JP4130934B2 - スリッター用下刃溝付きローラ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、巻物で広幅な一枚の材料を長さ方向にそって走行させつつ複数枚の製品にスリットするために使用するスリッター用下刃溝付きローラに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
紙、プラスチックフイルム等の巻物で広幅な材料(以下、本明細書においては原反と称する)は、スリッターにおいて送り走行過程で長さ方向にそって所定の幅間隔毎に複数枚にスリットすることが行われている。
【0003】
従来のスリッターは、基本的には原反を巻いた巻出部、原反をスリットするスリット部、スリット後の製品を巻き取る巻取部およびスリット部の前後に配置したガイドローラ部から構成されている。
【0004】
原反は、ロールに巻き取った状態で巻出部に取付けられており、巻出部から引き出され、前部ガイドローラ部を通してスリット部に送られる。スリット部において原反は所定の幅間隔毎にスリットされ、このスリットされて複数に分割された製品は、後部ガイドローラ部を介してそれぞれが巻取部に取付けた個々の巻取軸に巻き取られるようになっている。
【0005】
原反を複数の製品にスリットするためには種々の手段が採用されているが、その中で、複数のカミソリ状の刃あるいは丸刃(上刃)と、外周面に等間隔で配置するとともに決められた幅を有する下刃溝を設けたローラとによって原反をスリットすることが行われている。
【0006】
このスリッター用の下刃溝付きローラはL/Dが15以下で、長さが約3〜9m、外径が200〜600mm、板厚が20〜40mmの大きさを有する金属(鉄)製円筒状の主軸と、外周面に所定のピッチ間隔でかつ所定幅の下刃用の溝を軸方向にそって形成した200〜300mmの長さを有し、板厚が10〜20mmで各溝の深さを1〜5mmとした金属(鉄)製円筒状の複数の溝付きピースとから成っている。
【0007】
各溝付きピースは主軸の片側から順次スライドさせ、主軸の全長に合わせて装着する。その後、主軸の両端に複数本のボルトを使用して固定した固定板と、複数個を突き合わせて一体化した溝付きピースの両端部に位置する溝付きピースとを複数本、例えば、6〜8本のボルトを使用して締め付け固定する。尚、固定板と溝付きピースとの端部間には固定リングを介在させてもよい。
【0008】
上記のように複数本のボルトによって複数の溝付きピースは主軸に対して組み立てられており、主軸の外周面にそって自由に回動あるいは滑動しないように締め付けられている。単体の溝付きピースは、複数個を主軸に組み込んで一体化されるが、この時、所定の幅間隔を有する多数の下刃用溝は、組み込まれた溝付きピースの全長にわたって所定のピッチ間隔毎に配置されるようになっている。
【0009】
上記のように主軸と溝付きピースとで構成する下刃溝付きローラは、両側の固定板の中央に突設した回転軸を図示しないスリッターの支持架台上に設けた軸受に取り付け、ローラを水平状に設置し、ローラ全体を円周方向へ高速回転するようにしてある。この場合、ローラは、モータのような回転駆動装置によって単独で回転させてもよく、あるいは、前記した他の機構(巻出部、巻取部、ガイドローラ部等)と連動させて同期回転させるようにしてもよい。
【0010】
このように支持架台に対して高速回転可能に水平状に設置した下刃溝付きローラに対して複数の上刃が、ローラに対して相対する位置関係を変えることができるように、かつ、ローラの軸方向にそって微調整しつつ移動できるように設置されており、各上刃の先端は対応する下刃用溝内に入るようになっている。
【0011】
各上刃を所定の間隔毎に配置するとともに上刃の先端を対応するローラの下刃用溝内に入れた状態でローラを回転させ、かつ、前記した巻出部から引き出した原反をローラと上刃間に案内し、ローラの回転に合わせて原反を走行させれば、原反は上刃によって切断され、上刃の配置幅間隔毎にスリットされた製品が形成されることになる。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
近年、紙、フイルム等のスリットされた製品は、産業、工業、流通業界等の広い分野において多用され、また、将来、多くの需要が見込まれている現状に鑑み、更に低価格で大量に生産する必要がある。
【0013】
このためには本発明を例えば、下刃溝付きローラのL/Dは25が可能であり、また、長さが5〜15mで外径が200〜600mmとして外径が細長くても長尺なものが使用可能となり、一台のスリッターで多くの製品を生産することができる。
【0014】
一方、従来の下刃溝付きローラを、例えば、回転速度を同じにして長尺なものとした場合、危険回転数の関係で本発明品に比べて外径を大きくする必要が生じ、後記する実施参考例で示すように重量で4.6倍、慣性モーメントでは10倍の値となる。
【0015】
このために、支持架台や回転駆動装置、その他の付帯設備等を堅牢性を有する大型なものとせざるを得ず、設備費が多額なものとなり、経済的な負担が大きいものである。また、主軸を軽量化するためにアルミ材を使用することも検討したが、剛性が低いために危険回転数が低く、適応できないことが分かった。
【0016】
また、従来の技術で長尺、低速の設備または短尺、高速の設備を使ってスリットされた製品を大量生産するためにはスリッターを数多く設置すればよいが、多くの台数のスリッターを設置するためには広大な場所を要し、多くのスリッターを保守、管理するための作業員が必要となり、設備費や人件費等が多額なものとならざるを得ず、やはり経済的な負担が大きいものであった。
【0017】
更に、溝付きピースは、鉄製のために錆が発生するので、高価なメッキが必要であった。下刃用溝の山と谷の全面をメッキすることは、メッキの特性であるエッジ部に集中してメッキ層が厚くなるため、メッキ後、多数の溝のエッジ部の研磨が必要になり、精度よくできないと同時に多大なコストが発生していた。
【0018】
また、従来、主軸と溝付きピースとを組み立てるに際しては、主軸と溝付きピース間に潤滑油を塗布し、溝付きピースを主軸に順次スライドさせつつ嵌め合わせていた。しかし、組み立て完了後に油を完全に除去することは非常に困難なことであり、残留していた潤滑油がしみ出し、製品が不良品となって多大な損害を生ずることがあった。仮に、潤滑油を使用せずに組み立て作業を行うと、主軸と溝付きピースとの間にカジリ現象及び錆を生じ、解体が不可能となっていた。
【0019】
更には、前記のように、各溝付きピースは、主軸の両端に取り付けた固定板からねじ込んだボルトの締め付けによって密着、固定しているが、溝付きピースの長さLと内径Dの比L/Dが1に近いものを数10個突き合わせて一体化した場合、各溝付きピースの垂直度が完全に0ではないために発生するローラの軸方向の曲がりの精度を維持するためには、両側からの締め付け力は溝付きピースの円周方向において経験による調整が必要である。
【0020】
このためには、両側の対称位置にある複数本のボルトの締め付けはローラの軸方向の曲がり量を確認しながら一本毎のボルトの締め付け力を微調整しつつ締め付けることが必要であり、組み立てには多大な時間と熟練した技術を要していた。
【0021】
本発明は、上記する従来のスリッターで使用していた下刃溝付きローラの種々の問題点に鑑み、高速回転させても撓み、歪み等が少なく、経済的効率の高いスリッター用の下刃溝付きローラを提供することを目的とするものである。
【0022】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために本発明のスリッター用下刃溝付きローラは、紙、プラスチックフイルム等の巻物で広幅な材料(原反)を長さ方向にそって複数の製品にスリットするスリッター用の下刃溝付きローラにおいて、主軸2は炭素繊維強化プラスチック(CFRP)製とするとともに主軸2に嵌め込む溝付きピース6a、6、6bは、キー溝加工した炭素繊維強化プラスチック(CFRP)製の内管3と、外周面に下刃用溝5を形成したステンレス製外管4とを完全密着した二重管構造とし、主軸2に嵌め込んだ複数個の溝付きピース6a、6、6bはキー10により相互に連結するようにしたものである。
【0023】
また、本発明のスリッター用下刃溝付きローラは、紙、プラスチックフイルム等の巻物で広幅な材料(原反)を長さ方向にそって複数の製品にスリットするスリッター用の下刃溝付きローラにおいて、主軸2は炭素繊維強化プラスチック(CFRP)製とし、この主軸2に嵌め込む溝付きピース6a、6、6bは、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)製の内管3と、外周面に下刃用溝5を形成したステンレス製外管4とを完全密着した二重管構造とし、主軸2の一端には溝付きピース6a、6、6bと同径の支持部材7を固定するとともに主軸2の他端には主軸2と同径の支持部材8を固定し、主軸2に嵌め込んだ複数個の溝付きピース6a、6、6bは、支持部材7と、支持部材8側から嵌め込んだ支持リング11、ゴムリング12および支持部材8に固定した固定用リング13間に締め付け、固定し、各溝付きピース6a、6、6bをキー10により連結するとともに支持部材7とこの支持部材7に接する溝付きピース6aとをキー10aにより回動固定し、また、支持リング11とこの支持リング11に接する溝付きピース6bとをキー10bにより回動固定するようにしたものである。
【0024】
更に、溝付きピース6a、6、6bを構成するステンレス製外管4は、ローラ1の軸方向への熱膨張が炭素繊維強化プラスチック(CFRP)製主軸2と異なることによる膨張差を弾性を有するゴムリング12により吸収可能としたものである。
【0025】
更にまた、支持部材8と固定用リング13とは周方向に配設した複数本のボルト14で連結するとともに各ボルト14間において固定用リング13にネジ込んだ締め付けボルト15の先端を支持部材8に圧接するとともにボルト15にはロックナット16を締め付けるようにしてゴムリング12の圧縮力を調整できるようにし、ゴムリング12の摩擦力により支持リング11が回動及び滑動しないようにしたものである。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、添付の図面に従って本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1ないし図5は、本発明スリッター用下刃溝付きローラの一実施形態を示すものであり、本発明の下刃溝付きローラ1は、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)で製作して軽量化を図り、かつ、高速回転に耐え得る高剛性を持たせ、長尺円筒状に形成した主軸2と、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)製内管3とステンレス製外管4とを完全密着した二重管構造とし、外管4の外周面に所定のピッチ間隔でかつ所定幅の下刃用溝5を形成した単体の円筒状溝付きピース6と、主軸2の両側に固定した円板状の金属製支持部材7、8とから成っている。
【0027】
そして、主軸2の長さ範囲内に精密に組み込んだ複数個の溝付きピース6相互はキーを介して連結するとともに両端部に位置する溝付きピース6と支持部材7および後記する支持リング11とをキーを介して回動固定し、全ての溝付きピース6は支持部材7および支持リング11間に一体的に固定されることになる。
【0028】
表面を平滑面に仕上げた主軸2は、全長が5〜15mの長さを有する長尺体であり、外径が200〜600mmの大きさを有している。また、単体の溝付きピース6は、内管3を外管4内にわずかなしまりばめにて密に嵌め合わせることにより一体化し、二重管を構成するようになっている。このため、内管3の外面と外管4の内面とは平滑な面に仕上げ、内管3と外管4とを嵌め合わせた時、しまりばめの面接触によって結合し、両者は逆方向へ回動あるいは滑動しないようになっている。尚、材質の熱膨張の関係で内管3の長さは外管4よりもわずかに短く形成してある。更に、内管3の内径は、主軸2の外径に対してわずかな隙間のあるすきまばめで嵌め込み可能な大きさとしてある。
【0029】
本発明下刃溝付きローラの主要構成要素は上記の通りであり、次に組み立て手順を説明する。
図1、図2に示すように、前記支持部材7、8はあらかじめ主軸2の両端に接着剤あるいはボルト等を使用して固定してある。一方の支持部材7の外径は、図2および図3に示すように、主軸2の外径よりも大きくし、かつ、溝付きピース6a、6、6bの外径と同じ径に形成してある。また、他方の支持部材8の外径は、図2および図3に示すように、主軸2の外径と同じ径に形成してある。
【0030】
従って、図3に示すように、溝付きピース6a、6、6bは支持部材8を通して主軸2に嵌め込み可能であり、複数の溝付きピース6は支持部材8側から主軸2に嵌め込み、支持部材7の方向にスライドさせればよい。その結果、図1および図3に示すように、最初に嵌め込んだ溝付きピース6aの端面は支持部材7の環状側面に当接して抜けることがなく、その後に嵌め込んだ複数の溝付きピース6a、6、6b相互の端面は突き合わされた状態となる。
【0031】
図4は単体の溝付きピース6a、6、6bを分解して示すものであり、溝付きピース6a、6、6bを構成する内管3の両側対称位置にはキー溝9が形成してあり、このキー溝9内には長方形状あるいは楕円形状としたキー10の長さの半分が入り得るようになっている。前記のように溝付きピース6a、6、6bを主軸2に嵌め込む際、隣接する溝付きピース6a、6、6b間のキー溝9内にキー10を差し込み、同様にして順次溝付きピース6a、6、6b嵌め込めば、図1に示すように全ての溝付きピース6a、6、6bはキー10を介して一連に連結固定されることになる。
【0032】
必要な個数の溝付きピース6a、6、6bを主軸2に嵌め込んだ後、図2、図3および図5に示すように、金属製の支持リング11および弾性を有するゴムリング12を支持部材8を通して主軸2に順に嵌め込み、最後に断面L字型とした金属製の固定用リング13を支持部材8に嵌め合わせ、固定用リング13の環状端面をゴムリング12の環状側面に付き合わせた状態で支持部材8と固定用リング13とを複数本、図5においては円周上に配設した8本のボルト14を使用して連結し、ゴムリング12を圧縮した状態で締め付ける。
【0033】
図1及び図2に示すように、溝付きピース6aと支持部材7とは、支持部材7に設けたキー10aで連結されている。更に、支持リング11と溝付きピース6bは支持リング11に設けたキー10bにより連結されており、支持リング11はゴムリング12の摩擦力により主軸2に対して回動しない。よって全ての溝付きピース6a、6、6bは、主軸2両端の支持部材7と支持リング11との間に連結され回動しない。
【0034】
従って、主軸2に嵌め込んだ複数の溝付きピース6a、6、6bは、支持部材7と、支持リング11、圧縮されたゴムリング12および固定用リング13との間に挟み込まれて固定状態となる。そして、ゴムリング12の伸びようとする弾性によって複数個の溝付きピース6は、支持部材7と支持リング11との間に圧縮状態で連結固定されることになる。
【0035】
上記のように支持部材8と固定用リング13とをボルト14で連結した後、図5に示すように、ボルト14間において固定用リング13に締め付け用ボルト15をネジ込み、ボルト15の先端を支持部材8の側面に圧接するとともにボルト15にはロックナット16を締め付け、支持部材8と固定用リング13との連結固定状態を維持する。
【0036】
複数の溝付きピース6a、6、6bは、主軸2の長さの範囲内、即ち、支持部材7と、支持リング11、ゴムリング12を介在させた固定用リング13との間に固定され、かつ、各溝付きピース6a、6、6bはキー10を介して連結固定してあるので、溝付きピース6a、6、6bは主軸2に対して自由に回動あるいは滑動することはない。
【0037】
上記のようにして主軸2に溝付きピース6a、6、6bを装着した時、主軸2と溝付きピース6a、6、6bとの長さは統一されたものとなっている。例えば、主軸2の全長を8100mmの長さとし、単体の溝付きピース6a、6、6bを300mmの長さとした時、主軸2に対して27個の溝付きピース6a、6、6bをセットすることになる。
【0038】
これは、主軸2を8100mm以外の長さにすることも、溝付きピース6a、6、6bの長さを変えたり、溝付きピース6a、6、6bの数を変えることで可能となる。そして、複数の溝付きピース6a、6、6b間に形成される所定の幅間隔を有する下刃用溝5は、セットした溝付きピース6a、6、6bの全長にわたって所定のピッチ間隔毎に配置されることになる。
【0039】
上記する下刃溝付きローラ1において使用する主軸2である炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の材質は、高剛性の炭素繊維が最適である。更には、要求物性に応じ、通常剛性の炭素繊維を使用することも可能である。これは、溝付きピース6a、6、6bを構成する内管3の材質も同様である。
【0040】
両支持部材7、8の中心部には水平外方向に回転軸17が突設してあるので、この回転軸17を図示しないスリッターの支持架台の軸受に取り付け、単独であるいは他の機構と同期連動させてローラ1を高速回転させればよく、従来と同じく、下刃溝付きローラ1と複数の上刃との間に原反を高速で走行させることにより、原反は複数枚の製品に分離されることになる。このような下刃溝付きローラ1と複数の上刃との位置関係やスリット作業等は従来と同じである。
【0041】
従来のスリッターで使用する下刃溝付きローラと、本発明による下刃溝付きローラとの対比において、【表1】は、ローラ単体の性能比較表、【表2】および【表3】は使用、取り扱い上の比較表、【表4】は経済的効果および複合的性能比較表を示すものである。
この結果、本発明下刃溝付きローラ1は、外径を大きくせず、長尺なものとしても高速回転が可能であり、広幅の原反を高速でスリットできる。また、ローラの外径、重量および慣性モーメントを低減でき、組付、分解等のメンテナンスも容易で職人を必要とせず、全体として経済的効果を高めることができる。
(以下、余白)
【0042】
【表1】
Figure 0004130934
(以下、余白)
【0043】
【表2】
Figure 0004130934
(以下、余白)
【0044】
【表3】
Figure 0004130934
(以下、余白)
【0045】
【表4】
Figure 0004130934
【0046】
【発明の効果】
以上、説明した本発明によれば、スリット用の下刃溝付きローラ1を構成する主軸2は炭素繊維強化プラスチック(CFRP)製としたことにより、全長を長尺なものとしても軽量であり、かつ、高剛性を有しており、自重によるタワミ現象を小さくでき、高速回転に耐えられるものである。
【0047】
そして、従来の鉄製のスリッター用下刃溝付きローラに比べて外径を大きくせず、長尺なものとしても高速回転が可能であり、広幅の原反を高速でスリットできる。このため、重量および慣性モーメントを低減でき、支持するための架台や回転駆動装置その他の付帯設備の小型化、軽量化が可能となり、設備費用が軽減され、回転駆動動力費用も軽減されることが分かり、全体として経済的効果を高めることができる。
【0048】
主軸2に嵌め込む単体の溝付きピース6a、6、6bは、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)製の内管3と、外周面に下刃用溝5を形成したステンレス製の外管4とのしまりばめによる二重管構造とし、更に、内管3を主軸2にわずかな隙間のすきまばめで嵌め込むことにより高精度で作業性のよい組み立てが可能となり、かつ、再組み立て時の精度の再現性も可能となった。
【0049】
溝付きピース6a、6、6bの外管4にステンレスを使うことで錆が発生しないため、従来のような狭い溝部に高価なメッキを施し、かつ、各溝毎に研磨を必要とする作業が不要となり、また、組み立てに潤滑油を使わないので、潤滑油のしみ出しによる製品汚れが発生し、多大な損失の起きる可能性がなくなった。
【0050】
更に、主軸2の一端側には、主軸2よりも大径とし、溝付きピース6a、6、6bと同径の支持部材7を固定するとともに他端側に主軸2と同径の支持部材8を固定し、複数の溝付きピース6a、6、6bは支持部材8側から主軸2に嵌め込み、その後、支持部材8側には支持リング11、ゴムリング12および固定用リング13を嵌め合わせ、固定用リング13と支持部材8とを複数本のボルト14で固定することにより、圧縮されたゴムリング12の弾性作用により溝付きピース6a、6、6bに対するボルト14の締め付け力を微調整する必要はなく、組み立てを短時間で容易に行うことができるようになった。
【0051】
隣接する溝付きピース6a、6、6bは、キー10によって連結するようにしたので全ての溝付きピース6a、6、6bは一体的に連結され、かつ、圧縮されたゴムリング12の弾性作用により各溝付きピース6a、6、6bは単独で回動あるいは滑動することがない。しかも、支持部材7および支持リング11とこれに対応する溝付きピース6a、6bとをキー10a、10bで回動固定することにより、支持部材7、支持リング11および全ての溝付きピース6a、6、6bは軸方向にそって回動固定されることになる。
【0052】
また、ボルト14間において固定用リング13にネジ込んだボルト15の先端を支持部材8に圧接するとともにボルト15にはロックナット16を締め付けることにより、ローラ1を高速回転させた時の振動によってボルト14が緩むようなことはない。
【0053】
更に、下刃溝付きローラ1を高速回転させつつ原反を複数枚の製品にスリットしている途中、ステンレス製の外管4は下刃溝付きローラ1の軸方向に熱膨張しても、その膨張はゴムリング12によって吸収されることになり、原反スリットに支障を生ずることはない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明下刃溝付きローラの一実施形態を示す全体の外観図である。
【図2】 本発明下刃溝付きローラに使用する主軸の斜視図である。
【図3】 本発明下刃溝付きローラの組み立て状態を示す断面図である。
【図4】 単体の溝付きピースを分解した状態の斜視図である。
【図5】 溝付きピースを締め付ける状態を示し、A−A線にそった要部の断面図である。
【符号の説明】
1 下刃溝付きローラ
2 主軸
3 内管
4 外管
5 下刃用溝
6 溝付きピース
6a 溝付きピース
6b 溝付きピース
7 支持部材
8 支持部材
9 キー溝
10 キー
10a キー
10b キー
11 支持リング
12 ゴムリング
13 固定用リング
14 ボルト
15 締め付けボルト
16 ロックナット
17 回転軸

Claims (4)

  1. 紙、プラスチックフイルム等の巻物で広幅な材料(原反)を長さ方向にそって複数の製品にスリットするスリッター用の下刃溝付きローラにおいて、主軸2は炭素繊維強化プラスチック(CFRP)製とするとともに主軸2に嵌め込む溝付きピース6a、6、6bは、キー溝加工した炭素繊維強化プラスチック(CFRP)製の内管3と、外周面に下刃用溝5を形成したステンレス製外管4とを完全密着した二重管構造とし、主軸2に嵌め込んだ複数個の溝付きピース6a、6、6bはキー10により相互に連結するようにしたことを特徴とするスリッター用下刃溝付きローラ。
  2. 紙、プラスチックフイルム等の巻物で広幅な材料(原反)を長さ方向にそって複数の製品にスリットするスリッター用の下刃溝付きローラにおいて、主軸2は炭素繊維強化プラスチック(CFRP)製とし、この主軸2に嵌め込む溝付きピース6a、6、6bは、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)製の内管3と、外周面に下刃用溝5を形成したステンレス製外管4とを完全密着した二重管構造とし、主軸2の一端には溝付きピース6a、6、6bと同径の支持部材7を固定するとともに主軸2の他端には主軸2と同径の支持部材8を固定し、主軸2に嵌め込んだ複数個の溝付きピース6a、6、6bは、支持部材7と、支持部材8側から嵌め込んだ支持リング11、ゴムリング12および支持部材8に固定した固定用リング13間に締め付け、固定し、各溝付きピース6a、6、6bをキー10により連結するとともに支持部材7とこの支持部材7に接する溝付きピース6aとをキー10aにより回動固定し、また、支持リング11とこの支持リング11に接する溝付きピース6bとをキー10bにより回動固定するようにしたことを特徴とするスリッター用下刃溝付きローラ。
  3. 溝付きピース6a、6、6bを構成するステンレス製外管4は、ローラ1の軸方向への熱膨張が炭素繊維強化プラスチック(CFRP)製主軸2と異なることによる膨張差を弾性を有するゴムリング12により吸収可能としたことを特徴とする請求項2に記載するスリッター用下刃溝付きローラ。
  4. 支持部材8と固定用リング13とは周方向に配設した複数本のボルト14で連結するとともに各ボルト14間において固定用リング13にネジ込んだ締め付けボルト15の先端を支持部材8に圧接するとともにボルト15にはロックナット16を締め付けるようにしてゴムリング12の圧縮力を調整できるようにし、ゴムリング12の摩擦力により支持リング11が回動及び滑動しないようにしたことを特徴とする請求項2に記載するスリッター用下刃溝付きローラ。
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