JP4132708B2 - レーザ光源装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、可干渉性の高いレーザ光を光源として用いる光学系において、複数の不規則な配列のパターンを有するマスクとそのマスクを揺動させる駆動手段とからなるスペックル低減に代表される干渉性対策装置を備えたレーザ光源装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
可干渉の高いレーザを光源として用いる光学系には、画像等の情報の表示を目的としたもの、また物理・化学測定を目的にしたものなどがある。しかし、どのような光学系においても、可干渉性の高いレーザを用いれば、スペックルあるいは干渉縞等の可干渉性の高さ故の現象が生じる。
【0003】
物理・化学測定を目的にした光学系では、スペックル干渉計のようにスペックル自体を測定に用いるものもあるが、画像の表示を目的とする光学系では、スペックルや干渉縞は画像劣化を引き起こす大きな原因になる。
【0004】
光源として可干渉性の高いレーザを用いる限り、特にスペックルの出現は避けることができず、画像の表示を目的とした多くの表示装置にはスペックル低減装置が備えられている。このため以下では干渉性対策に関してはスペックルを中心に述べる。
【0005】
スペックルは、細かな粒子の集合として、観察者の目に捉えられる。このスペックルは、パターンのある表面に可干渉性の高い光が照射されたときに現れる。たとえば、画像表示装置の一つであるプロジェクターでは、スクリーンの表面凹凸のパターンにより、スペックルが生じる。
【0006】
ここで問題となるのは、プロジェクターによりスクリーン上に投影された画像とスクリーンのパターンにより生じたスペックルとが重なることであり、観察者は、画像とスペックルの重なった見づらい画像を見る。これは、深刻な画像劣化の問題である。
【0007】
このスペックルを低減する古典的な方法として、スクリーン自体を高速で揺動させる方法がある。スクリーンが揺動すれば、スクリーン上のスペックルも揺動し、その揺動の速さが充分高速であれば、観察者の目には、スペックルの粒子は粒子として捉えきれず、スペックルが低減あるいは消失したように見える。
【0008】
しかし、この方法は、スクリーン全体を揺動させるため、電力を多量に消費すること、また揺動させる速度に高速度が要求されるため、現実的でないことが指摘されていた。このため、スクリーンを除く光学系のいずれかの場所でスペックル低減手段を設置する必要がある。
【0009】
また、近年プロジェクター等の画像表示装置自体は小型化されてきており、このため、スペックル低減手段も小型可、さらに低コスト化が可能でなければならない。
【0010】
特開平6−208089号公報では、スリガラス等の拡散素子を用い、それを回転させることによりスペックルを低減させる装置を設けた画像表示装置について述べている。
【0011】
このスペックル低減手段は、光源とスクリーンとの間においた拡散素子により、拡散素子上で既にスペックルを発生させ、それをスクリーンに投影し、この拡散素子を高速で回転させ、スクリーン上のスペックルを動かし、回転速度が充分速ければ、観察者の目にスペックルが低減したように見えさせるものである。これは、観察者の目には、運動する画像が短時間のうちに重ね合わされ、平均化された画像として映るためである。
【0012】
ここで、回転速度は30−40rpmで観察者はスペックルを認識できず、約100rpmあれば充分であり、これ以上であっても電力を消費するだけであることが記されている。ここで、拡散素子の大きさに関して述べられていないが、たとえば、市販の直径5cmのスリガラスを使用し、その最も外側にレーザが照射されたとし、これを40rpmで揺動させたとき、その速度はたかだか、時速0。38kmであり、100rpmであっても時速0.94kmであり、非常に低速でよいことがわかる。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、拡散素子としてスリガラスを用いることは、表面の粗さ(凹凸)、や拡散素子の大きさ(縦、横、厚み)に制限を与えてしまう。市販のものを使うとなるとなおさら制限され、特別仕様のものを作成するとなると高コスト化につながる。表面粗さに関しては、表面処理に使う研磨粒子のサイズで#120から#1200程度のものがあり、選択の幅があるが、粗さは誤差の範囲内で均一である。
【0014】
表面粗さに関しては、恣意的で誤差以上のばらつきがあったほうが好ましい。拡散素子の縦横の大きさについては、数cmから数10cm程度のもの市販されているが、装置の小型化をはかる上ではこの大きさでは不利であり、1cm以下の大きさが好ましい。また、厚みも含めて、小さく、薄くしたほうが、拡散素子の重さが軽くなり、揺動させるうえで、省電力化につながる。
【0015】
拡散素子の揺動の方法としては、高速であれば回転のような簡単な揺動だけで充分である、しかし、回転速度が遅ければ、観察者は運動するスペックルの軌跡を線として捉える可能性がある。これは画像を見る上で障害となる。この障害を取り除くためには、揺動の速度を早くするか、複雑な揺動を導入する、また複数の揺動を組み合わせるのが好ましい。
【0016】
しかしながら、これらは、駆動装置に依存する。揺動の速度を早くすれば、電力がそれだけ必要となり、単純な構成を持たない複雑な揺動が可能な装置を導入すれば、装置の大型化、高コスト化につながる。
【0017】
また、上述の拡散素子を用いたスペックルを低減させる方法以外の方法としては、レーザ光の可干渉距離を変える光学素子を使う方法がある。特開平11−344683号によれば、入射した可干渉性の高いレーザ光を、複数の反射鏡を用いた光学素子により、分岐させ、分岐させる場所により、光路長が異なるようにし、可干渉性を下げるスペックルの低減手段が述べられている。
【0018】
しかしながら、このような光学素子を用いる方法では、光学素子の形状が複雑になりかねず、高度な加工技術が必要であり、高コストが予想される。また光学素子の形状は、ビームが入射する方向に関しては、入射ビームの大きさ程度になるが、それと直交するビームを分岐させる方向では、設置する反射鏡の数に比例した大きさが必要でなる。
【0019】
また、より良く干渉距離を変えるには、多数の反射鏡が必要となる。このため、装置の小型化には向かない。また、このような光学素子は固定されるため、効率的なスペックル低減は望めない。また、レーザを光源として用いた画像表示装置においては、スペックル低減を代表として、干渉性対策が課題である。
【0020】
本発明は、これらの問題点を解決するものであって、レーザ光源と干渉性対策手段を一体と捉えた、効率良く干渉性対策が実施でき、複雑な機構や加工を必要としない、小型化、低コスト化、省電力化がはかれるレーザ光源装置を提供することを目的とする。
【0021】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1のレーザ光源装置は、少なくとも一つのレーザ光源と、前記レーザ光源からの放射光の光路上に不規則な配列を具備し、大きさが前記レーザ光源の波長以上である複数の開口パターンの配列が異なる二枚のマスクと、前記二枚のマスクを不規則に振動させる駆動手段とを備え、前記二枚のマスクは、同時に前記レーザ光源からの放射光が照射されないよう配置され、前記駆動手段は、前記二枚のマスクを直線上を往復し、交互に入れ替わるよう駆動することにより前記レーザ光源からの放射光の位相をずらすことを特徴とする。
【0022】
また、この発明の請求項2にかかるレーザ光源装置は、前記マスクの面積が前記レーザ光源からの放射光の断面積以上であり、前記マスク上への前記放射光の照射部分のなかに、前記パターンが常に複数存在するように、前記パターンの配置と前記駆動手段とを設けたことを特徴とする。
【0023】
また、この発明の請求項3にかかるレーザ光源装置は、前記複数のパターンの形状が矩形あるいは円形であるマスクを設けたことを特徴とする。
【0024】
また、この発明の請求項4にかかるレーザ光源装置は、2種以上の大きさで構成される前記複数のパターンを有するマスクを設けたことを特徴とする。
【0031】
このようにして、レーザのように可干渉性の高い光を光源として用い、スペックル等による画像劣化が問題となる画像表示装置などの装置において、加工が容易な複数の不規則配列をしたパターンを持つマスクを有した効率良くスペックルを低減できるレーザ光源装置を提供することができる。
【0032】
また、レーザのように可干渉性の高い光を光源として用い、スペックル等による画像劣化が問題となる画像表示装置などの装置において、サイズが最低ビーム断面積以上であるマスクを有し、このため装置の小型化がはかれ、またビームのなかに常に複数のパターンの数が存在するため、効率的にスペックルを低減できるレーザ光源装置を提供することができる。
【0033】
また、光学素子の加工において、素子形状が複雑になると高度な加工技術が要求され、加工上の障害となり得るが、形状が簡単な円形あるいは矩形のパターンであるため、加工が容易で低コスト化のはかれるレーザ光源装置を提供することができる。
【0034】
また、パターンの大きさが一定でそれがレーザの波長よりも大きいときに、スクリーン上でのスペックルの強度分布の偏りが生じるためスペックル低減効率が低い問題に対して、それとは別の大きさを持つパターンを導入することにより、効率的にスペックルを低減でき、低コスト化のはかれるレーザ光源装置を提供することができる。
【0035】
また、駆動手段が複雑であれば、装置の大型化、高コスト化、電力の浪費という問題が生じることに対して、揺動の方法が簡単な直線運動であるため装置の小型化、低コスト化、省電力化のはかれるレーザ光源装置を提供することができる。
【0036】
また、揺動の方法が簡単な回転である駆動手段であるため、装置の小型化、低コスト化、省電力化のはかれるレーザ光源装置を提供することができる。
【0037】
また、揺動が単純な運動であればスペックルの低減効率が悪いという問題に対して、揺動が小刻みな振動であるため、スペックルの変化が速く、効率良くスペックルを低減できるレーザ光源装置を提供することができる。
【0038】
また、揺動が単純であればスペックルの低減効率が悪いという問題に対して、1枚のマスクに対して2種類の揺動が可能な駆動手段を有し、効率良くスペックルを低減でき、装置の小型化がはかれるレーザ光源装置を提供することができる。
【0039】
また、揺動が単純であるとスペックル低減効率が悪いという問題に対して、二枚以上のパターンの不規則配列が異なるマスクを用いることにより、スペックルをより効率良く低減でき、省電力化のはかれるレーザ光源装置を提供することができる。
【0040】
また、揺動が単純であるとスペックル低減効率が悪いという問題に対して、二枚以上のマスクを用いさらに二種の方法で動揺させることにより、さらに効率的にスペックルを低減できるレーザ光源装置を提供することができる。
【0041】
【発明の実施の形態】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかるレーザ光源装置の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0042】
本発明の実施の形態におけるレーザ光源装置の概念図を図1に示す。この図1においてレーザ光源1から出たレーザ光4が、駆動装置3のモータの回転と連動して回転しているマスク2に入射し、散乱光5がマスクから出射された様子を示している。ここで駆動装置3としてモータを想定しているが、モータに限定するものではなく、揺動6の方法が回転に限定されるものではない。
【0043】
また図2にマスク2の部分的拡大図を示す。この図2では矩形のパターン8が不規則の配列していることが示されている。また、ここではパターン8の一つの例として開口を用いている。
【0044】
しかし、パターン8は開口の限定されるものではなく、マスクの場所による厚みの違い、またマスクの場所による屈折率の違い、また平坦なマスク表面に薄膜をつけもの、マスクの材質がもともと持つ凹凸など、そのパターンにより回折が起こり、入射光の波長の位相がずれるようなものであればよい。
【0045】
パターンの大きさが光源の波長以上であることは、マスク2の加工上の問題である。たとえば、現在、緑色レーザとして良く用いられる2次高調波発生YAGレーザの波長は0.532μmであり、マスク2にパターンをつけるときに加工上の容易なのはこのサブミクロンの0.5μm前後である。
【0046】
入射光の位相をずらすには厚みの異なる薄膜をこの開口に付ければよいが開口一つ一つに薄膜をつけるのは面倒であるため、より簡単にはマスクの表面に数μmのパターンがあればよい。これはマスクの材質によってはもともとこの程度の表面パターンはあり、また細かな研磨材を使い表面に数μmのパターンをつけることもできる。
【0047】
マスクの材質としては、有機、無機材料を問わず使用でき、ガラスのように割れるおそれがなく、揺動に充分に耐え得るものであれば数10μm以下の薄さにすることが可能で、軽量化がはかれる。もし開口が規則正しく配列していれば、それは回折格子と同じことであり、規則正しい回折パターンがスクリーン上に現れ、回折パターン間には隙間があるため、揺動させたとしても、規則正しいパターンが動くが見づらい画像が現れる。
【0048】
開口は不規則配列でなければならない。この複数の開口が不規則に配列していることはスリガラスのモデルとして知られている(たとえば、応用光学I 鶴田匡夫著 応用物理学選書1 培風館)。すなわち、スペックルは不規則な開口による不規則な回折による結果として生じると考えることができる。このモデルによるスペックルは次の(1)式で与える。
【0049】
【数1】
【0050】
ここで、I(x',y')はスクリーン上の座標x',y'での光の強度、Io(x',y')は一つの開口によるスクリーン上の座標x',y'での強度、Nは開口の数、(ξ'i, η'i)、(ξ'j、η'j)はそれぞれマスク2の上のi番目とj番目の開口の原点の座標であり、fはマスクからスクリーンまでの距離である。
【0051】
この式にしたがって計算した、マスク後方にあるスクリーン上の1次元のスペックル9を図3に示す。この図3は、スクリーンに垂直方向の強度分布の断面を見ていることに相当し、これをスクリーンに垂直方向から見ると、この強度分布は粒子が集まっているように見える。
【0052】
ここで、開口の1辺の大きさは50μmで形状は正方形、この開口が200個がレーザ照射領域のなかにあり、0.532μmの緑のレーザであるとしている。また、各開口を通った光の位相は不規則に0から2πの間でずれるとしている。
【0053】
この位相のずれは(1)式の左辺に付け加えられる。スペックル9を開口の大きさを1辺50μmの正方形にしているが、開口の大きさも形状もこれに限定されるものではない。ただし、開口の大きさは、前記開口の大きさの条件を満たす範囲内で、小さい方か好ましい。これは、開口が大きくなると、スクリーン上のスペックル強度分布が、スクリーン中心付近に集中し、スクリーン周辺部ではスペックル強度が弱く、スペックル低減効果が下がるためである。
【0054】
この開口の原点の位置はマスク上での位置は乱数を発生させることにより決定している。不規則配列というのは、このように乱数の発生により決められる不規則さである。開口の大きさの1辺50μmは人の髪の毛の直径程度であり、この程度の大きさの加工であれば加工装置を使わずともたとえば手作業でも可能である。
【0055】
図3はある瞬間のスペックルに相当する。駆動装置によりマスク2を動かすと、このパターンも動くことになる。このある瞬間で観察者はスペックルの粒子の集合を見るが、マスク2を動かすことにより、スペックル9が動いた軌跡、すなわち線状の像を見ることになり、スペックル9をスペックル9として認識できない。
【0056】
今回の場合、一次元で説明であるが、二次元に拡張しても、線が面となり、観察者はスクリーン上でスペックルを認識できない。このようにしてスペックルを効率良く低減することができる。
【0057】
実施の形態2におけるレーザ光源装置において、マスク上のレーザ光の照射部分のなかに、パターンが2個以上であればスペックルを生じるが、このようにパターンの数が極端に少なければ、スクリーン上でのスペックル強度が弱くなり、スペックル自体を認識できず、効率的に揺動によるスペックル低減をおこなうことができない。
【0058】
たとえば、実施の形態1のパターンとしての開口の例で、開口の数を横軸に、スクリーン上のスペックルの強度を縦軸に取ったグラフを図9に示す。図9から、開口の数の増加とともにスペックル強度が増加することがわかる。この例では、100個以上で強度増加がなだらかになり、この数以上あることが好ましい。
【0059】
マスク上のレーザ光の照射部分のなかに、たとえば、常にN個のパターンが含まれるようにするには、マスク設計時にマスクの面積とレーザの断面積(マスクの面積/レーザの断面積、ただしマスクの面積の方が大)の比を求め、それにNを掛けた数だけパターンをマスクに備えればよい。
【0060】
このようにすれば、スペックルを効率的に低減できる。また、開口の数が2個から100個未満程度と少ないときは、揺動の手段として、小刻みな揺動、たとえば振動のようなものを使えばよい。このようにすれば、ビームの断面積中にある複数のパターンは、ビームの断面積から外れることなく揺動し、パターンが常に複数個存在するようにできる。
【0061】
したがって確実にスペックルを低減することができる。また、入射レーザの断面積より、マスクの面積が小さいと、生じるスペックルは常に一定となり、その一定のスペックルが動くだけで、スペックル低減にはあまり効率的ではない、ビーム断面積より大きければ、それだけ生じるスペックルのパターンが存在することになり、スペックルが複雑に変化し、より効率的にスペックルを低減することができる。
【0062】
また、たとえばビームの断面積が1mm2でその100倍の断面積100mm2のマスクを用いれば、正方形としては一辺約10mmのマスクでよく装置の小型化がはかれる。
【0063】
また、実施の形態3におけるレーザ光源装置において、マスク上のパターンの形状を矩形あるいは円形にすることは、加工するときに複雑な形状のパターンよりも簡単に作成するためである。たとえば、50μm径の円形の開口であれば、先端がこの程度の大きさの針を用いても作成できる。このため、低コスト化がはかれる。
【0064】
また矩形あるいは円形の開口による回折はよく知られており、矩形の開口による回折は、シンク関数で表され、円形の開口による回折は、ベッセル関数で表される。これは(1)式のIo(x',y')に相当する。これと、開口の原点の座標とから、マスク作成前の段階で、生じるスペックルが計算でき、設計の段階でスペックル低減効果を予測できる利点もある。
【0065】
また、実施の形態4におけるレーザ光源装置において、同一の大きさでないパターンをマスクに導入することは、スクリーン上の強度分布を均一に近づけるためである。これは、たとえばもともと材質的に表面パターンのあるマスクで、そのパターンの大きさが、用いる光源の波長に比べて大きく、スクリーン上でのスペックルの強度分布が中心付近に集まっている場合に、このパターンの大きさよりも小さなパターンをこのマスクに導入することにより、スクリーン上のスペックルの強度分布を中心から外に広げることである。
【0066】
このように、スクリーン全体に渡り強度が均一であるほうが、マスクを揺動させる範囲が小さくてよく、省電力化がはかれる。また、光源の波長に比して大きいパターンを持つコストの安い材料を有効に使うことができ、低コスト化がはかれる。
【0067】
実施の形態5のレーザ光源装置の概念図を図4に示す。この図4は、外形が矩形のマスク2bを用い、揺動6aの方法が直線上での往復運動であることを示したものである。このようにマスク2bの形状が矩形であれば、矩形のマスク2bの一方の幅をビームの直径程度にまで小型化することが可能である。また、往復運動をおこなうためには、モータを一つと、モーターの回転を直線運動に変換する機構を設けた駆動装置3aがあればよく、装置の小型化また低コスト化、省電力化につながる。
【0068】
実施の形態6のレーザ光源装置の概念図は前記の図1に示したものである。マスク2を円運動させるには、駆動装置3としてモータが一つあればよくかつ、モータの回転が直接マスクの回転となるため、揺動6の手段としては簡単である。このため、駆動装置3は非常に簡素化できる。よって、装置自体の小型化、低コスト化、また省電力化につながる。
【0069】
実施の形態7における、レーザ光源装置の概念図を図5に示す。マスク2cをマスク2cより少し大きなホルダー7の内側にいれ、ホルダー7の内側には、マスク2cが揺動6bの振動で容易に動かせるだけの、隙間を持たせておく。このホルダー7自体は駆動装置3bに固定する。
【0070】
駆動装置3bとしては超音波発生機を用いれば、マスク2cに不規則な振動を与えることができる。これにより、スペックルパターンが不規則に動き、効率的にスペックルを低減できる。
【0071】
本実施の形態8における、レーザ光源装置を図6に示す。回転の軸11を固定せずに、回転の軸11自体も揺動させる機構を持たせたものである。ここでは、上記のホルダー7aの内側に隙間を持っておさまったマスク2dを、モータで2本のローラ10を回して、その2本のローラ10の上でホルダー7aとマスク2dとが回転することを示している。
【0072】
これは揺動6cである回転に加え、回転の軸11の揺動6dをも伴っていることになる。このときのスクリーン上でのスペックルの変化は単なる回転のときのそれと比べて回転の軸11も揺動6dする分だけ複雑であり、効率的にスペックルを低減でき、回転の軸を揺動させる装置を別に設けなくともよいため装置の小型化につながる。
【0073】
実施の形態9のレーザ光源装置において、二枚以上の複数のパターンの配列が異なるマスクを用いることは、よりスペックルを効率的に低減するためである。マスクが二枚の例を図7に示す。
【0074】
二枚のマスク2eには、同時にはレーザ光4fは照射されないものとし、それぞれのマスクの揺動6eの仕方は、たとえば、両方とも直線上往復し、二枚のマスク2eが交互に入れ替わるものである。駆動装置3fは2枚のマスク2eを、図7では上下方向に動かしている。
【0075】
また、複数のマスクを連動させておけば、一つの駆動機構、たとえば一つのモータで、複数のマスクを揺動させることができる。このため、省電力化がはかれる。
【0076】
実施の形態10におけるレーザ光源装置の概念図を図8に示す。ここでは3枚のマスク2fを用いることにより、スペックルの変化を複雑にしている。また駆動装置3gとしては、直線上の往復の揺動6fと振動の揺動6gが可能なものを用いている。この二種の揺動を同時におこなうことにより、スペックルの変化はさらに複雑に起こることになる。これによって、効率的にスペックルを低減できる。
【0077】
以上説明したように、本実施の形態によれば、レーザを光源として用いた画像標示装置においては、スペックル低減に代表される干渉性対策の課題に対して、レーザ光源と干渉性対策装置を一体と捉えた、レーザ光源装置を提供することができる。
【0078】
また、実施の形態1によれば、不規則な配列の複数のパターンを持つマスクが複雑なスペックルを形成し、それを揺動することによりスペックルを効率的に低減できるため、レーザ光源と干渉性対策装置を一体と捉えたレーザ光源装置を提供することができる。
【0079】
また、実施の形態2によれば、マスクの大きさが小さくて良いため装置の小型化がはかれ、ビームのなかに常に複数のパターンが存在するため効率的にスペックルを低減できるレーザ光源装置を提供することができる。
【0080】
また、実施の形態3によれば、形状が簡単な円形あるいは矩形のパターンであるためマスクの加工が容易なため、低コスト化のはかれるレーザ光源装置を提供することができる。
【0081】
また、実施の形態4によれば、マスクのパターンの大きさがを2種以上にすることによりスクリーン上でスペックル強度が金一に近づけられるマスクを備えているため、効率的にスペックルを低減でき、低コスト化のはかれるレーザ光源装置を提供することができる。
【0082】
また、実施の形態5によれば、揺動の方法が簡単な直線運動であるめ、装置の小型化、低コスト化、省電力化のはかれる、レーザ光源装置を提供することができる。
【0083】
また、実施の形態6によれば、揺動の方法が簡単な回転であるため、装置の小型化、低コスト化、省電力化のはかれるレーザ光源装置を提供することができる。
【0084】
また、実施の形態7によれば、揺動の方法が振動であり、複雑な揺動ができるため、効率良くスペックルを低減できるレーザ光源装置を提供できる。
【0085】
また、実施の形態8によれば、揺動の手段を2種類用いているため、効率のよいスペックル低減ができ、装置の小型化がはかれるレーザ光源装置を提供できる。
【0086】
また、実施の形態9によれば、二枚以上のマスクを用いることにより、スペックルを効率良く低減でき、また駆動手段は一つで済むため省電力化のはかれるレーザ光源装置を提供することができる。
【0087】
また、実施の形態10によれば、二枚以上のマスクを用いさらに二種類の動揺の方法を同時におこなうことにより、効率良くスペックルを低減できるレーザ光源装置を提供することことができる。
【0088】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に記載の発明によれば、不規則な配列の複数のパターンを持つマスクが複雑なスペックルを形成し、それを振動させることによりスペックルを効率的に低減できるため、レーザ光源と干渉性対策装置を一体と捉えたレーザ光源装置が得られる。特に、二枚以上のマスクを用いることにより、スペックルを効率良く低減でき、また駆動手段は一つで済むため省電力化のはかれるレーザ光源装置が得られるという効果を奏する。
【0089】
また、請求項2に記載の発明によれば、マスクの大きさが小さくて良いため装置の小型化がはかれ、ビームのなかに常に複数のパターンが存在するため効率的にスペックルを低減できるレーザ光源装置が得られるという効果を奏する。
【0090】
また、請求項3に記載の発明によれば、形状が簡単な円形あるいは矩形のパターンであるためマスクの加工が容易なため、低コスト化のはかれるレーザ光源装置が得られるという効果を奏する。
【0091】
また、請求項4に記載の発明によれば、マスクのパターンの大きさがを2種以上にすることによりスクリーン上でスペックル強度が金一に近づけられるマスクを備えているため、効率的にスペックルを低減でき、低コスト化のはかれるレーザ光源装置が得られるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態におけるレーザ光源装置の概念図である。
【図2】この発明の実施の形態におけるレーザ光源装置のマスクの部分的拡大図である。
【図3】この発明の実施の形態におけるレーザ光源装置のマスク後方にあるスクリーン上の1次元のスペックルを示す説明図である。
【図4】この発明の実施の形態5におけるレーザ光源装置の概念図である。
【図5】この発明の実施の形態7におけるレーザ光源装置の概念図である。
【図6】この発明の実施の形態8におけるレーザ光源装置の概念図である。
【図7】この発明の実施の形態9におけるレーザ光源装置の概念図(マスクが二2枚)である。
【図8】この発明の実施の形態10におけるレーザ光源装置の概念図である。
【図9】この発明の実施の形態におけるレーザ光源装置の実施の形態1のパターンとしての開口の例を示す説明図(グラフ)である。
【符号の説明】
1 レーザ光源
2 マスク
3 駆動装置
4 レーザ光
5 散乱光
6 駆動
7 ホルダー
Claims (4)
- 少なくとも一つのレーザ光源と、
前記レーザ光源からの放射光の光路上に不規則な配列を具備し、大きさが前記レーザ光源の波長以上である複数の開口パターンの配列が異なる二枚のマスクと、
前記二枚のマスクを不規則に振動させる駆動手段とを備え、
前記二枚のマスクは、同時に前記レーザ光源からの放射光が照射されないよう配置され、前記駆動手段は、前記二枚のマスクを直線上を往復し、交互に入れ替わるよう駆動することにより前記レーザ光源からの放射光の位相をずらすことを特徴とするレーザ光源装置。 - 前記マスクの面積が前記レーザ光源からの放射光の断面積以上であり、
前記マスク上への前記放射光の照射部分のなかに、前記パターンが常に複数存在するように、前記パターンの配置と前記駆動手段とを設けたことを特徴とする請求項1に記載のレーザ光源装置。 - 前記複数のパターンの形状が矩形あるいは円形であるマスクを設けたことを特徴とする請求項1または2に記載のレーザ光源装置。
- 2種以上の大きさで構成される前記複数のパターンを有するマスクを設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載のレーザ光源装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
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