JP4130254B2 - 空調系ダクトの吹出しノズル - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、工場や空港ビルターミナルなど大空間と大開放空間での必要とするスペースゾーンへ、空調空気を空調系ダクトにて供給するために使用されるゾーン空調用吹出しノズルに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の吹出しノズルは次のようなものが知られている。以下、その吹出しノズルについて図8を参照しながら説明する。
【0003】
図に示すように、空調機器から空調空気の供給を受けた空調系ダクト101に、天井面102からアンカーボルト103で吊架された空調系ダクト101の途中より分岐して接続された通気筒104と、この内部にモータ105を駆動源とた首振り機構を内蔵した首振り駆動部106を、この首振り駆動部106を介して連結された首振り揺動をする回転筒107と、この回転筒107に空調空気を吹き出す吹出しノズル108を形成して構成されたものであり、吹出しノズル108の首振りスイングする方向へ空調空気を供給している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このような従来の空調系ダクトの吹出しノズルでは、その首振り機構は扇風機の首振りロッドによる標準的な機構が用いられ、首振り指向性を決める首振り中心起点の位置は固定され、首振りは一定軌跡の首振りスイング振幅であり空調空気の供給範囲に制約を受けるので、工場では作業者の移動に追従することができず、首振りスイング範囲の過不足や作業者の不在となったデットスペースに空調空気を供給するといったエネルギーの有効利用に問題があった。
【0005】
また、製造ラインのレイアウト変更で作業場所の移設があると、関連変更として装置全体を高所からおろして通風筒と回転筒を分離してから、回転駆動部の首振りロッドを予め準備しておいたロッド長さの異なるものと付け替え、連結の噛合い位置の調節を確認しつつ変えて元通り組み立てるという繁雑で施工費、工事工数のかかる付帯工事が必要となり、首振り中心起点、首振り振幅を運転中において随時、任意に簡単に変更できる首振り機構が要求されている。
【0006】
また、人の出入りと物品や資材の荷役の搬入搬出が頻繁な大きな開口部では、自然換気量が大きく空調エネルギーロスが大きくなるという課題があり、必要とするスペースゾーンにだけ必要となるタイミングで空調空気を供給して省エネルギーで快適な空間ゾーンにすることが要求されている。
【0007】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、運転中において必要とするところへ首振り中心起点と首振り振幅範囲と首振り速度とを任意に随時、変更でき、また、この操作の遠隔操作を可能とした空調系ダクトのゾーン吹出しノズルを提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の空調系ダクトのゾーン吹出しノズルは上記目的を達成するために、吹出しノズルの首振りを駆動する誘導電動機の回転角と回転速度を正逆の両方向に、マイクロコンピュータを使って位相制御するソフトウエアサーボ回路で構成したものである。
【0009】
本発明によれば、要求する首振り中心起点、首振り振幅および首振り速度とを予め指定してマイクロコンピュータにインプットすることにより、運転中に随時、首振り中心起点の移動位置と首振り振幅範囲と首振り速度とを任意に変更することができる。
【0010】
また、それにより首振りクランクロッドを用いた純機械的メカニズムの首振り機構を除くことができ、設備のレイアウト変更があっても首振り機構部分の部品、調節などの必要がなくなり付帯工事を解消するとともに、その工事費用、工事工数を抹消できる。また首振り起点の中心位置と首振り振幅および首振り速度の設定の自由度が大きいので、大きな開口部をもった建築空間でも必要とするスペースゾーンにだけ空調空気を供給することが可能となり、省エネルギーで快適な空間ゾーンにすることができる。
【0011】
また、マイクロコンピュータを使用することで、要求とする設定条件の外部情報を通信機能で送受信して遠隔操作をすることができるため、各種センサーと組み合わせることで必要なタイミングでのみ空調空気を供給することができ、省エネルギーで快適な空間ゾーンを実現することができる空調系ダクトの吹出しノズルが得られる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明は、誘導電動機と、吹出しノズルを承持し、かつ、前記誘導電動機の回転子軸に直結して回転する通風筒と、誘導電動機の電源を位相制御して供給する位相制御回路と、誘導電動機の現在速度および回転位置を計測する速度信号発生器と位置検出器と、マイクロコンピュータとで構成され、速度信号発生器と位置検出器の両方の計測値をフィードバックし、その計測値と、首振り手段の指向性を決める目標設定値(首振り中心起点、首振り振幅、首振り速度)から、前記マイクロコンピュータによってそれぞれの偏差量の演算と、この偏差量の大きさに応じて首振り手段の回転子軸を中心とした回転角と回転速度の正逆両方向の前記誘導電動機の交流電源電源位相の零クロスポイントにおける時間差に相当する電気出力を制御演算して決定し、位相制御回路に出力するという帰還制御を行って、首振り手段の目標設定値に吹出しノズルを移動させる作用を有している。
【0013】
また、帰還制御をPID制御またはファジイ制御で演算し、首振り目標設定速度と現在速度を常に偏差を零にする働きをマイクロコンピュータにプログラミングしたソフトウエアによって、位相制御回路に対して帰還制御して出力するものであり、通風筒、吹出しノズルの慣性力や、箇々の誘導電動機のスベリ特性のバラツキなどによる首振り目標設定速度からの行過ぎ、遅れの過応答などの外乱を起こす不安定要素をコントロールして吹出しノズル速度を、ふらつかせることなく高速で追従して応答性を高めることができる。
【0014】
また、位置検出器の出力が変化するタイミングで速度信号発生器の出力をマイクロコンピュータで計数開始するものであり、位置検出器のステップ角のパルス出力信号(1回転360度を機械的にN等分した角度の)を、速度信号発生器の発電周波数信号で計測することで、位置検出器のステップ角以上の分解精度で首振り振幅の微少角度を検出することができる。
【0015】
また、外部から入力された首振り中心起点、首振り振幅、首振り速度、運転時間などの設定および変更の指令を通信手段にて送受信するとともに、制御システム全体の異常判別と、緊急停止、状態表示、警報を指令するマイクロコンピュータを備えたものであり、遠隔操作による指令とシステム全体の異常判別の条件診断処理をするものである。
【0016】
また、首振り中心起点、首振り振幅、首振り速度、運転時間など必要とする目標設定モードに、それぞれ複数箇の設定値に作成したパラメータのプログラムソフトで自動運転制御するものであり、マイクロコンピュータが外部からの通信機能を検索して予めマイクロコンピュータに登録したプログラムソフトに従って自動的に順送制御して誘導電動機を駆動させるものである。
【0017】
また、外部から発信される無線信号を受信する受信部を吹出しノズルの装置本体に備え、受信応答することにより遠隔制御が行われるものである。
【0018】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【0019】
【実施例】
(実施例1)
図1および図2に示すように、空調系ダクト11に取り付けられた吹出しノズル1の本体に位相制御回路2の出力で駆動される誘導電動機3と、この回転子軸に直結した減速機構4と方向検出用の位置検出器5と吹出しノズル1を承持した通風筒10および速度検出用の速度信号発生器6とを配設し、それぞれの計測情報をもとに位相制御回路2をマイクロコンピュータ7で帰還制御するソフトウエアサーボ構成にしたものであり、常に現在速度と現在位置の情報をマイクロコンピュータ7にフィードバックさせている。ここで、それぞれの目標設定値を予めマイクロコンピュータ7に記憶させると、それぞれの目標設定値および現在値の計測値との偏差量を演算処理して偏差量の大きさに応じて正逆両方向への必要量をマイクロコンピュータ7が判別する。そして、誘導電動機3の交流電源の電圧位相の零クロスポイントにおける時間差に相当する出力信号に制御して位相制御回路2の双方向性スイッチング素子のゲード電圧の導通開始タイミングを設定している。これにより、吹出しノズル1の首振り中心起点、首振り振幅、首振り速度を要求する目標設定値に変更して誘導電動機3を駆動させることができる。
【0020】
なお、実施例では、首振り速度の設定にマイクロコンピュータ7を用いたが、これにかえて誘導電動機3に速調付のものにしてもよい。
【0021】
(実施例2)
図3は誘導電動機3の応答速度状態を示し、マイクロコンピュータ7に運転時の外乱要素で影響を受ける速度のバラツキおよび誘導電動機3の箇々が固有する速度スベリなどにより応答性が乱される速度偏差eの変動を、PID動作制御またはファジイ制御で偏差を常に零に補正する働きをするパラメータをプログラミングしたソフトウエアを備え、目標速度設定値Vと実速度V1(現在速度)の偏差値をサンプリングの周期で演算制御することにより、速度の行き過ぎ遅れの過応答を抑制して偏差が零にならない限り、プラスまたはマイナスどちらかの方向に出力を変化し続ける必要量を判別して位相制御回路2に出力することができる。
【0022】
(実施例3)
図4は速度出力信号と回転位置の出力信号の出力タイムチャートを示し、減速機構4の出力軸の円周を等分に分割したステップ角度の位置に、その位置に固有の並列デジタル信号を出力する回転位置のの位置検出器5と、誘導電動機3に直結した発電機を有しこの発電周波数を出力する速度信号発生器6とを備え、マイクロコンピュータ7のカウンター機能でステップ角の角度位置信号が変化するタイミングを発電周波数の出力のカウント開始ポイントとし、次の変化するタイミングで計測をリセットすることにより、ステップ角のパルスが1箇出力された期間に速度信号発生器6の出力が幾らカウント計測できるかに係わり、ステップ角以上の分解精度で首振りの微少角度を検出することができる。
【0023】
(実施例4)
図5に示される実施例では、吹出しノズル1の首振り中心起点、首振り振幅、首振り速度、運転時間などの設定値および変更の指令を外部から通信手段にて送受信するとともに、制御システム全体の異常有無の判別、緊急停止、状態表示、警報指令など条件判別の機能をもつマイクロコンピュータ7である。
【0024】
上記構成において、それぞれの設定値および設定値の変更は固有の信号で送信され、これをマイクロコンピュータ7が受信する。例えば運転中に新しい目標設定に変更し一定時間が経過してもマイクロコンピュータ7の更新した演算制御出力に対し、位置検出器5から新たなフィードバック信号がない場合、位相制御回路2が正常動作して誘導電動機3を回転駆動していないとマイクロコンピュータ7は異常のあることを判断することができる。そして異常信号をマイクロコンピュータ7は出力して警報器を鳴らすと同時に、異常箇所のモード表示にドットを点灯して知らせる。
【0025】
(実施例5)
図6に示す実施例では、首振り中心起点、首振り振幅、首振り速度、運転時間など必要とする目標設定モードに、それぞれ複数箇の設定値に作成したパラメータをパターン化したプログラムソフトを予め記憶させ、かつ外部からの通信手段を受信することにより指定した設定値のプログラムソフトを検索し、誘導電動機3を指定の設定値にフィードバック制御をするマイクロコンピュータ7である。
【0026】
上記構成において、例えば首振り中心起点と首振り振幅を現在の設定値から変更したい場合、更新のそれぞれの目標設定値を外部から通信機能でマイクロコンピュータ7に送信すると、マイクロコンピュータ7は該当するソフトプログラムを検索して記憶した登録順にフィードバック制御をかけて更新目標設定値に誘導電動機3を駆動させることができる。
【0027】
(実施例6)
図1に示す実施例では、外部から発信される無線信号を受信する受信部9を吹出しノズル1の吹出しノズル本体8に取り付けたものである。
【0028】
上記構成において、無線信号は首振り中心起点、首振り振幅、首振り速度、運転時間など必要とする目標設定モード、また制御システム全体の異常有無の判別、状態表示、警報のドット点灯、緊急停止など条件判別をするものである。受信部9は無線機能に対応した各種センサと組み合わせることとしている。
【0029】
(実施例7)
図7に示す実施例では、空調系ダクト102に間隔を置き複数台を設置された吹出しノズル108において、個々に吹出しノズル108を遠隔制御する制御機能を個々の吹出しノズル108に備えたものである。
【0030】
【発明の効果】
以上の実施例から明らかなように、本発明によれば現場の必要とする状況変化および人の出入りと物品や資材の荷役の搬入搬出が頻繁な空調空気の供給範囲に制約を受けることなく、運転途中に随時、設定値を更新して必要とするスペースゾーンにだけ必要となるタイミングで吹出しノズルを向けて空調空気を供給することが可能となり省エネルギーで快適な空間ゾーンを提供する効果が得られる。
【0031】
また、首振りの指向性を決める首振り中心起点、首振り振幅、首振り速度を要求とされる複数の目標値を設定することを可能とし、この設定値の自由度が大きくとれる。
【0032】
また、現場の要求とする首振り振幅をロッド長の異なるものを作成して対応する付帯工事の設定が解消される。
【0033】
また、要求とする設定条件を通信または無線機能で簡便にコントロールする遠隔操作が得られる。
【0034】
また、各種センサと組み合わせることで必要なタイミングでのみ空調空気を供給することが得られる。
【0035】
また、必要としない空間ゾーンに対し運転を休止することができ省エネルギーの吹出しノズルのシステムが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1の吹出しノズルのソフトウエアサーボ回路図
【図2】本発明の実施例1および6の吹出しノズル形態図
【図3】本発明の実施例2の応答速度状態図
【図4】本発明の実施例3の出力信号のタイムチャート
【図5】本発明の実施例4の通信機能で送受信する回路図
【図6】本発明の実施例5のソフトウエアプログラム図
【図7】本発明の実施例7の個別システム制御縦断面図
【図8】従来の吹出しノズル装置の形態図
【符号の説明】
1 吹出しノズル
2 位相制御回路
3 誘導電動機
4 減速機構
5 位置検出器
6 速度信号発生器
7 マイクロコンピュータ
8 吹出しノズル本体
9 受信部
10 通風筒
11 空調系ダクト
101 天井面
102 空調系ダクト
103 アンカーボルト
104 通気筒
105 モータ
106 首振り駆動部
107 回転筒
108 吹出しノズル
Claims (5)
- 誘導電動機と、
吹出しノズルを承持し、かつ、前記誘導電動機の回転子軸に直結して水平方向に360°回転する通風筒と、
誘導電動機の電源を位相制御して供給する位相制御回路と、
前記回転子軸に直結し、誘導電動機の現在速度を計測する速度信号発生器と、
前記回転子軸に直結し、回転位置を計測する位置検出器と、
マイクロコンピュータとで構成され、
速度信号発生器と位置検出器の両方の計測値をフィードバックし、
その計測値と、首振り手段の指向性を決める目標設定値(首振り中心起点、首振り振幅、首振り速度)から、
前記マイクロコンピュータによってそれぞれの偏差量の演算と、
この偏差量の大きさに応じて首振り手段の回転子軸を中心とした回転角と回転速度の正逆両方向の前記誘導電動機の交流電源電源位相の零クロスポイントにおける時間差に相当する電気出力を制御演算して決定し、
位相制御回路に出力する
という帰還制御を行って、
首振り手段の目標設定値に吹出しノズルを移動させる作用を有した空調系ダクトの吹出しノズル。 - 帰還制御をPID制御またはファジイ制御で演算し、首振り目標速度と現在速度の差を常に零にする働きをマイクロコンピュータのプログラムソフトウエアによって、位相制御回路に対して帰還制御して出力する請求項1記載の空調系ダクトの吹出しノズル。
- 位置検出器と速度信号発生器との検出において、位置検出器の出力が変化するタイミングで速度信号発生器の出力を計数開始することにより、位置検出器のステップ角以上の分解精度で首振り振幅の微少角度を検出することができる請求項1、または2記載の空調系ダクトの吹出しノズル。
- 外部から入力された首振り手段の設定および変更の指令を通信手段にて送受信されるとともに、制御システム全体の異常判別と緊急停止、状態表示、警報を指令するマイクロコンピュータを備え、遠隔操作による指令によって診断処理をする請求項1、2、3いずれかに記載の空調系ダクトの吹出しノズル。
- 首振り手段の必要とする目標設定モードに、それぞれ複数箇の設定値に作成したパラメータのプログラムソフトを備えた請求項1、2、3、4いずれかに記載の空調系ダクトの吹出しノズル。
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