JP4139017B2 - 自動二輪車の後輪懸架装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はホイールベースを短縮するのに好適な自動二輪車の後輪懸架装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動二輪車の後輪懸架装置としては、例えば、実公平7−38069号公報「リヤクッションユニット取付装置」に記載されたものが知られている。
上記技術には、同公報の第2図に示される通り、車両の前後方向に延びる左右一対の第1アーム10,10r(10rは第3図参照)の後端にそれぞれ車軸支持部材14を介して後下がりとしたU字形の第2アーム11の後端をそれぞれ取付け、第1アーム10,10rの中間部にクロスパイプ13を渡し、このクロスパイプ13の略中央部から上方の第2アーム11の前端へクッションブラケット12を渡し、このクッションブラケット12にクッションユニット19の一端を取付け、第1アーム10の前端を車体フレーム側にスイング自在に取付けるリヤスイングアームが記載されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
自動二輪車、特にモータースポーツを行う車両では、より俊敏なターンやコーナリングを可能にするために、前・後輪の車軸間距離、いわゆるホイールベースを短縮することが求められている。
【0004】
上記技術で、このホイールベースを短縮しようとした場合、後輪を前方へ移動することで前輪車軸と車軸支持部材14で支持する後輪車軸との距離を短くすることが考えられるが、クロスパイプ13の略中央部から上方へ延ばしたクッションブラケット12が邪魔になって、後輪を前方に移動させることが難しい。
【0005】
そこで、本発明の目的は、簡単な構造でホイールベースを短縮することができる自動二輪車の後輪懸架装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1は、車体後部にスイング自在に取付けるスイングアームを、車体後部から後方へ延ばした主アームと、この主アームの後端から斜め上前方に延ばした傾斜アームと、これらの主アームの前部及び傾斜アームの前部のそれぞれを連結する連結部材とで構成し、前記傾斜アームの前部にリヤクッションユニットの端部を取付け、スイングアームの後端に後輪を取付けた自動二輪車の後輪懸架装置において、前記連結部材を左連結部材と右連結部材とで構成し、これら左右一対の左連結部材及び右連結部材を車体前方に広がるようにして主アーム側と傾斜アーム側とを連結し、側面視で左・右連結部材と後輪の一部とが重なるように配置した。
【0007】
主アームの前部及び傾斜アームの前部のそれぞれを左連結部材と右連結部材とで構成した連結部材で連結し、左・右連結部材間に後輪前部を差し込む。
この結果、後輪をより前方に配置することができ、簡単な構造でホイールベースを短縮することができる。
【0008】
請求項2は、車体後部にスイング自在に取付けるスイングアームを、車体後部から後方へ延ばした主アームと、この主アームの後端から斜め上前方に延ばした傾斜アームと、これらの主アームの前部及び傾斜アームの前部のそれぞれを連結する連結部材とで構成し、前記傾斜アームの前部にリヤクッションユニットの端部を取付け、スイングアームの後端に後輪を取付けた自動二輪車の後輪懸架装置において、連結部材を左連結部材と、右連結部材と、これらの左連結部材及び右連結部材のそれぞれを接続するクロスメンバとで構成し、このクロスメンバの中央部をへこませて凹部を形成し、側面視で左・右連結部材と後輪の一部とが重なるように配置した。
【0009】
クロスメンバに凹部を設けるという簡単な構造で自動二輪車のホイールベースを短縮することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1は本発明に係る後輪懸架装置を備えた自動二輪車の側面図であり、自動二輪車10は、車体としての車体フレーム11と、この車体フレーム11の前部に取付けたヘッドパイプ12と、このヘッドパイプ12に操舵自在に取付けたフロントフォーク13及びこのフロントフォーク13の下端に取付けた前輪14と、フロントフォーク13の上部に取付けたハンドル15と、車体フレーム11の上部に取付けた燃料タンク16と、この燃料タンク16の後方に配置したシート17と、車体フレーム11の下方に配置したエンジン18及び動力伝達装置21からなるパワーユニット22と、車体フレーム11の後部に取付けた後輪懸架装置23と、この後輪懸架装置23で懸架する後輪24とからなる。
【0011】
図中のWBは、ホイールベースであり、前輪14及び後輪24の車輪中心間の距離、即ち、前輪14の車軸14aの中心と後輪24の車軸24aの中心との水平距離である。
【0012】
図2は本発明に係る後輪懸架装置及び車体フレーム後部を示す側面図である。
後輪懸架装置23は、車体フレーム11の後部にスイング自在に取付けたスイングアーム31と、このスイングアーム31の上部及び車体フレーム11の上部のそれぞれの間に渡したリヤクッションユニット32とからなる。なお、34は車体フレーム11を構成するシートレール、35はリヤクッションユニット32の一端部を取付けるための第1クッション取付ブラケットである。
【0013】
スイングアーム31は、車体フレーム11の後部から後方へ延ばした主アーム41L,41R(奥側の符号41Rは不図示)と、これらの主アーム41L,41Rの後端に取付けた車軸支持部材42L,42R(奥側の符号42Rは不図示)と、これらの車軸支持部材42L,42Rから斜め上前方に延ばした傾斜アーム43と、主アーム41L,41Rの前部側及び傾斜アーム43の前部のそれぞれを連結する連結部材44とからなり、傾斜アーム43の前部にリヤクッションユニット32の他端部を取付けるための第2クッション取付ブラケット45を取付けたものである。
【0014】
リヤクッションユニット32は、減衰力を発生させるためのダンパ51と衝突を緩和するための懸架スプリング52とからなる。
ダンパ51は、シリンダ53と、このシリンダ53内に移動自在に挿入した図示せぬピストンと、このピストンに取付けたピストンロッド54とを備え、ピストンロッド54は、先端に車体フレーム11に取付けるための車体側取付部55を設けたものである。なお、56は、スイングアーム31を車体フレーム11にスイング自在に取付けるためのピボット軸である。
懸架スプリング52は、シリンダ53の側面と車体側取付部55との間に介在させたものである。
【0015】
図3は本発明に係る後輪懸架装置のスイングアームの斜視図であり、内側に曲げた左右一対の主アーム41L,41Rの後端から車軸支持部材42L,42Rを介して傾斜アーム43を斜め上前方に延ばし、主アーム41L,41Rの前部間にクロスメンバ46を渡し、クロスメンバ46の主アーム41L,41R寄りの箇所と傾斜アーム43の前部とを左連結部材47L及び右連結部材47Rで連結したやぐら状のスイングアーム31を示す。
左・右連結部材47L,47Rは、連結部材44を構成するものである。
【0016】
主アーム41L、41Rは、前端に車体側取付部55,55を取付けたパイプ部材である。
車軸支持部材42L,42Rは、車軸24a(図1参照)を通す長穴62,62を開けた鋼板製部材である。
傾斜アーム43は、U字状に曲げたパイプ部材である。
第2クッション取付ブラケット45は、コ字状断面とした鋼板製部材である。
【0017】
このように、左・右連結部材47L,47Rで主アーム41L,41R側と傾斜アーム43とを連結したことで、従来のような1本の連結部材を用いるのに比べて、スイングアーム31の曲げ剛性及び捩り剛性を高めることができる。
【0018】
図4は本発明に係る後輪懸架装置及び車体フレームの要部平面図であり、スイングアーム31のクロスメンバ46中央部をへこませて凹部64を形成し、この凹部64に近接するように、左連結部材47Lと右連結部材47Rとの間に後輪24の前部24bを差し込んで、車軸支持部材42L,42Rに車軸24aを介して後輪24を取付けた状態を示す。
即ち、クロスメンバ46の凹部64は、後輪24を前方寄りに配置するために設けた後輪24の前部24bの逃げ部である。
【0019】
以上説明したように、本発明は、車体フレーム11の後部にスイング自在に取付けるスイングアーム31を、車体フレーム11の後部から後方へ延ばした主アーム41L,41Rと、この主アーム41L,41Rの後端から斜め上前方に延ばした傾斜アーム43と、これらの主アーム41L,41Rの前部及び傾斜アーム43の前部のそれぞれを連結する連結部材44とで構成し、傾斜アーム43の前部にリヤクッションユニット32(図2参照)の端部を取付け、スイングアーム31の後端に後輪24を取付けた自動二輪車10(図1参照)の後輪懸架装置23(図2参照)において、連結部材44を左連結部材47Lと右連結部材47Rとで構成することにより、左・右連結部材47L,47R間に後輪24の前部24bを差し込めるようにしたことを特徴とする。
【0020】
図5(a),(b)は後輪懸架装置を構成するスイングアームの比較例を説明する説明図である。
(a)は、自動二輪車のスイングアームを示す側面図であり、スイングアーム100は、第1アーム101,101(奥側の符号101は不図示)の後端に車軸支持部材102,102(奥側の符号102は不図示)を取付け、この車軸支持部材102,102に傾斜した第2アーム103の後端を取付け、この第2アーム103の前端から下方に連結部材104を延ばすとともに、第2アーム103と連結部材104との結合部に図示せぬリヤクッションユニットの一端を取付けるブラケット105を取付け、車軸支持部材102,102に車軸106を介して後輪107を取付けたものである。
【0021】
(b)は、自動二輪車のスイングアームを示す平面図であり、第1アーム101,101間にクロスメンバ108を渡し、このクロスメンバ108の中央と第2アーム103の前部中央との間に連結部材104を取付けたことを示す。なお、111,111は車体側にスイングアーム100をスイング自在に取付けるために第1アーム101,101の前端に設けた車体側取付部である。
上記連結部材104は、後輪107の前方に位置する。
【0022】
以上に述べた本実施の形態のスイングアーム31と比較例のスイングアーム110との後輪位置を比較する。
図6はスイングアームによる後輪位置を比較する説明図である。なお、図の上部に本実施の形態のスイングアーム31を示し、下部に比較例のスイングアーム100を示した。また、後輪24と後輪107とは外径を同一とし、スイングアーム31,100のそれぞれの車体側取付部55,111の位置は合せてある。
比較例のスイングアーム100では、後輪107は、連結部材104の後方に位置する。
【0023】
これに対して、本実施の形態のスイングアーム31では、後輪24は、左・右連結部材47L,47R間に前部24bを差し込めるようにしたものなので、前部24bが左・右連結部材47L,47R間に位置する。
従って、本実施の形態の後輪24を、比較例の後輪107よりも前方に配置することができ、後輪24の車軸24aを、後輪107の車軸106よりも距離dだけ前方に配置することができる。
【0024】
この結果、本実施の形態のスイングアーム31を用いることで、比較例のスイングアーム100を用いるよりも、本実施の形態の後輪24をより前方に配置することができ、連結部材44を左・右連結部材47L,47Rで構成し、クロスメンバ46に凹部64(図4参照)を設けるという簡単な構造で図1に示した自動二輪車10のホイールベースWBを短縮することができる。
【0025】
尚、図2、図6の本実施の形態では、左・右連結部材47L,47R間に、後輪24の前部24b、詳しくは後輪24の外周面が位置するが、これに限らず、後輪24の外周面が左・右連結部材47L,47R間より前方に位置していてもよい。
【0026】
【発明の効果】
本発明は上記構成により次の効果を発揮する。
請求項1の自動二輪車の後輪懸架装置は、連結部材を左連結部材と右連結部材とで構成し、これら左右一対の左連結部材及び右連結部材を車体前方に広がるようにして主アーム側と傾斜アーム側とを連結し、側面視で左・右連結部材と後輪の一部とが重なるように配置したので、後輪をより前方に配置することができ、簡単な構造でホイールベースを短縮することができる。
従って、自動二輪車の走行時に、より俊敏なターンやコーナリングを可能にすることができ、旋回性を向上させることができる。
【0027】
請求項2の自動二輪車の後輪懸架装置は、連結部材を左連結部材と、右連結部材と、これらの左連結部材及び右連結部材のそれぞれを接続するクロスメンバとで構成し、このクロスメンバの中央部をへこませて凹部を形成し、側面視で左・右連結部材と後輪の一部とが重なるように配置したので、クロスメンバに凹部を設けるという簡単な構造で自動二輪車のホイールベースを短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る後輪懸架装置を備えた自動二輪車の側面図
【図2】 本発明に係る後輪懸架装置及び車体フレーム後部を示す側面図
【図3】 本発明に係る後輪懸架装置のスイングアームの斜視図
【図4】 本発明に係る後輪懸架装置及び車体フレームの要部平面図
【図5】 後輪懸架装置を構成するスイングアームの比較例を説明する説明図
【図6】 スイングアームによる後輪位置を比較する説明図
【符号の説明】
10…自動二輪車、11…車体(車体フレーム)、23…後輪懸架装置、24…後輪、24b…後輪の前部、31…スイングアーム、32…リヤクッションユニット、41L,41R…主アーム、43…傾斜アーム、44…連結部材、46…クロスメンバ、47L…左連結部材、47R…右連結部材、64…凹部

Claims (2)

  1. 車体後部にスイング自在に取付けるスイングアームを、車体後部から後方へ延ばした主アームと、この主アームの後端から斜め上前方に延ばした傾斜アームと、これらの主アームの前部及び傾斜アームの前部のそれぞれを連結する連結部材とで構成し、前記傾斜アームの前部にリヤクッションユニットの端部を取付け、スイングアームの後端に後輪を取付けた自動二輪車の後輪懸架装置において
    前記連結部材を左連結部材と右連結部材とで構成し、これら左右一対の左連結部材及び右連結部材を車体前方に広がるようにして前記主アーム側と前記傾斜アーム側とを連結し、側面視で前記左・右連結部材と後輪の一部とが重なるように配置したことを特徴とする自動二輪車の後輪懸架装置。
  2. 車体後部にスイング自在に取付けるスイングアームを、車体後部から後方へ延ばした主アームと、この主アームの後端から斜め上前方に延ばした傾斜アームと、これらの主アームの前部及び傾斜アームの前部のそれぞれを連結する連結部材とで構成し、前記傾斜アームの前部にリヤクッションユニットの端部を取付け、スイングアームの後端に後輪を取付けた自動二輪車の後輪懸架装置において、
    前記連結部材を左連結部材と、右連結部材と、これらの左連結部材及び右連結部材のそれぞれを接続するクロスメンバとで構成し、このクロスメンバの中央部をへこませて凹部を形成し、側面視で前記左・右連結部材と後輪の一部とが重なるように配置したことを特徴とする自動二輪車の後輪懸架装置。
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