JP4134736B2 - 筒内直接噴射火花点火式内燃機関 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、筒内直接噴射火花点火式内燃機関に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の筒内直接噴射式内燃機関として、特許文献1に示されるようなものがある。
【0003】
これは、圧縮行程で燃料噴射弁からピストン上面のキャビティへ向けて燃料を噴射して、キャビティ近傍に位置する点火プラグ周りに混合気を偏在させるようにした筒内直接噴射火花点火式内燃機関において、燃焼室内にスワール流動を生成するスワール生成手段を備えると共に、燃料噴射弁から噴射される燃料噴霧が圧縮行程の中で筒内圧力が低いときは点火プラグ方向に指向し、筒内圧力が高くなるにつれてスワール流動により点火プラグから外れた方向に向けられるように、燃料噴射弁の燃料噴射方向、燃料貫徹力およびスワール比を設定する。
【0004】
これにより、成層低負荷燃焼の安定性向上と成層高負荷燃焼のくすぶり防止とを両立できる。
【0005】
【特許文献1】
特開2000−170537号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のように、噴霧が点火プラグを指向するように設計されている機関においては、成層高負荷運転条件においてスワール流動を強化した場合、噴射される燃料量が多いため、ピストンキャビティからの燃料のこぼれが発生しやすく、結果として燃焼安定性や燃費の悪化などの懸念がある。
【0007】
また、成層燃焼を行う機関において、ピストンキャビティ形状や噴霧が可変とならない限りにおいて、成層高負荷運転条件と成層低負荷運転条件とに関し、どちらも安定かつ燃費の良い成層燃焼を行うのは困難である。特に成層高負荷運転条件において、上記のように、噴霧が点火プラグを指向する機関レイアウトとなっている場合、点火プラグ周りがリッチとなり、くすぶりなどの懸念がある。逆に、成層高負荷運転条件において、噴霧が点火プラグを指向しない機関レイアウトとなっている場合、点火プラグくすぶりの懸念は無くなるものの、成層低負荷運転条件における燃焼安定性の悪化が懸念される。
【0008】
本発明は、点火プラグくすぶりの懸念なく成層高負荷運転を行うと共に、成層低負荷運転条件においても安定性良く燃費の良い成層燃焼を行うことを目的とし、成層低負荷運転条件と成層高負荷運転条件とを異なる燃焼方式により両立させる。
【0009】
【課題を解決するための手段】
このため、本発明では、低負荷運転時には、スワール流動を強化し、このスワール流動によって燃料噴射弁から噴射された噴霧をシリンダ周方向に曲げることで点火プラグの放電ギャップ位置に直接到達させる。その一方、高負荷運転時には、スワール流動を弱化し、燃料噴射弁から噴射されピストン側のガイド壁面によってピストン上方へ巻き上げられる噴霧を点火プラグの放電ギャップ位置に到達させる構成とした。
【0010】
【発明の効果】
本発明によれば、低負荷運転時は、燃料噴射弁から噴射された噴霧に直接点火することができるので、燃料噴射量が少なくても安定した着火・燃焼が得られる。また、燃料噴射量が多い高負荷運転時には、噴霧が点火プラグを直撃しないので、点火プラグのくすぶりが発生しない。尚、高負荷運転時の噴霧はピストン上方へ巻き上げられる過程でシリンダ周方向への拡散が進むので、噴孔が点火プラグを指向していなくても安定した着火・燃焼が得られる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に、本発明の一実施形態として、筒内直接噴射火花点火式内燃機関の構成図を示す。
【0012】
この内燃機関は、燃焼室1と、燃焼室1を形成するシリンダヘッド2と、シリンダブロック3と、ピストン4と、吸気ポート5と、排気ポート6と、吸気弁7と、排気弁8と、吸気弁用カム9と、排気弁用カム10と、燃料噴射弁11と、点火プラグ12と、スワール制御弁13と、機関コントロールユニット14とを含んで構成される。
【0013】
燃料噴射弁11は、燃焼室(シリンダ)1の略中央に配置され、ピストン4へ向けて燃料を噴射する。燃料噴射弁11としては、圧縮行程後半における筒内圧力上昇時にも噴霧形状の変化が小さく、指向性の強いホールノズル噴射弁を用いる。具体的には、それぞれ略棒状の噴霧を形成する複数の噴孔を有している。
【0014】
ピストン4は、その冠面にピストンキャビティ15を有し、その内部に燃料噴霧を上方へ案内するためのガイド壁面(15a〜15c)を有している。このガイド壁面は、燃料噴射弁11からの噴霧が斜めに衝突する底面15aと、この底面15aに連続しかつ衝突後の噴霧進行方向に対し燃料噴射弁11側に湾曲する曲面15bと、この曲面15bに連続し燃料噴射弁11の先端近傍を指向する平面15cとからなる(図2参照)。
【0015】
点火プラグ12は、燃料噴射弁11が備える噴孔の中心を延長した線(噴孔中心延長線)からシリンダ周方向へ外れた位置に配置される(図3参照)。
スワール制御弁13は、1気筒につき2本の吸気ポートのうち一方に配置されるか、弁体の一部に切欠きを有するかして、弁軸により任意角度に開閉され、任意強さのスワール流動を生成可能である(スワール生成手段)。
【0016】
図2に、成層高負荷運転条件における噴霧挙動を示す。まず、噴霧はピストンキャビティの底面15aに衝突するが、噴霧進行方向とその後噴霧が進行する側のキャビティ壁面とのなす角が鈍角になるよう底面 15 の角度が設定されている。その後、噴霧は、角Rの曲面15bとこれに続く平面15cとにより誘導されて進行する。曲面15bと平面15cとによって噴霧の噴射方向速度がもとの噴射された方向へ変換され、結果としてうずのように旋回する流速を持つようになる。この旋回流速により周囲の空気を巻き込み、キャビティ上空に生成される混合気は濃度むらのない均質な混合気となる。
【0017】
図3に、機関上方より見た成層低負荷運転条件と成層高負荷運転条件における噴霧挙動を示す。
成層高負荷運転条件においては、図2にて示したように、噴霧がピストンキャビティにより輸送され、キャビティ上空に均質な成層混合気を生成する。成層高負荷運転条件においては、成層低負荷運転条件と比較して、噴射時期が進角して設定され、キャビティ上空に成層混合気が存在する時間が長いため、筒内流動や噴霧流動により成層混合気が点火プラグ周辺へ自然と輸送される。また、負荷が高く噴射量が多いため、点火プラグ周りがリーンになり燃焼が不安定となる懸念はない。噴霧の進行方向およびキャビティ衝突後の噴霧進行方向に点火プラグが位置しないため、点火プラグくすぶりの懸念はない。
【0018】
これに対して、成層低負荷運転条件においては、スワール制御弁13により、筒内のスワール流動が強められ、噴射された噴霧が曲げられ、噴霧はピストンキャビティに衝突する前に点火プラグ12を直接指向する。上方からの噴霧を点火プラグへ指向させるため、筒内流動は水平成分の強いスワール流動が望ましい。また、この燃焼方式においては、ピストンキャビティに噴霧を衝突させず、点火プラグを指向した噴霧を直接燃焼させることにより燃費の良い成層燃焼を実現する。このため、噴霧貫徹力は弱いよう設定され、例えば燃料噴射圧力を調整する手段により噴射圧力が低く設定される。また、噴射時期は遅角側に設定される。
【0019】
図4に、機関回転および負荷とスワール流動強さとの関係を示す。
ある負荷(制御切換用負荷)を境に、成層運転条件は、スワール流動強化を行う成層低負荷運転条件と、スワール流動強化を行わない成層高負荷運転条件との2つの領域に別れる。スワール流動強化を行う成層低負荷運転条件においては、筒内流動が噴霧におよぼす影響により最適値が決められる。すなわち、筒内流動の影響が強く、噴霧が流されやすい高回転条件においてはスワール流動は弱く設定される。筒内流動の影響が弱く、噴霧が流されにくい低回転条件になるほど、スワール流動を強化するよう設定される。これにより、回転の異なる成層運転領域において、安定して燃費が良い成層燃焼が実現できる。
【0020】
これまで述べてきた2つの成層燃焼方式は、組み合わせることによりあらゆる負荷および回転において最適な燃費を実現することができるが、それぞれ単独で用いることによっても十分燃費の良い成層燃焼が実現する。
【0021】
本実施形態によれば、成層運転条件での低負荷運転時にて、スワール流動を強化することで、当該成層低負荷運転条件において、噴霧を点火プラグに輸送する燃焼方式を実現できる。
【0022】
また、本実施形態によれば、成層運転条件中に制御切換用負荷が設定され、その負荷以下の時のみスワール流動を強化し、その負荷を超える時はスワール制御弁を用いないことで、成層運転条件における低負荷と高負荷において、異なる燃焼方式の成層燃焼方式を行うと共に、各負荷において跳ね返りのない最適な燃焼方式を実現できる。
【0023】
また、本実施形態によれば、燃料噴射圧力を調整する手段を持ち、成層低負荷運転条件において、成層高負荷運転条件と比較して、燃料噴射圧力を低くすることで、成層低負荷運転条件において、噴霧貫徹力を弱め、噴霧を点火プラグに確実に向かわせることで、安定した燃費の良い燃焼が実現できる。
【0024】
また、本実施形態によれば、成層低負荷運転条件において、成層高負荷運転条件と比較して、燃料噴射時期を遅角側に設定することで、成層低負荷運転条件において、噴射時期の最適化により、噴霧を点火プラグに確実に向かわせることで、燃費の良い燃焼が実現できる。
【0025】
また、本実施形態によれば、機関回転数が高いほど、スワール流動を弱くすることで、噴霧が流されやすい高回転条件と噴霧が流されにくい低回転条件とを考慮して、スワール流動を最適化でき、異なる回転数においても、燃費の良い低負荷成層燃焼が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態を示す内燃機関の構成図
【図2】 成層高負荷運転条件における噴霧挙動を示す図
【図3】 機関上方より見た成層低負荷運転条件と成層高負荷運転条件における噴霧挙動を示す図
【図4】 機関回転および負荷とスワール流動強さとの関係を示す図
【符号の説明】
1 燃焼室
2 シリンダヘッド
3 シリンダブロック
4 ピストン
5 吸気ポート
6 排気ポート
7 吸気弁
8 排気弁
9 吸気弁用カム
10 排気弁用カム
11 燃料噴射弁
12 点火プラグ
13 スワール制御弁
14 機関コントロールユニット
15 ピストンキャビティ
15a〜15c ガイド壁面

Claims (7)

  1. 燃料噴霧をピストン上方へ案内するためのガイド壁面を有するピストンと、
    シリンダの略中央に配置され、シリンダ中心軸を中心軸とする円錐の母線の方向を指向して棒状の噴霧を形成する複数の噴孔を備え、前記ピストンへ向けて燃料を放射状に噴射する燃料噴射弁と、
    前記燃料噴射弁が備える複数の噴孔のうち隣り合う2つの噴孔の各中心を延長した線の間に放電ギャップが配置される点火プラグと、
    シリンダ中心軸周りに旋回する吸気のスワール流動をシリンダ内に生成するスワール生成手段と、を備え、
    低負荷運転時に前記スワール流動を強化し、このスワール流動によって噴霧をシリンダ周方向に曲げることで前記複数の噴孔のうち1つの噴孔から噴射された噴霧を前記点火プラグの放電ギャップ位置に直接到達させる一方、
    高負荷運転時に前記スワール流動を弱化し、前記ガイド壁面によってピストン上方へ巻き上げられる噴霧を前記点火プラグの放電ギャップ位置に到達させることを特徴とする筒内直接噴射火花点火式内燃機関。
  2. 前記スワール流動を強化するのは、成層運転条件での低負荷運転時であることを特徴とする請求項1記載の筒内直接噴射火花点火式内燃機関。
  3. 成層運転条件中に制御切換用負荷が設定され、その負荷以下の時のみスワール流動を強化し、その負荷を超える時はスワール生成手段を用いないことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の筒内直接噴射火花点火式内燃機関。
  4. 燃料噴射圧力を調整する手段を持ち、成層低負荷運転条件において、成層高負荷運転条件と比較して、燃料噴射圧力を低くすることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の筒内直接噴射火花点火式内燃機関。
  5. 成層低負荷運転条件において、成層高負荷運転条件と比較して、燃料噴射時期を遅角側に設定することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載の筒内直接噴射火花点火式内燃機関。
  6. 機関回転数が高いほど、スワール流動を弱くすることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1つに記載の筒内直接噴射火花点火式内燃機関。
  7. 燃料噴霧をピストン上方へ案内するためのガイド壁面を有するピストンと、
    シリンダの略中央に配置され、シリンダ中心軸を中心軸とする円錐の母線の方向を指向して棒状の噴霧を形成する複数の噴孔を備え、前記ピストンへ向けて燃料を放射状に噴射する燃料噴射弁と、
    前記燃料噴射弁が備える複数の噴孔のうち隣り合う2つの噴孔の各中心を延長した線の間に放電ギャップが配置される点火プラグと、
    シリンダ中心軸周りに旋回する吸気のスワール流動をシリンダ内に生成するスワール生成手段と、を備え、
    前記スワール生成手段で生成したスワール流動によって噴霧をシリンダ周方向に曲げることで前記複数の噴孔のうち1つの噴孔から噴射された噴霧を前記点火プラグの放電ギャップ位置に直接到達させることを特徴とする筒内直接噴射火花点火式内燃機関。
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