JP4137709B2 - 磁気共鳴イメージング装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気共鳴イメージング装置(以下、MRI装置という。) に関し、特に傾斜磁場発生系の性能が低い装置においても繰り返し時間(TR)の短いSSFPシーケンスを用いることが出来るようにしたMRI装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
MRI装置は、所定の均一な強度を有した静磁場空間へ置かれた被検体へ高周波磁場(RF磁場)を照射することにより、被検体の組織を構成する原子の原子核、例えばプロトンに核磁気共鳴現象を起こさせ、被検体から放出される電磁波信号を計測並びに信号処理して画像化するものである。前記核磁気共鳴現象を起こさせ、その信号を検出するためには、均一な静磁場に置かれた被検体へRF磁場、スライス傾斜磁場、位相エンコード傾斜磁場及びリードアウト傾斜磁場を所定のパルスシーケンスに則って印加する。
【0003】
従来から、パルスシーケンスとして各種のものが開発され、実用化されているが、大きく分けて、スピンエコー系に属するものとグラジェントエコー系に属するものがある。グラジェントエコー系のパルスシーケンスは励起された核スピンの位相反転を行うための反転RFパルスを印加しないので、エコー時間TE及びシーケンスの繰返し時間TRをスピンエコー系パルスシーケンスより短くすることができる。その反面、TRを短くすると各シーケンスを終え次のシーケンスを開始するまでに核スピンの横磁化が消失せずに残留し、その残留横磁化が次のシーケンス内に持ち越されてしまう。
【0004】
この残留横磁化が次のシーケンスに持ち込まれることを積極的に利用する計測方法がある。すなわち、TRを短くして繰返し核スピンを励起すると、励起開始からしばらくの間核スピンは振動し、その後ほぼT1あるいはT2の時間経過後に定常状態に移行する。この定常状態を定常状態自由歳差運動(Steady State Free Precession:以下、SSFPという。)の状態という。このSSFP状態に達するまでの過程を過渡状態というが、この過渡状態の間は前記のように核スピンが振動するために計測される信号が安定したものとはならないために、この過渡状態の信号を画像形成に用いることは好ましくないと考えられている。
【0005】
これを改善するために、繰り返して実行されるグラジェントエコーシーケンスの最初のシーケンスにおけるRF励起パルスよりTR/2時間前に、RF励起パルス(励起角αとする)の1/2の励起角(α/2)のRFパルスをプリパルスとして印加することが、〔非特許文献1〕に提案されている。このプリパルスの印加により、過渡状態における強い振動を抑制することができるとされ、プリパルスを用いない場合に比べ、早く信号の取得を開始することができるとされている。
【0006】
【非特許文献1】
M. Deimling and O. Heid: Magnetization Prepared True FISP Imaging, Proc., SMRM, 2nd Annual Meeting, p495 ,1994
【0007】
シーケンスの実行前に印加されるプリパルスとしては、脂肪抑制パルスや反転回復パルスなども挙げられるが、プリパルス印加後は、時間の経過と共にその効果が低下するため、プリパルスの印加後速やかに信号計測を行うことが望まれる。
【0008】
前記非特許文献1に記載されたTrue FISPシーケンスを臨床に用いる場合、例えば心臓のイメージングを行う場合には、静磁場強度が1.5Tの装置ではTR≦3msが好ましいとされる。その理由として、TR≦3msでは血液と心筋の良好なコントラストが得られるからとされ、またTRが長くなると静磁場不均一の影響によるダークバンドアーチファクトが生じるため、これを避けるためにもTRの短縮が必要とされている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
前記非特許文献1に記載されたTrue FISPシーケンスを実行するには励起角α/2のプリパルスを印加するためにTR/2だけ時間を要することになる。しかし、TR/2の間にプリパルスの印加、スライス選択傾斜磁場の印加、スライス選択傾斜磁場の印加に対するスライス方向リフェーズ用傾斜磁場の印加を行わなければならず、TRを短縮すればするほどに傾斜磁場の印加時間を短縮する必要が生じる。傾斜磁場の印加時間を短縮するということは、傾斜磁場の強度を高くすることが必要であることを意味する。
【0010】
したがって、True FISPを実行するためには、傾斜磁場発生系の能力が高いことが求められる。すなわち、電源容量が大きく、高速のスイッチング性能を有した傾斜磁場発生系が要求される。
このために、True FISPシーケンスはハイエンド機にしか導入されず、傾斜磁場発生系の性能がさほど高くないMRI装置では、そのような短TRのSSFPシーケンスで、過渡状態のスピンの振動をおさえる技術は実現されておらず、その開発が要望されている。
【0011】
本発明は、上記に鑑みて成されたもので、傾斜磁場発生系の性能がさほど高くないMRI装置においても短TRのSSFPシーケンスを実行でき、また過渡状態における核スピンの振動を抑制し早期に信号計測ができるようにしたMRI装置を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明は、フリップ角α / 2 の高周波パルスを印加した後、フリップ角α の高周波パルスを交互に正負に極性を反転しながら繰返し時間T R で連続的に印加し、磁化が過度振動状態から定常状態自由歳差運動に達した後にエコー信号を取得して画像を得る磁気共鳴イメージング装置において、前記フリップ角α / 2 の高周波パルスと最初のフリップ角α の高周波パルスとの間の時間が繰返し時間T R/2より長く、以降の隣接する前記フリップ角α の高周波パルス間の時間の内の少なくとも一つが前記繰り返し時間TRより長いことを特徴とする。
特に、最初の隣接する前記フリップ角α の高周波パルス間の時間が前記繰り返し時間TRより長いことを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。図3は本実施形態で用いられるMRI装置の概略構成を示すブロック図である。図3において、301は被検体、302は被検体301を含む所定の大きさの空間へ所定の強度でかつ均一な静磁場を発生する静磁場発生用磁石で、公知の永久磁石タイプ、常電導磁石タイプ、あるいは超電導磁石タイプの物が用いられる。303は傾斜磁場コイルで、前記被検体301を含む空間において前記静磁場へ重畳されほぼリニアな磁場勾配を形成するもので、基本的にはX,Y,Xの直交する3軸方向へそれぞれが傾斜磁場を発生する3組の傾斜磁場コイルから構成されている。304は前記被検体301へ高周波(RF)磁場をパルス状に照射する高周波コイルであり、RF送信コイルとここでは称する。305は前記RF送信コイル304から被検体へRFパルスを照射したときに被検体内の組織を構成する原子の原子核、例えばプロトンが核磁気共鳴現象を起こすことにより放出される電磁波を電磁誘導によって検出するRF受信コイルである。なお、RF送信コイルとRF受信コイルは別個に設けても、両者を兼用する構成としても良い。
【0014】
306は信号検出部で、増幅器と直交検波器とA/D変換器とから成り、前記RF受信コイルで検出された信号を増幅、直交検波、A/D変換の順に処理し、画像を形成する信号に変換するもの、307は信号処理部で、信号検出部306から入力した信号に対して画像再構成演算や各種解析演算等を行うもの、308は表示部で、信号処理部307で再構成された画像データや解析データをディスプレイの画面へ表示したり、それらのデータを記録保存するもの、309は前記傾斜磁場コイル303へ電流を供給する傾斜磁場電源である。
【0015】
311は中央演算処理装置(CPU)であり、上記各構成要件を所定のタイミングチャート(これをパルスシーケンスと称す。)に則り動作制御するものである。なお、図示を省略されているが、撮像の各種パラメータや解析条件等の他に装置の起動のオン/オフ指令を入力するコンソールがCPU311へ接続されている。
【0016】
次に、上記の構成になるMRI装置で動作させられるパルスシーケンスの一実施形態を説明する。図1は本実施形態のパルスシーケンスを示し、図2は図1に示すパルスシーケンスが進行中のオフレゾナンス状態にある核スピンの挙動を示す。図1に示すパルスシーケンスにおいては、先ずスライス選択傾斜磁場201の印加と共にフリップ角(−α/2)のプリパルス101が照射される。すると、スライス選択傾斜磁場201の傾斜とプリパルス101の周波数帯域によって決まるスライス内の核スピンは図2(a)に示すようにX軸上でX−Y平面方向へ励起される。プリパルスによる励起が終了後、極性を反転されたスライス方向傾斜磁場202が印加され、励起された核スピンのスライス方向における位相合わせが行われる。RFパルス101によって励起された核スピンのうちオフレゾナンス状態にある核スピンは位相回転を生じ、図2(a)の状態から図2(b)の状態へ時間の経過とともに位相回転をする。オフレゾナンスは静磁場不均一や磁気感受率の相違によって生ずる。
【0017】
そしてプリパルス101の印加から信号計測時のシーケンスの繰返し時間TRの1/2の時間すなわちTR/2と、ΔT時間とが経過した時刻(TR/2+ΔT)にフリップ角αのRFパルス102を201と同様なスライス選択傾斜磁場203と共に印加する。これによってスライス内の核スピンの位相は図2(b)及び図2(c)に示すように、TR/2+ΔTの待ち時間にディフェーズされ(図2(b))、RFパルス102の印加によって核スピンはその位相がz軸周りにαだけ進められる(図2(c))。なお、スライス選択傾斜磁場203の後半分とスライス選択傾斜磁場203の前半分とは印加量が等しく、核スピンのスライス方向の位相回転をキャンセルするようになっている。
【0018】
次に、RFパルス102とスライス選択傾斜磁場203を印加したことによって励起された核スピンのスライス方向の位相ずれを修正するリフェージング用傾斜磁場204を印加する。
【0019】
さらに次のRFパルス103とスライス方向傾斜磁場206の印加に対する核スピンの位相ずれを事前にリフェージングするスライス方向傾斜磁場205とを印加し、RFパルス102の印加からTR+ΔTの経過後にスライス選択傾斜磁場206の印加の下にRFパルス103(フリップ角−α)を印加する。このとき核スピンの位相はTR+ΔTの待ち時間によって図2(d)にあった位置からRFパルス103の印加により図2(e)の位置に移動する。
【0020】
その後、繰返し時間TRの間に、スライス方向のリフェーズ、ディフェーズのための傾斜磁場207,208の印加、位相エンコード傾斜磁場301(エンコード用),302(リフェーズ用)及びリードアウト傾斜磁場401(ディフェーズ用)、402(エンコード用)、403(リフェーズ用)を順次印加し、A/D変換器のサンプリング期間501の間にエコー信号601を計測する。このエコー信号計測中に核スピンの位相は図2(e)から図2(f)へ変化する。
【0021】
以後、同様に位相エンコード量を変化させながら繰返し時間TRで極性が交互に反転するRFパルスを印加してエコー信号を計測する。
なお、上記実施形態はn=2のときを説明したものであるが、本発明はn≧3にも適用することが可能であり、n=2,3,4のときのT(i)の値を表1に示す。
【0022】
【表1】
本実施形態では、RFパルス102と103の間に生ずるエコー信号は計測せず、RFパルス103と104の間、104と105の間、…に生ずるエコー信号しか計測しない。したがって、計測時間の延長が懸念されるが、実際の撮影では、最初の10エコー程度は過度状態の振動の影響を避けるために画像再構成には用いないために撮影時間の延長やデータ取得効率の低下にはほとんど影響はないと考えてよい。
【0023】
本発明は心電同期計測にも用いることができる。以下、その実施形態を図4を用いて説明する。図4は1心拍中に4枚の画像を得る、すなわち、1心拍中に1から4までの4つの心時相画像を取得する例を示している。図には、第1心周期の第1心時相についてシーケンスの詳細を示しているが、このシーケンスは、プリパレーションパルスRFpとそれに続き図1に示すパルスシーケンスとから成っている。プリパレーションパルスRFpは、例えば脂肪組織の核スピンを選択的に飽和するもので、各時相の始めに印加される。このプリパレーションパルスRFpを印加すると各時相で定常状態が崩れている。そこで、プリパレーションパルスの印加後に図1のパルスシーケンスを適用するようにして、TRの短縮と、所望の画像コントラストを得られるようにした。なお、ここにTRとΔTの具体的な数値を示すと、TR=4.0ms、ΔT=1.5msである。
【0024】
また、本発明はα/2ポストパルスにも適用できる。ここで、α/2ポストパルスとは、SSFPシーケンスの途中にプリパレーションパルスを挿入したいときなどに印加するもので、SSFP状態にある核スピンの横磁化を縦磁化に戻すRFパルスを言い、〔非特許文献2〕に記載されている。本発明をα/2ポストパルスに用いた実施形態を図5に示す。図5は図1に記載したシーケンスを時間経過を逆転したもので、α/2ポストパルス703を印加するには、その2つ前のRFパルス701の印加後にTR+ΔTの時間を置いてRFパルス702を印加し、RFパルス702の印加からTR/2+ΔTの時間経過後にα/2ポストパルスを印加するようにする。これによりスライス方向のリワインド傾斜磁場801の印加時間に余裕を生じさせることができるので、リワインド傾斜磁場801の印加強度を下げることができる。
【0025】
【非特許文献2】
K.Scheffler et al.: Magnetization Preparation during the Steady State: Fat Saturated 3D True FISP, Proc., ISMAM, 9th Annual Meeting, 440(2001)
【0026】
【発明の効果】
以上述べたように本発明によれば、傾斜磁場電源の定格が小さなMRI装置でも過度状態での磁化の振動を抑制したTRの短いSSFPシーケンスを実施することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態のパルスシーケンスを示す図。
【図2】図1のパルスシーケンスの進行中におけるオフレゾナンス状態にある核スピンの挙動を示す図。
【図3】本発明が適用されるMRI装置の概略構成を示すブロック図。
【図4】本発明を心電同期撮影法へ適用した実施形態を示す図。
【図5】本発明をα/2ポストパルスへ適用した実施形態を示す図。
【符号の説明】
101…フリップ角α/2のRFパルス
102〜105…フリップ角αのRFパルス
201〜213…スライス選択傾斜磁場
301〜305…位相エンコード傾斜磁場
401〜407…リードアウト傾斜磁場
501〜503…サンプリング期間
601〜603…エコー信号
Claims (2)
- フリップ角α / 2 の高周波パルスを印加した後、フリップ角α の高周波パルスを交互に正負に極性を反転しながら繰返し時間T R で連続的に印加し、磁化が過度振動状態から定常状態自由歳差運動に達した後にエコー信号を取得して画像を得る磁気共鳴イメージング装置において、
前記フリップ角α / 2 の高周波パルスと最初のフリップ角α の高周波パルスとの間の時間が繰返し時間T R/2より長く、以降の隣接する前記フリップ角α の高周波パルス間の時間の内の少なくとも一つが前記繰り返し時間TRより長いことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。 - 請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置において、
最初の隣接する前記フリップ角α の高周波パルス間の時間が前記繰り返し時間TRより長いことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
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