JP4136774B2 - 材料試験機 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、試験片の絞り値を測定する材料試験機に関する。
【0002】
【従来の技術】
日本工業規格JIS Z2241によれば、絞り値は、負荷前の試験片の断面積から破断後の断面積を差し引いた値を負荷前の断面積で除算してパーセント換算した値と規定されている。従来、破断後の断面積は、試験片の切断部分を突き合わせてその箇所の径をノギスやマイクロメーターで測定し、この値から算出していた。(例えば、非特許文献1参照)。また、負荷前の試験片の破断予想領域の径もノギスやマイクロメーターで測定していた。
【0003】
【非特許文献1】
JIS Z2241(金属材料引張試験方法)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記の従来の断面積算出法では、破断面が円形や矩形等の単純な形状である場合には、比較的容易に正確な断面積を算出できる。しかし、例えば、負荷前の試験片の断面形状が円形であっても、破断面形状が円形から逸脱している場合や、試験片が異形材の場合などは、ノギスやマイクロメーターによる寸法測定が煩雑であり、正確な測定をしようとすると多大の時間を要した。破断面形状が複雑になるほどこの傾向は強く、測定された寸法から正確な断面積と絞り値を算出するのは困難であった。
【0005】
本発明は、破断面形状を問わず正確な断面積や絞り値が算出できる材料試験機を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
(1)請求項1の材料試験機は、一対のつかみ具に把持した試験片を負荷して破断させる負荷手段と、つかみ具に把持した試験片の破断面を撮像する撮像手段と、撮像手段を移動する移動手段と、試験片の破断後、一対のつかみ具の間隔を広げ、さらに、撮像手段を破断面と対向する位置へ移動させる制御手段と、撮像手段で撮像した画像から画像処理によって破断面の断面積を算出し、破断面の断面積と負荷前の試験片の断面積とに基づいて試験片の絞り値を算出する算出手段とを備えたことを特徴とする。
【0007】
(2)請求項2の発明は、請求項1の材料試験機において、破断後、破断面と対向する位置へ撮像手段が移動した後、撮像手段と破断面との距離を計測する距離計測手段をさらに備え、移動制御手段は、距離計測手段で計測された計測距離が予め定められた基準撮影距離と等しくなるように撮像手段をその光軸方向に移動させ、算出手段は、基準撮影距離で基準試料を撮像した画像に基づいて1ピクセル当りの長さを算出し、基準撮影距離で撮像した画像から破断面の断面積を算出することを特徴とする。
【0008】
(3)請求項3の発明は、請求項1または2の材料試験機において、移動手段は、試験機本体に立設され負荷軸方向に延在する軸と、軸に装着され、負荷軸方向と直交する面内の任意の位置へ撮像手段を移動するリンク機構と、軸に沿ってリンク機構を昇降する昇降手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明による材料試験機について図面を参照しながら説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態による材料試験機の本体の構成を模式的に示す正面図である。試験機本体1は、モータM、減速機2、ねじ棒3、クロスヘッド4、ヨーク5、上つかみ部6、下つかみ部7およびロードセル8を備えている。基台9上には、後述する計測系10が設けられている。
【0010】
図2は、第1の実施の形態による材料試験機における、破断面の断面積を計測する計測系の構成を模式的に示す構成図である。図2(a)は正面図であり、図2(b)は、図2(a)のI−I線から見た平面図である。破断した試験片100の一方は、上つかみ部6に把持され、図示を省略したが、破断した試験片100の他方は、下つかみ部7に把持されている。
【0011】
計測系10は、デジタルカメラ11、レーザ距離計12、第1アーム13、連結軸14、第2アーム15、回転軸16およびCPU17を備えている。デジタルカメラ11は、例えばCCD11aを有している。デジタルカメラ11とレーザ距離計12は一体化され、第1アーム13の先端に連結部材13aを介して取り付けられている。第1アーム13、連結部材13a、連結軸14、第2アーム15および回転軸16はリンク機構をなしている。このリンク機構は、試験機本体1の基台に固定されている回転軸16に回動可能に支持されるとともに、回転軸16に沿って矢印H方向に昇降することができる。デジタルカメラ11とレーザ距離計12は、CPU17に接続されている。ディスプレイ18は、出力機器としてCPU17に接続されている。
【0012】
図1において、試験機本体1は、モータMの回転力を減速機2により減速し、1対のねじ棒3を回転させ、クロスヘッド4を昇降させる。固定側のヨーク5にはロードセル8を介して上つかみ部6が連結されており、可動側のクロスヘッド4には下つかみ部7が連結されている。試験片100の両端を上つかみ部6と下つかみ部7で把持し、クロスヘッド4を下降させると、試験片100には荷重が徐々に加わり、やがて破断に至る。
【0013】
図2により、破断面の断面積を計測する手順について説明する。
(1)試験片100の破断を確認した後、クロスヘッド4を下降させて、上つかみ部6と下つかみ部7の間隔を拡げる。破断した試験片100は、上つかみ部6に把持されたままである。
(2)その間隔部分に、レーザ距離計12が一体化されたデジタルカメラ11をリンク機構により挿入する。このリンク機構により、デジタルカメラ11とレーザ距離計12のいずれの光軸も試験片100の破断面100aの直下となるように位置決めできる。
(3)デジタルカメラ11と破断面100aの距離、すなわち計測距離Lをレーザ距離計12で計測する。レーザ光が破断面100aで反射されてレーザ距離計12に戻る時間により、計測距離Lが求められる。
【0014】
破断面の断面積Sを算出するには、二通りの方法がある。
第1の方法は、レーザ距離計12で測った計測距離Lで破断面100aを撮像する。第2の方法は、レーザ距離計12で測った計測距離Lが基準撮影距離Lに等しい位置で破断面100aを撮像する。
【0015】
ここで、1ピクセル当たりの長さのキャリブレーションを説明する。基準撮影距離Lで長さが既知の基準試料を撮像する。この画像に対して周知の濃淡画像処理とエッジ検出処理を施し、画像の輪郭を抽出する。基準試料の長さは長手方向に既知であるとすると、既知の長さを長手方向のピクセル数で除算することより、1ピクセル当たりの実際の長さを算出することができる。1ピクセル当たりの実際の面積sも算出することができる。
【0016】
第1の方法は、計測距離Lで撮像した画像について上記と同様の画像処理を施し、画像の輪郭を抽出し、この輪郭線で囲まれたCCDのピクセル数を求める。上記のキャリブレーションにより算出されている1ピクセル当たりの長さを利用して、破断面100aの断面積Sを算出する。計測距離Lと基準撮影距離Lとの比をαとすると、計測距離Lで撮像した破断面100aの実際の断面積Sは、断面積Sに係数αの二乗を乗じて補正することにより、算出できる。
【0017】
負荷前の試験片100の破断予想領域の断面積Sは、予め算出しておく。例えば、試験片が丸棒であれば、ノギスで直径を計測して断面積Sを算出すればよい。丸パイプの一部をカットした弧状輪体試料では、試料の切断面をデジタルカメラ11で撮像し、撮影した画像に基づいて上述した手法で断面積Sを算出することができる。
【0018】
断面積SおよびSを式1に代入すれば、絞り値Rが算出できる。上記のキャリブレーション、画像処理、断面積と絞り値の算出は、CPU17にて実行される。
【数1】
R=100×(S−S)/S・・・(1)
【0019】
第2の方法は、レーザ距離計12で測った計測距離Lが基準撮影距離Lに等しくなる位置までデジタルカメラ11を上下動し、L=Lになった地点で破断面100aを撮影する。デジタルカメラ11とレーザ距離計12は、回転軸16に沿って不図示の駆動装置により、矢印H方向に上下動することによって、計測距離Lを変化させることができる。基準撮影距離Lで撮影された画像から画像処理によりピクセル数を求め、断面積Sを算出し、式1により、絞り値Rを算出することができる。
【0020】
第1の方法は、回転軸16に沿ってデジタルカメラ11等を上下動する駆動装置は不要であるが、補正演算が必要である。第2の方法は、逆に、補正演算は不要であるが、デジタルカメラ11等を上下動する駆動装置が必要である。
【0021】
(第2の実施の形態)
図3は、第2の実施の形態による材料試験機における、破断面の断面積を計測する構成を模式的に示す構成図である。
試験片載置台20は、試験片100を載置する架台21と試験片100の転倒を防止するホルダ22から構成される。架台21の上板21aは、少なくとも破断面100aが当接する部分は透明である。デジタルカメラ11は、架台21の内側に設置されている。試験片載置台20は、試験機本体1に設置されていても離れた場所に設置されていてもよい。
【0022】
第2の実施の形態により、破断面の断面積を計測する手順について説明する。(1)長さが既知の基準試料を架台21の上面21aに載置して、デジタルカメラ11で撮像する。撮像した画像をCPU17に取り込み、上述した周知の画像処理演算により1ピクセル当たりの長さを算出する。
(2)図1の試験機本体1で破断させた試験片100を上つかみ部6から外して、ホルダ22内に立設させ、デジタルカメラ11で破断面100aを撮影し、その画像をCPU17に取り込む。CPU17は、取得した画像に対して上述したと同様の画像処理演算を行い、破断面画像の輪郭内のピクセル数を算出する。CPU17は、基準試料について求めた1ピクセル当たりの長さを用いて、破断面100aの断面積Sを算出し、式1により、絞り値Rを算出する。
【0023】
第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態のようなリンク機構を備えた計測系10が不要となり、低コストで正確に破断面の断面積を計測することができる。
【0024】
第1および第2の実施の形態の材料試験機は、ディスプレイ18を備え、ディスプレイ18は、負荷前の試験片の断面積、破断面100aの断面積、絞り値R、破断面100aの画像、荷重−変形量曲線、試験条件等の情報を表示することができる。なお、荷重は、ロードセル8により電気信号に変換されてCPU17へ入力される。試験片100の変形量、すなわちクロスヘッド4の移動距離もCPU17へ入力される。
【0025】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、破断面形状を問わず正確な断面積や絞り値が算出できる材料試験機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る材料試験機の本体の構成を模式的に示す正面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る材料試験機における、破断面の断面積を計測する計測系の構成を模式的に示す構成図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係る材料試験機における、破断面の断面積を計測する構成を模式的に示す構成図である。
【符号の説明】
1:試験機本体
6:上つかみ部
7:下つかみ部
10:計測系
11:デジタルカメラ
12:レーザ距離計
17:CPU
18:ディスプレイ
20:試験片載置台
21:架台
100:試験片
100a:破断面

Claims (3)

  1. 一対のつかみ具に把持した試験片を負荷して破断させる負荷手段と、
    前記つかみ具に把持した試験片の破断面を撮像する撮像手段と、
    前記撮像手段を移動する移動手段と、
    前記試験片の破断後、前記一対のつかみ具の間隔を広げ、さらに、前記撮像手段を前記破断面と対向する位置へ移動させる制御手段と、
    前記撮像手段で撮像した画像から画像処理によって前記破断面の断面積を算出し、前記破断面の断面積と負荷前の前記試験片の断面積とに基づいて前記試験片の絞り値を算出する算出手段とを備えたことを特徴とする材料試験機。
  2. 請求項1の材料試験機において、
    前記破断後、前記破断面と対向する位置へ前記撮像手段が移動した後、前記撮像手段と前記破断面との距離を計測する距離計測手段をさらに備え、
    前記移動制御手段は、前記距離計測手段で計測された計測距離が予め定められた基準撮影距離と等しくなるように前記撮像手段をその光軸方向に移動させ、
    前記算出手段は、前記基準撮影距離で基準試料を撮像した画像に基づいて1ピクセル当りの長さを算出し、前記基準撮影距離で撮像した画像から破断面の断面積を算出することを特徴とする材料試験機。
  3. 請求項1または2の材料試験機において、
    前記移動手段は、試験機本体に立設され負荷軸方向に延在する軸と、前記軸に装着され、前記負荷軸方向と直交する面内の任意の位置へ前記撮像手段を移動するリンク機構と、前記軸に沿って前記リンク機構を昇降する昇降手段とを備えることを特徴とする材料試験機。
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