JP4136259B2 - ベーカリー用素材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ベーカリー生地に配合するベーカリー用素材に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
製菓、製パン業界においては種々の模様付け(斑点、層、マーブル)又は風味付与のためにペースト状素材が用いられている。
【0003】
例えばペースト状素材をベーカリー生地で包みこんだり、あるいはペースト状素材をベーカリー生地に流し込み混合したり、ペースト状素材をベーカリー生地の表面にトッピングをし、焼成したベーカリー製品が知られている。
【0004】
また、ペースト状素材をシート状成形品とし、これをベーカリー生地にロールインしたり、あるいはチップ状成形品としてベーカリー生地に混合して用いる場合もある。
【0005】
しかし、上記のペースト状素材をシート状成形品として使用する場合、シート状成形品同士がくっつかないように、シート状成形品を剥離用の非食性シートで被覆することが必要であるため、手間がかかり、また剥離用の非食性シートはゴミとなっており、環境面でも好ましくない。
【0006】
そして、上記のチップ状成形品の場合も、箱詰めの際にチップ状成形品の粘着性のため相互付着、ケーキングを起こし、このチップ状成形品をベーカリー生地に添加すると、分散性が悪く、均一な生地とならないという問題があった。
【0007】
これらの問題を回避するために、ペースト状素材に小麦粉、でんぷん等の粉体をまぶすことが行われている。また、特開平7−236464号公報に開示されているように、ゲル化材を添加した内包材にゲル化材に反応する食品添加物を含有する外包材でくるむ方法の応用、特開平9−140330号公報に開示されているように、微生物産生による多糖類を含む可食性フィルムで被覆する方法等も知られている。あるいは、表面粘度を下げるためにペースト状素材を冷凍状態にて保存配送、使用する等の方法もある。
【0008】
しかし、粉体をまぶす方法は、最終製品であるベーカリー製品が粉っぽい食感になる欠点があり、可食性フィルムやゲル化材を用いる方法は最終製品であるベーカリー製品がねっとりとした食感になる欠点がある。また冷凍状態とする方法でもペースト状素材の製造時に付着したものについては全く解決されないし、長期間における保存の際のケーキングについても解決されない。
【0009】
従って、本発明の目的は、ペースト状素材の粘着性を減じ、ベーカリー生地に簡単に配合することができ、風味良好で外観、内相とも良好な模様を有するベーカリー製品を製造することが可能であり、また保存時の素材の相互付着性を減じた、ベーカリー用素材を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、次に示すベーカリー用素材によって達成される。
【0011】
すなわち、本発明は、フラワーペースト、シュー生地、カスタードクリーム、ジャム、ゼリー、アーモンドクリーム、マロンペースト、あん、チョコペースト又はヌガーの中から選ばれたペースト状素材を、小麦粉を含有する生地で包んだ、ベーカリー生地に配合されるベーカリー用素材であって、上記小麦粉を含有する生地100重量部に対し、上記ペースト状素材が300〜600重量部であるベーカリー用素材を提供するものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のベーカリー用素材を詳細に述べる
本発明はペースト状素材を、小麦粉を含有する生地で包んだベーカリー用素材である。
【0013】
本発明でいうペースト状素材とは、常温でペースト状の食用素材や、常温で可塑性を有さない固体あるいは液体であっても、常温で固体のものは加熱して使用し、常温で液状のものは冷却して使用する等の方法により、ペースト状となるものをいう。
【0014】
本発明におけるペースト状素材は、フラワーペースト、シュー生地、カスタードクリーム、ジャム、ゼリー、アーモンドクリーム、マロンペースト、あん、チョコペースト、ヌガーの中から選ばれる。本発明においては、この中でフラワーペーストを使用するのが好ましい。
【0015】
また、これらのペースト状素材中に固形物が存在していても、全体の物性が、小麦粉を含有する生地で包む際の障害にならない限りは問題なく使用可能である。この場合の固形物とは、例えば果肉、つぶあん、チョコチップ、ナッツのダイス等が挙げられる。
【0016】
本発明における小麦粉を含有する生地としては、パン生地、パイ生地、デニッシュ生地、シュー生地、ドーナツ生地、ケーキ生地、クラッカー生地、クッキー生地、ハードビス生地、ワッフル生地等、イーストの有無や折生地、練り生地の区別なく使用することができる。生地の安定性の面からイーストを使用しない生地を用いるのが好ましい。
【0017】
そして、小麦粉を含有する生地を強靱な生地にするため、蛋白質含量の多い小麦粉を使用したり、アスコルビン酸や活性グルテン等を添加したり、高速ミキシングを加えて得られた生地とすることが好ましい。こうすることにより、伸展性のある生地が得られる。このような小麦粉を含有する生地でペースト状素材を包んだとき、小麦粉を含有する生地の伸展性が良好なので、ペースト状素材が飛び出しにくいベーカリー用素材とすることができる。
【0018】
上記の蛋白質含量が多い小麦粉とは、小麦粉中の蛋白質含量が好ましくは6重量%以上、さらに好ましくは10〜20重量%含有する小麦粉である。蛋白質含量が6重量%未満であると、小麦粉を含有する生地の伸展性が不良となり、本発明のベーカリー用素材の製造時に、小麦粉を含有する生地が切れ、内包するペースト状素材が飛び出し易い。
【0019】
上記のアスコルビン酸を添加する場合は、小麦粉に対して好ましくは10〜500ppm、さらに好ましくは60〜350ppm添加する。アスコルビン酸の添加量が10ppm未満であると、小麦粉を含有する生地の伸展性が不良となり、本発明のベーカリー用素材の製造時に、小麦粉を含有する生地が切れ、内包するペースト状素材が飛び出してしまい易い。アスコルビン酸の添加量が500ppmを超えると、生地が極度にしまってしまい、小麦粉を含有する生地が切れ易く、内包するペースト状素材が飛び出し易い。
【0020】
上記の活性グルテンを添加する場合は、小麦粉に対して好ましくは2〜10重量%添加する。活性グルテンの添加量が2重量%未満であると、小麦粉を含有する生地の伸展性が不良となり、本発明のベーカリー用素材の製造時に、小麦粉を含有する生地が切れ、内包するペースト状素材が飛び出し易い。活性グルテンの添加量が10重量%を超えると、生地が極度にしまってしまい、小麦粉を含有する生地が切れ易く、内包するペースト状素材が飛び出し易い。
【0021】
上記の高速ミキシングとは、高速ミキシングを1分以上行うのが好ましく、3〜10分行うのがさらに好ましい。高速ミキシングが1分未満であると生地のデベロップが不完全で小麦粉を含有する生地の伸展性が不良となり易く、本発明のベーカリー用素材の製造時に、小麦粉を含有する生地が切れ、内包するペースト状素材が飛び出し易い。また高速ミキシングが10分を超えると生地がブレークダウンを起こし、激しくべたつき本発明のベーカリー用素材の製造が困難となってしまう。
【0022】
さらに、小麦粉を含有する生地には、必要に応じて、糖類、乳製品、卵類、油脂、加工油脂製品、膨張剤、乳化剤、pH調整剤、無機塩類、イースト、イーストフード等、生地に均一に分散可能な原材料を添加してもよい。
【0023】
本発明のベーカリー用素材の形状としては、例えばシート状、円柱状、立方体状、直方体状、短冊状、チップ状等を挙げることができる。
【0024】
本発明のベーカリー用素材は、ペースト状素材を小麦粉を含有する生地で包んだものであるが、ペースト状素材表面の3分の2以上が小麦粉を含有する生地で被覆されているものが好ましい。例えばベーカリー用素材が、円柱あるいは立方体、直方体の場合の天頂面、底面は必ずしも小麦粉を主体とする生地で包まれている必要はない。何故なら例えば立方体の場合の天頂面、底面が被覆されてなかったとしても、箱詰めの際に箱中に乱積みしたとして、2個の立方体の露面同士が接するのは確率的に大変低く、実用上問題ないからである。
【0025】
本発明のベーカリー用素材として、シート状や立方体状、直方体状の形状とする場合、ペースト状素材を、小麦粉を含有する生地で包んだ後、折りたたみ操作を行ってもよい。折りたたみ操作を加えることにより、小麦粉を含有する生地とペースト状素材の比率が安定したベーカリー用素材が得られる。この折りたたみ操作を行った場合、折りたたみ層数は、好ましくは16層以下である。16層よりも多い層数だと、本発明のベーカリー用素材の製造時に小麦粉を含有する生地が切れ易く、不安定なベーカリー用素材となり易い。
【0026】
本発明のベーカリー用素材をシート状とした場合、厚さは0.2〜10cmが好ましい。0.2cmよりも薄いと、薄すぎて安定したベーカリー用素材の製造が困難となり易い。10cmよりも厚いと、ベーカリー用素材をベーカリー生地と組み合わせて用いるのが難しい。
【0027】
また、本発明のベーカリー用素材を、立方体状、直方体状、短冊状、チップ状等の小片状とした場合、その体積は0.1〜100cm3 であることが好ましい。体積が0.1cm3 未満であるとベーカリー製品とした場合の最終製品における本発明のベーカリー用素材の視認性に乏しくなり易く、100cm3 よりも大きいとベーカリー生地に対し本発明のベーカリー用素材を添加した際の混合性が悪くなり易い。
【0028】
本発明のベーカリー用素材をシート状や小片状とした場合、ベーカリー用素材の一部に切り込みを入れてもよい。このように切り込みを入れることにより、本発明のベーカリー用素材をベーカリー生地製造時に添加する際、ミキシング機構のフックあるいはビーター・ワイヤーでミキシングされることにより、ベーカリー用素材が裁断され、ベーカリー用素材が分散し易い。
【0029】
この切り込みの入れ方としては、例えば短冊のシート面に破線状のピケを平行に数本入れる、あるいは棒状直方体に適宜切り込みを入れる等の方法が有効である。スリットの入れ方としては、小片に対し1カ所以上のスリットが入ることを条件とした上で、列間隔は、好ましくは2mm以上、さらに好ましくは2〜50mm、スリット長は好ましくは1mm以上、さらに好ましくは1〜50mm、ピッチは好ましくは2mm以上、さらに好ましくは2〜52mmとすることが好ましい。
【0030】
本発明において、小麦粉を含有する生地とペースト状素材との配合割合は、小麦粉を含有する生地100重量部に対し、ペースト状素材を300〜600重量部である。
【0031】
このようにして得られた本発明のベーカリー用素材は、ベーカリー生地と組み合わせて用いることができ、このベーカリー生地としては特に制限はなく、例えば、パン生地、パイ生地、デニッシュ生地、シュー生地、ドーナツ生地、ケーキ生地、クラッカー生地、クッキー生地、ハードビス生地等、イーストの有無や折生地、練り生地の区別なく使用することができる。
【0032】
組み合わせ方法としては、ベーカリー生地のミキシング時にベーカリー用素材を直接添加する方法が挙げられる。この場合、ベーカリー用素材はベーカリー生地への親和性が高く、長時間のミキシングにより練り込まれてしまうため、添加後はなるべく短時間で生地を仕上げる必要がある。よって、通常のベーカリー生地を仕上げてから最後に本発明のベーカリー用素材を添加し、低速2分程度のミキシングで、ベーカリー生地とベーカリー用素材を混合することが望ましい。
【0033】
上記以外の組み合わせ方法としては、ベーカリー生地をシーター等でシーティングする際に、伸展した生地の上に本発明のベーカリー用素材を散布して、折り込む方法が挙げられる。又は、ベーカリー生地成形時に、本発明のベーカリー用素材をベーカリー生地に接合させた状態でモルダーに投入する等の方法が挙げられる。
【0034】
ベーカリー生地に添加するベーカリー用素材の割合は特に制限はないが、ベーカリー生地100重量部に対し、ベーカリー用素材を好ましくは5〜300重量部、さらに好ましくは10〜200重量部である。
【0035】
また、これらのベーカリー用素材及びこれを使用したベーカリー生地は冷蔵、あるいは冷凍することで、より安定した保存性が得られ、また、相互付着性あるいはケーキング性の低減が可能となる。
【0036】
【実施例】
以下、実施例等に基づき本発明を具体的に説明する。なお、以下の「部」は全て重量基準である。
【0037】
〔実施例1〕
小麦粉(日本製粉商品名「イーグル」)100部、水55部、食塩1部、上白糖15部、ショートニング5部を縦型ミキサー(関東混合機工業製)にて高速で10分混合し、グルテンを十分に出した生地を得た。この生地100部に対し、シード状のフラワーペースト400部を包み込み、その後リバースシーターで厚さ5mmまで圧延し、この生地に、列間隔7mm、スリット長30mm、ピッチ50mmで編み目状スリットを入れ、その後80mm×30mmの小片にカットし、本発明のベーカリー用素材を得た。このベーカリー用素材は1枚12gであった。これを冷凍庫にて−20℃にまで冷却し、縦270mm、横350mm、高さ300mmの段ボール箱に10kg投入、冷凍保存した。このベーカリー用素材は相互付着性が少なく、3ヶ月保存においてもケーキングを起こさなかった。
【0038】
〔実施例2〕
小麦粉(日本製粉商品名「イーグル」)100部、イースト3部、イーストフード0.1部、食塩2部、上白糖2部、ショートニング2部、水70部を縦型ミキサーで混合して得たパン生地に、実施例1で得られたベーカリー用素材80部を添加、低速1分混合し、ベーカリー生地を得た。
【0039】
このベーカリー生地を30℃、相対湿度85%、120分発酵させ、70g分割・丸め、生地やすめ、再まるめ成形を行い、パウンド型に2個並べて入れ、ホイロに移し、38℃、相対湿度85%、60分発酵させた後、表面に卵を塗布、オーブンにて200℃、30分焼成し、ベーカリー用素材使用ブレッドを得た。
【0040】
ここで得られた2色ブレッドは内相がきれいなマーブル状となっており、大変美しい内相であった。
【0041】
〔実施例3〕
小麦粉(日本製粉商品名「イーグル」)100部、イースト3部、イーストフード0.1部、食塩2部、上白糖2部、ショートニング2部、水70部を縦型ミキサーで混合して得たベーカリー生地を30℃、相対湿度85%、120分発酵させ、70g分割・丸め、生地やすめ後、実施例1のベーカリー用素材1枚を接合させ、モルダーに投入、ストーリングされた2色渦巻状きのベーカリー生地を得た。
【0042】
この生地を2コパウンド型に投入、ホイロに移し、38℃、相対湿度85%、60分発酵させた後、表面に卵を塗布、オーブンにて200℃30分焼成、ベーカリー用素材使用ブレッドを得た。
【0043】
ここで得られた2色渦巻きブレッドは、フラワーペーストが内相に渦巻き状の層をなして存在しており、従来にない内相を呈したパンが得られた。また、フラワーペーストが小麦粉生地で被覆されたベーカリー用素材を使用しているため、モルダーへのフラワーペーストの付着は見られなかった。
【0044】
〔比較例1〕
シート状のフラワーペーストを各辺10mmの立方体に切り出し、小麦粉をまぶし、ベーカリー用素材を得た。この素材を実施例1と同様の条件で冷凍保管した。その結果、実施例1の本発明品に比べ、相互付着性が高く、また保存中に自重によりケーキングを起こした。
【0045】
〔比較例2〕
小麦粉(日本製粉商品名「イーグル」)100部、イースト3部、イーストフード0.1部、食塩2部、上白糖2部、ショートニング2部、水70部を縦型ミキサーで混合して得たパン生地に、比較例1で得られたベーカリー用素材80部を添加、低速1分混合し、ベーカリー生地を得た。
【0046】
このベーカリー生地を30℃、相対湿度85%、120分発酵させ、70g分割・丸め、生地やすめ、再まるめ成形を行い、パウンド型に2個並べて入れ、ホイロに移し、38℃、相対湿度85%、60分発酵させた後、表面に卵を塗布、オーブンにて200℃、30分焼成した。
【0047】
得られた焼成品はミキシングの際にベーカリー用素材が相互付着したため、またベーカリー生地とのなじみが悪いため、ベーカリー用素材の固まりができていた。また、焼成品のベーカリー用素材塊の周囲は粉っぽい食感であった。
【0048】
【発明の効果】
本発明のベーカリー用素材は、ペースト状素材の粘着性による製菓、製パンにおける欠点を、小麦粉を含有する生地で包み込むことにより、ペースト状素材の相互付着を防止するものであり、ペースト状素材を保存するときに相互付着を防止するために使用していた剥離用非食性シート等を使用しなくてもよいものであり、ゴミ削減、手間の削除等を改善するものである。
【0049】
このベーカリー用素材は手軽に外観、内相に様々な模様付けが簡単に行える。また、このベーカリー用素材は外層が小麦粉を含有する生地であるため、ベーカリー生地に添加の際も生地になじみ易いものである。
Claims (4)
- フラワーペースト、シュー生地、カスタードクリーム、ジャム、ゼリー、アーモンドクリーム、マロンペースト、あん、チョコペースト又はヌガーの中から選ばれたペースト状素材を、小麦粉を含有する生地で包んだ、ベーカリー生地に配合されるベーカリー用素材であって、上記小麦粉を含有する生地100重量部に対し、上記ペースト状素材が300〜600重量部であるベーカリー用素材。
- 上記ペースト状素材がフラワーペーストである請求項1記載のベーカリー用素材。
- 請求項1又は2記載のベーカリー用素材を、ベーカリー生地に練り込まれないように添加してなるベーカリー生地。
- 請求項3記載のベーカリー生地を焼成したベーカリー製品。
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