JP4137235B2 - 低比重化ポリオルガノシロキサン組成物 - Google Patents

低比重化ポリオルガノシロキサン組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物に関し、特に、低比重の室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
室温硬化型ポリオルガノシロキサン組成物のなかでも、水分と接触して、硬化反応が生起するタイプのものは、縮合反応型の室温硬化性液状シリコーンゴム(RTVシリコーンゴム)として既知である。RTVシリコーンゴムは、接着性に優れるというその特性を生かして、建築・土木工業、電気・電子工業、自動車工業などの分野で、シーリング材、ポッティング材、コーティング材などに広範に用いられている。
【0003】
このような組成物は、一般に分子末端が水酸基で封鎖されたシラノール基末端ポリジオルガノシロキサンをベースポリマーとし、これに加水分解性基を分子内に平均2個以上有する架橋剤、および必要に応じて触媒や接着性向上剤などを配合したものである。
【0004】
これらは、架橋剤および末端のケイ素原子に結合した加水分解反応性基の種類により、硬化機構別に、脱オキシム型、脱アセトン型、脱アルコール型、アミノキシ型、アミド型、アミン型などに分けられる。これらのポリオルガノシロキサンをベースとした各種の組成物が用いられているが、用途および要求される特性に関する種々な問題点の改善が望まれている。
【0005】
そのような1包装型RTVシリコーンゴムは、シリコーンポリマー同士の分子間力が弱いため、種々の架橋剤を添加して硬化させても、充填剤を用いないで得られる硬化物は、強度の低い、脆いゴム状のものであり、その機械特性は、実用に供するには低すぎる。
【0006】
機械特性を向上させるため、種々の無機質充填剤を配合しているが、充填剤を多量に配合することにより、組成物の比重が著しく上昇するという問題が生じている。このような従来の1包装型RTVシリコーンゴムの有していた問題を克服するポリオルガノシロキサン組成物が要望されている。
【0007】
この組成物の高比重化傾向を抑え、低比重のシリコーンシール剤を提供することを目的として、さらに、微小な中空状の充填剤(微小中空体)を充填することにより、組成物の比重を下げることが提案されている。ここで、微小中空体(以下、バルーンという)とは、例えば、「機能性フィラーの最新情報」(シーエムシー)に記載されているように、直径が1mm以下、好ましくは500μm以下の無機質または有機質の材料で構成された中空体である。
【0008】
無機質バルーン(中空体)には、シラスバルーン、パーライトバルーン、ガラスバルーン、シリカバルーン、フライアッシュバルーンのようなケイ酸系バルーンおよびカーボンバルーンのような非ケイ酸系バルーンがある。
【0009】
有機質バルーンには、フェノール樹脂バルーン、エポキシ樹脂バルーン、尿素樹脂バルーンのような熱硬化性樹脂バルーンおよびポリ塩化ビニリデンバルーン、ポリスチレンバルーン、ポリメタクリルエステルバルーン、ビニル樹脂バルーン、ポリアクリロニトリルバルーン、スチレン−アクリル共重合体系バルーンのような熱可塑性樹脂バルーンが挙げられる。また、熱可塑性樹脂バルーンの外側を熱硬化性樹脂バルーンで被覆したものもある。バルーンとしては、発泡後のバルーンを用いてもよく、発泡剤を含むものを配合した後に発泡させて、バルーンとして用いてもよい。
【0010】
無機質バルーンよりも有機質バルーンを用いた方が、得られる硬化物の引張りモジュラスおよび伸びが優れたものになる。有機質バルーンのなかでは、塩化ビニリデンバルーンが特に好ましい。バルーンは、各種の商品名で市販されているものを使用してもよい。
【0011】
しかし、これらのバルーンは、それぞれ異なる問題を有している。シラスバルーンを配合すると、硬化物の機械的強度が低下するばかりか、該バルーン自体の色が与える影響のため、任意の色に着色することが困難になる。また、水ガラスなどを原料としてなるCEL-STAR Z36およびQ-CEL 200(商標:旭硝子)、また、同様にホウケイ酸ガラスからなり二酸化ケイ素純度が約90%であるガラスビーズEMB(商標:東芝バロティーニ)のような通常のガラスバルーンを添加すると強度が低下し、フライアッシュバルーンもバルーン自体の色が与える影響が大きい。EXPANCEL(商標:日本フィライト)のようなポリ塩化ビニリデンバルーンで、接着性向上剤としてアミノアルキルアルコキシシランを用いた場合、バルーンに含まれるイミド基またはアクリル基と反応し、経時的に黄変する。ポリスチレンバルーンおよびマツモトマイクロスフェアー(商標:松本油脂製薬)は、いずれもシリコーンとの相互作用が低いため、充填量が増えるに従い、得られる硬化物の機械的強度が著しく低下するなどの問題があり、応用・実用化する範囲が限られてくる。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の問題点を有していない、硬化物の機械的特性が優れた低比重のポリオルガノシロキサン組成物を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(A)加水分解性基及び水酸基から選択されるケイ素官能基を、分子中に2個以上有するケイ素官能性ポリオルガノシロキサン;
(B)硬化触媒;および
(C)二酸化ケイ素純度96%以上、(C)成分の静水圧による50%破壊圧100kgf/cm2以上であり、焼成処理されているか、または表面の水酸基が有機ケイ素化合物により処理されている、ホウケイ酸ガラス中空状充填剤
を含むことを特徴とする低比重の室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物に関する。
【0014】
本発明は、次の(A)〜(C)成分、すなわち
(A)成分、一般式(1):
【0015】
【化1】
Figure 0004137235
【0016】
(式中、
1は、互いに同一であっても、異なっていてもよい、非置換または置換の1価の炭化水素基であり;
2は、−OSiR3 3-ppであり、ここでR3は、互いに同一であっても、異なっていてもよい、非置換または置換の1価の炭化水素基であり;
Xは、加水分解性基または水酸基であり;
pは、1〜3であり;そして
nは、(A)成分の粘度を所望の値とする数である)
で示されるケイ素官能性ポリジオルガノシロキサン;
(B)成分、硬化触媒;および
(C)成分、ホウケイ酸ガラス中空状充填剤
を含む室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物である。所望により、この組成物に架橋剤および/または無機質充填剤を加えることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
1は、互いに同一であっても、異なっていてもよい、非置換または置換の1価の炭化水素基である。R1として、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシルのようなアルキル基;ビニル、アリルのようなアルケニル基;フェニル、トリル、キシリルのようなアリール基;2−フェニルエチル、2−フェニルプロピルのようなアラルキル基を挙げる。さらに、ハロゲン原子、シアノ基などで置換されていてもよく、クロロメチル、3−クロロプロピル、3,3,3−トリフルオロプロピルのようなハロゲン化アルキル基;3−シアノプロピルのようなシアノアルキル基などの置換炭化水素基が挙げられる。
【0018】
全有機基の85%以上がメチルであることが好ましく、実質的にすべての有機基がメチルであることがより好ましい。
【0019】
一方、耐熱性、耐放射線性、耐寒性または透明性を付与する場合、フェニル基;耐油性、耐溶剤性を付与する場合、3,3,3−トリフルオロプロピル基または3−シアノプロピル基;そして、塗装適性を有する表面を付与する場合、長鎖アルキル基またはアラルキル基を、それぞれ、目的に応じ任意に選択して加えることができる。これらの基を、メチル基と併用することができる。
【0020】
末端基R2のケイ素原子に結合しているR3は、互いに同一であっても、異なっていてもよい、非置換または置換の1価の炭化水素基であり、また、R1と互いに同一でも異なっていてもよく、R1と同様のものを例示することができる。メチル基またはビニル基が好ましい。
【0021】
Xは、ケイ素官能基、すなわち、加水分解性基または水酸基であり、末端基R2中に少なくとも1個存在する。Xとして、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシのようなアルコキシ基;2−メトキシエトキシ、2−エトキシエトキシのような分岐状の置換アルコキシ基;イソプロペノキシのようなエノキシ基;アセトキシ、オクタノキシのようなアシルオキシ基;ジメチルケトキシマト、メチルエチルケトキシマト、ジエチルケトキシマト、メチルブチルケトキシマト、エチルブチルケトキシマトのようなケトキシマト基;ジメチルアミノ、メチルエチルアミノ、ジエチルアミノ、メチルブチルアミノのようなアミノ基;アセトアミド、N−メチルアセトアミドのようなアミド基;メチルエチルアミノキシ、ジエチルアミノキシ、エチルブチルアミノキシのような置換アミノキシ基;N−メチルアセトアミノのような置換カルボニルアミノ基;ブチルアミノ、シクロヘキシルアミノのような置換アミノ基などの加水分解性基が挙げられ、互いに同一であっても、異なっていてもよい。Xは、水酸基、アルコキシ基、アシルオキシ基およびメチルエチルケトキシマト基が好ましく、特にメトキシ基が好ましい。
【0022】
末端基R2におけるケイ素官能基Xの数pは、1〜3である。Xが水酸基で、pが1のものが好ましい。このようなケイ素官能性ポリオルガノシロキサンは、例えば、オクタメチルシクロテトラシロキサンのような環状ジオルガノシロキサン低量体を、水の存在下に酸性触媒またはアルカリ性触媒によって開環重合または開環共重合させることにより、得られた直鎖状ポリオルガノシロキサンの末端に、ケイ素原子に結合する水酸基を導入できる。
【0023】
Xが加水分解性基のものは、例えば、末端に水酸基を有するポリオルガノシロキサンと、任意の加水分解性基を2個以上有するシランとを縮合させて合成することができる。縮合反応中にこのシランに含まれる加水分解性基が1個消費されるため、合成したポリオルガノシロキサンの末端基R2におけるpは、用いた加水分解性基含有シランのそれよりも1個少ない。
【0024】
nは、25℃でのベースポリマーの粘度が20〜1,000,000cP、好ましくは500〜200,000cPの範囲になるように選択する。具体的には、ポリジメチルシロキサンの場合、nは、13〜2,000である。20cP未満では硬化後のゴム状弾性体の伸びが不十分であり、1,000,000cP以上では均一な組成物が得られにくく、押出し作業性も低下する。
【0025】
架橋剤は、下記の一般式(2):
4 4-qSiXq
(式中、
4は、互いに同一であっても、異なっていてもよく、非置換もしくは置換されていてもよい1価の炭化水素基であり;
Xは、前記と同義であり;
qの平均は、2〜4である)
で示される化合物を用いることができる。
【0026】
架橋剤は、Xと反応させ、組成物を硬化させるための加水分解性基を有するケイ素化合物および/またはその部分加水分解縮合物を用いる。分子中にケイ素官能基を2個以上有する(A)成分の場合、架橋剤の非存在下でも架橋反応により硬化するが、架橋剤を併用してもよい。
【0027】
4は、R1として例示した基と同様のものが挙げられ、メチル基またはビニル基が好ましい。また、置換もしくは非置換のアミノ基、エポキシ基含有基、イソシアナト基、(メタ)アクリロキシ基、メルカプト基、またはハロゲン原子で置換されたアルキル基もしくはフェニル基、のような炭素官能基を用いることができ、置換アルキル基としては、置換メチル基、3−置換プロピル基、4−置換ブチル基が挙げられるが、合成が容易で安定なことから、3−置換プロピル基が好ましい。
【0028】
架橋剤の例として、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシランおよびそれらの部分加水分解縮合物のようなアルコキシ基含有化合物;テトラキス(2−エトキシエトキシ)シラン、メチルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、ビニル(2−エトキシエトキシ)シラン、フェニルトリス(2−メトキシエトキシ)シランおよびそれらの部分加水分解縮合物のような置換アルコキシ基含有化合物;メチルトリイソプロペノキシシラン、ビニルトリイソプロペノキシシラン、フェニルトリイソプロペノキシシラン、ジメチルジイソプロペノキシシラン、メチルビニルジイソプロペノキシシランおよびそれらの部分加水分解縮合物のようなエノキシ基含有化合物が挙げられる。
【0029】
さらに、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、3−アミノプロピルトリアセトアミドシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−メチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N−ジメチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランのような置換または非置換のアミノ基含有シラン;3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシランのようなエポキシ基含有シラン;3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナトプロピルメチルジメトキシシランのようなイソシアナト基含有シラン;3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシランのような(メタ)アクリロキシ基含有シラン;3−メルカプトプロピルトリメトキシシランのようなメルカプト基含有シラン;および3−クロロプロピルトリメトキシシランのようなハロゲン原子含有シランなどの炭素官能性シラン、およびそれらの部分加水分解縮合物が挙げられる。
【0030】
架橋剤は、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシランおよびそれらの部分加水分解縮合物、ならびに置換または非置換のアミノアルキル基含有シランを用いることが好ましい。
【0031】
架橋剤の配合量は、(A)成分100重量部に対して、0.1〜25重量部であり、好ましくは0.3〜10重量部である。0.1重量部未満では、架橋が十分に行われず、硬度の低い硬化物しか得られないばかりでなく、架橋剤を配合した組成物の貯蔵安定性が悪い。一方、25重量部を越えて配合すると、得られるゴム状弾性体の物性が低下する。
【0032】
本発明において、上記の非置換の炭化水素基を含有するケイ素官能性化合物の代わりに/とともに、上記のアミノ基または置換炭化水素基を含有する炭素官能性化合物を、架橋剤の一部または全部として用いてもよい。
【0033】
炭素官能性シランの配合量は、上記の架橋剤の一部または全部、すなわち(A)成分100重量部に対して、0.05〜25重量部、好ましくは0.1〜10重量部である。0.05重量部未満では、接着性の向上効果が少なく、その発現が遅い。逆に、25重量部を越えて配合すると、前記のような問題点のほか、貯蔵安定性と作業性が悪くなり、また黄変現象を生ずる。
【0034】
本明細書中、「炭素官能性シラン」とは、炭素官能性基を有するケイ素官能性化合物をいう。
【0035】
本発明の(B)成分は、水分の存在下に(A)成分の加水分解性基X同士および/または(A)成分と架橋剤のXとを反応させて架橋構造を形成させる硬化触媒である。このような成分(B)として、オクタン酸コバルト、オクタン酸マンガン、オクタン酸鉄、オクタン酸亜鉛、オクタン酸スズ、ナフテン酸スズ、カプリル酸スズ、オレイン酸スズのようなカルボン酸金属塩;ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジオクトエート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジオレート、ジブチルスズジメトキシド、ジフェニルスズジアセテート、ジブチルビス(トリエトキシシロキシ)スズ、ジブチルビス(アセチルアセトナト)スズ、ジオクチルスズジラウレートのような有機スズ化合物;テトラエトキシチタン、テトラプロポキシチタン、テトラブトキシチタン、1,3−プロパンジオキシチタンビス(エチルアセチルアセテート)のようなアルコキシチタン類;アルミニウムトリスアセチルアセトネート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、ジイソポロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート、トリエトキシアルミニウムなどの有機アルミニウム;ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、テトライソプロポキシジルコニウム、テトラブトキシジルコニウム、トリブトキシジルコニウムアセチルアセトネート、ステアリン酸トリブトキシジルコニウムなどの有機ジルコニウム化合物;ジイソプロポキシビス(エチルアセチルアセタト)チタンのようなチタンキレート化合物;アミン化合物;第四級アンモニウム化合物が挙げられる。微量で大きな触媒能を有する有機スズ化合物およびアルコキシチタン類が好ましい。
【0036】
(B)成分の配合量は、(A)成分100重量部あたり、通常、0.05重量部〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部である。0.05重量部未満では、硬化触媒として十分に作用せず、逆に、10重量部を越えて配合しても、その配合量に見合う効果がない。また、架橋剤成分にアミノキシ化合物のような自己触媒性を有する化合物を用いる場合、硬化触媒は必須成分ではない。
【0037】
(C)成分は、本発明の本質に関わる成分である。本発明の室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物の特徴である、低比重で、機械的強度の低下が少なく、着色が少なく半透明であり、かつ耐熱性の低下の少ない組成物およびその硬化物を実現するための重要な成分である。本発明に用いられる中空状充填材は、ホウケイ酸を主原料としたホウケイ酸ガラスからなる。(C)成分中に含まれる二酸化ケイ素の純度は96%以上が好ましい。また、好ましい平均粒子径は20〜60μm、さらに好ましくは30〜50μmである。かさ密度は0.1〜0.4g/mlが好ましい。二酸化ケイ素の純度が96%未満である場合、含有している不純物に起因して中空体自体の強度が低下するため、組成物を調製する際に破壊されたり、得られる硬化物の機械的強度の低下を生起する。また、かさ密度0.1g/ml未満であると機械的強度に欠け、0.4g/mlを越えると低比重の効果が低下する。また、平均粒子径が20μm未満であると低比重の効果が低く、60μmを越える場合、機械的強度の低下が著しいため好ましくない。
【0038】
このような中空状充填剤の静水圧による50%破壊圧は100kgf/cm2以上であることがより好ましい。このような中空状充填剤は、温度500〜700℃、好ましくは550〜650℃、圧力1〜6atm、好ましくは1〜4atm、好ましくは窒素零囲気の条件下に5〜120分焼成することが好ましい。ビニルトリメトキシシランのようなアルコキシシラン類;ヘキサメチルジシラザンのようなシラザン類などの有機ケイ素化合物で、表面の水酸基を不活性化させるために反応処理されたものがより好ましい。ここで、アルコキシシランを用いる場合、処理を促進するために加熱してもよい。例えば、ビニルトリメトキシシランを用いる場合は、80℃で0.5〜24時間窒素雰囲気下に加熱処理する。相対湿度90%3日間放置の場合の吸水率は、0.4〜0.8重量%が好ましく、約0.5重量%がより好ましい。
【0039】
(C)成分の配合量は、(A)成分100重量部あたり0.5〜80重量部、好ましくは3〜30重量部である。
【0040】
本発明の組成物に、所望により、本発明の特徴を失わない範囲で添加しうる無機質充填剤は、煙霧質シリカ、焼成シリカ、沈殿シリカ、煙霧質酸化チタン、およびこれらの表面をオルガノクロロシラン類、ポリオルガノシロキサン類、ヘキサメチルジシラザンなどでの処理による疎水化された充填剤、微粉末シリカ、粉砕シリカ、アルミノケイ酸塩、石英粉末、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、有機酸表面処理炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、タルク、けいそう土、カ−ボンブラック、酸化第二鉄、ガラス繊維が好ましい。(A)成分100重量部に対して無機質充填剤0.5〜100重量部の割合で加えることが好ましい。
【0041】
本発明の組成物に、さらに、接着性向上剤、顔料、チクソトロピー性付与剤、押出し作業性を改良するための粘度調整剤、紫外線吸収剤、防カビ剤、耐熱性向上剤、難燃化剤、アルコールスカベンジャーのような安定化剤、表面樹脂化防止剤など、各種の添加剤を加えてもよい。
【0042】
本発明の組成物は、
(A)室温硬化性ポリオルガノシロキサン100重量部に対して、
(B)硬化触媒0.0〜10重量部;および
(C)二酸化ケイ素純度96%以上、(C)成分の静水圧による50%破壊圧100kgf/cm2以上であり、焼成処理されているか、または表面の水酸基が有機ケイ素化合物により処理されている、ホウケイ酸ガラス中空状充填剤0.5〜0重量部
を含むことを特徴とする、室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物が好ましい。
【0043】
本発明の組成物は、
(A)25℃における粘度が20〜500、000cPであり、末端がシラノール基および/または加水分解性基、好ましくはアルコキシ基で封鎖されたポリオルガノシロキサン100重量部;
(B)硬化触媒0.0〜10重量部;
(C)二酸化ケイ素純度96%以上、(C)成分の静水圧による50%破壊圧100kgf/cm2以上であり、焼成処理されているか、または表面の水酸基が有機ケイ素化合物により処理されている、ホウケイ酸ガラス中空状充填剤0.5〜0重量部;並びに
さらに、架橋剤0.1〜25重量部
を含むことを特徴とする、低比重の室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物が好ましい。
【0044】
本発明の組成物は、
(A)25℃における粘度が20〜500、000cPであり、末端がシラノール基および/または加水分解性基、好ましくはアルコキシ基で封鎖されたポリオルガノシロキサン100重量部;
(B)硬化触媒0.0〜10重量部;
(C)二酸化ケイ素純度96%以上、(C)成分の静水圧による50%破壊圧100kgf/cm2以上であり、焼成処理されているか、または表面の水酸基が有機ケイ素化合物により処理されている、ホウケイ酸ガラス中空状充填剤0.5〜0重量部;並びに
さらに、架橋剤0.1〜25重量部;および/または
無機質充填剤0.5〜100重量部
を含むことを特徴とする、低比重の室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物が好ましい。
【0045】
本発明の組成物は、上記の(A)、(B)および(C)成分ならびに各種の添加剤を、湿気を遮断した状態で混合することにより得られる。得られた組成物は、密閉容器中でそのまま貯蔵し、使用時に空気中の水分にさらすことによって硬化する、いわゆる1包装型室温硬化性組成物として使用することができる。また、本発明の組成物は、例えば、架橋剤と硬化触媒に分けた組成物として調製し、適宜2〜3の別々の容器に分けて貯蔵し、使用時にこれらを混合する、いわゆる多包装型室温硬化性組成物として用いることもできる。
【0046】
【実施例】
実施例中で、本発明をより具体的に説明するが、いかなる意味においても本発明を限定するものではない。なお、これらの例において、特に断らない限り、部とあるのはいずれも重量部を表し、粘度などの物性値および放置状態はすべて25℃、相対湿度(RH)60%での値である。
【0047】
下記の参考例、実施例および比較例により組成物を調製して、密封貯蔵した組成物を(a)〜()について評価を行い、表1および2に示した。なお、表3は、接着性の評価基準表である。
【0048】
(a)指触乾燥時間:組成物を20℃、60%RHの零囲気中に押出して、表面に接触した乾燥状態にあることを指で確認できるまでの時間を測定した。
(b)物理特性:組成物を厚さ2mmのシート状になるように調製し、168時間放置し、空気中の湿気により硬化させて、その物理的性質をJIS K 6301により測定した。
(c)貯蔵安定性:湿気を遮断した容器に組成物を入れ、70℃で5日間加熱した後、指触乾燥時間を20℃、60%RHの雰囲気下に測定した。その後、厚さ2mmのシート状になるように調製し、168時間放置し、空気中の湿気により硬化させて、その物理的性質をJIS K 6301により測定した。
(d)接着性:幅25×長さ80×厚さ1mmの各種被着体表面に、金属製ノズル(6mmφ )から組成物を約60mmの長さで吐出し、そのままの状態で168時間放置して、日着体を接着させた試料を作成した。次いで、その界面の接着状態を90〜180°の方向に引張ることにより評価した。
(e)比重:JIS C 2123により測定した。
(f)硬化物の耐熱性:25℃、60%RHで168時間放置し、空気中の湿気により硬化させた後、120℃の循環式加熱炉に14日間放置し、その物理的性質をJIS K 6301により測定した。
【0049】
参考例1
粘度20,000cPのα,ω−ジヒドロキシポリジメチルシロキサン100部に、比表面積200m2/gの煙霧質シリカ14部およびホウケイ酸ガラス中空状充填剤(かさ密度:0.23g/ml;平均粒子径:45μm;二酸化ケイ素純度:97.3%;50%破壊圧=450kgf/cm2)10部を添加して均一に混合した。次に、メチルトリス(メチルエチルケトキシマト)シラン7.0部、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン1.0部およびジブチルスズジラウレ−ト0.1部を添加し、次いで湿気遮断下に均一に混合し、参考組成物1を得た。
【0050】
実施例1
550〜650℃の高温の条件下に10〜60分間焼成して、二酸化ケイ素純度を97.9%に調製したホウケイ酸ガラス中空状充填剤を用いた以外は参考例1と同様にして、組成物1を得た。
【0051】
参考例2
粘度20,000cPのα,ω−ビス(メチルジメトキシシロキシ)ポリジメチルシロキサン100部に、比表面積200m2/gの煙霧質シリカ15部およびホウケイ酸ガラス中空状充填剤(かさ密度:0.19g/ml;平均粒子径:35μm;二酸化ケイ素純度:97.0%;50%破壊圧=250kgf/cm2)10部を添加して均一に混合した。次に、メチルトリメトキシシシラン2.0部、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン1.5部、ヘキサメチルジシラザン3部およびジブチルスズジラウレ−ト0.1部を添加し、次いで湿気遮断下に均一に混合し、参考組成物2を得た。
【0052】
実施例2
10重量%のビニルトリメトキシシランで、80℃で12時間加熱して、表面の水酸基を処理したホウケイ酸ガラス中空状充填剤を用いた以外は参考例2と同様にして、組成物2を得た。
【0053】
参考例3
粘度20,000cPのα,ω−ジヒドロキシポリジメチルシロキサン100部に、脂肪酸表面処理炭酸カルシウム100部、比表面積200m2/gの煙霧質シリカ10部およびホウケイ酸ガラス中空状充填剤(かさ密度:0.19g/ml;平均粒子径:40μm;二酸化ケイ素純度:97.5%;50%破壊圧=430kgf/cm2)10部を添加して均一に混合した。次に、メチルトリメトキシシシラン2.0部、トリス(トリメトキシシリルプロピルイソシアヌレ−ト1.5部および1,3−プロパンジオキシビス(エチルアセチルアセトナト)チタン1.4部を添加し、次いで湿気遮断下に均一に混合し、参考組成物3を得た。
【0054】
実施例3
焼成処理して、二酸化ケイ素純度を97.8%としたホウケイ酸ガラス中空状充填剤を用いた以外は参考例3と同様にして、組成物3を得た。
【0055】
比較例1
粘度20,000cPのα,ω−ジヒドロキシポリジメチルシロキサン100部に、比表面積200m2/gの煙霧質シリカ14部を添加して、均一に混合した。次に、メチルトリス(メチルエチルケトキシマト)シラン7.0部、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン1.0部およびジブチルスズジラウレ−ト0.1部を添加し、湿気遮断下に均一に混合して、比較組成物1を得た。
【0056】
比較例2
粘度20,000cPのα,ω−ビス(メチルジメトキシシロキシ)ポリジメチルシロキサン100部に、比表面積200m2/gの煙霧質シリカ15部を添加して、均一に混合した。次に、メチルトリメトキシシラン7.0部、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン1.5部、ヘキサメチルジシラザン3部およびジブチルスズジラウレ−ト0.1部を添加し、湿気遮断下に均一に混合して、比較組成物2を得た。
【0057】
比較例3
粘度20,000cPのα,ω−ジヒドロキシポリジメチルシロキサン100部に、脂肪酸表面処理炭酸カルシウム100部および比表面積200m2/gの煙霧質シリカ10部を添加して、均一に混合した。次に、メチルトリメトキシシラン2.0部、トリメトキシシリルプロピルシクロトリイソシアヌレ−ト1.5部および1,3−プロパンジオキシビス(エチルアセチルアセトナト)チタン1.4部を添加し、湿気遮断下に均一に混合して、比較組成物3を得た。
【0058】
比較例4
粘度20,000cPのα,ω−ジヒドロキシポリジメチルシロキサン100部に、比表面積200m2/gの煙霧質シリカ14部および平均粒径50μmのガラス製中空状充填材としてCEL-STAR Z36(旭硝子製)10部を添加して、均一に混合した。次に、メチルトリス(メチルエチルケトキシマト)シラン7.0部、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン1.0部およびジブチルスズジラウレ−ト0.1部を添加し、湿気遮断下に均一に混合して、比較組成物4を得た。
【0059】
比較例5
粘度20,000cPのα,ω−ビス(メチルジメトキシシロキシ)ポリジメチルシロキサン100部に、比表面積200m2/gの煙霧質シリカ15部および中空状充填材として平均粒径75μmのQ-CEL 200(旭硝子製)10部を添加して、均一に混合した。次に、メチルトリメトキシシラン2.0部、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン1.5部、ヘキサメチルジシラザン3部およびジブチルスズジラウレ−ト0.1部を添加し、湿気遮断下に均一に混合し比較組成物5を得た。
【0060】
比較例6
粘度20,000cPのα,ω−ビス(メチルジメトキシシロキシ)ポリジメチルシロキサン100部に、比表面積200m2/gの煙霧質シリカ15部および中空状充填材として平均粒径100μmのシラスバルーン(サンキライト04:三機工業(株)製)10部を添加して、均一に混合した。次に、メチルトリメトキシシラン2.0部、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン1.5部、ヘキサメチルジシラザン3部およびジブチルスズジラウレ−ト0.1部を添加し、湿気遮断下に均一に混合して、比較組成物6を得た。
【0061】
比較例7
粘度20,000cPのα,ω−ビス(メチルジメトキシシロキシ)ポリジメチルシロキサン100部に、比表面積200m2/gの煙霧質シリカ15部および中空状充填材として平均粒径100μmのEXPANCEL 401DE(日本フィライト製)10部を添加し、均一に混合した。次に、メチルトリメトキシシラン2.0部、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン1.5部、ヘキサメチルジシラザン3部およびジブチルスズジラウレ−ト0.1部を添加し、湿気遮断下に均一に混合して、比較組成物7を得た。
【0062】
比較例8
粘度20,000cPのα,ω−ジヒドロキシポリジメチルシロキサン100部に、脂肪酸表面処理炭酸カルシウム100部、比表面積200m2/gの煙霧質シリカ10部および中空状充填材として平均粒径100μmのマイクロスフェアーF-80(松本油脂製薬製)10部を添加して、均一に混合した。次に、メチルトリメトキシシラン2.0部、トリス(トリメトキシシリルプロピルイソシアヌレ−ト1.5部および1,3−プロパンジオキシビス(エチルアセチルアセトナト)チタン1.4部を添加し、湿気遮断下に均一に混合して、比較組成物8を得た。
【0063】
【表1】
Figure 0004137235
【0064】
【表2】
Figure 0004137235
【0065】
【表3】
Figure 0004137235
【0066】
【発明の効果】
本発明による室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物は、低比重で、かつ優れた貯蔵安定性を有し、硬化の際に優れた接着性を発現する組成物である。また、硬化物は優れた機械的性質を有する。これらのことから、従来品と比較して、着色が少なく半透明品が得られ、また、同重量でより広い面積に施工できるなどの利点を有する、きわめて有用な材料である。

Claims (6)

  1. (A)加水分解性基及び水酸基から選択されるケイ素官能基を、分子中に2個以上有するケイ素官能性ポリオルガノシロキサン;
    (B)硬化触媒;および
    (C)二酸化ケイ素純度96%以上、(C)成分の静水圧による50%破壊圧100kgf/cm2以上であり、焼成処理されているか、または表面の水酸基が有機ケイ素化合物により処理されている、ホウケイ酸ガラス中空状充填剤
    を含むことを特徴とする低比重の室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物。
  2. さらに、架橋剤および/または無機質充填剤を含む、請求項1記載の組成物。
  3. (C)成分が、かさ密度0.1〜0.4g/ml、平均粒子径20〜60μmのものである、請求項1または2記載の組成物。
  4. (C)成分が、相対湿度90%3日間放置の場合の吸水率0.5重量%以上である、請求項1〜3のいずれか1項記載の組成物。
  5. (C)成分が、焼成処理されたものである、請求項1〜4のいずれか1項記載の組成物。
  6. (C)成分が、表面の水酸基有機ケイ素化合物により処理されたものである、請求項1〜5のいずれか1項記載の組成物。
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