JP4129817B2 - 電力変換回路 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電力変換回路に係り、特に、複数のスイッチング素子を用いて直流電力を交流電力にあるいは交流電力を直流電力に変換するに好適な電力変換回路に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、PWMインバータ・コンバータ装置などの電力変換回路は、省エネルギー、装置の小型化、高性能化を目的として、MOSFETやIGBTなどの半導体素子を用い、スイッチング動作を高速化する方向にある。しかし、このスイッチング動作の高速化に伴い、電力変換回路から発生する輻射ノイズが増加することが知られている。
【0003】
具体的には、例えば、IGBTを用いたインバータ回路においては、IGBTがオンからオフに移行するときに発生するサージ電圧を吸収するために、直流電源を基準にして正側と負側に分かれて配置されているとともに互いに直列接続された各相のIGBTのコレクタとエミッタ間には、互いに直列に接続されたスナバコンデンサとスナバダイオードが接続されており、スナバダイオードには、互いに直列に接続されたスナバダイオード用コンデンサと抵抗が並列に接続されている。このスナバコンデンサとスナバダイオードはIGBTがオンからオフに移行するときに発生するサージ電圧を吸収することができるようになっており、スナバダイオード用コンデンサと抵抗は、スナバダイオードがオフする際に、スナバダイオードにリカバリ電流が流れるときのリカバリエネルギーを吸収するようになっている。さらに、スナバダイオード用コンデンサに蓄えられたエネルギーを、スナバダイオードとスナバコンデンサとの接続点と直流電源(平滑コンデンサ)のプラス端子又はマイナス端子に接続された放電抵抗を介して電源に放電する構成が採用されている。
【0004】
スナバダイオード用コンデンサに蓄えられたエネルギーが放電抵抗によって放電されるときに、スナバダイオード用コンデンサと配線インダクタンスとによって共振し、その共振周波数は概ね数MHzから数10MHzであり、スナバダイオード用コンデンサに蓄積されたエネルギーが放電される際に流れる高周波電流が輻射ノイズの要因となっている。
【0005】
そこで、スナバ回路内の共振により発生する高周波電流を抑制するために、正側IGBTのコレクタとスナバコンデンサとの間にインダクタを挿入するとともに負側IGBTのエミッタとスナバコンデンサとの間にインダクタを挿入し、回路の共振による高周波電流を抑制するようにしたもの提案されている(特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】
【0007】
特開平11−8968号公報(第2頁から第3頁、図1)
【発明が解決しようとする課題】
上記従来技術においては、正側IGBTのコレクタとスナバコンデンサとの間にインダクタを挿入するとともに、負側IGBTのエミッタとスナバコンデンサとの間にインダクタを挿入しているため、各インダクタのインダクタンス成分によって、回路の共振による高周波電流を抑制することはできる。しかし、各IGBTのスイッチング動作時に発生するサージ電圧が、インダクタの挿入に伴って増加し、サージ電圧によってはIGBTに悪影響を与える恐れがある。
【0008】
本発明の課題は、スナバダイオードとスナバコンデンサを含むスナバ回路のインダクタンスを大きくすることなく、回路の共振に伴って発生する輻射ノイズを抑制することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、本発明は、電源を基準にして正側と負側に分かれて配置されているとともに互いに直列接続され、スイッチング信号に応答してスイッチング動作する複数のスイッチング素子を備え、各スイッチング素子にスナバコンデンサとスナバダイオードとを直列接続してなるスナバ回路を並列接続し、スナバダイオードにコンデンサと抵抗とを直列接続してなる回路を並列接続し、正側に配置された各スイッチング素子に係るスナバコンデンサとスナバダイオードとの接続点を放電抵抗を介して電源の負側に接続し、負側に配置された各スイッチング素子に係る接続点を放電抵抗を介して電源の正側に接続し、各スナバ回路の両端を第1と第2のコイルを介してスイッチング素子の両端にそれぞれ接続し、第1と第2のコイルを電磁結合して、各第1のコイルと各第2のコイルに互いに逆方向の電流が流れるときに、各第1のコイルと各第2のコイルにおいてインダクタンスを相殺するようにしたものである。この場合、第1のコイルと第2のコイルを一対としてコモンモードチョークで構成することができる。
【0010】
また、前記各スイッチング素子と前記スナバ回路とを導体板を介して接続し配線を積層化してなる構成を採用することで、各スイッチング素子と各スナバ回路とを結ぶ回路の配線インダクタンスを小さくすることができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の一実施形態を示す三相用電力変換回路の一相分の回路構成図である。図1において、インバータ装置を構成する電力変換回路はスイッチング信号に応答してスイッチング動作するスイッチング素子(半導体素子)としてのIGBT2.3を備えており、各IGBT2.3は互いに直列に接続されている。正側のIGBT2は、第1の電極としてのコレクタが、直流電源としての平滑コンデンサ1のプラス(プラス端子)側に接続され、第2の電極としてのエミッタがIGBT3のコレクタに接続されているとともに電動機14に接続されている。IGBT2のコレクタとエミッタにはフリーホイールダイオード2aが逆並列接続されているとともに、コモンモードチョーク15が接続されている。
【0012】
コモンモードチョーク15は、第1のコイル15aと第2のコイル15bを備え、各コイル15a、15bは、その巻初めを同一とするとともに巻方向を同一として構成されており、第1のコイル15aの一端側がIGBT2のエミッタに接続され、他端側がスナバコンデンサ4に接続されている。第2のコイル15bはその一端側がIGBT2のエミッタに接続され、その他端側がスナバダイオード5のカソード側に接続されている。スナバコンデンサ4とスナバダイオード5は、スナバ回路を構成する回路素子として互いに直列に接続されている。スナバダイオード5の両端には、スナバダイオード5のリカバリ時に発生するサージ電圧を吸収する補助サージ電圧吸収素子として、コンデンサ8と抵抗9が互いに直列に接続された状態で接続されている。さらにスナバダイオード5とスナバコンデンサ4との接続点には放電抵抗12が接続されており、放電抵抗12の一端側は、直流電源を放電回路の要素とするために、平滑コンデンサ1のマイナス(マイナス端子)側に接続されている。
【0013】
一方、負側のスイッチング素子としてのIGBT3は、第1の電極としてのコレクタと第2の電極としてのエミッタにフリーホイールダイオード3aが逆並列接続されているとともに、コモンモードチョーク16が接続されている。コモンモードチョーク16はコモンモードチョーク15と同一の仕様で構成されており、第1のコイル16aの一端側がIGBT3のエミッタに接続され、他端側がスナバコンデンサ6に接続されている。第2のコイル16bはIGBT3のコレクタに接続され、他端側がスナバダイオード7のアノード側に接続されている。スナバコンデンサ6とスナバダイオード7はスナバ回路を構成する回路素子として互いに直列に接続されており、スナバダイオード7の両端には、スナバダイオード7のリカバリ時に発生するサージ電圧を吸収する補助サージ電圧吸収素子として、コンデンサ10と抵抗11とが互いに直列に接続された状態で並列に接続されている。またスナバコンデンサ6とスナバダイオード7との接続点には放電抵抗13が接続されており、放電抵抗13の他端側は、直流電源を放電回路の一要素として放電するために、平滑コンデンサ1のプラス(プラス端子)に接続されている。
【0014】
上記構成において、例えば、IGBT2のベースにスイッチング信号が入力されてオンすると、平滑コンデンサ1からの電流はIGBT2のコレクタ、エミッタを介して電動機14に流れる。このあとIGBT2がオフになると、IGBT2の電流変化率di/dtと回路の配線インダクタンスLとにより、IGBT2のコレクタ側には、次の(1)式に示すように、平滑コンデンサ1の電圧を超えたサージ電圧dVが発生する。
【0015】
【数1】
このとき発生するサージ電圧によるエネルギーは、IGBT2のコレクタ、第1のコイル15a、スナバコンデンサ4、スナバダイオード5、第2のコイル15b、電動機14を介して流れ、スナバコンデンサ4によって吸収される。スナバコンデンサ4に吸収されたサージエネルギーがなくなると、スナバコンデンサ4に蓄えられたエネルギーは第1のコイル15a、平滑コンデンサ1、放電抵抗12を介して放電される。
【0016】
さらに、スナバコンデンサ4に蓄積されたエネルギーが放電される際には、スナバダイオード5にはIGBT2がオフした直後に流れる電流とは逆方向のリカバリ電流が流れ、スナバダイオード5がオフしたときに発生するリカバリ電圧がスナバダイオード用コンデンサ8と抵抗9によって吸収される。
【0017】
次に、コンデンサ8に蓄えられたエネルギーは、抵抗9、第2のコイル15b、IGBT3、放電抵抗12を介して放電される。このとき第1のコイル15aに流れる電流がないと仮定すると、コモンモードチョーク15の第2のコイル15bの両端にかかる電圧V2は、次の(2)式で表される。
【0018】
【数2】
(2)式において、電流I1=0なので、電圧V2に影響するインダクタンス成分は、コモンモードチョーク15の第2のコイル15bが有するインダクタンスL2のみとなる。この結果、スナバダイオード用コンデンサ8、IGBT3、放電抵抗12の経路に、第2のコイル15bによるインダクタンスL2を挿入したことになるため、このインダクタンスL2により高周波電流を抑制することができる。
【0019】
次に、コモンモードチョーク15を挿入することによるスナバコンデンサ4、スナバダイオード5の直列回路に流れる電流に対する影響を考察する。図1における電圧V2は(2)式であり、V1は次の(3)式で表される。
【0020】
【数3】
ここで、第1のコイル15aのインダクタンスL1と第2のコイル15bのインダクタンスL2が同一とすると、L1=L2=M(Mはコモンモードチョーク15の相互インダクタンスを示す。)となる。また、電流I1と電流I2は大きさが等しく、向きが逆方向になるので、I1=−I2となる。この関係を(2)式および(3)式に代入すると、(2)式、(3)式におけるインダクタンス成分は0になる。
【0021】
よって、スナバコンデンサ4からスナバダイオード5に流れる電流に関して、コモンモードチョーク15を追加することによってインダクタンス成分が増加することはないので、インダクタンス成分の増加に伴うサージ電圧の増加よってIGBT2、3が破壊するのを防止することができる。
【0022】
このように、本実施形態によれば、IGBT2からスナバ回路への経路にコモンモードチョーク15を挿入することにより、スナバコンデンサ4とスナバダイオード5からなるスナバ回路(直列回路)のインダクタンスを大きくすることなく、IGBT2とコンデンサ8との間にインダクタンスL2を挿入することが可能になるため、回路内の共振で発生する高周波電流を抑制することができる。
【0023】
なお、前記実施形態においては、IGBT2について述べたが、IGBT3についても同様に、IGBT3とスナバ回路との間にコモンモードチョーク16を挿入することにより、スナバダイオード7とスナバコンデンサ6によるスナバ回路(直列回路)のインダクタンスを大きくすることなく、IGBT3とコンデンサ10との間にインダクタンスL2を挿入することが可能になるため、回路内の共振で発生する高周波電流を抑制することができる。
【0024】
次に、本発明の他の実施形態を図2にしたがって説明する。本実施形態はIGBT2、3と各スナバ回路間の配線を積層化したものである。例えば、IGBT2と、スナバコンデンサ4とスナバダイオード5を含むスナバ回路とを接続するに際して、例えば、銅を用いてほぼ矩形形状に形成された導体板18a、18bを配線として積層化し、導体板18aの一端側をIGBT2のコレクタに接続し、導体板18aの他端側をスナバコンデンサ4に接続し、導体板18bの一端側をIGBT2のエミッタに接続し、導体板18bの他端側をスナバダイオード5のカソード側に接続し、スナバ回路を構成する回路素子などをスナバモジュール17内に収納する。なお、IGBT3の場合も同様に、導体板18a、18bを用いて、IGBT3とスナバ回路とを導体板18a、18bを介して接続することができる。
【0025】
IGBT2とスナバ回路とを導体板18a、18bを用いて接続すると、導体板18a、18bが互いに近接して積層化されているので、IGBT2とスナバ回路間の回路インダクタンスLが相殺され、IGBT2、スナバコンデンサ4、スナバダイオード5の経路に係わるインダクタンスLが低減される。このインダクタンスLの低減により、(1)式に示したサージ電圧の低減が可能になり、スナバダイオード用コンデンサ8に印加されるエネルギーも低減されるため、エネルギー放電の際に発生する高周波電流を低減することも可能になる。
【0026】
また、IGBT2.3とスナバ回路とを導体板18a、18bを用いて接続するに際しては、導体板18a、18bの途中にコモンモードチョーク15、16を挿入することで、サージ電圧および高周波電流をさらに低減することが可能になる。
【0027】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、スナバコンデンサとスナバダイオードを含むスナバ回路のインダクタンスを大きくすることなく、補助サージ電圧吸収素子を含む回路内で発生する高周波ノイズを抑制することができ、ノイズ環境が大幅に改善され、ノイズによる内部および外部機器の誤動作を減少させることが可能になり、電力変換回路を用いた装置の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示す回路構成図である。
【図2】本発明の他の実施形態を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 平滑コンデンサ
2、3 IGBT
4、6 スナバコンデンサ
5、7 スナバダイオード
8、10 スナバダイオード用コンデンサ
9、11 スナバダイオード用抵抗
12、13 スナバコンデンサ放電抵抗
14 電動機
15、16 コモンモードチョーク
15a、16a 第1のコイル
15b、16b 第2のコイル
17 スナバモジュール
18a、18b 導体板
Claims (3)
- 電源を基準にして正側と負側に分かれて配置されているとともに互いに直列接続され、スイッチング信号に応答してスイッチング動作する複数のスイッチング素子を備え、前記各スイッチング素子にスナバコンデンサとスナバダイオードとを直列接続してなるスナバ回路を並列接続し、前記各スナバダイオードにコンデンサと抵抗とを直列接続してなる回路を並列接続し、正側に配置された前記各スイッチング素子に係る前記スナバコンデンサと前記スナバダイオードとの接続点を放電抵抗を介して前記電源の負側に接続し、負側に配置された前記各スイッチング素子に係る前記接続点を放電抵抗を介して前記電源の正側に接続し、
前記各スナバ回路の両端を第1と第2のコイルを介して前記スイッチング素子の両端にそれぞれ接続し、前記第1と第2のコイルを電磁結合してなる電力変換回路。 - 電源を基準にして正側と負側に分かれて配置されているとともに互いに直列接続され、スイッチング信号に応答してスイッチング動作する複数のスイッチング素子を備え、前記各スイッチング素子にスナバコンデンサとスナバダイオードとを直列接続してなるスナバ回路を並列接続し、前記各スナバダイオードにコンデンサと抵抗とを直列接続してなる回路を並列接続し、正側に配置された前記各スイッチング素子に係る前記スナバコンデンサと前記スナバダイオードとの接続点を放電抵抗を介して前記電源の負側に接続し、負側に配置された前記各スイッチング素子に係る前記接続点を放電抵抗を介して前記電源の正側に接続し、
前記各スナバ回路の両端を第1と第2のコイルを介して前記スイッチング素子の両端にそれぞれ接続し、前記第1と第2のコイルを一対としてコモンモードチョークで構成してなる電力変換回路。 - 請求項1又は2に記載の電力変換回路において、前記各スイッチング素子と前記スナバ回路とを導体板を介して接続し配線を積層化してなることを特徴とする電力変換回路。
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