JP4134132B2 - ブレード翼型の設計方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ブレードの翼型を設計する方法に関する。
図3は、本発明を説明するための図ではあるが、この図3を参照しながら説明すると、ヘリコプタのブレードは矢符A方向の回転を伴いながら、飛行方向Bに向かって前進している。したがってブレードは、ヘリコプタが前進している状態では、ブレードの角度位置によって、大気に対する相対速度が異なる。またブレードの大気に対する相対速度は、翼根と翼端では異なる。さらに図4は、本発明を説明するための図ではあるが、この図4を参照しながら説明すると、前進中には、前進側と後退側とで、揚力を釣り合せるためには、1回転中にブレードのピッチ角とも呼ばれる迎角αを変化させる必要がある。したがってブレードは、迎角と相対速度とが常に変化する環境下で、運動している。
図11は、従来の技術の翼型の性能評価に用いられる指標を示すグラフである。図11には、最大揚力係数CLmaxと、抵抗発散マッハ数MDDとを示す。図11において、各線1〜4は、最大揚力係数CLmaxを示し、各線5〜7は、抵抗発散マッハ数MDDを示す。線1と線5とは、同一の翼型の特性であり、線2と線6とは、同一の翼型の特性であり、線3と線6とは、同一の翼型の特性である。
ブレードの翼型は、翼型を定義するパラメータを修正しながら、翼型の性能を評価し、最適な翼型を求める自動最適設計演算によって、設計される。翼型を設計するにあたっての翼型の性能の評価には、評価指標が用いられる。評価指標は、相対速度が低い低速域では、最大揚力係数CLmaxが指標として用いられ、相対速度が高い高速域では、抵抗発散マッハ数MDDまたはバフェット発生揚力係数CLbuffetが用いられている。このような評価指標は、たとえば非特許文献1に示されるような数値流体解析(略称CFD)によって、求められる。
相対速度が低速域にある場合、ブレードの迎角を増加させるとこれに伴って揚力が増加するが、ある迎角で最大値となる。この揚力が最大となるときの揚力係数が、最大揚力係数CLmaxである。相対速度が高速域にある場合、明確な最大揚力はなくなる。また相対速度が高速域では、迎角が大きくなるとともに揚力も増加する傾向を示すが、ある迎角で空気力の振動であるバフェットを生じる。このバフェットを生じる点の揚力係数がバフェット発生揚力係数CLbuffetである。抵抗発散マッハ数MDDは、迎角を変化させて揚力係数を一定に保持しならがら相対速度を高くしたときに、抵抗が急激に増加する相対速度を表すマッハ数である。
前述のような最大揚力係数CLmax、抵抗発散マッハ数MDD、バフェット発生揚力係数CLbuffetを指標として用いる構成では、次のようないくつかの問題点を有する。CFD計算で解が振動を始める点の揚力係数を、計算上のバフェット発生揚力係数CLbuffetとしているが、本来は物理的な流体力の振動開始の条件を意味する。数値解が振動解になるか否かは、純粋に数値的なアルゴリズム上の工夫である時間積分法によっても異なり、物理的な流体振動と同一視することには疑問がある。また図11には抵抗発散マッハ数MDDしか示していないが、高速域での指標として用いる抵抗発散マッハ数MDDとバフェット発生揚力係数CLbuffetとは、互いに異なる限界値を示し、どちらに指標を優先すべきなのか判断できない。また図11に示すように、抵抗発散マッハ数MDDは、0.8未満であるが、実機では、ブレードに対する大気の相対速度がマッハ数で表すとM>0.8となる状態で用いられており、この高速域での特性に関して、抵抗発散マッハ数MDDが限界を正しく表現している指標であるとは言えない。
さらに図11から明らかなように、最大揚力係数CLmaxと抵抗発散マッハ数MDDとは、不連続であり、境界付近において、いずれの指標を用いるべきなのか判断できない。また図11には、最大揚力係数CLmaxと抵抗発散マッハ数MDDとの関係しか示していなが、最大揚力係数CLmaxとバフェット発生揚力係数CLbuffetともまた、不連続となり、同様の問題を有している。また図11において、最大揚力係数CLmaxを示す各線1〜4が、相対速度を表すマッハ数Mの広範囲にわたって延びているが、前述のように、高速域では明確な最大揚力が表れない場合があるので、全域にわたって最大揚力係数CLmaxを用いることはできない。このように従来の構成では、相対速度の全域にわたって翼型の性能を評価することができない。翼型の静的な特性である最大揚力係数CLmax、抵抗発散マッハ数MDDおよびバフェット発生揚力係数CLbuffetが、ヘリコプタのブレードの翼型の評価指標として用いられてきたが、その翼型のブレードの広い利用範囲を考慮すると、最適とは言えない。またその翼型のブレードが曝される速度変動および迎角変動の動的変化を考慮したものになっていない。
翼の性能に関連する他の従来の技術として、特許文献1〜4に示される技術が知られている。特許文献1には、実体翼の3次元計上の計測データに基づいて直接に翼の構造解析を行う、翼の構造解析モデルの生成方法が示されている。特許文献2には、供試翼列まわりの流れ場の可視化と壁圧などの同時計測を可能にする、翼周囲流れの解析実験装置が示されている。特許文献3には、物体表面あるいは流路壁面と流体の流れとの間に発生する剥離現象を抑制し、失速や不安定現象の改善を可能にする、流れの剥離制御装置が示されている。また解析に関する従来の技術として、特許文献4には、有限要素法解析を適用してコンピュータ解析を行う際の解析対象形状への解析条件を付与する作業を効率化し、処理工程数を大幅に減少する解析形状モデルへの解析条件の設定装置が示されている。これらの特許文献1〜4の構成を用いても、相対速度の全域にわたって翼型の性能を評価することができない。
嶋:「川崎重工業における空力設計のためのCFD技術の解析について」、数値流体力学会誌第6巻第2号、1998、pp.45−57 特開平11−281328号公報 特開平6−341919号公報 特開平5−16892号公報 特開平4−257074号公報
本発明の目的は、ブレードの大気に対する相対速度の全域にわたって、翼型の性能を評価することができるブレード翼型の設計方法を提供することである。
本発明は、ブレードの翼型を定義するパラメータを初期設定する初期設定工程と、
設定されるパラメータによって翼型を定義する翼型定義工程と、
定義される翼型の性能を、ブレードを一様気流中に配置した場合の抵抗係数が0.02以上0.1以下になるブレードの迎角または前記抵抗係数が0.02以上0.1以下になる揚力係数を、ブレードの翼型の評価指標として、静的解析によって求め、この求めた評価指標を用いてブレードの翼型の性能を評価する性能判断工程と、
翼型の性能判断結果に基づいて、翼型の性能が最適値に収束しているか否かを判定し、最適値に収束していると判定する場合、その翼型を設計翼型として出力する判定出力工程と、
判定出力工程で、収束していないと判定する場合、前記パラメータを修正して設定し、前記翼型定義工程から判定出力工程までを繰返す繰返し工程とを備えることを特徴とするブレード翼型の設計方法である。
本発明に従えば、初期設定されるパラメータで定義される翼型について評価し、評価結果が最適値に収束するまで、パラメータを修正して翼型を定義し直し、翼型の評価を繰返して最適な翼型を設計することができる。このようにパラメータを修正しながら評価を繰返し、パラメータの最適値を求める方法は、いわゆる自動最適設計法である。この自動最適設計に、前述の翼型の評価を組込むことによって、好適な評価に基づいて翼型を設計することができ、好適な翼型を設計することができる。
抵抗係数が0.02以上0.1以下となる迎角または揚力係数が静的解析によって求められ、その迎角または揚力係数が、ブレードの翼型の性能を評価するための評価指標として用いられる。この評価指標は、ブレードが実際に用いられると想定される相対速度の全域にわたって得られる指標である。相対速度は、ブレードの大気に対する相対速度である。したがってこの評価指標を用いることによって、ブレードが実際に用いられると想定される相対速度の全域にわたって、1つの評価指標で翼型を評価することができ、翼型の静特性を好適に評価することができる。
また前記評価指標は、動的解析によって得られる結果に基づいて、動的失速が生じるか否かの判定のしきい値としても用いることができる。これによって評価指標は、静特性を表す指標として用いることができるだけでなく、翼型の動特性を推測するために用いることが可能である。したがって前記評価指標は、相対速度および迎角の動的変化を考慮した翼型の評価にも利用可能であり、高い有用性を有している。
また、抵抗係数が、0.02以上0.1以下の範囲内に設定される迎角または揚力係数が評価指標として用いられる。揚力係数が最大となる迎角およびバフェットが発生する迎角よりも迎角が大きくなると、迎角の増加に伴って抵抗値が急激に増加する傾向を有している。この抵抗値の急増が始まる抵抗係数は、前記範囲内に存在するので、設定値を前記範囲内に設定することによって、最大揚力係数CLmaxおよびバフェット発生揚力係数CLbuffetを考慮した評価が可能になる。
本発明によれば、ブレードが実際に用いられると想定される相対速度の全域にわたって、1つの評価指標で翼型を評価することができ、翼型の静特性を好適に評価することができる。また評価指標は、相対速度および迎角の動的変化を考慮した翼型の評価にも利用することができ、高い有用性を有している。
また本発明によれば、最大揚力係数CLmaxおよびバフェット発生揚力係数CLbuffetを考慮した評価が可能になる。したがってさらに好適な翼型の評価が可能である。
また本発明によれば、自動最適設計に、前述の翼型の評価を組込むことによって、好適な評価に基づいて翼型を設計することができ、好適な翼型を設計することができる。
図1は、本発明の実施の一形態のブレード翼型の性能評価方法(以下単に「評価方法」という)を用いるブレード翼型の設計方法を示すフローチャートである。図2は、図1の設計方法を実行する設計装置20を示すブロック図である。図3は、ヘリコプタ10の前進飛行時におけるブレード11の対気速度分布を示す平面図である。図4は、ブレード3の迎角分布を示す図である。ヘリコプタ10には、複数枚の翼であるロータブレード(以下単に「ブレード」という)11が設けられるが、図3には、1枚のブレード11だけを仮想的に示す。
たとえば高性能ヘリコプタであるヘリコプタ10のブレード11の翼型は、計算流体力学に基づく数値流体解析(略称CFD)を用いて、数値的最適化法とも呼ばれる自動最適設計法によって設計される。この自動最適設計法では、翼型を定義するパラメータを修正しながら翼型の性能の評価を、たとえば数十回から数千回繰返すことによって、最適な翼型を設計している。したがって翼型の性能の評価に用いる好適な指標が得られれば、パラメータ修正と評価をと繰返す繰返しループを実行し、優れた翼型を設計することができる。このように翼型の設計において、翼型の性能の評価は重要な鍵であり、評価に用いる評価指標は重要である。本発明は、このような翼型の最適設計に好適に実施される。
ヘリコプタ10のブレード11は、たとえば上方から見て反時計まわりとなる回転方向Aへの回転を伴いながら、飛行速度Vで飛行方向Bへ前進し、かつピッチ角とも呼ばれる迎角αを変化させる、という複雑な運動を行う。無風状態であると仮定する場合、ブレード11の大気に対する相対速度(以下「対気速度」という)Vaは、ブレードの回転角速度をΩとし、アジマス角をψとしたとき、回転速度R・Ωと飛行速度Vのブレードに対して垂直な方向成分(回転方向の成分)Vsinψとの和(=R・Ω+Vsinψ)で表される。「・」は、乗算を表す演算子である。Rは、回転中心からの距離であり、アジマス角ψは、後方の角度位置からの回転方向Aへの角度であり、ブレード11の角度位置を表す。ホバリング状態では、飛行速度Vは0であり、対気速度Vaは、ブレード11の角度位置に関わらず、回転速度R・Ωとなる。
対気速度Vaの一例を、マッハ数Mで示すと、ホバリング状態では、たとえば、翼根12の対気速度VaはM=0.2となり、翼端13の対気速度VaはM=0.6である。また飛行速度VがM=0.2である場合、ブレード11の翼端13の対気速度Vaは、1回転中に、前進側のアジマス角ψが90°の角度位置でM=0.8となり、後退側のアジマス角ψが270°の位置でM=0.4となる。本実施の形態では、このような広範囲の対気速度Vaの全域にわたって用いることができる評価指標を用いて、翼型の性能を評価し、翼型を設計する。本実施の形態では、M=0.4以下を低速域とし、M=0.7以上を高速域とし、低速域と高速域の間を中速域とする。以下、対気速度Vaの意味で、単にマッハ数Mという場合がある。
本発明において、比較的高速の領域は、前記高速域(M≧0.7)を含む比較的高い速度の領域を意味し、高速域だけに限定されるものではなく、M=約0.6以上の領域を意味する。また本発明において、比較的低速の領域は、前記低速域(M≦0.4)を含む比較的低い速度の領域を意味し、低速域だけに限定されるものではなく、M=約0.6未満の領域を意味する。
図2に示す設計装置20は、入力手段21と、記憶手段22と、外部記録手段23と、演算手段24と、出力手段25とを備える。この設計装置20は、たとえばコンピュータを用いて実現される。入力手段21は、翼型を定義するパラメータの情報、翼型の評価および設計を指令する指令情報を含む情報を入力するための手段、たとえばキーボードなどである。
記憶手段22は、コンピュータ内部に設けられる媒体に情報を記憶するための手段、たとえばハードディスクドライブおよび半導体メモリなどであり、たとえば本発明の設計方法および評価方法を実行するための演算プログラム、および演算プログラムによる演算に必要なデータなどが記憶される。外部記録手段23は、たとえばコンパクトディスク(略称CD)およびデジタルバーサタイルディスク(略称DVD)などの着脱可能な記録媒体に、情報を記録し、記録媒体に記録される情報を再生する手段であり、たとえば本発明の設計方法および評価方法を実行するための演算プログラム、および演算プログラムによる演算に必要なデータなどが記憶される。記憶手段22および外部記録手段23を含んで、演算プログラムおよびデータなどの情報を保持する情報保持手段が構成される。
演算手段24は、たとえば中央演算処理ユニット(略称CPU)によって実現され、入力手段21によって入力される指令情報に基づいて、記憶手段22および外部記録手段23のいずれかから、最適設計演算プログラム、CFD解析演算プログラムなどを含む演算プログラムおよびデータを読込み、入力手段21によって入力されるパラメータの情報を用いて、翼型の評価および設計のための演算を実行する。出力手段25は、演算手段24による演算結果を出力する手段であり、たとえば表示装置である。演算手段24による演算結果は、外部記録手段23によって記録媒体に記録するようにして出力してもよい。したがって出力手段25および外部記録手段23を含んで、演算結果を出力するための結果出力手段が構成される。
このような設計装置20によって、具体的には、演算手段24によって、設計方法が実行される。演算手段24は、入力手段21によって、翼型を定義するパラメータの初期値を表す情報が入力され、翼型の設計を指令する指令情報が与えられると、図1に示すように、ステップs0で設計を開始し、ステップs1に進む。ステップs1では、演算手段24は、ブレード11の翼型を定義するパラメータを初期化する。具体的には、前記パラメータを、入力手段21によって入力される初期値に設定する。パラメータは、翼の形状を表す値であり、たとえば翼厚、キャンバ、翼弦長、前縁半径などを含む。このステップs1が、初期設定工程に相当する。
ステップs1でのパラメータ初期化が終了すると、ステップs2に進み、演算手段24は、設定されるパラメータによって翼型を定義する。このステップs2が、翼型定義工程に相当する。ステップs2での翼型の定義が終了すると、ステップs3に進む。ステップs3では、演算手段24は、定義される翼型に対して、対気速度Vaが比較的高速の領域にある場合のモーメントの変動特性および揚力の変動特性を、CFD解析によって求める。ここでモーメントは、ブレードに対するピッチング方向のモーメントであり、ねじりモーメントを含む。
ヘリコプタ10のブレード11は、細長い翼であり、ねじり剛性が低いので、空気力による大きなねじりモーメントが加わるとねじり変形を生じ、想定の空力特性が得られないことがある。またロータの回転面は、ブレード11に働く揚力を含む空気力によって変化するので、揚力の急変が生じると、ロータの回転面が予想外の挙動を示す。対気速度VaがM=0.8の近傍またはそれ以上の領域では、ブレード11の周囲の流れ場に衝撃波が発生する遷音速現象によって、前記回転面の予想外の挙動が発生しやすくなる。この回転面の予想外の挙動に繋がる、比較的高速の領域にある場合のモーメントの変動および揚力の変動を抑制することは、翼型の設計において重要なポイントの1つである。
比較的高速の領域にある場合のモーメントの変動特性および揚力の変動特性は、迎角αを一定に保持して、対気速度VaをM=0.6から除々に上昇させて解析を実行し、モーメントおよび揚力のM=0.6のときの値からの変化量が、予め設定されるしきい値を超えるマッハ数によってそれぞれ表すことができる。モーメントの変動特性は、マッハタックと呼ばれている。また、本発明の実施の他の形態では、これらの特性に代えて、揚力係数CLを一定に保持して、対気速度VaをM=0.6から徐々に上昇させて解析を実行し、モーメントおよび迎角αのM=0.6のときの値からの変化量が予め設定されるしきい値を超えるマッハ数でそれぞれ表される特性を用いることもできる。これらの特性は、数値が高いほど優れていると言える。ステップs3では、これらの特性について、その値、つまりマッハ数が、どのくらいであるかによって、翼型の性能を評価する。ステップs3での特性解析が終了すると、ステップs4に進む。
ステップs4では、演算手段24は、定義される翼型に対して、抵抗係数CDに基づいて評価する。このステップs4における翼型の性能を評価する評価方法は、解析工程と評価工程とを備えている。解析工程では、ブレード11を一様気流中に配置した場合の抵抗係数CDが予め定める設定値以上になるブレード11の迎角(以下「指標迎角」という)αnまたは前記抵抗係数CDが前記設定値以上になる揚力係数(以下「指標揚力係数」という)CLnを、ブレード11の翼型の評価指標として、静的解析によって求める。評価工程では、解析工程で求めた評価指標を用いて翼型の性能を評価する。抵抗係数CDは、ブレード11が受ける抵抗力を表す係数であり、揚力係数CLは、ブレード11が受ける揚力を表す係数である。
指標迎角αnおよび指標揚力係数CLnにおける添え字「n」は、抵抗係数CDの設定値を表す数値であり、抵抗係数CDの設定値の100倍の数値である。したがってたとえば、指標揚力係数CL300は、抵抗係数CDが0.03である場合の揚力係数を意味する。抵抗係数CDの設定値は、0.02以上0.1以下である。さらに好ましくは、0.03以上0.05以下である。
図5は、抵抗係数CDが0.03である場合の揚力係数を表す指標揚力係数CL300を示すグラフである。図5には、複数の翼型、具体的にはNACA0012、NACA23012、VR−7、VR−8、HH−02、NACA23008、SC1095、AK100Dの各翼型の指標揚力係数CL300を、各線30〜37でそれぞれ示す。このように指標揚力係数CL300は、ブレード11が用いられることが想定される対気速度Vaの全域にわたって、つまり低速域から高速域にわたって連続する指標である。図5には、翼型の性能評価にほとんど影響しないので、対気速度VaがM<0.2の速度域について省略している。
ステップs4では、たとえば図5に示すような抵抗係数CDが0.03である場合の揚
力係数を表す指標揚力係数CL300を求め、その翼型の性能を評価する。具体的には解析工程では、指標揚力係数CL300を求める。そして評価工程で、指標揚力係数CL300を用いて翼型の性能を評価する。指標揚力係数CL300が高いほど、翼型の性能は高く、図5のようにグラフで示す場合、指標揚力係数CL300を示す線が、右上に位置するほど、翼型の性能は高い。したがって評価工程では、指標揚力係数CL300が、対気速度Vaの全域にわたってどのような値を示すかによって、つまり図5のようにグラフで示す場合、どのような位置にあるによって、翼型の性能を評価する。
またヘリコプタ10が160ktで飛行する場合に、指標揚力係数CL300で表される翼型の必要性能が、図5に破線38で示すような性能である場合、評価対象となる翼型の指標揚力係数CL300が、破線38よりも右上に存在すれば、評価対象となる翼型が必要性能を満たすことになる。評価工程では、このように必要性能を満たすか否かについても評価する。ステップs5で判定される指標揚力係数CL300に関する必要性能は、たとえば設計動作を開始する前に、パラメータの初期値とともに入力手段21によって入力される。このようなステップs4が、性能判断工程に相当する。ステップs4の性能判断工程が終了すると、ステップs5に進む。
ステップs5では、演算手段24は、ステップs4の性能判断工程における翼型の性能判断結果と、ステップs3における評価結果とに基づいて、翼型の性能が最適値に収束しているか否かを判定する。具体的には、翼型の性能が、必要性能を満たし、かつできるだけ高い性能であるか否かを判定する。比較的高速な領域にある場合のモーメントの変動特性および揚力の変動特性が、ロータ性能に与える影響は、前述のようにブレード11の剛性によっても異なるので、ブレード11の構造によって、その重要度は異なる。たとえば極めて剛性および強度の高いブレード11および駆動機構が実現できれば、モーメントの変動特性および揚力の変動特性の注意を払わなくてもよい、と極論できる。
ステップs5では、ブレード11の構造に基づいて、モーメントの変動特性および揚力の変動特性に関する評価と、指標揚力係数CL300を用いる評価とに、相対的な重付けをし、総合的に最適値に収束しているか否かを判定している。このステップs5で、最適値に収束していないと判定すると、ステップs6に進み、最適値に収束していると判定すると、ステップs7に進む。このステップs5は、判定出力工程に相当する。
ステップs6では、演算手段24は、たとえば遺伝的アルゴリズムによって、前記パラメータを修正して再度設定し、ステップs2に進む。このようにステップs5の判定出力工程で収束していないと判定する場合、前記パラメータを修正して再度設定し、ステップs2の前記翼型定義工程からステップs5の判定出力工程までを繰返す。このようにステップs2からステップs5までを繰返す工程が、繰返し工程に相当する。
このようなステップs1からステップs6までの工程を含んで、静解析を用いた自動最適設計による翼型設計の工程が構成され、ステップs5で最適値に収束していると判定する場合、その翼型を、静解析を用いた自動最適設計による翼型設計の工程における設計翼型、つまり静的性能の評価に基づく設計翼型として結果出力する。このようなステップs1〜s6の工程は、いわゆる自動最適設計法の手順である。つまり本実施の形態は、パラメータを設定して翼型を定義し、その翼型の評価を、パラメータを修正しながら繰返すことによって、最適な翼型を導出す翼型の自動最適設計法における翼型の評価法として、ステップs4のような評価指標を用いる性能評価を新たに採用するものである。これによって、好適な評価に基づいて翼型を設計することができ、好適な翼型を設計することができる。
ステップs7では、演算手段24は、ステップs5で、最適値に収束すると判定され、得られる設計翼型に対して、動的CFD解析を行い、翼型の動的性能を求め、ステップs8に進む。ステップs8では、演算手段24は、ステップs7で求められる動的性能が良好か否か、具体的には必要性能を満たしているか否かを判定する。ステップs8で判定される動的性能に関する必要性能は、たとえば設計動作を開始する前に、パラメータの初期値とともに入力手段21によって入力される。ステップs8で、動的性能が良好であると判定すると、ステップs9に進み、動的性能が良好ではないと判定すると、ステップs1に進む。
ステップs9では、演算手段24は、定義されている翼型を用いて、3次元のロータを定義し、ステップs10に進む。ステップs10では、演算手段24は、ステップs9で定義されるロータに対して、3次元CFD解析を行い、ロータの3次元的性能を求め、ステップs11に進む。ステップs11では、演算手段24は、ステップs10で求められる3次元的性能が良好か否か、具体的には必要性能を満たしているか否かを判定する。ステップs11で判定される3次元性能に関する必要性能は、たとえば設計動作を開始する前に、パラメータの初期値とともに入力手段21によって入力される。ステップs11で、3次元的性能が良好であると判定すると、ステップs12に進み、設計動作を終了し、3次元的性能が良好ではないと判定すると、ステップs1に進む。
ステップs8またはステップs11からステップs1に進んだ場合、ステップs1におけるパラメータ初期化は、設計動作をスタートして最初にパラメータを初期化する場合と同様の初期化であってもよいし、ステップs8から移行する場合、ステップs7の結果に基づいて初期値を新たに演算して求めるようにしてもよいし、ステップs11から移行する場合、ステップs10の結果に基づいて初期値を新たに演算して求めるようにしてもよい。
このように本実施の形態では、静的CFD解析に加えて、ステップs7〜s11の動的CFD解析および3次元CFD解析によって、性能が確認されるので、より好適な翼型を設計することができる。ステップs7〜s11の工程は、必須の構成ではなく、本発明の実施の他の形態として、ステップs7〜s11を備えない構成であってもよい。
図6は、低速域における三分力特性を示すグラフである。図7は、高速域における三分力特性を示すグラフである。三分力特性は、揚力係数CL、抵抗係数CDおよびモーメント係数CMである。モーメント係数CMは、ブレードが受けるモーメントを表す係数である。図6には、対気速度Vaが、M=0.35の場合の三分力特性を示し、図7には、対気速度Vaが、M=0.75である場合の三分力特性を示す。図6(1)および図7(1)には、翼型がNACA0012である場合の三分力特性を示し、図6(2)および図7(2)には、翼型がVR−7である場合の三分力特性を示す。図6および図7において、各線40〜47は、揚力係数CLを示し、各線50〜57は、抵抗係数CDを示し、各線60〜67は、モーメント係数CMを示し、破線70は、グラフにおける抵抗係数CDが0.03である位置を示す。
図6に例示する三分力特性から明らかなように、低速域では、迎角αがある迎角に達するまでは、迎角αの増加に伴って単調に揚力が増加するが、ある迎角で揚力が最大値を示す。これを最大揚力といい、また、そこでの揚力係数CDを最大揚力係数と呼び、記号ではCLmaxで表す。さらに迎角αが、最大揚力係数CLmaxを示す迎角α付近以上になると、迎角αの増加に伴って、抵抗係数CDが急増するとともに、モーメント係数CMが急変するので、揚力がこれ以上大きくならないだけではなく、一般にこれ以上の迎角αで翼を用いることはできない。
対気速度Vaを表すマッハ数Mの増大に伴なって、最大揚力係数CLmaxは徐々に低下する。図7に例示する三分力特性から明らかなように、翼型によって、多少、傾向は異なるが、最大揚力係数CLmaxに関して、M=約0.6以上の比較的高速の領域では、低速域でのような、ある迎角で明確な揚力の最大値を示すことはなくなり、一旦揚力が低下することもあるが、ある迎角以上になると、迎角増加とともに、揚力は徐々に上昇し、抵抗は急増、つまり抵抗係数CDは急増することがわかる。
流体現象としては、衝撃波が強くなり、それに伴なう衝撃失速が発生し、流れが不安定になって空気力が振動を始めることが知られており(バッフェットオンセット)、この点の揚力を表す揚力係数を、バフェット発生揚力係数CLbuffetといい、従来の技術で述べたように、高速域における翼の限界性能の指標として用いられている。バフェット発生揚力係数CLbuffetは、遷音速(M>約0.7)で空気力が非定常となる揚力係数でもある。CFDによる演算結果でも、高迎角では定常解に収束せず、振動を始めるので、このときの迎角および揚力が、最大揚力係数CLmaxに代えて用いられている場合もある。図6および図7では、各線41,43,45,47,51,53,55,57,61,63,65,67が、振動的な性質を示す領域であり、図6および図7では、平均値を示している。
図8は、抵抗発散マッハ数MDDを示すグラフである。図8(1)には、翼型がNACA0012である場合の抵抗発散マッハ数MDDを示し、図8(2)には、翼型がVR−7である場合の抵抗発散マッハ数MDDを示す。図8において、各線71,72は、揚力係数CLが−0.2である場合の抵抗係数CDを示し、各線73,74は、揚力係数CLが0.0である場合の抵抗係数CDを示し、各線75,76は、揚力係数CLが0.2である場合の抵抗係数CDを示す。また図8において、点線77は、揚力係数CLが−0.2である場合の抵抗発散マッハ数MDDを示し、各点線78,79は、揚力係数CLが0.0である場合の抵抗発散マッハ数MDDを示し、各点線80,81は、揚力係数CLが0.2である場合の抵抗発散マッハ数MDDを示す。また破線83は、グラフにおける抵抗係数CDが0.03である位置を示す。
低速域から中速域での翼型の性能限界は、概ね、前述のような高迎角特性に現れるが、高速域、特にM=0.75を超える領域になると、迎角αよりも、マッハ数Mの増大による特性変化、典型的には抵抗係数CDの急増が顕著になる。そこで、揚力一定の条件(即ち迎角は揚力を設定値に調整するために変化させる)で、マッハ数Mを徐々に変えたときの特性が重要となり、マッハ数Mを増加させた場合にマッハ数Mの増加に対して抵抗が急増し始めるマッハ数Mを、抵抗発散マッハ数(Drag Divergence Mach Number)MDDといい、翼型の高速性能の指標として用いられている。抵抗発散マッハ数MDDは、M=0.6における抵抗係数CDに対して、抵抗係数CDに0.002増加するマッハ数である。
従来の技術の項で述べたように、最大揚力係数CLmax、バフェット発生揚力係数CLbuffetおよび抵抗発散マッハ数MDDを、評価指標として用いる方法には、いくつかの問題点がある。そこでこれらの問題点を解決し、より適切に幅広い条件での性能限界を表現し得る、性能指標を考える。各翼型、各マッハ数Mの三分力特性を見ると、最大揚力係数CLmax、バフェット発生揚力係数CLbuffetを示す迎角α以上となると、迎角αの増加に伴って、抵抗が急増していることがわかる。さらにどの翼型、どのマッハ数でも、最大揚力係数CLmax、バフェット発生揚力係数CLbuffetを示す場合の抵抗係数CDは、0.02以上0.1以下の範囲にあり、特に、0.03以上0.05以下の範囲に集中することを、本件発明者は確認している。図6〜図8の例では、最大揚力係数CLmax、バフェット発生揚力係数CLbuffetを示す場合の抵抗係数CDは、約0.03である。
したがって抵抗係数CDの設定値を、0.02以上0.1以下の範囲に、好ましくは0.03以上0.05以下に設定し、抵抗係数CDが設定値以上になるブレード11の迎角である指標迎角αnまたは前記抵抗係数CDが前記設定値以上になる揚力係数である指標揚力係数CLnを、ブレード11の翼型の評価指標とすることによって、翼型の性能を好適に評価することができる。抵抗の急増によって、これ以上の高速・高迎角は実用範囲から外れるので、前記指標迎角αnおよび指標指標揚力係数CLnは、単に最大揚力係数CLmax、バフェット発生揚力係数CLbuffetの代替というだけではなく、実用的な意味も大きい。最大揚力を示す迎角以上の迎角での揚力低下および抵抗急増の状態を「失速」と言い習わしているが、まさに抵抗急増によって速度が失われることを示している。
最大揚力係数CLmax、バフェット発生揚力係数CLbuffetを示す場合の抵抗係数CDは、翼型によって異なるものであるが、本件発明者によって、ほとんどの翼型について、0.02以上0.1以下の範囲に存在することが確認されている。したがって抵抗係数の設定値として0.02以上0.1以下の範囲の値に設定することによって、翼型の評価に用いることができる指標となる。特に、最大揚力係数CLmax、バフェット発生揚力係数CLbuffetを示す場合の抵抗係数CDが、0.03以上0.05以下に集中することが、本件発明者によって確認されており、抵抗係数CDの設定値を、0.03以上0.05以下の範囲の値に設定することによって、より好ましい指標を得ることができる。
また高速域でも、抵抗係数CDの設定値が、0.02以上0.1以下の範囲にある場合、その抵抗係数CDがその設定値となるマッハ数Mを、発散抵抗マッハ数MDDに代えて用いることができる。したがって前記指標迎角αnおよび指標指標揚力係数CLnは、低速域でも高速域でも、好適に用いることができる。しかも低速域から高速域にわたって同一の指標を用いることができるので、翼型毎に連続した1本の曲線で、翼型性能を表すことができる。
図9は、静的CFD解析の結果と動的CFD解析の結果とを示すグラフである。図9には、翼型がNACA0012の場合の、静的CFD解析による指標揚力係数CL300を線85で示し、動的CFD解析による揚力係数CLを実線86で示し、動的CFD解析による抵抗係数CDを破線87で示す。
図9に示すように、動的な揚力は、瞬間的には静的な最大揚力を超えることができるが、その状態がしばらく続くと、その直後に大きな剥離を生じ、抵抗急増、モーメント急変を招くことが分る。その他の翼型においても傾向は概ね共通しており、動的解析による揚力係数が、静的な翼型の性能限界を示す指標揚力係数CL300以下の範囲では、動的にも剥離による大きな性能低下はなく、短時間であれば動的状態では静的な限界揚力を超えることができることを、本件発明によって確認している。
これは静的な状態では充分な時間が経過すると、翼上面の逆圧力勾配に呼応して境界層が成長し、揚力が低下してしまうのに対し、動的状態では短時間の間は境界層が薄い状態で保たれるためであると考えられる。このように、指標揚力係数CL300は、静的な性能限界を示すだけでなく、動的失速が起きるか否かの判定基準として有効である。具体的には、動的な揚力係数が、指標揚力係数CL300を超える場合には、失速が発生し、超えない場合は、失速が発生しないと判定することができる。前述のステップs8の判定において、このような判定によって、動的性能が良好であるか否かを判定してもよい。
図10は、指標揚力係数CL300と、必要性能との関係を示すグラフである。図10には、翼型がNACA23012の場合の、静的CFD解析による指標揚力係数CL300を線90で示し、ヘリコプタ10が140kt(259.28km/h)で飛行するときに翼型に要求される必要性能を破線91で示し、ヘリコプタ10が160kt(296.32km/h)で飛行するときに翼型に要求される必要性能を一点鎖線92で示し、動的解析による動的CFD解析による抵抗係数CDを二点鎖線93で示す。
従来技術の設計法では、ヘリコプタ10の前進速度Vが250km/hの状態で用いることができる翼型の設計が限界とされていた。本発明では、前進速度V=300km/hで飛行する中型民間ヘリコプタの開発を目的として用いることも可能である。つまり前進速度V=300km/hで飛行するときに必要とされる性能と、翼型の指標揚力係数CL300とを比較検討し、必要性能を満たすような翼型を設計すればよい。
ヘリコプタ10が300km/hの前進速度の水平飛行している状態で、顕著な性能低下を示さないブレード11の翼型に必要な性能を調べるためには、飛行状態でブレードの翼型が曝されるマッハ数、揚力または迎角の変動状況が必要である。しかし、実機飛行状態ではブレードは弾性変形によって、剛体とは空気力が異なり、更にその空気力と駆動力、遠心力などを受けて極めて複雑な運動を行うので、その迎角や揚力の予測は難しい。そこで、ヘリコプタロータブレードのための近似理論(線形翼素理論)に基づく解析プログラムの出力を参考値として、必要性能を求める。
図10に示す140ktおよび160ktにおける必要性能は、その例として、現在市販されている中型民間ヘリコプタである商品名川崎BK−117C1型の140ktおよび160kt前進飛行時の96%スパン位置での翼断面に対する、マッハ数Mと揚力係数CLの計算値を示す。ただし、同機種は、実際には160ktで飛行するように構成されていないので、エンジン出力などを現状から外挿した近似結果である。また同機種は、翼型がNACA23012のブレード11の改修版を用いているので、翼型がNACA23012である場合の指標揚力係数CL300を示す。
必要性能が、指標揚力係数CL300よりも小さい値の領域、つまり左下側の領域に収まれば、その翼型は、必要性能を満たし、必要性能が、指標揚力CL300よりも大きい値の領域、つまり右上側の領域にはみ出していれば、その翼型は、必要性能を満たしていない。図10に示す例では、140ktで飛行するときの必要性能は、翼型NACA23012の指標揚力係数CL300よりも左下側の領域にあり、性能限界の範囲内に収まっているが、160ktで飛行するときの必要性能は、翼型NACA23012の指標揚力係数CL300よりも右上側の領域にはみ出し、性能限界を超えている。このように必要性能を満たすか否かを判定することができる。
図5に、8種類の翼型の指標揚力係数CL300とともに、160ktで飛行するときの必要性能を示しているが、図5に例示した各翼型では、160ktで飛行するときの必要性能を満たしていない。しかしM=約0.45以上では、いずれかの翼型の指標揚力係数CL300が、160ktで飛行するときの必要性能を上回っているので、適切な設計によって必要性能を満足する翼型を作り上げることは可能と考えられる。つまり、本実施の形態の設計方法によって、指標揚力係数CL300を用いて、翼型の評価をしながら、160kt(約300km/h)で飛行するときの必要性能を満足する翼型、160kt(約300km/h)で飛行するときの必要性能に可能な限り近い性能を有する高性能の翼型を設計することができる。このとき動特性を考慮すれば、さらに高性能の高性能の翼型を設計することができるようになる。
このように指標揚力係数CLnは、ブレード11が用いられる対気速度Vaの幅広いマッハ数(速度域)について、翼型の性能限界を統一的に表現することができる。また動的失速が発生しない範囲の、動的な翼型性能は同じマッハ数、迎角での静的CFD解析から、ほぼ予測可能である。また指標揚力係数CLnは、動的失速を生じるか否かの判断に用いることができる。動的失速が生じると、抵抗急増およびモーメント急変を生じるので、第1の設計目標としては、指標揚力係数CLnが高くなるように設計し、運用範囲で必要性能がそれを超えないようにすることによって、高性能かつ必要性の満たす翼型を設計することができる。
本実施の形態によれば、抵抗係数CDが設定値以上となる揚力係数である指標揚力係数CLnを静的解析によって求め、その指標揚力係数CLnを、ブレード11の翼型の性能を評価するための評価指標として用いる。この指標揚力係数CLnは、ブレード11が実際に用いられると想定される相対速度Vaの全域にわたって得られる指標である。したがってこの指標揚力係数CLnを用いることによって、ブレード11が実際に用いられると想定される相対速度Vaの全域にわたって、1つの評価指標で翼型を評価することができ、翼型の静特性を好適に評価することができる。
また指標揚力係数CLnは、動的解析によって得られる結果に基づいて、動的失速が生じるか否かの判定のしきい値としても用いることができる。これによって指標揚力係数CLnは、静特性を表す指標として用いることができるだけでなく、翼型の動特性を推測するために用いることが可能である。したがって指標揚力係数CLnは、相対速度Vaおよび迎角αの動的変化を考慮した翼型の評価にも利用可能であり、高い有用性を有している。
また具体的には、指標揚力係数CLnとして、抵抗係数CDが、0.02以上0.1以下の範囲内に設定される揚力係数が用いられる。揚力係数が最大となる迎角およびバフェットが発生する迎角よりも迎角が高くなると、迎角の増加に伴って抵抗値が急激に増加する傾向を有している。この抵抗値の急増が始まる抵抗係数CDは、前記0.02以上0.1以下範囲内に存在するので、設定値を前記0.02以上0.1以下範囲内に設定することによって、最大揚力係数CLmaxおよびバフェット発生揚力係数CLbuffetを考慮した評価が可能になる。
さらに抵抗値の急増が始まる抵抗係数CDは、前記0.02以上0.1以下の範囲内のうち、特に0.03以上0.05以下の範囲内に集中している。したがって設定値を前記0.03以上0.05以下範囲内に設定することによって、さらに好適な指標となり、信頼性の高い評価が可能になる。
このように指標揚力係数CLnを用いる評価は、明確でかつ容易な評価となるので、自動最適設計法に組込み、好適な評価に基づいて翼型を設計することができ、好適な翼型を設計することができる。従来の技術では不可能であった高性能の翼型の設計も可能になる。しかも指標揚力係数CLnを用いる評価法は、汎用的なので、翼型についてのあらゆる目的の改良に利用できるが、特に高速性能およびホバリング性能の向上に大きな効果を発揮することができる。
また高速域で重要なモーメント変化に関しては、動特性と静特性の一致が良いので、静的解析の結果を用いて評価し、できるだけモーメント変化の少ない翼型を選ぶようにすれば、さらに好ましい翼型の設計が可能になる。
前述の実施の形態は、本発明の例示に過ぎず、構成を変更することができる。前述の実施の形態では、指標揚力係数CLnとして、抵抗係数CDが0.03である場合の揚力係数CL300が用いられたけれども、抵抗係数CDが他の設定値、たとえば0.04、0.05などである揚力係数を用いるようにしてもよい。抵抗係数CDが0.03以上0.05以下の範囲にあるときには、同様に信頼性の高い評価が可能である。抵抗係数CDの設定値は、0.03以上0.05以下の範囲外で、0.02以上0.1以下の範囲内で設定するようにしてもよいし、0.02未満および0.1を超える値に設定するようにしてもよい。
また評価指標として、指標揚力係数CLnに代えて、抵抗係数CDが設定値以上となる迎角である指標迎角αnを用いるようにしてもよい。指標迎角αnは、指標揚力係数CLnと同様に用いることができ、指標揚力係数CLnを用いる場合と同様の効果を達成することができる。指標迎角αnにおける抵抗係数CDが設定値は、指標揚力係数CLnの場合の設定値と同一の範囲の設定値を用いることが可能である。たとえば抵抗係数CDが0.05以上となる迎角(指標迎角)α500を用いることが可能であり、同様の効果を得ることができる。
さらに評価および設計の対象となる翼型は、ヘリコプタのロータブレードの翼型に限定されることはなく、他のブレード(翼)の翼型、プロペラの翼型(断面形状)を含む。プロペラもブレードに含まれる。
本発明の実施の一形態のブレード翼型の性能評価方法を用いるブレード翼型の設計方法を示すフローチャートである。 図1の設計方法を実行する設計装置20を示すブロック図である。 ヘリコプタ10の前進飛行時におけるブレード11の対気速度分布を示す平面図である。 ブレード3の迎角分布を示す図である。 抵抗係数CDが0.03である場合の揚力係数を表す指標揚力係数CL300を示すグラフである。 低速域における三分力特性を示すグラフである。 高速域における三分力特性を示すグラフである。 抵抗発散マッハ数MDDを示すグラフである。 静的CFD解析の結果と動的CFD解析の結果とを示すグラフである。 指標揚力係数CL300と、必要性能との関係を示すグラフである。 従来の技術の翼型の性能評価に用いられる指標を示すグラフである。
符号の説明
10 ヘリコプタ
11 ブレード
20 設計装置
21 入力手段
22 記憶手段
23 外部記録手段
24 演算手段
25 出力手段

Claims (1)

  1. ブレードの翼型を定義するパラメータを初期設定する初期設定工程と、
    設定されるパラメータによって翼型を定義する翼型定義工程と、
    定義される翼型の性能を、ブレードを一様気流中に配置した場合の抵抗係数が0.02以上0.1以下になるブレードの迎角または前記抵抗係数が0.02以上0.1以下になる揚力係数を、ブレードの翼型の評価指標として、静的解析によって求め、この求めた評価指標を用いてブレードの翼型の性能を評価する性能判断工程と、
    翼型の性能判断結果に基づいて、翼型の性能が最適値に収束しているか否かを判定し、最適値に収束していると判定する場合、その翼型を設計翼型として出力する判定出力工程と、
    判定出力工程で、収束していないと判定する場合、前記パラメータを修正して設定し、前記翼型定義工程から判定出力工程までを繰返す繰返し工程とを備えることを特徴とするブレード翼型の設計方法。
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