JP4136557B2 - マットレス用充填材及びマットレス - Google Patents

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    • A47C31/00Details or accessories for chairs, beds, or the like, not provided for in other groups of this subclass, e.g. upholstery fasteners, mattress protectors, stretching devices for mattress nets
    • A47C31/006Use of three-dimensional fabrics

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はマットレス用充填材及びマットレスに関し、特に、快眠を助長し、また褥そう防止効果の優れた寝具用として好適なマットレス用充填材及びマットレスに関する。
【0002】
【従来の技術】
寝具用マットレスとしては、ポリウレタンフォームや綿等の繊維系のクッション材をカバー部材の中に充填したものやエアを注入したものが多く用いられているが、特に褥そう防止効果の優れたマットレスとして、ゲル材や粘弾性ポリウレタンをクッション材として利用したものも知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、快適な睡眠を得るための条件としては、まず、人の呼吸、心拍や揺動などの生体振動を利用した入眠促進と寝姿勢や寝返りによる筋肉のつぶれなどによる負担を小さくすることが必要になる。従って、それらの動きにより発生する力、加速度及びジャークを効果的に吸収し、振動刺激として利用し、入眠を促進させるためには、人の筋肉に近似する柔らかなバネ特性、減衰比が0.2〜0.4となるクッション特性、及び体圧分散性が求められる。しかも、人体形状には個人差があり、かつ睡眠時姿勢にも個人差があるため、優れた体圧分散性を発揮させるためには、寝返りや寝姿勢変化などの体動に寝具形状が容易に追随し、かつ睡眠時及び起き上がり時において底付き感のないサポート力を備えている必要がある。また、睡眠中の人の衣服内環境は、睡眠中に人体から放出される新陳代謝による熱と平均で約数百ccにもなる水分の影響を受けて形成されるため、快適な睡眠を得るに当たっては、十分な換気機能を備え、衣服内、寝床内の湿度を低く抑えて、蒸れ感が少なくなる構造であることが求められる。
【0004】
しかしながら、上記したポリウレタンフォームや綿等のクッション材を用いた場合には、人体の重心部の骨突出部に荷重が集中し易く、体圧分散性の点で問題があることが指摘されている。また、体圧分散性の高い粘弾性ウレタンマットを用いた場合には、時刻歴あるいは熱による変化が大きく、寝具用マットレスとして用いた場合には、大きなストロークにより、寝返り性や起き上がり性があまりよくないという問題もある。一方、柔軟な密閉袋内に空気を充填したエア式のクッション材や水を充填したウオーター式のクッション材の場合には、体圧分散性に優れるものの、人体を任意の姿勢で保持するサポート力が小さく、姿勢を保持するためには筋力の作用を多く必要とする。また、ゲルマットにも言えることであるが、これらのマットは、換気機能の点でも問題がある。
【0005】
すなわち、従来、マットレスとして用いられているクッション材(充填材)は、高い体圧分散性、体動への追随性、睡眠時及び起き上がり時における底付き感のないサポート力、高い換気機能といった快適な睡眠に必要な条件のうち、一部しか備えておらず、更なる改善が求められていた。
【0006】
本発明は上記した事情に鑑みなされたものであり、人の筋肉の荷重−たわみ特性に近似したクッション性を有し、ずれ力の軽減を図ることができ、体圧分散性、体動への追随性に優れていると共に、人体を保持するサポート力も高く、かつ高い換気機能を発揮でき、入眠、快眠を促進し、褥そうを防止するのに好適なマットレス用充填材及びマットレスを提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記した課題を解決するため、請求項1記載の本発明では、表裏二層のグランド編地同士が連結糸で結合されてなる立体編物を用いてなり、カバー部材内に充填されて使用されるマットレス用充填材であって、
上層立体編物と下層立体編物の端末部が内方に突出した状態で接合され、上層立体編物と下層立体編物の周縁部によって曲げ弾性を発揮し得る袋状に形成されてなる袋状充填材と、
立体編物からなり、前記袋状充填材内に、少なくとも1枚固定せずに収容される中間充填材と
を具備することを特徴とするマットレス用充填材を提供する。
請求項2記載の本発明では、前記袋状充填材を構成する上層立体編物が、少なくとも一面に凹凸部を備えた構造であることを特徴とする請求項1記載のマットレス用充填材を提供する。
請求項3記載の本発明では、前記上層立体編物は、前記凸部が、隣接する凹部間に断面略アーチ状に形成され、この断面略アーチ状の凸部の曲げ方向の弾性と凹部に配置された連結糸の摺動に伴う摩擦による減衰を利用可能な構造であることを特徴とする請求項2記載のマットレス用充填材を提供する。
請求項4記載の本発明では、請求項1〜3のいずれか1に記載のマットレス用充填材と、
前記マットレス用充填材を収容する吸汗・速乾性布帛からなるカバー部材と
を具備することを特徴とするマットレスを提供する。
請求項5記載の本発明では、通気性を備え、前記マットレス用充填材の袋状充填材を構成する下層立体編物の少なくとも下側に配置される、ポリウレタンフォームからなる他の充填材を有することを特徴とする請求項4記載のマットレスを提供する。
請求項6記載の本発明では、前記ポリウレタンフォームは、断面凹状に形成され、該凹状部内に前記立体編物からなるマットレス用充填材が配置されることを特徴とする請求項5記載のマットレスを提供する。
請求項7記載の本発明では、断面凹状に形成された前記ポリウレタンフォームの周壁上端部が、該凹状部内に配置されるマットレス用充填材よりも上方に突出する高さで形成されていることを特徴とする請求項6記載のマットレスを提供する。
請求項8記載の本発明では、前記マットレス用充填材を構成する下層立体編物と中間充填材のうちの少なくとも一方は、前記ポリウレタンフォームよりも面剛性が高いことを特徴とする請求項5記載のマットレスを提供する。
請求項9記載の本発明では、前記カバー部材を構成する吸汗・速乾性布帛が、断面W字型の単糸からなるポリエステル異形断面マルチフィラメントを少なくとも一部に用いて構成された布帛であることを特徴とする請求項5記載のマットレスを提供する。
請求項10記載の本発明では、前記カバー部材と、前記マットレス用充填材の袋状充填材を構成する上層立体編物との間に、コットン製の布帛が配置されていることを特徴とする請求項5記載のマットレスを提供する。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、図面に示した実施形態に基づいて本発明を更に詳しく説明する。図1は、本実施形態にかかるマットレス1の断面構造を示す図である。この図に示したように、本実施形態にかかるマットレス1は、マットレス用充填材10、他の充填材としてのポリウレタンフォーム100、カバー部材200を備えて構成される。
【0009】
マットレス用充填材10は、袋状充填材20と中間充填材30とを備えてなる。袋状充填材20は、人体側に配置される上層立体編物21と、床面側に配置される下層立体編物22とから形成され、それらの端末部21a,22aを接合することによって袋状に形成されている。端末部21a,22aは内方に突出するように設けられている。具体的には、上層立体編物21と下層立体編物22とを重ね合わせ、その端末部21a,22aを接合した後、ひっくり返して該端末部21a,22aを内方に突出せしめたものである。端末部21a,22aをこのように接合することにより、上層立体編物21及び下層立体編物22の周縁部21b,22bにおいて、かかる立体編物による弾性と高剛性部となった接合面により、曲げ弾性が発揮され、上層立体編物21と下層立体編物22とからなる袋状充填材20の袋の形状維持性を高め、変形し易くすると共に、変形後の復元性を高め、人体の体動に対する追従性及びサポート力の向上、並びに人体の筋肉との間で生じるずれ力の低減に寄与する。端末部21a,22aを接合して剛性を高くする手段としては、縫製手段、溶着手段等が挙げられるが、該端末部21a,22の接合面積を縫製よりも大きく確保しつつ容易に接合でき、これによって周縁部21b,22bで発揮される曲げ弾性を高めることができることから振動溶着手段を用いることが好ましい。
【0010】
中間充填材30は、袋状充填材20を構成する上層立体編物21と下層立体編物22との間に、固定せずに挿入配設され、ストローク感、弾性感並びにフィット感を高めるために設けられる。中間充填材30も袋状充填材20と同様に立体編物から構成される。中間充填材30を構成する立体編物は1枚であってもよいし、2枚以上の積層体からなるものであってもよい。いずれにしても、袋状充填材20内に少なくとも1枚は固定せずに独立して配置されるため、袋状充填材20内での動きが拘束されず自由度が与えられており、体動追随性に優れている。また、上記した袋状充填材20の体動追随性を阻害することもない。
【0011】
ここで、上記したマットレス用充填材10は、人体に対する反力を抑制して血流障害を抑制し、体動追随性を高めるため、人の筋肉、好ましくはリラックス状態の人体の臀部の筋肉の荷重−たわみ特性(バネ特性)に近似した特性を有するように、上層立体編物21、下層立体編物22及び中間充填材30を構成する立体編物の材料、グランド編地の編み目の大きさ、連結糸の太さ等を選択する。すなわち、上記構成からなるマットレス用充填材10を、所定の大きさの加圧板を用いて略垂直方向に加圧した際の荷重−たわみ特性が、同様の条件で測定される臀部の筋肉を加圧した際の荷重−たわみ特性とほぼ同じか、それよりもやや柔らかな特性を備えているように形成する。本実施形態においては、上記のように、上層立体編物21と下層立体編物22とを接合することによって、周縁部21b,22bにおいて所定の曲げ弾性が発揮させる構成となっているが、この際の周縁部21b,22bの曲げ弾性も、人体の臀部の筋肉を加圧した際のバネ特性に近似するか、それ以下になるように設定することが好ましい。二次元編織物の場合には、端末部同士を接合してひっくり返して使用しても、それらの周縁部で弾性は生じないが、本実施形態のように立体編物の端末部同士を接合してひっくり返すことにより、周縁部21b,22bにおいてかかる人体の臀部のバネ特性に近似した曲げ弾性、初期のストローク感並びにフィット感を生じさせることができる。
【0012】
また、上層立体編物21は、凹凸部を備えた構造であることが好ましい。例えば、図2に示したように、立体編物の原反を、コース方向に沿って所定間隔ごとに、一対のグランド編地21c,21dが近接するように加工し、これにより凹部21eを形成して、隣接する凹部21e,21e間に凸部21fを形成する。
【0013】
凹部21eは、一対のグランド編地21c,21dのうち、一方側からのみ、好ましくは人体に近い側のみに形成することもできるが、図1及び図2に示したように、両側から形成することがより好ましい。グランド編地21c,21d同士を近接させて凹部21eを形成する手段としては、溶着手段、接着手段のほか、ミシン縫いによる縫合手段等を用いることができる。なかでも、振動溶着手段を用いることが好ましい。溶着部位の剛体化を避けることができると共に、接合強度が強力だからである。
【0014】
このようにして、凹部21eを形成することにより、該凹部21eの形成部位においては、当該領域に配置された連結糸21gが傾斜し、あるいはたわむことになり、さらに、凹部21eを介して隣接する凸部21fの領域に連結糸21gが移動するように偏在していくものが生じ、当該領域においては、近辺の連結糸21g同士が交絡して接合する。このように、交絡接合される結果、当該連結糸21gは、交絡部21hを挟んだ両側が、それぞれの結合対象となっているグランド編地21c,21dに対して、それぞれ独立したバネ要素(変形要素)として機能することが可能となる。従って、図3に模式的に示したように、ある一つの凹部21eにおいて交絡した連結糸21gの交絡部21hから、隣接する凹部21eにおいて交絡した連結糸21gの交絡部21hまでの間が、グランド編地21cと当該領域に配置された連結糸21gを含めて、断面略アーチ状の一つのバネ要素及び糸間摩擦による減衰要素と見なせる構造が形成されることになる。
【0015】
このため、凹凸部を有する上層立体編物21は、凹部21eと凸部21fとの弾性率が異なることになり、凸部21fが負荷荷重により圧縮変形する際には、立体編物に凹凸部を形成せずに用いる場合と比較して、連結糸21gの座屈強度が相対的に小さくなって座屈特性が表れにくくなり、図3の想像線で示したように、交絡した連結糸21gを含む、断面略アーチ状のバネ要素の曲げ方向の弾性機能が相対的に大きくなる。すなわち、凸部21fのバネ特性は、凹凸部を形成しないことを除いて同様の条件で形成された立体編物と比較すると、バネ定数が小さくなり微小荷重域から変形し易くなって、座屈特性が表れにくくなる。但し、その荷重特性においては、凹凸部を有する上層立体編物21は、上記の曲げ弾性に連結糸21gの復帰時における糸間摩擦が作用するため、凹部の糸間摩擦が増大し、復帰時において荷重がゼロになってもヒステリシスによって復帰動が遅延する粘弾性体に類似した特性を示す。この結果、入力に応じて変形の方向等が迅速に変化し、入力に対応したバネ要素や減衰要素が作用することになるため、極めて高い体圧分散機能を発揮できる。
【0016】
また、凹凸部を形成した上層立体編物21は、凹部21eにおいて連結糸21gを交絡接合させることにより、凹部21eの形成ラインに対して略直交する方向に伸縮する弾性も付与される。このため、厚み方向に生じる、断面略アーチ状のバネ要素による曲げ方向のバネ性のほか、これに略直交する面方向に生じる弾性(バネ性)が断面略アーチ状のバネ要素を形成する連結糸によって加わることになり、この伸びがバネ定数を下げるのにさらに寄与する。さらに、糸間摩擦の増大による粘弾性体に類似した特性により減衰特性も大きくなる。
【0017】
また、図4に示したように、人体の骨により突出した部位(直径30mmの加圧板にほぼ相当)が接した時点においては、凹部21eを挟んだ両側の凸部21fがへこみながら外側に逃げるように変形し、部分的へたりが生じる。その後、さらに荷重がかかり広い面積で加圧された際には、上層立体編物21全体で荷重を支持することになるが、このような凹凸部を有することにより図4に示したような変形を示すことから、小さな変位領域におけるフィット感が向上するものである。さらに、人体の筋肉の剪断方向の摩擦力が低減できるため、人体の筋肉とマットレス用充填材10との間で生じるずれ力自体も低減される。
【0018】
中間充填材30を構成する立体編物及び下層立体編物22は、上記した上層立体編物21との組み合わせによって、人体の臀部の筋肉の荷重−たわみ特性に近似した特性を発揮できるものであればよいが、両者のうちいずれかは、好ましくは、下層立体編物22は、ポリウレタンフォーム100よりも線形性が高く面剛性の高い荷重−たわみ特性を有するものを用いることが好ましい。後述のように、下層立体編物22の下側にはポリウレタンフォーム100が配設されるが、ポリウレタンフォーム100は、ストローク感を作り出すために、人体の臀部のバネ特性よりも柔らかなバネ特性を有するものが用いられる。従って、この柔らかなバネ特性を有するポリウレタンフォーム100の上に配置される下層立体編物22として、面剛性の高いものを用いることにより、荷重が一点に集中して圧力が高くなるようなことがなく、反力が分散して体に伝えられる。そして、所定のストローク感を保持しつつ、底付き感も抑制される。底付き感の抑制機能は、このような柔らかなバネ特性を有する層と面剛性の高い層とを直列に機能させることによって効果的に発揮されるものであり、いずれか一方の層のみでは底付き感の抑制効果は小さい。
【0019】
また、マットレス用充填材10は、上記したように立体編物の組み合わせから構成され、立体編物はその特性として多数の編目ないしは隙間を備え、空気の移動が極めて容易になされる構造を備えている。従って、空気の移動を許容する換気体積が極めて大きく、換気機能が優れており、寝床内湿度の低減効果が高い。
【0020】
ここで、袋状充填材20を構成する上層立体編物21と下層立体編物22、並びに中間充填材30を構成する立体編物は、ポリトリメチレンテレフタレート繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリアミド繊維、ポリアクリロニトリル繊維、ポリプロピレン繊維等の合成繊維、綿、麻、ウール等の天然繊維等の任意の繊維を、グランド編地を形成する繊維や連結糸として用いて構成することができる。
【0021】
但し、特に、上層立体編物21のように凹凸部を形成しない場合には、特開平11−269747号公報に開示されているポリトリメチレンテレフタレート繊維を連結糸として用いたものであることが好ましい。ポリトリメチレンテレフタレート繊維は、トリメチレンテレフタレート単位を主たる繰り返し単位とするポリエステル繊維であって、トリメチレンテレフタレート単位を50モル%以上、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、最も好ましくは90モル%以上含むものである。ポリトリメチレンテレフタレート繊維を用いることにより、線径が細くても、圧縮弾性回復性を損なうことなくフィット性、形状追従性に優れた立体編物を製造することができる。
【0022】
ポリトリメチレンテレフタレート繊維は、モノフィラメント原糸であることが好ましく、直径0.1mm以上0.35mm以下が好ましい。より好ましくは直径0.15mm以上0.3mm以下である。0.1mm未満又は0.35mmを超える場合には、編成される立体編物に所望の荷重−たわみ特性を付与することが困難となると共に、この立体編物を用いて上記した筋肉に近似した荷重−たわみ特性を付与することが困難となる。なお、直径が上記範囲である限り、ポリトリメチレンテレフタレート繊維のマルチフィラメント原糸、スパン糸、捲縮糸であってもよい。ポリトリメチレンテレフタレート繊維の断面形状は限定されるものではなく、丸、四角、三角、扁平等の任意の断面形状のものを用いることができる。
【0023】
ポリトリメチレンテレフタレート繊維からなる連結糸の本数は、編成される立体編物2.54cm平方の面積中に130本以上1000本以下の割合で設けることが好ましい。より好ましくは200本以上900本以下である。また、厚みは3mm以上20mm以下が好ましい。より好ましくは3mm以上15mm以下、最も好ましくは5mm以上13mm以下である。厚さ3mm未満ではクッション性が不足し、厚さ20mmを超えると連結糸が横倒れしやすくなり形態安定性に欠ける。
【0024】
立体編物の表層と裏層を構成するグランド編地を形成する繊維としては、例えば、ポリトリメチレンテレフタレート繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリアミド繊維、ポリアクリロニトリル繊維、ポリプロピレン繊維等の合成繊維、綿、麻、ウール等の天然繊維等の任意の繊維を用いることができるが、ポリトリメチレンテレフタレート繊維やポリエチレンテレフタレート繊維を用いることが立体編物の耐光性等の耐久性、リサイクル性の点で好ましい。表層と裏層のグランド編地に用いる繊維の形態は未加工糸、紡績糸、撚糸、仮撚加工糸、流体噴射加工糸等いずれのものを採用してもよいが、仮撚加工糸を用いると振動減衰性向上、風合い向上の点で好ましい。
【0025】
立体編物は、相対する2列の針床を有する編機で編成することができる。このような編機として、ダブルラッセル編機、ダブル丸編機、Vベッドを有する横編機等がある。寸法安定性のよい立体編物を得る上で、ダブルラッセル編機を用いるのが好ましい。
【0026】
立体編物の表層と裏層のグランド編地は、表面を平坦な組織にして肌触りを良好なものにしても良く、四角、六角等のメッシュ編地やマーキゼット編地等複数の開口部を有する編地に編成して、意匠性を付与しても良い。表層と裏層のグランド編地を異なる編組織としても良い。
【0027】
連結糸は、表層と裏層のグランド編地中にループ状の編み目を形成してもよく、挿入組織で表層と裏層のグランド編地に引っかけた構造でもよいが、少なくとも2本の連結糸が表層と裏層の編地を互いに逆方向に斜めに傾斜して、クロス状(X状)やトラス状に連結することが、立体編地の形態安定性を向上させる上で好ましい。
【0028】
立体編物の仕上げ加工方法は、生機を、精練、染色、ヒートセット等の工程を通して仕上げることができる。立体編物の表層や裏層のグランド編地を構成する繊維や連結糸に原液着色糸を用いると染色工程を簡略化でき好ましい。
【0029】
他の充填材であるポリウレタンフォーム100は、上記したように人体の臀部の筋肉の荷重−たわみ特性よりも柔らかなバネ特性を有するものが用いられ、ストローク感を作り出すと共に、面剛性の高い下層立体編物22と組み合わされることによって底付き感を抑制する機能を果たすものである。ポリウレタンフォーム100は、かかる機能を発揮するために、下層立体編物22の少なくとも下側に配置される大きさを有していればよいが、上記した袋状充填材20と中間充填材30との組み合わせからなるマットレス用充填材10を収容し得る凹状部110を備えた断面凹状に形成されたものであることが好ましい。
【0030】
上記したマットレス用充填材10がポリウレタンフォーム100の凹状部110内に固定されずに配置されることにより、寝返り等の体動によって、ポリウレタンフォーム100が動くと、マットレス用充填材10に風を送り込む機能を果たし、立体編物から構成されるマットレス用充填材10の換気機能を高めることができる。
【0031】
ポリウレタンフォーム100は、通気性を備えているものを用いる。この通気性は、連泡のものであれば、連通している孔部を利用して確保することができる。また、セル膜をなくした構成として通気性を確保し、あるいは通気性をさらに高めることもできる。また、通気性をより高めるために、底壁部130に厚み方向に貫通する通気孔としての穴を別途設けることもできる。さらに、ポリウレタンフォーム100の一部の厚みを薄く加工することにより通気性を確保する構成とすることもできる。このような通気孔を有することにより、暑い季節においては、該通気孔を通じて外部との空気の出入りを容易化し、換気機能を高めることができる。但し、ポリウレタンフォーム100の断熱効果を高めるためには、周壁部120には別途の通気孔や厚みを薄く加工した部位を形成せず、上記した連泡のポリウレタンフォームを用いることが好ましい。寒い季節においては、ポリウレタンフォーム100の周壁部120と後述の引き布220により過度な通気を抑制し、ポリウレタンフォーム100の断熱・保温機能により、寝床内温度・湿度を所定の範囲で保つことができる。なお、換気機能と、断熱・保温機能を図るため、上記したように通気孔としての穴を別途設ける場合には、周壁部120には形成せずに、底壁部130のみに形成することが好ましい。
【0032】
また、上記凹状部110を形成する周壁部120の周壁上端部120aは、凹状部110内に配置されるマットレス用充填材10よりも、10mm以上、好ましくは30mm〜80mm上方に突出する高さで形成されていることが好ましい。この上方に突出している周壁上端部120aは、人体の左右、頭部側、足側のいずれにおいて突出していても良いが、少なくとも足側において突出していることが好ましい。周壁上端部120aに足(脚部)を載せることにより、仰向け状態での決行が良くなり、快適な睡眠を助長する。また、人体の左右に位置する周壁上端部120aが上方に突出している場合には、掛け布団や敷き布団のずれを抑制でき、人体の頭部側に位置する周壁上端部120aが突出している場合には、枕のずれを抑制できる。
【0033】
上記したマットレス用充填材10及びポリウレタンフォーム100は、ポリウレタンフォーム100の凹状部110内にマットレス用充填材10を収容した状態で、カバー部材200内に収容される。カバー部材200は、吸汗・速乾性布帛からなることが好ましい。このような吸汗・速乾性布帛としては、例えば、特開平11−222721号公報に開示された断面W字型の単糸からなるポリエステル異形断面マルチフィラメントを少なくとも一部に用いて構成された布帛(例えば、旭化成(株)製、商品名「テクノファイン」)が挙げられる。かかる布帛によれば、吸汗性、速乾性に優れているため、皮膚近傍からの汗を迅速に吸収し、濡れ戻りも抑制できる。また、断面W字型の扁平型異形糸からなるため、皮膚との摩擦が小さく、皮膚刺激が小さいという利点も有する。本実施形態によれば、吸汗・速乾性布帛からなるカバー部材200内に、上記した換気機能の優れたマットレス用充填材10及びポリウレタンフォーム100が配設されているため、カバー部材200による吸汗・速乾性機能をさらに高めることができる。
【0034】
なお、カバー部材200を構成する吸汗・速乾性布帛は、二次元編織物の形態であってもよいが、三次元編織物(スペーサーファブリック)の形態であることが、吸汗性、速乾性機能を高めるために好ましい。
【0035】
本実施形態においては、ポリウレタンフォーム100の周壁部120の周壁上端部120aが上方に突出している。従って、この周壁部120とマットレス用充填材10との境界においては、図1に示したように、ポリウレタンフォーム100の底壁部130に沿って固定用のワイヤ部材210を配置し、このワイヤ部材210に対してカバー部材200の一部からなる引き布220を引き込んで設けることが好ましい。なお、引き布220は、カバー部材200とは別部材から構成し、カバー部材200に縫製等により連結したものから構成することもできる。これにより、周壁部120とマットレス用充填材10との段差が顕著になり、意匠性を高めることができると共に、掛け布団や敷き布団のずれ防止機能も高めることができる。また、上記のように、引き布220によって過度の通気を抑制できるという利点もある。
【0036】
マットレス用充填材10は、カバー部材200内に直接収容することもできるが、カバー部材200と、マットレス用充填材10の袋状充填材20を構成する上層立体編物21との間には、コットン製の布帛300を配設することが好ましい。より簡易に配設し、また、コットン製の布帛300のずれを防止するため、図1に示したように、コットン製の布帛300は、袋状充填材20の周囲を被覆するように配設することが好ましい。カバー部材200の裏面側にかかるコットン製の布帛300を有することにより、人体から生じる水分を適宜に保持し、静電気の発生を低減し、帯電しにくいという利点を有すると共に、保温性を補助する機能も果たす。
【0037】
(試験例)
次のような材料を用いてマットレス1を製作した。
(1)上層立体編物21
編機:ダブルラッセル編機(9ゲージ/2.54cm、釜間距離15mm)
ウェール密度:10本/2.54cm
コース密度:14本/2.54cm
仕上がり厚み(一対のグランド編地の表面間の距離):11.5mm
一方のグランド編地:1170デシテックス/96fポリエステル・BCFマルチフィラメント(捲縮加工糸)
他方のグランド編地:660デシテックス/192fポリエステル・BCFマルチフィラメント(捲縮加工糸)
連結糸:660デシテックス/1fポリエステル
一方のグランド編地の組織:2コースメッシュの変化組織
他方のグランド編地の組織:クインズコード
一方のグランド編地の糸と連結糸とにより形成される編目の合計太さ:1830デシテックス(一部3000デシテックス)
他方のグランド編地の糸と連結糸とにより形成される編目の合計太さ:1980デシテックス
凸部の圧縮率:57.9%
凸部の圧縮弾性率:98.8%
凸部と凹部との圧縮率の差:57.8%
凹部の振動溶着条件:加圧力18.2kgf/m、振幅1.0mm、時間1.2sec
凸部の幅:5ウェール
凹部の幅:2ウェール
【0038】
なお、圧縮率及び圧縮弾性率は、JASO規格M404−84「圧縮率及び圧縮弾性率」に基づいた試験方法により測定される。具体的には、50mm×50mmに切り出した3枚の試料に、それぞれ、厚み方向に初荷重3.5g/cm(0.343kPa)で30秒間加圧したときの厚さを測り、次に、200g/cm(19.6kPa)の圧力のもとで10分間放置したときの厚さを測る。次に、荷重を除いて10分間放置後、再び3.5g/cm(0.343kPa)で30秒間加圧したときの厚さを測る。そして、次式により圧縮率及び圧縮弾性率を算出し、それぞれ3枚の平均値で表したものである。
【0039】
式1:
圧縮率(%)={(t−t)/t}×100
【0040】
式2:
圧縮弾性率(%)={(t’−t)/(t−t)}×100
【0041】
ここに、tは、3.5g/cm(0.343kPa)で加圧したときの厚さ(mm)であり、tは、200g/cm(19.6kPa)で加圧したときの厚さ(mm)であり、t’は、再び3.5g/cm(0.343kPa)で加圧したときの厚さ(mm)である。
【0042】
(2)下層立体編物22
14ゲージ、釜間15mmのダブルラッセル編機においてL1、L2、L3、L4、L5、L6の6枚の筬を用い、表層のグランド編地を形成する2枚の筬(L1、L2、)から835デシテックス240フィラメントのポリエチレンテレフタレート繊維仮撚加工糸(旭化成株式会社製ポリエステル仮撚加工糸167デシテックス48フィラメントの5本引き揃え)を、L1ガイドに2イン2アウトの配列で、L2ガイドに2アウト2インの配列で供給し、裏層のグランド編地を形成する2枚の筬(L6、L7)から501デシテックス144フィラメントのポリエチレンテレフタレート繊維仮撚加工糸(旭化成株式会社製ポリエステル仮撚加工糸167デシテックス48フィラメントの3本引き揃え)をガイドにオールインの配列で供給し、連結糸を形成する2枚の筬(L3、L4)から390デシテックス(直径0.19mm)のポリトリメチレンテレフタレートモノフィラメント(旭化成株式会社製)を、L3ガイドに2イン2アウトの配列で、L4ガイドに2アウト2インの配列で供給した。以下に示す編組織で、打ち込み13コース/2.54cmの密度で立体編物の生機を編成した。得られた生機を150℃×1分で乾熱ヒートセットし、厚さ9.5mm、重量925g/m、編地密度14コース/インチ、13ウエール/インチ、単位面積当たりの連結糸本数364本/2.54cm平方の立体編物を得た。
【0043】
(編組織)
L1:4544/2322/1011/3233/
L2:1011/3233/4544/2322/
L3:3245/2310/2310/3245/
L4:2310/3245/3245/2310/
L5:1110/0001/
L6:2210/2234/
【0044】
(3)中間充填材30を構成する立体編物
材料:ポリエステル
厚さ:12mm
グランド編地:
たて糸・・・ポリエチレンテレフタレート
330デシテックス72フィラメント
よこ糸・・・ポリエチレンテレフタレート
660デシテックス72フィラメント
グランド編地の編み組織:1/4角目と1/4角目(WX)
連結糸:ポリエチレンテレフタレート
880デシテックスモノフィラメント
【0045】
(4)ポリウレタンフォーム100
厚さ30mmのスラブウレタンを用いて、四方に周壁部120を形成した。外寸:幅910mm×長さ1920mm、内寸(凹状部110の大きさ):幅850mm×長さ1860mmであった。また、周壁部120の高さは60mmであった。また、使用したスラブウレタンは、密度0.044kg/cm、硬度22kg(JIS)であった。
【0046】
(5)カバー部材200
材料:旭化成(株)製、商品名「テクノファイン」
織り方:ダブルラッセル
大きさ:幅920mm、長さ1930mm、厚さ2mm
【0047】
(6)コットン製の布帛300
材料:コットン
織り方:ボーダー織
大きさ:幅910mm、長さ1920mm、厚さ2mm
【0048】
上層立体編物21と下層立体編物22は、端末部21a,22a同士を振動溶着した後、ひっくり返し、該端末部21a,22を内方に突出させ、袋状充填材20を構成した。
【0049】
試験例のマットレス1に対し、直径30mm、直径98mmの加圧板を用いて、50mm/分の速度で100Nまで加圧した。この際の荷重−たわみ特性を、日本人男性の臀部筋肉のリラックス状態の荷重−たわみ特性と共に図5及び図6に示す。
【0050】
この結果から、明らかなように、いずれも、試験例のマットレス1は、臀部筋肉の荷重−たわみ特性に近似していることがわかる。直径30mmの加圧板で圧縮した場合には、ヒステリシスロス量が大きく、反力の少ないクッション特性を示し、また、ポリウレタンフォーム100のバネ特性がほとんど作用していないため、袋状充填材20と中間充填材30とから構成される立体編物を用いたマットレス用充填材10のみで筋肉の荷重−たわみ特性に近似した傾向を示している。直径98mmの加圧板で圧縮した図6のグラフでは、ヒステリシスロス量が小さくバネ感のあるクッション特性を示す。また、ヒステリシスロス量が相対的に大きくなっている変位量20mm以上の領域で、ポリウレタンフォーム100の柔らかいバネ特性が重畳されているが、変位量20mm未満の領域では、マットレス用充填材10の特性が表れている。特に、変位量13mm以下の領域ではほとんど荷重が上がっていないが、これは、袋状充填材20の曲げ弾性が大きく作用しているためであり、反力の小さな特性を有することがわかる。また、変位量が大きくなった際に、ポリウレタンフォーム100のバネ特性が重畳されるため、しっかりしたサポート力が得られることがわかる。
【0051】
また、直径200mmの加圧板を用いて50mm/分の速度で1000Nまで加圧した際の荷重−たわみ特性は、図7に示した通り、ヒステリシスロス量が大きく、反力の小さい、減衰の大きいクッション特性を示した。睡眠時においては、直径200mmの加圧板により測定される約20N近辺のバネ定数が小さく大きなヒステリシスロスにより、反力が小さくなり好ましい。そして、図7に示したように、試験例のマットレス1は、この範囲におけるバネ定数が約0.5kg/mmであり、極めて低いバネ定数であることが分かる。また、変位量30mm以上では、ポリウレタンフォーム100のバネ特性が加味され、バネ定数が高くなっている。これらの特性から、寝返りをうった際の衝撃力を緩和し、また、起き上がり時におけるサポート力を高められることが分かる。
【0052】
また、試験例のマットレス1に対して、重さ6.7kgのウエイトを落下させ減衰比を測定したところ、図8に示したような結果が得られた。得られた減衰比は、0.224であり、振動工学において、バネ特性と減衰特性のバランスがとれ、衝撃力をよく吸収する好ましい減衰比とされる0.2〜0.4の範囲に収まっていた。
【0053】
さらに、試験例のマットレス1のカバー部材200の表面を、木片に貼り付けた摩擦布に対し、30回こすり、帯電圧を測定した。測定環境は、室温20℃、湿度40%RHであり、摩擦前のカバー部材200の帯電圧及び摩擦布の帯電圧が50V以下であることを確認して行った。帯電圧は、簡易帯電圧測定装置(装置名:STATIRON-DZ、SHISHIDO ELECTROSTATIC.LTD社製)を用いて測定した。
【0054】
結果は、摩擦布が、ポリエステル裏地の場合のカバー部材200の帯電圧は150Vであり、摩擦布が、綿シャツ地の場合の帯電圧は600Vであり、摩擦布がウール表地の場合の帯電圧は350Vであった。
放電等のトラブルが起こる帯電圧は3000V以上であり、試験例のマットレス1は、通常の使用では、静電気によるトラブルが生じにくいことが分かった。但し、マットレス1は、コットン製の布帛300を備えており、これにより、人体から発生する水分を適宜量保持することが可能であるため、実際に人が使用した場合には、帯電圧はさらに低く、静電気によるトラブルはより生じにくいと考えられる。
【0055】
上記した試験例のマットレス1と、従来公知のエアーマット(大きさ:幅84×長さ190cm、重量3.1kg、ウレタンフィルム伸縮布張り中に、空気を注入したものであって、表面にウレタンフィルム伸縮布からなるシーツを敷いたもの)に、それぞれ二人の被験者A,Bが仰向け状態で2時間就寝した際の寝床内湿度、寝床内温度、皮膚温、下肢の血流量を測定した。なお、寝床内湿度及び寝床内温度は、温湿度センサ(THP−28 神栄製)を感湿面を外側にして、被験者が着用したパジャマ上の胸及び背中にテープで貼り付けて設置し、測定した。皮膚温は熱電対を利用した表面温度センサ(SE9125 アンリツ製)を前額部、胸、背中、左手中指先、左足踵部の計5箇所の皮膚にテープで貼り付けて設置し、測定した。下肢の血流量は、レーザードップラー式血流センサ(ALF−21 アドバンス製)を左足踵部の皮膚にテープで貼り付けて設置し、測定した。被験者は同一のパジャマを着用し、タオルケットを使用した。また、試験時の室内環境は、室温25℃、湿度50%RHであった。
結果を図9〜図12に示す。
【0056】
図9〜図12から明らかなように、寝床内温度は、試験例のマットレス1のもつ通気性により、体温とほぼ同等か、それ以下で安定している。これに対し、エアマットは上昇傾向にある。皮膚温は大差がなく、試験例のマットレス1の高い通気性が、寝床内温度に対して寄与が大きいことが伺える。寝床内温度は、体温(皮膚温)への依存が大きいため、顕著な差として表れていないと考えられる。これに対し、寝床内湿度はいずれも試験例のマットレス1の方が、エアーマットより低く、安定化の傾向にある。また、寝床内湿度は、睡眠中の様々な反応から、50±5%RHの湿度が好ましいとされているが、試験例のマットレス1は、被験者A,Bのいずれも、この好ましい範囲に近い結果が得られたのに対し、エアーマットでは、特に人体との接触面において好ましい範囲から大きく外れていた。すなわち、胸部においては大差はなかったが、背中においては大きな差があり、試験例のマットレス1の通気性の高さが伺える。
【0057】
また、図9(d)と図10(d)、並びに図11(d)と図12(d)から、血流量を比較すると、いずれも、試験例のマットレス1では、血流量の低下が少なく、他方、エアーマットは、血流量の低下が著しく、エアマットの振動時のみ回復していることが分かる。これは、試験例のマットレス1における体圧分散性及び体動変化に対する追随性が高く、かつ人体への反力及びずれ力が小さいことを示すものである。
【0058】
また、被験者Aについて、試験前後の体重変化から発汗量を測定し、次のような結果を得た。
Figure 0004136557
この結果より、試験例のマットレス1は、通気性がよいため、発汗による体温の低下が小さいことがわかった。つまり、試験例1のマットレス1を使用した場合には、生理的補償作用(ホメオスタシス)が少なく、筋肉の熱発生が少なく、睡眠中の生理機能の負担によるストレスが小さい状態になる。このため、生体平衡の崩れが小さく、呼吸器、循環器その他諸器官の総合的活動が穏やかで、リラックス状態の睡眠を提供できる。これは、睡眠時には基礎代謝条件よりも、さらに筋肉の弛緩が進み、自律神経活動や、内臓の代謝なども低下する。この睡眠代謝は、睡眠の深さ、睡眠前の活動状態、食事の量などによっても異なるが、発汗の少ない環境下では基礎代謝の増加が抑えられる。従って、試験例のマットレス1を用いた場合には、人の睡眠の日内リズムを安定化させ、深睡眠やレム睡眠の割合の高い、質の高い睡眠を確保できる。
また、被験者Bについて、体圧分布を測定したところ、図13に示したような結果が得られた。体圧分布は、背中付近と臀部付近との差が小さく、バランスがとれていることが望ましい。試験例のマットレス1の場合には、臀部付近において多少背中付近よりも高い圧力を受ける部位が存在するものの、背中付近と臀部付近との間で大きな差がなかった。これに対し、エアマットでは、背中付近に圧力のピークが存在し、臀部付近との差が大きかった。
【0059】
次に、試験例のマットレス1を加振機上に載置し、入力周波数0.5Hz、1.0Hz、1.5Hzで、振幅5mm(ピーク間距離10mm)で加振し、マットレス1の振動周波数とパワースペクトル(G)を調べた。結果を図14に示す。
【0060】
人の呼吸に伴う体の振動周波数は、通常1.0Hz付近である。そして、人に対し、10〜15Hzの範囲の振動を与えると、振動刺激となり、呼吸に伴って生じている1.0Hz付近の低周波振動に重畳されて、カオス的な1/fゆらぎに近似した振動となって、入眠促進効果が高くなることが報告されている。従って、1.0Hz付近の入力周波数、具体的には、個人差も考えて、上記のように0.5Hz、1.0Hz、1.5Hzの入力周波数により加振した際に、マットレス1の高調波共振が10〜15Hzの範囲に存在すれば、実際に人が寝た際の入眠促進効果が高いことになる。図14(a)〜(c)から明らかなように、試験例のマットレス1は、0.5Hz、1.0Hz、1.5Hzのいずれの振動に対しても、それぞれ高調波共振が11.5Hz、11Hz、10.5Hzをピークとして、10〜15Hzの範囲に表れており、このマットレス1を用いた場合に、カオス的な1/fゆらぎに近似した振動が有効に生じると考えられ、速やかな入眠効果が期待できることが分かった。
【0061】
ここで、図15は、取付フレーム410を介して加振機本体400に連結された載置板420を備えたマットレス用振動装置を示す図である。かかるマットレス用振動装置の載置板420上にマットレス1を設置することにより、上記した0.5Hz〜1.5Hz、好ましくは1.0Hz付近の振動を強制的に付与し、マットレス1に10〜15Hzの範囲の高調波共振を発揮させるものである。従って、かかるマットレス用振動装置を用いれば、より速やかな入眠効果を期待できる。なお、個人差もあるが、入眠後、このような振動刺激が不要の場合に備え、加振機本体400にはタイマを付設し、所定時間後、停止する構成とすることもできる。
【0062】
【発明の効果】
本発明のマットレス用充填材は、上層立体編物と下層立体編物の端末部が内方に突出した状態で接合され、上層立体編物と下層立体編物の周縁部によって曲げ弾性を発揮し得る袋状に形成されてなる袋状充填材と、立体編物からなり、前記袋状充填材内に、少なくとも1枚固定せずに収容される中間充填材とを備えてなる。また、本発明のマットレスは、上記マットレス用充填材を吸汗・速乾性布帛からなるカバー部材内に収容してなり、好ましくは他の充填材としてのポリウレタンフォームが配設されてなる。このため、微細な体動変化に対する反応が迅速であり、体圧分散性、体動追随性に優れると共に、人体を保持するサポート力も高く、しかも、立体編物を用いているため高い換気機能を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の一の実施形態にかかるマットレスの構造を示す概略断面図である。
【図2】図2は、袋状充填材を構成する上層立体編物の構造を説明するための断面図である。
【図3】図3は、上層立体編物の作用を説明するための図である。
【図4】図4は、上層立体編物の作用を説明するための図である。
【図5】図5は、試験例のマットレスを直径30mmの加圧板で加圧した際の荷重−たわみ特性を示す図である。
【図6】図6は、試験例のマットレスを直径98mmの加圧板で加圧した際の荷重−たわみ特性を示す図である。
【図7】図7は、試験例のマットレスを直径200mmの加圧板で加圧した際の荷重−たわみ特性を示す図である。
【図8】図8は、試験例のマットレスの減衰比を測定した図である。
【図9】図9は、被験者Aが試験例のマットレスを用いて睡眠した際のデータを示す図であり、(a)が寝床内湿度、(b)が寝床内温度、(c)が皮膚温、(d)が血流量をそれぞれ示す。
【図10】図10は、被験者Aがエアマットを用いて睡眠した際のデータを示す図であり、(a)が寝床内湿度、(b)が寝床内温度、(c)が皮膚温、(d)が血流量をそれぞれ示す。
【図11】図11は、被験者Bが試験例のマットレスを用いて睡眠した際のデータを示す図であり、(a)が寝床内湿度、(b)が寝床内温度、(c)が皮膚温、(d)が血流量をそれぞれ示す。
【図12】図12は、被験者Aがエアマットを用いて睡眠した際のデータを示す図であり、(a)が寝床内湿度、(b)が寝床内温度、(c)が皮膚温、(d)が血流量をそれぞれ示す。
【図13】図13は、被験者Bの体圧分布を示し、(a)が試験例のマットレスを用いた場合の体圧分布を、(b)がエアマットを用いた場合の体圧分布をそれぞれ示す。
【図14】図14(a)〜(c)は、マットレスを加振機上に載置し、それぞれ入力周波数0.5Hz、1.0Hz、1.5Hzで加振した際の試験結果を示す図である。
【図15】図15は、マットレス用振動装置を示す概略斜視図である。
【符号の説明】
1 マットレス
10 マットレス用充填材
20 袋状充填材
21 上層立体編物
21c,21d グランド編地
21e 凹部
21f 凸部
21g 連結糸
22 下層立体編物
30 中間充填材
100 ポリウレタンフォーム
110 凹状部
120 周壁部
120a 周壁上端部
130 底壁部
200 カバー部材
300 コットン製の布帛

Claims (10)

  1. 表裏二層のグランド編地同士が連結糸で結合されてなる立体編物を用いてなり、カバー部材内に充填されて使用されるマットレス用充填材であって、
    上層立体編物と下層立体編物の端末部が内方に突出した状態で接合され、上層立体編物と下層立体編物の周縁部によって曲げ弾性を発揮し得る袋状に形成されてなる袋状充填材と、
    立体編物からなり、前記袋状充填材内に、少なくとも1枚固定せずに収容される中間充填材と
    を具備することを特徴とするマットレス用充填材。
  2. 前記袋状充填材を構成する上層立体編物が、少なくとも一面に凹凸部を備えた構造であることを特徴とする請求項1記載のマットレス用充填材。
  3. 前記上層立体編物は、前記凸部が、隣接する凹部間に断面略アーチ状に形成され、この断面略アーチ状の凸部の曲げ方向の弾性と凹部に配置された連結糸の摺動に伴う摩擦による減衰を利用可能な構造であることを特徴とする請求項2記載のマットレス用充填材。
  4. 請求項1〜3のいずれか1に記載のマットレス用充填材と、
    前記マットレス用充填材を収容する吸汗・速乾性布帛からなるカバー部材と
    を具備することを特徴とするマットレス。
  5. 通気性を備え、前記マットレス用充填材の袋状充填材を構成する下層立体編物の少なくとも下側に配置される、ポリウレタンフォームからなる他の充填材を有することを特徴とする請求項4記載のマットレス。
  6. 前記ポリウレタンフォームは、断面凹状に形成され、該凹状部内に前記立体編物からなるマットレス用充填材が配置されることを特徴とする請求項5記載のマットレス。
  7. 断面凹状に形成された前記ポリウレタンフォームの周壁上端部が、該凹状部内に配置されるマットレス用充填材よりも上方に突出する高さで形成されていることを特徴とする請求項6記載のマットレス。
  8. 前記マットレス用充填材を構成する下層立体編物と中間充填材のうちの少なくとも一方は、前記ポリウレタンフォームよりも面剛性が高いことを特徴とする請求項5記載のマットレス。
  9. 前記カバー部材を構成する吸汗・速乾性布帛が、断面W字型の単糸からなるポリエステル異形断面マルチフィラメントを少なくとも一部に用いて構成された布帛であることを特徴とする請求項5記載のマットレス。
  10. 前記カバー部材と、前記マットレス用充填材の袋状充填材を構成する上層立体編物との間に、コットン製の布帛が配置されていることを特徴とする請求項5記載のマットレス。
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