JP3587730B2 - 抵抗体及びその抵抗体を用いた可変抵抗器 - Google Patents

抵抗体及びその抵抗体を用いた可変抵抗器 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、マイクロリニアリティ特性と耐摩耗性が共に優れた抵抗体及びそれを用いた可変抵抗器に関する。
【0002】
【従来の技術】
各種センサの可変抵抗器に用いられる従来の抵抗体は、抵抗体母材である樹脂中に構造材料とするカーボンファイバと導電粒子とするカーボンブラックとを含有しており、摺動子はこの抵抗体からなる抵抗パターンに摺接しながら移動する。このとき、硬質なカーボンファイバが摺動子の荷重を直径方向で受けて長い繊維長に分散させるので、抵抗体の摩耗する程度が極めて少ない。従って、カーボンブラックやグラファイト等の導電粒子のみを含有する他のタイプの抵抗体を用いた可変抵抗器に比べ、耐摩耗性が改善されていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来のカーボンファイバを用いた抵抗体は、カーボンファイバが繊維長方向に高い導電性を有するため、抵抗体の微小区間内でカーボンファイバの繊維長方向の配向度合いによる抵抗率の変動が起こりマイクロリニアリティ特性が劣化するという問題があった。
【0004】
次にマイクロリニアリティ特性を説明する。図14のグラフは抵抗体パターンの長さL方向に定格電圧Vinを印加したとき、縦軸を抵抗体パターン上を長さ方向に摺動する摺動子からの出力V、横軸に抵抗体パターン上での摺動子の位置Xとしたものである。抵抗体の抵抗率が位置によらず一定であるという前提のもとでは、摺動子が抵抗体上の任意の点からΔXだけ移動したときの出力変化はVin/Lなる傾きを有する理想直線Pで示すことができる。
【0005】
理想直線Pにおいては、摺動子がA点からB点までΔXだけ移動した場合の基準出力変位はΔV=(ΔX/L)×Vinと表すことができるが、実際の出力Sは理想直線Pから外れる。式1に示すように、マイクロリニアリティ特性は点A、Bでの実際の出力V、Vの出力変位V−Vとから基準出力変位の差分を印加電圧の百分率により規定される。高性能な位置センサでは、実際の出力Sが理想直線Pに近い特に優れたマイクロリニアリティ特性が要求される。
【0006】
【式1】
Figure 0003587730
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明に係わる抵抗体は、抵抗体母材に、カーボンブラックとカーボンファイバとをそれぞれ15乃至20体積%含有しており、前記カーボンファイバの粒度分布は略正規分布の形状であり粒度1乃至20μmの範囲にカーボンファイバ全体の80体積%以上が含まれている。
【0008】
抵抗体母材は、カーボンブラック及びカーボンファイバを均一に分散させ且つこれらをバインドできるという役割を果たせばその素材は限定されず、例えばフェノールホルムアルデヒド樹脂、キシレン変性フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、アクリレート樹脂、フルフリル樹脂等の熱硬化性樹脂等が使用できる。
【0009】
カーボンブラックは、抵抗体に導電性を付与する役割を持つ。カーボンブラックの抵抗体中に占める割合が15体積%よりも少なければ抵抗体としての導電性が低く、マイクロリニアリティ特性が劣化することとなり、20体積%より多ければ抵抗体のスクリーン印刷適性が低下して、抵抗体パターンの形成が困難となる。
【0010】
カーボンファイバは、摺動子から加えられた荷重を分散させて支える。よって、カーボンファイバは摺動子の荷重に対する抵抗体の耐摩耗性を向上させる構造材の役割と、抵抗体の摺動子との接点において電気的な接触を安定化させる役割を果たす。
【0011】
カーボンファイバの抵抗体中に占める割合が15体積%よりも少なければ、摺動子の荷重を支える点が減少するので十分に支えられず抵抗体の耐摩耗性が低下することとなり、20体積%よりも多ければ抵抗体母材とする樹脂によるバインドが不完全となってカーボンファイバが抵抗体表面より抜け出すことにより抵抗体の耐摩耗性が低下することとなる。
【0012】
カーボンファイバの粒度分布は、カーボンファイバが上記のような役割を果たし、且つ、抵抗体が優れたマイクロリニアリティ特性を有するように定めた。粒度分布の1乃至20μmの範囲に占める割合が全体の80体積%以下である場合、即ち粒度分布がブロードであったり正規分布から大きく外れた非対称の形状であった場合、抵抗体には繊維長の長いカーボンファイバ(及び/又は)繊維長の短いカーボンファイバが多く含まれていることとなり、繊維長の長いカーボンファイバの存在によりマイクロリニアリティ特性は劣化し、また、摺動子の荷重を十分支えることのできない粒度の小さいカーボンファイバが多く混在すると耐摩耗性が劣化する。
【0013】
本発明に係わる抵抗体は、前記カーボンファイバの粒度分布のピークが粒度1乃至3μmである。このときカーボンファイバは粒状であるのでカーボンファイバの繊維長方向の高い導電性はマイクロリニアリティ特性を劣化させることがない。また、粒状のカーボンファイバは摺動子の荷重を数個の集団で受け、隣接する多数のカーボンファイバに分散するので耐摩耗性にも優れている。
【0014】
また本発明に係わる他の抵抗体は、前記カーボンファイバの粒度分布のピークが粒度6乃至10μmである。このような繊維長の短いカーボンファイバでは繊維長方向の高い導電性がマイクロリニアリティ特性を劣化させることがなく、また、摺動子の荷重を繊維径方向で受けて繊維長方向に分散させて支えるので耐摩耗性に優れており環境温度の変化に対してもその特性を維持できる。
【0015】
本発明に係わる抵抗体は、カーボンファイバがカップリング処理されていることが望ましい。カップリング剤としては、シラネート系、チタネート系アルミナ系カップリング剤を使用することができる。かかるカップリング処理よりカーボンファイバの抵抗体母材への分散性が向上するので、摺動子の摺動よるカーボンファイバの抵抗体表面からの抜けだしが少なく耐摩耗性が向上する。
【0016】
本発明の可変抵抗器は、上述の本発明の抵抗体で、所望のマイクロリニアリティ特性を持ち、環境温度の変化に対しても耐摩耗性を維持するので、本発明の可変抵抗器もこのような特性を持ち、車両等のエンジンコントロール部に搭載される位置センサに用いられるのが望ましい。
【0017】
【発明の実施の形態】
次に、本発明に係わる抵抗体の実施の形態を述べる。本発明の抵抗体の実施の形態は、抵抗体母材中にカーボンブラックとカーボンファイバをそれぞれ15乃至20体積%含んだものでおり、カーボンファイバの粒度分布は略正規分布の形状であり1乃至20μmの範囲に分布全体の80体積%が含まれている。
【0018】
前記のような形状のカーボンファイバは、繊維径約8μmであり繊維長10μmから100μm程度のものまでが混在する市販のカーボンファイバ(例えば東レ製トレカMLDや東邦レーヨン製ベスファイトHTA−CMF等)を粉砕したものである。
【0019】
また、粉砕されたカーボンファイバは、アミノシラネート系のカップリング剤により水、エタノールと共に混合、2時間程度攪拌した後濾過して100℃程度で乾燥する条件でカップリング処理される。
【0020】
このような抵抗体を用いた本発明による可変抵抗器の一実施の形態の全体平面図を図1、分解斜視図を図2に示す。可変抵抗器は、下部及び両端部が開放された断面コ字状の絶縁材からなるフレーム1と、外部から操作されるレバー部2を備えた操作部材3と、一対の摺動子4と一体に形成されて導電性を有する止め板5と、絶縁基板6とから成り、絶縁基板6には、本発明の抵抗体からなり、スクリーン印刷等により形成された抵抗体パターン7と、抵抗体パターン7に沿って延びる集電体パターン8と、抵抗体パターン7の両端に接続する入力端子9a、出力端子9bと、集電体パターン8の両端に接続する入力端子10a、出力端子10bとが形成されている。
【0021】
絶縁基板6はフレーム1内に収納されており、操作部材3と止め板5が、絶縁基板6とフレーム1を挟んで、止め板5の摺動子4がそれぞれ抵抗体パターン7と集電体8とに摺接しながら図1の矢印のL、R方向にスライド自在な状態で一体化されて取り付けられている。入力端子9a、10a間に電流・電圧を加えた状態で、操作部材3が図1の矢印方向にスライドすると、操作部材3の移動に伴い一対の摺動子4が抵抗体パターン7と集電体パターン8との上を摺動する。そして、一対の摺動子4による抵抗体パターン7と集電体パターン8との導通位置が変化して、この導通位置の対応した電流・電圧の出力が出力端子9b、10bから得られるようになっている。
【0022】
(実施例1)
本発明の抵抗体の実施例1は、抵抗体母材とするアセチレン末端ポリイソイミド樹脂中に、20体積%のカーボンブラックと、16体積%のカーボンファイバを分散させたものである。
【0023】
図3のグラフはレーザー回折・散乱法により観測された実施例1のカーボンファイバの粒度分布を示すグラフであり、横軸が粒度(μm)、縦軸がそれぞれの粒度(μm)を占めるカーボンファイバの全体に占める割合(体積%)である。
【0024】
図3からわかるように、実施例1のカーボンファイバの粒度分布は粒度約8μmをピーク中心として粒度5乃至13μmの範囲に全体の約90体積%が含まている。このとき市販カーボンファイバの粉砕はジェットミル粉砕法により行い、粉砕条件は直径150mmのサイクロン内に6〜7kg/cmの圧縮空気を毎分0.2から0.6mの割合で流入させながら市販のカーボンファイバを毎分1から3gの割合で投入したものである。
【0025】
(比較例1)
比較例1の抵抗体は、実施例1と同種の樹脂を抵抗体母材として、15体積%のカーボンブラックと、16体積%のカーボンファイバとを分散させたものである。
【0026】
比較例1のカーボンファイバの粒度分布を図3と同様な座標軸を有する図9のグラフに示す。図9からわかるように、比較例1のカーボンファイバの粒度分布は正規分布から外れた非対称な形状であり、カーボンファイバ全体の90体積%を含む範囲は粒度50μmにまで至っている。
【0027】
(比較例2)
比較例2の抵抗体は、実施例1と同種の樹脂を抵抗体母材として、20体積%のカーボンブラックを分散させたものである。
【0028】
図4に実施例1のマイクロリニアリティ特性を示す。図4のグラフの横軸は位置センサの開度を角度(deg)で示し、縦軸はマイクロリニアリティ(%)を示している。比較例1、2のマイクロリニアリティ特性を、それぞれ図10、12に示す。なお、図10、12のグラフの横軸、縦軸は図4と同一の座標である。
以上の結果から、実施例1の抵抗体のマイクロリニアリティ特性は比較例1から大幅に改善され、カーボンファイバを含まない比較例2とほぼ同等であることがわかる。
【0029】
また、図5に実施例1の耐摩耗性試験の結果を示す。図5のグラフの横軸は抵抗体の位置を示し、縦軸は抵抗体の表面の摩耗深さ(μm)を示している。なお、縦軸の0μmは耐摩耗性試験前の抵抗体表面である。耐摩耗性の試験方法は、六元合金ブラシを抵抗体表面に摺接して、400万サイクルの往復運動を終えた後、に抵抗体表面の摩耗状態を触針式表面粗さ計により抵抗体表面の摩耗状態を観測したものである。
一方、比較例1、2の耐摩耗性試験の結果を図11、図13に示す。なお、図11と図13のグラフの横軸、縦軸は図4と同一の座標である。
以上の結果から、実施例1の抵抗体の耐摩耗性は比較例2から大幅に改善されて、荷重を分散できる長い繊維長のカーボンファイバを多く含む比較例1とほぼ同等であることがわかる。
【0030】
(実施例2)
本発明の抵抗体の実施例2は、実施例1と同種の樹脂を抵抗体母材として20積%のカーボンブラックと、20体積%のカーボンファイバを分散させたものである。
【0031】
実施例2の粒状のカーボンファイバの粒度分布を図3と同様な座標軸を有する図6のグラフに示す。図6からわかるように実施例2のカーボンファイバの粒度分布は粒度約2μmをピーク中心として粒度1乃至3μmの範囲にカーボンファイバ全体の90体積%が含まれている。このとき市販カーボンファイバの粉砕にはボールミルを用い、粉砕条件は直径100から200mmのジルコニアポット内に市販のカーボンファイバと直径5から10mmのジルコニアボールを投入して、60から150rpmの回転数を70から100時間程度保持するものである。
【0032】
実施例2の抵抗体のマイクロリニアリティ特性を、図4と同様な座標軸を有する図7に示す。実施例1と同様に実施例2と比較例1、2のマイクロリニアリティ特性と比較すると、実施例2のマイクロリニアリティ特性は、比較例1から大幅に改善され、カーボンファイバを含まない比較例2とほぼ同等であることがわかる。
【0033】
また、実施例2の実施例1と同一条件下で行った耐摩耗性試験の結果を、図5と同様な座標軸を有する図8に示す。実施例2の耐摩耗性は比較例2に比べ大幅に改善されており、比較例1に比べると若干劣っている。これは、比較例1ではカーボンファイバの長い繊維長で荷重を分散して支えることのできるのに対し、実施例2ではカーボンファイバが粒状であり荷重を支えにくいことによると考えられる。しかしながら、実施例2のマイクロリニアリティ特性は比較例1から大幅に改善しているので、総合的な特性は改善している。
【0034】
【発明の効果】
本発明に係わる抵抗体は、抵抗体母材に、カーボンブラックと所定形状のカーボンファイバとを分散させているので、カーボンファイバの優れた耐摩耗性を奏しつつ、優れたマイクロリニアリティ特性を奏するものである。
【0035】
また、本発明に係わる他の抵抗体は、抵抗体母材に、カーボンブラックと所定形状の粒状の炭素材片を分散させたので、優れた耐摩耗性を奏しつつ、優れたマイクロリニアリティ特性を奏するものである。
【0036】
また、本発明の可変抵抗器は、上述の本発明の抵抗体を使用しているので、所望のマイクロリニアリティ特性及び耐摩耗性を持つ。そして、環境温度の変化に対してもその特性を維持できるので車載用各種センサに有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる可変抵抗器の一実施の形態を示す平面図である。
【図2】図1に示した可変抵抗器を分解した状態を示す斜視図である。
【図3】本発明に係わる抵抗体の実施例1に用いたカーボンファイバの粒度分布を示すグラフ。
【図4】本発明に係わる抵抗体の実施例1のマイクロリニアリティ特性を示すグラフ。
【図5】本発明に係わる抵抗体の実施例1の耐摩耗性を示すグラフ。
【図6】本発明に係わる抵抗体の実施例2に用いたカーボンファイバの粒度分布を示すグラフ。
【図7】本発明に係わる抵抗体の実施例2のマイクロリニアリティ特性を示すグラフ。
【図8】本発明の実施例2の抵抗体の耐摩耗性を示すグラフ。
【図9】比較例1の抵抗体に用いたカーボンファイバの粒度分布を示すグラフ。
【図10】比較例1のマイクロリニアリティ特性を示すグラフ。
【図11】比較例1の耐摩耗性を示すグラフ。
【図12】比較例2のマイクロリニアリティ特性を示すグラフ。
【図13】比較例2の耐摩耗性を示すグラフ。
【図14】マイクロリニアリティ特性を説明するためのグラフ。
【符号の説明】
1 フレーム
2 レバー
3 操作部材
4 摺動子
5 止め板
6 絶縁基板
7 抵抗体パターン
8 集電体パターン
9a 入力端子
9b 出力端子
10a 入力端子
10b 出力端子

Claims (5)

  1. 抵抗体母材に、カーボンブラックとカーボンファイバとをそれぞれ15乃至20体積%含有しており、前記カーボンファイバの粒度分布は略正規分布の形状であり粒度1乃至20μmの範囲にカーボンファイバ全体の80体積%以上が含まれていることを特徴とする抵抗体。
  2. 前記カーボンファイバの粒度分布のピークは粒度1乃至3μmであることを特徴とする請求項1記載の抵抗体。
  3. 前記カーボンファイバの粒度分布のピークは粒度6乃至10μmであることを特徴とする請求項1記載の抵抗体。
  4. 前記カーボンファイバはカップリング剤によりカップリング処理が施されていることを特徴とする請求項3記載の抵抗体。
  5. 請求項1乃至4記載の抵抗体を用いた可変抵抗器。
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