前記「クニック」とは、偏光子と保護層の界面で生じる局所的な凹凸欠陥のことをいう。前記クニックの有無は、例えば、後述の実施例に記載の方法で確認できる。
本発明において、偏光板の透過率(T)とは、JIS Z 8701−1982の2度視野(C光源)により、視感度補正を行ったY値であり、例えば、後述の実施例に記載の方法で測定できる。
本発明において、屈折率「nx」は、液晶セルまたは位相差層の面内の屈折率が最大となる方向(遅相軸方向)の屈折率であり、屈折率「ny」は、液晶セルまたは位相差層の面内で前記nxの方向と直交する方向(進相軸方向)の屈折率であり、屈折率「nz」は、前記nxおよび前記nyの各方向に対し直交する液晶セルまたは位相差層の厚み方向の屈折率である。
本発明において、位相差層の面内の位相差値(Re[λ])とは、例えば、23℃での波長λ(nm)における位相差層の面内の位相差値である。Re[λ]は、位相差層の厚みをd(nm)としたとき、式:Re[λ]=(nx−ny)×dにより算出される。Re[λ]は、例えば、後述の実施例に記載の方法で測定できる。
本発明において、液晶セルまたは位相差層の厚み方向の位相差値(Rth[λ])とは、例えば、23℃での波長λ(nm)における液晶セルまたは位相差層の厚み方向の位相差値である。Rth[λ]は、液晶セルまたは位相差層の厚みをd(nm)としたとき、式:Rth[λ]=(nx−nz)×dにより算出される。Rth[λ]は、例えば、後述の実施例に記載の方法で測定できる。
本発明において、位相差層の厚み方向の複屈折率(Δnxz[λ])は、位相差層の厚みをd(nm)としたとき、式:Δnxz[λ]=Rth[λ]/dにより算出される値である。Rth[λ]については、前述のとおりである。
本発明において、Nz係数は、式:Nz係数=Rth[λ]/Re[λ]により算出される値である。前記λは、例えば、590nmとすることができる。
本発明において、「nx=ny」または「ny=nz」とは、これらが完全に一致する場合だけでなく、実質的に同一である場合を包含する。したがって、例えば、nx=nyと記載する場合には、Re[590]が10nm未満である場合を包含する。
本発明において、「直交」は、実質的に直交している場合を含み、前記実質的に直交している場合とは、例えば、90°±2°の範囲であり、好ましくは、90°±1°の範囲である。また、本発明において、「平行」とは、実質的に平行の場合を含み、前記実質的に平行の場合とは、例えば、0°±2°の範囲であり、好ましくは、0°±1°の範囲である。
本発明の液晶パネルおよび液晶パネルの製造方法において、前記金属化合物コロイドに含まれる金属化合物が、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、リン酸カルシウム、セライト、タルク、クレイおよびカオリンからなる群から選択される少なくとも一つの金属化合物であることが好ましい。
本発明の液晶パネルおよび液晶パネルの製造方法において、前記金属化合物コロイドの表面電荷が、正電荷であることが好ましい。
本発明の液晶パネルおよび液晶パネルの製造方法において、前記接着層の厚みが、0.01〜0.15μmの範囲であることが好ましい。
本発明の液晶パネルおよび液晶パネルの製造方法において、前記第2の偏光板の透過率(T2)と、前記第1の偏光板の透過率(T1)との差(ΔT=T2−T1)は、0.1〜6.0%の範囲であることが好ましい。前記範囲の透過率の差を有する2枚の偏光板を用いることによって、より一層、正面方向のコントラスト比が高い液晶パネルを得ることができる。
本発明の液晶パネルおよび液晶パネルの製造方法において、前記液晶セルが、ホメオトロピック配列に配向させた液晶分子を含むことが好ましい。
本発明の液晶パネルおよび液晶パネルの製造方法において、前記第1の偏光板の透過率(T1)は、38.3〜43.3%の範囲であることが好ましい。前記T1を前記範囲とすることで、より一層、正面方向のコントラスト比が高い液晶パネルを得ることができる。
本発明の液晶パネルおよび液晶パネルの製造方法において、前記第2の偏光板の透過率(T2)は、41.1〜44.3%の範囲であることが好ましい。前記T2を前記範囲とすることで、より一層、正面方向のコントラスト比が高い液晶パネルを得ることができる。
本発明の液晶パネルおよび液晶パネルの製造方法において、前記第1の偏光板および前記第2の偏光板の少なくとも一方の偏光度は、99%以上であることが好ましい。前記偏光度を99%以上とすることで、より一層、正面方向のコントラスト比が高い液晶パネルを得ることができる。
本発明の液晶パネルおよび液晶パネルの製造方法において、前記第1の偏光子および前記第2の偏光子の少なくとも一方は、ヨウ素を含有するポリビニルアルコール系樹脂を含むことが好ましい。
本発明の液晶パネルおよび液晶パネルの製造方法において、前記第1の偏光子のヨウ素含有量(I1)と、前記第2の偏光子のヨウ素含有量(I2)との差(ΔI=I1−I2)が、0.1〜2.6重量%の範囲であることが好ましい。各偏光子のヨウ素含有量の関係を前記範囲とすることで、より好ましい範囲の透過率の関係を有する偏光板が得られ、この結果、より一層、正面方向のコントラスト比が高い液晶パネルを得ることができる。
本発明の液晶パネルおよび液晶パネルの製造方法において、前記第1の偏光子のヨウ素含有量(I1)および前記第2の偏光子のヨウ素含有量(I2)の少なくとも一方が、1.8〜5.0重量%の範囲であることが好ましい。各偏光子のヨウ素含有量を前記範囲とすることで、より好ましい範囲の透過率の偏光板が得られ、この結果、より一層、正面方向のコントラスト比が高い液晶パネルを得ることができる。
本発明の液晶パネルおよび液晶パネルの製造方法において、前記第1の位相差層の遅相軸と前記第1の偏光子の吸収軸が直交していることが好ましい。前記第1の偏光子は、一般的に、その形成材料を複数のロール間で縦方向に延伸することで作製される。一方、前記第1の位相差層は、例えば、その形成材料を横一軸延伸することで作製される。したがって、前記第1の位相差層の遅相軸と前記第1の偏光子の吸収軸が直交する関係にあれば、前記第1の位相差層と前記第1の偏光子との積層を、ロールtoロールで連続的に同一方向で行うことが可能となり、製造効率が高くなる。
本発明の液晶パネルおよび液晶パネルの製造方法において、前記第1の位相差層の波長590nmにおける面内の位相差値(Re1[590])は、50〜200nmの範囲であることが好ましい。Re1[590]を前記範囲とすることで、より一層、正面方向のコントラスト比が高い液晶パネルを得ることができる。
本発明の液晶パネルおよび液晶パネルの製造方法において、前記第1の位相差層の屈折率楕円体が、nx>ny>nzの関係(負の二軸性)を示すことが好ましい。前記第1の位相差層が負の二軸性を示す場合には、正面方向のコントラスト比が高く、且つ、斜め方向のコントラスト比も高い液晶パネルを得ることができる。この場合において、前記第1の位相差層の波長590nmにおける厚み方向の位相差値(Rth1[590])と前記第1の位相差層の波長590nmにおける面内の位相差値(Re1[590])との差(Rth1[590]−Re1[590])が、10〜100nmの範囲であることが好ましい。前記差(Rth1[590]−Re1[590])を前記範囲とすることで、より一層、斜め方向のコントラスト比の高い液晶パネルを得ることができる。これに加え、若しくは代えて、前記第1の位相差層の波長590nmにおけるNz係数が、1.1〜3.0の範囲であることが好ましい。前記第1の位相差層のNz係数を前記範囲とすることで、より一層、斜め方向のコントラスト比も高い液晶パネルを得ることができる。
本発明の液晶パネルおよび液晶パネルの製造方法において、前記第1の位相差層は、ノルボルネン系樹脂を含有する位相差フィルム(A)であることが好ましい。
本発明の液晶パネルおよび液晶パネルの製造方法において、前記ノルボルネン系樹脂を含有する位相差フィルム(A)は、固定端延伸法により作製されたフィルムであることが好ましい。前記固定端延伸でフィルムを作製すれば、屈折率楕円体がnx>ny>nzの関係(負の二軸性)を示す位相差フィルムを得やすいからである。
本発明の液晶パネルおよび液晶パネルの製造方法において、前記第2の位相差層の波長590nmにおける厚み方向の位相差値(Rth2[590])は、100〜400nmの範囲であることが好ましい。Rth2[590]を前記範囲とすることで、より一層、正面方向のコントラスト比が高い液晶パネルを得ることができる。
本発明の液晶パネルおよび液晶パネルの製造方法において、前記第2の位相差層は、ポリイミド系樹脂を含有する位相差フィルム(B1)、セルロース系樹脂を含有する位相差フィルム(B2)、および前記位相差フィルム(B1)と前記位相差フィルム(B2)との積層体(C)のいずれかであることが好ましい。
以下、本発明を詳しく説明する。
〔A.本発明の液晶パネル〕
図1の模式断面図に、本発明の液晶パネルの構成の一例を示す。同図においては、分かりやすくするために、各構成部材の大きさ、比率等は、実際とは異なっている。図示のとおり、この液晶パネル100は、第1の偏光板51と、第2の偏光板52と、液晶セル10とを主要な構成部材として有する。前記第1の偏光板51は、前記液晶セル10の表示面側(同図において上側)に配置されている。前記第2の偏光板52は、前記液晶セル10の裏面側(同図において下側)に配置されている。前記第1の偏光板51は、第1の偏光子21と、第1の位相差層31と、第1の保護層41とを主要な構成部材として含む。前記第1の位相差層31は、前記第1の偏光子21と前記液晶セル10との間に配置されている。前記第1の保護層41は、前記第1の偏光子21の前記液晶セル10とは反対側に配置されている。前記第2の偏光板52は、第2の偏光子22と、第2の位相差層32と、第2の保護層42とを主要な構成部材として含む。前記第2の位相差層32は、前記第2の偏光子22と前記液晶セル10との間に配置されている。前記第2の保護層42は、前記第2の偏光子22の前記液晶セル10とは反対側に配置されている。前記第1の位相差層の屈折率楕円体は、nx>ny≧nzの関係を示す。前記第2の位相差層の屈折率楕円体は、nx=ny>nzの関係を示す。前記第2の偏光板の透過率(T2)は、前記第1の偏光板の透過率(T1)よりも大きい。このような液晶パネルは、従来の液晶パネル(代表的には、液晶セルの両側に配置した2枚の偏光板の透過率が同一であるもの)に比べて、正面方向のコントラスト比が格段に高い。このように、液晶セルの裏面側に配置された偏光板の透過率を、表示面側に配置された偏光板の透過率よりも大きくすることで、正面方向のコントラスト比が大きく向上することは、本発明者らによって初めて見出された知見であり、予期せぬ優れた効果である。また、前記第1の偏光子と前記第1の位相差層とは、金属化合物コロイドを含むポリビニルアルコール系樹脂を含有する水溶性接着剤を含む接着層を介して積層されている。このような液晶パネルでは、従来の液晶パネルに比べて、クニックの発生が抑制される。本発明において、前記液晶セルの平面形状は、矩形であり、正方形であってもよいし、長方形であってもよいが、好ましくは長方形である。また、本発明において、前記偏光子、位相差層、保護層等の各構成部材の平面形状は、矩形であることが好ましく、正方形であってもよいし、長方形であってもよいし、好ましくは液晶セルの平面形状に合わせた長方形である。
前述のとおり、前記第2の偏光板の透過率(T2)と、前記第1の偏光板の透過率(T1)との差(ΔT=T2−T1)は、0.1〜6.0%の範囲であることが好ましい。前記範囲の透過率の差を有する2枚の偏光板を用いることによって、より一層、正面方向のコントラスト比が高い液晶パネルを得ることができる。前記差(ΔT=T2−T1)は、より好ましくは、0.1〜5.0%の範囲であり、さらに好ましくは、0.2〜4.5%の範囲であり、特に好ましくは、0.3〜4.0%の範囲である。
前記液晶パネルの各構成部材(光学部材)の間には、任意の接着層(図示せず)や、任意の光学部材(好ましくは、等方性を示すもの)が配置されてもよい。前記「接着層」とは、隣り合う光学部材の面と面とを接合し、実用上十分な接着力と接着時間で一体化させるものをいう。前記接着層を形成する材料としては、例えば、従来公知の接着剤、粘着剤、アンカーコート剤等が挙げられる。前記接着層は、接着体の表面にアンカーコート層が形成され、その上に接着剤層が形成されたような、多層構造であってもよい。また、肉眼的に認知できないような薄い層(ヘアーラインともいう)であってもよい。
〔B.液晶セル〕
本発明に用いられる液晶セルとしては、任意の適切なものが採用され得る。前記液晶セルとしては、例えば、薄膜トランジスタを用いたアクティブマトリクス型のもの等が挙げられる。また、前記液晶セルとしては、スーパーツイストネマチック液晶表示装置に採用されているような、単純マトリクス型のもの等も挙げられる。
前記液晶セルは、好ましくは、一対の基板と、前記一対の基板に挟持された表示媒体としての液晶層とを含む。前記一対の基板のうち、一方の基板(アクティブマトリクス基板)には、好ましくは、液晶の電気光学特性を制御するスイッチング素子(例えば、TFT)と、このアクティブ素子にゲート信号を与える走査線およびソース信号を伝える信号線とが設けられる。前記一対の基板のうち、他方の基板(例えば、カラーフィルター基板)には、好ましくは、カラーフィルターが設けられる。
前記カラーフィルターは、前記アクティブマトリクス基板に設けてもよい。または、例えば、フィールドシーケンシャル方式のように液晶表示装置の照明手段として、RGBの3色光源(さらに、多色の光源を含んでもよい)が用いられる場合には、前記カラーフィルターは、省略してもよい。前記一対の基板の間隔(セルギャップ)は、例えば、スペーサーによって制御される。前記セルギャップは、例えば、1.0〜7.0μmの範囲である。各基板の前記液晶層に接する側には、例えば、ポリイミドからなる配向膜が設けられる。または、例えば、パターニングされた透明基板によって形成されるフリンジ電界を利用して、液晶分子の初期配向が制御される場合には、前記配向膜は、省略してもよい。
前記液晶セルは、好ましくは、屈折率楕円体がnz>nx=nyの関係を示す。前記屈折率楕円体がnz>nx=nyの関係を示す液晶セルとしては、駆動モードの分類によれば、例えば、バーティカル・アラインメント(VA)モード、ツイスティッド・ネマチック(TN)モード、垂直配向型電界制御複屈折(ECB)モード、光学補償複屈折(OCB)モード等が挙げられる。本発明において、前記液晶セルの駆動モードは、前記VAモードであることが、特に好ましい。
前記VAモードの液晶セルは、電圧制御複屈折効果を利用し、電界が存在しない状態で、ホメオトロピック配列に配向させた液晶分子を、基板に対して法線方向の電界で応答させる。具体的には、例えば、特開昭62−210423号公報や、特開平4−153621号公報に記載されているように、ノーマリーブラック方式の場合、電界が存在しない状態では、液晶分子が基板に対して法線方向に配向しているために、上下の偏光板を直交配列させると、黒表示が得られる。一方、電界が存在する状態では、液晶分子が偏光板の吸収軸に対して、45°方位に倒れるように動作することによって、透過率が大きくなり、白表示が得られる。
前記VAモードの液晶セルは、例えば、特開平11−258605号公報に記載されているように、電極にスリットを形成したものや、表面に突起を形成した基材を用いることによって、マルチドメイン化したものであってもよい。このような液晶セルは、例えば、シャープ(株)製の商品名「ASV(Advanced Super View)モード」、同社製の商品名「CPA(Continuous Pinwheel Alignment)モード」、富士通(株)製の商品名「MVA(Multi−domain Vertical Alignment)モード」、三星電子(株)製の商品名「PVA(Patterned Vertical Alignment)モード」、同社製の商品名「EVA(Enhanced Vertical Alignment)モード」、三洋電機(株)製の商品名「SURVIVAL(Super Ranged Viewing Vertical Alignment)モード」等が挙げられる。
前記液晶セルの電界が存在しない状態におけるRthLC[590]は、好ましくは、−500〜−200nmの範囲であり、より好ましくは、−400〜−200nmの範囲である。前記RthLC[590]は、例えば、液晶分子の複屈折率および前記セルギャップを調整することにより、適宜、設定される。
前記液晶セルとしては、例えば、市販の液晶表示装置に搭載されているものをそのまま用いてもよい。前記VAモードの液晶セルを含む市販の液晶表示装置としては、例えば、シャープ(株)製液晶テレビの商品名「AQUOSシリーズ」、ソニー社製液晶テレビの商品名「BRAVIAシリーズ」、SAMSUNG社製32V型ワイド液晶テレビの商品名「LN32R51B」、(株)ナナオ製液晶テレビの商品名「FORIS SC26XD1」、AU Optronics社製液晶テレビの商品名「T460HW01」等が挙げられる。
〔C.偏光板〕
前記第1の偏光板と前記第2の偏光板は、互いに吸収軸が直交する関係で配置されていることが好ましい。前記第1の偏光板および前記第2の偏光板の厚みは、例えば、20〜300μmの範囲である。前記範囲の厚みとすることで、より機械的強度に優れた偏光板を得ることができる。
前述のとおり、前記第1の偏光板の透過率(T1)は、好ましくは、38.3〜43.3%の範囲である。前記T1を前記範囲とすることで、より一層、正面方向のコントラスト比が高い液晶パネルを得ることができる。前記T1は、より好ましくは、38.6〜43.2%の範囲であり、さらに好ましくは、39.9〜43.1%の範囲であり、特に好ましくは、39.2〜43.0%の範囲である。
前述のとおり、前記第2の偏光板の透過率(T2)は、好ましくは、41.1〜44.3%の範囲である。前記T2を前記範囲とすることで、より一層、正面方向のコントラスト比が高い液晶パネルを得ることができる。前記T2は、より好ましくは、41.5〜44.3%の範囲であり、さらに好ましくは、41.9〜44.2%の範囲であり、特に好ましくは、42.3〜44.2%の範囲である。
前記第1の偏光板および前記第2の偏光板の透過率を増加ないし減少させる方法としては、例えば、前記第1の偏光板および前記第2の偏光板にヨウ素を含有するポリビニルアルコール系樹脂を含む偏光子が用いられる場合、前記偏光子中のヨウ素の含有量を調整する方法等が挙げられる。具体的には、前記偏光子中のヨウ素の含有量を減少させると、前記第1の偏光板および前記第2の偏光板の透過率を高くすることができる。この方法は、ロール状の偏光板の作製にも、毎葉の偏光板の作製にも適用可能である。前記偏光子の詳細については、後述する。
前述のとおり、前記第1の偏光板および前記第2の偏光板の少なくとも一方の偏光度は、好ましくは、99%以上である。前記偏光度を99%以上とすることで、より一層、正面方向のコントラスト比が高い液晶パネルを得ることができる。前記偏光度は、より好ましくは、99.5%以上であり、さらに好ましくは、99.8%以上である。前記偏光度は、例えば、分光光度計(村上色彩技術研究所(株)製の商品名「DOT−3」)を用いて測定できる。前記偏光度の具体的な測定方法としては、前記第1の偏光板および前記第2の偏光板の平行透過率(H0)および直交透過率(H90)を測定し、式:偏光度(%)={(H0−H90)/(H0+H90)}1/2×100より求めることができる。前記平行透過率(H0)は、同じ偏光板2枚を互いの吸収軸が平行となるように重ね合わせて作製した平行型積層偏光板の透過率の値である。前記直交透過率(H90)は、同じ偏光板2枚を互いの吸収軸が直交するように重ね合わせて作製した直交型積層偏光板の透過率の値である。なお、これらの透過率は、JIS Z 8701−1982の2度視野(C光源)により、視感度補正を行ったY値である。
〔D.偏光子〕
本発明において、「偏光子」とは、自然光や偏光から任意の偏光に変換し得る素子をいう。本発明に用いられる偏光子は、特に制限はないが、好ましくは、自然光または偏光を直線偏光に変換するものである。このような偏光子は、入射する光を直交する2つの偏光成分に分けたとき、そのうちの一方の偏光成分を透過させる機能を有し、且つ、他方の偏光成分を、吸収、反射、および散乱等によって透過させないものである。
本発明に用いられる第1の偏光子および第2の偏光子は、好ましくは、ヨウ素を含有するポリビニルアルコール系樹脂を含む。前記第1の偏光子および前記第2の偏光子は、例えば、ヨウ素を含有するポリビニルアルコール系樹脂を含む高分子フィルムを延伸して得ることができる。このような偏光子は、光学特性に優れる。
前記第1の偏光子のヨウ素含有量(I1)と、前記第2の偏光子のヨウ素含有量(I2)との関係は、好ましくは、I1>I2である。前記第1の偏光子のヨウ素含有量(I1)と、前記第2の偏光子のヨウ素含有量(I2)との差(ΔI=I1−I2)は、好ましくは、0.1〜2.6重量%の範囲である。各偏光子のヨウ素含有量の関係を前記範囲とすることで、より好ましい範囲の透過率の関係を有する偏光板が得られ、この結果、より一層、正面方向のコントラスト比が高い液晶パネルを得ることができる。前記差(ΔI=I1−I2)は、より好ましくは、0.1〜2.0重量%の範囲であり、さらに好ましくは、0.1〜1.4重量%の範囲であり、特に好ましくは、0.15〜1.2重量%の範囲である。
前記第1の偏光子および前記第2の偏光子のヨウ素含有量は、それぞれ、好ましくは、1.8〜5.0重量%の範囲である。各偏光子のヨウ素含有量を前記範囲とすることで、より好ましい範囲の透過率の偏光板が得られ、この結果、より一層、正面方向のコントラスト比が高い液晶パネルを得ることができる。前記第1の偏光子および前記第2の偏光子のヨウ素含有量は、それぞれ、より好ましくは、2.0〜4.0重量%の範囲である。前記第1の偏光子のヨウ素含有量は、好ましくは、2.3〜5.0重量%の範囲であり、より好ましくは、2.5〜4.5重量%の範囲であり、さらに好ましくは、2.5〜4.0重量%の範囲である。前記第2の偏光子のヨウ素含有量は、好ましくは、1.8〜3.5重量%の範囲であり、より好ましくは、1.9〜3.2重量%の範囲である。
前記第1の偏光子および前記第2の偏光子は、さらに、カリウムを含むことが好ましい。前記カリウムの含有量は、好ましくは、0.2〜1.0重量%の範囲である。前記カリウムの含有量を前記範囲とすることで、より好ましい範囲の透過率を有し、且つ、より一層、偏光度の高い偏光板を得ることができる。前記カリウムの含有量は、より好ましくは、0.3〜0.9重量%の範囲であり、さらに好ましくは、0.4〜0.8重量%の範囲である。
前記第1の偏光子および前記第2の偏光子は、さらに、ホウ素を含むことが好ましい。前記ホウ素の含有量は、好ましくは、0.5〜3.0重量%の範囲である。前記ホウ素の含有量を前記範囲とすることで、より好ましい範囲の透過率を有し、且つ、より一層、偏光度の高い偏光板を得ることができる。前記ホウ素の含有量は、より好ましくは、1.0〜2.8重量%の範囲であり、さらに好ましくは、1.5〜2.6重量%の範囲である。
前記ポリビニルアルコール系樹脂は、例えば、ビニルエステル系モノマーを重合して得られるビニルエステル系重合体をケン化することで得ることができる。前記ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、好ましくは、95.0〜99.9モル%の範囲である。ケン化度が前記範囲であるポリビニルアルコール系樹脂を用いることで、より耐久性に優れた偏光子を得ることができる。
前記ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度は、目的に応じて、適宜、適切な値が選択され得る。前記平均重合度は、好ましくは、1200〜3600の範囲である。前記平均重合度は、例えば、JIS K 6726−1994に準じて求めることができる。
前記ポリビニルアルコール系樹脂を含む高分子フィルムを得る方法としては、任意の適切な成形加工法が採用され得る。前記成形加工法としては、例えば、特開2000−315144号公報[実施例1]に記載の方法が挙げられる。
前記ポリビニルアルコール系樹脂を含む高分子フィルムは、好ましくは、可塑剤および界面活性剤の少なくとも一方を含む。前記可塑剤としては、例えば、エチレングリコールやグリセリン等の多価アルコール等が挙げられる。前記界面活性剤としては、例えば、非イオン界面活性剤等が挙げられる。前記可塑剤および前記界面活性剤の含有量は、好ましくは、前記ポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して、1〜10重量部の範囲である。前記可塑剤および前記界面活性剤は、例えば、偏光子の染色性や延伸性をより一層向上させる。
前記ポリビニルアルコール系樹脂を含む高分子フィルムは、例えば、市販のフィルムをそのまま用いることもできる。前記市販のポリビニルアルコール系樹脂を含む高分子フィルムとしては、例えば、(株)クラレ製の商品名「クラレビニロンフィルム」、東セロ(株)製の商品名「トーセロビニロンフィルム」、日本合成化学工業(株)製の商品名「日合ビニロンフィルム」等が挙げられる。
前記偏光子の製造方法の一例について、図2を参照して説明する。図2は、本発明に用いられる偏光子の代表的な製造工程の概念を示す模式図である。図示のとおり、ポリビニルアルコール系樹脂を含む高分子フィルム301は、繰り出し部300から繰り出され、純水を含む膨潤浴310、およびヨウ素とヨウ化カリウムとの水溶液を含む染色浴320に浸漬され、速比の異なるロール311、312、321および322でフィルムの長手方向に張力を付与されながら、膨潤処理および染色処理が施される。つぎに、前記膨潤処理および前記染色処理が施されたフィルムは、ヨウ化カリウムとホウ酸との水溶液を含む第1の架橋浴330および第2の架橋浴340に浸漬され、速比の異なるロール331、332、341および342でフィルムの長手方向に張力を付与されながら、架橋処理および最終的な延伸処理が施される。前記架橋処理が施されたフィルムは、ロール351および352によって、純水を含む水洗浴350に浸漬され、水洗処理が施される。前記水洗処理が施されたフィルムは、乾燥手段360で乾燥されることにより、水分率が、例えば、10〜30%の範囲に調節され、巻き取り部380にて巻き取られる。偏光子370は、例えば、前記高分子フィルム(原反フィルム)の長さの5〜7倍の長さに延伸することで得ることができる。
前記染色浴におけるヨウ素の添加量は、水100重量部に対して、好ましくは、0.01〜0.15重量部の範囲であり、より好ましくは、0.01〜0.05重量部の範囲である。前記染色浴におけるヨウ素の添加量を増加させると、結果として、透過率の低い偏光板を得ることができる。前記染色浴におけるヨウ素の添加量を減少させると、結果として、透過率の高い偏光板を得ることができる。
前記染色浴におけるヨウ化カリウムの添加量は、水100重量部に対して、好ましくは、0.05〜0.5重量部である。前記染色浴におけるヨウ化カリウムの添加量を前記範囲とすることで、より好ましい範囲の透過率を有し、且つ、より一層、偏光度の高い偏光板を得ることができる。前記染色浴におけるヨウ化カリウムの添加量は、より好ましくは、0.1〜0.3重量部の範囲である。
前記第1の架橋浴および前記第2の架橋浴におけるヨウ化カリウムの添加量は、水100重量部に対して、好ましくは、0.5〜10重量部の範囲である。前記第1の架橋浴および前記第2の架橋浴におけるホウ酸の添加量は、水100重量部に対して、好ましくは、0.5〜10重量部の範囲である。前記第1の架橋浴および前記第2の架橋浴におけるヨウ化カリウムおよびホウ酸の添加量を前記範囲とすることで、より好ましい範囲の透過率を有し、且つ、より一層、偏光度の高い偏光板を得ることができる。前記第1の架橋浴および前記第2の架橋浴におけるヨウ化カリウムの添加量は、より好ましくは、1〜7重量部の範囲である。前記第1の架橋浴および前記第2の架橋浴におけるホウ酸の添加量は、より好ましくは、1〜7重量部の範囲である。
〔E.第1の位相差層〕
本発明において、「位相差層」とは、面内および厚み方向の少なくとも一方に、位相差を有する透明な層をいう。前記第1の位相差層は、屈折率楕円形がnx>ny≧nzの関係を示す。本発明において、「nx>ny≧nzの関係を示す」とは、nx>ny=nzの関係(正の一軸性)を示すか、またはnx>ny>nzの関係(負の二軸性)を示すことをいう。前記第1の位相差層は、単層の位相差を有する層であってもよいし、複数の層からなる積層体であってもよい。前記第1の位相差層の厚みは、好ましくは、0.5〜200μmの範囲である。前記第1の位相差層の波長590nmにおける透過率(T[590])は、好ましくは、90%以上である。
前記第1の位相差層の波長590nmにおける面内および厚み方向の少なくとも一方の位相差値は、100nm以上であることが好ましい。
前記第1の位相差層のRe1[590]は、例えば、10nm以上であり、好ましくは、50〜200nmの範囲である。前記第1の位相差層の屈折率楕円体が、nx>ny=nzの関係を示す場合、Re1[590]は、好ましくは、90〜190nmの範囲である。前記第1の位相差層の屈折率楕円体が、nx>ny>nzの関係(負の二軸性)を示す場合、Re1[590]は、好ましくは、70〜170nmの範囲である。Re1[590]を前記範囲とすることで、より一層、正面方向のコントラスト比が高い液晶パネルを得ることができる。前記第1の位相差層の屈折率楕円体が、nx>ny=nzの関係(正の一軸性)を示す場合、Re1[590]は、より好ましくは、110〜170nmの範囲である。前記第1の位相差層の屈折率楕円体が、nx>ny>nzの関係(負の二軸性)を示す場合、Re1[590]は、より好ましくは、90〜150nmの範囲である。
前記第1の位相差層のRth1[590]は、適宜、決定され得る。一般的に、前記第1の位相差層の屈折率楕円体が、nx>ny=nzの関係(正の一軸性)を示す場合、Re1[590]とRth1[590]とは、略等しい。この場合、前記第1の位相差層は、好ましくは、式:|Rth1[590]−Re1[590]|<10nmを満足する。
前記第1の位相差層の屈折率楕円体は、nx>ny>nzの関係(負の二軸性)を示すことが好ましい。前記第1の位相差層が負の二軸性を示す場合には、正面方向のコントラスト比が高く、且つ、斜め方向のコントラスト比も高い液晶パネルを得ることができる。
前記第1の位相差層の屈折率楕円体が、nx>ny>nzの関係(負の二軸性)を示す場合、Rth1[590]は、Re1[590]よりも大きい。この場合、Rth1[590]とRe1[590]との差(Rth1[590]−Re1[590])は、好ましくは、10〜100nmの範囲である。Rth1[590]を前記範囲とすることで、より一層、斜め方向のコントラスト比が高い液晶パネルを得ることができる。前記差(Rth1[590]−Re1[590])は、より好ましくは、20〜80nmの範囲である。
前記第1の位相差層の波長590nmにおけるNz係数は、適宜、設定され得る。前記第1の位相差層の屈折率楕円体が、nx>ny=nzの関係(正の一軸性)を示す場合、Nz係数は、好ましくは、0.9を超え1.1未満である。
前記第1の位相差層の屈折率楕円体が、nx>ny>nzの関係(負の二軸性)を示す場合、Nz係数は、好ましくは、1.1〜3.0の範囲である。Nz係数を前記範囲とすることで、より一層、斜め方向のコントラスト比が高い液晶パネルを得ることができる。前記第1の位相差層の屈折率楕円体が、nx>ny>nzの関係(負の二軸性)を示す場合、Nz係数は、より好ましくは、1.1〜2.0の範囲であり、さらに好ましくは、1.1〜1.5の範囲である。
前記第1の位相差層を形成する材料としては、屈折率楕円体がnx>ny≧nzの関係を示すものであれば、任意の適切なものが採用され得る。前記第1の位相差層としては、例えば、ノルボルネン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、セルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂等の熱可塑性樹脂を含む位相差フィルムが用いられる。前記位相差フィルムは、全固形分100重量部に対して、熱可塑性樹脂を、好ましくは、60〜100重量部含む。
前記第1の位相差層は、好ましくは、前記ノルボルネン系樹脂を含有する位相差フィルム(A)である。前記ノルボルネン系樹脂は、光弾性係数の絶対値(C[λ]、前記λは、例えば、590nmとすることができる。)が小さいという特徴を有する。本発明において、「ノルボルネン系樹脂」とは、出発原料(モノマー)の一部または全部に、ノルボルネン環を有するノルボルネン系モノマーを用いて得られる(共)重合体をいう。前記「(共)重合体」は、ホモポリマーまたは共重合体(コポリマー)を表す。
前記ノルボルネン系樹脂の波長590nmにおける光弾性係数の絶対値(C[590])は、好ましくは、1×10−12m2/N〜1×10−11m2/Nの範囲である。前記の範囲の光弾性係数の絶対値を有する位相差フィルムを用いれば、より一層、光学的なムラの小さい液晶パネルを得ることができる。
前記ノルボルネン系樹脂は、出発原料としてノルボルネン環(ノルボルナン環に二重結合を有するもの)を有するノルボルネン系モノマーが用いられる。前記ノルボルネン系樹脂は、(共)重合体の状態では、構成単位にノルボルナン環を有していても、有していなくてもよい。(共)重合体の状態で、構成単位にノルボルナン環を有するノルボルネン系樹脂は、例えば、テトラシクロ[4.4.12,5.17,10.0]デカ−3−エン、8−メチルテトラシクロ[4.4.12,5.17,10.0]デカ−3−エン、8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.12,5.17,10.0]デカ−3−エン等が挙げられる。(共)重合体の状態で、構成単位にノルボルナン環を有さないノルボルネン系樹脂は、例えば、開裂により5員環となるモノマーを用いて得られる(共)重合体である。前記開裂により5員環となるモノマーとしては、例えば、ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、5−フェニルノルボルネン等やそれらの誘導体等が挙げられる。前記ノルボルネン系樹脂が共重合体である場合、その分子の配列状態は、特に限定されず、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよいし、グラフト共重合体であってもよい。
前記ノルボルネン系樹脂としては、例えば、(a)ノルボルネン系モノマーの開環(共)重合体に水素添加した樹脂、(b)ノルボルネン系モノマーを付加(共)重合させた樹脂等が挙げられる。前記ノルボルネン系モノマーの開環共重合体に水素添加した樹脂は、1種以上のノルボルネン系モノマーと、α−オレフィン類、シクロアルケン類および非共役ジエン類の少なくとも一つとの開環共重合体に水素添加した樹脂を包含する。前記ノルボルネン系モノマーを付加共重合させた樹脂は、1種以上のノルボルネン系モノマーと、α−オレフィン類、シクロアルケン類および非共役ジエン類の少なくとも一つとを付加共重合させた樹脂を包含する。
前記ノルボルネン系モノマーの開環(共)重合体に水素添加した樹脂は、例えば、ノルボルネン系モノマー等をメタセシス反応させて、開環(共)重合体を得、さらに、前記開環(共)重合体に水素添加して得ることができる。具体的には、例えば、特開平11−116780号公報の段落[0059]〜[0060]に記載の方法、特開2001−350017号公報の[0035]〜[0037]に記載の方法等が挙げられる。前記ノルボルネン系モノマーを付加(共)重合させた樹脂は、例えば、特開昭61−292601号公報の実施例1に記載の方法により得ることができる。
前記ノルボルネン系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、テトラヒドロフラン溶媒によるゲル・パーミエーション・クロマトグラフ法(ポリスチレン標準)で測定した値が、好ましくは、20000〜500000の範囲である。前記ノルボルネン系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは、120〜170℃の範囲である。前記の樹脂であれば、より一層、優れた熱安定性を有し、より一層、延伸性に優れた位相差フィルムを得ることができる。前記ガラス転移温度(Tg)は、例えば、JIS K 7121に準じたDSC法により算出される値である。
前記ノルボルネン系樹脂を含有する位相差フィルム(A)は、任意の適切な成形加工法によって得ることができる。好ましくは、前記ノルボルネン系樹脂を含有する位相差フィルム(A)は、ソルベントキャスティング法または溶融押出法によって、シート状に成形された高分子フィルムを、縦一軸延伸法、横一軸延伸法、縦横同時二軸延伸法、または縦横逐次二軸延伸法により、延伸して作製される。前記延伸法は、横一軸延伸法であることが好ましい。これは、前記位相差フィルム(A)の遅相軸と偏光子の吸収軸が直交する偏光板をロールtoロールで連続的に作製可能となり、かかる偏光板の生産性が大幅に向上し得るからである。すなわち、前記偏光子は、一般的に、その形成材料を複数のロール間で縦方向に延伸することで作製される。ここで、前記位相差フィルム(A)を、横一軸延伸法で作製すれば、前記位相差フィルム(A)と前記偏光子との積層を、連続的に同一方向で行うことで、前記位相差フィルム(A)の遅相軸と偏光子の吸収軸が直交する偏光板を得ることができる。この結果、かかる偏光板の製造効率が高くなる。前記高分子フィルムを延伸する温度(延伸温度)は、好ましくは、120〜200℃の範囲である。前記高分子フィルムを延伸する倍率(延伸倍率)は、好ましくは、1を超え4倍以下である。
前記延伸法は、屈折率楕円体がnx>ny>nzの関係(負の二軸性)を示す位相差フィルムを得やすいことから、固定端延伸法であることが好ましい。ただし、本発明は、これに限定されない。前記延伸法は、自由端延伸法であってもよい。
前記ノルボルネン系樹脂を含有する位相差フィルム(A)としては、例えば、市販のフィルムをそのまま用いることができる。あるいは、前記市販のフィルムに延伸処理および収縮処理の少なくとも一方の処理等の2次的加工を施したものを用いることができる。前記市販のノルボルネン系樹脂を含有する位相差フィルム(A)としては、例えば、JSR(株)製の商品名「アートンシリーズ(ARTON F、ARTON FX、ARTON D)、(株)オプテス製の商品名「ゼオノアシリーズ(ZEONOR ZF14、ZEONOR ZF15、ZEONOR ZF16)等が挙げられる。
前記第1の位相差層として用いられる位相差フィルムは、さらに、任意の適切な添加剤を含んでもよい。前記添加剤としては、例えば、可塑剤、熱安定剤、光安定剤、滑剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、難燃剤、着色剤、帯電防止剤、相溶化剤、架橋剤、増粘剤等が挙げられる。前記添加剤の含有量は、好ましくは、主成分の樹脂100重量部に対し、0を超え10重量部以下である。
〔F.第1の偏光子と第1の位相差層との積層〕
前記第1の偏光子と前記第1の位相差層とは、接着層を介して積層される。図1を例に説明すると、第1の偏光子21と第1の位相差層31とが、接着層を介して積層される。
前記第1の位相差層の前記第1の偏光子への接着面には、易接着処理が施されていることが好ましい。前記易接着処理は、樹脂材料を塗工する処理であることが好ましい。前記樹脂材料としては、例えば、シリコン系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂が好ましい。前記易接着処理が施されることにより、前記接着面に易接着層が形成される。前記易接着層の厚みは、好ましくは、5〜100nmの範囲であり、より好ましくは、10〜80nmの範囲である。
前記接着層は、前記第1の偏光子側に設けられてもよいし、前記第1の位相差層側に設けられてもよいし、前記第1の偏光子側と前記第1の位相差層側の双方に設けられてもよい。
前記接着層は、例えば、接着剤を所定の割合で含有する塗工液を前記第1の位相差層および前記第1の偏光子の少なくとも一方の表面に塗工し、乾燥することで形成された接着層であってもよい。前記塗工液の調製方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。前記塗工液としては、例えば、市販の溶液または分散液を用いてもよく、市販の溶液または分散液にさらに溶剤を添加して用いてもよく、固形分を各種溶剤に溶解または分散して用いてもよい。
前記接着剤としては、ポリビニルアルコール系樹脂を含有する水溶性接着剤が用いられ、アセトアセチル基を有する変性ポリビニルアルコール系樹脂(アセトアセチル基含有ポリビニルアルコール系樹脂)を含有する水溶性接着剤がさらに好ましく用いられる。これは、前記第1の偏光子との接着性に極めて優れ、且つ、前記第1の位相差層との接着性にも優れるからである。前記アセトアセチル基含有ポリビニルアルコール系樹脂としては、例えば、日本合成化学(株)製の商品名「ゴーセノールZシリーズ」、同社製の商品名「ゴーセノールNHシリーズ」、同社製の商品名「ゴーセファイマーZシリーズ」等が挙げられる。
前記ポリビニルアルコール系樹脂としては、例えば、ポリ酢酸ビニルのケン化物、前記ケン化物の誘導体、酢酸ビニルと共重合性を有する単量体との共重合体のケン化物、ポリビニルアルコールをアセタール化、ウレタン化、エーテル化、グラフト化、リン酸エステル化等した変性ポリビニルアルコール等が挙げられる。前記単量体としては、例えば、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和カルボン酸およびそのエステル類、エチレン、プロピレン等のα−オレフィン、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、アリルスルホン酸ソーダ、メタリルスルホン酸ソーダ、スルホン酸ソーダ、スルホン酸ソーダモノアルキルマレート、ジスルホン酸ソーダアルキルマレート、N−メチロールアクリルアミド、アクリルアミドアルキルスルホン酸アルカリ塩、N−ビニルピロリドン、N−ビニルピロリドン誘導体等が挙げられる。これらの樹脂は、単独で用いてもよいし、二種類以上を併用してもよい。
前記ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度は、接着性の観点から、好ましくは、100〜5000の範囲であり、より好ましくは、1000〜4000の範囲である。前記ポリビニルアルコール系樹脂の平均ケン化度は、接着性の観点から、好ましくは、85〜100モル%の範囲であり、より好ましくは、90〜100モル%の範囲である。
前記アセトアセチル基含有ポリビニルアルコール系樹脂は、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂とジケテンとを任意の方法で反応させることにより得られる。具体的には、例えば、酢酸等の溶媒中にポリビニルアルコール系樹脂を分散させた分散体に、ジケテンを添加する方法、ジメチルホルムアミドまたはジオキサン等の溶媒にポリビニルアルコール系樹脂を溶解させた溶液に、ジケテンを添加する方法、ポリビニルアルコール系樹脂にジケテンガスまたは液状ジケテンを直接接触させる方法等が挙げられる。
前記アセトアセチル基含有ポリビニルアルコール系樹脂のアセトアセチル基変性度は、例えば、0.1モル%以上である。前記アセトアセチル基変性度を前記の範囲とすることで、より耐水性に優れた液晶パネルを得ることができる。前記アセトアセチル基変性度は、好ましくは、0.1〜40モル%の範囲であり、より好ましくは、1〜20モル%の範囲であり、さらに好ましくは、2〜7モル%の範囲である。前記アセトアセチル基変性度は、例えば、核磁気共鳴(NMR)法により測定した値である。
前記ポリビニルアルコール系樹脂を含有する水溶性接着剤は、さらに、架橋剤を含有してもよい。これは、耐水性を、より一層向上させることができるからである。前記架橋剤としては、任意の適切な架橋剤を採用し得る。前記架橋剤は、好ましくは、前記ポリビニルアルコール系樹脂と反応性を有する官能基を少なくとも2つ有する化合物である。前記架橋剤としては、例えば、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等のアルキレン基とアミノ基とを2個有するアルキレンジアミン類、トリレンジイソシアネート、水素化トリレンジイソシアネート、トリメチロールプロパントリレンジイソシアネートアダクト、トリフェニルメタントリイソシアネート、メチレンビス(4−フェニル)メタントリイソシアネート、イソホロンジイソシアネートおよびこれらのケトオキシムブロック物またはフェノールブロック物等のイソシアネート類、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミン等のエポキシ類、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド等のモノアルデヒド類、グリオキザール、マロンジアルデヒド、スクシンジアルデヒド、グルタルジアルデヒド、マレインジアルデヒド、フタルジアルデヒド等のジアルデヒド類、メチロール尿素、メチロールメラミン、アルキル化メチロール尿素、アルキル化メチロール化メラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミンとホルムアルデヒドとの縮合物等のアミノ−ホルムアルデヒド樹脂、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、鉄、ニッケル等の二価金属または三価金属の塩およびその酸化物等が挙げられる。これらの中でも、アミノ−ホルムアルデヒド樹脂やジアルデヒド類が好ましい。前記アミノ−ホルムアルデヒド樹脂としては、メチロール基を有する化合物が好ましい。前記ジアルデヒド類としては、グリオキザールが好ましい。中でも、メチロール基を有する化合物が好ましく、メチロールメラミンが特に好ましい。前記アルデヒド化合物としては、例えば、日本合成化学(株)製の商品名「グリオキザール」、OMNOVA製の商品名「セクアレッツ755」等が挙げられる。前記アミン化合物としては、例えば、三菱瓦斯化学(株)製の商品名「メタシキレンジアミン」等が挙げられる。前記メチロール化合物としては、例えば、大日本インキ(株)製の商品名「ウォーターゾールシリーズ」等が挙げられる。
前記架橋剤の配合量は、前記ポリビニルアルコール系樹脂(好ましくは、前記アセトアセチル基含有ポリビニルアルコール系樹脂)100重量部に対して、例えば、1〜60重量部の範囲である。前記配合量を前記の範囲とすることで、透明性、接着性、耐水性に優れた接着層を形成することができる。前記配合量の上限値は、好ましくは、50重量部であり、より好ましくは、30重量部であり、さらに好ましくは、15重量部であり、特に好ましくは、10重量部であり、最も好ましくは、7重量部である。前記配合量の下限値は、好ましくは、5重量部であり、より好ましくは、10重量部であり、さらに好ましくは、20重量部である。なお、後述する金属化合物コロイドの併用により、前記架橋剤の配合量が多い場合における安定性を、より向上させることができる。
前記ポリビニルアルコール系樹脂を含有する水溶性接着剤は、さらに、金属化合物コロイドを含む。前記金属化合物コロイドは、例えば、金属酸化物微粒子が分散媒中に分散しているものであってもよく、微粒子の同種電荷の相互反発に起因して静電的に安定化し、永続的に安定性を有するものであってもよい。前記金属化合物微粒子の平均粒子径は、特に制限されないが、好ましくは、1〜100nmの範囲であり、より好ましくは、1〜50nmの範囲である。これは、前記微粒子を前記接着層中に均一に分散させ、接着性を確保し、且つ、クニックの発生を抑制できるからである。
前記金属化合物としては、任意の適切な化合物を採用し得る。前記金属化合物としては、例えば、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア等の金属酸化物、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、リン酸カルシウム等の金属塩、セライト、タルク、クレイ、カオリン等の鉱物等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは、アルミナである。
前記金属化合物コロイドは、例えば、前記金属化合物が分散媒に分散したコロイド溶液の状態で存在している。前記分散媒としては、例えば、水、アルコール類等が挙げられる。前記コロイド溶液中の固形分濃度は、例えば、1〜50重量%の範囲である。前記コロイド溶液は、安定剤として、硝酸、塩酸、酢酸等の酸を含有してもよい。
前記金属化合物コロイド(固形分)配合量は、前記ポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して、好ましくは、200重量部以下である。前記配合量を前記範囲とすることで、接着性を確保しながら、より好適にクニックの発生を抑制できる。前記配合量は、より好ましくは、10〜200重量部の範囲であり、さらに好ましくは、20〜175重量部の範囲であり、特に好ましくは、30〜150重量部の範囲である。
前記接着剤の調製方法は、任意の適切な方法を採用し得る。例えば、前記ポリビニルアルコール系樹脂と前記架橋剤とを予め混合して適当な濃度に調整したものに、前記金属化合物コロイドを配合する方法が挙げられる。また、前記ポリビニルアルコール系樹脂と前記金属化合物コロイドとを混合した後に、前記架橋剤を、使用時期等を考慮しながら混合することもできる。
前記接着剤における樹脂濃度は、塗工性や放置安定性等の観点から、好ましくは、0.1〜15重量%の範囲であり、より好ましくは、0.5〜10重量%の範囲である。
前記接着剤のpHは、好ましくは、2〜6の範囲であり、より好ましくは、2.5〜5の範囲であり、さらに好ましくは、3〜5の範囲であり、特に好ましくは、3.5〜4.5の範囲である。一般的に、前記金属化合物コロイドの表面電荷は、前記接着剤のpHを調整することで制御できる。前記表面電荷は、好ましくは、正電荷である。前記表面電荷を正電荷とすることで、例えば、より好適にクニックの発生を抑制できる。
前記接着剤の全固形分濃度は、前記接着剤の溶解性、塗工粘度、ぬれ性、前記接着層の所望の厚み等によって異なる。前記全固形分濃度は、溶剤100重量部に対して、好ましくは、2〜100重量部の範囲である。前記全固形分濃度を前記範囲とすることで、より表面均一性の高い接着層を得ることができる。前記固形分濃度は、より好ましくは、10〜50重量部の範囲であり、さらに好ましくは、20〜40重量部の範囲である。
前記接着剤の粘度は、特に制限されないが、23℃におけるせん断速度1000(1/s)で測定した値が、好ましくは、1〜50mPa・sの範囲である。前記接着剤の粘度を前記範囲とすることで、より表面均一性に優れた接着層を得ることができる。前記接着剤の粘度は、より好ましくは、2〜30mPa・sの範囲であり、さらに好ましくは、4〜20mPa・sの範囲である。
前記接着剤のガラス転移温度(Tg)は、特に制限されないが、好ましくは、20〜120℃の範囲であり、より好ましくは、40〜100℃の範囲であり、さらに好ましくは、50〜90℃の範囲である。前記ガラス転移温度は、例えば、示差走査熱量(DSC)測定によるJIS K 7127−1987に準じた方法で測定できる。
前記接着剤は、さらに、シランカップリング剤、チタンカップリング剤等のカップリング剤、各種粘着付与剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐加水分解安定剤等の安定剤等を含んでもよい。
前記接着剤の塗工方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。前記塗工方法としては、例えば、スピンコート法、ロールコート法、フローコート法、ディップコート法、バーコート法等が挙げられる。
前記接着層の厚みは、特に制限されないが、好ましくは、0.01〜0.15μmの範囲である。前記接着層の厚みを前記範囲とすることで、高温多湿の環境下に曝されても、偏光子のはがれや浮きの生じない耐久性に優れた偏光板を得ることができる。前記接着層の厚みは、より好ましくは、0.02〜0.12μmの範囲であり、さらに好ましくは、0.03〜0.09μmの範囲である。
〔G.第2の位相差層〕
前記第2の位相差層は、屈折率楕円体がnx=ny>nzの関係(負の一軸性)を示す。前記第2の位相差層は、単層の位相差を有する層であってもよいし、複数の層からなる積層体であってもよい。前記第2の位相差層の厚みは、好ましくは、0.5〜200μmの範囲である。前記第2の位相差層の波長590nmにおける透過率(T[590])は、好ましくは、90%以上である。
前記第2の位相差層のRe2[590]は、例えば、10nm未満である。Re2[590]を前記範囲とすることで、より一層、正面方向のコントラスト比が高い液晶パネルを得ることができる。Re2[590]は、好ましくは、5nm以下であり、より好ましくは、3nm以下である。
前記第2の位相差層のRth2[590]は、例えば、液晶セルの厚み方向の位相差値等に応じて、適宜、設定され得る。Rth2[590]は、好ましくは、100〜400nmの範囲である。Rth2[590]を前記範囲とすることで、より一層、正面コントラスト比の高い液晶パネルを得ることができる。Rth2[590]は、より好ましくは、120〜350nmの範囲であり、さらに好ましくは、150〜300nmの範囲である。
前記第2の位相差層を形成する材料としては、屈折率楕円体がnx=ny>nzの関係(負の一軸性)を示すものであれば、任意の適切なものが採用され得る。前記材料としては、例えば、ポリ(4,4’−ヘキサフルオロイソプロピリデン−ビスフェノール)テレフタレート−コ−イソフタレート、ポリ(4,4’−ヘキサヒドロ−4,7−メタノインダン−5−イリデン−ビスフェノール)テレフタレート、ポリ(4,4’−イソプロピリデン−2,2’,6,6’−テトラクロロビスフェノール)テレフタレート−コ−イソフタレート、ポリ(4,4’−ヘキサフルオロイソプロピリデン)−ビスフェノール−コ−(2−ノルボルニリデン)−ビスフェノールテレフタレート、ポリ(4,4’−ヘキサヒドロ−4,7−メタノインデン−5−イリデン)−ビスフェノール−コ−(4,4’−イソプロピリデン−2,2’,6,6’−テトラブロモ)−ビスフェノールテレフタレート、ポリ(4,4’−イソプロピリデン−ビスフェノール−コ−4,4’−(2−ノルボルニリデン)ビスフェノール)テレフタレート−コ−イソフタレート、またはこれらのコポリマーを採用してもよい。これらは、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
また、前記第2の位相差層としては、例えば、ポリイミド系樹脂、セルロース系樹脂、ノルボルネン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂等の熱可塑性樹脂を含有する位相差フィルムが用いられ得る。これらの位相差フィルムは、全固形分100重量部に対して、熱可塑性樹脂を、好ましくは、60〜100重量部含む。
前記第2の位相差層は、好ましくは、ポリイミド系樹脂を含有する位相差フィルム(B1)、セルロース系樹脂を含有する位相差フィルム(B2)、および前記位相差フィルム(B1)と前記位相差フィルム(B2)との積層体(C)のいずれかである。前記積層体(C)は、前記位相差フィルム(B1)が、接着層を介して、前記位相差フィルム(B2)に接合されたものであるか、または、前記位相差フィルム(B1)が、前記位相差フィルム(B2)の表面に、溶工等の方法によって、直接形成されたものであることが好ましい。
[ポリイミド系樹脂]
前記ポリイミド系樹脂がソルベントキャスティング法でシート状に成形された場合、溶剤の蒸発過程で、分子が自発的に配向しやすいため、屈折率楕円体がnx=ny>nzの関係(負の一軸性)を示す位相差フィルムを、非常に薄く作製することができる。前記ポリイミド系樹脂を含有する位相差フィルム(B1)の厚みは、好ましくは、0.5〜10μmの範囲であり、より好ましくは、1〜5μmの範囲である。前記位相差フィルム(B1)の厚み方向の複屈折率(Δnxz[590])は、好ましくは、0.01〜0.12の範囲であり、より好ましくは、0.02〜0.08の範囲である。このようなポリイミド系樹脂は、例えば、米国特許第5,344,916号公報に記載の方法によって得ることができる。
好ましくは、前記ポリイミド系樹脂は、ヘキサフルオロイソプロピリデン基およびトリフルオロメチル基の少なくとも一方の基を有する。より好ましくは、前記ポリイミド系樹脂は、下記一般式(I)で表される繰り返し単位、または下記一般式(II)で表される繰り返し単位を少なくとも有する。これらの繰り返し単位を含むポリイミド樹脂は、汎用溶剤に対する溶解性に優れるため、ソルベントキャスティング法によるフィルム形成が可能である。さらに、トリアセチルセルロースフィルム等の耐溶剤性に乏しい基材上にも、その表面を過度に侵食することなく、前記ポリイミド系樹脂の薄層を形成することができる。
前記一般式(I)および(II)中、GおよびG’は、共有結合、CH
2基、C(CH
3)
2基、C(CF
3)
2基、C(CX
3)
2基(ここで、Xは、ハロゲンである。)、CO基、O原子、S原子、SO
2基、Si(CH
2CH
3)
2基、および、N(CH
3)基からなる群から、それぞれ独立して選択される基を表し、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
前記一般式(I)中、Lは、置換基であり、eは、その置換数を表す。Lは、例えば、ハロゲン、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基、フェニル基、または置換フェニル基であり、Lが複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。eは、0〜3までの整数である。
前記一般式(II)中、Qは、置換基であり、fは、その置換数を表す。Qは、例えば、水素、ハロゲン、アルキル基、置換アルキル基、ニトロ基、シアノ基、チオアルキル基、アルコキシ基、アリール基、置換アリール基、アルキルエステル基、および置換アルキルエステル基からなる群から選択される原子または基であって、Qが複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。fは、0〜4までの整数であり、gおよびhは、それぞれ1〜3までの整数である。
前記ポリイミド系樹脂は、例えば、テトラカルボン酸二無水物と、ジアミンとの反応によって得ることができる。前記一般式(I)の繰り返し単位は、例えば、ジアミンとして、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニルを用い、これと芳香環を少なくとも2つ有するテトラカルボン酸二無水物とを反応させて、得ることができる。前記式(II)の繰り返し単位は、例えば、テトラカルボン酸二無水物として、2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン酸二無水物を用い、これと芳香環を少なくとも2つ有するジアミンとを反応させて、得ることができる。前記反応は、例えば、2段階で進行する化学イミド化であってもよいし、1段階で進行する熱イミド化であってもよい。
前記テトラカルボン酸二無水物は、任意の適切なものが選択され得る。前記テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ジブロモ−4,4’,5,5’ −ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’,5,5’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、4,4’−オキシジフタル酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン酸二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジエチルシラン酸二無水物等が挙げられる。
前記ジアミンは、任意の適切なものが選択され得る。前記ジアミンとしては、例えば、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノフェニルメタン、4,4’−(9−フルオレニリデン)−ジアニリン、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノフェニルメタン、2,2’−ジクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルチオエーテル等が挙げられる。
前記ポリイミド系樹脂は、ジメチルホルムアミド溶液(10mMの臭化リチウムと10mMのリン酸を加えメスアップして1Lのジメチルホルムアミド溶液としたもの)を展開溶媒とするポリエチレンオキサイド標準の重量平均分子量(Mw)が、好ましくは、20000〜180000の範囲である。前記ポリイミド系樹脂は、イミド化率が、好ましくは、95%以上のものである。前記ポリイミド系樹脂のイミド化率は、例えば、ポリイミドの前駆体であるポリアミック酸由来のプロトンピークと、ポリイミド由来のプロトンピークとの積分強度比から求めることができる。
前記ポリイミド系樹脂を含有する位相差フィルム(B1)は、任意の適切な成形加工法によって得ることができる。好ましくは、前記位相差フィルム(B1)は、ソルベントキャスティング法によって、シート状に成形することによって作製される。
[セルロース系樹脂]
前記セルロース系樹脂は、任意の適切なものが採用され得る。前記セルロース系樹脂は、好ましくは、セルロースの水酸基の一部または全部がアセチル基、プロピオニル基およびブチル基の少なくとも一つの基で置換された、セルロース有機酸エステルまたはセルロース混合有機酸エステルである。前記セルロース有機酸エステルとしては、例えば、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート等が挙げられる。前記セルロース混合有機酸エステルとしては、例えば、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等が挙げられる。前記セルロース系樹脂は、例えば、特開2001−188128号公報[0040]〜[0041]に記載の方法により得ることができる。
前記セルロース系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、テトラヒドロフラン溶媒によるゲル・パーミエーション・クロマトグラフ法(ポリスチレン標準)で測定した値が、好ましくは、20000〜1000000の範囲である。前記セルロース系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは、110〜185℃の範囲である。前記ガラス転移温度(Tg)は、JIS K 7121に準じたDSC法により求めることができる。前記の樹脂であれば、より一層、優れた熱安定性を有し、より一層、機械的強度に優れた位相差フィルムを得ることができる。
前記セルロース系樹脂を含有する位相差フィルム(B2)は、任意の適切な成形加工法によって得ることができる。好ましくは、前記位相差フィルム(B2)は、ソルベントキャスティング法によって、シート状に成形することにより作製される。前記位相差フィルム(B2)は、例えば、市販のセルロース系樹脂を含有する高分子フィルムをそのまま用いることができる。若しくは、前記市販のフィルムに延伸処理および収縮処理の少なくとも一方の処理等の2次的加工を施したものを用いることができる。前記市販のフィルムとしては、例えば、富士写真フイルム(株)製の商品名「フジタックシリーズ(ZRF80S、TD80UF、TDY−80UL)、コニカミノルタオプト(株)製の商品名「KC8UX2M」等が挙げられる。
前記第2の位相差層として用いられる位相差フィルムは、さらに、任意の適切な添加剤を含んでもよい。前記添加剤としては、例えば、可塑剤、熱安定剤、光安定剤、滑剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、難燃剤、着色剤、帯電防止剤、相溶化剤、架橋剤、増粘剤等が挙げられる。前記添加剤の含有量は、好ましくは、主成分の樹脂100重量部に対し、0を超え10重量部以下である。
前記第2の位相差層は、液晶性組成物を用いたものであってもよい。前記液晶性組成物が用いられる場合、前記第2の位相差層は、プレーナ配列に配向させた棒状液晶化合物を含む液晶性組成物の固化層若しくは硬化層、またはカラムナー配列に配向させたディスコチック液晶化合物を含む液晶性組成物の固化層若しくは硬化層を含む。前記液晶化合物を用いれば、厚み方向の複屈折率が大きいため、薄型の位相差フィルムを得ることができる。
前記プレーナ配列に配向させた棒状液晶化合物を含む液晶性組成物の固化層若しくは硬化層からなる位相差フィルムは、例えば、特開2003−287623号公報に記載の方法により得ることができる。また、前記カラムナー配列に配向させたディスコチック液晶化合物を含む液晶性化合物の固化層若しくは硬化層からなる位相差フィルムは、例えば、特開平9−117983号公報に記載の方法によって得ることができる。
〔H.第2の偏光子と第2の位相差層との積層〕
前記第2の偏光子と前記第2の位相差層との積層については、前記第1の偏光子と前記第1の位相差層との積層と同様にして実施できる。
〔I.保護層〕
本発明に用いられる第1の保護層および第2の保護層は、例えば、偏光子が収縮や膨張することを防いだり、紫外線による劣化を防いだりするために用いられる。前記第1の保護層および前記第2の保護層は、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
前記第1の保護層および前記第2の保護層としては、任意の適切なものが採用され得る。前記保護層の厚みは、好ましくは、20〜100μmの範囲である。前記保護層の波長590nmにおける透過率(T[590])は、好ましくは、90%以上である。
前記保護層を形成する材料としては、任意の適切なものが選択され得る。好ましくは、前記保護層は、セルロース系樹脂、ノルボルネン系樹脂、またはアクリル系樹脂を含有する高分子フィルムである。前記セルロース系樹脂を含有する高分子フィルムは、例えば、特開平7−112446号公報の実施例1に記載の方法により得ることができる。前記ノルボルネン系樹脂を含有する高分子フィルムは、例えば、特開2001−350017号公報に記載の方法により得ることができる。前記アクリル系樹脂を含有する高分子フィルムは、例えば、特開2004−198952号公報の実施例1に記載の方法により得ることができる。
前記保護層は、前記偏光子側とは反対側に表面処理層を有してもよい。前記表面処理としては、目的に応じて、適宜、適切な処理が採用され得る。前記表面処理層としては、例えば、ハードコート処理、帯電防止処理、反射防止処理(アンチリフレクション処理ともいう)、拡散処理(アンチグレア処理ともいう)等の処理層が挙げられる。これらの表面処理は、画面の汚れや傷つきを防止したり、室内の蛍光灯や太陽光線が画面に映り込むことによって、表示画面が見えづらくなることを防止したりする目的で使用される。前記表面処理層は、一般的には、ベースフィルムの表面に前記の処理層を形成する処理剤を固着させたものが用いられる。前記ベースフィルムは、前記保護層を兼ねていてもよい。さらに、前記表面処理層は、例えば、帯電防止処理層の上にハードコート処理層を積層したような多層構造であってもよい。
前記保護層は、例えば、表面処理が施された市販の高分子フィルムをそのまま用いることができる。若しくは、前記市販の高分子フィルムに任意の表面処理を施して用いることもできる。前記拡散処理(アンチグレア処理)が施された市販のフィルムとしては、例えば、日東電工(株)製の商品名「AG150、AGS1、AGS2」等が挙げられる。前記反射防止処理(アンチリフレクション処理)が施された市販のフィルムとしては、例えば、日東電工(株)製の商品名「ARS、ARC」等が挙げられる。前記ハードコート処理および前記帯電防止処理が施された市販のフィルムとしては、例えば、コニカミノルタオプト(株)製の商品名「KC8UX−HA」等が挙げられる。前記反射防止処理が施された市販のフィルムとしては、例えば、日本油脂(株)製の商品名「ReoLookシリーズ」等が挙げられる。
〔J.液晶表示装置〕
本発明の液晶表示装置は、前記本発明の液晶パネルを含むことを特徴とする。図3の概略断面図に、本発明の液晶表示装置の構成の一例を示す。同図においては、分かりやすくするために、各構成部材の大きさ、比率等は、実際とは異なっている。図示のとおり、この液晶表示装置200は、液晶パネル100と、前記液晶パネル100の一方の側に配置された直下方式のバックライトユニット80とを少なくとも備える。前記直下方式のバックライトユニット80は、光源81と、反射フィルム82と、拡散板83と、プリズムシート84と、輝度向上フィルム85とを少なくとも備える。なお、本例の液晶表示装置200では、バックライトユニットとして、直下方式が採用された場合を示しているが、本発明は、これに限定されず、例えば、サイドライト方式のバックライトユニットであってもよい。サイドライト方式のバックライトユニットは、前記の直下方式の構成に加え、さらに導光板と、ライトリフレクターとを少なくとも備える。なお、図3に例示した構成部材は、本発明の効果が得られる限りにおいて、液晶表示装置の照明方式や液晶セルの駆動モード等、用途に応じてその一部が省略され得るか、または、他の光学部材で代替され得る。
本発明の液晶表示装置は、液晶パネルの裏面側から光を照射して画面を見る透過型であってもよいし、液晶パネルの表示面側から光を照射して画面を見る反射型であってもよいし、透過型と反射型の両方の性質を併せ持つ、半透過型であってもよい。
〔K.液晶表示装置の用途〕
本発明の液晶表示装置は、任意の適切な用途に使用される。その用途は、例えば、パソコンモニター、ノートパソコン、コピー機等のOA機器、携帯電話、時計、デジタルカメラ、携帯情報端末(PDA)、携帯ゲーム機等の携帯機器、ビデオカメラ、テレビ、電子レンジ等の家庭用電気機器、バックモニター、カーナビゲーションシステム用モニター、カーオーディオ等の車載用機器、商業店舗用インフォメーション用モニター等の展示機器、監視用モニター等の警備機器、介護用モニター、医療用モニター等の介護・医療機器等である。
好ましくは、本発明の液晶表示装置の用途は、テレビである。前記テレビの画面サイズは、好ましくは、ワイド17型(373mm×224mm)以上であり、より好ましくは、ワイド23型(499mm×300mm)以上であり、さらに好ましくは、ワイド32型(687mm×412mm)以上である。
つぎに、本発明の実施例について、比較例と併せて説明する。ただし、本発明は、下記の実施例および比較例により何ら制限されない。なお、各実施例および各比較例における各種物性および特性は、下記の方法により評価若しくは測定した。
(1)偏光板の透過率
偏光板の透過率(T)は、分光光度計[村上色彩技術研究所(株)製 製品名「DOT−3」]を用いて、JlS Z 8701−1982に規定の2度視野(C光源)により、視感度補正を行ったY値を測定して求めた。
(2)各元素含有量
直径10mmの円形サンプルを下記条件により測定したX線強度から、予め標準試料を用いて作製した検量線により各元素含有量を求めた。
・分析装置:理学電機工業(株)製の蛍光X線分析装置(XRF)、商品名「ZSX100e」
・対陰極:ロジウム
・励起光エネルギー:40kV−90mA
・定量法:FP法
・測定時間:4秒
(3)波長590nmにおける位相差値(Re[590]、Rth[590])、Nz係数、およびT[590]
波長590nmにおける位相差値(Re[590]、Rth[590])、Nz係数、およびT[590]は、王子計測機器(株)製、商品名「KOBRA21−ADH」を用いて、23℃で測定した。なお、平均屈折率は、アッベ屈折率計(アタゴ(株)製、製品名「DR−M4」)を用いて測定した値を用いた。
(4)厚み
厚みが10μm未満の場合、薄膜用分光光度計(大塚電子(株)製、商品名「瞬間マルチ測光システム MCPD−2000」)を用いて測定した。厚みが10μm以上の場合、アンリツ製、デジタルマイクロメーター「KC−351C型」を使用して測定した。
(5)ポリイミド系樹脂の分子量
ポリイミド系樹脂の分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフ(GPC)法よりポリスチレンオキサイドを標準試料として測定した。具体的には、下記の装置、器具および測定条件により測定した。
測定サンプル:試料を溶離液に溶解して0.1重量%の溶液とし、8時間静置した後、0.45μmのメンブレンフィルターでろ過したろ液を測定サンプルとして用いた。
分析装置:東ソー社製、商品名「HLC−8020GPC」
カラム:東ソー社製、商品名「GMHXL+GMHXL+G2500HXL」
カラムサイズ:各7.8mmφ×30cm(計90cm)
溶離液:ジメチルホルムアミド(10mMの臭化リチウムと10mMのリン酸を加えメスアップして1Lのジメチルホルムアミド溶液としたもの)
流量:0.8mL/分
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
(6)ノルボルネン系樹脂の分子量
ノルボルネン系樹脂の分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフ(GPC)法よりポリスチレンを標準試料として測定した。具体的には、下記の装置、器具および測定条件により測定した。
測定サンプル:試料を溶離液に溶解して0.1重量%の溶液とし、一晩静置した後、0.45μmのメンブレンフィルターでろ過したろ液を測定サンプルとして用いた。
分析装置:東ソー社製、商品名「HLC−8020GPC」
カラム:東ソー社製、商品名「TSKgel SuperHM−H/H4000/H3000/H2000」
カラムサイズ:各6.0mmI.D.×150mm
溶離液:テトラヒドロフラン
流量:0.6mL/分
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
注入量:20μL
(7)ガラス転移温度(Tg)
ガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量計(セイコー(株)製、商品名「DSC−6200」)を用いて、JIS K 7121(1987)(プラスチックの転移温度の測定方法)に準じた方法により求めた。具体的には、3mgの粉末サンプルを、窒素雰囲気下(ガスの流量;80mL/分)で昇温(加熱速度:10℃/分)させて2回測定し、2回目のデータを採用した。熱量計は、標準物質(インジウム)を用いて温度補正を行なった。
(8)波長590nmにおける光弾性係数の絶対値(C[590])
波長590nmにおける光弾性係数の絶対値(C[590])は、分光エリプソメーター(日本分光(株)製、商品名「M−220」)を用いて、サンプル(サイズ2cm×10cm)の両端を挟持して応力(5〜15N)をかけながら、サンプルの中央の位相差値(23℃/波長590nm)を測定し、応力と位相差値の関数の傾きから算出した。
(9)液晶表示装置の正面方向のコントラスト比
23℃の暗室でバックライトを点灯させてから30分経過した後、ELDIM社製、商品名「EZ Contrast160D」を用いて、白画像および黒画像を表示した場合の、正面方向のXYZ表示系のY値を測定した。白画像におけるY値(YW:白輝度)と、黒画像におけるY値(YB:黒輝度)とから、コントラスト比「YW/YB」を算出した。
(10)液晶表示装置の斜め方向のコントラスト比
23℃の暗室でバックライトを点灯させてから30分経過した後、ELDIM社製、商品名「EZ Contrast160D」を用いて、白画像および黒画像を表示した場合の、極角60°方向で方位角を0°〜360°に変化させ、方位角45°、135°、225°、315°におけるXYZ表示系のY値を測定した。白画像におけるY値(YW:白輝度)と、黒画像におけるY値(YB:黒輝度)とから、斜め方向のコントラスト比「YW/YB」を算出し、方位角45°、135°、225°、315°における斜め方向のコントラスト比の平均値を求めた。
(11)クニック
23℃の暗室でバックライトを点灯させてから30分経過した後、黒表示をした場合の表示面を目視によって観察し、輝点の有無により、クニックの有無を判断した。
A:クニックは観察されなかった。
B:クニックは観察されたが、実用上問題となるレベルではなかった。
C:クニックが観察され、実用上問題となるレベルであった。
〔偏光子〕
[参考例1]
厚み75μmのポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする高分子フィルム(クラレ(株)製、商品名「VF−PS#7500」)を下記[1]〜[5]の条件の5浴に、フィルム長手方向に張力を付与しながら浸漬し、最終的な延伸倍率がフィルム元長に対し、6.2倍になるように延伸した。この延伸フィルムを40℃の空気循環式オーブン内で1分間乾燥させて、偏光子Aを作製した。
<条件>
[1]膨潤浴:30℃の純水。
[2]染色浴:水100重量部に対し、0.032重量部のヨウ素と、水100重量部に対し、0.2重量部のヨウ化カリウムとを含む、30℃の水溶液。
[3]第1の架橋浴:3重量%のヨウ化カリウムと、3重量%のホウ酸とを含む、40℃の水溶液。
[4]第2の架橋浴:5重量%のヨウ化カリウムと、4重量%のホウ酸とを含む、60℃の水溶液。
[5]水洗浴:3重量%のヨウ化カリウムを含む、25℃の水溶液。
[参考例2]
染色浴において、条件[2]のヨウ素の添加量を、水100重量部に対し、0.031重量部としたこと以外は、前記参考例1と同様の条件及び方法で、偏光子Bを作製した。
[参考例3]
染色浴において、条件[2]のヨウ素の添加量を、水100重量部に対し、0.027重量部としたこと以外は、前記参考例1と同様の条件及び方法で、偏光子Cを作製した。
〔第1の位相差層〕
[参考例4]
厚み100μmのノルボルネン系樹脂を含有する高分子フィルム((株)オプテス製、商品名「ZEONOR ZF14−100」)をテンター延伸機を用いて、固定端横一軸延伸法(長手方向を固定し、幅方向に延伸する方法)により、150℃の空気循環式恒温オーブン内で2.7倍に延伸して、位相差フィルム(A)を得た。この位相差フィルム(A)は、屈折率楕円体がnx>ny>nzの関係(負の二軸性)を示し、厚み35μm、T[590]=91%、Re[590]=120nm、Rth[590]=160nm、波長590nmにおけるNz係数=1.33、C[590]=5.1×10−12m2/Nであった。
[参考例5]
厚み100μmのノルボルネン系樹脂フィルムを含む高分子フィルム((株)オプテス製、商品名「ZEONOR ZF14−100」をテンター延伸機を用いて、自由端一軸延伸法により、150℃の空気循環オーブン内で1.46倍に延伸して、位相差フィルム(D)を得た。この位相差フィルム(D)は、屈折率楕円体がnx>ny=nzの関係(正の一軸性)を示し、厚み68μm、Re[590]=140nm、Rth[590]=140nm、波長590nmにおけるNz係数=1.0、C[590]=5.1×10−12m2/Nであった。
〔第2の位相差層〕
[参考例6]
機械式撹拌装置、ディーンスターク装置、窒素導入管、温度計および冷却管を取り付けた反応容器(500mL)内に2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン酸二無水物(クラリアントジャパン(株)製)17.77g(40mmol)および2,2−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル(和歌山精化工業(株)製)12.81g(40mmol)を加えた、続いて、イソキノリン2.58g(20mmol)をm−クレゾール257.21gに溶解させた溶液を加え、23℃で1時間撹拌して(600rpm)均一な溶液を得た。つぎに、反応容器を、オイルバスを用いて反応容器内の温度が180±3℃になるように加温し、温度を保ちながら5時間撹拌して黄色溶液を得た。さらに3時間撹拌を行った後、加熱および撹拌を停止し、放冷して室温に戻すと、ポリマーがゲル状になって析出した。
前記反応容器内の黄色溶液にアセトンを加えてゲルを完全に溶解させ、希釈溶液(7重量%)を作製した。この希釈溶液を、2Lのイソプロピルアルコール中に撹拌を続けながら少しずつ加えると、白色粉末が析出した。この粉末を濾取し、1.5Lのイソプロピルアルコール中に投入して洗浄した。さらにもう一度同様の操作を繰り返して洗浄した後、前記粉末を再び濾取した。これを60℃の空気循環式恒温オーブンで48時間乾燥した後、150℃で7時間乾燥して、下記構造式(III)のポリイミド粉末を、収率85%で得た。前記ポリイミドの重合平均分子量(Mw)は、124000、イミド化率は、99.9%であった。
前記ポリイミド粉末をメチルイソブチルケトンに溶解し、15重量%のポリイミド溶液を調製した。このポリイミド溶液を、トリアセチルセルロースフィルム(厚み80μm)の表面に、スロットダイコーターにてシート状に均一に流延した。つぎに、前記フィルムを多室型の空気循環式乾燥オーブン内に投入し、80℃で2分間、135℃で5分間、150℃で10分間と低温から徐々に昇温しながら溶剤を蒸発させて、厚み3.7μmのポリイミド層とトリアセチルセルロースフィルムとを備える積層体(C)を得た。前記積層体(C)は、屈折率楕円体がnx=ny>nzの関係(負の一軸性)を示し、T[590]=90%、Re[590]=1nm、Rth[590]=210nmであった。なお、前記積層体(C)のポリイミド層部分の光学特性は、Rth[590]=150nm、Δnxz=0.04であった。
〔金属化合物コロイドを含むポリビニルアルコール系樹脂を含有する水溶性接着剤〕
[参考例7]
アセトアセチル基含有ポリビニルアルコール系樹脂(日本合成化学工業(株)製、商品名「ゴーセファイマーZ200」、平均重合度:1200、ケン化度:98.5モル%、アセトアセチル化度:5モル%)100重量部と、メチロールメラミン50重量部とを30℃の温度条件下で純水に溶解し、固形分濃度3.7%に調整した水溶液を得た。この水溶液100重量部に対し、アルミナコロイド水溶液(平均粒子径15nm、固形分濃度10%、正電荷)18重量部を加えて水溶性接着剤を調製した。前記水溶性接着剤の粘度は、9.6mPa・s、pHは、4〜4.5であった。
〔第1の偏光板〕
[参考例8]
前記参考例1の偏光子Aの一方の側に、ポリビニルアルコール系樹脂を含有する水溶性接着剤(日本合成化学工業(株)製、商品名「ゴーセファイマーZ200」)を介して、前記参考例4の位相差フィルム(A)を、前記位相差フィルム(A)の遅相軸と前記偏光子Aの吸収軸とが直交するように、貼着した。次に、前記偏光子Aの他方の側に、厚み80μmのセルロース系樹脂を含有する高分子フィルム(富士写真フイルム(株)製、商品名「TD80UF」)を、前記水溶性接着剤を介して、貼着した。このようにして、偏光板A1を作製した。なお、比較例3においては、この偏光板A1を、第2の偏光板としても用いた。前記偏光板A1の特性を、下記表1に示す。
[参考例9]
偏光子Aに代えて、前記参考例2の偏光子Bを用いたこと以外は、前記参考例8と同様の方法で、偏光板B1を作製した。前記偏光板B1の特性を、前記表1に示す。
[参考例10]
偏光子Aに代えて、前記参考例3の偏光子Cを用いたこと以外は、前記参考例8と同様の方法で、偏光板C1を作製した。前記偏光板C1の特性を、前記表1に示す。
[参考例11]
位相差フィルム(A)に代えて、前記参考例5の位相差フィルム(D)を用いたこと以外は、前記参考例8と同様の方法で偏光板A3を作製した。前記偏光板A3の特性を、前記表1に示す。
[参考例12]
水溶性接着剤として、前記参考例7の水溶性接着剤を用いたこと以外は、前記参考例11と同様の方法で偏光板A4を作製した。前記偏光板A4の特性を、前記表1に示す。
[参考例13]
位相差フィルム(D)に代えて、前記参考例4の位相差フィルム(A)を用いたこと以外は、前記参考例12と同様の方法で偏光板A5を作製した。前記偏光板A5の特性を、前記表1に示す。
〔第2の偏光板〕
[参考例14]
前記参考例1の偏光子Aの一方の側に、ポリビニルアルコール系樹脂を含有する水溶性接着剤(日本合成化学工業(株)製、商品名「ゴーセファイマーZ200」)を介して、前記参考例6の積層体Cを、前記積層体Cのトリアセチルセルロースフィルム側が、前記偏光子Aと対向するように、貼着した。つぎに、前記偏光子Aの他方の側に、厚み80μmのセルロース系樹脂を含有する高分子フィルム(富士写真フイルム(株)製、商品名「TD80UF」)を、前記水溶性接着剤を介して、貼着した。このようにして、偏光板A2を作製した。前記偏光板A2の特性を、前記表1に示す。
[参考例15]
偏光子Aに代えて、前記参考例2の偏光子Bを用いたこと以外は、前記参考例14と同様の方法で、偏光板B2を作製した。前記偏光板B2の特性を、前記表1に示す。
[参考例16]
偏光子Aに代えて、前記参考例3の偏光子Cを用いたこと以外は、前記参考例14と同様の方法で、偏光板C2を作製した。前記偏光板C2の特性を、前記表1に示す。
〔液晶セル〕
[参考例17]
VAモードの液晶セルを含む市販の液晶表示装置(BenQ製、32インチ液晶テレビ、商品名「DV3250」)から液晶パネルを取り出し、液晶セルの上下に配置されていた偏光板等の光学フィルムを全て取り除いた。この液晶セルのガラス板の表裏を洗浄し、液晶セルAを得た。
〔液晶パネルおよび液晶表示装置〕
(実施例1)
前記参考例17の液晶セルAの表示面側に、前記参考例12の偏光板A4(第1の偏光板)を、位相差フィルム(A)側を前記液晶セルA側とし、前記偏光板A4の吸収軸方向が、前記液晶セルAの長辺方向と平行となるように、アクリル系粘着剤(厚み:20μm)を介して、貼着した。ついで、前記液晶セルAの裏面側(バックライト側)に、前記参考例15の偏光板B2(第2の偏光板)を、積層体C側を前記液晶セルA側として、前記偏光板B2の吸収軸方向が、前記液晶セルAの長辺方向と直交するように、アクリル系粘着剤(厚み:20μm)を介して、貼着し、液晶パネルAを得た。このとき、前記第1の偏光板の吸収軸と前記第2の偏光板の吸収軸とは直交していた。前記液晶パネルAを、元の液晶表示装置のバックライトユニットと結合し、液晶表示装置Aを作製した。得られた液晶表示装置Aの特性を、下記表2に示す。
(実施例2)
第2の偏光板として、前記参考例16の偏光板C2を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で、液晶パネルBおよび液晶表示装置Bを作製した。得られた液晶表示装置Bの特性を、下記表2に示す。
(実施例3)
第1の偏光板として、前記参考例13の偏光板A5を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で、液晶パネルCおよび液晶表示装置Cを作製した。得られた液晶表示装置Cの特性を、下記表2に示す。
(実施例4)
第1の偏光板として、前記参考例13の偏光板A5を用いたこと以外は、実施例2と同様の方法で、液晶パネルDおよび液晶表示装置Dを作製した。得られた液晶表示装置Dの特性を、下記表2に示す。
(比較例1)
第1の偏光板として、前記参考例9の偏光板B1を用い、第2の偏光板として、前記参考例14の偏光板A2を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で、液晶パネルEおよび液晶表示装置Eを作製した。得られた液晶表示装置Eの特性を、下記表2に示す。
(比較例2)
第1の偏光板として、前記参考例10の偏光板C1を用い、第2の偏光板として、前記参考例14の偏光板A2を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で、液晶パネルFおよび液晶表示装置Fを作製した。得られた液晶表示装置Fの特性を、下記表2に示す。
(比較例3)
第1の偏光板として、前記参考例8の偏光板A1を用い、第2の偏光板として、前記参考例8の偏光板A1を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で、液晶パネルGおよび液晶表示装置Gを作製した。得られた液晶表示装置Gの特性を、下記表2に示す。
(比較例4)
第1の偏光板として、前記参考例8の偏光板A1を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で、液晶パネルHおよび液晶表示装置Hを作製した。得られた液晶表示装置Hの特性を、下記表2に示す。
(比較例5)
第1の偏光板として、前記参考例8の偏光板A1を用いたこと以外は、実施例2と同様の方法で、液晶パネルIおよび液晶表示装置Iを作製した。得られた液晶表示装置Iの特性を、下記表2に示す。
(比較例6)
第1の偏光板として、前記参考例11の偏光板A3を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で、液晶パネルJおよび液晶表示装置Jを作製した。得られた液晶表示装置Jの特性を、下記表2に示す。
(比較例7)
第1の偏光板として、前記参考例11の偏光板A3を用いたこと以外は、実施例2と同様の方法で、液晶パネルKおよび液晶表示装置Kを作製した。得られた液晶表示装置Kの特性を、下記表2に示す。
前記表2からわかるように、第2の偏光板の透過率(T2)が、第1の偏光板の透過率(T1)よりも大きい全実施例において、高い正面方向のコントラスト比が得られた。一方、第2の偏光板の透過率(T2)が、第1の偏光板の透過率(T1)よりも小さい比較例1および2、並びに第2の偏光板の透過率(T2)と第1の偏光板の透過率(T1)とが等しい比較例3においては、正面方向のコントラスト比が低かった。また、第1の偏光子と第1の位相差層との積層に、金属化合物コロイドを含むポリビニルアルコール系樹脂を含有する水溶性接着剤を用いた全実施例において、クニックの発生が、より好適に抑制されていた。一方、比較例1〜7では、実用上問題ない程度だが、クニックによる輝点が観察された。また、負の二軸性を示す第1の位相差層を用いた実施例3および4では、正の一軸性を示す第1の位相差層を用いた実施例1および2と比較して、斜め方向のコントラスト比が高い液晶表示装置(液晶パネル)が得られた。