置と、第2情報層22における焦点位置
とが有意に異なるようにするために設けられる。中間層
16には、必要に応じて第1情報層21側に案内溝が形
成されている。中間層16は、紫外線硬化性樹脂で形成
することができる。中間層16は、レーザ光12が効率
よく第2情報層22に到達するよう、記録再生する波長
λの光に対して透明であることが望ましい。中間層16
の厚さは、対物レンズの開口数NAとレーザ光波長λに
より決定される焦点深度ΔZ以上であることを要する。
ΔZは、ΔZ=λ/{2(NA)2}で近似できる。λ
=405nm、NA=0.85の時、ΔZ=0.28μ
mとなる。さらに、この値の±0.3μmの範囲内は焦
点深度の範囲に含まれるので、中間層16は、0.8μ
m以上の厚さであることを要する。また、中間層16の
厚さは、第1情報層21の第1の記録層13および第2
情報層22の第2の記録層18間の距離が、対物レンズ
の集光可能な範囲内にあるように、ダミー基板110の
厚さと合わせて、使用する対物レンズについて許容でき
る基板厚公差内にすることが好ましい。したがって、中
間層の厚さは10μm〜40μmであることが好まし
い。
【0151】中間層16は、必要に応じて樹脂層を複数
層、積層して構成してよい。具体的には、第4の誘電体
層17を保護する層と、案内溝を有する層との2層構成
にしてよい。
【0152】第1の反射層14は、第1の記録層13の
熱を速やかに拡散させる機能を有する。また、第2情報
層22を記録再生する際には、第1情報層21を透過し
たレーザ光12を使用するので、第1情報層21は全体
として高い光透過率を有する必要があり、好ましくは、
45%以上の光透過率を有する。そのため、第1の反射
層14は、第2の反射層20と比較して、その材料およ
び厚さが限定される。第1の反射層14の光吸収を少な
くするために、第1の反射層14は、厚さを薄くして、
小さい消衰係数、および大きい熱伝導率を有することが
望ましい。具体的には、第1の反射層14は、好ましく
は、Agを含む合金で、膜厚が5nm以上15nm以下
となるように形成される。
【0153】第1の記録層13もまた、第1情報層21
の高い光透過率を確保するために、第2の記録層18と
比較して、その材料および膜厚が限定される。第1の記
録層13は、好ましくは、その結晶相における透過率と
その非晶質相における透過率の平均が45%以上になる
ように形成する。そのため、第1の記録層13の膜厚は
7nm以下とすることが好ましい。第1の記録層13を
構成する材料は、このように薄い膜厚であっても、溶融
急冷によって良好な記録マークが形成され、品質の高い
信号が再生できること、ならびに昇温徐冷により記録マ
ークを消去できることを確保し得るように、選択され
る。具体的には、可逆的相変態材料であるGeTe−S
2Te3系材料のようなGe−Sb−Te、またはGe
Te−Sb 2Te3系材料のGeの一部をSnで置換した
Ge−Sn−Sb−Teで、第1の記録層13を形成す
ることが好ましい。GeTe−Bi2Te3系材料のよう
なGe−Bi−Te、またはGe−Bi−TeのGeの
一部をSnで置換したGe−Sn−Bi−Teを用いる
こともできる。具体的には、例えば、GeTe:Sb 2
Te3=22:1であるGe22Sb2Te25、またはGe
19Sn3Sb2Te25が好ましく用いられる。
【0154】接着層9は、実施の形態4の接着層9と同
様、透明な紫外線硬化性樹脂で形成することが好まし
い。接着層9の厚さは5〜15μmであることが好まし
い。
【0155】ダミー基板110は、実施の形態4のダミ
ー基板110と同様のものである。したがって、ここで
はダミー基板に関する詳細な説明を省略する。また、こ
の形態においても、接着層9がダミー基板110の機能
を兼ね備え、50μm〜120μmの厚さとなるように
形成できれば、ダミー基板110を省略することもでき
る。
【0156】この形態の情報記録媒体においては、第1
の誘電体層2、第2の誘電体層6、第4の誘電体層1
7、および第5の誘電体層19のうち、1つの誘電体層
のみが酸化物−フッ化物系材料層であってよい。あるい
は、2つ又は3つの誘電体層が、酸化物−フッ化物系材
料層であってよい。1つの誘電体層が酸化物−フッ化物
系材料層である場合には、少なくとも1つの界面層が不
要となり、2つの誘電体層が酸化物−フッ化物系材料層
である場合には、少なくとも2つの界面層が不要とな
る。したがって、この形態の情報記録媒体においては、
最大で4つの界面層を無くすことができる。酸化物−フ
ッ化物系材料層でない誘電体層と記録層との間には必要
に応じて、記録層と誘電体層との間の物質移動を防止す
るための界面層を設けてよい。その場合には、界面層
を、厚さ5nm程度の極めて薄い膜の形態の酸化物−フ
ッ化物系材料層とすることができる。
【0157】以上において、記録層を有する情報層を2
つ有する構成の情報記録媒体を説明した。複数の記録層
を有する情報記録媒体は、この構成に限定されず、情報
層を3つ以上含む構成とすることも可能である。また、
図示した形態の変形例は、例えば2つの情報層のうち、
一つを可逆的相変態を生じる記録層を有する情報層と
し、一つを非可逆的相変態を生じる記録層を有する情報
層としたものである。
【0158】また、情報層を3つ有する情報記録媒体に
おいては、3つの情報層のうち一つを再生専用の情報層
とし、一つを可逆的相変態を生じる記録層を有する情報
層とし、一つを非可逆的相変態を生じる記録層を有する
情報層とすることも可能である。このように、情報層を
2以上有する情報記録媒体には、種々の形態のものがあ
る。いずれの形態においても、誘電体層を酸化物−フッ
化物系材料層とすることによって、記録層と誘電体層と
の間に界面層を設ける必要を無くすことができる。
【0159】また、2以上の記録層を有する情報記録媒
体において、酸化物−フッ化物系材料層は、記録層と誘
電体層との間に位置する界面層として存在してよい。そ
のような界面層は、5nm程度の厚さを有する極めて薄
い膜に形成される。
【0160】続いて、実施の形態5の情報記録媒体29
を製造する方法を説明する。情報記録媒体29は、基板
101に第2の反射層20を成膜する工程(工程j)、
第5の誘電体層19を成膜する工程(工程k)、第2の
記録層18を成膜する工程(工程l)、および第4の誘
電体層17を成膜する工程(工程m)を順次実施した
後、第4の誘電体層17の表面に中間層16を形成する
工程を実施し、それから中間層16の表面に第3の誘電
体層15を成膜する工程(工程n)、第1の反射層14
を成膜する工程(工程o)、第2の誘電体層6を成膜す
る工程(工程p)、第1の記録層13を成膜する工程
(工程q)、および第1の誘電体層2を成膜する工程
(工程r)を順次実施し、さらに、第1の誘電体層2の
表面に接着層9を形成する工程、およびダミー基板11
0を貼り合わせる工程を実施することにより、製造され
る。
【0161】工程j〜mは、第2情報層22を形成する
工程に相当する。工程jは、基板101の案内溝が形成
された面に、第2の反射層20を成膜する工程である。
工程jは、実施の形態1の工程eと同様にして実施され
る。次に、工程kを実施して、第2の反射層20の表面
に、第5の誘電体層19を成膜する。工程kは、実施の
形態1の工程cと同様にして実施される。次に、工程l
を実施して、第5の誘電体層19の表面に、第2の記録
層18を成膜する。工程lは、実施の形態1の工程bと
同様にして実施される。最後に、工程mを実施して、第
2の記録層18の表面に、第4の誘電体層17を成膜す
る。工程mは、実施の形態1の工程aと同様にして実施
される。
【0162】工程j〜mにより第2情報層22を形成し
た基板101を、スパッタリング装置から取り出し、中
間層16を形成する。中間層16は次の手順で形成され
る。まず、第4の誘電体層17の表面に、紫外線硬化性
樹脂を例えばスピンコートにより塗布する。次に、中間
層に形成すべき案内溝と相補的である凹凸を有するポリ
カーボネート基板の凹凸形成面を、紫外線硬化性樹脂に
密着させる。その状態で紫外線を照射して樹脂を硬化さ
せた後、凹凸を有するポリカーボネート基板を剥離す
る。それにより、当該凹凸に相補的な形状の案内溝が紫
外線硬化性樹脂に形成されて、図示するような案内溝を
有する中間層16が形成される。別法において、中間層
16は、第4の誘電体層17を保護する層を紫外線硬化
性樹脂で形成し、その上に案内溝を有する層を形成する
ことにより、形成してよい。その場合、得られる中間層
は2層構造である。あるいは、中間層は、3以上の層を
積層して構成してよい。
【0163】中間層16まで形成した基板101を再び
スパッタリング装置に配置して、中間層16の表面に第
1情報層21を形成する。第1情報層21を形成する工
程は、工程n〜rに相当する。
【0164】工程nは、中間層16の案内溝を有する面
に、第3の誘電体層15を成膜する工程である。工程n
においては、高周波電源を使用し、TiO2系材料から
成るスパッタリングターゲットを用いて、Arガス雰囲
気中またはArガスとO2ガスの混合ガス雰囲気中で、
スパッタリングを実施する。
【0165】次に、工程oを実施して、第3の誘電体層
15の表面に第1の反射層14を成膜する。工程oにお
いては、直流電源を使用し、Agを含む合金のスパッタ
リングターゲットを用いて、Arガス雰囲気中でスパッ
タリングを実施する。
【0166】次に、工程pを実施して、第1の反射層1
4の表面に第2の誘電体層6を成膜する。工程pは、工
程kと同様にして実施される。
【0167】次に、工程qを実施して、第2の誘電体層
6の表面に第1の記録層13を成膜する。工程qにおい
ては、直流電源を使用し、例えばGeTe−Sb2Te3
系材料であるGe−Sb−Te、例えばGeTe−Sb
2Te3系材料のGeの一部をSnで置換した材料である
Ge−Sn−Sb−Te、Ge−Bi−Te、Ge−S
n−Bi−Te、Ge−Sb−Bi−Te、およびGe
−Sn−Sb−Bi−Teから選択されるいずれか1つ
の材料を含むスパッタリングターゲットを用いて、Ar
ガス雰囲気中またはArガスとN2ガスの混合ガス雰囲
気中でスパッタリングを実施する。
【0168】次に、工程rを実施して、第1の記録層1
3の表面に第1の誘電体層2を成膜する。工程rは工程
mと同様にして実施される。このように、工程n〜rを
順次実施して、第1情報層21を形成する。
【0169】第1情報層21まで形成した基板101を
スパッタリング装置から取り出す。それから、第1の誘
電体層2の表面に、紫外線硬化性樹脂を例えばスピンコ
ート法により塗布する。塗布した紫外線硬化性樹脂に、
ダミー基板110を密着させて、紫外線をダミー基板1
10側から照射して樹脂を硬化させ、貼り合わせ工程を
終了させる。実施の形態5の情報記録媒体の製造方法に
おいても、実施の形態4の情報記録媒体の製造方法と同
様にして、ダミー基板110を貼り合わせる工程を省略
することもできる。
【0170】貼り合わせ工程が終了した後は、必要に応
じて、第2情報層22および第1情報層21の初期化工
程を実施する。初期化工程は、中間層を形成する前もし
くは後に、第2情報層22について実施し、ダミー基板
110の貼り合わせ工程の前もしくは後に、第1情報層
21について実施してよい。初期化工程を実施する方法
は、実施の形態1に関連して説明したとおりである。
【0171】(実施の形態6)本発明の実施の形態6と
して、レーザ光を用いて情報の記録および再生を実施す
る情報記録媒体のさらに別の例を説明する。図6に、そ
の光情報記録媒体の一部断面を示す。
【0172】図6に示す情報記録媒体30は、基板1の
一方の表面に、第1の誘電体層102、第1の界面層
3、記録層4、第2の界面層5、第2の誘電体層10
6、光吸収補正層7、および反射層8がこの順に形成さ
れ、さらに接着層9でダミー基板10が反射層8に接着
された構成を有する。図6に示す情報記録媒体30にお
いては、第1および第2の界面層3および5を、酸化物
−フッ化物系材料層としている。その他、図6におい
て、図1で使用した符号と同じ符号は、同じ要素を表
し、図1を参照して説明した材料および方法で形成され
るものである。したがって、図1を参照して既に説明し
た要素については、その詳細な説明を省略する。
【0173】この形態の情報記録媒体は、第1および第
2の誘電体層102および106を、従来の情報記録媒
体で使用されていたZnS−20mol%SiO2で形
成した構成に相当する。このような構成において、酸化
物−フッ化物系材料層は、第1および第2の界面層3お
よび5として使用できる。第1および第2の界面層3お
よび5の好ましい材料は、実施の形態1の第1および第
2の誘電体層2および6のそれと同じである。したがっ
て、それらについての詳細な説明は省略する。第1およ
び第2の界面層3および5の厚さは、記録消去性能に影
響を与えないように、1〜10nmであることが好まし
く、約2〜7nmであることがより好ましい。酸化物−
フッ化物系材料層である界面層は、従来のGeを含む窒
化物から成る界面層と比較して、材料コストが安価であ
る、消衰係数が小さい(透明性が高い)、ならびに融点
が高く熱的に安定であるといった利点を有する。
【0174】続いて、実施の形態6の情報記録媒体30
を製造する方法を説明する。情報記録媒体30は、基板
1の案内溝が形成された面に第1の誘電体層102を成
膜する工程(工程h)、第1の界面層3を成膜する工程
(工程s)、記録層4を成膜する工程(工程b)、第2
の界面層5を成膜する工程(工程t)、第2の誘電体層
106を成膜する工程(工程g)、光吸収補正層7を成
膜する工程(工程d)および反射層8を成膜する工程
(工程e)を順次実施し、さらに反射層8の表面に接着
層9を形成する工程、およびダミー基板10を貼り合わ
せる工程を実施することにより、製造される。工程b、
dおよびeは、実施の形態1に関連して説明したとおり
であり、工程gは実施の形態2に関連して説明したとお
りであり、工程hは実施の形態3に関連して説明したと
おりであるから、ここでは、その説明を省略する。
【0175】工程sは、第1の誘電体層102の表面に
第1の界面層3を成膜する工程である。工程sは、実施
の形態1の工程aと同様にして実施される。工程tは、
記録層4の表面に第2の界面層5を成膜する工程であ
る。工程tは、実施の形態1の工程cと同様にして実施
される。
【0176】以上、図1〜図6を参照して、本発明の情
報記録媒体の実施形態として、レーザ光で記録再生する
光情報記録媒体を説明した。本発明の光情報記録媒体は
これらの形態に限定されない。本発明の光情報記録媒体
は、酸化物−フッ化物系材料層を、構成層の1つとし
て、好ましくは記録層と接するように設ける限りにおい
て、任意の形態をとりうる。即ち、本発明は、基板上に
層を形成する順序、記録層の数、記録条件、および記録
容量等にかかわらず、適用される。また、本発明の光情
報記録媒体は、種々の波長で記録するのに適している。
したがって、本発明の光情報記録媒体は、例えば、波長
630〜680nmのレーザ光で記録再生するDVD−
RAMまたはDVD−R、または波長400〜450n
mのレーザ光で記録再生する大容量光ディスク等であっ
てよい。
【0177】(実施の形態7)本発明の実施の形態7と
して、電気的エネルギーを印加して情報の記録および再
生を実施する情報記録媒体の一例を示す。図8に、その
情報記録媒体の一部断面を示す。
【0178】図8は、基板201の表面に、下部電極2
02、記録部203および上部電極204がこの順に形
成されたメモリ207である。メモリ207の記録部2
03は、円柱状の記録層205および記録層205を取
り囲む誘電体層206を含む構成を有する。先に図1〜
図6を参照して説明した光情報記録媒体とは異なり、こ
の形態のメモリ207においては、記録層205および
誘電体層206は、同一面上に形成され、それらは積層
された関係にない。しかし、記録層205および誘電体
層206はともに、メモリ207においては、基板20
1、下部および上部電極202および204を含む積層
体の一部を構成しているから、それぞれ「層」と呼び得
るものである。したがって、本発明の情報記録媒体に
は、記録層と誘電体層が同一面上にある形態のものも含
まれる。
【0179】基板201として、具体的には、Si基板
などの半導体基板、またはポリカーボネート基板、Si
2基板およびAl23基板などの絶縁性基板を、基板
201として使用できる。下部電極202および上部電
極204は、適当な導電材料で形成される。下部電極2
02および上部電極204は、例えば、Au、Ag、P
t、Al、Ti、WおよびCrならびにこれらの混合物
のような金属をスパッタリングすることにより形成され
る。
【0180】記録部203を構成する記録層205は、
電気的エネルギーを印加することによって、相変化する
材料から成り、相変化部と称することもできる。記録層
205は、電気的エネルギーを印加することによって生
じるジュール熱によって、結晶相と非晶質相との間で相
変化する材料で形成される。記録層205の材料として
は、例えば、Ge−Sb−Te、Ge−Sn−Sb−T
e、Ge−Bi−Te、Ge−Sn−Bi−Te、Ge
−Sb−Bi−TeおよびGe−Sn−Sb−Bi−T
e系材料が使用され、より具体的には、GeTe−Sb
2Te3系又はGeTe−Bi2Te3系材料が使用され
る。
【0181】記録部203を構成する誘電体層206
は、上部電極204および下部電極202との間に電圧
を印加することによって、記録層205に流れた電流が
周辺部に逃げることを防止し、記録層205を電気的お
よび熱的に絶縁する機能を有する。したがって、誘電体
層206は、断熱部と称することもできる。誘電体層2
06は、酸化物−フッ化物系材料層であり、具体的に
は、上記式(1)、(2)、(3)、(4)または
(5)で表される材料を含む層である。酸化物−フッ化
物系材料層は、高融点であること、加熱された場合でも
材料層中の原子が拡散しにくいこと、ならびに熱伝導率
が低いことから、好ましく用いられる。
【0182】このメモリ207については、後述の実施
例において、その作動方法とともにさらに説明する。
【0183】
【実施例】次に、実施例を用いて本発明を詳細に説明す
る。
【0184】(試験1)本発明の情報記録媒体の製造に
おいて用いられる酸化物−フッ化物系材料から成るター
ゲットの公称組成(換言すれば、供給に際してターゲッ
トメーカーが公に表示している組成)と、その分析組成
との関係を、試験により確認した。
【0185】本試験では、上記式(50)に相当する
(ZrSiO440(Cr2330(LaF330(mo
l%)で公称組成が表示された、スパッタリングターゲ
ットを粉末状にし、X線マイクロアナライザー法により
組成分析を実施した。この結果、スパッタリングターゲ
ットの分析組成が、化合物の割合(mol%)で示される
式(50)ではなく、各元素の割合(原子%)で示され
る式(30)として得られた。分析結果を、表1に示
す。さらに、表1には、公称組成から算出される元素組
成である、換算組成を示す。
【0186】
【表1】
【0187】表1に示すように、分析組成は換算組成と
ほぼ等しかった。この結果から、式(50)により表記
されるスパッタリングターゲットの実際の組成(即ち、
分析組成)は、計算により求められる元素組成(即ち、
換算組成)とほぼ一致し、したがって公称組成が適正で
あることが確認された。
【0188】(試験2)本発明の情報記録媒体の製造に
おいて用いられる酸化物−フッ化物系材料から成るター
ゲットの公称組成と、このターゲットを用いて形成した
酸化物−フッ化物系材料層の分析組成との関係を、試験
により確認した。具体的には、上記式(50)に相当す
る、(ZrSiO430(Cr2350(LaF3
20(mol%)で公称組成が表示されたスパッタリング
ターゲット(直径100mm、厚さ6mm)を成膜装置
(即ち、スパッタリング装置)に取り付け、0.13P
aの圧力下、Arガス雰囲気中で、高周波電源を用い
て、500Wのパワーでスパッタリングした。このスパ
ッタリングにより、Si基板上に500nmの厚さの酸
化物−フッ化物系材料層が形成された。この酸化物−フ
ッ化物系材料層の組成分析もまた、X線マイクロアナラ
イザー法により実施した。酸化物−フッ化物系材料層の
分析組成も、化合物の割合(mol%)で示される式
(5)ではなく、各元素の割合(原子%)で示される式
(3)として得られた。分析結果を表2に示す。さら
に、表2に、ターゲットの公称組成から算出される換算
組成を示す。
【0189】
【表2】
【0190】表2に示すように、層の分析組成は、ター
ゲットの換算組成とほぼ等しかった。この結果から、式
(50)により表記されるスパッタリングターゲットを
用いて形成した酸化物−フッ化物系材料層の実際の組成
は、スパッタリングターゲットの公称組成から計算され
る換算組成とほぼ一致し、したがって、式(50)によ
り表記されるスパッタリングターゲットを用いれば、ほ
ぼ同じ組成を有する膜が形成されることを確認した。
【0191】試験1および2と同様の結果は、群GMか
ら選択される元素の酸化物の混合割合と、群GLから選
択される元素のフッ化物の混合割合とが表記されて提供
される、他のスパッタリングターゲットについても得ら
れると考えられる。したがって、以下の実施例において
は、スパッタリングターゲットの組成を公称組成(mo
l%)で表す。また、スパッタリングターゲットの公称
組成と該スパッタリングターゲットを用いるスパッタリ
ング法により形成した酸化物−フッ化物系材料層の組成
(mol%)は同じものとみなして差し支えないと考え
た。したがって、以下の実施例では、スパッタリングタ
ーゲットの組成の表示を以って、誘電体層の組成をも表
示することとした。また、以下の実施例では、スパッタ
リングターゲットおよび酸化物−フッ化物系材料層の組
成を化合物の割合(mol%)でのみ表記する。当業者
であれば各化合物の割合(mol%)に基づいて、スパ
ッタリングターゲットおよび酸化物−フッ化物系材料層
の元素組成(原子%)を容易に算出することができるで
あろう。
【0192】(実施例1)実施例1では、本発明を完成
するに至るまでの予備試験を実施した。具体的には、上
記において説明した実施の形態1に相当する図1に示す
情報記録媒体25において、第1の誘電体層2および第
2の誘電体層6を、種々の材料で形成した14種類のサ
ンプルを作製した。いずれのサンプルも第1の誘電体層
2および第2の誘電体層6は同じ材料で形成した。以
下、情報記録媒体25の作製方法を説明する。以下の説
明においては、理解の容易のために、各構成要素の参照
番号として、図1に示した各構成要素と同じ参照番号を
用いる。後述の実施例の情報記録媒体においても、同様
に、各構成要素の参照符号として、対応する情報記録媒
体における構成要素と同じ参照番号を用いる。
【0193】まず、基板1として、深さ56nm、トラ
ックピッチ(基板の主面に平行な面内におけるグルーブ
表面およびランド表面の中心間距離)0.615μmの
案内溝が片側表面に予め設けられた、直径120mm、
厚さ0.6mmの円形のポリカーボネート基板を準備し
た。
【0194】基板1上に、厚さ150nmの第1の誘電
体層2、厚さ9nmの記録層4、厚さ50nmの第2の
誘電体層6、厚さ40nmの光吸収補正層7、および厚
さ80nmの反射層8を、この順にスパッタリング法に
より以下に説明する方法で成膜した。
【0195】第1の誘電体層2と第2の誘電体層6を構
成する材料として、TiO2(サンプル1−1)、Zr
2(サンプル1−2)、HfO2(サンプル1−3)、
25(サンプル1−4)、Nb25(サンプル1−
5)、Ta25(サンプル1−6)、Cr23(サンプ
ル1−7)、MoO3(サンプル1−8)、WO3(サン
プル1−9)、SiO2(サンプル1−10)、ZnO
(サンプル1−11)、ZnS(サンプル1−12)、
LaF3(サンプル1−13)、TeO2(サンプル1−
14)を用いた。
【0196】第1の誘電体層2および第2の誘電体層6
を形成する工程においては、上述の材料から成るスパッ
タリングターゲット(直径100mm、厚さ6mm)を
成膜装置に取り付けて、圧力0.13Paにて高周波ス
パッタリングを実施した。各サンプルにおいて採用し
た、スパッタリング時のパワーおよび雰囲気ガスは表3
に示すとおりである。
【0197】記録層4を形成する工程においては、Ge
Te−Sb2Te3擬二元系組成のGeの一部をSnで置
換したGe−Sn−Sb−Te系材料から成るスパッタ
リングターゲット(直径100mm、厚み6mm)を成
膜装置に取り付けて、直流スパッタリングを実施した。
パワーは100Wとした。スパッタリング中、Arガス
(97%)とN2ガス(3%)との混合ガスを導入し
た。スパッタ時の圧力は0.13Paとした。記録層の
組成は、Ge27Sn8Sb12Te53(原子%)であっ
た。
【0198】光吸収補正層7を形成する工程において
は、組成がGe80Cr20(原子%)である材料から成る
スパッタリングターゲット(直径100mm、厚さ6m
m)を成膜装置に取り付けて、直流スパッタリングを実
施した。パワーは300Wとした。スパッタリング中、
Arガスを導入した。スパッタ時の圧力は約0.4Pa
とした。
【0199】反射層8を形成する工程においては、Ag
−Pd−Cu合金から成るスパッタリングターゲット
(直径100mm、厚さ6mm)を成膜装置に取り付け
て、直流スパッタリングを実施した。パワーは200W
とした。スパッタリング中、Arガスを導入した。スパ
ッタ時の圧力は約0.4Paとした。
【0200】反射層8を形成した後、紫外線硬化性樹脂
を反射層8上に塗布した。塗布した紫外線硬化性樹脂の
上に、直径120mm、厚さ0.6mmのポリカーボネ
ート製のダミー基板10を密着させた。次いで、ダミー
基板10の側から紫外線を照射して樹脂を硬化させた。
これにより、硬化した樹脂から成る接着層9を30μm
の厚さで形成すると同時に、ダミー基板10を接着層9
を介して反射層8の上に貼り合わせた。
【0201】ダミー基板10を貼り合わせた後、波長8
10nmの半導体レーザを使用して初期化工程を実施し
た。初期化工程においては、情報記録媒体25の半径2
2〜60mmの範囲の環状領域内に位置する記録層4
を、ほぼ全面に亘って結晶化させた。初期化工程の終了
により、情報記録媒体25の作製が完了した。
【0202】比較サンプルとして、図10に示す構成の
情報記録媒体31を作製した。比較サンプルにおいて、
第1の誘電体層102および第2の誘電体層106は、
(ZnS)80(SiO220で形成した。また、第1の
界面層103および第2の界面層105は、それぞれG
e−Cr−Nから成る、厚さ5nmの層とした。
【0203】第1の誘電体層102は、(ZnS)
80(SiO220から成るスパッタリングターゲット
(直径100mm、厚さ6mm)を使用して、圧力0.
13Paにて、表3に示す条件を採用して高周波スパッ
タリングを実施して形成した。第2の誘電体層106も
これと同様にして形成した。
【0204】第1の界面層103を形成する工程におい
ては、Ge90Cr10(原子%)の組成を有する材料から
成るスパッタリングターゲット(直径100mm、厚さ
6mm)を成膜装置に取り付けて、約1.33Paの圧
力にて高周波スパッタリングを実施した。パワーは30
0Wとした。雰囲気ガスとして、Arガス(60%)と
2ガス(40%)との混合ガスを導入した。この結
果、混合ガス中のN2がスパッタリングターゲットから
スパッタされたGeおよびCrと反応してGe−Cr−
Nの層が第1の界面層103として形成された。第2の
界面層105もこれと同様にして形成した。
【0205】光吸収補正層7および反射層8は、情報記
録媒体25の光吸収補正層7および反射層8と同様にし
て形成した。接着層9の形成およびダミー基板10の貼
り合わせも、情報記録媒体25で採用した方法と同様の
方法で実施した。
【0206】次に情報記録媒体の評価手法について説明
する。情報記録媒体25における誘電体層の密着性は、
高温高湿条件下での剥離の有無に基づいて評価した。具
体的には、初期化工程後の情報記録媒体25を、温度9
0℃で相対湿度80%の高温高湿槽に100時間放置し
た後、記録層とこれに接する誘電体層の間、より詳細に
は記録層4と第1の誘電体層2の界面および記録層4と
第2の誘電体層6の界面の少なくとも一方で剥離が発生
していないかどうかを、光学顕微鏡を使って目視で調べ
た。当然のことではあるが、剥離の無いサンプルは良好
な密着性を有すると評価され、剥離の有るサンプルは密
着性に劣ると評価される。
【0207】情報記録媒体25の繰り返し書き換え性能
は、繰り返し回数に基づいて評価した。繰り返し回数は
以下の条件で決定した。
【0208】情報記録媒体25に情報を記録するため
に、情報記録媒体25を回転させるスピンドルモータ
と、レーザ光12を発する半導体レーザを備えた光学ヘ
ッドと、レーザ光12を情報記録媒体25の記録層4上
に集光させる対物レンズとを具備した一般的な構成の情
報記録システムを用いた。情報記録媒体25の評価にお
いては、波長660nmの半導体レーザと開口数0.6
の対物レンズを使用し、4.7GB容量相当の記録を行
った。情報記録媒体25を回転させる線速度は8.2m
/秒とした。また、後述の平均ジッタ値を求める際のジ
ッタ値の測定には、タイムインターバルアナライザーを
用いた。
【0209】まず、繰り返し回数を決定する際の測定条
件を決めるために、ピークパワー(Pp)およびバイア
スパワー(Pb)を以下の手順で設定した。上記のシス
テムを用いて、レーザ光12を、高パワーレベルのピー
クパワー(mW)と低パワーレベルのバイアスパワー
(mW)との間でパワー変調しながら情報記録媒体25
に向けて照射して、マーク長0.42μm(3T)〜
1.96μm(14T)のランダム信号を(グルーブ記
録により)記録層4の同一のグルーブ表面に10回記録
した。そして、前端間のジッタ値および後端間のジッタ
値を測定し、これらの平均値として平均ジッタ値を求め
た。バイアスパワーを一定の値に固定し、ピークパワー
を種々変化させた各記録条件について平均ジッタ値を測
定し、ピークパワーを徐々に増加させて、ランダム信号
の平均ジッタ値が13%に達したときのピークパワーの
1.3倍のパワーを仮にPp1と決めた。次に、ピーク
パワーをPp1に固定し、バイアスパワーを種々変化さ
せた各記録条件について平均ジッタ値を測定し、ランダ
ム信号の平均ジッタ値が13%以下となったときの、バ
イアスパワーの上限値および下限値の平均値をPbに設
定した。そして、バイアスパワーをPbに固定し、ピー
クパワーを種々変化させた各記録条件について平均ジッ
タ値を測定し、ピークパワーを徐々に増加させて、ラン
ダム信号の平均ジッタ値が13%に達したときのピーク
パワーの1.3倍のパワーをPpに設定した。このよう
にして設定したPpおよびPbの条件で記録した場合、
例えば10回繰り返し記録において、8〜9%の平均ジ
ッタ値が得られた。システムのレーザパワー上限値を考
慮すれば、Pp≦14mW、Pb≦8mWを満足するこ
とが望ましい。
【0210】繰り返し回数は、本実施例では平均ジッタ
値に基づいて決定した。上記のようにして設定したPp
とPbとでレーザ光をパワー変調しながら情報記録媒体
25に向けて照射して、マーク長0.42μm(3T)
〜1.96μm(14T)のランダム信号を(グルーブ
記録により)同一のグルーブ表面に所定回数繰り返して
連続記録した後、平均ジッタ値を測定した。平均ジッタ
値は、繰り返し回数が1、2、3、5、10、100、
200および500回であるときに測定し、繰り返し回
数が1000〜10000回の範囲では1000回毎に
測定し、繰り返し回数が20000〜100000回の
範囲では10000回毎に測定した。平均ジッタ値が1
3%に達したときを繰り返し書き換えの限界として判断
し、このときの繰り返し回数により繰り返し書き換え性
能を評価した。当然のことならがら、繰り返し回数が大
きいほど、繰り返し書き換え性能が高いと評価される。
情報記録媒体が、コンピュータの外部メモリとして用い
られる場合には、繰り返し回数は10万回以上であるこ
とが好ましい。情報記録媒体が、画像音声レコーダで用
いられる場合には、繰り返し回数は1万回以上であるこ
とが好ましい。
【0211】
【表3】
【0212】表3に示すように、サンプル1−4、1−
8、1−9、1−14は、書き換えが困難であった。具
体的には、1回目ランダム信号の記録マークを形成後、
2回目の重ね書きを行うと、元の記録マークが消えずに
残っていた。従って、V25、MoO3、WO3、TeO
2は、誘電体層として使用することは困難であることが
分かった。他のサンプルにおいても比較サンプルと同程
度の特性は得られなかった。即ち、サンプル1−1から
1−14のいずれも、良好な密着性、良好な繰り返し書
き換え性能、および良好な記録感度(Pp≦14mW)
のすべてを同時に満足するものではなかった。
【0213】このことから、サンプル1−1から1−1
4で使用した材料はいずれも、それだけでは記録層と接
する誘電体層を形成するのに適していないことが判っ
た。しかしながら、本実施例の結果から、Cr23、Z
nO、ZnSおよびLaF3から成る誘電体層は記録層
との密着性が良好であること、ならびにTiO2、Zr
2、HfO2、Nb25、Ta25、Cr23およびS
iO2から成る誘電体層を有する情報記録媒体は繰り返
し書き換え性能が良好であることが判った。したがっ
て、本発明者は、Cr23、ZnO、ZnSおよびLa
3から選択される1以上の化合物と、TiO2、ZrO
2、HfO2、Nb25、Ta25、Cr2 3およびSi
2から選択される1以上の化合物とを混合することに
より、良好な密着性と良好な繰り返し書き換え性能を同
時に達成することが期待できると考えた。
【0214】(実施例2)実施例2では、良好な密着性
と良好な繰り返し書き換え性能を同時に達成するため、
実施例1で使用した材料から、記録層との密着性に優れ
た材料と情報記録媒体の繰り返し書き換え性能を実用可
能な程度にし得る材料とを選択して混合した材料で誘電
体層を形成した。具体的には、実施例1と同様に、図1
に示す情報記録媒体25において、第1の誘電体層2お
よび第2の誘電体層6を、種々の2成分混合材料で形成
した27種類のサンプルを作製した。各サンプルにおい
て、第1の誘電体層2と第2の誘電体層6は、同じ材料
で形成した。
【0215】本実施例において、各サンプルは、第1お
よび第2の誘電体層が表4に示す材料から成る点を除い
て、実施例1と同様、図1に示す情報記録媒体25と同
じ構成を有するように作製した。基板1として、実施例
1で使用した基板と同じものを使用した。記録層4、光
吸収補正層7および反射層8の形成は、実施例1と同様
にして実施した。第1の誘電体層2および第2の誘電体
層6は、それぞれ表4に示す材料から成るスパッタリン
グターゲット(直径100mm、厚さ6mm)を用い
て、0.13Paの圧力下で高周波スパッタリングを実
施して形成した。各サンプルにおいて採用した、スパッ
タリング時の雰囲気ガスおよびパワーは表4に示すとお
りである。
【0216】得られた各サンプルについて、誘電体層の
密着性と繰り返し書き換え性能を評価した。その評価結
果を表2に示す。密着性および繰り返し書き換え性能の
評価方法は、先に説明したとおりである。
【0217】
【表4】
【0218】表4に示すように、サンプル2−1から2
−27まで、全て剥離が発生せず、密着性が改善され
た。また、Cr23を混合した材料を用いたサンプルは
良好な繰り返し書き換え性能を示した。特に、Cr23
をZrO2、HfO2、SiO2に混合した材料を使用し
たサンプルでは、10万回の繰り返し回数を達成でき
た。また、LaF3を混合した材料を用いたサンプル
は、Pp<14mWであり、良好な記録感度を示した。
一方、ZnOおよびZnSを混合した材料を用いたサン
プルは、いずれも繰り返し書き換え性能に劣っていた。
これらの結果から、繰り返し書き換え性能に好ましく寄
与する誘電体材料、即ち、TiO2、ZrO2、Hf
2、Nb25、Ta25、Cr23またはSiO2に混
合する材料としては、Cr23またはLaF3が好まし
いことが判った。さらに、2種類の酸化物を組み合わせ
るよりも、フッ化物と酸化物とを組み合わせる方が、層
の熱伝導性を低下させるのにより有効であると考えられ
る。
【0219】さらに、表4より、LaF3と酸化物とを
組み合わせることにより、良好な密着性、良好な繰り返
し書き換え性能、および良好な記録感度を同時に満たす
情報記録媒体が得られることが判った。このことから、
本発明者は、希土類金属のフッ化物を混合すると、同様
に良好な結果が得られるのではないかと考えた。
【0220】(実施例3)実施例3では、良好な記録感
度を達成するため、繰り返し書き換え性能に特に好まし
く寄与するZrO2、HfO2およびSiO2に、希土類
金属のフッ化物を混合した材料で誘電体層を形成した。
具体的には、実施例1と同様に、図1に示す情報記録媒
体25において、第1の誘電体層2および第2の誘電体
層6を種々の2成分混合材料で形成した24種類のサン
プルを作製した。この実施例においても、第1の誘電体
層2と第2の誘電体層6は、同じ材料で形成した。
【0221】本実施例において、各サンプルは、第1お
よび第2の誘電体層が表5に示す材料から成る点を除い
て、実施例1と同様、図1に示す情報記録媒体25と同
じ構成を有するように作製した。基板1として、実施例
1で使用した基板と同じものを使用した。記録層4、光
吸収補正層7および反射層8の形成は、実施例1と同様
にして実施した。第1の誘電体層2および第2の誘電体
層6は、それぞれ表5に示す材料から成るスパッタリン
グターゲット(直径100mm、厚さ6mm)を用い
て、0.13Paの圧力下で高周波スパッタリングを実
施して形成した。いずれのサンプルについても、誘電体
層の形成工程において、スパッタリングは400Wのパ
ワーを使用して、Arガス雰囲気中で実施した。
【0222】得られた各サンプルについて、誘電体層の
密着性と繰り返し書き換え性能を評価した。その評価結
果を表5に示す。密着性および繰り返し書き換え性能の
評価方法は、先に説明したとおりである。
【0223】
【表5】
【0224】表5に示すように、サンプル3−1から3
−24まで、全て剥離が発生せず、密着性が良好であっ
た。また、いずれのサンプルにおいても、繰り返し回数
は1万回以上であり、画像音声レコーダ用途の情報記録
媒体であれば十分に使用できる繰り返し書き換え性能が
確保されていた。さらに、いずれのサンプルにおいて
も、Pp<14mWであり、記録感度は良好であった。
このように、酸化物と希土類金属のフッ化物とを混合す
ることにより、記録層と接して誘電体層を形成した場合
でも、情報記録媒体に必要とされる性能を確保し得るこ
とが判った。
【0225】比較サンプルと、サンプル3−1から3−
24を比較すると、比較サンプルにおいては10万回以
上の繰り返し回数が達成されるとともに、Pp=11m
Wという高記録感度が実現されている。情報記録媒体が
コンピュータの外部メモリとして使用される場合がある
ことを考慮すると、10万回以上の繰り返し回数が実現
されることが望ましい。そこで、比較サンプル(即ち、
従来構成の情報記録媒体)と同等かそれ以上の性能を実
現するために、複数の酸化物にフッ化物を混合した材料
の使用を試みた。
【0226】(実施例4)実施例4では、ZrO2−L
aF3混合系材料について、誘電体層の形成に適した組
成範囲を決定した。具体的には、上記において説明した
実施の形態3に相当する図3に示す情報記録媒体27に
おいて、第2の誘電体層6を、上記2つの化合物の混合
割合が異なる材料で形成した7種類のサンプルを作製し
た。以下、情報記録媒体27の作製方法を説明する。
【0227】まず、基板1として、実施例1で使用した
ものと同じ基板を準備した。この基板1上に、厚さ15
0nmの第1の誘電体層102、厚さ5nmの第1の界
面層103、厚さ9nmの記録層4、厚さ50nmの第
2の誘電体層6、厚さ40nmの光吸収補正層7、およ
び厚さ80nmの反射層8を、この順にスパッタリング
法により以下に説明する方法で成膜した。第1の誘電体
層102は、先に実施例1にて説明した情報記録媒体3
1(比較サンプル)の第1の誘電体層102と同様にし
て(ZnS)80(SiO220(mol%)で形成し
た。第1の界面層103は、先に実施例1にて説明した
情報記録媒体31(比較サンプル)の第1の界面層10
3と同様にして形成し、Ge−Cr−N層とした。記録
層4は、実施例1と同様にして形成した。したがって、
その組成は、Ge27Sn8Sb12Te53(原子%)であ
った。第2の誘電体層6は、それぞれ表6に示す材料か
ら成るスパッタリングターゲット(直径100mm、厚
さ6mm)を用いて、Arガス雰囲気中で0.13Pa
の圧力下で高周波スパッタリングを実施して形成した。
また、使用したパワーは、サンプル4−1において50
0Wであり、サンプル4−2〜4−7において400W
であった。光吸収補正層7および反射層8は、実施例1
にて説明した情報記録媒体25のそれらと同様にして形
成した。
【0228】比較のため、実施例1で作製したものと同
様の情報記録媒体31を比較サンプルとして作製した。
得られた各サンプルについて、誘電体層の密着性と繰り
返し書き換え性能を評価した。その評価結果を表6に示
す。密着性および繰り返し書き換え性能の評価方法は、
先に説明したとおりである。但し、本実施例では、密着
性の評価は、記録層4とこれに接する第2の誘電体層6
との間で剥離が発生していないかどうか調べることによ
り実施した。
【0229】
【表6】
【0230】表6に示すように、LaF3が10モル%
以上含まれると、剥離が生じず、良好な密着性が確保さ
れることが確認された。また、ZrO2の割合が小さい
ほど(即ち、LaF3の混合割合が大きいほど)、繰り
返し回数は小さくなるが、Ppは小さくなり記録感度が
良くなる傾向にあった。上記表の結果から、繰り返し書
き換え性能と記録感度との均衡を考慮すると、ZrO2
の割合は50モル%以上であることが好ましく、密着性
を考慮するとZrO2の割合は90モル%以下であるこ
とが好ましいことが判った。
【0231】(実施例5)実施例5では、記録感度と繰
り返し書き換え性能をより向上させるために、2以上の
酸化物と、群GLから選択される元素のフッ化物として
LaF3を混合した材料で誘電体層を形成した。具体的
には、実施例1と同様に、図1に示す情報記録媒体25
において、第1の誘電体層2および第2の誘電体層6
を、種々の3成分混合材料で形成した8種類のサンプル
を作製した。この実施例においても、第1の誘電体層2
と第2の誘電体層6は、同じ材料で形成した。本実施例
においてLaF3を採用したのは、融点が高いこと、お
よびコスト的に有利であることによる。
【0232】本実施例において、各サンプルは、第1お
よび第2の誘電体層が表7に示す材料から成る点を除い
て、実施例1と同様、図1に示す情報記録媒体25と同
じ構成を有するように作製した。基板1として、実施例
1で使用した基板と同じものを使用した。記録層4、光
吸収補正層7および反射層8の形成は、実施例1と同様
にして実施した。第1の誘電体層2および第2の誘電体
層6は、それぞれ表7に示す材料から成るスパッタリン
グターゲット(直径100mm、厚さ6mm)を用い
て、0.13Paの圧力下で高周波スパッタリングを実
施して形成した。いずれのサンプルについても、誘電体
層の形成工程において、スパッタリングは400Wのパ
ワーを使用して、Arガス雰囲気中で実施した。
【0233】得られた各サンプルについて、誘電体層の
密着性と繰り返し書き換え性能を評価した。その評価結
果を表7に示す。密着性および繰り返し書き換え性能の
評価方法は、先に実施例1で説明したとおりである。
【0234】
【表7】
【0235】表7に示すように、ZrO2−Cr23
LaF3混合系(サンプル5−1)、SiO2−Cr23
−LaF3混合系(サンプル5−2)、HfO2−Cr2
3−LaF3混合系(サンプル5−3)、ZrO2−S
iO2−Cr23−LaF3混合系(サンプル5−5)、
およびHfO2−SiO2−Cr23−LaF3混合系
(サンプル5−6)を使用したサンプルにおいて、10
万回以上の繰り返し回数、およびRp≦14を達成でき
た。特に、SiO2を混合した系はPpがより低く、よ
り高記録感度であった。即ち、これらの混合系を用い
て、記録層と接するように誘電体層を形成して情報記録
媒体を構成することにより、第1及び第2の界面層の無
い構成、即ち層数の少ない構成で、従来の界面層を有す
る構成と同等の性能を実現することができた。
【0236】TiO2−Cr23−LaF3混合系および
TiO2−SiO2−Cr23−LaF3混合系を使用し
たサンプル5−4および5−7は、繰り返し回数が10
万回未満であるものの、表2に示すサンプル2−4と比
較して優れた繰り返し書き換え性能を示した。TiO2
−SiO2−Cr23−LaF3混合系を使用したサンプ
ル5−7は、サンプル5−4と同等の繰り返し書き換え
性能を示し、且つサンプル5−4よりもRpが低く高い
記録感度を示した。これら表7の結果から、Cr23
添加が繰り返し書き換え性能の向上に寄与し、SiO2
の添加が記録感度の向上に寄与することが判った。
【0237】(実施例6)実施例6では、ZrO2−C
23−LaF3混合系材料について、誘電体層の形成
に適した組成範囲を決定した。具体的には、実施例4と
同様に、図3に示す情報記録媒体27において、第2の
誘電体層6を上記3つの化合物の混合割合が異なる材料
で形成した12種類のサンプルを作製した。
【0238】本実施例において、各サンプルは、第2の
誘電体層6が表8に示す材料から成る点を除いて、実施
例4と同様、図3に示す情報記録媒体27と同じ構成を
有するように作製した。基板1として、実施例1で使用
した基板と同じものを使用した。第1の誘電体層10
2、第1の界面層103、記録層4、光吸収補正層7お
よび反射層8の形成は、実施例4と同様にして実施し
た。第2の誘電体層6は、それぞれ表8に示す材料から
成るスパッタリングターゲット(直径100mm、厚さ
6mm)を用いて、0.13Paの圧力下で高周波スパ
ッタリングを実施して形成した。いずれのサンプルにつ
いても、第2の誘電体層6の形成工程において、スパッ
タリングは400Wのパワーを使用して、Arガス雰囲
気中で実施した。
【0239】得られた各サンプルについて、誘電体層の
密着性と繰り返し書き換え性能を評価した。その評価結
果を表8に示す。密着性および繰り返し書き換え性能の
評価方法は、先に実施例4に関連して説明したとおりで
ある。
【0240】
【表8】
【0241】表8に示すように、Cr23が含まれる
と、LaF3の混合割合が小さくても剥離が生じず、良
好な密着性が確保されることが確認された。また、Zr
2とCr23とを合わせた混合割合が小さいほど(即
ち、LaF3の混合割合が大きいほど)、Ppは小さく
なり記録感度が良くなる傾向にあった。また、ZrO2
とCr23とを合わせた混合割合が一定である場合、C
23の混合割合が大きいほど、繰り返し回数が小さく
なり、かつPpが大きくなる傾向にあった。上記表の結
果から、繰り返し書き換え性能と記録感度との均衡を考
慮すると、ZrO 2とCr23とを合わせた混合割合は
50モル%以上であることが好ましいことが判った。ま
た、ZrO2およびCr23の混合割合はそれぞれ10
モル%以上であることが好ましいことが判った。
【0242】(実施例7)実施例7では、ZrO2−S
iO2−Cr23−LaF3混合系材料について、誘電体
層の形成に適した組成範囲を決定した。具体的には、実
施例1と同様に、図1に示す情報記録媒体25におい
て、第1の誘電体層2および第2の誘電体層6を、上記
4つの化合物の混合割合が異なる材料で形成した6種類
のサンプルを作製した。この実施例においても、第1の
誘電体層2と第2の誘電体層6は、同じ材料で形成し
た。
【0243】本実施例において、各サンプルは、第1お
よび第2の誘電体層が表9に示す材料から成る点を除い
て、実施例1と同様、図1に示す情報記録媒体25と同
じ構成を有するように作製した。基板1として、実施例
1で使用した基板と同じものを使用した。記録層4、光
吸収補正層7および反射層8の形成は、実施例1と同様
にして実施した。第1の誘電体層2および第2の誘電体
層6は、それぞれ表9に示す材料から成るスパッタリン
グターゲット(直径100mm、厚さ6mm)を用い
て、0.13Paの圧力下で高周波スパッタリングを実
施して形成した。いずれのサンプルについても、誘電体
層の形成工程において、スパッタリングは、400Wの
パワーを使用して、Arガス雰囲気中で実施した。
【0244】得られた各サンプルについて、誘電体層の
密着性と繰り返し書き換え性能を評価した。その評価結
果を表9に示す。密着性および繰り返し書き換え性能の
評価方法は、先に実施例1で説明したとおりである。組
成範囲の決定には、実施例5で作製したサンプル5−5
の評価結果も利用したので、その結果を表9に再度示
す。
【0245】
【表9】
【0246】表9に示すように、式(4)、即ち、
(D)X(SiO2Y(Cr23Z(LaF3
100-X-Y-Z(mol%)で表される系において、DがZ
rO2であり、X、YおよびZが、20≦X≦70、1
0≦Y≦50、10≦Z≦60、および50≦X+Y+
Z≦90を満たすと、情報記録媒体25において、良好
な密着性、良好な繰り返し書き換え性能(繰り返し回数
10万回以上)、およびPp<14mWの良好な記録感
度が実現されることが確認された。また、Cr23の割
合が大きい混合物系を採用すると、記録感度がやや低下
し、LaF3の割合が大きい混合物系を採用すると、記
録感度が高くなるという、各特性の組成依存性も確認さ
れた。
【0247】(実施例8)実施例8では、HfO2−S
iO2−Cr23−LaF3混合系材料について、誘電体
層の形成に適した組成範囲を決定した。具体的には、実
施例1と同様に、図1に示す情報記録媒体25におい
て、第1の誘電体層2および第2の誘電体層6を、上記
4つの化合物の混合割合が異なる材料で形成した6種類
のサンプルを作製した。この実施例においても、第1の
誘電体層2と第2の誘電体層6は、同じ材料で形成し
た。
【0248】本実施例において、各サンプルは、第1お
よび第2の誘電体層が表10に示す材料から成る点を除
いて、実施例1と同様、図1に示す情報記録媒体25と
同じ構成を有するように作製した。基板1として、実施
例1で使用した基板と同じものを使用した。記録層4、
光吸収補正層7および反射層8の形成は、実施例1と同
様にして実施した。第1の誘電体層2および第2の誘電
体層6は、それぞれ表10に示す材料から成るスパッタ
リングターゲット(直径100mm、厚さ6mm)を用
いて、0.13Paの圧力下で高周波スパッタリングを
実施して形成した。いずれのサンプルにおいても、スパ
ッタリングは、400Wのパワーを使用して、Arガス
雰囲気中で実施した。
【0249】得られた各サンプルについて、誘電体層の
密着性と繰り返し書き換え性能を評価した。その評価結
果を表10に示す。密着性および繰り返し書き換え性能
の評価方法は、先に実施例1で説明したとおりである。
組成範囲の決定には、実施例5で作製したサンプル5−
6の評価結果も利用したので、その結果を表10に再度
示す。
【0250】
【表10】
【0251】表10に示すように、式(4)、即ち、
(D)X(SiO2Y(Cr23Z(LaF3
100-X-Y-Z(mol%)で表される系において、DがH
fO2であり、X、YおよびZが、20≦X≦70、1
0≦Y≦50、10≦Z≦60、および50≦X+Y+
Z≦90を満たすと、情報記録媒体25において、良好
な密着性、良好な繰り返し書き換え性能(繰り返し回数
10万回以上)、およびPp<14mWの良好な記録感
度が実現されることが確認された。
【0252】(実施例9)実施例9では、Ta25−S
iO2−Cr23−LaF3混合系材料について、誘電体
層の形成に適した組成範囲を決定した。具体的には、実
施例1と同様に、図1に示す情報記録媒体25におい
て、第1の誘電体層2および第2の誘電体層6を、上記
4つの化合物の混合割合が異なる材料で形成した6種類
のサンプルを作製した。この実施例においても、第1の
誘電体層2と第2の誘電体層6は、同じ材料で形成し
た。
【0253】本実施例において、各サンプルは、第1お
よび第2の誘電体層が表11に示す材料から成る点を除
いて、実施例1と同様、図1に示す情報記録媒体25と
同じ構成を有するように作製した。基板1として、実施
例1で使用した基板と同じものを使用した。記録層4、
光吸収補正層7および反射層8の形成は、実施例1と同
様にして実施した。第1の誘電体層2および第2の誘電
体層6は、それぞれ表11に示す材料から成るスパッタ
リングターゲット(直径100mm、厚さ6mm)を用
いて、0.13Paの圧力下で高周波スパッタリングを
実施して形成した。いずれのサンプルにおいても、スパ
ッタリングは、400Wのパワーを使用して、Arガス
雰囲気中で実施した。
【0254】得られた各サンプルについて、誘電体層の
密着性と繰り返し書き換え性能を評価した。その評価結
果を表11に示す。密着性および繰り返し書き換え性能
の評価方法は、先に実施例1で説明したとおりである。
組成範囲の決定には、実施例5で作製したサンプル5−
8の評価結果も利用したので、その結果を表11に再度
示す。
【0255】
【表11】
【0256】表11に示すように、(4)、即ち、
(D)X(SiO2Y(Cr23Z(LaF3
100-X-Y-Z(mol%)で表される系において、DがT
25であり、X、YおよびZが、20≦X≦70、1
0≦Y≦50、10≦Z≦60、および50≦X+Y+
Z≦90を満たすと、、情報記録媒体25において、良
好な密着性およびPp<14mWの良好な記録感度が実
現されることが確認された。サンプル9−1、2、3、
5、6は、実施例7および8のサンプルと比較して、繰
り返し回数が小さいものの、特定の用途(例えば、画像
音声レコーダ用)の情報記録媒体として実用可能なもの
であった。
【0257】(実施例10)実施例10では、ZrSi
4−Cr23−LaF3混合系材料について、誘電体層
の形成に適した組成範囲を決定した。具体的には、実施
例1と同様に、図1に示す情報記録媒体25において、
第1の誘電体層2および第2の誘電体層6を、上記3つ
の化合物の混合割合が異なる材料で形成した7種類のサ
ンプルを作製した。この実施例においても、第1の誘電
体層2と第2の誘電体層6は、同じ材料で形成した。
【0258】本実施例において、各サンプルは、第1お
よび第2の誘電体層が表12に示す材料から成る点を除
いて、実施例1と同様、図1に示す情報記録媒体25と
同じ構成を有するように作製した。基板1として、実施
例1で使用した基板と同じものを使用した。記録層4、
光吸収補正層7および反射層8の形成は、実施例1と同
様にして実施した。第1の誘電体層2および第2の誘電
体層6は、それぞれ表12に示す材料から成るスパッタ
リングターゲット(直径100mm、厚さ6mm)を用
いて、0.13Paの圧力下で高周波スパッタリングを
実施して形成した。いずれのサンプルにおいても、スパ
ッタリングは、400Wのパワーを使用して、Arガス
雰囲気中で実施した。
【0259】得られた各サンプルについて、誘電体層の
密着性と繰り返し書き換え性能を評価した。その評価結
果を表12に示す。密着性および繰り返し書き換え性能
の評価方法は、先に実施例1で説明したとおりである。
【0260】
【表12】
【0261】表12に示すように、式(5)、即ち、
(ZrSiO4A(Cr23B(LaF3
100-A-B(mol%)で表される系において、Aおよび
Bが、20≦A≦70、10≦B≦50、および50≦
A+B≦90を満たすと、情報記録媒体25において、
良好な密着性、良好な繰り返し書き換え性能(繰り返し
回数10万回以上)、およびPp<14mWが実現され
ることが確認された。また、Cr23の割合が大きい混
合物系を採用すると、記録感度がやや低下し、LaF3
の割合が大きい混合物系を採用すると、記録感度が高く
なるという、各特性の組成依存性も確認された。
【0262】(実施例11)実施例11では、実施例1
0で作製したサンプル10−2の情報記録媒体に、ラン
ド−グルーブ記録を実施し、グルーブ記録およびランド
記録のそれぞれについて実施例1で記載した方法に従っ
て繰り返し回数を求めて、繰り返し書き換え性能を評価
した。その結果を、繰り返し書き換え性能の評価の際に
求めたピークパワー(Pp)およびバイアスパワー(P
b)とともに表13に示す。この実施例においても、比
較のために、実施例1で作製したものと同じ構成の図1
0に示す情報記録媒体31について、同じ評価を行っ
た。
【0263】
【表13】
【0264】表13に示すように、サンプル10−2の
繰り返し書き換え性能は、グルーブ記録およびランド記
録の両方について、比較サンプルと同じであった。サン
プル10−2はまた、比較サンプルよりもPpが低く、
より高い記録感度を示した。したがって、本発明の情報
記録媒体はランドグルーブ記録に用いる情報記録媒体と
して有用であることが確認された。
【0265】このように、(ZrSiO450(Cr2
330(LaF320(mol%)等で表される酸化物と
フッ化物との混合物を含む層は、Sを含まないために、
記録層と接して形成できる。また、酸化物−フッ化物系
材料層を、第1の誘電体層2および第2の誘電体層6と
した図1に示すような情報記録媒体25は、第1の界面
層103および第2の界面層105を含む、図10に示
すような情報記録媒体31と同等以上の良好な性能を有
する。このことは、上記実施例3〜11の結果から明ら
かである。即ち、上記実施例により、本発明によれば、
従来の情報記録媒体よりも層数を減らしても、それと同
等以上の性能を有する情報記録媒体が得られることが検
証できた。
【0266】(実施例12)実施例12では、上記にお
いて説明した実施の形態2に相当する図2に示す情報記
録媒体26において、第1の誘電体層2のみが酸化物−
フッ化物系材料層である情報記録媒体(サンプル12−
1)を作製した。以下、情報記録媒体26の作製方法を
説明する。
【0267】まず、基板1として、実施例1で使用した
ものと同じ基板を準備した。この基板1上に、厚さ15
0nmの第1の誘電体層2、厚さ9nmの記録層4、厚
さ3nmの第2の界面層105、厚さ50nmの第2の
誘電体層106、厚さ40nmの光吸収補正層7を40
nm、および厚さ80nmの反射層8を、この順にスパ
ッタリング法により以下に説明する方法で成膜した。
【0268】第1の誘電体層2を形成する工程において
は、(ZrSiO430(Cr2340(LaF3
30(mol%)から成るスパッタリングターゲット(直
径100mm、厚さ6mm)を成膜装置に取り付けて、
圧力0.13Paにて、Arガス雰囲気中で高周波スパ
ッタリングを実施した。パワーは400Wであった。
【0269】記録層4は、実施例1と同様にして形成し
た。したがって、その組成は、Ge 27Sn8Sb12Te
53(原子%)であった。
【0270】第2の界面層105は、先に実施例1にて
説明した情報記録媒体31(比較サンプル)の第1の界
面層103と同様にして形成した。第2の誘電体層10
6もまた、先に説明した情報記録媒体31(比較サンプ
ル)の第1の誘電体層102と同様にして(ZnS)80
(SiO220(mol%)で形成した。光吸収補正層7お
よび反射層8は、実施例1にて説明した情報記録媒体2
5のそれらと同様にして形成した。
【0271】比較のため、実施例1で作製したものと同
様の情報記録媒体31を比較サンプルとして作製した。
各サンプルの第1の誘電体層2の密着性を実施例1と同
様の条件で測定した。また、各サンプルにグルーブ記録
およびランド記録を実施し、グルーブ記録およびランド
記録の繰り返し回数を実施例1で記載した方法に従って
求めることにより、繰り返し書き換え性能を評価した。
評価結果を表14に示す。
【0272】
【表14】
【0273】表14に示すように、第1の誘電体層2の
みを酸化物−フッ化物系材料層とした6層構成の情報記
録媒体26も、7層構成の情報記録媒体31と同等の密
着性、繰り返し書き換え性能、ピークパワー、およびバ
イアスパワーを実現した。(ZrSiO430(Cr2
340(LaF330(mol%)は、情報記録媒体26
を構成する層の組成の一例である。実施例10で使用し
たZrSiO4−Cr23−LaF3混合系材料を用いて
作製した情報記録媒体26は、いずれも良好な性能を示
した。他の実施例で使用した材料についても同様であ
る。
【0274】(実施例13)実施例13では、上記にお
いて説明した実施の形態3に相当する図3に示す情報記
録媒体27において、第2の誘電体層6のみが(ZrS
iO450(Cr2 320(LaF330(mol%)か
ら成る酸化物−フッ化物系材料層である情報記録媒体
(サンプル13−1)を作製した。
【0275】本実施例において、サンプル13−1は、
第2の誘電体層6の形成工程を除いては、実施例4と同
様にして形成した。第2の誘電体層6の形成工程におい
ては、(ZrSiO450(Cr2320(LaF330
(mol%)から成るスパッタリングターゲットを成膜
装置に取り付けて、圧力0.13Paにて、Arガス雰
囲気中で高周波スパッタリングを実施した。パワーは4
00Wであった。
【0276】比較のため、実施例1で作製したものと同
様の情報記録媒体31を比較サンプルとして作製した。
各サンプルの第2の誘電体層6の密着性を実施例1と同
様の条件で評価した。また、各サンプルの繰り返し書き
換え性能を、各サンプルにグルーブ記録およびランド記
録を実施し、グルーブ記録およびランド記録の繰り返し
回数を実施例1で記載した方法に従って求めることによ
り、評価した。評価結果を表15に示す。
【0277】
【表15】
【0278】表15に示すように、第2の誘電体層6の
みを(ZrSiO450(Cr2320(LaF3
30(mol%)とした6層構成の情報記録媒体27は、
7層構成の情報記録媒体31と同等の密着性、繰り返し
書き換え性能、ピークパワー、およびバイアスパワーを
実現した。(ZrSiO450(Cr2320(La
330(mol%)は、情報記録媒体27を構成する
層の組成の一例である。実施例10で使用したZrSi
4−Cr23−LaF3混合系材料を用いて作製した情
報記録媒体27は、いずれも良好な性能を示した。他の
実施例で使用した材料についても同様である。
【0279】(実施例14)実施例14では、上記にお
いて説明した実施の形態4に相当する図4に示す情報記
録媒体28において、第1および第2の誘電体層2およ
び6が酸化物−フッ化物系材料層である情報記録媒体
(サンプル14−1)を作製した。以下、情報記録媒体
28の作製方法を説明する。
【0280】まず、基板101として、深さ21nm、
トラックピッチ(基板の主面に平行な面内におけるグル
ーブ表面およびグルーブ表面の中心間距離)0.32μ
mの案内溝が片側表面に予め設けられた、直径120m
m、厚さ1.1mmの円形のポリカーボネート基板を準
備した。
【0281】基板101上に、厚さ80nmの反射層
8、厚さ16nmの第2の誘電体層6、厚さ11nmの
記録層4、および厚さ68nmの第1の誘電体層2を、
この順にスパッタリング法により以下に説明する方法で
成膜した。
【0282】反射層8は、実施例1と同様にして形成し
た。第2の誘電体層6を形成する工程においては、(Z
rSiO450(Cr2330(LaF320(mol
%)から成るスパッタリングターゲット(直径100m
m、厚さ6mm)を成膜装置に取り付けて、圧力0.1
3Paにて、Arガス雰囲気中で高周波スパッタリング
を実施した。パワーは400Wであった。第1の誘電体
層2も同様にして形成した。
【0283】記録層4を形成する工程においては、Ge
−Sb−Te系材料から成るスパッタリングターゲット
(直径100mm、厚さ6mm)を成膜装置に取り付け
て、直流スパッタリングを実施した。パワーは100W
とした。スパッタリング中、Arガス(97%)とN2
ガス(3%)の混合ガスを導入した。スパッタ時の圧力
は約0.13Paとした。記録層4の組成は、Ge45
4Te51であった。
【0284】第1の誘電体層2を形成した後、紫外線硬
化性樹脂を第1の誘電体層2の上に塗布した。塗布した
紫外線硬化性樹脂の上に、直径120mm、厚さ90μ
mの円形のポリカーボネート基板をダミー基板110と
して密着させた。次いで、ダミー基板110の側から紫
外線を照射して樹脂を硬化させた。これにより、硬化し
た樹脂から成る接着層9を10μmの厚さで形成すると
同時に、ダミー基板110を接着層9を介して第1の誘
電体層2の上に貼り合わせた。
【0285】ダミー基板110を貼り合わせた後、波長
670nmの半導体レーザを使用して初期化工程を実施
した。初期化工程においては、情報記録媒体28の半径
22mmから60mmの範囲の環状領域内に位置する記
録層4を、ほぼ全面に亘って結晶化させた。初期化工程
の終了により、情報記録媒体28(サンプル14−1)
の作製が完了した。
【0286】比較サンプルとして、第1の誘電体層と記
録層との間および第2の誘電体層と記録層との間に、第
1の界面層および第2の界面層を有する点を除いては、
情報記録媒体28と同様の構成である情報記録媒体を作
製した(図示せず)。この比較サンプルにおいて、第1
の誘電体層および第2の誘電体層は、(ZnS)80(S
iO220(mol%)から成る。これらの誘電体層
は、先に実施例1にて説明した情報記録媒体31(比較
サンプル)の第1の誘電体層102と同様にして形成し
た。第1の界面層および第2の界面層は、Ge−Cr−
Nから成り、5nmの厚さを有する。これらの界面層
は、先に実施例1にて説明した情報記録媒体31(比較
サンプル)の第1の界面層103と同様にして形成し
た。その他の層は、情報記録媒体28のそれらの層と同
様にして形成した。
【0287】得られた各サンプルについて、密着性およ
び繰り返し書き換え性能を評価した。その評価結果を表
16に示す。密着性の評価方法は、実施例1にて説明し
たとおりである。繰り返し書き換え性能は、実施例1で
採用した方法とは異なる方法で評価した。以下にその方
法を説明する。
【0288】情報記録媒体28の繰り返し書き換え性能
は、実施例1で使用したものと同様の構成の情報記録シ
ステムを用いて評価した。情報記録媒体28の評価にお
いては、波長405nmの半導体レーザと開口数0.8
5の対物レンズを使用し、23GB容量相当の記録を行
った。情報記録媒体28を回転させる線速度は5m/秒
とした。また、CNR(即ち、信号振幅とノイズの比)
および消去率の測定には、スペクトラムアナライザーを
用いた。
【0289】まず、繰り返し回数を決定する際の測定条
件を決めるために、ピークパワー(Pp)およびバイア
スパワー(Pb)を以下の手順で設定した。レーザ光1
2を、高パワーレベルのピークパワー(mW)と低パワ
ーレベルのバイアスパワー(mW)との間でパワー変調
しながら情報記録媒体28に向けて照射して、マーク長
0.16μmの2T信号を記録層4の同一のグルーブ表
面に10回記録した。2T信号を10回記録した後、C
NRを測定した。2T信号の10回記録の際、バイアス
パワーを一定の値に固定し、ピークパワーを種々変化さ
せた各記録条件についてCNRを測定し、信号振幅が飽
和するときの最小のピークパワーの1.2倍のパワーを
Ppに設定した。
【0290】次に、上記と同様にして2T信号を10回
記録した後、信号を再生して2T信号の振幅を測定し
た。さらに、該グルーブ表面に9T信号を1回重ね書き
し、信号を再生して2T信号の振幅を測定し、10回記
録後に測定した振幅を基準とする2T信号の減衰率を消
去率として求めた。2T信号の10回記録および9T信
号の1回重ね書きの際、ピークパワーを先に設定したP
pに固定し、バイアスパワーを種々変化させた各パワー
条件について、以上のように定義される消去率を求め、
消去率が25dB以上となるバイアスパワー範囲の中心
値をPbに設定した。システムのレーザパワー上限値を
考慮すれば、Pp≦6mW、Pb≦3mWを満足するこ
とが望ましい。
【0291】繰り返し回数は、本実施例ではCNRおよ
び消去率に基づいて決定した。上記のようにして設定し
たPpとPbとでレーザ光をパワー変調しながら情報記
録媒体28に向けて照射して、2T信号を同一のグルー
ブ表面に所定回数繰り返して連続記録した。それから、
CNRを測定し、また、消去率を求めた。消去率は、上
記と同様に、所定回数記録した後およびその上に9T信
号を1回重ね書きした後に2T信号を測定して、所定回
数記録した後に測定した2T信号の振幅に対する、9T
信号を1回重ね書きした後に測定した2T信号の振幅の
減衰率により求めた。CNRおよび消去率は、繰り返し
回数が、1、2、3、5、10、100、200、50
0、1000、2000、3000、5000、700
0、10000回であるときに求めた。10回繰り返し
た場合のCNRおよび消去率を基準として、CNRが2
dB低下するか、または消去率が5dB低下したときを
繰り返し書き換えの限界と判断し、このときの繰り返し
回数により繰り返し書き換え性能を評価した。当然のこ
とながら、繰り返し回数が大きいほど繰り返し書き換え
性能が高い。情報記録媒体28の繰り返し回数は1万回
以上が好ましい。
【0292】
【表16】
【0293】本実施例のサンプル14−1の情報記録媒
体28は、図1に示す情報記録媒体25とは、基板上へ
の各層の成膜順序、記録条件(レーザ波長やレンズの開
口数)、ならびに記録容量が異なる。サンプル14−1
の記録容量は、図1に示す情報記録媒体25の約5倍で
ある。しかしながら、これらの相違点に関係なく、第1
の誘電体層2および第2の誘電体層6として、(ZrS
iO450(Cr2330(LaF320(mol%)か
ら成る層を用いることによって、界面層を設けなくと
も、界面層を有する比較サンプルと同等の性能を有する
情報記録媒体が得られることが確認された。作製した情
報記録媒体28の(凹凸のない平面部における)Rc実
測値は20%、Raは3%であった。
【0294】情報記録媒体28の構成で、第1の誘電体
層2または第2の誘電体層6のみが酸化物−フッ化物系
材料層であっても、同様な結果が得られた。即ち、酸化
物−フッ化物系材料層を用いることにより、従来用いて
いた界面層を少なくとも一層は減らすことができ、且つ
従来構成と同等の性能を確保することができる。また、
本発明で採用される酸化物−フッ化物系材料層は、S
(硫黄)を含まないので、Agを含む反射層8と界面を
接しても原子拡散は生じない。それにより、4層構成が
可能となった。当然のことながら、反射層8と第2の誘
電体層6との間には、必要に応じて、記録層における光
の吸収を調節するための層を形成してよい。そのような
層は、金属、非金属、半金属、半導体および誘電体、な
らびにそれらの化合物から選択される1種の材料または
2種以上の材料の混合物で形成される。そのような層
は、好ましくは、波長405nm付近の光に対して4以
下の屈折率および4以下の消衰係数を有する。
【0295】(実施例15)実施例15では、上記にお
いて説明した実施の形態5に相当する図5に示す情報記
録媒体29において、第5の誘電体層19、第4の誘電
体層17、第2の誘電体層6および第1の誘電体層2が
酸化物フッ化物系材料層である情報記録媒体(サンプル
15−1)を作製した。以下、情報記録媒体29の作製
方法を説明する。
【0296】まず、基板101として、実施例14で使
用した基板101と同じ基板を用意した。基板101上
に、厚さ80nmの第2の反射層20、厚さ16nmの
第5の誘電体層19、厚さ11nmの第2の記録層1
8、厚さ68nmの第4の誘電体層17を、この順にス
パッタリング法により成膜し、第2情報層22を形成し
た。
【0297】第2の反射層20は、実施例1と同様にし
て、Ag−Pd−Cu合金で形成した。第5の誘電体層
19を形成する工程においては、(ZrSiO4
50(Cr2330(LaF320(mol%)から成る
スパッタリングターゲット(直径100mm、厚さ6m
m)を成膜装置に取り付けて、圧力0.13Paにて、
Arガス雰囲気中で高周波スパッタリングを実施した。
パワーは400Wであった。第4の誘電体層17も同様
にして形成した。第2の記録層18は、実施例14と同
様にして、Ge−Sb−Te系材料から成るスパッタリ
ングターゲットを使用して形成した。
【0298】次に、第2情報層22の上に、溝を有する
厚さ30μmの中間層16を形成した。中間層16を以
下の手順に従って形成した。まず、スピンコートによ
り、紫外線硬化性樹脂を塗布した。塗布した紫外線硬化
性樹脂の上に、表面に凹凸が設けられたポリカーボネー
ト基板を、当該凹凸を密着させて配置した。この凹凸
は、中間層16に形成すべき案内溝と相補的な形状を有
するものであった。その後、ポリカーボネート基板の側
から紫外線を照射して樹脂を硬化させ、ポリカーボネー
ト基板を中間層16から剥離した。これにより、紫外線
硬化性樹脂が硬化されて成る、案内溝が転写により形成
された中間層16を得た。
【0299】中間層16の形成後、第2情報層22の初
期化工程を実施した。初期化工程においては、波長67
0nmの半導体レーザを使用して、半径22mmから6
0mmの範囲の環状領域内に位置する第2の記録層18
を、ほぼ全面に亘って結晶化させた。
【0300】次に、中間層16上に、厚さ15nmの第
3の誘電体層15、厚さ10nmの第1の反射層14、
厚さ12nmの第2の誘電体層6、厚さ6nmの第1の
記録層13、および厚さ45nmの第1の誘電体層2
を、この順にスパッタリング法により成膜して、第1情
報層21を形成した。
【0301】第3の誘電体層15を形成する工程におい
ては、TiO2から成るスパッタリングターゲット(直
径100mm、厚さ6mm)を用いて、圧力約0.13
Paにて高周波スパッタリングを実施した。パワーは4
00Wとした。スパッタリング中、Arガス(97%)
とO2ガス(3%)との混合ガスを導入した。
【0302】第1の反射層14も、第2の反射層20と
同様にして形成し、Ag−Pd−Cu合金の層として形
成した。第2の誘電体層6は、第5の誘電体層19と同
様にして、(ZrSiO450(Cr2330(La
320(mol%)で形成した。第1の誘電体層2も
同様にして形成した。したがって、この実施例におい
て、第5、第4、第2および第1の誘電体層19、1
7、6および2は、すべて同じ組成を有する。
【0303】第1の記録層13を形成する工程において
は、Ge−Sn−Sb−Te系材料から成るスパッタリ
ングターゲット(直径100mm、厚さ6mm)を成膜
装置に取り付けて、圧力0.13Paにて、直流スパッ
タリングを実施した。パワーは50Wとした。スパッタ
リング中、Arガス(100%)を導入した。スパッタ
時の圧力は約0.13Paとした。記録層の組成は、G
40Sn5Sb4Te51(原子%)であった。
【0304】第1の誘電体層2を形成した後、紫外線硬
化性樹脂を第1の誘電体層2上に塗布した。塗布した紫
外線硬化性樹脂の上に、直径120mm、厚さ65μm
の円形のポリカーボネート基板をダミー基板110とし
て密着させた。次いで、ダミー基板110の側から紫外
線を照射して樹脂を硬化させた。これにより、硬化した
樹脂から成る接着剤層9を10μmの厚さで形成すると
同時に、ダミー基板110を接着層を介して第1の誘電
体層2の上に貼り合わせた。
【0305】ダミー基板110を貼り合わせた後、波長
670nmの半導体レーザを使用して、第1の情報層2
1の初期化工程を実施した。初期化工程においては、半
径22mmから60mmの範囲の環状領域内に位置する
第1の記録層13を、ほぼ全面に亘って結晶化させた。
初期化工程の終了により、情報記録媒体29(サンプル
15−1)の作製が完了した。
【0306】サンプル15−1の第1情報層21および
第2情報層22それぞれについて、誘電体層の密着性お
よび情報記録媒体の繰り返し書き換え性能を評価した。
これらの結果を、繰り返し書き換え性能の評価の際に求
めたピークパワー(Pp)およびバイアスパワー(P
b)とともに表17に示す。
【0307】本実施例にて、誘電体層の密着性の評価は
実施例1と同様の条件で、第1情報層21と第2情報層
22のそれぞれについて剥離の有無を調べて実施した。
情報記録媒体29の繰り返し書き換え性能の評価は、実
施例14と同様の条件にて、第1情報層21と第2情報
層22のそれぞれに23GB容量相当の記録を行って、
第1情報層21と第2情報層22のそれぞれについて繰
り返し回数を調べた。第1情報層21に記録する際に
は、レーザ光12を第1の記録層13に焦点させ、第2
情報層22を記録する際には、レーザ光12を第2の記
録層18に焦点させた。システムのレーザパワー上限値
を考慮すれば、第1の情報層21でPp≦11mW、P
b≦5.5mWを満足することが望ましい。
【0308】
【表17】
【0309】本実施例のサンプル15−1の情報記録媒
体29は、図1に示す情報記録媒体25とは、基板上へ
の各層の形成順序、情報層(即ち、記録層)の数が2で
あること、および記録条件(レーザ波長やレンズの開口
数)が異なる。また、サンプル15−1の記録容量は、
図1に示す情報記録媒体25の約10倍である。しかし
ながら、これらの相違点に関係なく、第1、第2、第4
および第5の誘電体層2、6、17および19として、
(ZrSiO450(Cr2330(LaF3 20(mo
l%)から成る層を用いることによって、界面層を設け
なくとも、良好な性能を有する情報記録媒体が得られる
ことが確認された。作製した情報記録媒体29の(凹凸
のない平面部における)第1情報層21のRc設計値は
6%、Raは0.7%であった。第2情報層22のRc
設計値は25%、Raは3%であった。
【0310】本実施例においては、情報記録媒体29を
構成する、第1、第2、第4および第5の誘電体層2、
6、17および19を全て酸化物−フッ化物系材料層と
したが、本発明はこれに限定されない。1つの変形例に
おいて、本発明の情報記録媒体は、これら4つの誘電体
層のうち、少なくとも1つが酸化物−フッ化物系材料層
であり、他の誘電体層が(ZnS)80(SiO2
20(mol%)から成るものであってよい。その場合、
(ZnS)80(SiO220(mol%)の誘電体層と
記録層との間には界面層を形成する必要がある。かかる
変形例の情報記録媒体ににおいても、層の数が減少する
という目的が達成されるとともに、上記サンプル15−
1と同様に良好な性能が得られる。
【0311】また、本実施例では、第1、第2、第4お
よび第5の誘電体層2、6、17、および19を、すべ
て同じ組成の酸化物−フッ化物系材料層としたが、本発
明はこれに限定されない。1つの変形例として、これら
4つの誘電体層が互いに異なる組成を有する情報記録媒
体29を作製してよい。そのような情報記録媒体もま
た、上記サンプル15−1と同様に、良好な性能を示
す。
【0312】(実施例16)実施例16では、上記にお
いて説明した実施の形態6に相当する図6に示す情報記
録媒体30において、第1の界面層3および第2の界面
当5が酸化物−フッ化物系材料層である情報記録媒体
(サンプル16−1)を作製した。以下、情報記録媒体
30の作製方法を説明する。
【0313】まず、基板1として、実施例1で使用した
基板と同じ基板を用意した。基板1上に、厚さ150n
mの第1の誘電体層102、厚さ5nmの第1の界面層
3、厚さ9nmの記録層4、厚さ3nmの第2の界面層
5、厚さ50nmの第2の誘電体層106、厚さ40n
mの光吸収補正層7、および厚さ80nmの反射層8
を、この順にスパッタリング法により成膜した。
【0314】第1の誘電体層102は、先に実施例1に
て説明した情報記録媒体31(比較サンプル)の第1の
誘電体層102と同様にして(ZnS)80(SiO2
20(mol%)で形成した。第2の誘電体層106も同
様にして形成した。
【0315】第1の界面層3の形成工程においては、
(ZrSiO450(Cr2340(LaF310(mo
l%)から成るスパッタリングターゲット(直径100
mm、厚さ6mm)を成膜装置に取り付けて、圧力0.
13Paにて、Arガス雰囲気中で高周波スパッタリン
グを実施した。パワーは400Wであった。第2の界面
層5も同様にして形成した。
【0316】記録層4は、実施例1と同様にして形成し
た。したがって、その組成は、Ge 27Sn8Sb12Te
53(原子%)であった。光吸収補正層7も、実施例1と
同様にしてGe80Cr20を用いて形成した。反射層8
も、実施例1と同様にして、Ag−Pd−Cu合金で形
成した。
【0317】比較のため、実施例1で作製したものと同
様の情報記録媒体31を比較サンプルとして作製した。
得られたサンプルについて、密着性および繰り返し書き
換え性能を評価した。密着性の評価は、記録層4とこれ
に接する界面層の間、より詳細には記録層と第1の界面
層3および第2の界面層5の少なくとも一方との間で剥
離が発生していないかどうか調べることにより実施し
た。繰り返し書き換え性能の評価は、グルーブ記録およ
びランド記録を実施し、グルーブ記録およびランド記録
の繰り返し回数を実施例1で記載した方法に従って求め
ることにより実施した。評価結果を表18に示す。
【0318】
【表18】
【0319】表18に示すように、酸化物−フッ化物系
材料層を界面層として用いたサンプル16−1の性能
は、比較サンプルと同等であった。このサンプル16−
1を構成する層の数は従来の情報記録媒体と同じであ
る。したがって、サンプル16−1においては層数の減
少による効果を得ることはできない。しかし、酸化物−
フッ化物系材料層を界面層とする場合には、Ge−Cr
−Nの界面層を形成するときのように反応性スパッタリ
ングに依らず、Arガスのみの雰囲気下でスパッタリン
グすることにより界面層を形成できる。従って、1つの
酸化物−フッ化物系材料の界面層内での組成のバラツキ
および膜厚のバラツキがGe−Cr−Nの界面層よりも
小さくなる。これにより、製造の容易性および安定性が
向上する。また、酸化物−フッ化物系材料層は、膜質の
装置依存性が小さいため、当該膜の形成条件はより速く
最適化することができる。したがって、酸化物−フッ化
物系材料層を界面層とすることにより、情報記録媒体の
量産立ち上げがより速く進行するという効果ももたらさ
れる。
【0320】(実施例17)実施例17では、群GMか
ら選択される元素の酸化物および群GLから選択される
元素のフッ化物以外の第三成分を含む酸化物−フッ化物
系材料層を有する情報記録媒体の性能を評価した。この
実施例では、第2の誘電体層6の材料を除いては実施例
4と同様にして、図3に示す情報記録媒体27を作製し
た。
【0321】第2の誘電体層6の形成に際しては、(Z
rO229(SiO229(Cr2321(LaF321
(mol%)から成るスパッタリングターゲット(直径
100mm、厚さ6mm)を成膜装置に取り付け、さら
にそのスパッタリングターゲット表面に、それぞれ10
mm×10mm×1mmの寸法を有する、Si34、G
e、C、Au、Ni、PdおよびAlのスパッタリング
チップを置いた。このスパッタリングチップを有するス
パッタリングターゲットを用いて、圧力0.13Paに
て、Arガス雰囲気中で高周波スパッタリングを実施し
て第2の誘電体層6を形成した。パワーは400Wであ
った。形成された層を分析したところ、当該層には(Z
rO229(SiO229(Cr2321(LaF321
が90モル%含まれ、第三成分として、Si34が3モ
ル%、Geが3モル%、Auが0.5モル%、Niが
0.5モル%、Pdが0.5モル%、およびAlが0.
5モル%が含まれていた。
【0322】比較のため、実施例1で作製したものと同
様の情報記録媒体31を比較サンプルとして作製した。
各サンプルの第2の誘電体層6の密着性を実施例1と同
様の条件で評価した。また、各サンプルの繰り返し書き
換え性能を、各サンプルにグルーブ記録およびランド記
録を実施し、グルーブ記録およびランド記録の繰り返し
回数を実施例1で記載した方法に従って求めることによ
り、評価した。評価結果を表19に示す。
【0323】
【表19】
【0324】表19に示すように、サンプル17−1
は、比較サンプルと同程度の密着性および繰り返し書き
換え性能を示した。また、サンプル17−1のPpおよ
びPbは比較サンプルよりも高いものの、Pp<14m
WおよびPb<7mWを満たし、十分に実用可能なもの
であった。この結果から、誘電体層が群GMから選択さ
れる元素の酸化物と群GLから選択される元素のフッ化
物とを合わせて90モル%以上含む場合には、良好な密
着性、良好な繰り返し書き換え性能、および良好な記録
感度が確保されることが確認された。
【0325】(実施例18)以上の実施例1〜17で
は、光学的手段によって情報を記録する情報記録媒体を
作製した。実施例18では、図8に示すような、電気的
手段によって情報を記録する情報記録媒体207を作製
した。これはいわゆるメモリである。
【0326】本実施例の情報記録媒体207は次のよう
にして作製した。まず、表面を窒化処理した、長さ5m
m、幅5mmおよび厚さ1mmのSi基板201を準備
した。この基板201の上に、Auの下部電極202を
1.0mm×1.0mmの領域に厚さ0.1μmで形成
した。下部電極202の上に、Ge38Sb10Te52(化
合物としてはGe8Sb2Te11と表記される)の相変化
部205を直径0.2mmの円形領域に厚さ0.1μm
となるように形成し、(ZrSiO440(Cr23
30(LaF330(mol%)の断熱部206を、0.
6mm×0.6mmの領域(但し相変化部205を除
く)に、相変化部205と同じ厚さとなるように形成し
た。さらに、Auの上部電極204を0.6mm×0.
6mmの領域に厚さ0.1μmで形成した。下部電極2
02、相変化部205、断熱部206および上部電極2
04はいずれも、スパッタリング法で形成した。
【0327】相変化部205を成膜する工程では、Ge
−Sb−Te系材料から成るスパッタリングターゲット
(直径100mm、厚さ6mm)を成膜装置に取り付
け、パワー100Wで、Arガスを導入して直流スパッ
タリングを行った。スパッタ時の圧力は約0.13Pa
とした。また、断熱部206を成膜する工程では、(Z
rSiO440(Cr2330(LaF330(mol
%)の組成を有する材料から成るスパッタリングターゲ
ット(直径100mm、厚さ6mm)を成膜装置に取り
付けて、約0.13Paの圧力下で、高周波スパッタリ
ングを行った。パワーは400Wとした。スパッタリン
グ中、Arガスを導入した。これら工程でのスパッタリ
ングは、相変化部205および断熱部206が互いに積
層しないように、成膜すべき面以外の領域をマスク治具
で覆って各々行った。相変化部205および断熱部20
6の形成の順序は問わず、いずれを先に行ってもよい。
【0328】相変化部205および断熱部206は記録
部203を構成する。相変化部205は本発明に言うと
ころの記録層に該当し、断熱部206は本発明に言うと
ころの酸化物−フッ化物系材料層に該当する。
【0329】尚、下部電極202および上部電極204
は、電極形成技術の分野において一般的に採用されてい
るスパッタリング方法によって成膜できるので、それら
の成膜工程についての詳細な説明は省略する。
【0330】以上のようにして作製した情報記録媒体2
07に電気的エネルギーを印加することによって相変化
部205にて相変化が起こることを、図9に示すシステ
ムにより確認した。図9に示す情報記録媒体207の断
面図は、図8に示す情報記録媒体207の線A−Bに沿
って厚さ方向に切断した断面を示している。
【0331】より詳細には、図9に示すように、2つの
印加部212を下部電極202および上部電極204に
Auリード線でそれぞれボンディングすることによっ
て、印加部212を介して電気的書き込み/読み出し装
置214を情報記録媒体(メモリ)207に接続した。
この電気的書き込み/読み出し装置214において、下
部電極202と上部電極204に各々接続されている印
加部212の間には、パルス発生部208がスイッチ2
10を介して接続され、また、抵抗測定器209がスイ
ッチ211を介して接続されていた。抵抗測定器209
は、抵抗測定器209によって測定される抵抗値の高低
を判定する判定部213に接続されていた。パルス発生
部208によって印加部212を介して上部電極204
および下部電極202の間に電流パルスを流し、下部電
極202と上部電極204との間の抵抗値を抵抗測定器
209によって測定し、この抵抗値の高低を判定部21
3で判定した。一般に、相変化部205の相変化によっ
て抵抗値が変化するため、この判定結果に基づいて、相
変化部205の相の状態を知ることができる。
【0332】本実施例の場合、相変化部205の融点は
630℃、結晶化温度は170℃、結晶化時間は130
nsであった。下部電極202と上部電極204の間の
抵抗値は、相変化部205が非晶質相状態では1000
Ω、結晶相状態では20Ωであった。相変化部205が
非晶質相状態(即ち高抵抗状態)のとき、下部電極20
2と上部電極204の間に、20mA、150nsの電
流パルスを印加したところ、下部電極202と上部電極
204の間の抵抗値が低下し、相変化部205が非晶質
相状態から結晶相状態に転移した。次に、相変化部20
5が結晶相状態(即ち低抵抗状態)のとき、下部電極2
02と上部電極204の間に、200mA、100ns
の電流パルスを印加したところ、下部電極202と上部
電極204の間の抵抗値が上昇し、相変化部205が結
晶相から非晶質相に転移した。
【0333】以上の結果から、相変化部205の周囲の
断熱部206として(ZrSiO440(Cr2330
(LaF330(mol%)の組成を有する材料を含む
層を用い、電気的エネルギーを付与することによって、
相変化部(記録層)にて相変態を生起させることがで
き、よって、情報記録媒体207が、情報を記録する機
能を有することが確認できた。
【0334】本実施例のように、円柱状の相変化部20
5の周囲に、誘電体である(ZrSiO440(Cr2
330(LaF330(mol%)の断熱部206を設け
ると、上部電極204および下部電極202との間に電
圧を印加することによって相変化部205に流れた電流
がその周辺部に逃げることを効果的に抑制し得る。その
結果、電流により生じるジュール熱によって相変化部2
05の温度を効率的に上昇させることができる。特に、
相変化部205を非晶質相状態に転移させる場合には、
相変化部205のGe38Sb10Te52を一旦溶融させて
急冷する過程が必要である。相変化部205のこの溶融
は、相変化部205の周囲に断熱部206を設けること
によって、より小さい電流で生起し得る。
【0335】断熱部206の(ZrSiO440(Cr2
330(LaF330(mol%)は、高融点であり、
熱による原子拡散も生じにくいので、情報記録媒体20
7のような電気的メモリに適用することが可能である。
また、相変化部205の周囲に断熱部206が存在する
と、断熱部206が障壁となって相変化部205は記録
部203の面内において電気的および熱的に実質的に隔
離される。このことを利用して、情報記録媒体207
に、複数の相変化部205を断熱部206で互いに隔離
された状態で設けて、情報記録媒体207のメモリ容量
を増やすこと、ならびにアクセス機能およびスイッチン
グ機能を向上させることが可能となる。あるいは、情報
記録媒体207自体を複数個つなぐことも可能である。
【0336】以上、種々の実施例を通じて本発明の情報
記録媒体について説明してきたように、光学的手段で記
録する情報記録媒体および電気的手段で記録する情報記
録媒体のいずれにも酸化物−フッ化物系材料層を用いる
ことができる。この酸化物−フッ化物系材料層を含む本
発明の情報記録媒体によれば、これまで実現されなかっ
た構成を実現でき、ならびに/または従来の情報記録媒
体よりも優れた性能が得られる。
【0337】
【発明の効果】本発明は、好ましくは記録層と直接接し
て形成する層を、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、Cr
およびSiから成る群GMより選ばれる少なくとも一つ
の元素の酸化物と、La、Ce、Pr、Nd、Gd、D
y、Ho、ErおよびYbから成る群GLより選ばれる
少なくとも一つの元素のフッ化物とを混合した材料で形
成することを特徴とする。この特徴によれば、従来の光
情報記録媒体が有していた、記録層と誘電体層との間の
界面層を無くして、層数を減少できるとともに、信頼性
が高く、優れた繰り返し書き換え性能および高記録感度
が確保された光情報記録媒体を実現することができる。
また、この酸化物−フッ化物系材料層を、電気的エネル
ギーを印加する情報記録媒体において、記録層を断熱す
るための誘電体層として使用すれば、小さい電気的エネ
ルギーで記録層の相変化を生じさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の光情報記録媒体の一例を示す部分断
面図である。
【図2】 本発明の光情報記録媒体の別の例を示す部分
断面図である。
【図3】 本発明の光情報記録媒体のさらに別の例を示
す部分断面図である。
【図4】 本発明の光情報記録媒体のさらに別の例を示
す部分断面図である。
【図5】 本発明の光情報記録媒体のさらに別の例を示
す部分断面図である。
【図6】 本発明の光情報記録媒体のさらに別の例を示
す部分断面図である。
【図7】 式(5)で表される材料の組成範囲を示す三
角図である。
【図8】 電気的エネルギーの印加により情報が記録さ
れる本発明の情報記録媒体の一例を示す模式図である。
【図9】 図8に示す情報記録媒体を使用するシステム
の一例を示す模式図である。
【図10】 従来の情報記録媒体の一例を示す部分断面
図である。
【符号の説明】
1,101,201 基板 2,102 第1の誘電体層 3,103 第1の界面層 4 記録層 5,105 第2の界面層 6,106 第2の誘電体層 7 光吸収補正層 8 反射層 9 接着層 10,110 ダミー基板 12 レーザ光 13 第1の記録層 14 第1の反射層 15 第3の誘電体層 16 中間層 17 第4の誘電体層 18 第2の記録層 19 第5の誘電体層 20 第2の反射層 21 第1情報層 22 第2情報層 23 グルーブ面 24 ランド面 25,26,27,28,29,30,31,207
情報記録媒体 202 下部電極 203 記録部 204 上部電極 205 相変化部(記録層) 206 断熱部(誘電体層) 208 パルス発生部 209 抵抗測定器 210,211 スイッチ 212 印加部 213 判定部 214 電気的書き込み/読み出し装置
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) G11B 7/26 531 B41M 5/26 X (72)発明者 西原 孝史 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内 (72)発明者 北浦 英樹 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内 (72)発明者 山田 昇 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内 Fターム(参考) 2H111 EA03 EA04 EA23 EA31 FA12 FA21 FB04 FB08 FB16 FB20 FB25 FB28 FB30 FB32 GA03 5D029 JA01 JB18 JB35 LA14 LB01 5D121 AA01 AA04 EE03 EE09

Claims (38)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基板および記録層を含み、当該記録層が
    光の照射または電気的エネルギーの印加によって、結晶
    相と非晶質相との間で相変態を生じる情報記録媒体であ
    って、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、CrおよびSi
    から成る群GMより選ばれる少なくとも一つの元素と、
    酸素原子と、La、Ce、Pr、Nd、Gd、Dy、H
    o、ErおよびYbから成る群GLより選ばれる少なく
    とも一つの元素と、フッ素原子とを含む酸化物−フッ化
    物系材料層をさらに含む情報記録媒体。
  2. 【請求項2】 前記酸化物−フッ化物系材料層が、下記
    の式: 【化1】M(原子%) (式中、Mは前記群GMより選ばれる少なくとも一つの
    元素を示し、Lは前記群GLより選ばれる少なくとも一
    つの元素を示し、H、I、JおよびKは、10≦H≦4
    5、24≦I≦76、0<J≦19、0<K≦48を満
    たす)で表される酸化物−フッ化物系材料を含む、請求
    項1に記載の情報記録媒体。
  3. 【請求項3】 前記酸化物−フッ化物系材料層が、前記
    群GMより選ばれる元素として、Ti、Zr、Hfおよ
    びTaから成る群GM1より選ばれる少なくとも一つの
    元素およびCrを含み、前記群GLより選ばれる元素と
    して、La、Ce、PrおよびNdから成る群GL1よ
    り選ばれる少なくとも一つの元素を含み、下記の式: 【化2】M1 Cr1 (原子%) (式中、M1は群GM1より選ばれる少なくとも一つの
    元素を示し、L1は群GL1より選ばれる少なくとも一
    つの元素を示し、P、Q、I、JおよびKは、0<P≦
    38、0<Q≦45、24≦I≦76、0<J≦19、
    0<K≦48を満たす)で表される材料を含む、請求項
    1に記載の情報記録媒体。
  4. 【請求項4】 前記酸化物−フッ化物系材料層が、前記
    群GMより選ばれる元素として、Ti、Zr、Hfおよ
    びTaから成る群GM1より選ばれる少なくとも一つの
    元素、Cr、およびSiを含み、前記群GLより選ばれ
    る元素として、La、Ce、PrおよびNdから成る群
    GL1より選ばれる少なくとも一つの元素を含み、下記
    の式: 【化3】M1 CrSi1 (原子%) (式中、M1は群GM1より選ばれる少なくとも一つの
    元素を示し、L1は群GL1より選ばれる少なくとも一
    つの元素を示し、R、S、T、U、VおよびWは、0<
    R≦28、0<S≦33、0<T≦19、25≦U≦7
    0、0<V≦18、0<W≦45を満たす)で表される
    材料を含む、請求項1に記載の情報記録媒体。
  5. 【請求項5】 前記酸化物−フッ化物系材料層が、
    (a)Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、CrおよびSi
    から成る群GMより選ばれる少なくとも一つの元素の酸
    化物と、(b)La、Ce、Pr、Nd、Gd、Dy、
    Ho、ErおよびYbから成る群GLより選ばれる少な
    くとも一つの元素のフッ化物を含む請求項1に記載の情
    報記録媒体。
  6. 【請求項6】 前記酸化物−フッ化物系材料層が、前記
    群GMより選ばれる元素の酸化物群と、前記群GLより
    選ばれる元素のフッ化物群を合わせて90モル%以上含
    む請求項5に記載の情報記録媒体。
  7. 【請求項7】 前記酸化物−フッ化物系材料層が、前記
    群GMより選ばれる元素の酸化物群を50モル%以上含
    む請求項5または請求項6に記載の情報記録媒体。
  8. 【請求項8】 前記酸化物−フッ化物系材料層が、前記
    群GMより選ばれる元素の酸化物として、Ti、Zr、
    HfおよびTaから成る群GM1より選ばれる少なくと
    も一つの元素の酸化物、およびCrの酸化物を含み、前
    記群GLより選ばれる元素のフッ化物として、La、C
    e、PrおよびNdから成る群GL1より選ばれる少な
    くとも一つの元素のフッ化物を含む請求項5に記載の情
    報記録媒体。
  9. 【請求項9】 前記酸化物−フッ化物系材料層が、前記
    群GMより選ばれる元素の酸化物として、Ti、Zr、
    HfおよびTaから成る群GM1より選ばれる元素の酸
    化物群と、Crの酸化物とを合わせて50モル%以上含
    む、請求項8に記載の情報記録媒体。
  10. 【請求項10】 前記酸化物−フッ化物系材料層が、前
    記群GMより選ばれる元素の酸化物として、Siの酸化
    物をさらに含む請求項9に記載の情報記録媒体。
  11. 【請求項11】 前記酸化物−フッ化物系材料層が、前
    記群GMより選ばれる元素の酸化物として、ZrO2
    HfO2およびTa25から選択される少なくとも1つ
    の酸化物、SiO2ならびにCr23を含み、前記群G
    Lより選ばれる元素のフッ化物として、LaF3を含む
    請求項5に記載の情報記録媒体。
  12. 【請求項12】 前記酸化物−フッ化物系材料層が、下
    記の式: 【化4】(D)X(SiO2Y(Cr23Z(La
    3100-X-Y-Z(mol%) (式中、DはZrO2、HfO2およびTa25から選択
    される少なくとも1つの酸化物を示し、X、YおよびZ
    は、20≦X≦70、10≦Y≦50、10≦Z≦6
    0、50≦X+Y+Z≦90を満たす)で表される材料
    を含む、請求項11に記載の情報記録媒体。
  13. 【請求項13】 前記酸化物−フッ化物系材料層が、前
    記群GMより選ばれる元素の酸化物として、ZrSiO
    4およびCr23を含み、前記群GLより選ばれる元素
    のフッ化物としてLaF3を含む請求項5に記載の情報
    記録媒体。
  14. 【請求項14】 前記酸化物−フッ化物系材料層が、下
    記の式: 【化5】(ZrSiO4A(Cr23B(LaF3
    100-A-B(mol%) (式中、AおよびBは、20≦A≦70、10≦B≦5
    0、50≦A+B≦90を満たす)で表される材料を含
    む、請求項13に記載の情報記録媒体。
  15. 【請求項15】 前記記録層において相変態が可逆的に
    生じる請求項1〜14のいずれか1項に記載の情報記録
    媒体。
  16. 【請求項16】 前記記録層が、Ge−Sb−Te、G
    e−Sn−Sb−Te、Ge−Bi−Te、Ge−Sn
    −Bi−Te、Ge−Sb−Bi−Te、Ge−Sn−
    Sb−Bi−Te、Ag−In−Sb−TeおよびSb
    −Teから選択される、いずれか1つの材料を含む請求
    項15に記載の情報記録媒体。
  17. 【請求項17】 前記記録層の膜厚が、15nm以下で
    ある請求項15または請求項16に記載の情報記録媒
    体。
  18. 【請求項18】 前記記録層を2つ以上備えている請求
    項1〜17のいずれか1項に記載の情報記録媒体。
  19. 【請求項19】 基板の一方の表面に、第1の誘電体
    層、記録層、第2の誘電体層、および反射層がこの順に
    形成されており、当該第1の誘電体層および当該第2の
    誘電体層のうち少なくとも1つの誘電体層が、前記酸化
    物−フッ化物系材料層であって、当該記録層と界面を接
    している請求項1〜17のいずれか1項に記載の情報記
    録媒体。
  20. 【請求項20】 基板の一方の表面に、第1の誘電体
    層、界面層、記録層、第2の誘電体層、光吸収補正層、
    および反射層がこの順に形成されており、当該第2の誘
    電体層が前記酸化物−フッ化物系材料層であって、当該
    記録層と界面を接している請求項1〜17のいずれか1
    項に記載の情報記録媒体。
  21. 【請求項21】 基板の一方の表面に、反射層、第2の
    誘電体層、記録層、および第1の誘電体層がこの順に形
    成されており、当該第1の誘電体層および当該第2の誘
    電体層のうち少なくとも1つの誘電体層が、前記酸化物
    −フッ化物系材料層であって、当該記録層と界面を接し
    ている請求項1〜17のいずれか1項に記載の情報記録
    媒体。
  22. 【請求項22】 基板の一方の表面に、反射層、光吸収
    補正層、第2の誘電体層、記録層、界面層、および第1
    の誘電体層がこの順に形成され、当該第2の誘電体層が
    前記酸化物−フッ化物系材料層であって、当該記録層と
    界面を接している請求項1〜17のいずれか1項に記載
    の情報記録媒体。
  23. 【請求項23】 基板の一方の表面に、少なくとも第2
    の記録層と第1の記録層がこの順に形成され、少なくと
    も1つの前記酸化物−フッ化物系材料層が当該第1の記
    録層または当該第2の記録層と界面を接して形成されて
    いる請求項1〜17のいずれか1項に記載の情報記録媒
    体。
  24. 【請求項24】 基板の一方の表面に、少なくとも第2
    の反射層、第5の誘電体層、第2の記録層、第4の誘電
    体層、中間層、第3の誘電体層、第1の反射層、第2の
    誘電体層、第1の記録層、および第1の誘電体層がこの
    順に形成され、当該第1の誘電体層、当該第2の誘電体
    層、当該第4の誘電体層、および当該第5の誘電体層の
    うち少なくとも1つの誘電体層が前記酸化物−フッ化物
    系材料層であって、当該第1の記録層または当該第2の
    記録層と界面を接して形成されている、請求項1〜17
    のいずれか1項に記載の情報記録媒体。
  25. 【請求項25】 基板および記録層を含み、Ti、Z
    r、Hf、Nb、Ta、CrおよびSiから成る群GM
    より選ばれる少なくとも一つの元素と、酸素原子と、L
    a、Ce、Pr、Nd、Gd、Dy、Ho、Erおよび
    Ybから成る群GLより選ばれる少なくとも一つの元素
    と、フッ素原子とを含む酸化物−フッ化物系材料層をさ
    らに含む情報記録媒体の製造方法であって、当該酸化物
    −フッ化物系材料層を、群GMより選ばれる少なくとも
    一つの元素と、酸素原子と、群GLより選ばれる少なく
    とも一つの元素と、フッ素原子とを含むスパッタリング
    ターゲットを用いて、スパッタリング法で形成する工程
    を含む、情報記録媒体の製造方法。
  26. 【請求項26】 前記スパッタリングターゲットが下記
    の式: 【化6】Mi(原子%) (式中、Mは前記群GMより選ばれる少なくとも一つの
    元素を示し、Lは前記群GLより選ばれる少なくとも一
    つの元素を示し、h、i、jおよびkは、10≦h≦4
    5、24≦i≦76、0<j≦19、0<k≦48を満
    たす)で表される材料を含む請求項25に記載の情報記
    録媒体の製造方法。
  27. 【請求項27】 前記スパッタリングターゲットが前記
    群GMより選ばれる元素として、Ti、Zr、Hfおよ
    びTaから成る群GM1より選ばれる少なくとも一つの
    元素およびCr含み、前記群GLより選ばれる元素とし
    て、La、Ce、PrおよびNdから成る群GL1より
    選ばれる少なくとも一つの元素を含み、下記の式: 【化7】M1 Cr1 (原子%) (式中、M1は群GM1より選ばれる少なくとも一つの
    元素を示し、L1は群GL1より選ばれる少なくとも一
    つの元素を示し、p、q、i、jおよびkは、0<p≦
    38、0<q≦45、24≦i≦76、0<j≦19、
    0<k≦48を満たす)で表される材料を含む、請求項
    25に記載の情報記録媒体の製造方法。
  28. 【請求項28】 前記スパッタリングターゲットが、前
    記群GMより選ばれる元素として、Ti、Zr、Hfお
    よびTaから成る群GM1より選ばれる少なくとも一つ
    の元素、CrおよびSiを含み、前記群GLより選ばれ
    る元素として、La、Ce、PrおよびNdから成る群
    GL1より選ばれる少なくとも一つの元素を含み、下記
    の式: 【化8】M1 CrSi1 (原子%) (式中、M1は群GM1より選ばれる少なくとも一つの
    元素を示し、L1は群GL1より選ばれる少なくとも一
    つの元素を示し、r、s、t、u、vおよびwは、0<
    r≦28、0<s≦33、0<t≦19、25≦u≦7
    0、0<v≦18、0<w≦45を満たす)で表される
    材料を含む、請求項25に記載の情報記録媒体の製造方
    法。
  29. 【請求項29】 前記スパッタリングターゲットが、
    (a)Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、CrおよびSi
    から成る群GMより選ばれる少なくとも一つの元素の酸
    化物と、(b)La、Ce、Pr、Nd、Gd、Dy、
    Ho、ErおよびYbから成る群GLより選ばれる少な
    くとも一つの元素のフッ化物とを含む、請求項25に記
    載の情報記録媒体の製造方法。
  30. 【請求項30】 前記スパッタリングターゲットが、前
    記群GMより選ばれる元素の酸化物群と、前記群GLよ
    り選ばれる元素のフッ化物群とを合わせて90モル%以
    上含む請求項29に記載の情報記録媒体の製造方法。
  31. 【請求項31】 スパッタリングターゲットが、前記群
    GMより選ばれる元素の酸化物群を50モル%以上含
    む、請求項29または請求項30に記載の情報記録媒体
    の製造方法。
  32. 【請求項32】 前記スパッタリングターゲットが、前
    記群GMより選ばれる元素の酸化物として、Ti、Z
    r、HfおよびTaから成る群GM1より選ばれる少な
    くとも一つの元素の酸化物およびCrの酸化物を含み、
    前記群GLより選ばれる元素のフッ化物として、La、
    Ce、PrおよびNdから成る群GL1より選ばれる少
    なくとも一つの元素のフッ化物を含む、請求項29に記
    載の情報記録媒体の製造方法。
  33. 【請求項33】 前記スパッタリングターゲットが、前
    記群GMより選ばれる元素の酸化物として、Ti、Z
    r、HfおよびTaから成る群GM1より選ばれる元素
    の酸化物群と、Crの酸化物とを合わせて50モル%以
    上含む、請求項32に記載の情報記録媒体の製造方法。
  34. 【請求項34】 前記スパッタリングターゲットが、前
    記群GMより選ばれる元素の酸化物として、Siの酸化
    物をさらに含む請求項33に記載の情報記録媒体の製造
    方法。
  35. 【請求項35】 前記スパッタリングターゲットが、前
    記群GMより選ばれる元素の酸化物として、ZrO2
    HfO2およびTa25から選択される少なくとも1つ
    の酸化物、SiO2ならびにCr23を含み、前記群G
    Lより選ばれる元素のフッ化物としてLaF3を含む、
    請求項29に記載の情報記録媒体の製造方法。
  36. 【請求項36】 前記スパッタリングターゲットが下記
    の式: 【化9】(D)x(SiO2y(Cr23z(La
    3100-x-y-z(mol%) (式中、DはZrO2、HfO2およびTa25から選択
    される少なくとも1つの酸化物を示し、x、yおよびz
    は、20≦x≦70、10≦y≦50、10≦z≦6
    0、50≦x+y+z≦90を満たす)で表される材料
    を含む、請求項35に記載の情報記録媒体の製造方法。
  37. 【請求項37】 前記スパッタリングターゲットが、前
    記群GMより選ばれる元素の酸化物としてZrSiO4
    およびCr23を含み、前記群GLより選ばれる元素の
    フッ化物としてLaF3を含む、請求項29に記載の情
    報記録媒体の製造方法。
  38. 【請求項38】 前記スパッタリングターゲットが下記
    の式: 【化10】(ZrSiO4a(Cr23b(LaF3
    100-a-b(mol%) (式中、aおよびbは、20≦a≦70、10≦b≦5
    0、50≦a+b≦90を満たす)で表される材料を含
    む、請求項37に記載の情報記録媒体の製造方法。
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