JP4141467B2 - 球状シリコン単結晶の製造方法及び装置 - Google Patents
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Description
地球上のエネルギーバランスを崩すことのない安全な1次エネルギー源の利用を日本において促進させるためには、太陽電池のさらなる導入、特に、現在の太陽電池関連技術における経済性の向上、及び次世代をにらんだ太陽電池の技術分野における技術革新が重要な鍵となると考えられる。この分野において既に進められている試みとして、多結晶ウェハを使用する既存の技術に代えて、直径1mm程度の球状シリコン単結晶を育成し、その表面に回路を作製することにより次世代太陽電池を製造することが検討されている。球状シリコン単結晶を使用する利点としては、(1)設備投資を小規模なものに抑えることが可能となること、(2)従来法では必須のウェハの切断工程で発生していたシリコン切削くずの発生を排除することができること、(3)シリコン単結晶が球状であることを利用してシリコン単結晶が3次元的に配置されたデバイスを製造することが可能となること等が挙げられる。
しかしながら、このプロセスは2段階を必要とするものであるため、生産性の点で問題があった。
これら従来技術の手法はいずれも、シリコン等の半導体材料あるいは金属材料が浮遊又は落下している間にこれを凝固させて球状単結晶を得ようとするものであるため、材料の凝固態様は無容器凝固となる。この無容器凝固法による球状単結晶の育成法と、従来のCzochralski(CZ)法による単結晶インゴットの育成法とを、結晶成長の観点から対比すると、後者では固液界面での温度勾配が正であるのに対し、前者では固液界面前方の融液が大きく過冷しているため、固液界面での温度勾配は負となる。両者の間のこの相違は、結晶育成の際に採用する制御パラメータの違いに現れる。すなわち、CZ法の場合、外部から引き上げ速度を与えることにより、成長速度を制御し、温度勾配や結晶の回転速度を最適化することにより平滑な界面での単結晶化を達成している。一方、無容器凝固法では、過冷度と成長速度には一意の関係があるため、外的に過冷度を制御することにより、成長速度を制御することができる。しかしながら、無容器凝固法では、容器壁という主要な不均一核生成サイトが存在しないため、融液は大きく過冷し、負の温度勾配のため成長界面は不安定化し、一般にデンドライト成長することとなる。このように、無容器凝固法は従来のCZ法とは著しく異なる技術であるため、CZ法についてこれまで多くの研究者により築き上げられてきた技術を無容器凝固法による球状単結晶化に転用することは、不可能である。
上記のような無容器凝固法では、落下中のシリコン等の半導体材料あるいは金属材料の試料液滴において,沢山のデンドライトが試料表面を覆うように成長し、次いで試料液滴は、成長した沢山のデンドライトを核として、中心に向かって凝固する。このため、試料は多結晶化することとなる。
特開2002-348194号公報には、単一シリコン液滴を電磁浮遊法により浮遊させる場合において、外部からの種付けをすることにより、任意の過冷度で結晶化させることができ、低過冷度で結晶化させることによる単結晶化が可能である旨記載されている。この手法のように液滴を噴射する場合において、デンドライト成長による多結晶化を防ぐため、ノズル下部に核生成を促す板等を置くなど、強制的に小さな過冷度で凝固を促進させる研究が進められている。しかしながら、噴射された大量の液滴すべてに対して強制的に核生成を誘起する方法は確立されていないのが現状である。
従来技術のように、外部から液滴に不純物を導入して液滴を結晶化させた場合、不純物の表面で核生成が起こるが、不純物とシリコンは異なる物質であるため、試料液滴の過冷却は避けられない。
本発明の場合、試料液滴の内部には、同一物質の固相が存在することとなるため、融点で過冷することなく融点で単結晶を成長させることができる。
本発明の製法において、容器内に保持したシリコン材料を加熱して溶融する場合、シリコン材料をシリコンの融点またはそれを超える温度まで加熱することにより、材料全体を完全に溶融させることができる。
次いで、本発明の製法では、溶融したシリコン材料のうち所望の割合を凝固させる。これは、溶融したシリコン材料を融点付近の温度に所定の時間だけ保持することにより達成される。溶融したシリコン材料を融点付近の温度に保持する時間を調節することにより、任意の割合で溶融したシリコン材料を部分的に凝固させることができる。例えば、溶融したシリコン材料の30%を凝固させるのが好ましい。
さらに、本発明の製法では、凝固部分を含む溶融シリコン材料を容器から気相中へ落下させるために、容器上方からArガスなどの不活性ガスを供給して、溶融シリコン材料の試料液滴を容器の下部に設けられたノズルから噴射させることができる。
本発明の装置において、形成される温度勾配は、高温部分ではシリコン材料が完全に溶融し、低温部分ではシリコン材料の凝固が開始するようなものであればよい。
また、1段階で球状シリコン単結晶を得ることができるため、設備を縮小化することができるとともに、凝固時間を短縮することにより生産性の向上を図ることができる。
装置1は、シリコンインゴットを収容することのできる窒化ホウ素坩堝2を備えている。窒化ホウ素坩堝2の周囲には、RFコイル3が配置されており、このRFコイル3に高周波を印加することにより、窒化ホウ素坩堝2の外側面に配置したカーボン4を過熱することができる。窒化ホウ素坩堝2に設けられた熱電対5によって温度を監視しながら、加熱されたカーボン4からの伝熱により、窒化ホウ素坩堝2内に収容されたシリコンインゴットを溶融する。
本発明の装置1では、RFコイル3とカーボン4の配置によって、溶融シリコン材料中に高温領域21から低温領域22への温度勾配を形成することができる。
本発明の装置1は、さらに、溶融シリコン材料を攪拌するための窒化ホウ素棒6を備えている。この窒化ホウ素棒6は、ギア7を介してモータ8に連結されている。また、窒化ホウ素坩堝2の上方にはガス供給口9が設けられており、ここからArガスなどの不活性ガスを供給することにより、窒化ホウ素坩堝2の下部に設けられたノズルから、試料液滴10を噴射することができる。
次に、溶融したシリコン材料を融点付近の温度に所定の時間だけ保持して、部分的に凝固させる。溶融シリコン材料中、凝固させる部分の割合は、例えば図2に示すように溶融シリコン材料を融点付近の温度に保持する時間を調節することにより、任意の割合で調節することができる。すなわち、図2において、融点TMを超える温度で溶融したシリコン材料につき、これを融点TMに保持して完全に凝固させるのに要する時間がt4−t0であるとした場合、時間t1まで保持した段階での凝固部分の割合fは、f=(t1−t0)/(t4−t0)となると予測される。液滴の粘性を適当な範囲のものとする観点から、例えば、溶融したシリコンインゴットの30%を凝固させるのが好ましい。
さらに、所望により、部分的に凝固させたシリコン材料を再度加熱して、窒化ホウ素坩堝2の内壁に付着した凝固部分を内壁から剥離させる。
そして、凝固部分を含む溶融シリコン材料を窒化ホウ素坩堝2から気相中へ落下させるために、容器上方に設けられたガス供給口9からArガスなどの不活性ガスを供給して、溶融シリコン材料の試料液滴を容器の下部に設けられたノズルから噴射させる。ノズルの大きさは、通常、直径1mm程度である。
[比較例]
図3(a)に示すように、融点TM(1414℃)を超える温度(1505℃)までシリコンを加熱して溶融し、溶融シリコンを過加熱状態で噴射した。
[実施例]
図3(b)に示すように、まず坩堝内で融点TMを超える温度(1520℃)でシリコンを完全溶融させた後、加熱電源の出力を下げて、シリコンを融点TMまで冷却した。次いで、シリコンを融点TMで2秒弱保持した後、再度過熱して坩堝壁あるいはノズル付近で一部結晶化したシリコンを溶融させ、融液を噴射した。
図4(a)、(b)及び(c)は、結晶性の異なる球状シリコン試料について、その表面写真(上段)及び試料断面の後方散乱回折結晶方位マップ(下段)を示したものである。(a)、(b)、(c)の順で結晶性は悪くなっている。これまでの凝固組織と過冷度に関する基礎研究の結果から,凝固前の過冷度の大きさは,(a)から(c)へと大きくなっていることが知られている(例えば、Liu, R. P., Volkmann, T., and Herlach, D. M., “Undercooling and solidification of Si by electromagnetic levitation”, Acta Mater., 49, 439-444 (2001)、Jian, J., Nagashio, K. and Kuribayashi, K., “Direct observation of the crystal growth transition in undercooled silicon”, Metall. Mater. Trans. A, 33A, 2947-2853 (2002)、及びNagashio, K., Okamoto, H., Kuribayashi, K. and Jinbo, I., “Fragmentation of facet dendrites in solidification of undercooled B-doped Si melt”, Metall. Mater. Trans. A. (2005 (in press))参照)。(a)はほとんど過冷することなく融点で凝固しているのに対し、(b)では100K程度,(c)では200Kを超える過冷度になっている。
上記比較例及び実施例で得られた球状シリコンのうち、355〜600μmの粒径を有するものについて、図4(a)〜(c)に示されているような球状シリコンが占める割合を、比較例及び実施例について、それぞれ評価した。比較例についての結果を図5(I)に、実施例についての結果を図5(II)に示す。円グラフ中の数字は、図4(a)〜(c)に示されているような球状シリコンのそれぞれ場合における割合を、百分率で示したものである。結果から、本発明によれば、図4(a)の結晶性の高い球状シリコンが効率良く得られることがわかる。
2 窒化ホウ素坩堝
3 RFコイル
4 カーボン
5 熱電対
6 窒化ホウ素棒
7 ギア
8 モータ
9 ガス供給口
10 試料液滴
21 高温領域
22 低温領域
61 Arガス
62 RFコイル
63 溶融シリコン
64 カーボン・サセプタ
65 液滴
66 試料
67 単結晶
Claims (5)
- 容器内に保持したシリコン材料を加熱して、溶融する工程、
溶融したシリコン材料を融点付近の温度に所定の時間だけ保持して、部分的に凝固させる工程、及び、
凝固部分を含む溶融シリコン材料を、前記容器から気相中へ落下させる工程、
を含む、球状シリコン単結晶の製造方法。 - さらに、
前記部分的に凝固させた溶融シリコン材料を加熱して、凝固部分の一部を溶融させる工程、
を含む、請求項1に記載の製造方法。 - さらに、
前記部分的に凝固させた溶融シリコン材料を攪拌して、凝固部分を破砕する工程、
を含む、請求項1又は2に記載の製造方法。 - シリコン材料を保持する容器、
容器内に保持したシリコン材料を加熱して溶融する加熱手段、
溶融シリコン材料を攪拌する攪拌手段、及び、
容器内の溶融シリコン材料を気相中へ落下させるノズル、
を備え、
前記容器内の溶融シリコン材料において温度勾配が形成され、該溶融シリコン材料が部分的に凝固するようになった、球状シリコン単結晶の製造装置。 - 前記容器は、少なくともその内壁の一部が窒化ホウ素製の坩堝であり、
前記攪拌手段は窒化ホウ素棒を含む、
請求項4に記載の球状シリコン単結晶の製造装置。
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