JP4138220B2 - プラズマディスプレイパネルとその前面基板及びその製造方法 - Google Patents

プラズマディスプレイパネルとその前面基板及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プラズマディスプレイパネルとその前面板及びその製造方法に係り、特に、プラズマディスプレイパネルの前面板に設けられるバス電極とコントラスト向上のためのブラックマトリックスとに関する。
【0002】
【従来の技術】
図4はプラズマディスプレイパネルの前面板とその製造方法の一従来例を示す工程図であって、10は高歪点ガラス基板、11は透明電極パターン、12はバス電極パターン、13は誘電体層、14はブラックマトリクス・パターン、15は誘電体層、16は保護膜である。
【0003】
同図において、高歪点ガラス基板10上にITO(In23−Sn)膜をスパッタ成膜し、このITO膜をフォトリソ法とエッチングプロセスもしくはレーザー加工プロセスで加工して透明電極パターン11を形成する(図4(a))。高歪点ガラス基板10上には、かかる透明電極パターン11が複数個互いに平行に形成されるが、ここでは、高歪点ガラス基板10上の単位領域(セル)中に形成される対をなす2個の透明電極パターン11を示している。以下では、1つのセルについて説明する。
【0004】
このように形成された2個の透明電極パターン11夫々上に、バス電極パターン12をフォトリソ法やスクリーン印刷法などで形成する(図4(b))。スクリーン印刷法で形成した場合には、ここで焼結してもよいが、後述のブラックマトリックス・パターンを形成してから焼結するようにしてもよい。そして、これら透明電極パターン11とバス電極パターン12とを覆うようにして、高歪点ガラス基板10の全面にわたって誘電体層13をスクリーン印刷法やシートラミネート法などで形成し(図4(c))、これを焼結する(図4(d))。次に、この焼結した誘電体層13上にブラックマトリックス・パターン14を、夫々のバス電極パターン12と図示しない隣りのセルのバス電極パターンとの間に位置するように、スクリーン印刷法などで形成し、焼結する(図4(e))。この焼結により、ブラックマトリックス・パターン14が酸化され、黒化される。さらに、これらブラックマトリックス・パターン14を覆うように、高歪点ガラス基板10の全面にわたって誘電体層15をスクリーン印刷法やシートラミネート法などで形成し(図4(f))、焼結する(図4(g))。最後に、焼結された誘電体層15の全面にわたってMgOがEB(電子ビーム)蒸着され、これにより、保護膜16が形成される(図4(h))。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
前面板を通して蛍光体の発光(表示)を見るため、前面板は透光性が高くなければならず、このため、走査・放電維持電極には、ITO膜からなる透明電極パターン11といった透明電極が用いられている。誘電体層13も、同様な理由(透明性)から、脱泡性を高めなければならないが、透明電極の材料であるITOとの反応抑制のため、比較的軟化点の高い誘電体ガラスしか使えず、このために、充分脱泡させるための焼結温度が約600℃と高くなる。
【0006】
上記従来技術のように、バス電極パターン12の形成とブラックマトリックス・パターン14の形成との形成プロセス間にかかる誘電体ガラスの誘電体層13を焼結する工程(図4(d))が入るプロセスでは、誘電体ガラスの焼結温度を約600℃と高温にすることが必要であることから、熱変形の小さい高価な高歪点ガラスをガラス基板1(図4)に用いなければならない(歪点例:570℃)。このような基板を用いないと、バス電極パターン12の形成後の誘電体ガラスの焼結により、ガラス基板1が熱変形し、その後、ガラス基板1が熱変形した状態で、この焼結された誘電体層13上にブラックマトリックス・パターン14を形成すると、バス電極パターン12とブラックマトリックス・パターン14との間の相対的な位置関係に大きなずれが生ずることになる。
【0007】
ブラックマトリックス・パターン14をスクリーン印刷法を用いて形成する場合には、前面板の中央部でバス電極パターン12とブラックマトリックス・パターン14との間の位置関係が正確に得られるように、スクリーンを配置してブラックマトリックス・パターン14を形成するのであるが、隣接するセルのバス電極パターン12間にブラックマトリックス・パターン14があるため、これらパターンの位置ずれが大きくなると、前面板の中央部から離れる程バス電極パターン12に対するブラックマトリックス・パターン14の位置ずれ量が大きくなり、前面板の周辺部では、ブラックマトリックス・パターン14がバス電極パターン12と重なってしまうことになる。このようなことになると、ブラックマトリックス・パターン14はバス電極パターン12と重なった分細く見えることになり、この結果、プラズマディスプレイパネルの画面に模様が生ずるという問題があった。
【0008】
以上のことからして、従来では、前面板のガラス基板として、熱変形の小さい高価な高歪点ガラスが用いられている。
【0009】
しかしながら、前面板に高歪点ガラス基板を使用する場合には、組立信頼性の点から背面板にも同じ高歪点ガラス基板を使用せざるを得なくし、また、前面板と背面板とに異なるガラスからなる基板を用いると、これら前面板と背面板とを熱を加えて封着する場合、これらの基板の熱膨張係数が異なることから、少なくとも一方の基板に反りや割れが生じてしまうことになる。このことから、前面板に高歪点ガラス基板を使用すると、背面板にも同じ高歪点ガラス基板を使用せざるを得ず、プラズマディスプレイパネルのコストが非常に高くなるという問題があった。
【0010】
コスト低減のためには、前面板のガラス基板1に安価なソーダライムガラス基板(歪点:511℃)を使用しようとすることが考えられる。しかし、このようにすると、次のような問題が生ずる。
【0011】
即ち、誘電体ガラスの誘電体層13の焼結によるソーダライムガラス基板1の熱収縮を小さく抑えるために、約530℃の温度でこの誘電体ガラスを焼結しなければならないが、この焼結温度で誘電体ガラスを完全脱泡させるためには、軟化点が420℃以下程度の誘電体ガラスを使用しなければならない。
【0012】
一方、前面板の最後の工程(図4(h))で誘電体層15上に形成されるMgOの保護膜16については、脱ガスを行なうことが必要である。この保護膜16の脱ガスのためには、これがMgOからなることから、約350℃以上の温度が必要である。この保護膜16の脱ガスは前面板と背面板との封着工程で行なわれる。従って、前面板と背面板との封着温度は350℃以上、実際には、約400℃であって、このとき発生する保護膜16からのガスも同時に排気される。また、この封着時の温度によって誘電体層15の誘電体ガラスの熱膨張が大きくなるガラス転移点がこの封着温度よりも低く、前面板と背面板との封着時にこの誘電体ガラスが大きく熱膨張すると、これよりも熱膨張が小さいMgOの保護層7に割れが生ずる。これを防止するためには、封着温度で大きな熱膨張が生じないように、この誘電体ガラスのガラス転移点は封着温度よりも高く、例えば、410℃以上でなければならない。
【0013】
以上のように、誘電体層13の誘電体ガラスとしては、ガラス転移点が410℃以上で、かつ軟化点が420℃以下という、わずかな温度上昇で急激に粘度が低下するものであることが必要となる。しかし、このような誘電体ガラスを実現することは極めて困難である。また、軟化点が420℃以下程度の誘電体ガラスはITOの透明電極パターン11やバス電極パターン12との反応性も高く、この点からも、ソーダライムガラス基板1を用いた場合の満足すべき誘電体ガラスを実現することは難しい。
【0014】
本発明の目的は、かかる問題を解消し、前面基板に安価なソーダライムガラス基板を用いて、バス電極とブラックマトリックスの両パターンの相対的な位置ずれをなくすことができるようにしたプラズマディスプレイパネルとその前面板及びその製造方法を提供することにある。
【0015】
本発明の他の目的は、安価なソーダライムガラス基板を前面板,背面板に適用できるようにし、低コスト化を実現可能としたプラズマディスプレイパネルとその前面板及びその製造方法を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明によるプラズマディスプレイパネルの前面板は、前面板上にバス電極パターンとブラックマトリックス・パターンとが配置されてなるものであって、これらバス電極パターンとブラックマトリックス・パターンとが焼結された誘電体ガラス層で覆われ、かつ誘電体ガラス層上に保護膜が形成してなる構成とする。そして、ブラックマトリックス・パターンがバス電極パターンと同じ金属材料の酸化物を主成分とするものである。これにより、ガラス基板として安価なソーダライムガラス基板を使用しても、バス電極パターンとブラックマトリックス・パターンとの間の相対的な位置ズレによる画面での模様が発生を防止できる。
【0017】
上記の目的を達成するために、本発明によるプラズマディスプレイパネルの製造方法は、前面板のガラス基板上にバス電極パターンとブラックマトリックス・パターンとを形成するものであって、また、同時に形成してもよい。これにより、ガラス基板として安価なソーダライムガラス基板を使用しても、バス電極パターンとブラックマトリックス・パターンとの間の相対的な位置ズレによる画面での模様が発生しないプラズマディスプレイパネルが得られる。
【0018】
また、本発明によるプラズマディスプレイパネルの製造方法は、前面板のガラス基板上にバス電極パターンとブラックマトリックス・パターンとを同一金属を用いて同時に形成する第1の工程と、該バス電極パターンを誘電体ガラスペーストもしくは誘電体ガラスシートで覆い、不活性ガス雰囲気中で焼成して該誘電体ガラスを焼結する第2の工程と、該第1の工程で形成された該バス電極パターンと該第2の工程で酸化された該ブラックマトリクス・パターンとを覆うように、該ガラス基板全面に誘電体ガラス層を形成して、該誘電体ガラスを焼結し、次いで、大気中で熱処理して該ブラックマトリクス・パターンを酸化させる第3の工程と、該第3の工程での処理後、誘電体層を前面に形成して焼成する第4の工程と、焼結された該誘電体層上に保護膜を形成する第5の工程とを有するものである。これにより、ガラス基板として安価なソーダライムガラス基板を使用しても、バス電極パターンとブラックマトリックス・パターンとの間の相対的な位置ズレによる画面での模様が発生しないプラズマディスプレイパネルが得られる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面を用いて説明する。
図1は本発明によるプラズマディスプレイパネルとその前面板及びその製造方法の第1の実施形態の要部を示す図であって、1はソーダライムガラス基板、2は透明電極パターン、3はバス電極パターン、4はブラックマトリクス・パターン、5,6は誘電体層、7は保護膜であり、ここでは、前面板についてのみ示している。
【0020】
同図において、この実施形態においては、ガラス基板1として、安価なソーダライムガラス基板を用いており、まず、ソーダライムガラス基板1の全面にITOをスパッタ成膜し、フォトリソ法とエッチングプロセスもしくはレーザー加工プロセスとにより、透明電極パターン2を形成する(図1(a))。
【0021】
なお、図1においても、ソーダライムガラス基板1上が仮想的に互いに平行なセルが設定され、各セル毎に2個の透明電極パターン2が互いに平行に形成されるものであるが、ここでは、図4と同様、1つのセルについて図示し、それを説明するものである。
【0022】
形成されたこれら透明電極パターン2上に夫々バス電極パターン3をフォトリソ法もしくはスクリーン印刷法で形成する(図1(b))。次に、隣接するセル(図示せず)のバス電極パターンとの間にブラックマトリックス・パターン4をスクリーン印刷法などで形成する(図1(c))。
【0023】
次に、透明電極パターン2やバス電極パターン3,ブラックマトリックス・パターン4を覆うように、誘電体層5をスクリーン印刷法,シートラミネート法で形成し(図1(d))、乾燥後、焼結する。この焼結により、ブラックマトリックス・パターン4は酸化して不導体化する。この場合、ブラックマトリックス・パターン4として酸化によって黒色化する金属を用いたときには、顔料の添加は必要ない。
【0024】
さらに、誘電体層5上に誘電体層6をスクリーン印刷法,シートラミネート法で形成し(図1(e))、乾燥後、焼成する(図1(f))。そして、最後に、この誘電体層6全面にMgOを電子ビーム蒸着することにより、保護膜7を形成する(図1(g))。このようにして、プラズマディスプレイパネルの前面板が得られる。
【0025】
この実施形態によると、前面板で、最初に、3つのパターンの形成(透明電極2,バス電極3及びブラックマトリックス4)を行ない、その後、誘電体層の焼結を2回行なう。基板1としてソーダライムガラス基板を用いると、かかる誘電体層の焼結時、その熱によって基板1が変形するが、これら3つのパターンは、かかる焼結前に形成されているので、一体となって位置変化し、これらパターン間で相対的な位置ずれは生じない。基板1としてソーダライムガラス基板を用いた場合、焼結温度580℃で1時間の誘電体層5,6の誘電体ガラスの焼結を行なうと、このソーダライムガラス基板1は1m当り250〜450μmの割合で熱収縮するが、これは40インチのプラズマディスプレイパネルの対角1mでわずか250〜450μm収縮するだけであって、この収縮によっても、透明電極2,バス電極3及びブラックマトリックス4のパターンが一体となって位置を変えるだけで、これらパターンの相互の位置関係にはずれが生じない。そして、現在主流となっているプラズマディスプレイパネルの構造では、前面板でのパターンと背面板でのパターンとがどちらもストライプ状をなし、かつこれらパターンが互いに直交するように、前面板と背面板とが組み立てられるので、この組み立ての際の厳密な位置合せが不要となり、上記のようにわずかに熱収縮した前面板でも使用することが可能となる。即ち、従来の高価な高歪点ガラス基板(歪点:570℃)の代わりに、安価なソーダライムガラス基板(歪点:511℃)が使用可能となる。
【0026】
また、この結果、背面板での基板も、同様に、安価なソーダライムガラス基板を使用することができ、プラズマディスプレイパネルの低コスト化が実現する。
【0027】
これに対し、従来のプラズマディスプレイパネルでは、図4で説明したように、バス電極パターンを形成して誘電体ガラスの焼結後、ブラックマトリックスパターンを形成するものであるから、この焼結によってガラス基板が、上記のように、わずかに250〜450μm収縮しても、焼結前に形成したパターンと焼結後に形成したパターンとの相対的に位置ずれが致命的となり、従って、安価なソーダライムガラス基板が使用することができなかった。
【0028】
以上のようにして作製した前面板を排気管の付いた背面板と重ね合わせ、さらに、それらの外周部をフリットシール・ガラスで貼り合わせ、内部を排気するとともに、セル内にXe,Neなどの希ガス封入し、しかる後、排気管を封じ切ってプラズマディスプレイパネル本体が完成する。その後、異方導電フィルムなどを用いて周辺回路と接続し、電磁波シールド板や放熱板を取り付けてプラズマディスプレイパネルが完成する。ここで、前面板にソーダライムガラス基板を使用しているため、背面板にも、上記のように、安価なソーダライムガラス基板を使用することができる。
【0029】
図2は本発明によるプラズマディスプレイパネルとその前面板及びその製造方法の第2の実施形態の要部を示す図であって、8は誘電体層であり、図1に対応する部分には同一符号を付けて重複する説明を省略する。ここでも、前面板の1セルの部分についてのみ示している。
【0030】
同図において、図2(a)〜(c)の工程は図1(a)〜(c)の工程と同じである。図1に示した実施形態では、図1(d),(e)と誘電体層の形成,その焼結を2回行なったが、この第2の実施形態では、誘電体層8の形成(図2(d))が行なわれ、次いで、その焼結(図2(e))が行なわれて、この焼結された誘電体層8上にMgOの保護膜7を形成する(図2(f))するものであり、誘電体層の形成とその焼結とを1回ずつ行なうものである。
【0031】
従って、この第2の実施形態でも、図1に示した第1の実施形態と同じ構成の前面板が得られるが、工程数を削減できてプラズマディスプレイパネルのさらなる低コスト化が図れるし、また、焼結工程の回数を低減できて、基板1の収縮をさらに少なくできる。
【0032】
なお、以上の各実施形態では、バス電極パターン3とブラックマトリックス・パターン4とを別々に形成したが、同時に同じ金属材料で、同じ形成方法で形成するようにしてもよい。この場合には、これらパターン3,4の位置ズレをさらになくすことができる。
【0033】
図3は本発明によるプラズマディスプレイパネルとその前面板及びその製造方法の第3の実施形態の要部を示す図であって、9は誘電体層であり、図1に対応する部分には同一符号を付けている。ここでも、前面板の1セルについてのみ示している。
【0034】
同図において、まず、ソーダライムガラス基板1の全面にITOをスパッタ成膜し、フォトリソ法とエッチングプロセスもしくはレーザー加工プロセスとにより、透明電極パターン2を形成する(図3(a))。
【0035】
形成されたこれら透明電極パターン2上にバス電極パターン3を、また、これと同時に、隣接するセル(図示せず)のバス電極パターン3間にブラックマトリックス・パターン4を、同じ導体金属を用いて同時に形成する(図3(b))。これらパターンの形成方法としては、例えば、Cuペーストのような大気中で容易に酸化し、かつ黒色化する導体ペーストを用いてスクリーン印刷する方法などがある。また、透明電極パターン2を形成したソーダライムガラス基板1の全面にCr/Cu/Crをスパッタ成膜した後、フォトリソ法とエッチングもしくはレーザー加工とで形成する方法もある。
【0036】
ここで用いる導体金属としては、固有抵抗が充分に低く、かつ大気中での低温熱処理により容易に酸化するものであることが必須であり、Cu,Crなどが適している。容易に酸化しなければならないのは、ブラックマトリックスを不導体化しておかないと、バス電極とブラックマトリックスとの間で誤放電が発生するためである。また、黒色化させるために、黒色顔料を導体ペーストに予め添加するようにしてもよい。
【0037】
このように、バス電極・パターン3とブラックマトリックス・パターン4とを同時に形成するために、この形成工程でこれらパターンの相対的な位置ずれが生ずることはない。
【0038】
次に、バス電極パターン3を覆い、ブラックマトリックス・パターン4を露出したままとするように、誘電体ガラスのペーストをスクリーン印刷もしくは誘電体ガラスシートを用いて誘電体層5を形成し(図3(c))、その後、この誘電体ガラスを不活性ガス雰囲気中で焼成して焼結し(図3(d))、さらに、大気中で熱処理することにより、ブラックマトリックス・パターン4のみを酸化させて不導体化する(図3(e))。この場合、ブラックマトリックス・パターン4として酸化によって黒色化する金属を用いたときには、顔料の添加は必要ない。
【0039】
さらに、各パターンを覆うように、ソーダライムガラス基板1の全面に、誘電体ガラス・ペーストをスクリーン印刷もしくは誘電体ガラスシートをラミネートすることにより、誘電体層6を形成し(図3(f))、再びこの誘電体層6をその誘電体ガラスの焼結温度で焼成する(図3(g))。そして、最後に、この誘電体層6全面にMgOを電子ビーム蒸着することにより、保護膜7を形成する(図3(h))。このようにして、プラズマディスプレイパネルの前面板が得られる。
【0040】
この第3の実施形態においても、先の第1の実施形態と同様、前面板で、最初に、3つのパターンの形成(透明電極2,バス電極3及びブラックマトリックス4)を行ない、その後、誘電体層の焼結を2回行なう。基板1としてソーダライムガラス基板を用いると、かかる誘電体層の焼結時、その熱によって基板1が変形するが、これら3つのパターンは、かかる焼結前に形成されているので、一体となって位置変化し、これらパターン間で相対的な位置ずれは生じない。基板1としてソーダライムガラス基板を用いた場合、焼結温度580℃で1時間の誘電体層9,6の誘電体ガラスの焼結を行なうと、このソーダライムガラス基板1は1m当り250〜450μmの割合で熱収縮するが、これは40インチのプラズマディスプレイパネルの対角1mでわずか250〜450μm収縮するだけであって、この収縮によっても、透明電極2,バス電極3及びブラックマトリックス4のパターンが一体となって位置を変えるだけで、これらパターンの相互の位置関係にはずれが生じない。従って、上記のように、従来致命的であったかかる250〜450μmの収縮も、この第3の実施形態では、各別問題とはならない。そして、現在主流となっているプラズマディスプレイパネルの構造では、前面板でのパターンと背面板でのパターンとがどちらもストライプ状をなし、かつこれらパターンが互いに直交するように、前面板と背面板とが組み立てられるので、この組み立ての際の厳密な位置合せが不要となり、上記のようにわずかに熱収縮した前面板でも使用することが可能となる。即ち、従来の高価な高歪点ガラス基板(歪点:570℃)の代わりに、安価なソーダライムガラス基板(歪点:511℃)が使用可能となる。
【0041】
また、この第3の実施形態では、バス電極パターン3とブラックマトリックス・パターン4とを同じ金属で同時に形成するものであるから、前面板の製造プロセスが1工程少なくなり、この点からも、プラズマディスプレイパネルの低コスト化が可能となる。
【0042】
なお、この第3の実施形態では、バス電極パターン3とブラックマトリックス・パターン4とを同時に形成するようにしたが、誘電体層9の焼結前であれば、バス電極パターン3の形成後、ブラックマトリックス・パターン4を形成するようにして、これらパターンを別々に形成するようにしてもよい。この場合も、ブラックマトリックス・パターン4のバス電極パターンに対する位置合わせを正確にして形成することにより、誘電体層9,6の焼結によって生ずるソーダライムガラス基板の熱収縮に影響されることなく、これらパターンの相対的な位置関係を良好に保つことができる。勿論、この場合、バス電極パターン3とブラックマトリックス・パターン4との形成に異なる形成プロセスを用いてもよいし、異なる金属を用いてもよい。但し、上記のように、バス電極パターン3とブラックマトリックス・パターン4とを同じ金属を用いて同時に形成した方が、これらパターンの相対的な位置関係のずれを、その形成段階から、小さくできることはいうまでもない。
【0043】
以上のようにして作製した前面板を排気管の付いた背面板と重ね合わせ、さらに、それらの外周部をフリットシール・ガラスで貼り合わせ、内部を排気するとともに、セル内にXe,Neなどの希ガス封入し、しかる後、排気管を封じ切ってプラズマディスプレイパネル本体が完成する。その後、異方導電フィルムなどを用いて周辺回路と接続し、電磁波シールド板や放熱板を取り付けてプラズマディスプレイパネルが完成する。ここで、前面板にソーダライムガラス基板を使用しているため、背面板にも、上記のように、安価なソーダライムガラス基板を使用することができ、プラズマディスプレイパネルの低コスト化が実現する。
【0044】
次に、図1に示した第1の実施形態の具体的な実施例を説明する。しかし、本発明は、かかる実施例に限定されるものではない。
【0045】
〔実施例1〕
洗浄したソーダライムガラス基板1の全面にITO膜をスパッタ成膜した後、ITO膜の全面にレジストを塗布し、フォトマスクを用いて密着露光、現像してレジストパターンを形成した。次に、このレジストパターンを基にITO膜をエッチングし、レジスト剥離を行なってITOの透明電極パターン2を形成した(図1(a))。
【0046】
次に、ITOの透明電極パターン2と同様のフォトリソ法とエッチングとのプロセスにより、透明電極パターン2上にCr/Cu/Crのバス電極パターン3を形成し(図1(b))、次に、このバス電極パターン3と隣接するセルのバス電極パターンとの間に、ブラックマトリックス・ペーストをスクリーン印刷することにより、ブラックマトリックス・パターン4を形成し、大気中80℃で乾燥した(図1(c))。
【0047】
次に、バス電極パターン3やブラックマトリックス・パターン4を覆うように、ソーダライムガラス基板1に全面にPbO−SiO2−B23−MgO系の誘電体ガラス・ペーストをスクリーン印刷して誘電体層5を形成した(図1(d))。その後、大気中590℃でこの誘電体ガラスを焼結してブラックマトリックス・パターン4のCrのみを酸化させ、不導体化させた(図1(e))。この場合、このブラックマトリックス・パターン4は黒色化している。
【0048】
さらに、誘電体層5上にPbO−SiO2−B23−ZnO系の誘電体ガラス・ペーストをスクリーン印刷して誘電体層6を形成し、再び大気中590℃でこの誘電体ガラスを焼結した(図1(f))。そして、最後に、この誘電体層6の全面にMgOを電子ビーム蒸着することにより、保護膜7を形成した(図1(g))。これにより、プラズマディスプレイパネルの前面板を得た。
【0049】
そして、このようにして作製した前面板を排気管の付いた背面板と重ね合わせて、それらの外周部をフリットシール・ガラスで貼り合わせ、内部を排気してセル内にXe,Neなどの希ガス封入し、しかる後、排気管を封じ切ってプラズマディスプレイパネル本体を作製した。この後、異方導電フィルムを用いて周辺回路と接続し、電磁波シールド板や放熱板を取り付けてプラズマディスプレイパネルを作製した。この場合、上記背面板としては、基板として安価なソーダライムガラスを使用したものを用いた。
【0050】
なお、図2に示した第2の実施形態の実施例も、誘電体層の形成とその焼結を夫々1回ずつ行なうことを除いて、上記実施例1と同様である。
【0051】
次に、図3に示した第3の実施形態の具体的な実施例を説明する。しかし、本発明は、かかる実施例に限定されるものではない。
【0052】
〔実施例2〕
洗浄したソーダライムガラス基板1の全面にITO膜をスパッタ成膜した後、ITO膜の全面にレジストを塗布し、フォトマスクを用いて密着露光、現像してレジストパターンを形成した。次に、このレジストパターンを基にITO膜をエッチングし、レジスト剥離を行なってITOの透明電極パターン2を形成した(図3(a))。
【0053】
次に、透明電極パターン2が形成されたソーダライムガラス基板1上にCuペーストをスクリーン印刷することにより、透明電極パターン2上にバス電極パターン3を形成すると同時に、このバス電極パターン3と隣接するセル(図示せず)のバス電極パターンとの間にブラックマトリックス・パターン4を形成し、大気中80℃で乾燥した(図3(b))。
【0054】
次に、バス電極パターン3を覆い、ブラックマトリックスパターン4をそのまま露出させるように、PbO−SiO2−B23−MgO系の誘電体ガラス・ペーストをスクリーン印刷して誘電体層9を形成した(図3(c))。その後、窒素雰囲気中590℃で焼成してこの誘電体ガラスを焼結し(図3(d))、次に、大気中120〜180℃でブラックマトリックス・パターン4のCuのみを酸化させ、不導体化させて黒色化させた(図3(e))。
【0055】
さらに、誘電体層9やブラックマトリックス・パターン4を覆うように、ソーダライムガラス基板1上にPbO−SiO2−B23−ZnO系の誘電体ガラス・ペーストをスクリーン印刷して誘電体層6を形成し(図3(f))、再び大気中590℃でこの誘電体ガラスを焼結した(図3(g))。そして、最後に、この誘電体層6の全面にMgOを電子ビーム蒸着することにより、保護膜7を形成した(図3(h))。これにより、プラズマディスプレイパネルの前面板を得た。
【0056】
そして、このようにして作製した前面板を排気管の付いた背面板と重ね合わせて、それらの外周部をフリットシール・ガラスで貼り合わせ、内部を排気してセル内にXe,Neなどの希ガス封入し、しかる後、排気管を封じ切ってプラズマディスプレイパネル本体を作製した。この後、異方導電フィルムを用いて周辺回路と接続し、電磁波シールド板や放熱板を取り付けてプラズマディスプレイパネルを作製した。この場合、上記背面板としては、基板として安価なソーダライムガラスを使用したものを用いた。
【0057】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、プラズマディスプレイパネルの前面板において、バス電極とブラックマトリックスの両パターンの相対的な位置ずれがなく、よってパネル周辺部でバス電極とブラックマトリックスが重なることがなく、前面側から見た場合に周辺部でブラックマトリックスの細りが生じず、画面に模様が生じることがない。
【0058】
また、本発明によれば、安価なソーダライムガラス基板を前面板,背面板ともに使用することができ、プラズマディスプレイパネルの抜本的な低コスト化を達成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるプラズマディスプレイパネルとその前面板及びその製造方法の第1の実施形態の要部を示す図である。
【図2】本発明によるプラズマディスプレイパネルとその前面板及びその製造方法の第2の実施形態の要部を示す図である。
【図3】本発明によるプラズマディスプレイパネルとその前面板及びその製造方法の第3の実施形態の要部を示す図である。
【図4】従来のプラズマディスプレイパネルの前面板及びその製造方法の要部を示す図である。
【符号の説明】
1 ソーダライムガラス基板
2 ITOの透明電極パターン
3 バス電極パターン
4 ブラックマトリックス・パターン
5,6 誘電体層
7 MgOの保護膜
8,9 誘電体層

Claims (9)

  1. ガラス基板と、該ガラス基板上のセル毎に形成されたバス電極パターンと、該ガラス基板上の隣接する該セルの該バス電極パターン間毎に形成されたブラックマトリックス・パターンとを備えたプラズマディスプレイパネルの前面板であって、
    該バス電極パターンと該ブラックマトリックス・パターンとは、大気中での酸化によって黒色化する金属または該金属のペーストによって該ガラス基板上に同時に形成されたものであり、
    該ガラス基板上には、該バス電極パターンを覆い、該ブラックマトリックス・パターンを露出させた第1の誘電体層と、該第1の誘電体層と該ブラックマトリックス・パターンとを覆う第2の誘電体層とが形成されており、
    該ブラックマトリックス・パターンは、酸化されたことによって不導体化され、かつ黒色化された状態で該第2の誘電体層に覆われている
    ことを特徴とするプラズマディスプレイパネルの前面板。
  2. 請求項1において、
    前記第1の誘電体層は、前記バス電極パターンを覆う誘電体ガラスペーストもしくは誘電体ガラスシートを不活性ガス雰囲気中で焼成し、焼結することによって形成されたものであって、
    前記ブラックマトリックス・パターンは、大気中で熱処理されて酸化されることにより、不導体化されて黒色化されたものであり、
    前記第1の誘電体層と前記ブラックマトリックス・パターンとを覆う誘電体層の焼成によって形成された前記第2の誘電体層上に、保護膜が形成されている
    ことを特徴とするプラズマディスプレイパネルの前面板。
  3. 請求項1または2において、
    前記ガラス基板がソーダライムガラス基板であることを特徴とするプラズマディスプレイパネルの前面板。
  4. 請求項1,2または3において、
    前記大気中での酸化によって黒色化する金属は、Cu,Crの一方もしくは双方であることを特徴とするプラズマディスプレイパネルの前面板。
  5. 請求項1〜4のいずれか1つにおいて、
    前記第1の誘電体層は、前記ガラス基板へのPbO−SiO2−B23−MgO系誘電体ガラス・ペーストのスクリーン印刷によって形成されたものであり、
    前記第2の誘電体層は、前記ブラックマトリックス・パターンと前記第1の誘電体層とを覆うPbO−SiO2−B23ZnO系誘電体ガラス・ペーストのスクリーン印刷によって形成されたものである
    ことを特徴とするプラズマディスプレイパネルの前面板。
  6. 請求項1〜5に記載の前記前面板を用いたことを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
  7. セル毎にバス電極パターンが形成され、隣接する該セルの該バス電極パターン間毎にブラックマトリックス・パターンが形成されたガラス基板を前面板として用いるプラズマディスプレイパネルの製造方法であって、
    該ガラス基板上に、該バス電極パターンと該ブラックマトリックス・パターンとを同一金属で同時に形成する第1の工程と、
    該第1の工程で形成された該バス電極パターンを覆い、該ブラックマトリックス・パターンを露出させて第1の誘電体層を形成する第2の工程と、
    該第2の工程で該第1の誘電体層が形成された該ガラス基板を大気中で熱処理し、該ブラックマトリックス・パターンを酸化させて不導体化かつ黒色化する第3の工程と、
    該第1の誘電体層と、該第3の工程の熱処理で酸化された該ブラックマトリックス・パータンとを覆う第2の誘電体層を形成する第4の工程と、
    該第4の工程で形成された該第2の誘電体層上に保護膜を形成する第5の工程と
    からなることを特徴とするプラズマディスプレイパネルの製造方法。
  8. 請求項7において、
    前記第2の工程では、前記バス電極パターンを覆う誘電体ガラスのペーストまたはシートを不活性ガス雰囲気中で焼結して前記第1の誘電体層を形成することを特徴とするプラズマディスプレイパネルの製造方法。
  9. 請求項7または8において、
    前記ガラス基板として、ソーダライムガラス基板を用いたことを特徴とするプラズマディスプレイパネルの製造方法。
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