JP4136428B2 - 水性サンディングシーラー及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水性サンディングシーラー及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
サンディングシーラーは、主に木工用クリヤー塗装の下塗りに用いられるもので、塗膜の空研ぎによって平坦な素地を作り、上塗り塗料の密着性を増し、かつ上塗り塗膜が平滑な面を作るために用いられるものである。サンディングシーラーには、乾燥が速いこと、研磨紙で磨いたときに研ぎやすいこと、研磨紙の目が詰まりにくいこと、等の性能が求められている。
【0003】
従来のサンディングシーラーは、溶剤系のアクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル−ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂等が用いられている。しかし、有機溶剤系のサンディングシーラーは、人体への悪影響、爆発火災等の安全衛生上の問題や、大気汚染等の公害問題があるため、非溶剤系又は低溶剤系のサンディングシーラーの要望が高まっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
非溶剤系又は低溶剤系のサンディングシーラーのタイプには、水性タイプ、紫外線硬化・電子硬化タイプ等が挙げられる。しかし、従来の水性タイプのサンディングシーラーは、特に研磨紙の目が詰まりやすいという問題があり、また、紫外線硬化タイプや電子線硬化タイプのサンディングシーラーは、反応性希釈剤に用いられるアクリルモノマーの臭気の問題があった。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、特定の自己乳化性アクリル−ウレタン共重合体を用いた水性サンディングペーパーが、良好な乾燥性・研磨性・目詰まり性、付着性等を示すことを見い出し、本発明を完成させるに至った。
【0006】
すなわち本発明は以下の(1)〜(9)に示されるものである。
(1)エチレン性不飽和モノマーと、メルカプト基及び親水性極性基含有ウレタンプレポリマーとを、ラジカル重合により結合した自己乳化性アクリル−ウレタン共重合体を樹脂成分として含有すること、を特徴とする水性サンディングシーラー。
【0007】
(2)エチレン性不飽和モノマーと、有機ポリイソシアネートと、メルカプト基及び活性水素基を含有する化合物と、親水性極性基及び活性水素基を含有する化合物とを、ウレタン化反応及びラジカル重合により結合した自己乳化性アクリル−ウレタン共重合体を樹脂成分として含有すること、を特徴とする水性サンディングシーラー。
【0008】
(3)エチレン性不飽和モノマーが、親水性極性基含有エチレン性不飽和モノマーを少なくとも含有するエチレン性不飽和モノマーである、前記(1)又は(2)の水性サンディングシーラー。
【0009】
(4)エチレン性不飽和モノマーが、ケト基あるいはアルデヒド基含有エチレン性不飽和モノマーを少なくとも含有するエチレン性不飽和モノマーである、前記(1)又は(2)の水性サンディングシーラー。
【0010】
(5)メルカプト基及び親水性極性基含有ウレタンプレポリマーが、メルカプト基及び親水性極性基以外に更にエチレン性不飽和二重結合を含有するウレタンプレポリマーである、前記(1)、(3)、又は(4)の水性サンディングシーラー。
【0011】
(6)前記メルカプト基及び親水性極性基含有ウレタンプレポリマーが、メルカプト基及び親水性極性基以外にケト基あるいはアルデヒド基を含有するウレタンプレポリマー又はメルカプト基、親水性極性基及びエチレン性不飽和二重結合以外にケト基あるいはアルデヒド基を含有するウレタンプレポリマーである、前記(1)、(3)、又は(4)の水性サンディングシーラー。
【0012】
(7)前記(4)、(5)又は6に記載の自己乳化性アクリル−ウレタン共重合体と、多官能ヒドラジド化合物からなること、を特徴とする水性サンディングシーラー。
【0013】
(8)前記(1)の水性サンディングシーラーの製造方法であって、少なくとも有機ポリイソシアネートと、メルカプト基及び活性水素基を含有する化合物と、親水性極性基及び活性水素基を含有する化合物とを、反応させてメルカプト基及び親水性極性基含有ウレタンプレポリマーを合成し、次いで、該プレポリマーと、エチレン性不飽和モノマーとを、ラジカル重合開始剤を用いてラジカル重合させて自己乳化型アクリル−ウレタン共重合体を合成し、次いで、該共重合体を水に乳化させること、を特徴とする水性サンディングシーラーの製造方法。
【0014】
(9)前記(2)に記載の水性サンディングシーラーの製造方法であって、少なくとも有機ポリイソシアネートと、メルカプト基及び活性水素基を含有する化合物と、親水性極性基及び活性水素基を含有する化合物と、エチレン性不飽和モノマーとを、ラジカル重合開始剤を用いてラジカル重合させると共にウレタン化反応させて自己乳化型アクリル−ウレタン共重合体を合成し、次いで、該共重合体を水に乳化させること、を特徴とする水性サンディングシーラーの製造方法。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。本発明の水性サンディングシーラーに用いられる自己乳化性アクリル−ウレタン共重合体は、少なくともウレタンセグメントに親水性極性基が導入されている。この自己乳化性アクリル−ウレタン共重合体は、メルカプト基を有する親水性極性基含有ウレタンプレポリマーあるいはその構成成分のメルカプト基及び活性水素基を含有する化合物のメルカプト基を連鎖移動剤として、エチレン性不飽和モノマーのエチレン性不飽和二重結合をラジカル重合あるいはこれと同時にウレタン化反応させた構造のものである。
【0016】
本発明の水性サンディングシーラーの主成分である自己乳化性アクリル−ウレタン共重合体の構成成分について説明する。本発明に用いられるエチレン性不飽和モノマーとしては、親水性極性基含有エチレン性不飽和モノマー、ケト基又はアルデヒド基含有エチレン性不飽和モノマー、及びその他のエチレン性不飽和モノマーが挙げられる。これらは単独であるいは任意の組み合せの混合物として用いることができるが、親水性極性基含有エチレン性不飽和モノマーを少なくとも含有するエチレン性不飽和モノマー(混合物)、あるいはケト基又はアルデヒド基含有エチレン性不飽和モノマーを少なくとも含有するエチレン性不飽和モノマー(混合物)が好ましく、更にこの場合、その他のエチレン性不飽和モノマーを50〜95モル%含有するエチレン性不飽和モノマー(混合物)が好ましい。本発明においては、得られるアクリル−ウレタン共重合体に自己乳化性を付与させるために、少なくともウレタンセグメントに親水性極性基を導入したものであるが、アクリルセグメントとウレタンセグメントの両方に親水性極性基を導入するほうが、いずれか片方のみに導入するより、少ない導入量で共重合体に自己乳化性を付与でき、結果として被膜の耐水性が向上するので好ましい。
【0017】
この親水性極性基含有エチレン性不飽和モノマーとしては、ポリ(オキシアルキレン)エーテルグリコールモノアクリレート、ポリ(オキシアルキレン)エーテルグリコールモノメタクリレート、ポリ(オキシアルキレン)エーテルグリコールモノアルキルエーテルアクリレート、ポリ(オキシアルキレン)エーテルグリコールモノアルキルエーテルメタクリレート、グリシジルアクリレートやグリシジルメタクリレート等のエチレン性不飽和二重結合とエポキシ基を有する化合物にアルキレンオキサイドを付加させた化合物、式1で示される化合物等のポリ(オキシエチレン)鎖含有エチレン性不飽和モノマー類等のオキシエチレン基含有エチレン性不飽和モノマー、また、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノエステル類、フマル酸、フマル酸モノエステル類、イタコン酸、イタコン酸モノエステル類等のカルボン酸含有エチレン性不飽和モノマー類、スルホン化スチレン、スルホン化α−メチルスチレン、以下の式2又は式3で示される化合物等のスルホン酸含有エチレン性不飽和モノマー類等の酸含有エチレン性不飽和モノマー、アリルアミン、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、これらにアルキレンオキサイドを付加させたもの、式4で示される化合物等の一級、二級又は三級アミノ基含有エチレン性不飽和モノマー類等の塩基含有エチレン性不飽和モノマー等が挙げられる。
【0018】
【化1】
【0019】
【化2】
【0020】
【化3】
【0021】
【化4】
【0022】
ケト基又はアルデヒド基含有エチレン性不飽和モノマーとしては、アクロレイン、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、ホルミルスチロール、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン、ビニルアセトフェノン、ビニルベンゾフェノン、アクリルオキシプロペナール、ダイアセトンアクリレート、アセトニトリルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレートアセチルアセテート、ブタンジオール−1,4−アクリレートアセチルアセテート、メタクリルオキシプロペナール、ダイアセトンメタクリレート、アセトニトリルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレートアセチルアセテート、ブタンジオール−1,4−メタクリレートアセチルアセテート等が挙げられる。
【0023】
その他のエチレン性不飽和モノマーとしては、アクリル酸アルキル、アクリル酸シクロアルキル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸グリシジル等のアクリル酸エステル類、メタクリル酸アルキル、メタクリル酸シクロアルキル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸グリシジル等のメタクリル酸エステル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル系化合物類、ビニルメチルエーテル等のビニルアルキルエーテル、ビニルシクロヘキシルエーテル、ビニルフェニルエーテル、ビニルベンジルエーテル、ビニルグリシジルエーテル等のビニルエーテル系化合物類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルシアニド系化合物類、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等のエチレン性不飽和二重結合含有芳香族化合物類、塩化ビニル、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル類、塩化ビニリデン、臭化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン類、マレイン酸ジアルキル等のマレイン酸ジエステル類、フマル酸ジアルキル等のフマル酸ジエステル類、イタコン酸ジメチル等のイタコン酸ジエステル類、N,N−ジメチルアクリルアミド等のジアルキルアクリルアミド類、N−ビニルピロリドン、2−ビニルピリジン等の複素環ビニル化合物類等、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレートのε−カプロラクトン付加物、2−ヒドロキシエチルアクリレートのβ−メチル−γ−バレロラクトン付加物、グリセロールモノアクリレート、グリセロールジアクリレート等のアクリレート類、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレートのε−カプロラクトン付加物、2−ヒドロキシエチルメタクリレートのβ−メチル−γ−バレロラクトン付加物、グリセロールモノメタクリレート、グリセロールジメタクリレート等のメタクリレート類、アリルアルコール、グリセロールモノアリルエーテル、グリセロールジアリルエーテル等のアリル化合物類等が挙げられる。これらの中で好ましいものとしては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレートのε−カプロラクトン付加物、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレートのε−カプロラクトン付加物等の活性水素基含有のエチレン性不飽和モノマー類、及びメタクリル酸メチルが挙げられる。特にメタクリル酸メチルは、水性サンディングシーラーの研磨性を向上させるので特に好ましい成分であり、全ての樹脂原料に占めるメタクリル酸メチルの割合が35質量%以上、特に40質量%以上となることが好ましい。
【0024】
エチレン性不飽和モノマーのラジカル重合に使用されるラジカル重合開始剤としては、例えば、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2,2′−アゾビスイソ酪酸ジメチル、アゾビスシアノ吉草酸、1,1′−アゾビス−(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2′−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス−(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、t−ヘキシルパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、イソブチロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、コハク酸パーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、トルイルベンゾイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、α,α′−ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカネート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカネート、t−ヘキシルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシネオデカネート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキシルパーオキシ)ヘキサン、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサネート、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(m−トルオイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−m−トルオイルベンゾエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ビス(t−ブチルパーオキシ)イソフタレート等の有機過酸化物が挙げられる。
【0025】
本発明に用いられるメルカプト基及び親水性極性基含有ウレタンプレポリマーは、例えば、有機ポリイソシアネートと、メルカプト基及び活性水素基を含有する化合物と、親水性極性基及び活性水素基を含有する化合物と、所望により活性水素基を含有する化合物との反応生成物である。この活性水素基は、イソシアネート基との反応性がメルカプト基以上の基、すなわち、水酸基、アミノ基、イミノ基、メルカプト基などである。
【0026】
この有機ポリイソシアネートとしては、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルエーテルジイソシアネート、2−ニトロジフェニル−4,4′−ジイソシアネート、2,2′−ジフェニルプロパン−4,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジメチルジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、4,4′−ジフェニルプロパンジイソシアネート、1,2−フェニレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、1,4−ナフタレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、3,3′−ジメトキシジフェニル−4,4′−ジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、o−キシレンジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート、p−キシレンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トルエンジイソシアネート、水素添加キシレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシレンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート等が挙げられる。また、これら有機ジイソシアネートのアダクト変性体、ビュレット変性体、イソシアヌレート変性体、ウレトンイミン変性体、ウレトジオン変性体、カルボジイミド変性体等のいわゆる変性ポリイソシアネートも使用できる。更に、ポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネート、クルードトルエンジイソシアネート等のような、いわゆるポリメリック体といわれるポリイソシアネートも使用できる。これらの有機ポリイソシアネ−トは単独又は2種以上を混合して使用することができる。これらの有機ポリイソシアネートのうちで、耐候性等を考慮した場合は、脂肪族及び脂環族ポリイソシアネートが好ましく、特に、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネートが最も好ましい。
【0027】
有機ポリイソシアネートと反応させるメルカプト基及び活性水素基を含有する化合物としては、ポリチオール、ヒドロキシチオール、アミノチオール等が挙げられる。
【0028】
ポリチオールとしては、メタンジチオール、1,2−エタンジチオール、1,1−プロパンジチオール、1,2−プロパンジチオール、1,3−プロパンジチオール、2,2−プロパンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,2,3−プロパントリチオール、テトラキス(メルカプトメチル)メタン、1,1−シクロヘキサンジチオール、1,2−シクロヘキサンジチオール、2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジチオール、3,4−ジメトキシブタン−1,2−ジチオール、3,6−ジオキサオクタン−1,8−ジメルカプタン、2−メチルシクロヘキサン−2,3−ジチオール、ビシクロ〔2,2,1〕ヘプタ−exo−cis−2,3−ジチオール、1,1−ビス(メルカプトメチル)シクロヘキサン、チオリンゴ酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、2,3−ジメルカプトコハク酸(2−メルカプトエチルエステル)、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール(2−メルカプトアセテート)、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール(3−メルカプトアセテート)、ジエチレングリコールビス(2−メルカプトアセテート)、ジエチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、1,2−ジメルカプトプロピルメチルエーテル、2,3−ジメルカプトプロピルメチルエーテル、2,2−ビス(メルカプトメチル)−1,3−プロパンジチオール、ビス(2−メルカプトエチル)エーテル、エチレングリコールビス(2−メルカプトアセテート)、エチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(2−メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、1−(1′−メルカプトメチルチオ)−2,3−ジメルカプトプロパン、1−(2′−メルカプトエチルチオ)−2,3−ジメルカプトプロパン、1−(3′−メルカプトプロピルチオ)−2,3−ジメルカプトプロパン、1−(4′−メルカプトブチルチオ)−2,3−ジメルカプトプロパン、1−(5′−メルカプトペンチルチオ)−2,3−ジメルカプトプロパン、1−(6′−メルカプトヘキシルチオ)−2,3−ジメルカプトプロパン、1,2−ビス(1′−メルカプトメチルチオ)−3−メルカプトプロパン、1,2−ビス(2′−メルカプトエチルチオ)−3−メルカプトプロパン、1,2−ビス(3′−メルカプトプロピルチオ)−3−メルカプトプロパン、1,2−ビス(4′−メルカプトブチルチオ)−3−メルカプトプロパン、1,2−ビス(5′−メルカプトペンチルチオ)−3−メルカプトプロパン、1,2−ビス(6′−メルカプトヘキシルチオ)−3−メルカプトプロパン、1,2,3−トリス(1′−メルカプトメチルチオ)プロパン、1,2,3−トリス(2′−メルカプトエチルチオ)プロパン、1,2,3−トリス(3′−メルカプトプロピルチオ)プロパン、1,2,3−トリス(4′−メルカプトブチルチオ)プロパン、1,2,3−トリス(5′−メルカプトペンチルチオ)プロパン、1,2,3−トリス(6′−メルカプトヘキシルチオ)プロパン等の脂肪族ポリチオール、1,2−ジメルカプトベンゼン、1,3−ジメルカプトベンゼン、1,4−ジメルカプトベンゼン、1,2−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2−ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3−ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2−ビス(メルカプトメチルオキシ)ベンゼン、1,3−ビス(メルカプトメチルオキシ)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトメチルオキシ)ベンゼン、1,2−ビス(メルカプトエチルオキシ)ベンゼン、1,3−ビス(メルカプトエチルオキシ)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトエチルオキシ)ベンゼン、1,2,3−トリメルカプトベンゼン、1,2,4−トリメルカプトベンゼン、1,3,5−トリメルカプトベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,4−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,4−トリス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトメチルオキシ)ベンゼン、1,2,4−トリス(メルカプトメチルオキシ)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトメチルオキシ)ベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトエチルオキシ)ベンゼン、1,2,4−トリス(メルカプトエチルオキシ)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトエチルオキシ)ベンゼン、1,2,3,4−テトラメルカプトベンゼン、1,2,3,5−テトラメルカプトベンゼン、1,2,4,5−テトラメルカプトベンゼン、1,2,3,4−テトラキス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,3,5−テトラキス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,4,5−テトラキス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,3,4−テトラキス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,3,5−テトラキス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,4,5−テトラキス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,3,4−テトラキス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,3,5−テトラキス(メルカプトメチルオキシ)ベンゼン、1,2,4,5−テトラキス(メルカプトメチルオキシ)ベンゼン、1,2,3,4−テトラキス(メルカプトエチルオキシ)ベンゼン、1,2,3,5−テトラキス(メルカプトエチルオキシ)ベンゼン、1,2,4,5−テトラキス(メルカプトエチルオキシ)ベンゼン、2,2′−ジメルカプトビフェニル、4,4′−ジメルカプトビフェニル、4,4′−ジメルカプトジベンジル、2,5−トルエンジチオール、3,4−トルエンジチオール、1,4−ナフタレンジチオール、1,5−ナフタレンジチオール、2,6−ナフタレンジチオール、2,7−ナフタレンジチオール、2,4−ジメチルベンゼン−1,3−ジチオール、4,5−ジメチルベンゼン−1,3−ジチオール、9,10−アントラセンジメタンチオール、1,3−ジ(4′−メトキシフェニル)プロパン−2,2−ジチオール、1,3−ジフェニルプロパン−2,2−ジチオール、フェニルメタン−1,1−ジチオール、2,4−ジ(4′−メルカプトフェニル)ペンタン等の芳香族ポリチオール、また、2,5−ジクロロベンゼン−1,3−ジチオール、1,3−ジ(4′−クロロフェニル)プロパン−2,2−ジチオール、3,4,5−トリブロモ−1,2−ジメルカプトベンゼン、2,3,4,6−テトラクロル−1,5−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン等の塩素置換体、臭素置換体等のハロゲン置換芳香族ポリチオール、また、2−メチルアミノ−4,6−ジチオール−sym−トリアジン、2−エチルアミノ−4,6−ジチオール−sym−トリアジン、2−アミノ−4,6−ジチオール−sym−トリアジン、2−モルホリノ−4,6−ジチオール−sym−トリアジン、2−シクロヘキシルアミノ−4,6−ジチオール−sym−トリアジン、2−メトキシ−4,6−ジチオール−sym−トリアジン、2−フェノキシ−4,6−ジチオール−sym−トリアジン、2−チオベンゼンオキシ−4,6−ジチオール−sym−トリアジン、2−チオブチルオキシ−4,6−ジチオール−sym−トリアジン等の複素環を含有したポリチオール、更には、1,2−ビス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,3−ビス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,2−ビス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,3−ビス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,2,4−トリス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,2,4−トリス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,2,3,4−テトラキス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,2,3,5−テトラキス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,2,4,5−テトラキス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,2,3,4−テトラキス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,2,3,5−テトラキス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,2,4,5−テトラキス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、ビス(4−メルカプトフェニル)スルフィド等、又はこれらの各アルキル化物等のメルカプト基以外に硫黄原子を含有する芳香族ポリチオール、ビス(メルカプトメチル)スルフィド、ビス(メルカプトエチル)スルフィド、ビス(メルカプトプロピル)スルフィド、ビス(メルカプトメチルチオ)メタン、ビス(2−メルカプトエチルチオ)メタン、ビス(3−メルカプトプロピル)メタン、1,2−ビス(メルカプトメチルチオ)エタン、1,2−(2−メルカプトエチルチオ)エタン、1,2−(3−メルカプトプロピル)エタン、1,3−ビス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,3−ビス(2−メルカプトエチルチオ)プロパン、1,3−ビス(3−メルカプトプロピルチオ)プロパン、1,2−ビス(2−メルカプトエチルチオ)−3−メルカプトプロパン、2−メルカプトエチルチオ−1,3−プロパンジチオール、1,2,3−トリス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,2,3−トリス(2−メルカプトエチルチオ)プロパン、1,2,3−トリス(3−メルカプトプロピルチオ)プロパン、テトラキス(メルカプトメチルチオメチル)メタン、テトラキス(2−メルカプトエチルチオメチル)メタン、テトラキス(3−メルカプトプロピルチオメチル)メタン、ビス(2,3−ジメルカプトプロピル)スルフィド、2,5−ジメルカプト−1,4−ジチアン、ビス(メルカプトメチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトエチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトプロピル)ジスルフィド等、又はこれらのチオグリコール酸或いはメルカプトプロピオン酸のエステル、ヒドロキシメチルスルフィド−ビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシメチルスルフィド−ビス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシエチルスルフィド−ビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシエチルスルフィド−ビス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシプロピルスルフィド−ビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシプロピルスルフィド−ビス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシメチルジスルフィド−ビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシメチルジスルフィド−ビス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシエチルジスルフィド−ビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシエチルジスルフィド−ビス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシプロピルジスルフィド−ビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシプロピルジスルフィド−ビス(3−メルカプトプロピオネート)、2−メルカプトエチルエーテル−ビス(2−メルカプトアセテート)、2−メルカプトエチルエーテル−ビス(3−メルカプトプロピオネート)、1,4−ジチアン−2,5−ジオール−ビス(2−メルカプトアセテート)、1,4−ジチアン−2,5−ジオール−ビス(3−メルカプトプロピオネート)、チオグリコール酸−ビス(2−メルカプトエチルエステル)、チオジプロピオン酸−ビス(2−メルカプトエチルエステル)、4,4−チオジブチル酸−ビス(2−メルカプトエチルエステル)、ジチオジグリコール酸−ビス(2−メルカプトエチルエステル)、ジチオジプロピオン酸−ビス(2−メルカプトエチルエステル)、4,4−ジチオジブチル酸−ビス(2−メルカプトエチルエステル)、チオジグリコール酸−ビス(2,3−ジメルカプトプロピルエステル)、チオジプロピオン酸−ビス(2,3−ジメルカプトプロピルエステル)、ジチオグリコール酸−ビス(2,3−ジメルカプトプロピルエステル)、ジチオジプロピオン酸(2,3−ジメルカプトプロピルエステル)等のメルカプト基以外に硫黄原子を含有する脂肪族ポリチオール、3,4−チオフェンジチオール、2,5−ビス(メルカプトメチル)テトラヒドロチオフェン、ビス(メルカプトメチル)−1,3−ジチオラン、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ジメルカプト−1,4−ジチアン、2,5−ジメルカプトメチル−1,4−ジチアン等のメルカプト基以外に硫黄原子を含有する複素環化合物等が挙げられる。
【0029】
ヒドロキシチオールとしては、2−メルカプト−1−ヒドロキシエタン、2−メルカプト−1−ヒドロキシプロパン、1−メルカプト−2−ヒドロキシプロパン、3−メルカプト−1−ヒドロキシプロパン、2−メルカプト−1−ヒドロキシブタン、3−メルカプト−1−ヒドロキシブタン、4−メルカプト−1−ヒドロキシブタン等のモノメルカプトモノオール化合物、チオグリセロール、2,3−ジヒドロキシ−1−メルカプトブタン、2,3−ジヒドロキシ−1−メルカプトペンタン、3,4−ジヒドロキシ−1−メルカプトブタン、3,4−ジヒドロキシ−1−メルカプトペンタン、3,4−ジヒドロキシ−1−メルカプトヘキサン等のモノメルカプトジオ−ル化合物、2−ヒドロキシ−1,3−ジメルカプトプロパン、1−ヒドロキシ−2,3−ジメルカプトプロパン、2−ヒドロキシ−1,3−ジメルカプトブタン、1−ヒドロキシ−2,3−ジメルカプトブタン、2−ヒドロキシ−1,3−ジメルカプトペンタン、2−ヒドロキシ−1,3−ジメルカプトヘキサン、3−ヒドロキシ−1,4−ジメルカプトブタン、3−ヒドロキシ−1,4−ジメルカプトペンタン、3−ヒドロキシ−1,4−ジメルカプトヘキサン等のジメルカプトモノオール化合物等が挙げられる。
【0030】
アミノチオールとしては、β−メルカプトエチルアミン、β−メルカプトプロピルアミン、γ−メルカプトプロピルアミン、2−アミノチオフェノール、3−アミノチオフェノール、4−アミノチオフェノール等が挙げられる。
【0031】
これらメルカプト基及び活性水素を含有する化合物は単独でも、2種以上を混合して使用してもよい。なお、本発明に用いられるメルカプト基及び活性水素基を含有する化合物で好ましいものは、ヒドロキシチオールとアミノチオールであり、特に好ましい化合物は、2−メルカプト−1−ヒドロキシエタン、チオグリセロール、β−メルカプトエチルアミンである。
【0032】
有機ポリイソシアネートと反応させる(メルカプト基以外の)活性水素基を含有する化合物としては、ポリウレタン工業で長鎖ポリオールといわれているものと、鎖延長剤といわれているものが挙げられる。本発明では、メルカプト基及び親水性極性基含有ウレタンプレポリマー中に長鎖ポリオールを50〜90重量%含有するものが好ましい。
【0033】
この長鎖ポリオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリオレフィンポリオール、動植物系ポリオール又はこれらのコポリオール等が挙げられる。これらの長鎖ポリオールは単独で又は2種以上混合して使用してもよい。
【0034】
ポリエステルポリオールとしては、公知のコハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロオルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、トリメリット酸等のポリカルボン酸、酸エステル、又は酸無水物等の1種以上と、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、あるいはビスフェノールAのエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド付加物、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の低分子ポリオール類、ヘキサメチレンジアミン、キシリレンジアミン、イソホロンジアミン等の低分子ポリアミン類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等の低分子アミノアルコール類の1種以上との脱水縮合反応で得られる、ポリエステルポリオール又はポリエステルアミドポリオールが挙げられる。また、低分子ポリオール、低分子ポリアミン、低分子アミノアルコールを開始剤として、ε−カプロラクトン、γ−バレロラクトン等の環状エステル(ラクトン)モノマーの開環重合で得られるラクトン系ポリエステルポリオールが挙げられる。
【0035】
ポリカーボネートポリオールとしては、前述のポリエステルポリオールの合成に用いられる低分子ポリオールと、ジエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート等との脱アルコール反応、脱フェノール反応等で得られるものが挙げられる。
【0036】
ポリエーテルポリオールとしては、前述のポリエステルポリオールに用いられる低分子ポリオール、低分子ポリアミン、低分子アミノアルコールを開始剤として、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン等を開環重合させたポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等、及びこれらを共重合したポリエーテルポリオール、更に、前述のポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールを開始剤としたポリエステルエーテルポリオールが挙げられる。
【0037】
ポリオレフィンポリオールとしては、水酸基含有ポリブタジエン、水素添加した水酸基含有ポリブタジエン、水酸基含有ポリイソプレン、水素添加した水酸基含有ポリイソプレン、水酸基含有塩素化ポリプロピレン、水酸基含有塩素化ポリエチレン等が挙げられる。
【0038】
動植物系ポリオールには、ヒマシ油系ポリオール、絹フィブロイン等が挙げられる。
【0039】
また、活性水素基を2個以上有するものであれば、ダイマー酸系ポリオール、水素添加ダイマー酸系ポリオールの他に、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ロジン樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、クマロン樹脂、ポリビニルアルコール等の樹脂類も長鎖ポリオールとして好適に使用できる。
【0040】
これらの長鎖ポリオールの数平均分子量は500〜10,000、特に1,000〜5,000が好ましい。密着性、耐久性等を考慮すると、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ダイマー酸系ポリオールのいずれかを長鎖ポリオール中に50〜100重量%含有するものが更に好ましい。
【0041】
鎖延長剤は、数平均分子量500未満の分子内に2個以上の活性水素基を含有する化合物であり、具体的には、前述の低分子ポリオール、低分子ポリアミン、低分子アミノアルコール等が挙げられる。
【0042】
本発明では、自己乳化性アクリル−ウレタン共重合体を製造する際に、有機ポリイソシアネートと反応する活性水素基及びエチレン性不飽和二重結合を含有する化合物を用いると、分子量のコントロールが容易になるので好ましい。この場合、アクリルオリゴマーとウレタンがグラフトした構造を取ることになり、アクリルセグメントとウレタンセグメントは、エチレン性不飽和二重結合のラジカル重合により生成する基により結合している自己乳化性アクリル−ウレタン共重合体を含むことになる。活性水素基及びエチレン性不飽和二重結合を含有する化合物としては、前述のその他のエチレン性不飽和モノマーのうちの活性水素基含有のエチレン性不飽和モノマー類が挙げられる。これらの中で好ましいものは、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレートのε−カプロラクトン付加物、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレートのε−カプロラクトン付加物である。
【0043】
有機ポリイソシアネートと反応させる親水性極性基及び活性水素基を含有する化合物の親水性極性基は、親水性ノニオン性基、親水性アニオン性基、親水性カチオン性基、又は親水性両性基である。親水性ノニオン性基は、樹脂の主鎖や側鎖に導入されたオキシエチレン基の繰り返し単位の部分である。親水性アニオン性基は、カルボン酸、スルホン酸、リン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸、チオスルホン酸等のような酸と、後述する塩基性中和剤とからなる。なお、酸成分は自己乳化性アクリル−ウレタン共重合体に直結しているが、中和剤は共重合体に直結していない。親水性カチオン性基は、三級アミノ基等のような塩基と、後述する酸性中和剤とからなる。なお、塩基成分は自己乳化性アクリル−ウレタン共重合体に直結しているが、中和剤は共重合体に直結していない。
【0044】
具体的に、親水性ノニオン性基及び活性水素基を含有する化合物としては、活性水素基を1個以上有するポリ(オキシアルキレン)エーテルポリオール、活性水素基を1個以上有するポリ(オキシアルキレン)脂肪酸エステルポリオール等が挙げられる。活性水素基を1個以上有するポリ(オキシアルキレン)エーテルポリオールは、活性水素基を1個以上有する化合物を開始剤として、アルキレンオキサイドを付加重合させて得られる。この開始剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール、n−ブタノール、シクロヘキサノール、フェノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、アニリン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。これらのうちでは、エチレングリコールのように分子量がより小さく、2官能のものが好ましい。アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等が挙げられる。なお、アルキレンオキサイドの一部に、スチレンオキサイド、エピクロルヒドリン、ブチルグリシジルエーテル等のエポキシ基を有する化合物を用いてもよい。また、活性水素基を1個以上有するポリ(オキシアルキレン)脂肪酸エステルポリオールの製造に用いられる脂肪酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸等が挙げられる。なお、前述の原料に存在するポリエーテル鎖には、3〜300、特に5〜200個で、かつオキシエチレン基が50モル%以上、特に60モル%以上のオキシアルキレン基を有するものが好ましい。
【0045】
親水性アニオン性基形成性基及び活性水素基を含有する化合物としては、α−ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシコハク酸、ジヒドロキシコハク酸、ε−ヒドロキシプロパン−1,2,3−トリカルボン酸、ヒドロキシ酢酸、α−ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシステアリン酸、リシノール酸、リシノエライジン酸、リシノステアロール酸、サリチル酸、マンデル酸等、オレイン酸、リシノール酸、リノール酸等の不飽和脂肪酸をヒドロキシル化したヒドロキシ脂肪酸、グルタミン、アスパラギン、リジン、ジアミノプロピオン酸、オルニチン、ジアミノ安息香酸、ジアミノベンゼンスルホン酸等のジアミン型アミノ酸、グリシン、アラニン、グルタミン酸、タウリン、アミノカプロン酸、アミノ安息香酸、アミノイソフタル酸、スルファミン酸等のモノアミン型アミノ酸、又は、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロール酪酸、2,2−ジメチロール吉草酸等のカルボン酸含有ポリオール、イミノジ酢酸とグリシドールの1:1(モル比)付加物のようなキレートタイプ、5−スルホイソフタル酸骨格を導入したポリエステルポリオール、水やカルボキシル基含有アルコールを開始剤としたポリカプロラクトン、活性水素基含有ポリエステルとカルボキシル基含有アルコールとのエステル交換物、活性水素基含有ポリカーボネートとカルボキシル基含有アルコールとのエステル交換物等が挙げられる。また、前述の長鎖ポリオール類や低分子グリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン等の低分子ポリオール類やポリアミン類と、ポリカルボン酸無水物とを反応させて得られるカルボキシル基を含有するハーフエステル混合物やハーフアミド混合物も使用可能である。特に、無水ピロメリット酸等の二無水物にポリオールを付加させた場合、2個のカルボン酸が生成するため、ポリエステルポリオールの分子鎖内に親水性アニオン性基を導入できることになる。親水性アニオン性基を形成するための塩基性中和剤としては、エチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−フェニルジエタノールアミン、モノエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、2−アミノ−2−エチル−1−プロパノール、ピリジン等の有機アミン類、リチウム、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機アルカリ類、アンモニア等が挙げられる。なお、この中で好ましいものは、有機アミンやアンモニアであり、特に好ましいものは、エチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、アンモニアである。なお、これらの親水性アニオン性基形成性基及び活性水素基を含有する化合物や塩基性中和剤はそれぞれ、単独あるいは2種以上混合して用いてもよい。
【0046】
親水性カチオン性基形成性基及び活性水素基を含有する化合物としては、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジプロピルエタノールアミン、N,N−ジフェニルエタノールアミン、N−メチル−N−エチルエタノールアミン、N−メチル−N−フェニルエタノールアミン、N,N−ジメチルプロパノールアミン、N−メチル−N−エチルプロパノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−メチルジプロパノールアミン、N−フェニルジエタノールアミン、N−フェニルジプロパノールアミン、N−ヒドロキシエチル−N−ヒドロキシプロピル−メチルアミン、N,N′−ジヒドロキシエチルピペラジン、トリエタノールアミン、トリスイソプロパノールアミン、N−メチル−ビス(3−アミノプロピル)アミン、N−メチル−ビス(2−アミノプロピル)アミン等が挙げられる。また、アンモニア、メチルアミンのような第一アミン、ジメチルアミンのような第二アミンにアルキレンオキサイドを付加させたものも使用できる。親水性カチオン性基を形成するための酸性中和剤としては、例えば、塩酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸、シアノ酢酸、リン酸及び硫酸等の無機及び有機酸が挙げられる。四級化剤としては、硫酸ジメチル、塩化ベンジル、ブロモアセトアミド、クロロアセトアミド、又は、臭化エチル、臭化プロピル、臭化ブチル等のハロゲン化アルキルが挙げられる。また、その他の親水性カチオン性基及び活性水素基を含有する化合物として、第一級アミン塩、第二級アミン塩、第三級アミン塩、ピリジニウム塩等のカチオン性化合物が挙げられる。なお、これらの親水性カチオン性基形成性基及び活性水素基を含有する化合物や酸性中和剤はそれぞれ、単独あるいは2種以上混合して用いてもよい。
【0047】
親水性両性基及び活性水素基を含有する化合物としては、第三級アミノ基含有ポリオールとスルトンとの反応で生成するスルホベタイン基等の両性基を含有する化合物を例示することができる。
【0048】
本発明における自己乳化性アクリル−ウレタン共重合体における親水性極性基の導入量は、次の通りである。親水性ノニオン性基を導入する場合では、自己乳化性アクリル−ウレタン共重合体全体に対して、親水性ノニオン性基(好適にはエチレンオキサイドユニット)の含有量は、0.1〜40wt%、特に0.5〜30wt%が好ましい。親水性アニオン性基、親水性カチオン性基又は親水性両性基を導入する場合では、自己乳化性アクリル−ウレタン共重合体全体に対して0.05〜0.8mmol/g、特に0.1〜0.7mmol/gが好ましい。
【0049】
本発明で好ましい親水性極性基は、被膜の耐水性等を考慮すると、親水性アニオン性基であり、より好ましくは、3≦pKa<7の弱酸及び7<pKa≦12の弱塩基からなる親水性アニオン性基であり(但し、pKa=−log10Kaであり、Kaは25℃の希薄水溶液における酸性度定数である。)、特に好ましくは、カルボン酸−アンモニア又はカルボン酸−有機三級アミンである親水性アニオン性基である。この理由は、次の通りである。すなわち、親水性アニオン性基は、樹脂に直結した酸とフリー(遊離)の塩基の中和剤からなる。弱酸−弱塩基の親水性アニオン性基では、酸−塩基間の親和力が弱く、また、中和剤の分子量が小さいため、被膜形成時に中和剤が飛散しやすい。その結果、中和剤が飛散した樹脂の親水性は、飛散前より低下する。その結果、被膜に耐水性を付与することになると考えられる。以上のことから、本発明では、カルボン酸基含有ポリオールを用いることが好ましく、更に具体的にはジメチロールプロピオン酸及び/又はジメチロールブタン酸を用いることが好ましい。
【0050】
本発明の水系エマルジョンにおける自己乳化性アクリル−ウレタン共重合体の数平均分子量は、5,000〜100,000が好ましく、10,000〜80,000が更に好ましい。数平均分子量が5,000未満の場合は、被膜強度が不十分となる。100,000を越えると水系エマルジョンの製造における作業性が悪くなる。なお、本発明における数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィにより屈折率検出器を用いてポリスチレン換算にて測定した値である。また、本発明の水系エマルジョンにおけるアクリル−ウレタン共重合体の平均粒径は、1〜1,000nm、特に3〜900nmであることが好ましい。なお、本発明における平均粒径とは、動的光散乱法にて測定した値をキュムラント法にて解析した値である。
【0051】
本発明の水系エマルジョンにおける自己乳化性アクリル−ウレタン共重合体には、ケト基又はアルデヒド基が存在するのが好ましい。これは、自己乳化性アクリル−ウレタン共重合体の水系エマルジョンに多官能ヒドラジド化合物を添加することにより、1液常温硬化性を付与することが可能となるからである。
【0052】
アクリルセグメントにケト基を導入するために用いられるものとしては、前述のケト基又はアルデヒド基を含有するエチレン性不飽和モノマーが挙げられる。ウレタンセグメントにケト基を導入するために用いられるものとしては、ヒドロキシメチルエチルケトン、ヒドロキシエチルメチルケトン、ビス(ヒドロキシメチル)ケトン、ヒドロキシメチル−2−ヒドロキシエチルケトン、ビス(2−ヒドロキシエチル)ケトン、アミノメチルエチルケトン、ビス(アミノメチル)ケトン、アミノメチル−2−アミノエチルケトン、ビス(2−アミノエチル)ケトン等が挙げられる。
【0053】
本発明では、少なくともアクリルセグメントにケト基又はアルデヒド基を導入するのが好ましく、原料の入手の容易さ等を考慮するとアクリルセグメントのみにケト基又はアルデヒド基を導入するのがより好ましい。また、得られる樹脂の貯蔵安定性や原料の毒性等を考慮するとケト基を導入した化合物が好ましい。
【0054】
本発明の他の水系エマルジョンは、ケト基又はアルデヒド基を有する自己乳化性アクリル−ウレタン共重合体と多官能ヒドラジド化合物とからなる水系エマルジョンである。この水系エマルジョンは、前述したように1液で常温硬化性を有するので、塗料、接着剤、コーティング剤等に適用すると、2液タイプのように主剤−硬化剤の計量ミスを生じる要因がなく、また、水を飛散させる以上のエネルギーは必要ないので、生産性に優れている。
【0055】
本発明における多官能ヒドラジド化合物とは、1分子中にヒドラジド基を2個以上有する化合物のことであり、具体的には、4,4′−ビスベンゼンジヒドラジド、2,6−ピリジンジヒドラジド、1,4−シクロヘキサンジヒドラジド、N,N′−ヘキサメチレンビスセミカルバジド等のジヒドラジド化合物、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、スベリン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカンジカルボン酸ジヒドラジド、ヘキサデカンジカルボン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド、2,6−ナフトエ酸ジヒドラジド、1,4−ナフトエ酸ジヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、イミノジ酢酸ジヒドラジド等のジカルボン酸ジヒドラジド類、クエン酸トリヒドラジド、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸トリヒドラジド、ニトリロトリ酢酸トリヒドラジド、シクロヘキサントリカルボン酸トリヒドラジド、トリメリット酸トリヒドラジド等のトリカルボン酸トリヒドラジド類、エチレンジアミン四酢酸テトラヒドラジド、1,4,5,8−ナフトエ酸テトラヒドラジド、ピロメリット酸テトラヒドラジド等のテトラカルボン酸テトラヒドラジド類、式5で示される炭酸ジヒドラジド類、カルボヒドラジド、チオカルボジヒドラジド、式6で示されるビスセミカルバジド類、式7で示される基を有する酸ヒドラジド系ポリマー類等が挙げられる。
【0056】
【化5】
【0057】
【化6】
【0058】
【化7】
【0059】
これらの多官能性ヒドラジド化合物で好ましいものは、25℃の水に対する溶解度が3%以上のものであり、特に好ましいものは、カルボヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、クエン酸トリヒドラジドである。
【0060】
多官能ヒドラジド化合物の添加量は、自己乳化性アクリル−ウレタン共重合体のケト基又はアルデヒド基に対し、0.1〜2当量、特に0.3〜1.5当量が好ましい。多官能ヒドラジド化合物の添加量が0.1当量未満の場合は、架橋密度が小さすぎるため、被膜強度が不十分となる。また、2当量を越える場合は、遊離の多官能ヒドラジド化合物の量が多くなるため、被膜外観に悪影響を及ぼしやすい。
【0061】
本発明の水性サンディングシーラーには、必要に応じて水性システムで慣用される添加剤や助剤を使用できる。例えば、顔料、染料、防腐剤、防カビ剤、抗菌剤、揺変剤、ブロッキング防止剤、分散安定剤、粘度調節剤、造膜助剤、レベリング剤、ゲル化防止剤、光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、無機及び有機充填剤、可塑剤、滑剤、帯電防止剤、補強材、触媒、硬化剤等を添加することができる。また、本発明の水性サンディングシーラーは、必要に応じて他樹脂系のエマルジョン、サスペンジョン、水溶液をブレンドして使用できる。他樹脂としては、ポリウレタン、アクリル、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ゴム等が挙げられる。
【0062】
次に、本発明の水性サンディングシーラーの製造方法について述べる。本発明の水性サンディングシーラーの製造方法は、次の3つの工程の組み合わせからなる。
第1工程(ウレタン化反応工程):イソシアネート基と活性水素基を反応させる工程。
第2工程(ラジカル共重合工程):メルカプト基を連鎖移動剤として用い、エチレン性不飽和モノマーをラジカル重合させる工程。
第3工程(乳化工程):得られたアクリル−ウレタン共重合体を水に乳化させる工程。
【0063】
第1工程は、メルカプト基及び親水性極性基含有ウレタンプレポリマーを得る工程である。第1工程には、例えば、前述の有機ポリイソシアネートと、メルカプト基及び活性水素基を含有する化合物と、親水性極性基及び活性水素基を含有する化合物と、所望により活性水素基を含有する化合物とを、順次(イ)あるいは同時(ロ)に反応させる工程である。このときの全イソシアネート基と全活性水素基の最終的な当量比率は、目標数平均分子量、有機ポリイソシアネートの平均官能基数と活性水素基含有化合物の平均官能基数等の因子によって、反応時にゲル化しない条件を算出し、この条件を満たすような条件である。その配合比率はJ.P.Flory、Khun等が理論的に計算しているゲル化理論に従うが、実際は、前記成分に含まれる反応基の反応性比を考慮にいれた配合比で反応させることによって、ゲル化することなく製造できる。
【0064】
(イ)順次に反応させる場合は、例えば、有機ポリイソシアネート、親水性極性基とメルカプト基以外の活性水素基を含有する化合物、及び所望により活性水素基を含有する化合物をイソシアネート基過剰の条件で反応させ、イソシアネート基末端プレポリマーを合成する。次いで、メルカプト基及び活性水素基を含有する化合物を、メルカプト基を含めた活性水素基過剰の条件で反応させる等の方法で、メルカプト基及び親水性極性基含有ウレタンプレポリマーが得られる。
(ロ)同時に反応させる場合は、例えば、有機ポリイソシアネート、親水性極性基とメルカプト基以外の活性水素基を含有する化合物、メルカプト基及び活性水素基を含有する化合物、及び所望により活性水素基を含有する化合物を、メルカプト基を含めた活性水素基過剰の条件で反応させる等の方法で、メルカプト基及び親水性極性基含有ウレタンプレポリマーが得られる。いずれの場合も、イソシアネート基は、メルカプト基より反応性の大きい水酸基、アミノ基、イミノ基等と優先的に反応し、最終的には、イソシアネート基が存在しないメルカプト基及び親水性極性基含有ウレタンプレポリマーが得られることになる。なお、(ロ)同時に反応させる方法が、製造工程が少なくなるので好ましい。
【0065】
ウレタン化反応は、溶融状態、バルク状態、又は必要に応じてポリウレタン工業において常用の溶剤、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のグリコールエーテルエステル系溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶剤、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等の極性溶剤の1種又は2種以上を混合して用いることができる。また、ウレタン化反応時には、必要に応じてウレタン化触媒を用いることができる。具体的には、ジブチルチンジラウレート、ジオクチルチンジラウレート等の有機金属化合物や、トリエチレンジアミンやトリエチルアミン等の有機アミンやその塩等が挙げられる。なお、このときの反応温度は、30〜120℃、更に50〜100℃が好ましい。反応装置としては、上記の反応が均一にできるものであれば特に制限はなく、例えば攪拌装置の付いた反応釜、ニーダー、一軸又は多軸押し出し反応機等の混合混練装置が挙げられる。第2工程や第3工程を考慮すると、反応装置は攪拌装置の付いた反応釜が好ましい。
【0066】
第2工程における原料は、例えば、(1)第1工程で得られたメルカプト基及び親水性極性基含有ウレタンプレポリマー、エチレン性不飽和モノマー、ラジカル重合開始剤、又は(2)有機ポリイソシアネート、親水性極性基及び(メルカプト基以外の)活性水素基含有化合物、メルカプト基及び活性水素基含有化合物、所望により(その他の)活性水素基含有化合物、アクリル系モノマー、ラジカル重合開始剤、である。すなわち(1)の方法は、第1工程後に第2工程を進行させる方法であり、(2)の方法は、第1工程と第2工程を同時に進行させる方法である。第2工程には、反応熱の除去、攪拌の容易さから、前述の有機溶剤を用いたほうが好ましい。本発明では、(1)の方法が好ましい。
【0067】
第2工程おける各原料の具体的な仕込み方法は、特に制限はなく、全ての原料を一度に仕込んでもよいし、分割して仕込んでもよい。また、バッチ的にまとめて仕込んでもよいし、連続的に仕込んでもよい。好ましい仕込み方法は、少なくともラジカル重合開始剤を滴下させる等により、後から反応系に仕込むという方法である。
【0068】
なお、(1)の方法では、メルカプト基及び親水性極性基含有ウレタンプレポリマーが得られる。このウレタンプレポリマーの数平均分子量は1,000〜50,000、特に3,000〜40,000であることが好ましい。数平均分子量が小さすぎる場合は、ウレタン化反応が不十分であるために、柔軟性に欠けやすい。また、数平均分子量が50,000を越える場合は、粘度が大きすぎるため、第2工程、第3工程が困難になりやすい。
【0069】
ラジカル共重合前の状態におけるメルカプト基含有量は、固形分換算で0.01〜1.0mmol/g、特に0.03〜0.5mmol/gであることが好ましい。メルカプト基含有量が0.01mmol/g未満の場合は、目的とする自己乳化性アクリル−ウレタン共重合体が得られにくい。またメルカプト基含有量が1.0mmol/gを越える場合は、必要以上に連鎖移動が起こり、共重合体の分子量が伸びにくくなる。なお、反応系に、活性水素基及びエチレン性不飽和二重結合含有化合物を用いると、得られる自己乳化性アクリル−ウレタン共重合体の分子量のコントロールが容易になるので、好ましくなる。この化合物の導入量は、メルカプト基に対して、80モル%以下が好ましく、5〜75モル%が更に好ましく、10〜70モル%となる量が最も好ましい。
【0070】
ラジカル共重合における重合開始剤の仕込量は、反応前に存在する二重結合の全モル数の0.1〜10モル%、特に0.5〜8モル%が好ましい。ラジカル重合開始剤の仕込量が少なすぎる場合は、共重合がうまく進行しにくくなり、目的とするアクリル−ウレタン共重合体が得られにくい。また、ラジカル重合開始剤の仕込量が多すぎる場合は、得られる共重合体の分子量が小さすぎ、強度や耐久性が不足しやすくなる。
【0071】
ラジカル共重合時の反応温度は、30〜120℃、特に50〜100℃が好ましい。また、エチレン性不飽和モノマーの合計重量と、ウレタン系原料の仕込み重量との比は、5/95〜95/5、特に10/90〜90/10であることが好ましい。
【0072】
第1工程及び第2工程が終了したら、第3工程に進む。乳化方法は特に制限はなく、従来公知の方法で行われる。なお、酸や三級アミンが系に存在する場合は、前述の中和剤や四級化剤を水の仕込み前、又は水と同時に仕込んだほうが好ましい。また、水乳化後、系中に有機溶剤が存在していたら、脱溶剤を行うほうが好ましい。本発明の水系エマルジョンにおける残留溶剤の含有量は、5%未満が好ましい。なお、除去した有機溶剤は、回収して前述の第2工程に用いることができる。脱溶剤工程は加熱・減圧して行う。脱溶剤の好ましい方法は、減圧度を維持しながら、溶剤除去中に有機溶剤と水の共沸物の単位時間当たりの流出量を測定し、該流出量が一定量未満になったことを確認し、減圧度を上げる、という操作を2回以上繰り返す方法が、突沸を防ぎ、エマルジョン状態を破壊することがないので、特に好ましい。
【0073】
ケト基又アルデヒド基が存在している自己乳化型アクリル−ウレタン共重合体と、多官能ヒドラジド化合物とを配合した水性サンディングシーラーは、塗布後に水が飛散すると、常温で硬化して実用に耐えうる被膜を形成する。これ以外の場合では、塗布直前に水性(ブロック)ポリイソシアネート系硬化剤を添加して、被膜に架橋構造を持たせることで、実用に耐えうる被膜を形成する。この場合、(生成する)イソシアネート基と活性水素基との反応を促進させるために加熱するとよい。具体的な水性ポリイソシアネートとしては、日本ポリウレタン工業製のアクアネート(登録商標)100、200等が挙げられる。水性(ブロック)ポリイソシアネート系硬化剤を用いる場合の水性(ブロック)ポリイソシアネートの配合量は、(生成する)イソシアネート基/活性水素基=10/1〜1/10(モル比)となる量である。
【0074】
このようにして得られた水性サンディングシーラーは、木材、(硬質)フォーム、紙、無機多孔質板等の多孔質部材等に、刷毛、ローラー、スプレー等により塗布されて用いられる。
【0075】
【発明の効果】
本発明により、良好な塗布性・乾燥性・研磨性・目詰まり性等の性能を有する水性サンディングシーラーを提供することが可能となった。なお、本発明の水性サンディングシーラーは、金属、プラスチック等の非孔質部材のプライマーあるいは下塗り塗料として、更には各種基材のトップコートあるいは上塗り塗料としても用いることができる。
【0076】
【実施例】
以下に実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお特に断りのない限り、実施例、比較例中の「%」は「質量%」を意味する。
【0077】
〔水性サンディングシーラーの製造〕
実施例1
撹拌機、温度計、冷却器のついた容量:2000mlの反応器に、数平均分子量2,000、アジピン酸と混合グリコール(下記参照)から得られるポリエステルポリオール(A)を598.2g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(2−HEMA)を13.6g、チオグリコール(TG)を15.2g、2,2−ジメチロールブタン酸(DMBA)を22.2g、メチルエチルケトン(MEK)を83g仕込んで加熱攪拌し、70℃になったところでヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)を100.6g、ジオクチルチンジラウレート(DOTDL)を0.2g仕込み、撹拌しながら80℃で7時間ウレタン化反応させた。反応液をIR測定し、イソシアネート基が消失したことを確認した後、MEKを292g、イソプロパノール(IPA)を375g加え、均一になるまで攪拌し、固形分50%のウレタンプレポリマー溶液(A)を得た。
※混合グリコール:エチレングリコール(EG)、1,2−プロパンジオール(PD)、1,6−ヘキサンジオール(HD)、ネオペンチルグリコール(NPG)の混合物
混合比:EG/PD/HD/NPG=1.4/1.0/37.7/12.5(モル比)
【0078】
撹拌機、温度計、冷却器、滴下漏斗、減圧蒸留装置のついた容量:2000mlの反応器に上記ウレタンプレポリマー溶液を250.0g、メタクリル酸メチル(MMA)を256.7g、アクリル酸ノルマルブチル(n−BA)を3.8g、アクリル酸(AA)を10.4g、ダイアセトンアクリルアミド(DAAA)を20.8g加えて加熱攪拌し、内温を78℃とした。次いで滴下漏斗に重合開始剤としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(tBPOEH)を4.2g、MEKを148g、IPAを148g仕込み、これを78℃の反応容器内に5時間かけて滴下した。滴下後78℃で7時間攪拌し、アクリル−ウレタン共重合体溶液を得た。次にこの反応器にジメチルエタノールアミン(DMEA)を12.9g加え、200rpmで15分攪拌した。次いで水762gにアジピン酸ジヒドラジド(ADH)10.7gを溶解させたものを滴下漏斗に仕込み、10分かけて反応容器内に滴下させ200rpmで攪拌した。その後14.6kPaまで減圧してから55℃の恒温水槽に反応容器を浸し、脱溶剤を行った。溶剤の留出がほとんど無くなったことを確認した後、圧力を11.3kPaにし、続けて脱溶剤を行い、同様に溶剤の留出がほとんど無くなったことを確認した後、圧力を9.0kPaとして、脱溶剤を行った。ガスクロマトグラフィーにより系中の有機溶剤含有量が1%以下であることを確認した後、固形分が40%になるように水を追加して、平均粒径130μmの水性サンディングシーラー(AS−1)を得た。AS−1における樹脂原料(溶剤、水を除く)中のMMAの含有量は57.8%であった。
【0079】
実施例2
撹拌機、温度計、冷却器、滴下漏斗、減圧蒸留装置のついた容量:2000mlの反応器にウレタンプレポリマー溶液(A)を250.0g、MMAを233.8g、n−BAを26.7g、AAを10.4g、DAAAを20.8g加えて加熱攪拌し、内温を78℃とした。次いで滴下漏斗に重合開始剤としてtBPOEHを4.2g、MEKを148g、IPAを148g仕込み、これを78℃の反応容器内に5時間かけて滴下した。滴下後78℃で7時間攪拌し、アクリル−ウレタン共重合体溶液を得た。次にこの反応器にDMEAを12.9g加え、200rpmで15分攪拌した。次いで水762gにADH10.7gを溶解させたものを滴下漏斗に仕込み、10分かけて反応容器内に滴下させ200rpmで攪拌した。その後14.6kPaまで減圧してから55℃の恒温水槽に反応容器を浸して、脱溶剤を行った。溶剤の留出がほとんど無くなったことを確認した後、圧力を11.3kPaにし、続けて脱溶剤を行い、同様に溶剤の留出がほとんど無くなったことを確認した後、圧力を9.0kPaとし、脱溶剤を行った。ガスクロマトグラフィーにより系中の有機溶剤含有量が1%以下であることを確認した後、固形分が40%になるように水を追加して、平均粒径120μmの水性サンディングシーラー(AS−2)を得た。AS−1における樹脂原料(溶剤、水を除く)中のMMAの含有量は52.6%であった。
【0080】
実施例3
撹拌機、温度計、冷却器、滴下漏斗、減圧蒸留装置のついた容量:2000mlの反応器にウレタンプレポリマー溶液(A)を250.0g、MMAを207.5g、n−BAを52.9g、AAを10.4g、DAAAを20.8g加えて加熱攪拌し、内温を78℃とした。次いで滴下漏斗に重合開始剤としてtBPOEHを4.2g、MEKを148g、IPAを148g仕込み、これを78℃の反応容器内に5時間かけて滴下した。滴下後78℃で7時間攪拌し、アクリル−ウレタン共重合体溶液を得た。次にこの反応器にDMEAを12.9g加え、200rpmで15分攪拌した。次いで水762gにADH10.7gを溶解させたものを滴下漏斗に仕込み、10分かけて反応容器内に滴下させ200rpmで攪拌した。その後14.6kPaまで減圧してから55℃の恒温水槽に反応容器を浸して、脱溶剤を行った。溶剤の留出がほとんど無くなったことを確認した後、圧力を11.3kPaにし、続けて脱溶剤を行い、同様に溶剤の留出がほとんど無くなったことを確認した後、圧力を9.0kPaとし、脱溶剤を行った。ガスクロマトグラフィーにより系中の有機溶剤含有量が1%以下であることを確認した後、固形分が40%になるように水を追加して、平均粒径140μmの水性サンディングシーラー(AS−3)を得た。AS−3における樹脂原料(溶剤、水を除く)中のMMAの含有量は46.7%であった。
【0081】
実施例4
撹拌機、温度計、冷却器、滴下漏斗、減圧蒸留装置のついた容量:2000mlの反応器にウレタンプレポリマー溶液(A)を250.0g、MMAを178.8g、n−BAを81.7g、AAを10.4g、DAAAを20.8g加えて加熱攪拌し、内温を78℃とした。次いで滴下漏斗に重合開始剤としてtBPOEHを4.2g、MEKを148g、IPAを148g仕込み、これを78℃の反応容器内に5時間かけて滴下した。滴下後78℃で7時間攪拌し、アクリル−ウレタン共重合体溶液を得た。次にこの反応器にDMEAを12.9g加え、200rpmで15分攪拌した。次いで水762gにADH10.7gを溶解させたものを滴下漏斗に仕込み、10分かけて反応容器内に滴下させ200rpmで攪拌した。その後14.6kPaまで減圧してから55℃の恒温水槽に反応容器を浸して、脱溶剤を行った。溶剤の留出がほとんど無くなったことを確認した後、圧力を11.3kPaにし、続けて脱溶剤を行い、同様に溶剤の留出がほとんど無くなったことを確認した後、圧力を9.0kPaとし、脱溶剤を行った。ガスクロマトグラフィーにより系中の有機溶剤含有量が1%以下であることを確認した後、固形分が40%になるように水を追加して、平均粒径110μmの水性サンディングシーラー(AS−4)を得た。AS−4における樹脂原料(溶剤、水を除く)中のMMAの含有量は40.2%であった。
【0082】
実施例5
撹拌機、温度計、冷却器、滴下漏斗、減圧蒸留装置のついた容量:2000mlの反応器に、ポリエステルポリオール(A)を99.7g、2−HEMAを2.3g、TGを2.5g、DMBAを3.7g、MMAを256.7g、n−BAを3.8g、AAを10.4g、DAAAを20.8g、MEKを106g加えて加熱攪拌し、内温を70℃とした。一方、滴下漏斗にtBPOEHを4.2g、MEKを105g、IPAを105g仕込んだ。反応器にHDIを16.8g、DOTDLを0.03g仕込み、また、滴下漏斗内の液を5時間かけて滴下した。その後、内温を80℃にして更に3時間反応させた。反応液をIR測定し、イソシアネート基が消失したことを確認した後、IPAを105g加え、均一になるまで攪拌し、アクリル−ウレタン共重合体溶液を得た。次にこの反応器にDMEAを12.9g加え、200rpmで15分攪拌した。次いで水762gにADH10.7gを溶解させたものを滴下漏斗に仕込み、10分かけて反応容器内に滴下させ200rpmで攪拌した。その後14.6kPaまで減圧してから55℃の恒温水槽に反応容器を浸し、脱溶剤を行った。溶剤の留出がほとんど無くなったことを確認した後、圧力を11.3kPaにし、続けて脱溶剤を行い、同様に溶剤の留出がほとんど無くなったことを確認した後、圧力を9.0kPaとして、脱溶剤を行った。ガスクロマトグラフィーにより系中の有機溶剤含有量が1%以下であることを確認した後、固形分が40%になるように水を追加して、平均粒径180μmの水性サンディングシーラー(AS−5)を得た。AS−5における樹脂原料(溶剤、水を除く)中のMMAの含有量は57.8%であった。
【0083】
実施例6
撹拌機、温度計、冷却器、滴下漏斗、減圧蒸留装置のついた容量:2000mlの反応器にウレタンプレポリマー溶液(A)を250.0g、MMAを256.7g、n−BAを3.8g、AAを10.4g、DAAAを20.8g加えて加熱攪拌し、内温を78℃とした。次いで滴下漏斗に重合開始剤としてtBPOEHを4.2g、MEKを148g、IPAを148g仕込み、これを78℃の反応容器内に5時間かけて滴下した。滴下後78℃で7時間攪拌し、アクリル−ウレタン共重合体溶液を得た。次にこの反応器にDMEAを12.9g加え、200rpmで15分攪拌した。次いで水762gを滴下漏斗に仕込み、10分かけて反応容器内に滴下させ200rpmで攪拌した。その後14.6kPaまで減圧してから55℃の恒温水槽に反応容器を浸し、脱溶剤を行った。溶剤の留出がほとんど無くなったことを確認した後、圧力を11.3kPaにし、続けて脱溶剤を行い、同様に溶剤の留出がほとんど無くなったことを確認した後、圧力を9.0kPaとして、脱溶剤を行った。ガスクロマトグラフィーにより系中の有機溶剤含有量が1%以下であることを確認した後、固形分が40%になるように水を追加して、平均粒径120μmの水性サンディングシーラー(AS−6)を得た。AS−6における樹脂原料(溶剤、水を除く)中のMMAの含有量は59.2%であった。
【0084】
比較例1
撹拌機、温度計、冷却器のついた容量:3000mlの反応器に、ポリエステルポリオール(A)を653.8g、DMBAを22.2g、MEKを188g仕込んで加熱攪拌し、70℃になったところでHDIを73.8g、DOTDLを0.2g仕込み、撹拌しながら80℃で7時間ウレタン化反応させた。反応液をIR測定し、イソシアネート基が消失したことを確認した後、MEKを187g、IPAを375g加え、均一になるまで攪拌し、固形分50%のウレタン溶液(A)を得た。次にこの反応器にDMEAを13.3g加え、200rpmで15分攪拌した。次いで水1125gを滴下漏斗に仕込み、10分かけて反応容器内に滴下させ200rpmで攪拌した。その後14.6kPaまで減圧してから55℃の恒温水槽に反応容器を浸し、脱溶剤を行った。溶剤の留出がほとんど無くなったことを確認した後、圧力を11.3kPaにし、続けて脱溶剤を行い、同様に溶剤の留出がほとんど無くなったことを確認した後、圧力を9.0kPaとして、脱溶剤を行った。ガスクロマトグラフィーにより系中の有機溶剤含有量が1%以下であることを確認した後、固形分が40%になるように水を追加して、水性ポリウレタン樹脂エマルジョン(EU−1)を得た。
【0085】
撹拌機、温度計、冷却器、滴下漏斗、減圧蒸留装置のついた容量:3000mlの反応器に、MMAを650.6g、n−BAを9.6g、AAを26.4g、DAAAを52.7g、MEKを75g加えて加熱攪拌し、内温を78℃とした。次いで滴下漏斗に重合開始剤としてtBPOEHを10.6g、MEKを300g、IPAを375g仕込み、これを78℃の反応容器内に5時間かけて滴下した。滴下後78℃で7時間攪拌し、アクリル樹脂溶液を得た。次にこの反応器にDMEAを32.6g加え、200rpmで15分攪拌した。次いで水1125gにADH27.1gを溶解させたものを滴下漏斗に仕込み、10分かけて反応容器内に滴下させ200rpmで攪拌した。その後14.6kPaまで減圧してから55℃の恒温水槽に反応容器を浸し、脱溶剤を行った。溶剤の留出がほとんど無くなったことを確認した後、圧力を11.3kPaにし、続けて脱溶剤を行い、同様に溶剤の留出がほとんど無くなったことを確認した後、圧力を9.0kPaとして、脱溶剤を行った。ガスクロマトグラフィーにより系中の有機溶剤含有量が1%以下であることを確認した後、固形分が40%になるように水を追加して、水性アクリル樹脂エマルジョン(EA−1)を得た。
【0086】
撹拌機のついた容量:2000mlの容器にEU−1を450g、EA−1を1050g仕込み、攪拌・混合して、平均粒径110μmの水性サンディングシーラー(AS−7)を得た。AS−7における樹脂原料(溶剤、水を除く)中のMMAの含有量は58.6%であった。
【0087】
〔水性サンディングシーラーの評価〕
乾燥性試験
杉基材を#280の研磨紙で研磨し、その上にサンディングシーラーをアプリケーターで乾燥後の膜厚が10μmになるように塗布し、JIS K5400に定める標準状態の雰囲気下で、乾燥性を評価した。結果を表1に示す。
研磨性試験
杉基材を#280の研磨紙で研磨し、その上にサンディングシーラーをアプリケーターで乾燥後の膜厚が10μmになるように塗布し、JIS K5400に定める標準状態で2時間静置後、60℃で1時間硬化させたものを#280の研磨紙で研磨して研磨性(空研ぎ容易性)を評価した。結果を表1に示す。
付着性試験
杉基材を#280の研磨紙で研磨し、その上にサンディングシーラーをアプリケーターで乾燥後の膜厚が10μmになるように塗布し、JIS K5400に定める標準状態で2時間静置後、60℃で1時間硬化させたものを用いて付着性(碁盤目テープ法)を評価した。結果を表1に示す。
【0088】
【表1】
【0089】
表1に示されるように、本発明の水性サンディングシーラーは、良好な乾燥性、研磨性、付着性を示した。一方、比較例は、水性アクリル樹脂と水性ウレタン樹脂のブレンド系であり、柔らかいウレタン樹脂成分のため特に研磨性が劣るものであり、硬いアクリル樹脂成分のため付着性も良いとは言えるものではなかった。
Claims (9)
- エチレン性不飽和モノマーと、メルカプト基及び親水性極性基含有ウレタンプレポリマーとを、ラジカル重合により結合した自己乳化性アクリル−ウレタン共重合体を樹脂成分として含有すること、を特徴とする水性サンディングシーラー。
- エチレン性不飽和モノマーと、有機ポリイソシアネートと、メルカプト基及び活性水素基を含有する化合物と、親水性極性基及び活性水素基を含有する化合物とを、ウレタン化反応及びラジカル重合により結合した自己乳化性アクリル−ウレタン共重合体を樹脂成分として含有すること、を特徴とする水性サンディングシーラー。
- エチレン性不飽和モノマーが、親水性極性基含有エチレン性不飽和モノマーを少なくとも含有するエチレン性不飽和モノマーである、請求項1又は2に記載の水性サンディングシーラー。
- エチレン性不飽和モノマーが、ケト基あるいはアルデヒド基含有エチレン性不飽和モノマーを少なくとも含有するエチレン性不飽和モノマーである、請求項1又は2に記載の水性サンディングシーラー。
- メルカプト基及び親水性極性基含有ウレタンプレポリマーが、メルカプト基及び親水性極性基以外に更にエチレン性不飽和二重結合を含有するウレタンプレポリマーである、請求項1、3又は4に記載の水性サンディングシーラー。
- メルカプト基及び親水性極性基含有ウレタンプレポリマーが、メルカプト基及び親水性極性基以外にケト基あるいはアルデヒド基を含有するウレタンプレポリマー又はメルカプト基、親水性極性基及びエチレン性不飽和二重結合以外にケト基あるいはアルデヒド基を含有するウレタンプレポリマーである、請求項1、3又は4に記載の水性サンディングシーラー。
- 請求項4、5又は6に記載の自己乳化性アクリル−ウレタン共重合体と、多官能ヒドラジド化合物からなること、を特徴とする水性サンディングシーラー。
- 請求項1に記載の水性サンディングシーラーの製造方法であって、少なくとも有機ポリイソシアネートと、メルカプト基及び活性水素基を含有する化合物と、親水性極性基及び活性水素基を含有する化合物とを、反応させてメルカプト基及び親水性極性基含有ウレタンプレポリマーを合成し、次いで、該プレポリマーと、エチレン性不飽和モノマーとを、ラジカル重合開始剤を用いてラジカル重合させて自己乳化型アクリル−ウレタン共重合体を合成し、次いで、該共重合体を水に乳化させること、を特徴とする水性サンディングシーラーの製造方法。
- 請求項2に記載の水性サンディングシーラーの製造方法であって、少なくとも有機ポリイソシアネートと、メルカプト基及び活性水素基を含有する化合物と、親水性極性基及び活性水素基を含有する化合物と、エチレン性不飽和モノマーとを、ラジカル重合開始剤を用いてラジカル重合させると共にウレタン化反応させて自己乳化型アクリル−ウレタン共重合体を合成し、次いで、該共重合体を水に乳化させること、を特徴とする水性サンディングシーラーの製造方法。
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