JP4129939B2 - 毛髪化粧料用基剤及びそれを用いた毛髪化粧料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、毛髪化粧料用基剤に関し、さらに詳しくは、シリコーン化合物の存在下にアクリル系単量体を重合させて得られる重合体からなる毛髪化粧料用基剤及びこれを用いた毛髪化粧料に関する。
【0002】
【従来の技術】
毛髪化粧料に利用されるアニオン樹脂組成物としては、マレイン酸とビニルメチルエーテルの共重合体のハーフエステル、アクリル樹脂アルカノールアミン液、或いは酢酸ビニル−クロトン酸−ネオデカン酸ビニル共重合体等が知られているが、これらのものは、整髪力においては優れているものの、高い粘着性を有していたり、風合いが硬すぎることから、不自然にごわついたり、櫛や手指を通した際にフレーキングが起こりやすい等の欠点が見られる等、満足の得られるものではなかった。これらの問題を軽減するためには、上記アニオン樹脂組成物にシリコーン化合物を添加することが一般的に行われているが、この場合には、頭髪に長時間用いたりすると、頭髪がべたついたり、脂ぎったりする欠点がある。これに対処するため、高分子量のシリコーン化合物を、溶媒や低分子量のシリコーンオイル等に溶解して添加したり、ポリエーテル変性シリコーンや界面活性剤等を用いた乳化物として添加することが行われているが、形成するフィルムが不透明になったり、長期保存安定性が劣るなどの問題を残していた。
また、シリコーンマクロモノマーを共重合したポリマーを用いた毛髪化粧料の場合、シリコーンの分離のないものができると予想されたが、大きなシリコーン効果を期待できるマクロモノマーは重合時の親水性溶媒に溶解しないものが多く共重合性に劣り、重合時の親水性溶媒に溶解するようなマクロモノマーを用いた場合は期待されるシリコーン効果は小さく、シリコーンマクロモノマーを多量に用いた場合にはセット性が低下してしまっていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本出願人は、特願平8−90159号において、特定のシリコーン化合物の存在下にアクリル系単量体を重合させてなる重合体を含む整髪用樹脂組成物を提案した。このものは、アクリル樹脂の強い整髪力及び形成されるフィルムの良好な艶を有すると共に、シリコーン化合物の効果の経時的変化がなく、長期間にわたり安定な性質を示すものであった。しかしながら、このものについてはシリコーン化合物に期待される低粘着性と平滑性の付与効果については、一応の改善はなされたもののなお不十分なものであった。
【0004】
本発明の課題は、ごわつき、べたつきがなく、毛髪そのものが持つ自然な風合いを維持できると共に、形成されるフィルムが透明で充分な耐湿性を有し、低粘着性や平滑効果を十分に発揮でき、毛髪への長時間の使用による効果の低減がない毛髪化粧料用基剤及びこれを用いた毛髪化粧料を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、アクリル系共単量体を溶液重合法により重合させてアクリル樹脂を製造する際、アクリル系単量体をシリコーン化合物と親水性溶媒又は水と親水性溶媒の混媒との存在下に一般に用いられるラジカル重合開始剤を用いて重合し、アクリル樹脂とシリコーン化合物が安定に存在し得る複合体を形成させることによって、シリコーン化合物の効果の経時的安定性に優れた毛髪化粧料用基剤を提供するものであるが、特定のアクリル系単量体組成と、特定のシリコーン化合物とを組み合わせることにより、シリコーン化合物の特異な性質を最大限に発現させるというものである。
【0006】
本発明に係る毛髪化粧料用基剤は、(A)下記のエチレン性不飽和単量体(a)〜(d)、即ち
(a)分子内にカルボキシル基を一つ以上有するエチレン性不飽和単量体10〜40重量%、
(b)(メタ)アクリル酸と炭素数10〜18の直鎖状、脂環状又は分岐鎖を有する脂肪族モノアルコールとのエステル5〜20重量%、
(c)(メタ)アクリル酸と炭素数1〜8の直鎖状、脂環状又は分岐鎖を有する脂肪族モノアルコールとのエステル5〜50重量%及び
(d)前記エチレン性不飽和単量体(a)〜(c)と共重合可能なその他のエチレン性不飽和単量体5〜60重量%
からなるエチレン性不飽和単量体成分を、(B)前記単量体成分の全量に対して0.1〜150重量%の、25℃において2,000〜100,000mm2/sの粘度を有するシリコーン化合物と、(C)親水性溶媒又は水と親水性溶媒の混媒との存在下に、(D)ラジカル重合開始剤を用いて溶液共重合させて得られる共重合体からなり、
前記エチレン性不飽和単量体(d)が、下記の一般式(I)
【化4】
(式中、R1は水素原子又はメチル基、R2及びR3はそれぞれ独立して、水素原子、直鎖状若くは分岐鎖を有するアルキル基、直鎖状若くは分岐鎖を有するヒドロキシアルキル基又は下記一般式( II )
【化5】
で表される基を示す。)で表されるエチレン性不飽和単量体、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸グリセリル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシジエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシテトラエチレングリコール、(メタ)アクリル酸エトキシジエチレングリコール、アクリロニトリル、酢酸ビニル、スチレン、ビニルピロリドン、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノプロピルから選ばれた一種又は二種以上のエチレン性不飽和単量体であり、且つ
前記シリコーン化合物(B)が、下記の一般式( III )
【化6】
{式中、a、bはそれぞれ独立して0又は自然数(ただし、aとbが共に0であってはならない。)を表し、m、nはそれぞれ独立して自然数を表す。また、R4、R5はそれぞれ独立して炭素数1〜18の直鎖状又は分岐鎖を有するアルキル基を表す。}で表される構造を有するポリエーテル変性シリコーンを含むものである。また、本発明に係る毛髪化粧料は前記毛髪化粧料基剤を含んでなるものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
(A)エチレン性不飽和単量体成分:
前記エチレン性不飽和単量体成分(A)中、分子内にカルボキシル基を一つ以上有するエチレン性不飽和単量体(a)は、重合体中にカルボキシル基を導入し、共重合体を塩基性化合物で中和して用いる場合には、形成されるフィルムに水溶性を付与し洗髪性を向上させるために配合される。また、洗髪性を必要としない場合でも、フィルムに適度な硬さを与えるために適量配合される。
前記単量体(a)の使用量は、重合に供せられるエチレン性単量体成分全量中で10〜40重量%でなければならず、好ましくは15〜35重量%となるように調整される。単量体(a)の使用量が10重量%未満である場合には、得られる毛髪化粧料用基剤は、洗髪時に容易に洗浄除去することが困難になり、またそれが40重量%を越える場合には、形成されるフィルムの耐湿性が低下し、また毛髪セット剤にこの基剤を用いた場合に毛髪のセット力が長持ちしない。特にこの使用量が15〜35重量%のとき、洗髪性と耐湿性のバランスがとれ、毛髪セット剤に用いられた場合には高湿下でのセット力を保ちつつ、洗髪時には容易に洗い落とすことができると共に、共重合体を塩基性化合物で中和して用いる場合に、形成されるフィルムに充分な水溶性を付与することができる。
前記単量体(a)の具体例としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、クロトン酸等が挙げられ、これらの単量体は単独又は併せて用いられる。
【0008】
前記単量体成分(A)中、(メタ)アクリル酸と炭素数10〜18の直鎖状、脂環状又は分岐鎖を有する脂肪族モノアルコールとのエステルからなる単量体(b)は樹脂の親油性、柔軟性に関与し、その使用量は5〜20重量%、好ましくは10〜15重量%である。前記使用量が5重量%未満のとき、得られる毛髪化粧料用基剤は液化石油ガスに対する溶解性が悪く、フレーキング現象も起こしやすくなり、液化石油ガスを用いない毛髪化粧料に供する場合には樹脂の柔軟性が不足し、毛髪への十分な接着が得られなくなる。一方、それが20重量%を超えると、得られるフィルムは非常に軟らかくなり、粘着が増し、洗髪性も悪くなる。特に前記使用量が10〜15重量%のとき、液化石油ガスとの溶解性が適当で、且つフィルムの粘着が感じられない程度で柔軟な感触が得られる。
前記単量体(b)の具体例として、例えば(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸イソステアリル、(メタ)アクリル酸オレイル等の直鎖若しくは分岐鎖又は脂環式の炭化水素基を有するアルコールの(メタ)アクリル酸エステル等を単独又は併用で使用することができる。
【0009】
前記共単量体成分(A)中、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜8の直鎖状、脂環状又は分岐鎖を有する脂肪族モノアルコールとのエステルからなる単量体(c)も樹脂の親油性、柔軟性、洗髪性に関与し、その使用量は5〜50重量%、好ましくは、10〜40重量%である。前記使用量が5重量%未満の時、得られる毛髪化粧料用基剤は液化石油ガスに対する溶解性が乏しく、一方、それが50重量%を越えると、得られるフィルムの洗髪性が不良となる。特に前記使用量が10〜40重量%のとき、液化石油ガスへの溶解性が適当で、フィルムの洗髪性の良いものが得られる。
前記単量体(c)の具体例として、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ターシャリーブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等を単独又は併用で使用することができる。
【0010】
前記共単量体成分(A)中、その他のエチレン性不飽和単量体(d)は、主として、得られる毛髪化粧料用基剤によって形成されるフィルムの硬さ、柔軟性、耐湿性及び毛髪への密着性を調節するために配合される。単量体(d)の使用量は、重合に供せられる共単量体成分全量の内で5〜60重量%、好ましくは15〜50重量%となるように調整される。単量体(d)の使用量が5重量%に満たない場合にはフィルムの硬さ、柔軟性、耐湿性及び毛髪への密着性を所望のものに調整することができない。また、その使用量が60重量%を越える場合には、フィルムの硬さや柔軟性が不適切となり毛髪化粧料として重要な性質を著しく損なうことがある。この成分の使用量が特に15〜50重量%のとき、フィルムと毛髪との密着性、フィルムの柔軟性が最適となり、ガムアップやフレーキング等の毛髪化粧料に用いた場合に生じる不適当な性質を抑えることができる。
前記単量体(d)は、上記単量体(a)〜(c)に該当する(メタ)アクリル系単量体以外のアクリル系単量体であってもよいが、アクリル系単量体以外のエチレン性不飽和単量体であって、これらの単量体(a)〜(c)と共重合可能なものでもよい。前記の重合性単量体(d)の具体例としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸グリセリル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシジエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシテトラエチレングリコール、(メタ)アクリル酸エトキシジエチレングリコール、(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−オクチルアクリルアミド、N−ターシャリーオクチルアクリルアミド、N−ターシャリーブチルアクリルアミド、アクリロニトリル、酢酸ビニル、スチレン、ビニルピロリドン、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノプロピル、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等を挙げることができ、これらは単独又は併用で使用することができる。
また、前記単量体(d)として、下記の一般式(I)
【0011】
【化7】
(式中、R1は水素原子又はメチル基、R2及びR3はそれぞれ独立して、水素原子、直鎖状若くは分岐鎖を有するアルキル基、直鎖状若くは分岐鎖を有するヒドロキシアルキル基又は下記の一般式( II )
【0012】
【化8】
で表される基を示す。)
で表されるエチレン性不飽和単量体や、アクリロニトリル、酢酸ビニル、スチレン、ビニルピロリドンを含む場合には、硬く、粘着の少ないフィルムが得られる。
これらの中でも、単量体(d)として、上記一般式(I)で表される化合物を全エチレン性単量体成分中で15〜50重量%含むことか好ましい。特に一般式(I)で表される化合物がジアセトンアクリルアミド、N−ターシャリーオクチルアクリルアミド、N−ターシャリーブチルアクリルアミドを含む場合には、液化石油ガスへの毛髪化粧料用基剤の溶解性を阻害せずに高温及び高湿下でのセット力向上に寄与するが、良好な洗髪性も有し、さらにフィルムの硬さに関与し、シリコーン効果の内の平滑性と耐粘着性を効率よく発現させるように作用するので、上記の単量体を単独又は併用で使用することが望ましく、特にN−ターシャリーブチルアクリルアミドを使用した場合に最適な結果が得られる。
また、単量体(d)として、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸グリセリル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシジエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシテトラエチレングリコール、(メタ)アクリル酸エトキシジエチレングリコール等の単量体を使用することで顔料の分散性と毛髪への密着を調整することができる。これらのことから、本発明の毛髪化粧料用基剤をヘアーカラースプレー、ヘアーカラーフォーム等の頭髪着色料固着剤の基剤として用いるときは、(メタ)アクリル酸のアルキレングリコール、ポリアルキレングリコール、アルキレングリコールモノアルキルエーテル又はポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルとのエステルと一般式(I)で表される化合物とを併用することが望ましい。
【0013】
(B)シリコーン化合物:
シリコーン化合物(B)は、本発明の毛髪化粧料用基剤により形成されるフィルムに低粘着性と平滑効果を与え、さらに、良好な感触及び耐水性や耐湿性等を付与するものである。シリコーン化合物(B)としては、べたつきのないフィルムを形成するためには、25℃において2,000〜100,000mm2/sの粘度を有するシリコーン化合物でなければならない。
粘度が100,000mm2/sを越えるシリコーン化合物の場合、取り扱いが難しく、またポリオキシエチレン変性シリコーンに見られるように常温で固形であるシリコーン化合物の場合は、親水性が高いために形成するフィルムの耐湿、耐水性が劣る恐れがある。前記シリコーン化合物(B)は、下記の一般式( III )
【0014】
【化9】
{式中、a、bはそれぞれ独立して0又は自然数(ただし、aとbが共に0であってはならない。)を表し、m、nはそれぞれ独立して自然数を表す。また、R4、R5はそれぞれ独立して炭素数1〜18の直鎖状又は分岐鎖を有するアルキル基を表す。}で表される構造を有するポリエーテル変性シリコーンを含むものであり、これによりシリコーン化合物(B)の効果が少量の使用で発現するのである。
【0015】
上記シリコーン化合物(B)の使用量は、重合に供せられる共単量体成分全量に対して0.1〜150重量%でなければならず、好ましくは0.5〜10重量%となるように調整される。シリコーン化合物(B)の使用量が0.1重量%未満の場合には、得られた毛髪化粧料用基剤により形成されるフィルムが平滑性、低粘着性において当初の目的を達成できないため、従来の毛髪化粧料用基剤と大差がないものとなる。また、この成分が150重量%を越える場合には、重合時の増粘や発泡により重合反応が阻害され、得られた基剤の外観、臭気、粘度安定性が著しく損なわれ、また形成されるフィルムの毛髪への密着が悪くなったりしてフレーキングの原因になりやすい。特にこの成分の使用量が0.5〜10重量%のとき、重合が阻害されず、得られた基剤の外観、臭気、粘度安定性が良好で、且つ毛髪に優れた平滑性、低粘着性と良好な洗髪性を付与することができる。また、洗髪性を必要としない用途、例えば、毛髪に対して半永久的なコンディショニング効果を付与させるための化粧料の場合には、シリコーン化合物(B)の耐水性等を十分に利用すべく、この成分の使用量を10〜150重量%に調整することもできる。
【0016】
シリコーン化合物の分離のない長期保存安定性を有する毛髪化粧料用基剤を提供するために、また毛髪化粧料に供した場合にシリコーン化合物の効果の経時的変化を生じない毛髪化粧料用基剤を提供するためには、重合時に存在するシリコーン化合物や界面活性剤等、エチレン性不飽和単量体及び重合されて得られる重合体が重合時の溶媒に溶解するものであることが必要である。これは、シリコーン化合物分子のまわりでエチレン性不飽和単量体の重合が進むことにより、シリコーン化合物分子と成長した重合体分子が絡み合った複合体が形成されることが必要であるためであると推定される。
なお、シリコーンエマルションの存在下やポリエーテル変性シリコーンを乳化剤とした乳化重合法では、本発明の毛髪化粧料用基剤の場合のような優れた効果は得ることが困難である。これは、シリコーン化合物分子と成長した重合体分子が充分に絡み合った複合体が形成されにくいためであると推定される。
【0017】
前記シリコーン化合物(B)は、重合時の親水性溶媒又は水と親水性溶媒の混媒に溶解するシリコーン化合物であることが望ましいが、他のシリコーン化合物や界面活性剤等を併用して重合時の親水性溶媒又は水と親水性溶媒の混媒に溶解するように調整して使用してもよい。また、重合中の発泡を抑える目的や、基剤の外観を調整したり、基剤の水溶性、毛髪化粧料とした場合の起泡性や消泡性を調整する目的で、他のシリコーン化合物や界面活性剤等を併用してもよい。
前記シリコーン化合物(B)の具体例としては、日本ユニカー社製のFZ−2203、FZ−2207、FZ−2222等が挙げられ、これらの化合物は単独又は併せて用いられる。
前記シリコーン化合物(B)に併用されるシリコーン化合物としては、特に限定されないが、例として、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ポリエーテル変性シリコーン、フッソ変性シリコーン、トリメチルシロキシケイサン、アルコール変性シリコーン、アミノ変性シリコーン等が挙げられ、2種以上の変性がなされた共変性型シリコーンを用いてもよい。特に、異なるHLBのポリエーテル変性シリコーンを組み合わせて系のHLBを調節するのが好適である。
前記シリコーン化合物(B)に併用される界面活性剤としては、特に限定されないが、べたつき防止性や重合中の抑泡性の点から、高分子量のポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン・ブロック共重合体系の非イオン性高分子界面活性剤等を用いてもよい。
【0018】
(C)親水性溶媒又は水と親水性溶媒の混媒:
ここで親水性溶媒とは、水に対する溶解度が10g/水100g(25℃)以上である有機溶媒を意味する。このような親水性溶媒の具体例としては、例えばメタノール、エタノール、2−プロパノール、エチレングリコール及びグリセリン等の炭素数が1〜4の脂肪族1〜4価アルコール、並びにエチルセロソルブ及びブチルセロソルブ等のグリコールエーテル、並びにジオキサン、ジメチルホルムアミド等が挙げられ、これらを単独又は併せて用いることができる。
なお、本発明の毛髪化粧料基剤が人体の皮膚に付着する可能性があることを考慮すれば、前記親水性溶媒のなかでも特に水、エタノール又は2−プロパノールを単独又は併せて用い、重合時の溶媒としては、エタノール又は2−プロパノールを単独又は併用で用いるのがよい。なお、本毛髪化粧料用基剤が水性化粧料に使用される場合は、重合工程終了後の中和工程や希釈工程で水を加えてもよい。
【0019】
(D)ラジカル重合開始剤:
ラジカル重合開始剤(D)としては、溶液重合法に用いられるものであれば特に制限はない。その具体例としては、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル及び過酸化水素等に代表される過酸化物、並びに過硫酸アンモニウム及び過硫酸カリウム等に代表される過硫酸塩、並びに2,2’−アゾビスイソブチロニトリル及び2,2’−アゾビスイソバレロニトリル等に代表されるアゾ系化合物等の公知のものが挙げられ、そのいずれを用いてもよい。
【0020】
本発明の毛髪化粧料用基剤を得るための重合方法は、特に限定されるものではなく、公知の重合方法を用いることができる。例えば、共単量体成分を前記シリコーン化合物を含む親水性溶媒又は水と親水性溶媒の混媒と共に反応容器中に投入し、攪拌混合した後、前記ラジカル重合開始剤を添加し、窒素気流下に撹拌しながら加熱する、いわゆる一括重合法、或は共単量体成分を予め滴下漏斗等に仕込み、前記シリコーン化合物を含む親水性溶媒又は水と親水性溶媒の混媒と前記重合開始剤の入った反応容器中に滴下して、窒素気流下に撹拌しながら加熱する、いわゆる滴下重合法、その他共単量体成分の分割投入による重合方法等が挙げられる。
重合温度は、用いるラジカル重合開始剤の種類等によって異なるため一概には特定することができないが、通常、ラジカル重合開始剤の10時間半減期温度とすることが好ましく、特にその温度が用いる溶媒の還流温度に近い場合、再現性の高い重合を行うことができるので最適である。また、重合時間は、それが8時間よりも短い場合には重合が不完全となって未反応の単量体が残存することがあるため、8時間以上、特に12〜24時間とすることが望ましい。
【0021】
(E)塩基性化合物:
上述の重合により得られた重合体は、通常そのままの状態又は溶媒を除いた状態で使用しうるものであるが、さらに水溶性を付与するために、前記毛髪化粧料用基剤に有機及び/又は無機の塩基性化合物(E)を加えて中和することができる。例えば、重合体のカルボキシル基当量の50〜95%を有機若しくは無機系塩基性化合物によって中和した場合には、毛髪化粧料用基剤に適度な洗髪性を付与することができる。特に好ましいのは中和率が55〜75%の場合である。中和率が50%未満である場合、得られた毛髪化粧料用基剤の洗髪性が不良となる恐れがあり、95%を越える場合、高湿下でのセット保持が弱く、また毛髪化粧料用基剤のアルカリ性が強くなりすぎる恐れがある。特に前記中和率が55〜75%のとき、高湿下でも高いセット力が保持され、しかも洗髪性が良好となる。ただし、使用後に毛髪化粧料を洗い落とさない場合であって、耐洗髪性の必要な用途に本毛髪化粧料用基剤を使用するときは、必ずしも上述の如く中和がなされる必要はない。
前記有機及び/又は無機の塩基性化合物の内で、有機の塩基性化合物の具体例としては、モルホリン、トリイソプロパノールアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール及びトリスヒドロキシエチルアミノメタン等が挙げられる。無機の塩基性化合物の具体例としては、アンモニア、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム等が挙げられる。これらの塩基性化合物は、単独又は併せて用いられる。
【0022】
なお、本発明の毛髪化粧料用基剤には、上記成分の他、紫外線防止剤、酸化防止剤、毛髪栄養剤等の添加剤を含ませることも可能である。
このようにして得られるアクリル樹脂とシリコーン化合物の複合体は、樹脂液の状態又は溶媒を除去した状態で毛髪化粧料用基剤として用いられる。本発明に係る毛髪化粧料用基剤は、水及び親水性有機溶媒に溶解すると共に毛髪化粧料の各種添加剤を加えてヘアークリーム、ヘアーローション、ノンガスエアゾール(ヘアーミスト)、ヘアーフォーム(ヘアームース)、枝毛コート剤等の毛髪化粧料とすることができる。また、前記毛髪化粧料用基剤は、頭髪用着色固着剤として頭髪着色料を混合し、カラースプレー、カラーフォーム、マスカラ等の毛髪化粧料に用いることができる。さらに、本発明の毛髪化粧料用基剤をエアゾール整髪剤に用いる場合には、該基剤を例えば前記重合用溶媒として用いた親水性溶媒に溶解したものを、液化石油ガス(LPG)やジメチルエーテル(DME)等の噴射剤及びその他添加剤等と共にエアゾール容器内に加圧充填し、封入すればよい。この場合、エアゾール容器内に充填される各種成分の配合割合は、通常、それぞれの目的、用途等に応じて適宜調整するのが望ましい。以上の用途以外に、前記毛髪化粧料用基剤は、美顔パックのフィルム形成成分、ハンドクリームのバリヤー形成成分等の皮膚創面の被覆剤用としても好適に用いることができ、さらにシャンプーやリンスの添加剤としても有用である。
【0023】
【実施例】
以下に、本発明を実施例及び比較例、並びに処方例及び比較処方例によって具体的に説明するが、本発明はそれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下に使用される部及び%は、特に示さない限り全て重量基準である。
【0024】
〔毛髪化粧料用基剤の製造〕
下記の表1に示す毛髪化粧料用基剤の製造組成に基づいて、実施例1〜8及び比較例1〜10に係る毛髪化粧料用基剤を各々調製した。
【0025】
【表1】
〈註〉
*1:FZ−2203は、日本ユニカー(株)社製の一般式( III )で表される構造を有するポリエーテル変性シリコーン(25℃粘度:5,000mm2 /s)である。
*2:FZ−2222は、日本ユニカー(株)社製の一般式( III )で表される構造を有するポリエーテル変性シリコーン(25℃粘度:35,000mm2 /s)である。
*3:SH3775Mは、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)社製のポリエーテル変性シリコーン(25℃粘度:1,600mm2 /s)である。
*4:SH244は、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)社製の環状ジメチルポリシロキサン(25℃粘度:2.3mm2 /s)である。
*5:KF96−10は、信越化学工業(株)社製ジメチルポリシロキサン(25℃粘度:10mm2 /s)である。
【0026】
〔実施例1、2、5、6、7及び8〕
還流冷却器、温度計、窒素置換用管及び撹拌機を取り付けた四つ口フラスコに、表1に示すエチレン性不飽和単量体(a)〜(d)計100部、シリコーン化合物、エタノール100部、重合開始剤(初期仕込)を加え、窒素気流下、還流状態(約80℃)で8時間重合を行った。重合後50℃にて有機塩基性物質を同量のエタノールで希釈して加えて中和し、不揮発分40%となるようにエタノールで希釈して毛髪化粧料用基剤を得た。
【0027】
〔実施例3〕
還流冷却器、温度計、窒素置換用管及び撹拌機を取り付けた四つ口フラスコにエタノール100部と表1に示すシリコーン化合物を仕込み、窒素気流下で加熱し、70℃以上で重合開始剤(初期仕込)を添加した。還流下で、表1に示すエチレン性不飽和単量体(a)〜(d)計100部を滴下漏斗より2時間をかけて滴下した。この間、滴下開始後1時間目及び滴下終了時に同種の重合開始剤を0.25部ずつ追加した。滴下終了後6時間加熱を続け重合を完結させた。重合後、50℃にて有機塩基性物質を同量のエタノールで希釈して加えて中和し、不揮発分40%となるように精製水で希釈して毛髪化粧料用基剤を得た。
【0028】
〔実施例4〕
中和後の希釈にエタノールに代えて精製水を使用した以外は、実施例1と同様の操作により、毛髪化粧料用基剤を得た。
【0029】
〔比較例4、5、6及び8〕
表1に示すように、シリコーン化合物やエチレン性不飽和単量体の一部が異なる他は、実施例1と同様の操作で毛髪化粧料用基剤を得た。
【0030】
〔比較例7、9及び10〕
表1に示すように、シリコーン化合物やエチレン性不飽和単量体の一部が異なる他は、実施例3と同様の操作で毛髪化粧料用基剤を得た。
【0031】
〔比較例1及び2〕
表1に示すように、シリコーン化合物を配合せず、またエチレン性不飽和単量体の一部が異なる他は、実施例1と同様の操作で毛髪化粧料用基剤を得た。
【0032】
〔比較例3〕
表1に示すように、シリコーン化合物を配合せず、またエチレン性不飽和単量体の一部が異なる他は、実施例3と同様の操作で毛髪化粧料用基剤を得た。
【0033】
〔毛髪化粧料用基剤の物性の経時的変化の評価〕
次に、実施例1〜8及び比較例1〜10で得られた各毛髪化粧料用基剤、さらに、比較例1、2、3で得られた毛髪化粧料用基剤について対応する実施例1、2、3と同種・同量のシリコーン化合物等をエタノールに溶解して混合したもの(比較例11、12、13)について、外観、水溶液の状態、フィルムの透明性、フィルムの感触の経時変化を以下の方法に従って評価した。
(1) 外観
得られた毛髪化粧料用基剤の外観を肉眼にて観察し、さらに20℃で10日間放置し、その経時的外観を目視により判定した。評価基準を以下に示す。
○:透明であった。
△:かすみがあった。
×:濁るか或いは分離した。
(2) 水溶液の状態
得られた毛髪化粧料用基剤を用いて不揮発成分10%となるように水溶液を調製し、20℃における溶液の状態を目視により観察した。評価基準を以下に示す。
○:透明であった。
△:乳白色を呈した。
×:濁るか或いは分離した。
(3) フィルムの透明性
得られた毛髪化粧料用基剤を不揮発成分10%となるようにエタノールで希釈し、この溶液をガラス板に薄く塗布し、室温でほこりがかからないようにして乾燥させながら観察し、さらに50℃の乾燥器にて20分間乾燥して得られたフィルムについて、室温で10日間にわたって経時的透明性を目視により判定した。評価基準を以下に示す。
○:乾燥過程中及び10日間放置後も均一な透明であった。
△:乾燥途中は白っぽいが、乾燥後及び10日間放置後は透明であった。
×:乾燥過程中及び10日間放置後も不透明な白濁或いは不均一な半透明であった。
(4) フィルムの感触の経時安定性
上記(3)の評価と同時に、そのフィルムを用いて、経時的感触の変化を指触によって判定した。評価基準を以下に示す。
○:10日間を通じて、すべり感、べたつき感に変化はなかった。
△:経時的にすべり感が低下し、10日間放置後はべたつき感が強くなった。
×:最初からべたつき感が強いか或いは指にオイル状のものが付着した。
このようにして得られた実施例1〜8及び比較例1〜13における毛髪化粧料用基剤の性能評価の結果を下記の表2に示す。
【0034】
【表2】
〈註〉
*比較例11は実施例1に配合した同種・同量のシリコーン化合物を比較例1に重合後混合したものである。
*比較例12は実施例2に配合した同種・同量のシリコーン化合物を比較例2に重合後混合したものである。
*比較例13は実施例3に配合した同種・同量のシリコーン化合物を比較例3に重合後混合したものである。
【0035】
表2に示した結果から、本発明の実施例1〜8及び比較例1〜5、7〜10で得られた毛髪化粧料用基剤は、いずれも外観、水溶液の状態、フィルムの透明性において優れたものであり、フィルムの感触の経時安定性も良好であることがわかった。
【0036】
〔毛髪化粧料用基剤の毛髪化粧料として各種剤型による性能評価〕
次に、上述の実施例及び比較例で得られた各毛髪化粧料用基剤を用い、ヘアースプレー、ヘアーカラースプレー、ヘアースタイリングフォーム、ヘアースタイリングミスト等の各種剤型に処方し、各種剤型としての性能を評価した。各性能の評価方法は、以下に示す通りである。実施例に係る基剤を用いた各処方例及び比較例に係る基剤を用いた各比較処方例における配合組成については、特に示さない限り全て重量基準であり、また括弧内に濃度を表示した配合成分の配合量以外は不揮発成分としての配合量を示す。なお、特に定めのない場合の判定基準は次の通りである。
◎:非常に良い。○:良い。△:やや不満あり。×:不良。
(イ) セット保持力(カールリテンション)
長さ22cm、重さ約2gの毛髪を市販品シャンプーで洗浄後、市販リンスで処理し、風乾後、毛髪の下端に10gのクリップを取り付け、毎分30回転するモーターの回転軸に取り付けた。次に、毛髪を回転させながら、約15cm離れたところから上記試験処方を10秒間むらなく噴霧し、直ちに付着した液滴を指でならして、直径約1.2cmのロッドに巻き、クリップで固定し、これを50〜60℃にて30分間乾燥し、さらにそれをデシケーター中でよく冷やしてから、螺旋状に解いて垂直に建てた目盛り付きのガラス板に取り付け、30℃、95%R.H.に調湿した恒温恒湿器中に放置し、10時間経過後における毛髪の先端位置を記録し、次式に基づいてカールリテンションを算出した。数値が大きいほどセット力があることを示す。
カールリテンション(%)={(L−Lt )/(L−L0 )}×100
L :試験毛髪を伸ばしたときの長さ
Lt :恒温恒湿器中に放置し、10時間経過後における試験毛髪の先端位置
L0 :恒温恒湿器に入れる前における試験毛髪の先端位置
(ロ) 平滑性(くし通り性)
セット保持力の評価の場合と同じく、前記試験処方を噴霧して乾燥した毛髪束を用意し、くしで解いたときのくしの通過の難易を評価し、さらに1日経過後に同様の試験をしたときの経時的変化も評価した。
(ハ) 耐粘着性
セット保持力の評価の場合と同じく、前記試験処方を噴霧して乾燥した毛髪束を用意し、毛髪束を手の平で握りしめた時のべたつき感を評価した。
(ニ) フレーキング
セット保持力評価の場合と同様に作成した毛髪束をくしで解いたときに脱落した樹脂の量を次のように評価した。
○:脱落がなかった。
△:やや脱落があった。
×:脱落が多く、粉吹き状態となった。
(ホ) 風合い
セット保持力評価の場合と同じく、作成した毛髪に手で触れたときの官能評価を次のように評価し、さらに1日経過後に同様の試験をしたときの経時的変化も評価した。
◎:なめらかで且つドライタッチであった。
○:多少のごわつき感はあるが満足のいくものであった。
△:ごわつくか或いは粘着した。
×:かなりごわつくか或いは強く粘着した。
(ヘ) 洗髪性
前記試験処方を試験用毛髪束に均一に噴霧し、50〜60℃で乾燥し、40℃の温水に浸漬し、その状態を観察して次のように評価した。
○:1分以内に樹脂成分が毛髪から除去できた。
△:5分程度で樹脂成分が毛髪から除去できた。
×:5分経過後も樹脂成分が毛髪上に残存した。
(ト) 耐摩擦性(ヘアーカラースプレーにおける)
染色堅牢度用摩擦試験機{東洋精機製作所(株)製}のステージ部に綿布、上部にヘアーカラースプレーを噴霧して乾燥させた毛髪束を各々装着し、気温25℃、湿度60%R.H.の測定条件下、荷重300g、30回の往復運動により両者を摩擦させることにより行った。判定は、摩擦後の綿布への色素の転着度を肉眼で観察することにより行った。
【0037】
各種剤型としての処方及び性能の評価結果を下記の表3〜表7に示す。それらによれば、実施例に係る基剤を用いた処方例は、比較例に係る基剤を用いた処方例に比べて優れていることが明らかである。
〔ヘアースプレーの作成と評価〕
下記の表3の上段に示す組成で常法によりヘアースプレーを作成し、その評価結果を同表の下段に示す。
【0038】
【表3】
【0039】
〔ヘアーカラースプレーの作成と評価〕
下記の表4の上段に示す組成で常法によりヘアーカラースプレーを作成し、その評価結果を同表の下段に示す。
【0040】
【表4】
〈註〉
*各カラーペーストは、それぞれ実施例2、6及び比較例2の毛髪化粧料用基剤55部、カーボンブラック8部及びエタノール37部をアルミナボールミルにて10時間混練して得たものである。
【0041】
〔ヘアースタイリングフォームの作成とその評価〕
下記の表5の上段に示す組成で常法によりヘアースタイリングフォームを作成し、その評価結果を同表の下段に示す。
【0042】
【表5】
【0043】
〔ヘアースタイリングミストの作成とその評価〕
下記の表6の上段に示す組成で常法によりヘアースタイリングミストを作成し、その評価結果を同表の下段に示す。
【0044】
【表6】
【0045】
〔ヘアースタイリングゲルの作成とその評価〕
下記の表7の上段に示す組成で常法によりヘアースタイリングゲルを作成し、その評価結果を同表の下段に示す。
【0046】
【表7】
〈註〉
*:カーボポール940液は、カーボポール940(BF Goodrich社製のカルボキシビニルポリマー)を適量の精製水で膨潤溶解し、続いてエタノール10%、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール0.25%を加えゲル化させた後、カーボポール940を0.5%含むゲル溶液となるよう精製水で調製したものである。
【0047】
【発明の効果】
以上のように、本発明に係る毛髪化粧料基剤は、アニオン性の毛髪化粧料用樹脂組成物の中でも特に整髪力の強いアクリル樹脂の性質を維持しつつ、形成されるフィルムの透明性、良好な艶と共にシリコーン化合物の性質である低粘着性と平滑効果を持ち、これにより形成されるフィルムの艶、低粘着性及び平滑効果の経時的変化の問題がなく、基剤を水溶液やアルコール溶液にした場合にも経時的に不溶物を生じることなく安定なものである。さらに、本発明の毛髪化粧料用基剤を用いる整髪剤により形成されたフィルムは粘着及びフレーキングの問題がなく、平滑性に優れ、高温、高湿下においても優れたセット保持力を発揮し、しかもその感触を損なわない等の優れた整髪効果を奏すると共に容易に洗髪除去することができるものである。
Claims (3)
- (A)下記のエチレン性不飽和単量体(a)〜(d)、即ち
(a)分子内にカルボキシル基を一つ以上有するエチレン性不飽和単量体10〜40重量%、
(b)(メタ)アクリル酸と炭素数10〜18の直鎖状、脂環状又は分岐鎖を有する脂肪族モノアルコールとのエステル5〜20重量%、
(c)(メタ)アクリル酸と炭素数1〜8の直鎖状、脂環状又は分岐鎖を有する脂肪族モノアルコールとのエステル5〜50重量%及び
(d)前記エチレン性不飽和単量体(a)〜(c)と共重合可能なその他のエチレン性不飽和単量体5〜60重量%
からなるエチレン性不飽和単量体成分を、(B)前記単量体成分の全量に対して0.1〜150重量%の、25℃において2,000〜100,000mm2/sの粘度を有するシリコーン化合物と、(C)親水性溶媒又は水と親水性溶媒の混媒との存在下に、(D)ラジカル重合開始剤を用いて溶液共重合させて得られる共重合体からなり、
前記エチレン性不飽和単量体(d)が、下記の一般式(I)
前記シリコーン化合物(B)が、下記の一般式( III )
- 共重合体が(E)塩基性化合物で中和された請求項1に記載の毛髪化粧料用基剤。
- 請求項1乃至2の何れか1項に記載の毛髪化粧料基剤を含んでなる毛髪化粧料。
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