JP4130795B2 - 発光管、放電ランプ - Google Patents

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Description

本発明は、旋回軸廻りに旋回する旋回部が形成されている発光管、この発光管を備える放電ランプに関する。
省エネルギー時代を迎え、白熱電球に代替する光源として、ランプ効率が高く、しかも長寿命な放電ランプ、特に電球形蛍光ランプや蛍光ランプが注目されている。この電球形蛍光ランプ(以下、単に「ランプ」という。)や蛍光ランプは、発光管を構成するガラス管の内周面に蛍光膜が塗布されている。
蛍光膜は、通常、紫外線により照射されると、その膜厚方向において、ガラス管の外部へと放射される可視光線の量と同量の可視光線がガラス管の内部へと放射される。このガラス管の内部へと放射される可視光線は、ガラス管の横断面において反対側に対向する蛍光膜で、その一部が吸収され、吸収されずに残った可視光がガラス管の外部へと放射される。
内部へと放射される可視光線の量は、蛍光膜が厚いほど多くなり、これを利用して照射方向の輝度を向上させようとした放電ランプがある(例えば、特許文献1参照。)。
この放電ランプは、発光管を構成するガラス管が、その両端間の略中央に折り返し部を有し、この折り返し部から両端部に亘る部分が旋回軸廻りに2重に旋回する2重螺旋形状に形成されており、このガラス管の内周面に塗布される蛍光膜は、ガラス管の横断面において、螺旋形状の内周側に位置する部分(旋回軸に近い部分)では厚く、逆に螺旋形状の外周側に位置する部分では薄くなっている。つまり、旋回軸廻りに旋回しているガラス管の横断面の内周面であって、この横断面でのガラス管の中心を通りかつ旋回軸と略直交する方向に対向する2つの部位において、蛍光膜の厚みが、旋回軸に近い方が遠い方に比べて厚くなっている。
したがって、発光管全体で見れば、発光管から旋回軸に直交する方向であって旋回軸と反対側へと放射される可視光線は、ガラス管の横断面における旋回軸から遠い部位から放射される可視光線に、旋回軸に近い部位から旋回軸と反対側に放射される可視光が加わることとなり、旋回軸と直交する方向の照度が、他の方向の照度よりも向上することとなる。
特開平8−339781号公報
しかしながら、従来の発光管は、ガラス管に塗布されている蛍光膜の厚さは、そのガラス管の横断面において旋回軸に近い部位では厚く、逆に旋回軸に遠い部位では薄くなっているので、輝度が向上する方向は旋回軸と直交する方向となってしまう。
通常、ランプに装着されている発光管は、天井に設置された点灯具に装着されて使用されることが多く、この場合、発光管の折り返し部が下方を向いてしまうことになる。したがって、従来の発光管では、横方向の照度を向上させることができるものの、照度の必要な下方ではさほど明るくならないという問題がある。
本発明は、上記ような問題点を鑑みてなされたものであって、紫外線により蛍光膜から励起した可視光を有効に利用して下方の照度を向上させることができる発光管、放電ランプを提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明に係る発光管は、ガラス管の中間部に折り返し部を有し、前記ガラス管における前記折り返し部から少なくとも一方の端部までが旋回軸廻りに旋回していると共に、前記ガラス管の内周面に蛍光膜が塗布され、旋回部分のガラス管の横断面における内周面であって、当該横断面でのガラス管の中心を通り且つ前記旋回軸と平行な方向に対向する2つの部位において、塗布された蛍光膜の厚みが、折り返し部側より前記一方の端部側の方が厚いことを特徴としている。
この構成によれば、例えば、発光管を、その旋回軸は略上下方向で折り返し部を下にして発光(点灯)させると、旋回部分のガラス管の横断面における内周面であって折り返し部側の部位から放射される可視光線に、前記部位に対向する一方の端部側の部位から折り返し部側に放射される可視光が加わって、結果として発光管の旋回軸の方向と上下方向とを一致させると、発光管の下方の照度を向上させることができる。
さらに、前記旋回部分のガラス管の横断面において、前記旋回軸方向であって前記一方の端部側の部位に塗布されている蛍光膜は、前記折り返し部側から前記一方の端部側に近づくに従って厚くなっていることを特徴とする。これによって、発光管の下方の照度を向上させることができる。
しかも、前記ガラス管は、前記折り返し部から両端までの部分が前記旋回軸廻りに旋回する2重螺旋形状に形成されていることを特徴とする。
また、前記旋回部分に対応するガラス管の横断面において、前記旋回軸方向であって前記折り返し部側の内周面に塗布されている蛍光膜の単位面積当たりの質量が、2mg/cm2以上12mg/cm2以下の範囲内であることを特徴としている。これにより、ガラス管の横断面における折り返し部側の蛍光膜から放射される可視光を多くすることができる。従って、ガラス管の折り返し部を下方にすると、下方の照度を向上させることができると共に、発光管の発光光束も高めることができる。
一方、前記旋回部分に対応するガラス管の横断面において、前記旋回軸方向であって前記少なくとも一方の端部側の内周面に塗布されている蛍光膜の単位面積当たりの質量が、5mg/cm2以上30mg/cm2以下の範囲内であることを特徴とする。これにより、発光管の直下の照度を向上させることができると共に、発光管の発光光束も高めることができる。
また、前記蛍光膜は、三波長域用であることを特徴としている。
また、本発明に係る放電ランプは、上記構成の発光管を備える。
一方、本発明にかかる発光管の製造方法は、ガラス管を折り返し、その折り返された部分から少なくとも一方の端部までが旋回軸廻りに旋回する旋回部に形成されていると共に、当該ガラス管の内周面に蛍光体が塗布された発光管の製造方法であって、ガラス管を湾曲させて折り返し部と旋回部とを形成する工程と、当該形成されたガラス管の内部に蛍光膜用の懸濁液を注入する工程と、懸濁液が注入されているガラス管を、前記折り返し部が上になるように立設した状態で、内部の懸濁液を流出させる工程と、前記懸濁液を流出させたガラス管を、前記立設した状態で乾燥させる工程とを経てなされることを特徴としている。これにより、旋回部分のガラス管の横断面における内周面であって、この横断面でのガラス管の中心を通り且つ前記旋回軸と平行な方向に対向する2つの部位において、塗布された蛍光膜の厚みが、折り返し部側よりその対向側の方が厚い発光管を容易に得ることができる。
特に、前記ガラス管は、前記折り返し部から両端までの各部分が前記旋回軸廻りに旋回する2重螺旋形状に形成されていること特徴としている。
また、前記懸濁液は、前記ガラス管を当該折り返し部が上となるようにした状態で注入されていることを特徴とし、さらに、前記懸濁液の注入は、注入された懸濁液の先端が折り返し部を越えるまで行われることを特徴とする。このため、例えば、2重螺旋形状のガラス管内に注入された懸濁液を流出する際に、懸濁液内で発泡させることなく行え、しかも、そのままの姿勢で乾燥させることができる。
また、前記懸濁液の粘度が、4.5cP以上8.0cP以下の範囲内であることを特徴とする。これにより、ガラス管内に塗布された蛍光膜において、ガラス管の横断面において折り返し部側よりもその対向側の方が厚くできる。
さらに、前記ガラス管の内径が、5mm以上9mm以下の範囲であることを特徴とする。このようなガラス管の内径が小さいものでも、ガラス管の横断面において旋回軸方向に蛍光膜の厚みを不均一にできる。
本発明に係る発光管は、ガラス管に塗布された蛍光膜の厚みが、折り返し部側より一方の端部側の方が厚くなっている。このため、ガラス管の横断面において、旋回軸方向であって折り返し部と反対側の部位に塗布された蛍光膜で反射して折り返し部側に放射される可視光を増やすことができる。これにより、例えば、旋回軸の方向と上下方向と一致させると、下方の直下における照度を向上させることができる。
本発明に係る放電ランプは、上述の発光管を備えるため、例えば、旋回軸の方向と上下方向と一致させると、発光管の下方における照度を向上させることができる。
また、本発明に係る発光管の製造方法では、懸濁液が注入されているガラス管を、前記折り返し部が上になるように立設した状態で、内部の懸濁液を流出させて、立設した状態で乾燥させている。このため、旋回部分のガラス管の横断面における内周面であって、当該横断面でのガラス管の中心を通り且つ前記旋回軸と平行な方向に対向する2つの部位において、塗布された蛍光膜の厚みが、旋回軸方向で折り返し部と反対側が折り返し部側より厚くできる。これにより、ガラス管の横断面において、旋回軸方向であって折り返し部と反対側の部位に塗布された蛍光膜で反射して折り返し部側に放射される可視光を増やすことができる。
以下、本発明を電球形蛍光ランプに適用させた場合における実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
1.電球形蛍光ランプの構成について
図1は、本実施の形態に係る電球形蛍光ランプの一部を切り欠いた全体構成を示す正面図である。この電球形蛍光ランプ(以下、単に「ランプ1」という。)は、白熱電球60Wの代替用である12W品種である。
ランプ1は、同図に示すように、2重螺旋形状の発光管2と、この発光管2を点灯させるための電子安定器3と、電子安定器3を収納し且つ口金5を有するケース4と、発光管2を覆う外管バルブ6とを備えている。なお、発光管2は、ケース4のホルダ(支持体)41に支持されている。
図2は、発光管の内部の様子を説明するためにガラス管の一部を切り欠いた状態の正面図である。
発光管2は、図1及び図2に示すように、ガラス管9を湾曲させて形成され、このガラス管9は、その略中央の折り返し部91で折り返され、この折り返し部91から端部までが、ガラス管9の端部まで旋回軸A廻りに旋回している。つまり、湾曲成形されたガラス管9は、2つの旋回部92、93と、この2つの旋回部92、93を頂部(図1では、発光管の下端部となる。)で繋ぐ折り返し部91とからなる。
ここで、ガラス管9は、その管内径φiが略7.4mm、管外径φoが略9.0mmで、2つの旋回部92、93をあわせて、旋回軸A廻りを略4.5周旋回している。以下、旋回部92、93におけるガラス管を説明するのに、折り返し部91を始点とした周回数を用いることもある。
なお、ガラス管9の管内径φiは、5mm以上9mm以下が好ましい。これは、管内径φiが5mm未満になるとガラス管9内に後述の電極の設置が難しくなり、また、管内径φiが9mmより大きくなると発光管2が大きくなり、従来の白熱電球60Wよりも大きくなるからである。
折り返し部91から端部までの旋回部同士(例えば、旋回部92同士)における隣合うガラス管9のピッチP2tは20mmであり、また、旋回軸Aと平行な方向(この方向を、以下、「旋回軸方向」という。)に隣合う旋回部92と旋回部93とのガラス管9のピッチP1tは、10mmである。従って、旋回軸方向に隣合うガラス管9の間隔は略1mmである。この間隔は3mm以下が好ましい。これは、間隔が3mmより大きくなると、発光管2の全長が長くなると共に、隣合うガラス管が離れるため輝度ムラを生じるからである。なお、旋回部92、93は、旋回軸Aと直交方向に対して、例えば、14.5度(この角度を図1にαとして表示している)傾斜しながら旋回軸Aを旋回している。
2重螺旋形状の発光管2の全長(折り返し部から電極封着部側の端部までの寸法)は略65mmであり、最大外径φが略36.5mmである。発光管2の最大外径φは、30mm以上40mm以下が好ましい。これは、発光管2の最大外径φがこの範囲内であれば、従来の白熱電球と同様のA型の外管バルブ内に収まるからである。
また、旋回軸方向において、図2での下方をさすときは、その方向に発光管2の頂部があることから頂部側ともいい、逆に上方をさすときは、その方向で発光管の基部側がホルダ41に支持されていることから基部側ともいう。
ガラス管9の端部94、95には、電極7、8が封着されている。この電極7、8には、例えば、タングステン製のコイル電極71、81が用いられている。コイル電極71、81は、図2に示すように、ビーズガラス72、82により仮止めされた一対のリード線(図示省略)により支持(所謂、ビーズガラスマウント方式である。)されている。なお、ガラス管9は、例えば、ストロンチウム・バリウムシリケイトガラス等の軟質ガラスが用いられている。
ガラス管9の一方の端部(ここでは、95)には、図2に示すように、ガラス管9の内部を排気するための排気管96が電極7の装着時に併せて取着されている。なお、発光管2内における電極間距離は略400mmである。
ガラス管9の内周面には、図2に示すように、希土類の蛍光膜10が塗布されている。なお、塗布方法については後ほど説明する。この蛍光膜10には、赤、緑、青発光の3種類の発光体を混合したもの(三波長域用)が用いられている。
この蛍光膜10の厚みは、両旋回部92、93の各周を構成するガラス管9の横断面の内周面であって、この横断面でのガラス管9の中心を通り且つ旋回軸方向に対向する2つの部位(頂部側、基部側)において塗布された蛍光膜の厚みが、頂部側より基部側の方が厚くなっている。
さらに、各旋回部92、93におけるガラス管9の横断面の基部側の部位に塗布された蛍光膜は、折り返し部91から端部94、95に向かう(近づく)に従って徐々に厚くなっている。
逆に、各旋回部92、93におけるガラス管9の横断面の頂部側の部位に塗布された蛍光膜は、折り返し部91から端部94、95まで略同じ、或いは、折り返し部91から端部94、95に向かう(近づく)に従って徐々に薄くなっている。なお、具体的な厚さについては後述する。
ガラス管9の内部には、水銀が単体形態で略5mg封入され、また緩衝ガスとして、例えばアルゴンガスが、上述の排気管96を介して600Paで封入されている。
上記の発光管2は、図1に示すように、ガラス管9の端部94、95がホルダ(支持体)41内に挿入されて、例えばシリコーン等の接着剤42によりホルダ41に固着されている。このホルダ41の裏側(口金5側)には基板31が装着されており、この基板31に発光管2を点灯させるための複数の電気部品32、33、34が取り付けられている。なお、これらの電気部品32、33、34により電子安定器3が構成され、この電子安定器3は、所謂、シリーズインバータ方式によるもので、その回路効率が91%である。
ケース4は、合成樹脂製であって、図1に示すように、下拡がりの筒状をしている。発光管2及び基板31が装着されたホルダ41は、電子安定器3が奥側となるようにケース4内に挿入され、ホルダ41の外周部がケース4の内周面に接着剤61により固着されている。ケース4の上部、つまり開口部と反対側には、E26用の口金5が装着されている。なお、口金5と基板31とは、リード線51を介して電気的に接続されている。
外管バルブ6は、発光管2を覆うためのもので、その開口部がケース4の開口部の内側に挿入され、外管バルブ6の開口部側の端部における外周がケース4の開口部側の端部における内周に接着剤61により固着されている。なお、ランプ1(外管バルブ6)の最大外径は略55mmで、全長は略110mmである。参考までに、60W用の白熱電球の大きさは、最大外径が略60mm、全長が略110mmである。
外管バルブ6は、白熱電球と同様に、装飾性に優れたガラス材からなり、その形状がなす状、所謂A型をしている。外管バルブ6の内周面には、発光管2から発せられた光を拡散させるための拡散膜(図示省略)が塗布されている。この拡散膜には、例えば、主成分が炭酸カルシウムの粉体が用いられている。
発光管2の下端部、つまりガラス管9の折り返し部91には、下方(旋回軸方向で口金5と反対側)へと膨出する凸部91aが形成されており、この凸部91aと外管バルブ6の内周面の下端部62とが、透明なシリコーンからなる熱伝導性媒体15により熱的に結合されている。なお、発光管2の下端部とは、ガラス管9の折り返し部91側の先端部分に相当する。
2.発光管の製造方法について
次に発光管2の製造方法を説明する。図3は、ガラス管を屈曲させて2重螺旋形状に形成する工程を説明する図であり、図4は、2重螺旋形状に形成されたガラス管内に蛍光膜を塗布する工程を説明する図である。なお、以下の説明では、直管状のガラス管を2重螺旋状に形成し、そのガラス管内に蛍光膜を塗布する工程までを説明し、この後に行われる、緩衝ガス、水銀等の封入、電極の封着等の工程については、従来と同じ方法であり、その説明は省略する。
1)発光管の成形について
ア.ガラス管の軟化工程
まず、図3の(a)に示すような直管状のガラス管110を用意する。このガラス管110は、その横断面形状が略円形状であり、管内径φiが略7.4mm、管外径φoが略9.0mmである。そして、この直管状のガラス管110の中間部(少なくとも2重螺旋形状に湾曲させる部分を含む)を、図3の(a)に示すように、電気或いはガス等の加熱炉120内にセットし、ガラス管110の温度が軟化点以上になるまで加熱して、ガラス管110の中間部を軟化させる。
イ.ガラス管の巻き付け工程
軟化したガラス管110を加熱炉120から出して、図3の(b)に示すように、ガラス管110の略中央114を成形冶具130(材質:ステンレス)の頂部に位置合わせして、この成形冶具130を図外の駆動装置により回転させる。
これにより軟化したガラス管110は成形冶具130に巻き付けられる。なお、ガラス管110の略中央114は折り返し部117となり、成形治具130の外周面に形成された螺旋形状の溝部131に沿って旋回している部分が旋回部115、116となる。
ガラス管110を成形冶具130に巻き付ける作業中は、ガラス管110が潰れないように、つまりガラス管110の横断面形状がそのまま保持できるように圧力制御された窒素などのガスがガラス管110内に0.4kg/cm2で吹き込まれている。
そして、軟化状態にあったガラス管110の温度が低下して硬化状態に戻ると、成形冶具130をガラス管110の巻き付け時と反対方向に回転させて、成形冶具130から2重螺旋形状のガラス管110を取り外す。
成形治具130から外されたガラス管110は、所定の位置で切断される。この切断された2重螺旋形状のガラス管の符号を、直管状又は、巻きつけ工程中のガラス管と区別するために「100」の符号で現すことにする。
2)蛍光膜の塗付について
ア.注入工程
上記のようにして製造された発光管用のガラス管100の内周面に蛍光膜を塗布する塗布方法を、図4を用いて説明する。
まず、使用する蛍光体は、三波長域用で、赤、緑、青発光の3種類からなり、これらを含んだ懸濁液を製作する。今回の蛍光体は、赤色にユーロピウム不活酸化イットリウム(Y23:Eu3+)を、緑色にセリウム・テルビウム不活りん酸ランタン(LaPO4:Ce3+、Tb3+)を、また青色にユーロピウム不活バリウムマグネシウムアルミネート(BaMg2Al1017:Eu2+)をそれぞれ用いた。
製作する懸濁液は、上記の蛍光体のほか、バインダ、結着剤、界面活性剤、脱イオン水からなる。バインダは、懸濁液の増粘剤であって、ポリエチレンオキサイドが使用されている。結着剤は、蛍光体とガラス管100との結合剤であって、ランタンとアルミニウムの混合酸化物が使用されている。なお、ここで用いた懸濁液の粘度は、5.8cPであった。
次に、2重螺旋形状のガラス管100を、図4の(a)に示すように、その折り返し部117が上となるように立設させる。そして、一方の端部から懸濁液を注入する。この懸濁液は、例えば、注入ノズル(図示省略)で注入され、注入された懸濁液は螺旋形状に湾曲するガラス管内を上がって行く。なお、懸濁液の単位時間当たりの注入量は、7〜10l/minである。
そして、ガラス管100内を折り返し部117に向かって上がる懸濁液の先端(図4の(a)の118)が、ガラス管100の中央、つまり折り返し部117を超えると、懸濁液の注入をやめ、ガラス管100の懸濁液を、図4の(b)に示すように、ガラス管100の姿勢をそのままの状態にして両端から流出させる。
懸濁液の流出が終了すると、もう1つの端部から、同じように懸濁液を、2重螺旋状に形成されたガラス管100内に注入する。このときも懸濁液の先端が折り返し部117を超えるまで注入した後、ガラス管100をそのままの姿勢で内部の懸濁液を流出させる。
イ.乾燥工程
ガラス管100内の懸濁液の流出が終了すると、図4の(c)に示すように、乾燥炉135内にガラス管100をそのまま立設させた状態でセットして乾燥させる。このとき、乾燥がより早く終了するように、ガラス管100の両端部から内部に温風を交互に流し込んでいる。乾燥炉135内の温度は、略45℃に設定されており、この乾燥炉135内にガラス管100を約8分間入れておく。
また、温風の流し込みは、例えば、温風ノズルにより行なっており、この温風ノズルから流出する温風量は、6l/minであり、また、温風の温度は約45℃である。このようにして、ガラス管100の内周面に塗布した懸濁液の乾燥が終了すると、蛍光膜の塗布が完了する。
従来の2重螺旋形状の発光管の製造方法は、直管状のガラス管に、まず蛍光膜を、例えば、ダウンフラッシュ法により塗布し、その後で、ガラス管を加熱して2重螺旋形状に湾曲させている。この方法は、ガラス管を旋回軸廻りに旋回させる、その半径(以下、この半径を「旋回半径」という。)が大きい場合には、ガラス管の内周面に塗布された蛍光膜にひびが入ったり、蛍光膜が剥がれたりすることも少ないが、本実施の形態のように、旋回半径が小さい場合には、蛍光膜にひびが入ったり、蛍光膜が剥がれたりして、ガラス管内に蛍光膜を塗布することができなかった。つまり、本実施の形態で説明するような外観寸法の小さな発光管には適用できなかった。
これに対して、本実施の形態での発光管の製造方法では、最初にガラス管110を湾曲させて2重螺旋形状に形成しているので、ガラス管110を成形治具130に巻きつけることさえできれば、発光管の外観の外径が小さくても容易に蛍光膜を塗布できる。
3.ランプ性能について
1)蛍光膜の膜厚(単位面積当たりの質量)
上記製造方法で製造された発光管の蛍光膜の膜厚について測定した。測定位置は、図2に示すように、旋回軸Aを含む平面で発光管2を上下方向(紙面に対して直交する方向)に切断し、その時の各周におけるガラス管の横断面であってガラス管の中心を通り且つ旋回軸方向に相対向する位置である。なお、測定位置の符号Pna、Pnbの「n」は、折り返し部91からの周回数であり、「a」は、ガラス管9の横断面における旋回軸方向の頂部側の測定位置を現し、「b」は、同じく旋回軸方向の基部側、つまり折り返し部側と反対側の測定位置を現している。
各測定位置における蛍光膜の厚みの測定結果を次の表1及び図5に示す。なお、膜厚の測定内容は、その位置の膜厚を直接測定したものではなく、各測定位置における蛍光膜の単位面積当たりの質量を測定している。
Figure 0004130795
測定位置における蛍光膜の単位面積当たりの質量(以下、「蛍光膜の被膜量」という。)は、同表、同図に示すように、各周のガラス管の横断面では、基部側が頂部側よりも大となっている。つまり、ガラス管の横断面において、旋回軸方向であって基部側の部位に塗布されている蛍光膜の厚さの方が、頂部側の部位に塗布されている蛍光膜の厚さよりも厚くなっている。
さらに、基部側の蛍光膜(図2における測定位置が、P1b、P2b、P3b、P4b)の被膜量は、周回数が増えるに従って(折り返し部からホルダ側に移るに従って)、大きくなっている。逆にいえば、折り返し部に近いほど、各ガラス管の横断面における基部側の蛍光膜の厚みが薄くなっている。
これに対して、頂部側の蛍光膜(図2における測定位置が、P1a、P2a、P3a、P4a)の被膜量は、周回数が増えても、大きな変化がなく、若干小さくなる傾向にある。
2)ランプ性能について
上記塗布方法で蛍光膜を塗布すると、その発光管は、上述の測定結果で示したように、旋回軸方向に蛍光膜の厚さが異なる。以下に、ガラス管内に塗布された蛍光膜の厚さが旋回軸方向で異なる発光管を用いたランプ(以下、「不均一品」という。)と、ガラス管内に塗布された蛍光膜の厚さが略一定な発光管を用いたランプ(以下、「均一品」という。)とについて、それぞれのランプを点灯させて発光光束を測定した。
ここで、均一品におけるガラス管内の蛍光膜の厚さは、略5.8mg/cm2 となるように塗布されている
ランプ性能の測定時の条件を以下に示す。
印加電圧 ・・・ 交流100V(周波数:60Hz)
点灯時の温度 ・・・ 25°C
点灯条件 ・・・ 口金上点灯
消費電力 ・・・ 12W
この条件でランプを点灯して、100時間のエージング後にランプ性能を測定した。ランプ性能の結果を以下の表2に示す。ここでは、ランプ性能として、発光光束及びランプ直下での直下照度の2種類について測定した。
Figure 0004130795
ランプ性能は、表2からも明らかなように、均一品の発光光束が785lmであるのに対し、不均一品のそれは818lmであり、不均一品の方が約33lm(約4%)向上している。これは、ガラス管の横断面において、基部側の部位に塗布されている蛍光膜の厚みが、頂部側の部位に塗布されている蛍光膜の厚みより厚くなったことで、基部側の蛍光膜で頂部側に放射されて頂部側から照射される可視光が増え、全体の発光光束が増えたものと考えられる。
この発光光束の増加に伴って、均一品の発光光率が64.9lm/Wであるのに対して、不均一品のそれは67.6lm/Wであり、不均一品の方が2.7lm/W(4%)向上している。これらの結果により、ガラス管の横断面における旋回軸方向であって基部側部位の蛍光膜を厚くすることで、全体的な光出力が向上していることが分かる。
図6は、塗布された蛍光膜が不均一な不均一品と、略均一な均一品との配光特性を示す配光曲線図である。同図及び表2に示すように、ランプ直下での直下照度は、均一品が58cdであるのに対し、不均一品は64cdであった。このように不均一品の方が約6cd(約10%)向上している。
これは、上述の発光光束が不均一品の方が増加した理由と同じで、ガラス管の横断面において、旋回軸方向であって基部側の部位に塗布されている蛍光膜の厚みを厚くすることで、基部側の蛍光膜で頂部側に放射する可視光が増えたためであり、さらに、この蛍光膜の厚い部分(以下、「厚塗部」ともいう。)がランプの直下となる側の部位と対向する側に形成されているので、厚塗部で下方へ放射された可視光がそのままランプ下方に放射されることになる。
(変形例)
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、本発明の内容が、上記の各実施の形態に示された具体例に限定されないことは勿論であり、例えば以下のような変形例を実施することができる。
1.発光管を覆う外管バルブについて
上記の実施の形態では、発光管を覆う外管バルブとしてA型を用いたが、他の形状の外管バルブ、例えば、T型、G型などを用いても良い。さらに、発光管は、その頂部でシリコンを介して外管バルブに結合されているが、外管バルブに結合されていなくても良い。また、この外管バルブを備えていなくても良い。この場合においても上記の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
2.蛍光膜用の懸濁液について
1)材料について
上記の実施の形態では、赤、緑、青色の3色用の蛍光体を用いた3波長用の懸濁液を用いてガラス管の内周面に蛍光膜を塗布しているが、他の蛍光体、例えば、一般照明用のハロりん酸カルシウム蛍光体を主成分とした懸濁液を用いても良いし、さらにこのハロりん酸カルシウム蛍光体に、赤、緑、青色等の蛍光体を混合したものでも良い。
2)懸濁液の粘度について
上記の実施の形態では、懸濁液の粘度が5.8cPとなるようにバインダ、脱イオン水等の構成比率を調整して懸濁液を製作しているが、ガラス管の内径の寸法、旋回軸方向に隣接するガラス管の間隔(螺旋ピッチ)、蛍光体の種類・材料を変えることで、この粘度も変わるものと考えられる。
上記の実施の形態における懸濁液は、上記のガラス管の寸法、螺旋ピッチでは、その粘度が4.5cP〜8.0cPの範囲であれば、ガラス管の横断面において旋回軸方向の頂部とその反対側(基部側)の部位に塗布されている蛍光膜が、頂部側の部位に塗布されている蛍光膜よりも厚くでき、ランプ点灯時の直下照度を向上させることができる。
なお、本実施の形態において、懸濁液の粘度が、4.5cP〜8.0cPの範囲外であっても、ガラス管の横断面における基部側の蛍光膜の方を頂部側よりも厚くすることも可能である。しかしながら、発光管からの発光光束が減少したり、直下照度が均一品と大差なかったりする。つまり、上記の懸濁液の粘度の範囲は、ガラス管内に蛍光膜を略均一に塗布した発光管を用いたランプよりも、発光管から発する全光束を高め、さらに、直下照度を向上させることができるように、蛍光膜を塗布するための粘度である。
したがって、発光管の螺旋ピッチ、ガラス管の寸法、蛍光体の種類等に変更がある場合には、実際の塗布工程の条件下での実験により懸濁液の粘度を適宜決定することが好ましい。
3.蛍光膜の厚さについて
1)折り返し部側の部位に塗布された蛍光膜について
上記実施の形態では、発光管を構成するガラス管の横断面において、旋回軸方向であって折り返し部側の部位に塗布されている蛍光膜の単位面積当たりの質量が、略5.8mg/cm2 としているが、2mg/cm2以上12mg/cm2以下の範囲であれば良い。これは、蛍光膜の厚さが略5.8mg/cm2のとき、発光管から発せられる発光光束が最大となり、上記の2mg/cm2以上12mg/cm2以下の範囲では、さほど最大の発光光束と差が無いからである。
2)端部側(ランプで見るとホルダ側)の部位に塗布された蛍光膜について
上記実施の形態では、発光管を構成するガラス管の横断面において、旋回軸方向であって折り返し部側と反対側の部位(端部側の部位)に塗布されている蛍光膜の単位面積当たりの質量が、略13.9mg/cm2としているが、5mg/cm2以上30mg/cm2の範囲であれば良い。
この範囲に限定する理由は、以下の実験に基づいており、その実験内容について説明する。
本実施の形態では2重螺旋形状の発光管を用いているが、実験の容易性から直管状の発光管を用いている。
用いた直管は、直径25mm、全長580mmの20W型の直管蛍光ランプである。この直管状のガラス管は、まず、ダウンフラッシュ工法で蛍光膜が管内に略均一に塗布されている。この蛍光膜の被膜量は、略5.8mg/cm2である。この理由は、上記1)で説明したように発光管から発光光束が最大となるからである。なお、用いた蛍光膜は、上記の実施の形態で用いたものと同じであり、懸濁液の構成も略同じである。
次に、均一に蛍光膜が塗布されたガラス管を傾斜させておき、上位に位置するガラス管の端部から懸濁液を流す。このとき懸濁液は、ガラス管の横断面において最下位に位置する部分を流れ、結果的に、懸濁液が流れた部分に、蛍光膜が厚い厚塗部が形成される。なお、ガラス管の横断面において最初に蛍光膜が塗布され且つ厚塗部と対向する部分を薄塗部という。
このように、均一に蛍光膜が塗布されたガラス管に懸濁液を後から複数回同じ位置で重なるように流すことにより、厚塗部における蛍光膜の被膜量(mg/cm2)が、3.5、8.5、14.8、22.4の4種類の発光管を製作した。
このようにして製作された発光管を用いて、厚塗部と対向する側、つまり薄塗部側での輝度と、発光管から発せられた光束について測定した。この結果を図7に示す。
まず、薄塗部側における輝度は、図7に示すように、蛍光膜の単位面積当たりの質量が多くなるに従って、上昇していることが分かる。一方、発光管からの光束は、前記質量が8.5mg/cm2のときに最大となっているが、全体として略一定であると考えられる。
このような結果から、厚塗部における蛍光膜の被膜量が、5mg/cm2以上30mg/cm2以下の範囲であれば、発光管から発せられる光束もさほど低下することもなく、しかも、薄塗部側の輝度も向上させることができる。
これら蛍光膜の被膜量は、発光管が直管状のものであるが、蛍光膜の構成が同じであるため、たとえ、発光管の形状が2重螺旋状となっても、参考にできるものと考えられる。
4.発光管の形状について
上記の実施の形態では、発光管は、折り返し部で折り返され、その両側が、ガラス管の端部まで旋回軸の廻りを旋回し、全体として2重螺旋状に形成されている。しかし、発光管の形状は、他の形状、例えば、折り返し部で折り返された一方の側だけが旋回軸廻りに旋回して、全体として1重の螺旋形状であっても良い。また、ガラス管は、折り返し部の両側が旋回する2重螺旋状であって、ガラス管の端部が旋回軸と略平行にしたものであっても、実施の形態と同様な効果が得られる。
さらに、上記実施形態では、発光管の螺旋形状は、ガラス管が旋回軸廻りを旋回する旋回半径が略一定、つまり、発光管の外観の形状は、外径が略一定な円筒状をしている。
一方、上記の実施の形態のように、ガラス管内に塗布された蛍光膜が、旋回軸方向であってホルダ側が折り返し部側よりも厚くすることで、ランプを口金上点灯したとき(このとき旋回軸が上下方向と一致する)のランプの直下照度が向上することが判明している。
以上を考慮すると、折り返し部からの1層目、2層目のガラス管の横断面における、支持部側から可視光を直下方向に効率良く取り出すために、発光管の形状を、折り返し部からホルダ側に移るに従って、発光管の外径が外側に大きくなる形状(換言すれば、折り返し部からホルダ側に移るに従って、旋回軸の廻りを旋回する旋回半径が大きくなる螺旋形状。)、つまり、折り返し部側の外径が小さく、ホルダ側の外径が大きいようなテーパー形状の円筒形状にした方が良いと考えられる。なお、このような形状の発光管を形成するには、図3に示した成形治具を下広がりテーパー形状すれば良い。
5.発光管について
実施の形態では、電球形蛍光ランプに適用した発光管について説明したが、上記構成のように蛍光膜が塗布されている或いは上記製造方法で製造された発光管は、放電ランプである他のランプ、例えば、電子安定器を備えていない蛍光ランプにも適用できる。
本発明に係る発光管は、下方の照度を向上させる放電ランプに利用できる。
本実施の形態に係る電球形蛍光ランプの一部を切り欠いた全体構成を示す正面図である。 発光管の内部の様子を説明するためにガラス管の一部を切り欠いた状態の正面図である。 ガラス管を屈曲させて2重螺旋形状に形成する工程を説明する図である。 2重螺旋形状に形成されたガラス管内に蛍光膜を塗布する工程を説明する図である。 発光管を構成するガラス管の断面において、頂部からのまき数とその位置での端部側及び頂部側の壁面に塗布された蛍光膜の単位面積あたりの質量との関係を示す図である。 塗布された蛍光膜が不均一な不均一品と、略均一な均一品との配光特性を示す配光曲線図である。 直管状の発光管を用いた蛍光膜の被膜量と薄塗部側における輝度及び光束との関係を示す図である。
符号の説明
1 ランプ
2 発光管
4 ケース
5 口金
6 外管バルブ
7、8 電極
9 ガラス管
91 折り返し部
92、93 旋回部
10 蛍光膜
A 旋回軸

Claims (5)

  1. ガラス管の中間部に折り返し部を有し、前記ガラス管における前記折り返し部から少なくとも一方の端部までが旋回軸廻りに旋回していると共に、前記ガラス管の内周面に蛍光膜が塗布されている発光管であって、
    旋回部分のガラス管の横断面における内周面であって、当該横断面でのガラス管の中心を通り且つ前記旋回軸と平行な方向に対向する2つの部位において、塗布された蛍光膜の厚みが、折り返し部側より前記一方の端部側の方が厚く、
    前記旋回部分のガラス管の横断面において、前記旋回軸方向であって前記一方の端部側の部位に塗布されている蛍光膜は、前記折り返し部側から前記一方の端部側に近づくに従って厚くなっていることを特徴とする発光管。
  2. 前記ガラス管は、前記折り返し部から両端までの部分が前記旋回軸廻りに旋回する2重螺旋形状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の発光管。
  3. 前記旋回部分に対応するガラス管の横断面において、前記旋回軸方向であって前記折り返し部側の内周面に塗布されている蛍光膜の単位面積当たりの質量が、2mg/cm2以上12mg/cm2以下の範囲内であることを特徴とする請求項1又は2に記載の発光管。
  4. 前記旋回部分に対応するガラス管の横断面において、前記旋回軸方向であって前記少なくとも一方の端部側の内周面に塗布されている蛍光膜の単位面積当たりの質量が、5mg/cm2以上30mg/cm2以下の範囲内であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の発光管。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の発光管を備えていることを特徴とする放電ランプ。
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