JP4139126B2 - 抵抗体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、可変抵抗器やスイッチその他の電子入力装置に用いられる抵抗体の製造方法に係り、特に、抵抗体の表面と摺動子や接触子との接触抵抗を小さくできる抵抗体の製造方法を提供することを目的としている。
【0002】
【従来の技術】
可変抵抗器やスイッチの接点などに用いられる抵抗体は、基板上に所定の厚さで成膜されている。この抵抗体の製造方法は、熱硬化性のバインダー樹脂と、前記バインダー樹脂を溶解させる溶媒と、カーボンブラックなどの導電性フィラーとが混合された混合溶液を、基板の表面にスクリーン印刷などの手段で塗布する。そして、乾燥工程によって前記溶媒を揮発させ、その後に焼成して前記バインダー樹脂を硬化させる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
前記抵抗体の抵抗特性は、前記抵抗体を形成するバインダー樹脂内での導電フィラーの量によって決められるとともに、前記バインダー樹脂内での導電フィラーの分散状態によっても影響を受ける。同じパターンで形成された抵抗体では、導電フィラーの含有量が多いほど全体の抵抗値は低くなる。また同じ量の導電フィラーを含む抵抗体の場合では、バインダー樹脂内において導電フィラーの分散度が高い方が全体の抵抗値が大きくなる。すなわち、導電フィラーの分散度が高いと、導電フィラー間での電流のパスが分散し全体として抵抗値が大きくなる。逆にバインダー樹脂内において導電フィラーが集合して凝集している部分が多くなると、抵抗体内での電流のパスが形成されやすくなって、全体の抵抗値は小さくなる。
【0004】
ここで、前記抵抗体の表面に摺動子を摺動させ、または接触子を接触させるような電子入力装置においては、前記抵抗体の全体の抵抗値が大きいと、その分だけ抵抗体と摺動子または抵抗体と接触子との接触抵抗値が大きくなり、前記抵抗体によって設定される抵抗値に対して前記接触抵抗値の部分が大きな誤差として加算されてしまう。
【0005】
例えば、小型で分解能の高い摺動式の可変抵抗器を構成しようとする場合に、抵抗体全体の抵抗値を大きくしておかないと、摺動子を短距離だけ移動させる際の抵抗値の変化量が小さくなり、また可変抵抗器から得られる最大抵抗値と最小抵抗値との間の幅も小さくなってしまい、高い分解能を確保することができない。しかし、このように可変抵抗器の抵抗体の全体の抵抗を高く設定すると、前記接触抵抗が高くなるため、摺動子を移動させたときに設定される抵抗値に対する前記接触抵抗による誤差分の比率が大きくなり、摺動子の移動位置とこれに対応する抵抗値との対応を高精度に設定することが難しくなる。
【0006】
逆に、抵抗体の全体の抵抗値を小さくして前記接触抵抗を小さくした場合には、小型の可変抵抗器の場合に、最大抵抗値と最小抵抗値との幅が小さくなりすぎて、充分な分解能を得ることができなくなる。
【0007】
本発明は上記従来の課題を解決するものであり、抵抗体の内部の抵抗よりも表面の抵抗を小さくして、全体の抵抗値を大幅に下げることなく、摺動子や接触子との接触抵抗を小さくすることのできる抵抗体および抵抗体の製造方法を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の抵抗体の製造方法は、
バインダー樹脂を溶かす能力の高い良溶媒と、前記良溶媒よりも前記能力が低く且つ前記良溶媒よりも揮発性の低い貧溶媒と、熱硬化性のバインダー樹脂と、導電フィラーとを含む混合溶液を、所定のパターンで印刷する工程と、
前記混合溶液を乾燥させる工程と、
焼成して、前記バインダー樹脂を硬化させる工程と、を有し、
前記貧溶媒の沸点は前記良溶媒の沸点より高く、
前記良溶媒が、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルのうちのいずれか1種または2種以上であり、
前記貧溶媒が、テルピネオール、2−フェノキシエタノール、2−ベンジルオキシエタノールのうちのいずれか1種または2種以上であり、
前記乾燥工程は、前記良溶媒の沸点よりも高く前記貧溶媒の沸点よりも低い温度で行うことを特徴とするものである。
本発明では良溶媒と貧溶媒とを混合して使用するので、前記乾燥工程において、抵抗体の表面では、良溶媒が先に揮発して貧溶媒が支配的になる。そのため、焼成後の抵抗体では、その表面において導電フィラーの分散度が低くなって摺動子や接触子との接触抵抗を低下できる。また抵抗体の内部では、前記良溶媒および貧溶媒が揮発し難く、長い時間両溶媒が存在しているため、導電フィラーの分散度が高くなる。したがって焼成後の抵抗体では内部の抵抗を大きくでき、抵抗体全体の抵抗値を大きくできる。
また、上記においては、前記良溶媒と前記貧溶媒の沸点の差が15℃以上30℃以下であることが好ましい。
また、本発明では、前記抵抗体の表面と、前記抵抗体の内部で且つ前記表面と平行な切断面とを、同じ面積に区画した区画領域で比較したとき、前記バインダー樹脂内での前記導電フィラーの分散度は、前記切断面よりも前記表面の方が低いものとすることができる。
【0009】
ここで、本明細書では、前記導電フィラーの分散度の高低を以下のように定義することができる。
【0010】
第1には、前記区画領域で比較したとき、前記導電フィラーが凝集している複数の凝集体のうちの最大のものの寸法は、前記表面の方が前記切断面よりも大きいことである。
【0011】
第2には、前記区画領域で比較したとき、前記導電フィラーが存在していない部分に描くことができる複数の仮想円のうちの最大のものの直径は、前記表面の方が前記切断面よりも大きいことである。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の抵抗体は、所定の抵抗値を有しており、この抵抗体を用いた電子入力装置は、前記抵抗体に摺動子や接触子が接触するものとして構成される。前記摺動子を用いるものは、長方形パターンまたはリング状パターンに形成された前記抵抗体に前記摺動子が摺動することで、抵抗体の端部から前記摺動子の位置に相当する抵抗値が可変のものとして設定されるものである。または前記接触子を使用するものは、前記抵抗体が所定の抵抗値を有し、前記接触子が接触したときに、前記抵抗体の設定抵抗値が読み出されるものである。
【0018】
図8は本発明の実施の形態の抵抗体が使用される電子入力装置の一例として直線型の可変抵抗器を示す斜視図である。
【0019】
前記抵抗体1は、基板2の表面に形成されている。この抵抗体1は所定の厚みを有し、且つ一定の幅寸法のストライプ形状である。前記抵抗体1の縦方向に位置する両端部には、前記抵抗体1よりも比抵抗の小さい導電材料で形成された電極3と4が導通して設けられている。前記抵抗体1の表面には摺動子5が接触している。
【0020】
この摺動子5は、前記抵抗体1よりも比抵抗の小さいものであり、例えばりん青銅板の表面に銀メッキを施したものである。この摺動子5の接触部5aは筒状に曲げ成形されており、接触部5aが抵抗体1の表面に接触した状態で、抵抗体1の表面を縦方向に摺動する。そして、電極3,4と前記摺動子5との間の設定抵抗値が、前記摺動子5の移動位置に応じて変化する。
【0021】
図1Aは、前記抵抗体1の表面のTEM写真であり、図1Bは、前記抵抗体の内部で前記表面と平行な切断面のTEM写真である。また、図2Aは、図1AのTEM写真において、右下角部の2μm×2μmの区画領域での導電フィラーの分散状態を転写した模式図である。同様に、図2Bは、図1BのTEM写真において、右下角部の2μm×2μmの区画領域での導電フィラーの分散状態を転写した模式図である。
【0022】
図1A,BのTEM写真を撮影した抵抗体1は、バインダー樹脂の内部に導電性フィラーが含有された状態で前記バインダーが硬化したものである。前記バインダー樹脂は熱硬化性であり、例えばポリイミド系樹脂(以下、樹脂という)である。また、図1に示す抵抗体の導電フィラーは、カーボンブラックであり、前記樹脂と前記カーボンブラックとが、質量比で、85:15の割合で混合されたものである。
【0023】
図1A,BのTEM写真を撮影した抵抗体1は、膜厚が10μmであり、前述のように図1Aは、その表面、図1Bの切断面は、前記表面から膜内方へ0.2μm離れた位置である。
【0024】
図1A,Bおよび図2A,Bを比較すると、樹脂11内でのカーボンブラック12の分散状態が相違しており、抵抗体1の表面よりも、切断面の方が、カーボンブラック12の分散度が高くなっている。
【0025】
ここで、本明細書では、カーボンブラック12(導電フィラー)の分散度の高低を、以下のように定義する。
【0026】
第1には、前記区画領域で比較したとき、カーボンブラックが凝集している複数の凝集体のうちの最大のものの寸法は、前記表面の方が前記切断面よりも大きいことである。図2Aでは、前記区画領域でのカーボンブラック12の凝集体のうちの最大のものを符号13で示しており、図2Bでは、前記区画領域でのカーボンブラック12の凝集体のうちの最大のものを符号14で示している。また凝集体13の幅寸法をxa、yaで示し、凝集体14の幅寸法をxb,ybで示している。切断面の分散度よりも表面の分散度が高いという状態は、xa>xbと、ya>ybの少なくとも一方の条件を満たすことを意味し、好ましくは、xa>xbと、ya>ybの少なくとも一方の倍率が1.5倍以上である。
【0027】
第2には、前記区画領域で比較したとき、前記導電フィラーが存在していない部分に描くことができる複数の仮想円のうちの最大のものの直径は、前記表面の方が前記切断面よりも大きいことである。図2Aでは、前記仮想円を符号15で示し、図2Bでは、前記仮想円を符号16で示している。図2から、仮想円16の直径が仮想円15の直径よりも大きいことを理解できる。好ましくは、前記仮想円の直径の大きさの比率は1.5倍以上で、さらに好ましくは2倍以上である。
【0028】
なお、前記表面での区画領域と、前記切断面での区画領域は、抵抗体の平面において同じ位置で比較することが好ましいが、同じ抵抗体内であれば、前記区画領域は異なる位置で且つ同じ面積の領域において比較してもよい。
【0029】
この抵抗体1は、図1A、図2Aに示すように、表面においてカーボンブラック12の分散度が低く、カーボンブラックが凝集しているため、凝集体を介して電流のパスが形成されやすくなっている。よって抵抗体1の表面では抵抗値が低く、よって前記表面と前記摺動子5との接触抵抗値が小さくなる。一方において、図1B、図2Bに示すように、抵抗体1の内部では、カーボンブラック12が均一に分散しているため、カーボンブラック間の電流のパスが分散しており、よって抵抗値が大きくなっている。
【0030】
すなわち、この抵抗体1では、全体の抵抗値を大きくしながら、逆に言えば全体の抵抗値を大幅に低減させることなく、表面の抵抗値を小さくすることができる。したがって図8に示すような可変抵抗器において、抵抗体1の縦方向の寸法を小さくしても、電極3と電極4との間の全体の抵抗値を高くできる。また摺動子5が移動したときの移動量に対する抵抗値の変化量を大きくできることになる。しかも、抵抗体1と摺動子5との間の接触抵抗を小さくできるため、摺動子5を摺動させたときの、その摺動位置と抵抗値(出力値)との関係のばらつきを小さくでき、高分解能で高性能な可変抵抗器を得ることができる。
【0031】
次に、図1および図2に示すように、表面と膜内部とでカーボンブラック12(導電フィラー)の分散度が相違する抵抗体の製造方法について説明する。
【0032】
前記抵抗体1は、混合溶液を基板2の上にスクリーン印刷し、乾燥させて焼成することにより製造することができる。
【0033】
前記混合溶液は、前記ポリイミド系樹脂と、前記樹脂を溶解させる溶媒と、前記カーボンブラックとが混合されたものである。ここで、前記抵抗体1を製造するために、前記樹脂を溶かす能力の高く且つ揮発性の高い低沸点の良溶媒と、前記良溶媒よりも樹脂を溶かす能力が低く且つ前記良溶媒よりも揮発性が低い高沸点の貧溶媒の双方を用いている。
【0034】
図1のTEM写真に示す抵抗体1を製造した混合溶液は、前記良溶媒として、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(H5C2OC 2 H 4 OC 2 H 4 OH;沸点202℃、商品名=エチルカルビトール)を用い、貧溶媒として、テルピネオール(沸点219℃)を用いた。前記良溶媒と貧溶媒を質量比で1:1に混合し、前記両溶媒の混合物と樹脂とを質量比で1:1とし、さらに前述した割合でカーボンブラックを混合した。
【0035】
前記混合溶液を、耐熱性および絶縁性に優れたセラミック基板やガラスエポキシ基板などの基板2の表面にスクリーン印刷などの手段によってパターン形成する。印刷後の基板を乾燥炉の中に入れ、所定の温度で所定の時間乾燥させ、この乾燥により前記溶媒を揮発させて、前記混合溶液を固化させる。さらに前記乾燥温度よりも高い温度により焼成すると、熱硬化性樹脂である前記樹脂を架橋し、高分子状態で硬化させられる。その結果、内部にカーボンブラックが分散した前記抵抗体1を得ることができる。
【0036】
このように混合溶液を印刷した後の前記乾燥工程において、成膜された混合溶液の表面では、沸点の低い良溶媒が先に揮発し、前記表面では沸点の高い貧溶媒が長時間支配的に存在する。この貧溶媒は前記樹脂(バインダー樹脂)を溶かす能力が低いものであり、混合溶液内に溶融している樹脂のパーティクルサイズが大きく、またカーボンブラックの分散状態も悪くなる。したがって焼成後には、図1Aに示すように抵抗体1の表面においてカーボンブラックの分散度が悪くなる。
【0037】
一方、成膜された混合溶液の内部は、空気から遮断されているため、良溶媒と貧溶媒の双方の揮発が前記表面に比べて遅れることとなり、長時間に渡って内部に良溶媒と貧溶媒の双方が存在している。したがって前記良溶媒の働きによって、混合溶液内での樹脂の分散状態が良くなり、混合溶液内での樹脂のパーティクルサイズが小さくなり、カーボンブラックの分散状態が良くなる。よって、前記貧溶媒と良溶媒が揮発して乾燥されたときには、内部においてはカーボンブラックが均一に分散したものとなる。
【0038】
よって、乾燥後に焼成され樹脂が硬化した時点で、抵抗体1の表面では図1Aに示すように、カーボンブラックの分散度が低くなって抵抗値が低く、抵抗体1の内部では、図1Bに示すように、カーボンブラックの分散度が高くなって抵抗値を高く保つことができる。
【0039】
ここで、図3と図4により、良溶媒と貧溶媒との樹脂およびカーボンブラックに対する分散機能の違いを説明する。
【0040】
図3は、良溶媒であるジエチレングリコールモノエチルエーテル(H5C2OC 2 H 4 OC 2 H 4 OH;沸点202℃、商品名=エチルカルビトール)と、樹脂を質量比で1:1とし、これにカーボンブラックを混合した比較例としての混合溶液のTEM写真、図4は貧溶媒であるテルピネオールと、樹脂を質量比で1:1とし、これにカーボンブラックを混合した比較例としての混合溶液のTEM写真である。
【0041】
図3と図4を比較すると、図3のように良溶媒のみを用いた混合溶液内では、混合溶液内において、樹脂と共に、カーボンブラックが均一に分散していることが解り、図4に示すように貧溶媒のみを用いた混合溶液内では、カーボンブラックが樹脂にまとわり付く状態で、凝集した状態で存在していることが解る。
【0042】
前記実施の形態のように、良溶媒と貧溶媒を混合して使用することにより、抵抗体1の表面を図4に示す貧溶媒の溶解機能を支配的とし、内部においては図3に示す良溶媒の溶解機能を支配的とする構造が可能になる。
【0043】
さらに、図5は比較例を示している。
図5の比較例では、図3に示すジエチレングリコールモノエチルエーテルと、樹脂を質量比で1:1とし、これにカーボンブラックを混合した混合溶液を用いて、厚み10μmの膜をパターン形成し、乾燥させた後に焼成して抵抗体を得た。
【0044】
図5Aは、抵抗体の表面のTEM写真、図5Bは、図1Bと同じ位置の切断面のTEM写真である。図5に示すように、この比較例の抵抗体では、表面と内部の双方においてカーボンブラックが均一に分散しており、表面と内部の双方において抵抗値が高くなっていることが解る。よって図5に示す抵抗体を用いた可変抵抗器では、最大抵抗値を高くできるが、摺動子との接触抵抗が大きくなる。
【0045】
なお前記良溶媒としては、アルコール系またはエーテル系の溶媒で且つ沸点が190℃から210℃の低沸点溶媒であれば使用可能であり、前記ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(H3COC3H6OC3H6OH;沸点190℃)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(H3COC2H4OC2H4OH;沸点194℃)、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル(H5C2OC 3 H 6 OC 3 H 6 OH;沸点198℃)のいずれか1種を使用可能であり、または前記いずれか2種以上を混合したものを使用可能である。
【0046】
また前記貧溶媒としては、環状アルキルまたは芳香環を有するアルコール系の溶媒で且つ沸点が215℃以上の高沸点溶媒であれば使用可能であり、前記テルピネオール、2−フェノキシエタノール(沸点245℃)または2−ベンジルオキシエタノール(沸点256℃)のいずれか1種、または2種以上を混合したものを使用可能である。
なお、テルピネオールの化学式は、
【0047】
【化1】
であり、2−フェノキシエタノールの化学式は、
【0048】
【化2】
であり、2−ベンジルオキシエタノールの化学式は、
【0049】
【化3】
である。
【0050】
また上記良溶媒と貧溶媒の組み合わせは任意である。ただし、貧溶媒と良溶媒の沸点の温度差は、好ましくは15℃〜30℃の範囲である。また、前記乾燥高低での温度は、良溶媒の沸点よりも高く、貧溶媒の沸点よりも低いことが好ましい。
【0051】
なお、本発明では、導電フィラーとしてカーボンブラックの他に、グラファイト、他のカーボン繊維など、またはこれらの混合体を使用することができる。
【0052】
【実施例】
図1A,Bに示した抵抗体を実施例とし、図3に示した良溶媒のみを用いて形成した図5A,Bに示す抵抗体を比較例とした。
【0053】
前記実施例の抵抗体と前記比較例の抵抗体を用いて、図8に示す直線摺動式の可変抵抗器を製造した。実施例と比較例共に、抵抗体の厚さを10μmとし、平面形状は縦方向の寸法を12mm、幅寸法を2.7mmとした。
【0054】
図6に示すように、前記実施例の抵抗体を製造する際の、乾燥工程での温度を170℃、190℃、200℃、210℃、220℃とし、それぞれの温度での乾燥時間を10分、7分、5分に設定した。また、乾燥後の焼成工程では、焼成温度を380℃で時間を100分とした。
【0055】
同様に、図7に示すように、前記比較例の抵抗体を製造する際の、乾燥工程での温度を、160℃、170℃、180℃、190℃、200℃、210℃、220℃、230℃、240℃、250℃とし、それぞれの温度での乾燥時間を10分、7分、5分に設定した。また、乾燥後の焼成工程では、焼成温度を前記実施例と同様に380℃で時間を100分とした。
【0056】
図6Aは、前記実施例に基づく各抵抗体と摺動子との動的集中接触抵抗(Ω)を示し、図6Bは、前記実施例に基づく抵抗体の電極3と電極4間での全抵抗値(kΩ)を示している。
【0057】
同様に、図7Aは、前記比較例に基づく各抵抗体と摺動子との動的集中接触抵抗(Ω)を示し、図7Bは、前記実施例に基づく抵抗体の電極3と電極4間での全抵抗値(kΩ)を示している。
【0058】
ここで、前記動的集中接触抵抗の測定方法は、摺動子5として表面に銀メッキを施したりん青銅板で形成したものを使用し、摺動子5の接触部5aが、前記2.7mmの幅寸法の全長を横断できるように形成した。
【0059】
摺動子5を20mm/秒の速度で摺動させ、このとき電極3と電極4にDC電源回路21からDC5Vを印加するとともに、抵抗体1と摺動子5に一定の電流I0(1mA)が流れるように設定した。摺動子5が抵抗体1を摺動するときに、電極3と摺動子5との間の電圧を測定し、この電圧と前記電流I0から抵抗値の変化を読取り、それぞれの時点での抵抗体1の抵抗値と摺動子5の抵抗値を除いたものを動的集中接触抵抗(Ω)とし、摺動子5が摺動する際の前記動的集中接触抵抗の最大値を、図6Aおよび図7Aにプロットした。
【0060】
図6に示すように、実施例では、乾燥時間が5分以上であり、乾燥温度が良溶媒の沸点以上で貧溶媒の沸点以下であれば、動的集中摺動抵抗を小さくでき、且つ全体抵抗を大きい状態に保てることが解る。
【0061】
一方、図7に示すように、比較例では、乾燥温度を高くすることにより動的集中摺動抵抗を小さくできるが、同時に全抵抗値も小さくなることが解る。
【0062】
【発明の効果】
以上のように本発明では、抵抗体表面と摺動子や接触子との接触抵抗を低減でき、しかも全体の抵抗が大きく低下するのを防止できる。したがって、抵抗体の抵抗値を高精度に読み取ることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態および実施例の抵抗体を示しており、Aは抵抗体表面のTEM写真、Bは抵抗体内部の切断面のTEM写真、
【図2】A,Bは、図1A,BのTEM写真を転写した模式図、
【図3】良溶媒に、バインダー樹脂およびカーボンブラックを溶解させた場合のTEM写真、
【図4】貧溶媒に、バインダー樹脂およびカーボンブラックを溶解させた場合のTEM写真、
【図5】比較例の抵抗体を示しており、Aは抵抗体表面のTEM写真、Bは抵抗体内部の切断面のTEM写真、
【図6】Aは実施例の動的集中接触抵抗の測定値、Bは実施例の全抵抗値、
【図7】Aは比較例の動的集中接触抵抗の測定値、Bは比較例の全抵抗値、
【図8】抵抗体を用いた可変抵抗器の構造図、
【符号の説明】
1 抵抗体
2 基板
3,4 電極
5 摺動子
Claims (5)
- バインダー樹脂を溶かす能力の高い良溶媒と、前記良溶媒よりも前記能力が低く且つ前記良溶媒よりも揮発性の低い貧溶媒と、熱硬化性のバインダー樹脂と、導電フィラーとを含む混合溶液を、所定のパターンで印刷する工程と、
前記混合溶液を乾燥させる工程と、
焼成して、前記バインダー樹脂を硬化させる工程と、を有し、
前記貧溶媒の沸点は前記良溶媒の沸点より高く、
前記良溶媒が、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルのうちのいずれか1種または2種以上であり、
前記貧溶媒が、テルピネオール、2−フェノキシエタノール、2−ベンジルオキシエタノールのうちのいずれか1種または2種以上であり、
前記乾燥工程は、前記良溶媒の沸点よりも高く前記貧溶媒の沸点よりも低い温度で行うことを特徴とする抵抗体の製造方法。 - 前記良溶媒と前記貧溶媒の沸点の差が15℃以上30℃以下である請求項1記載の抵抗体の製造方法。
- 前記抵抗体の表面と、前記抵抗体の内部で且つ前記表面と平行な切断面とを、同じ面積に区画した区画領域で比較したとき、前記バインダー樹脂内での前記導電フィラーの分散度は、前記切断面よりも前記表面の方が低い請求項1または2記載の抵抗体の製造方法。
- 前記区画領域で比較したとき、前記導電フィラーが凝集している複数の凝集体のうちの最大のものの寸法は、前記表面の方が前記切断面よりも大きい請求項3記載の抵抗体の製造方法。
- 前記区画領域で比較したとき、前記導電フィラーが存在していない部分に描くことができる複数の仮想円のうちの最大のものの直径は、前記表面の方が前記切断面よりも大きい請求項3または4記載の抵抗体の製造方法。
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