JP4135308B2 - 積層体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、汎用の各種バリア基材に、優れた接着性を附与することが可能な接着性樹脂を積層させた構成を含む積層体に係わり、さらに詳細には、これらの積層体を各種包装形態に加工し、強浸透性物質からなる内容物を充填・包装した場合であっても、その内容物によるラミネート強度が低下することがない積層体に関する。
【0002】
【従来の技術】
パッケージ分野において、異種の熱可塑性樹脂フィルムの積層には、各種接着剤を用いることで、ドライラミネートや押出ラミネートなどの公知の手法により貼り合わせる方法が一般に行われている。また、アルミニウム箔やアルミ蒸着フィルムは、遮光性、酸素・水蒸気などから内容物を保護するためのバリア層として使用されている。さらに、アルミニウム箔に関しては、折り曲げの際に、その形状を維持すること(デッドホールド性)が可能であることから、カップラーメンなどのカップ容器の蓋材などにも使用されている。
一方、アルミナ蒸着フィルムは、バリア性だけでなく透明性を兼ね備えていることから、各種包装形態に使用されている。このように、バリア性やその他の機能性を包装材(パッケージ)に付与するため、アルミニウム箔、アルミ蒸着フィルム、アルミナ蒸着フィルム等を中間層とした積層体を各種形態の包装材料として使用しているケースが多い。
【0003】
また、アルミニウム箔、アルミ蒸着フィルム、アルミナ蒸着フィルム等を用いて各種包装形態に加工するための積層体の作成方法としては、接着剤を用いる方法だけでなく、アルミニウム箔の金属面、やアルミ蒸着フィルムまたはアルミナ蒸着フィルム蒸着面に、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタアクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体等のエチレン-α,β不飽和カルボン酸もしくはそのイオン架橋物を、押出ラミネートなどの手法を用いて積層する方法が挙げられる。
【0004】
さらに、上記エチレン-α,β不飽和カルボン酸共重合体やそのイオン架橋物だけでなく、汎用の低密度ポリエチレンを300℃以上の高い温度で押し出すことで、カルボキシル基やカルボニル基、水酸基等の官能基を形成させ低密度ポリエチレンを、2液硬化型ウレタン系接着剤を用いて、アルミニウム箔、アルミ蒸着フィルム、アルミナ蒸着フィルムに積層させる方法も挙げられる。
【0005】
しかしながら、これらの熱可塑性樹脂フィルムを積層させた積層体や、アルミニウム箔、アルミ蒸着フィルム、アルミナ蒸着フィルム等の基材に、熱可塑性樹脂を押出ラミネート等により基材に直接積層した積層体、あるいは2液硬化型ウレタン系接着剤を用いて積層させた積層体は、その積層体を、例えばパウチや液体用複合紙容器のような各種包装形態に加工して、浸透性の強い内容物を充填・包装した場合、アルミニウム箔、アルミ蒸着フィルム、アルミナ蒸着フィルム等はバリア性を有するので、強浸透性物質がバリア層と熱可塑性樹脂層との間でトラップされてしまい、その結果、強浸透性物質からなる内容物の影響で、界面におけるラミネート強度の低下が起きる。このような強浸透性物質としては、浴用剤の香料や発布剤成分、あるいは各種殺菌剤などの溶剤系内容物が挙げられる。
また、特に2液ウレタン型接着剤を用いた構成の積層体を容器のような各種包装形態に加工して、溶剤成分を主成分とする内容物を充填・包装した場合、接着剤層を溶解してしまい、著しいラミネート強度の低下を引き起こす。
【0006】
以上、詳細に説明したように、熱可塑性樹脂フィルム、アルミニウム箔、アルミ蒸着フィルム、アルミナ蒸着フィルム等の基材からなる積層体は、その基材の優れたバリア性等の機能を有するで、包装材料として欠かせない存在であるが、その積層体を容器等の各種包装形態に加工して、強浸透性物質や溶剤成分を主成分とする内容物を充填・包装した場合、ラミネート強度の低下が問題となっており、これらの問題点を改善した積層体が要求されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記課題を解決すべくなされたものであって、熱可塑性樹脂フィルム、アルミ蒸着フィルム、アルミナ蒸着フィルム、アルミニウム箔等のバリア性基材に対して、優れたラミネート強度を有し、包装体として成形して強浸透性物質からなる内容物を充填・包装した場合であっても、その内容物の影響を受けてラミネート強度が低下することのない積層体を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決すべくなされたものであって、請求項1に係る発明は、ポリエステル系またはポリアミド系の熱可塑性樹脂フィルム、金属蒸着フィルム、無機化合物蒸着フィルム、金属箔のいずれかのバリア性基材上に、2官能以上のイソシアナート基を有するモノマーあるいはその誘導体であるイソシアナート化合物(A)と、該化合物(A)と反応性を有する活性水素を含有し、かつ、化学構造中にビニル、アリル、または(メタ)アクリル系の不飽和結合を有する化合物(B)とが反応してなる複合体であって、複合体中に少なくとも1官能以上の未反応のイソシアナート基を含む複合体が、ASTM D1238に準ずるメルトインデックス(MI)0.1〜200の範囲のポリオレフィン樹脂あるいはオレフィン系共重合体樹脂に、樹脂100重量部に対し、0.001〜10重量部の範囲でグラフト反応により導入された接着性樹脂を押出ラミネート法により積層させたことを特徴とする積層体である。
【0012】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の積層体において、前記イソシアナート化合物(A)が、トリレンジイソシアナート、キシリレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナートのイソシアナート単体、または少なくとも1種以上からなる誘導体であること特徴とする。
【0014】
請求項3に係る発明は、請求項1記載の積層体において、熱可塑性樹脂フィルムの前記接着性樹脂と接する面にコロナ処理、フレーム処理、プラズマ処理、オゾン処理から選ばれる少なくとも1種以上の表面処理が施されていることを特徴とする。
【0015】
請求項4に係る発明は、請求項1記載の積層体において、前記金属蒸着フィルムの金属蒸着層がアルミ蒸着層、前記無機化合物蒸着フィルムの無機化合物蒸着層がアルミナ蒸着層、前記金属箔の金属がアルミニウムであることを特徴とする。
【0016】
請求項5に係る発明は、請求項1記載の積層体において、金属蒸着フィルム、無機化合物蒸着フィルム、金属箔の前記接着性樹脂と接する、各々の金属蒸着面、無機化合物蒸着
面、金属箔面に、熱水変性処理が施されていることを特徴とする。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施形態につて詳細に説明する。本発明の積層体は、ポリエステル系またはポリアミド系の熱可塑性樹脂フィルム、金属蒸着フィルム、無機化合物蒸着フィルム、金属箔のいずれかのバリア性基材上に、2官能以上のイソシアナート基を有するモノマーあるいはその誘導体であるイソシアナート化合物(A)と、該化合物(A)と反応性を有する活性水素を含有し、かつ、化学構造中にビニル、アリル、または(メタ)アクリル系の不飽和結合有する化合物(B)とが反応してなる複合体であって、複合体中に少なくとも1官能以上の未反応のイソシアナート基を含む複合体が、ASTM D1238に準ずるメルトインデックス(MI)0.1〜200の範囲のポリオレフィン樹脂あるはオレフィン系共重合体樹脂に、樹脂100重量部に対し、0.001〜10重量部の範囲でグラフト反応により導入された接着性樹脂を押出ラミネート法により積層させたことを特徴とするものである。
【0018】
上記のイソシアナート基を有する複合体は、少なくとも2官能以上のイソシアナート基を有するモノマーあるいはその誘導体と、不飽和ヒドロキシ化合物のようなイソシアナートと反応性を有する官能基を持った不飽和化合物との複合体である。
【0019】
本発明で用いられる2官能以上のイソシアナート化合物としては、特に制限されるものでなく、2,4-トリレンジイソシアナート、2,6-トリレンジイソシアナート、キシリレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアナートなど各種ジイソシアナート系モノマーを使用することが可能である。
【0020】
また、これらのジイソシアナートモノマーを、トリメチロールプロパンやグリセロールなどの3官能の活性水素含有化合物と反応させたアダクトタイプや、水と反応させたビューレットタイプや、イソシアナート基の自己重合を利用したトリマー(イソシアヌレート)タイプなど3官能性の誘導体やそれ以上の多官能性の誘導体を用いることもできる。
【0021】
さらに、本発明で用いられるイソシアネート基と反応性を有し、かつその構造中に不飽和二重結合を有する化合物としては、上述した不飽和ヒドロキシ化合物があげられ、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノアリルエーテル、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、アリルオキシエチルアルコールなどが挙げられる。上述した不飽和二重結合を有する化合物としては、活性水素として主に水酸基を挙げているが、例えばアミンのようなその他の活性水素基を含有する化合物を用いても良い。また、イソシアナートモノマーから得られた複合体を、さらに各種モノマーと複合化させ、アダクトタイプやビューレットタイプやイソシアヌレートタイプのような誘導体にしても構わない。この場合の複合体は、不飽和結合を有する2官能のイソシアナート化合物ということになる。
【0022】
上記イソシアナート基を有する複合体を、ポリオレフィン樹脂あるいはオレフィン系共重合体樹脂にグラフト反応によって導入してなる接着性樹脂は、イソシアナート基を有する複合体を、過酸化物存在下の溶融状態状態で、ポリオレフィン樹脂あるいはオレフィン系共重合体樹脂にグラフト重合させて得られる。
【0023】
本発明で用いられる上記のポリオレフィン系樹脂あるいはオレフィン系共重合体樹脂としては、ASTM D1238に準ずるメルトインデックス(MI)が0.1〜200、さらに好ましくは3〜50の範囲を満たす、押出ラミネートなどの高速加工性を有する樹脂が好ましい。例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-αオレフィン共重合体、ポリαオレフィン、ポリプロピレン、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-αオレフィン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル3元共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル-酸無水物3元共重合体から選ばれる樹脂の単体あるいは2種以上のブレンド樹脂から選択されるが、特に脂に限定されるものではない。
また、必要に応じて、上記の樹脂に対し、酸化防止剤、粘着付与剤、充填剤、各種フィラーなどの各種添加剤を添加することもできる。
【0024】
上述した接着性樹脂の製造方法としては、まずイソシアナート基を有するの複合体を調製する。調製法としては、汎用の各種イソシアナートモノマーを使用することが可能であり、このイソシアナートモノマーと不飽和ヒドロキシ化合物のようにイソシアナート基と反応性を有し、かつその化学構造中に不飽和二重結合を有する化合物とをモル比で当量を、窒素雰囲気下(室温から60℃の範囲)で6時間攪拌させることで複合体を得ることができる。また、必要に応じて、有機錫化合物を用いることもできる。
【0025】
次に、上記で得られたイソシアナート基を有するの複合体を、ポリオレフィン系樹脂あるいはオレフィン系共重合体樹脂に、グラフト反応によって導入する。
グラフト反応は、過酸化物存在下の溶融状態で行われ、それに用いる装置としては、公知の装置を用いることが可能であり、二軸押出機を始めとして、各種ニーダー、各種ミキサーを用いることができる。グラフト反応に用いる過酸化物としては、汎用のグラフト反応に用いられる過酸化物を使用することが可能であり、反応温度および反応時間に応じて選定することができる。半減期1分の温度が100〜280℃、好ましくは150〜230℃の過酸化物を使用することが望ましい。例えば、t-ブチルパーオキシベンゾエート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサンなどがあげられるが、これらに限られたものではない。
【0026】
グラフト反応において反応温度は、上述したポリオレフィン系樹脂あるいはオレフィン系共重合体樹脂の種類によって異なるが、150〜230℃の範囲で行われる。2軸押出機を用いてグラフト反応を行う場合は、液添フィーダーを用いて、所定量のイソシアナート化合物からなる複合体と有機過酸化物の混合物を溶融樹脂に滴下させる。仕込量は、上記樹脂100重量部に対し、イソシアナート化合物からなる複合体が0.01〜20重量部、好ましくは0.1〜10重量部、有機過酸化物が、0.001〜5重量部、好ましくは0.01〜3重量部である。この条件下において、得られる接着性樹脂のポリオレフィン系樹脂あるいはオレフィン系共重合体樹脂に対するイソシアナート化合物からなる複合体のグラフト量が、樹脂100重量部に対し0.001〜10重量部、好ましくは、0.01〜5重量部であることが好ましい。
【0027】
上記グラフト反応において、未反応の複合体や、分解後の過酸化物残渣は、接着性やその他に大きく影響を及ぼすので、未反応物や過酸化物残渣を取り除く必要がある。除去方法としては、2軸押出による製法であれば、減圧下で押出すことで、除去することが可能であり、またバッチ式の製法であれば、ホットキシレン中に精製した接着性樹脂を溶解させ、さらにその後、再析出・洗浄・乾燥処理を施すことで、未反応物や過酸化物残渣を取り除くことが可能である
【0028】
本発明で用いられるバリア性基材としては、熱可塑性樹脂フィルム、金属蒸着フィルム、無機化合物蒸着フィルム、金属箔などが挙げられる。
【0029】
熱可塑性樹脂フィルムとしては、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂などが好適に使用されるが、特にこれらに制限されるものでなく、上述したポリエステル系樹脂やポリアミド系樹脂の種類に限定されない。
【0030】
これらの熱可塑性樹脂フィルムは、上記接着性樹脂と接する面に、コロナ処理、フレーム処理、プラズマ処理、およびオゾン処理などから選ばれる少なくとも1種以上の表面処理を施すことが望ましい。コロナ処理やプラズマ処理のなかでも大気圧プラズマのように、各種ガス雰囲気下で処理を施すことで、ガスに特有の表面状態が得られることから、例えば、窒素ガス雰囲気下でポリエステルフィルムにコロナ処理を施すことで、表面に窒素化合物を導入することも可能であり、また、ポリアミドフィルムに関しては、アミド結合が崩壊することで末端アミンの含量が多くなり、基材表面に、イソシアナート化合物と反応性を有する官能基を附与することも可能である。また、これらの表面処理だけでなく、ウレタン系コート剤や各種易接着処理を施した各種基材を用いることもできる。
【0031】
一方、金属蒸着フィルムや無機化合物蒸着フィルムあるいは金属箔としては、アルミ蒸着フィルム、アルミナ蒸着フィルム、アルミニウム箔が挙げられる。上記のフィルムあるいは箔は、公知の方法で作成されたものを使用することが可能である。特に、アルミ蒸着やアルミナ蒸着フィルムでは、その蒸着用基材としては延伸ポリエステルフィルム、延伸ポリプロピレンフィルム、延伸ナイロンフィルムなど各種基材を使用することが可能であり、蒸着用のプライマーも各種基材に応じたものを選定することが可能である。
【0032】
上述した各種バリア層は、接着性樹脂と接する面に熱水変性処理(ベーマイト処理)を施した方が好ましい。熱水変性処理(ベーマイト処理)を施すことで、アルミニウム箔、アルミ蒸着面、アルミナ蒸着面の最表層に水酸基を導入することが可能であり、これらのバリア層表層とイソシアナート基を導入した接着性樹脂との接着性が向上する。
【0033】
この各種バリア層表層における熱水変性処理(ベーマイト処理)を施すと、下記の特性が変化し、熱水変性処理の指標とすることができる。まず、第一に、X線光電子分光測定した場合に、Al2p軌道の酸化物および水酸化物由来のスペクトルピーク位置が、75.4eV以下になっていることが挙げられる。
また、同様に、X線光電子分光測定を行ったときの酸素(O)/アルミニウム(Al)の比が1.7以上であることが挙げられる。
さらに、飛行時間型2次イオン質量分析測定を行った場合に、水酸基(OH)/酸素(O)の比が0.9以上であることが挙げられる。
最後に、走査型電子顕微鏡による表面観察結果が、表面がミクロオーダーの微細な凹凸状の形態を示している。
【0034】
このような熱水変性処理(ベーマイト処理)を施したアルミニウム箔層、アルミ蒸着層、アルミナ蒸着層は、極度の酸化・水酸化した構造を形成し、特に水酸化によってイソシアナート化合物の反応性が向上する。さらに、表面形態は、イソシアナート化合物だけでなく、更にその上に積層されるポリオレフィン樹脂やオレフィン系共重合体樹脂間における投錨効果や接着面積の拡大によって接着性が向上する。
【0035】
本発明の積層体を容器等の包装体に成形して強浸透性物質からなる内容物を充填・包装した場合の強浸透性物質からなる内容物に対する積層体の耐性は、表層が官能化された各種基材と接着性樹脂間の1次および2次結合があげられる。特に、熱水変性を施したアルミニウム箔を例に取ると、汎用の低密度ポリエチレンを直接アルミニウム箔の熱水変性処理面に押し出した場合は、初期の接着状態は良好であるが、強浸透性物質、特に殺菌剤などの溶剤系内容物を充填した場合には、徐々にそのラミネート強度が低下する傾向がある。このことは、初期の接着状態は、熱水変性処理によって形成した表面の微細な凹凸による投錨効果によるものであるが、接着性樹脂の溶融状態の粘度では、その微細な凹凸からなる空隙を完全に樹脂が充填されていないことから、その空隙部分に溶剤成分が入り込み、毛細管現象の効果で、ラミネート界面が侵され、接着強度が低下するものと考えられている。
【0036】
また上述したように、2液硬化型ウレタン接着剤の場合では、バリア層とポリオレフィン系樹脂層との層間に数μmオーダーの接着剤層を形成すると、耐溶剤性の低いウレタン結合を形成してしまうため、溶剤成分が2液硬化型ウレタン接着剤層を侵してしまう。
【0037】
一方、イソシアナート基をグラフト反応させた接着性樹脂を積層させることで、低密度ポリエチレン(LDPE)の時と同様の投錨効果だけでなく、アルミニウム表面の熱水変性処理による水酸化物基との反応で各種結合を形成し、接着面積が拡大することで耐性を付与することが可能であると思われる。
【0038】
本発明の積層体の製造工程としては、インラインあるいはオフラインで各種処理を施したポリエステル系、ポリアミド系の熱可塑性樹脂フィルムを基材として、その処理面上にイソシアナート基を含む複合体をグラフトした接着性樹脂を押出ラミネートにより積層させることがあげられる。
【0039】
アルミニウム箔やアルミ蒸着フィルムやアルミナ蒸着フィルムに施す熱水変性処理としては、アンモニアあるいはトリエタノールアミンなどの添加剤を蒸留水中に0.01〜1重量%、好ましくは0.1〜0.5重量%の範囲で処理液を作成し、その処理液を75〜100℃の範囲、好ましくは85〜100℃の範囲、さらに好ましくは90〜100℃の範囲に加熱し、上述した各種バリア層を1分以上、好ましくは2分以上、さらに好ましくは3分以上浸漬させることで、熱水処理変性を行った各種バリア層を得ることが可能である。この処理においては、ウェブによる処理でもバッチによる処理でも可能である。
【0040】
この熱水変性処理を施した各種バリア層の処理面に、上記接着性樹脂を同様に押出ラミネートを施すことで積層体を得ることが可能である。
【0041】
接着性樹脂の押出は特に制限されること無く、様々なタイプの押出機やダイ設計、スクリュー設計で押出すことが可能であり、必要に応じては、共押出により接着性樹脂を押出すこともできる。
【0042】
このようにして得られた各種積層体は、各種包装形態に展開が可能であり、パウチなどの軟包装体から、紙と複合させることで、液体用複合紙容器などの展開が可能である。また、これらの包装容器においては、従来、充填困難であった強浸透性物質からなる内容物にも、その用途展開が可能である。
【0043】
【実施例】
以下、本発明の具体的な実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限られるものではない。
【0044】
[イソシアナート基を含む複合体の作成]
イソシアナート化合物(A)と、該化合物(A)と反応性を有し、かつ化学構造中に不飽和結合を有する化合物(B)とが反応してなる複合体を、下記に示す材料および製造方法に基づいて作成した。
【0045】
(材料)
イソシアナート化合物(A):イソホロンジイソシアナート
化合物(b):ヒドロキシエチルメタクリレート
【0046】
(製造方法)
内容量500ml中のセパラブルフラスコ中に、モル比1:1になるように上記化合物を配合し、完全に窒素置換を施した。その後、水浴により50℃に加温し、スターラーで攪拌しながら、5時間放置することで、不飽和結合を有するイソシアナート複合体を作成した。
【0047】
〈実施例1〉
樹脂として、MI=35の低密度ポリエチレンからなるポリオレフィン樹脂(PO−1)、基材として、Heガス雰囲気下大気圧プラズマ処理ポリアミドフィルム25μm(S−1)を用いて、下記の製造方法に基づいて積層体を作成した。
得られた積層体を下記の初期ラミネート強度測定法および耐内容物適性試験に基づき評価を行った。その結果を表1に示した。
【0048】
(製造方法)
2軸押出機を用いて製造を行った。あらかじめ不飽和結合を有するイソシアナート複合体中に過酸化物2,5-ジメチル2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシンを配合したものを、完全に溶融状態のポリオレフィン樹脂中に液添を行うことで接着性樹脂を作成した。その際の加工条件としては、樹脂/イソシアナート化合物/過酸化物=100/5/0.5、加工温度180℃、滞留時間180sec.、回転数100rpm、吐出12kg/hであり、残留モノマー除去のため、減圧下で加工を行った。また、得られたストランドサンプルは水冷後ペレタイズ後、乾燥処理を施した。得られた接着性樹脂のグラフト率は2〜3wt%であった。上記接着性樹脂を単軸押出機により、加工温度230℃、加工速度80m/min.、30μmで基材に積層させた。その際、あらかじめ作成しておいたポリエステルフィルム/低密度ポリエチレンの積層体を用いて、サンドラミネーションにより接着性樹脂を挟み込むように積層させた。
【0049】
(初期ラミネート強度測定)
基材と接着性樹脂間のラミネート強度(クロスヘッドスピード300mm/min.T型剥離)および剥離界面を評価した。
【0050】
(耐内容物適性試験)
初期強度測定用サンプルを製造するにあたって、サンドラミネート用の基材を除いた構成(基材と接着性樹脂のみからなる積層体)を作成し、それを用いてパウチを作成した。そのパウチ中に、発布剤、浴用剤、および溶剤系殺菌剤を封入し、40℃−90%R.H.雰囲気下で1ヶ月保存した後のラミネート強度および剥離界面を評価した。
【0051】
〈実施例2〉
樹脂として、MI=35の低密度ポリエチレンからなるポリオレフィン樹脂(PO−1)、基材として、N2雰囲気下コロナ処理ポリエチレンテレフタレートフィルム25μm(S−2)を使用した以外は実施例1と同様にして積層体を作成した。また、得られた積層体を実施例1と同様にして評価し、その結果を表1に示した。
【0052】
〈実施例3〉
樹脂として、MI=35の低密度ポリエチレンからなるポリオレフィン樹脂(PO−1)、基材として、熱水変性処理アルミニウム箔40μm(S−3)を使用した以外は実施例1と同様にして積層体を作成した。また、得られた積層体を実施例1と同様にして評価し、その結果を表1に示した。
【0053】
〈実施例4〉
樹脂として、MI=22のエチレン-アクリル酸エチル共重合体からなるオレフィン系共重合体樹脂(PO−2)、基材として、N2雰囲気下コロナ処理ポリエチレンテレフタレートフィルム25μm(S−2)を使用した以外は実施例1と同様にして積層体を作成した。また、得られた積層体を実施例1と同様にして評価し、その結果を表1に示した。
【0054】
〈実施例5〉
樹脂として、MI=22のエチレン-アクリル酸エチル共重合体からなるオレフィン系共重合体樹脂(PO−2)、基材として、熱水変性処理アルミニウム箔40μm(S−3)を使用した以外は実施例1と同様にして積層体を作成した。また、得られた積層体を実施例1と同様にして評価し、その結果を表1に示した。
【0055】
【比較例1〜5】
イソシアナート複合体をグラフトしていない樹脂(PO−1、PO−2)を用いた以外は、実施例1〜5と同様にして積層体を作成した。また、得られた積層体を実施例1〜5と同様にして評価し、実施例1〜5に対応して比較例1〜5とした。その結果を表1に示した。なお、樹脂PO−1、PO−2の加工温度は各々340℃、300℃である。
【0056】
【表1】
【0057】
表1から明らかなように、本発明の積層体は、各種表面処理を施した熱可塑性樹脂フィルム、あるいは熱水変性処理を施したアルミニウム箔などのバリア性基材に対し、イソシアナート基を有する複合体をグラフト化させて変成した接着性樹脂を積層させた積層体は、初期のラミネート強度だけでなく、その積層体を包装体として成形して強浸透性物質からなる内容物を充填・包装した場合であっても、その内容物によりラミネート強度が低下することがないことが確認された。
【0058】
【発明の効果】
本発明により、各種熱可塑性樹脂フィルム、アルミ蒸着フィルム、アルミナ蒸着フィルム、アルミニウム箔等のバリア性基材に対して、優れたラミネート強度を有し、包装体として成形して強浸透性物質からなる内容物を充填・包装した場合であっても、その内容物の影響を受けてラミネート強度が低下することのない積層体を提供することが可能となった。
本発明の積層体は、イソシアナート複合体をグラフト化させた樹脂の物性を生かすことで、エチレン-ビニルアルコール共重合体やポリアミド樹脂などの活性水素含有ポリマーとの共押出成形による機能性包材の展開や、接着剤を用いないラミネート方法の提案等、環境対応や、各種ニーズに対応した包装材料を提供することができ、各種軟包装材分野や、液体用複合紙容器などの分野に好適に用いられるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の積層体中に含まれる最小構成要素を示した断面図である。
【符号の説明】
1……積層体
2……基材層
3……接着性樹脂層
Claims (5)
- ポリエステル系またはポリアミド系の熱可塑性樹脂フィルム、金属蒸着フィルム、無機化合物蒸着フィルム、金属箔のいずれかのバリア性基材上に、2官能以上のイソシアナート基を有するモノマーあるいはその誘導体であるイソシアナート化合物(A)と、該化合物(A)と反応性を有する活性水素を含有し、かつ、化学構造中にビニル、アリル、または(メタ)アクリル系の不飽和結合を有する化合物(B)とが反応してなる複合体であって、複合体中に少なくとも1官能以上の未反応のイソシアナート基を含む複合体が、ASTM D1238に準ずるメルトインデックス(MI)0.1〜200の範囲のポリオレフィン樹脂あるいはオレフィン系共重合体樹脂に、樹脂100重量部に対し、0.001〜10重量部の範囲でグラフト反応により導入された接着性樹脂を押出ラミネート法により積層させたことを特徴とする積層体。
- 前記イソシアナート化合物(A)が、トリレンジイソシアナート、キシリレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナートのイソシアナート単体、または少なくとも1種以上からなる誘導体であること特徴とする請求項1記載の積層体。
- 請求項1記載の積層体において、熱可塑性樹脂フィルムの前記接着性樹脂と接する面にコロナ処理、フレーム処理、プラズマ処理、オゾン処理から選ばれる少なくとも1種以上の表面処理が施されていることを特徴とする積層体。
- 請求項1記載の積層体において、前記金属蒸着フィルムの金属蒸着層がアルミ蒸着層、前記無機化合物蒸着フィルムの無機化合物蒸着層がアルミナ蒸着層、前記金属箔の金属がアルミニウムであることを特徴とする積層体。
- 請求項1記載の積層体において、金属蒸着フィルム、無機化合物蒸着フィルム、金属箔の前記接着性樹脂と接する各々の金属蒸着面、無機化合物蒸着面、金属箔面に、熱水変性処理が施されていることを特徴とする積層体。
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