JP4129131B2 - 半導体装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、第1導電型半導体基板を有する能動素子部における逆方向バイアス電流による破壊を回避するために、前記逆方向バイアス電流を導通させる整流部を、前記能動素子部と隣接、かつ、並列に前記第1導電型半導体基板中に形成する半導体装置であって、特に、前記整流部に埋め込み型の第2導電型半導体を形成して前記逆方向バイアス電流の導通を容易にすることで、前記能動素子部の高耐圧化と大電流化を共に達成できる半導体装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近時、核融合プラズマ装置、高出力レーザ光源、電子加速器、X線発生装置等では、プラズマ、レーザ、放電等を発生するのに必要なパルス高電圧又はパルス大電流を出力する電源装置を備えている。
【0003】
前記パルスは、前記電源装置に内蔵されているコンデンサの充電及び放電の現象を利用して発生される。前記充電及び放電を効率よく行うためには、前記充電及び放電の切り換えを迅速に行えるスイッチが必要である。前記スイッチに用いられる装置としては、従来より放電ギャップ、水銀整流器、熱陰極放電管等が知られているが、近年は、切り換え時間が短く、高電圧大電流に耐え、かつ、小型軽量化が容易である電力用半導体装置が頻繁に使用されている。
【0004】
図10は、前記電力用半導体装置の一つである静電誘導型サイリスタ(以下、SIThyという)100の断面構造を示す。
【0005】
前記SIThy100は、n-型半導体からなる基板102と、該基板102の一方の表面104に形成される金属製のカソード電極106及びゲート電極108と、前記基板102の他方の表面110に形成される金属製のアノード電極112とによって構成されている。そして、前記カソード電極106と前記ゲート電極108と前記アノード電極112とは、それぞれ電気的に絶縁されている。なお、前記カソード電極106にはカソード端子Kが、前記ゲート電極108にはゲート端子Gが、前記アノード電極112にはアノード端子Aがそれぞれ接続されている。
【0006】
また、前記カソード電極106に対向する前記一方の表面104側には、n+型半導体領域114が形成されている。また、前記ゲート電極108に対向する前記一方の表面104側にはp+型半導体領域116が形成されている。さらに、前記n+半導体領域114を介して、前記カソード電極106の近傍には、少なくとも1以上の埋め込み型のp+型半導体領域118が形成されている。なお、前記埋め込み型のp+型半導体領域118と、ゲート電極108側に形成された前記p+型半導体領域116とは電気的に接続されている。
【0007】
これに対して、前記他方の表面110側では、n型半導体領域120が形成されると共に、前記アノード電極112に対向してp+型半導体領域122が、欠落部124を挟んで断続的に形成されている。
【0008】
図11は、図10のSIThy100の図記号を示す。前記SIThy100のオン状態とオフ状態は、前記ゲート端子Gに印加される電圧(以下、ゲート信号という)の極性と大きさとによって切り換えられる。すなわち、前記ゲート端子Gに正極性のゲート信号を印加すると、アノード端子Aからカソード端子Kの順方向バイアス電流IFの導通が開始され、SIThy100はオン状態となる。これに対して、前記ゲート端子Gに負のゲート信号を印加すると、アノード端子Aからカソード端子Kの方向への順方向バイアス電流IFの導通は阻止され、SIThy100はオフ状態となる。つまり、前記SIThy100は、ゲート信号によってオン状態とオフ状態との切り換えを可能とする不純物半導体のpn接合で形成されたスイッチング素子として機能する。
【0009】
なお、前記SIThy100は、アノード端子Aからカソード端子Kの方向に電流IFを導通させる、いわゆる、一方向性を有するn-型半導体の基板102から形成されているので、前記ゲート信号の極性と大きさに関わらず、前記SIThy100の順方向は、前記アノード端子Aからカソード端子Kの方向である。
【0010】
図12は、前記SIThy100をスイッチング素子として用いたパルス大電流発生装置126の回路図を示す。
【0011】
前記パルス大電流発生装置126は、直流電源128とスイッチ130と電流制限抵抗132と出力端子134及び136を備えた充電器138と、前記SIThy100と、第1コイル140と、第1コンデンサ142とから構成されている。
【0012】
さらに、前記第1コンデンサ142と並列に、第2コンデンサ144と、第1コイル140のインダクタンス値よりも十分に大きなインダクタンス値を有する第2コイル146とが接続されている。また、前記第2コイル146と並列に、前記パルス大電流発生装置126が発生するパルス大電流を流す放電ギャップ148が接続されている。なお、前記SIThy100のゲート端子Gには、ゲート信号を発生するゲート駆動回路150が接続され、該SIThy100のオン状態とオフ状態の切り換えを行う。
【0013】
次に、前記パルス大電流発生装置126の回路動作について説明する。先ず、SIThy100をオフ状態に保持した状態で、スイッチ130を閉じ、充電制限抵抗132と第1コイル140を介して、直流電源128から第1コンデンサ142に電荷が充電される。このとき、第2コンデンサ144にも第2コイル146を介して電荷が充電される。そのため、前記第1コンデンサ142及び前記第2コンデンサ144の電圧は、前記電荷の充電によって、前記直流電源128の電圧値Eにまで充電される。
【0014】
次いで、第1コンデンサ142の電圧と第2コンデンサ144の電圧が、直流電源128の電圧値Eにまで充電された段階で、前記スイッチ130を開くと共に、ゲート駆動回路150から正のゲート信号をゲート端子Gに印加して、SIThy100をオン状態にする。前記オン状態によって、前記SIThy100は電流を導通できる状態となる。すなわち、前記SIThy100は短絡状態になる。前記SIThy100と充電器138は並列に接続され、かつ、前記SIThy100が短絡状態であるため、前記SIThy100と前記充電器138の合成インピーダンスは、アノード端子Aとカソード端子Kとの間で構成されるインピーダンスにほぼ等しくなる。従って、SIThy100がオン状態に変化することによって、パルス大電流発生装置126の回路定数は急変する。
【0015】
前記回路定数の急変に伴い、第1コンデンサ142の放電と第2コンデンサ144の放電がそれぞれ発生する。すなわち、第1コンデンサ142の放電によって、放電電流I1が、該第1コンデンサ142の一端152から第1コイル140とSIThy100を経由して前記第1コンデンサ142の他端154にまで流れ、該第1コンデンサ142の電圧はEから−Eにまで変化する。このとき、前記放電電流I1は、第1コンデンサ142と第1コイル140で決まる第1周波数を有する振動性の電流である。
【0016】
一方、第2コンデンサ144の放電によって、放電電流I2が、該第2コンデンサ144の一端156から第1コイル140とSIThy100と第2コイル146を経由して前記第2コンデンサ144の他端158にまで流れ、該第2コンデンサ144の電圧はEから−Eにまで変化する。このとき、前記放電電流I2は、第2コンデンサ144と第1コイル140と第2コイル146とで決まる第2周波数を有する振動性の電流である。
【0017】
ただし、前記第2コイル146のインダクタンス値が前記第1コイル140のインダクタンス値よりも十分に大きいため、前記第2周波数は前記第1周波数と比較して非常に低い値となる。従って、第2コンデンサ144の放電はゆるやかな放電となり、第2コイル146及び放電ギャップ148には、−2Eの電圧が発生する。
【0018】
前記放電ギャップ148において、−2Eの電圧が前記放電ギャップ148のギャップ間160の耐電圧よりも大きい場合、前記ギャップ間160における絶縁破壊が発生する。前記絶縁破壊の発生によって、前記放電ギャップ148には極めて大きなパルス電流が流れる。このパルス電流が放電ギャップ148を流れることによって、前記第1コンデンサ142と前記第2コンデンサ144に充電された電荷は放電されて、大部分が消滅するに至る。
【0019】
前記パルス電流の大きさとパルス幅は、直流電源128から第1コンデンサ142及び第2コンデンサ144に充電される電荷に変化がなければ、パルス大電流発生装置126の回路定数、すなわち、第1コイル140、第1コンデンサ142、第2コンデンサ144、第2コイル146の大きさ、直流電源128の直流電圧の大きさ、SIThy100のターンオン時間によって自由に変更することが可能である。従って、前記パルス大電流発生装置126は、図13に示すように、パルス電流の値が数万Aでパルス幅が100ns程度のパルス電流162から、パルス電流の値が数百Aでパルス幅が数μsのパルス電流164までの短時間のパルス電流を発生することが可能である。
【0020】
なお、前記パルス電流が発生して、前記電荷が消滅した後は、再度、スイッチ130を閉じると共に、SIThy100をゲート信号によってオフ状態に戻し、直流電源128から第1コンデンサ142及び第2コンデンサ144への充電が再び行われる。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、パルス大電流発生装置126において、放電ギャップ148のギャップ間160における絶縁破壊が発生しない場合がある。前記絶縁破壊が発生しない原因としては、前記放電ギャップ148のギャップ間160を構成する空気等の絶縁物の温度及び湿度等の周辺環境、又は前記放電ギャップ148の表面状態等によって、前記ギャップ間160の耐電圧が変化し、前記ギャップ間160の電圧が−2Eの大きさであっても、該ギャップ間160の絶縁破壊が発生しないためである。
【0022】
このように、前記絶縁破壊が発生しない状態で、SIThy100をオン状態にした場合、パルス大電流発生装置126の回路定数の変化によって、SIThy100に流れる放電電流I3は放電電流I1と放電電流I2とが重ね合せられた電流であり、図14に示すように、時間変化に対して振動性を有する電流となる。
【0023】
すなわち、第1コイル140と第1コンデンサ142とによる第1過渡現象と、第1コイル140と第2コンデンサ144と第2コイル146とによる第2過渡現象がそれぞれ発生する。前記第1過渡現象によって、SIThy100には、第1コンデンサ142から第1コイル140を介して第1コイル140と第1コンデンサ142で決まる周波数を第1周波数とする放電電流I1が流れる。また、前記第2過渡現象によって、SIThy100には、第2コンデンサ144から第1コイル140と第2コイル146を介して第1コイル140と第2コンデンサ144と第2コイル146で決まる周波数を第2周波数とする放電電流I2が流れる。そのため、放電電流I1、I2を重ね合わせた放電電流I3が前記SIThy100に流れる。
【0024】
具体的には、図14に示すように、前記放電電流I3は、第1コンデンサ142及び第2コンデンサ144の充電時には、アノード端子Aからカソード端子Kの方向に流れる順方向バイアス電流IFとして機能するが、絶縁破壊の不発による第1過渡現象及び第2過渡現象の発生によってIF=0の後には、カソード端子Kからアノード端子Aの方向に逆方向バイアス電流IRが流れる。逆方向バイアス電流IRが流れることによって、前記SIThy100は逆方向バイアスの状態となる。
【0025】
前記逆方向バイアス電流IRの大きさは、前記順方向バイアス電流IFの大きさにほぼ等しい。例えば、IF=10000Aの場合、IRは−9000A〜−10000Aである。
【0026】
通常、半導体装置が逆方向バイアスに至る場合、pn接合部を介して小さな漏れ電流が流れるのみであるので、半導体装置の整流作用は発生しない。しかし、前記半導体装置が降伏電圧を超え、かつ、逆方向バイアス電流の値又は逆方向バイアス電流の時間的変化が大きい場合、pn接合部の温度上昇と、それによる熱降伏が発生し、該半導体装置が熱的に破壊される現象がある。
【0027】
SIThy100においても、カソード端子Kからアノード端子Aへの前記逆方向バイアスの印加に加え、カソード端子Kからゲート端子Gにも逆方向バイアス電圧V1が印加される。そのため、前記電圧V1が降伏電圧VBを超え、かつ、放電電流I3が高周波の振動性電流で逆方向バイアス電流IRの時間的変化も大きい場合、ゲート電極108のp+型半導体領域116、118とカソード電極106のn+型半導体領域114との間に形成されるpn接合部166又はチャンネル168において温度上昇が生じ、熱降伏に基づく前記pn接合部166又は前記チャンネル168の破壊が発生するおそれがある。従って、前記逆方向バイアス電流IRの発生は、SIThy100を破壊させ、パルス大電流発生装置126におけるパルス大電流の発生に大きな影響を及ぼす。
【0028】
なお、前記破壊は、前記逆方向バイアス電流IRの時間的変化が1010A/s以上の大きさにおいてが発生し得るとされている。また、前記降伏電圧VBは通常−50V程度であるが、前記逆方向バイアス電流IRの導通によって、pn接合部166又はチャンネル168には−100V〜−200Vの降伏電圧VBが印加されるので、熱降伏は容易に発生する。また、前記破壊は、主としてpn接合部166又はチャンネル168において発生し、カソード電極106とアノード電極112との間で形成されるpn接合部ではほとんど発生しない。
【0029】
このような破壊を回避する目的で、SIThy200と並列に第1導通型半導体素子を接続し、逆方向バイアスが前記SIThy200に印加された場合、逆方向バイアス電流IRを前記1導通型半導体素子に導通させる試みがなされている(平成8年電気学会全国大会講演論文集講演番号761及び特開2001−223354号公報参照)。
【0030】
図15は、SIThy200の機能を有する能動素子部202と、前記能動素子部202に隣接してダイオード部204を共にn-型半導体の基板206に形成した半導体装置208の断面構造を示す。ここで、前記ダイオード部204は、前記基板206の一方の表面210に形成される金属製のアノード電極212と前記基板206の他方の表面214に形成される金属製のカソード電極216とによって構成されている。そして、基板206の一方の表面210のうち、前記アノード電極212に対向する部分には、p+型半導体領域218が形成されている。また、基板206の他方の表面214のうち、前記カソード電極216に対向する部分には、n+型半導体領域220が形成されている。
【0031】
そして、前記ダイオード部204のアノード電極212と前記能動素子部202のカソード電極222とは、第1電極224を介して接続されている。また、前記ダイオード部204のカソード電極216と前記能動素子部202のアノード電極226とは、第2電極228を介して接続されている。
【0032】
従って、図16に示すように前記半導体装置208は、順方向SIThy200の機能を有する能動素子部202と並列にダイオード部204が接続されていると共に、前記能動素子部202が逆方向バイアスであるとき、前記ダイオード部204が順方向バイアスであるように接続されている。そのため、第1アノード端子A1から第1カソード端子K1の方向に順方向バイアス電流IFが流れたとき、前記順方向バイアス電流IFは能動素子部202を導通して流れる。また、第1カソード端子K1から第1アノード端子A1の方向に逆方向バイアス電流IRが流れたとき、前記逆方向バイアス電流IRは、前記ダイオード部204の第2アノード端子A2から第2カソード端子K2を導通して流れる。そのため、SIThy200は逆方向バイアスの状態に至っても、逆方向バイアス電流IRによる熱降伏等による不都合を回避できる可能性がある。
【0033】
しかし、前記半導体装置208を図12に示すパルス大電流発生装置126のスイッチング素子に使用したとしても、パルス幅が数μs以下の逆方向バイアス電流IRの時間的変化は極めて大きいので、前記逆方向バイアス電流IRの時間的変化は1010A/s以上を容易に超えるおそれがある。従って、逆方向バイアス電流IRは前記ダイオード部204を導通せず、図15に示すように、カソード電極222からゲート電極230の方向に流れる。すなわち、前記逆方向バイアス電流IRは、基板206の一方の表面210のうち、カソード電極222に対向する部分に形成されたn+型半導体領域232から、前記一方の表面210のうち、ゲート電極230に対向する部分に形成されたp+型半導体領域234の方向及び/又はp+型半導体領域234と電気的に接続された埋め込み型のp+型半導体領域236の方向に流れる。
【0034】
さらに、ダイオード部204の耐電圧を確保するために、前記耐電圧を能動素子部202の耐電圧に近づける程、前記逆方向バイアス電流IRが前記ダイオード部204を導通しなくなる現象が本出願人によって確認されている。
【0035】
従って、前記p+型半導体領域234、236と前記n+型半導体領域232との間に形成されるpn接合層238又はチャンネル240において、逆方向バイアス電圧V1が印加されることによる熱降伏の破壊が容易に発生するおそれがある。
【0036】
また、従来では、逆方向バイアス電流IRを有効にダイオード部に流すように、図17に示すように、能動素子部242及び第1ダイオード部244と並列に、前記能動素子部242よりも耐電圧の低いダイオード246を複数個直列に接続して構成された第2ダイオード部248を接続して構成された半導体装置250が開示されている(特開2001−223354号公報参照)。
【0037】
この半導体装置250は、図18に示すように、n-型半導体の基板252において、前記基板252の一方の表面254に形成される第1ダイオード部244に隣接して、複数個のダイオード246が前記一方の表面254に形成され第2ダイオード部248を構成している。そして、前記第2ダイオード部248の一端256は、第1ダイオード部244のアノード電極258と接続されている。また、前記第2ダイオード部248の他端260は、金属製の側面電極262を介して前記第1ダイオード部244のカソード電極264に接続されている。
【0038】
耐電圧の低いダイオード246が複数個接続されているので、逆方向バイアス電流IRが前記半導体装置250を流れたとしても、前記逆方向バイアス電流IRは確実に第1ダイオード部244及び第2ダイオード部248を導通する。そのため、前記能動素子部242の破壊を阻止することが可能であるとされている。
【0039】
しかしながら、前記半導体装置250の場合、複数個のダイオード246を使用するため、半導体装置250の構造が複雑となる。また、前記半導体装置250の作製工程で使用されるマスクパターンの枚数が増加すると共に、該マスクパターンも複雑なものとなり、製造コストが増大する欠点がある。
【0040】
また、前記能動素子部242より耐電圧の低いダイオード246を複数個接続した第2ダイオード部248の耐電圧が前記能動素子部242の耐電圧を超える場合、p+型半導体領域266とn+半導体領域268との間に形成されるpn接合部270又はチャンネル272で破壊が容易に発生するおそれがある。従って、第2ダイオード部248の接続だけであっても、前記破壊を回避することは困難である。
【0041】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、例えば逆導通サイリスタ等の半導体装置において、逆方向バイアス電流の導通を容易にすることで、高耐圧化と大電流化を共に達成することができる半導体装置を提供することを目的とする。
【0042】
【課題を解決するための手段】
上記した課題を解決するために、本発明に係る半導体装置は、第1導電型半導体基板の一方の表面に形成された第1電極と、前記半導体基板の他方の表面に形成された第2電極とを備え、かつ、前記一方の表面側において、前記第1電極と電気的に絶縁して形成されていると共に、前記半導体基板を介して前記第2電極から前記第1電極に流れる電流の導通を制御する制御電極とを有する能動素子部と、前記第1電極と前記第2電極との間で、前記能動素子部と並列に、前記半導体基板を介して前記第1電極から前記第2電極に電流を導通させる逆導通機能を備えた整流部とを備え、前記整流部は第1導電型半導体と第2導電型半導体による複数の接合層から構成され、前記整流部の第1電極近傍には、第2導電型半導体からなる埋め込み型の第2導電型半導体領域が形成されていると共に、前記能動素子部の第1電極と前記整流部の第1電極との間を電気的に絶縁する分離層が前記半導体基板表面に形成されていることを特徴とする。
【0043】
前記整流部における第1導電型半導体と第2導電型半導体による複数の接合層の構成は、前記半導体装置が逆方向バイアスの状態のとき、前記整流部が逆導通、すなわち、順方向バイアスとなるように構成される。すなわち、前記半導体装置が逆方向バイアスの状態である場合、前記半導体装置の能動素子部には逆方向バイアス電流が流れると共に、前記制御電極と前記第1電極との間には、逆方向バイアス電圧が発生し、第1半導体領域と第2半導体領域との間に形成される接合層における熱降伏と、前記熱降伏による破壊とを発生させるおそれがある。しかし、前記能動素子部と並列に整流部が接続され、かつ、前記整流部は順方向バイアス状態であるので、前記逆方向バイアス電流は、前記整流部を介して流れ、前記能動素子の破壊は発生しない。
【0044】
また、前記能動素子の破壊の回避を整流部の配設によって実現するので、半導体装置は簡単な構造となり、製造コストの削減も実現することが可能である。
【0045】
また、前記整流部の第1電極近傍に埋め込み型の第2導電体層を形成することによって、前記複数の接合層を構成することが可能となる。すなわち、前記整流部は略複数の整流素子から構成されている。従って、前記破壊を回避する効果をさらに促進することが可能となる。なお、前記整流部としては、pn接合ダイオードに限定されるものではなく、耐電圧を確保できる整流素子であればよく、ショットキーバリアダイオード、トンネルダイオード等も使用できる。
【0046】
なお、前記能動素子とは、前記課題で取り上げたSIThyに限らず、静電誘導型トランジスタ、ゲートオンサイリスタ(GTO)等の電力用半導体装置を始めとして、逆方向バイアス電流による熱破壊が発生する全ての半導体デバイスを意味する。
【0047】
また、前記半導体装置とは、前記半導体デバイスを含むと共に、前記半導体デバイスと並列に整流部を接続している装置を意味する。
【0048】
また、前記第1導電型半導体とは、不純物半導体のことであり、p型半導体又はn型半導体であり、場合によっては、不純物密度が高いp+型半導体又はn+型半導体、さらには不純物密度の低いp-型半導体又はn-型半導体であっても構わない。
【0049】
また、前記第2導電型半導体とは、その多数キャリアが前記第1導電型半導体の多数キャリアと異なる半導体を意味し、前記第1導電型半導体を限定すれば、第2導電型半導体は直ちに決定される。例えば、前記第1導電型半導体がp型半導体であれば、前記第2導電型半導体はn型半導体となる。
【0050】
また、第1電極と第2電極は対になっており、順方向バイアス電流が流れる方向は第2電極から第1電極の方向である。例えば、SIThyの場合、第2電極はアノードであり、第1電極はカソードになる。また、トランジスタの場合、第2電極はコレクタであり、第1電極はエミッタとなる。
【0051】
また、前記制御電極とは、スイッチング素子としての半導体装置における第2電極から第1電極への電流の導通を制御する電極であり、例えば、SIThyの場合、前記制御電極はゲートになる。また、トランジスタの場合には、前記制御電極はベースである。
【0052】
また、前記分離層とは、前記能動素子部と前記整流部を電気的に絶縁する層であると共に、前記能動素子部又は前記整流部を流れる電子、正孔等のキャリア又は電流を前記整流部又は前記能動素子部に流さないようにする層である。この場合、前記分離層には、前記第1導電型半導体基板表面の漏れ電流を防止する目的で絶縁層を形成するようにしてもよい。
【0053】
また、前記整流部において複数の接合層を形成するために、第1電極に対向する前記第1導電型半導体基板表面には、第2導電型半導体からなる第2導電型半導体領域を形成させるようにしてもよい。
【0054】
そして、前記埋め込み型の第2導電型半導体領域は、前記整流部の第1電極に対向する半導体基板表面に形成される第2導電型半導体領域と電気的に絶縁されていると共に、前記制御電極に対向する半導体基板表面に形成される第2導電型半導体からなる第2導電体型半導体領域と電気的に接続するようにしてもよい。
【0055】
前記第1電極に対向する第2導電型半導体領域と前記第1導電型半導体基板の第1導電型半導体とによって第1の接合層が形成され、前記埋め込み型の第2導電型半導体領域と前記第1導電型半導体基板の第1導電型半導体とによって第2の接合層及び第3の接合層を形成することができる。そして、前記第1〜第3の接合層の配置は、能動素子部が逆方向バイアス状態に至ったとき、逆方向バイアス電流を前記接合層における順方向バイアス電流として導通することが可能であるように配置する。例えば、前記第1導電型半導体領域をn型半導体領域とし、前記第2導電型半導体領域をp型半導体領域とした場合、第1電極の表面と前記第2電極の近傍にはそれぞれp型半導体領域が形成される。従って、第1電極から第2電極の方向に少なくとも3個のpn接合層が形成されることになる。それ故、前記整流部は少なくとも3個のpn接合ダイオードを内蔵することになる。
【0056】
このように、第1電極の近傍に複数個の接合部を形成することによって、能動素子部における制御電極と第1電極との間の逆方向バイアス電圧の印加と、逆方向バイアス電流の導通とをそれぞれ阻止することができると共に、前記能動素子部の破壊の回避を実現することができる。
【0057】
さらに、前記埋め込み型の第2導電型半導体領域と制御電極に対向して形成されている第2導電型半導体領域とを電気的に接続することによって、逆方向バイアス電流の前記整流部における導通はより一層促進される。
【0058】
また、前記埋め込み型の第2導電型半導体領域と、前記整流部の第1電極に対向する半導体基板表面に形成される第2導電型半導体領域との距離L1を10μm以下の範囲内に形成する。前記L1が10μmを超えても接合層は形成されるが、埋め込み型の第2導電型半導体領域による導通の促進の効果が容易に得られないおそれがある。
【0059】
他方、前記整流部の第2電極と前記第2電極に対向する半導体基板表面との間に、ショットキー接合を形成するようにしてもよい。前記ショットキー接合は1導通型接合であるため、第1電極から第2電極の方向に逆方向バイアス電流が導通できるように前記接合を形成すればよい。従って、前記能動素子部が順方向バイアス状態である場合、前記ショットキー接合は逆導通状態となるので、順方向バイアス電流を導通せず、前記能動素子部に前記順方向バイアス電流が流れる。また、前記ショットキー接合による第2電極からのキャリア注入によって、前記第2電極近傍における再結合を促進し、逆方向バイアス電流の前記整流部における導通を容易にすることが可能となる。
【0060】
さらに、ショットキー接合に代えてオーミック接合を形成してもよく、前記第1導電型半導体基板の第1導電型半導体とは不純物濃度が異なる第1導電型半導体を形成して、前記第2電極との間にオーミック接合を形成してもよい。特に不純物濃度が大きな第1導電型半導体領域を前記第2電極表面に形成すれば、能動素子部が逆方向バイアス状態になった場合、前記第1導電型半導体領域の多数キャリアが整流部の第1電極の方向に大量に移動するため、逆方向バイアス電流は整流部により一層導通しやすい。
【0061】
また、前記分離層に対向する半導体基板中には、整流部に形成された埋め込み型の第2導電型半導体領域を延在させるようにしてもよい。前記第2導電型半導体領域の延在によって、逆方向バイアス電流の整流部への導通をより一層促進することが可能となる。
【0062】
また、前記能動素子部の第1電極近傍に形成される埋め込み型の第2導電型半導体領域は少なくとも1個以上の半導体領域であると共に、制御電極に対向する前記第1導電型半導体基板表面に形成される第2導電体型半導体領域とは電気的に接続されている。
【0063】
前記埋め込み型の第2導電型半導体領域と制御電極における第2半導体領域を電気的に接続することによって、制御電極から印加される能動素子部におけるターンオン状態とターンオフ状態のスイッチングを短時間で切り換えることが可能となる。
【0064】
さらに、前記分離層の幅をL2とし、前記能動素子部の第1電極に対向する半導体基板表面に形成される第1導電型半導体領域と、前記埋め込み型の第2導電型半導体領域との距離をL3とした場合、L2>L3となるように前記埋め込み型の第2導電型半導体領域を形成する。L2>L3とすることによって、半導体装置が逆方向バイアス状態となり、逆方向バイアス電圧が前記能動素子部の第1電極と制御電極に印加されたとしても、逆方向バイアス電流が分離層を介して能動素子から離間している整流部を導通するので、能動素子部の破壊は惹起しない。従って、半導体装置の高電圧化と大電流化を共に達成することが可能となる。なお、L2≦L3である場合、前記整流部を流れる逆方向バイアス電流が分離層を介して能動素子部の第2導電型半導体領域と導通して、前記能動素子部を破壊するおそれがある。そのため、能動素子部における短時間のスイッチングを阻害することになる。
【0065】
また、前記整流部を前記制御電極の近傍に形成すれば、逆方向バイアス電流及び逆方向バイアス電圧による破壊を回避することが可能である。前記破壊は制御電極に対向する第2導電型半導体領域と第1導電型半導体領域との間で発生する場合が多いためである。
【0066】
ここで、幅L2を20μm以下の範囲内、望ましくは20μm程度に設定することによって、前記破壊の回避の効果が容易に得られる。
【0067】
また、能動素子部の第1電極近傍に形成された埋め込み型の第2導電型半導体領域同士の距離をL4、分離層に最も近い前記第2導電型半導体領域と整流部に形成されている埋め込み型の第2導電型半導体領域との距離をL5とした場合、L4≧L5であることが望ましい。距離L4を距離L5より大きくすることによって、能動素子部が順方向バイアス状態である場合には、第2導電型半導体領域の間における多数キャリアの通過が容易となり、順方向バイアス電流の導通が促進される。一方、前記能動素子部が逆方向バイアス状態である場合には、整流部に形成されている埋め込み型の第2導電型半導体領域が分離層にまで延在するので、整流部における逆方向バイアス電流の導通が促進され、破壊の回避を達成することが可能となる。
【0068】
また、幅L2と距離L4、L5の間では、L2>L4、L2>L5であることが望ましい。L2≦L4、L2≦L5では分離層の幅は非常に小さい。このような状態で半導体装置が逆方向バイアス状態に至った場合、整流部の第1電極に対向する第2導電型半導体領域又は前記整流部に形成された埋め込み型の第2導電型半導体領域と、能動素子部の第1電極に対向する第1導電型半導体領域との間には逆方向バイアス電流の分流が発生する。この分流によって、能動素子部の破壊を回避する目的で整流部に流れている逆方向バイアス電流が、前記能動素子部にも流れることになり、破壊を促進させるおそれがある。また、前記能動素子部の埋め込み型の第2導電型半導体領域の間の第1導電型半導体領域を電子が導通しやすくなり、逆方向バイアス電流の導通を助長させ、能動素子部における破壊が発生するおそれもある。従って、L2>L4、L2>L5であれば、逆方向バイアス状態においても、半導体装置における破壊の回避を実現することが可能となる。
【0069】
上記した効果を奏するためには、距離L4は3μm以下とし、距離L5を0.1μm以下とすることが望ましい。
【0070】
また、L1>L3とすることによって、逆方向バイアス状態における能動素子部の第1電極と制御電極との間で発生する短絡状態を回避することが可能となる。すなわち、半導体装置が逆方向バイアス状態に至った場合、L1>L3であれば、整流部の第1電極に対向する第2導電型半導体領域と前記整流部に形成された埋め込み型の第2導電型半導体領域との間の電圧降下が、能動素子部の第1電極に対向する第1導電型半導体領域と埋め込み型の第2導電型半導体領域との間の逆方向バイアス電圧よりも高くなるため、逆方向バイアス電流は整流部に導通し、能動素子部に逆方向バイアス電流が導通する可能性がないためである。
【0071】
さらに、前記整流部は前記能動素子部の中央部に形成される。前記整流部を前記能動素子部の側部に配置すると、破壊の回避の効果があまり得られない。
【0072】
また、前記整流部は、前記半導体基板に形成された複数の能動素子部の間に形成するようにしてもよい。
【0073】
そして、前記整流部の第1電極が前記半導体基板の一方の表面側を占有する割合は、0.5%以上、10%以下の範囲内であればよい。前記割合が10%以上である場合、能動素子部のターンオン電圧が、従来技術に係る半導体装置と比較して5%以上も増加する。そのような半導体装置をスイッチング素子として使用した機器は信頼性の低下を招くおそれがある。
【0074】
また、上記した半導体装置における能動素子部の第1電極から前記第2電極の方向に電流を導通させた場合、前記能動素子部の第1電極と前記整流部の第1電極との間に発生する逆方向バイアス電圧V1と、前記能動素子部の第1電極と前記制御電極との間で発生する逆方向バイアス電圧V2との間は、V1>V2とする。例えば、L2=4μm、L3=2μmである場合、V1=65V、V2=60Vとなり、能動素子部の破壊を回避することが可能となる。なお、V1≦V2である場合、逆方向バイアス電流が整流部を導通しなくなる結果、能動素子部における破壊を促進させるおそれがある。また、前記逆方向バイアス電圧V1とV2の関係によって、能動素子部の降伏電圧を増加させることができるので、半導体装置の高電圧化と大電流化を共に実現することが可能となる。
【0075】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る半導体装置を、静電誘導型サイリスタ(SIThy)に適用した好適な実施の形態を図1〜図9を参照しながら説明する。
【0076】
本実施の形態に係る半導体装置10は、図1に示すように、能動素子部であるSIThy12と、整流部であるダイオード14と、SIThy12とダイオード14とを電気的に絶縁する分離層16とから構成されている。前記SIThy12と前記ダイオード14と前記分離層16は、第1導電型半導体のn-型半導体からなる基板18に形成される。
【0077】
基板18の一方の表面20には、SIThy12の第1電極である金属製、例えばアルミニウム製のカソード電極22と、SIThy12の制御電極である金属製のゲート電極24と、ダイオード14の第1電極である金属製の第1アノード電極26がそれぞれ形成されている。これに対して、基板18の他方の表面28には、SIThy12及びダイオード14の第2電極である金属製の第2アノード電極30が形成されている。また、カソード電極22とゲート電極24とはSiO2膜32によって電気的に絶縁されている。また、カソード電極22と第1アノード電極26とは分離層16を構成する例えばSiO2膜32によって電気的に絶縁されており、n+型半導体領域34の側面とp+型半導体領域48の側面との間の距離がL2として規定されている。
【0078】
そして、SIThy12のカソード電極22にはカソード端子Kが、ゲート電極24にはゲート端子Gが、第2アノード電極30には第2アノード端子A2がそれぞれ接続されている。また、ダイオード14の第1アノード電極26には第1アノード端子A1が接続されている。そして、カソード端子Kと第1アノード端子A1は電気的に接続されると共に、カソード端子Kとゲート端子Gと第2アノード端子A2は互いに電気的に絶縁されている。
【0079】
また、SIThy12において、基板18の一方の表面20のうち、カソード電極22に対向する部分には、n+型半導体領域34が形成され、前記一方の表面20のうち、ゲート電極24に対向する部分には、p+型半導体領域36が形成されている。
【0080】
さらに、前記n+型半導体領域34の拡散底部(n+−n-接合部分)から距離L3を隔てて複数の埋め込み型のp+型半導体領域38が形成されている。そして、埋め込み型のp+型半導体領域38の間に形成されているn-型半導体は、該n-型半導体の多数キャリアである電子が導通するチャンネル40として機能する。なお、ゲート電極24下のp+型半導体領域36と埋め込み型のp+型半導体領域38とはマスクパターン形成の方法等により、電気的に接続されている。
【0081】
これに対して、第2アノード電極30に対向する他方の表面28には不純物濃度が異なるn型半導体領域42が形成されている。また、前記n型半導体領域42のうち、埋め込み型のp+型半導体領域38に対向する部分にはp+型半導体領域44が形成されている。従って、ゲート電極24に対向するn型半導体領域42の部分には、n型半導体領域42による欠落部46が形成されている。
【0082】
また、ダイオード14において、基板18の一方の表面20のうち、第1アノード電極26に対向する部分には、p+型半導体領域48が形成されている。また、第1アノード電極26下においては、p+型半導体領域48の拡散底部(pn接合部分)から距離L1を隔てて埋め込み型のp+型半導体領域50が形成されている。この埋め込み型のp+型半導体領域50は、予めSIThy12におけるp+型半導体領域36及び埋め込み型のp+型半導体領域38と電気的に接続されている。また、埋め込み型のp+型半導体領域50はダイオード14から分離層16にまたがって形成されている。
【0083】
これに対して、基板18の他方の表面28のうち、ダイオード14における第2アノード電極30に対向する部分においては、n型半導体領域42による欠落部52が形成されている。従って、ダイオード14は、第1アノード電極26から第2アノード電極30の方向に、p+型半導体領域48と基板18のn-型半導体領域による第1のpn接合部54と、基板18のn-型半導体領域と埋め込み型のp+型半導体領域50とによる第2のpn接合部56と、埋め込み型のp+型半導体領域50と基板18のn-型半導体領域とによる第3のpn接合部58とが直列に形成されている。そのため、ダイオード14は、pn接合ダイオードが3個直列に接続された構造になっている。
【0084】
一方、基板18の他方の表面28のうち、分離層16と対向する部分には、n型半導体領域42とp+型半導体領域44とが重なった形態となっている。さらに、分離層16下には、埋め込み型のp+型半導体領域50が延在して形成されている。延在して形成することによって、ダイオード14における逆方向バイアス電流IRの導通が促進され、半導体装置10の高電圧化と大電流化を実現できる。ただし、SIThy12における埋め込み型のp+型半導体領域38、又はダイオード14における埋め込み型のp+型半導体領域50に相当する半導体領域を分離層16に対向して形成した場合、分離層16の幅L2が小さいとダイオード14を導通している逆方向バイアス電流IRが前記半導体領域を介して埋め込み型のp+型半導体領域38からn+型半導体領域34へと分流され、チャンネル40において破壊が発生することが予想される。従って、幅L2はできる限り拡張する必要がある。
【0085】
本実施の形態に係る半導体装置10は、図2に示すように、SIThy12にダイオード14が並列に接続されただけの簡単な構成である。すなわち、SIThy12のカソード端子Kとダイオード14の第1アノード端子A1が接続され、また、SIThy12のアノードとダイオード14のカソードが接続され、第2アノード端子A2として構成されている。そのため、従来技術に係る半導体装置208、250よりも簡単な構成となっている。
【0086】
ここで、SIThy12のゲート端子Gに印加されるゲート信号の極性と大きさとによって、SIThy12のオン状態とオフ状態を切り換えることができる。すなわち、ゲート端子Gに正極性のゲート信号を印加すると、該SIThy12はオン状態となり、第2アノード端子A2からカソード端子Kの方向への順方向バイアス電流IFの導通が開始される。順方向バイアス電流IFが導通する方向が、SIThy12の順方向である。
【0087】
これに対して、前記ゲート端子Gに負のゲート信号を印加すると、SIThy12はオフ状態となり、アノード端子Aからカソード端子Kの方向への逆方向バイアス電流IRの導通は阻止される。この場合、前記導通の阻止は、逆方向バイアス電流IRがダイオード14を経由して導通することによって達成される。すなわち、SIThy12に接続されているダイオード14の順方向は、第1アノード端子A1から第2アノード端子A2の方向であるので、逆方向バイアス電流IRは、ダイオード14を経由して導通する。
【0088】
図3は、SIThy12をオン状態にして、SIThy12を順方向バイアス状態にしたときの第2アノード端子A2とカソード端子Kとの間の電圧降下V3と、第2アノード端子A2からカソード端子Kの方向に流れる順方向バイアス電流IFの関係を示す。この図3において、曲線(実線)64は、本実施の形態に係る半導体装置の特性を示し、曲線(破線)66は、従来例に係る半導体装置の特性を示す。これらの特性64及び66を比較した場合、例えばIF=10000A、V3=10Vのとき、電圧降下V3の変動は、約5%以内に収まっている。
【0089】
一般に、電圧降下V3の変動は、前記半導体装置10又はSIThy12を、例えば図12のパルス大電流発生装置126に導入する際に問題となる。すなわち、何らかの原因でSIThy100を交換する場合、交換する前のSIThy100の電圧降下V3と交換後の新たなSIThy12の電圧降下V3のばらつきが大きいと、パルス大電流発生装置126が発生するパルス大電流の大きさ及びパルス幅が変化し、パルス大電流発生装置126の信頼性が低下する。この問題は、前記半導体装置10又はSIThy12を、市販のパルス電源の構成部品として使用する場合においても同様であり、順方向バイアス状態における特性を、できる限り市場に流通している半導体装置又はSIThyの特性に合わせていくことが必要である。
【0090】
上記した観点から、図3に示すように、本実施の形態に係る半導体装置10は、従来例に係る既に市販された前記半導体装置と比較して、電圧降下V3の変動が約5%以内と小さく、市販品の交換部品として好適であるといえる。
【0091】
このような低い変動を達成させるためには、前記ダイオード14の第1アノード電極26が基板18の一方の表面20を占有する割合が、0.1%以上であり、かつ、10%以下であることが望ましい。10%を超えるとカソード電極22の領域が減縮され、順方向バイアス電流IFの導通を阻害し、電圧降下V3の変動をもたらす。また、0.1%以下である場合には、逆方向バイアス電流IRをダイオード14に有効に導通させることが困難となる。
【0092】
図4は、SIThy12が逆方向バイアス状態に至ったときに、カソード端子Kと第1アノード端子A1との間に発生する逆方向バイアス電圧V1と、カソード端子Kから第1アノード端子A1に導通する逆方向バイアス電流IR1との関係を示す特性68と、カソード端子Kとゲート端子Gとの間に発生する逆方向バイアス電圧V2と、カソード端子Kからゲート端子Gに流れる逆方向バイアス電流IR2との関係を示す特性70とをそれぞれ示している。
【0093】
ここで、逆方向バイアス電圧V1とは、より詳細には、図1のn+型半導体領域34とp+型半導体領域48との間に印加される電圧であり、逆方向バイアス電流IR1はn+型半導体領域34からp+型半導体領域48の方向に流れる電流である。また、逆方向バイアス電圧V2とは、n+型半導体領域34とp+型半導体領域36、38との間に印加される電圧であり、逆方向バイアス電流IR2はn+型半導体領域34からp+型半導体領域36、38の方向に流れる電流である。
【0094】
図4において、逆方向バイアス電圧V1の降伏電圧をV1Bとし、逆方向バイアス電圧V2の降伏電圧をV2Bとした場合、V1B=65Vであり、V2B=50Vとなる。すなわち、V1B>V2Bであり、n+型半導体領域34とp+型半導体領域36、38との間の降伏電圧V2BがV1Bより低い値となる。これにより、チャンネル40での熱降伏による破壊を回避することが可能となる。なお、半導体装置10において、V1B=65V、V2B=50Vにおける逆方向バイアス電流である降伏電流IBは、IB=約5mAである。
【0095】
なお、V1B≦V2Bである場合、チャンネル40の破壊のおそれが高まると共に、降伏電圧V2Bの電圧降下によってゲート信号によるSIThy12のオン状態とオフ状態を切り換えることができなくなるおそれがある。
【0096】
ところで、V1B>V2Bの場合、n+型半導体領域34とp+型半導体領域48との間において熱降伏による破壊が発生するおそれが予想される。しかし、分離層16下におけるn+型半導体領域34とp+型半導体領域48間の幅L2と、カソード電極22下におけるn+型半導体領域34と埋め込み型のp+型半導体領域38との距離L3との関係を、L2>L3とするように半導体装置10を形成しても、V1B>V2Bとなり、熱降伏による破壊を回避することが可能となる。例えば、半導体装置10において、L2=4μm、L3=2μmと設定すれば、V1B=65V、V2B=60Vとなり、V1B>V2Bとなるので、前記破壊の回避を容易に達成することができる。なお、L2≦L3の場合、ダイオード14を流れている逆方向バイアス電流IRが分離層16を介してp+型半導体領域36又は埋め込み型のp+型半導体領域38を分流して導通するおそれがある。そのため、L2≦L3とならないように半導体装置10を設計することが望ましい。上記した結果より、V1B>V2Bと、L2>L3の条件を満足することによって半導体装置10の高電圧化と大電流化を実現することが可能となる。
【0097】
また、V1B>V2Bの場合でも、ダイオード14は順方向バイアス状態であるから、パルス大電流である逆方向バイアス電流IRはダイオード14の第1アノード端子A1から第2アノード端子A2の方向に流れる。従って、逆方向バイアス電流IR1及びIR2は、逆方向バイアス電流IRと比較して極めて小さい値に抑制することが可能である。すなわち、図4に示すように、逆方向バイアス電流IRは、IR=数百A〜数万Aの大きさであるのに対して、降伏電流IBの大きさは約5mA程度の大きさにまで抑制されている。
【0098】
また、L1>L3とすることで、逆方向バイアス電流IRによる半導体装置10の破壊を回避することができる。例えば、L1=4μm、L2=2μmとした場合、V2B=50V、p+型半導体領域48と埋め込み型のp+型半導体領域50との間の電圧降下は70Vとなり、逆方向バイアス電流IRはより一層ダイオード14を導通するようになる。従って、SIThy12における破壊は回避できる。なお、L1≦L3で半導体装置10が逆方向バイアス状態に至った場合、降伏電圧V2Bの値がp+型半導体領域48と埋め込み型のp+型半導体領域50との間の電圧降下よりも大きくなるので、逆方向バイアス電流IRがSIThy12を導通し、チャンネル40における破壊が発生するおそれがある。
【0099】
また、図1に示すように、埋め込み型のp+型半導体領域50を分離層16まで延在させることによって、半導体装置10の高電圧化及び大電流化を図ることができる。この場合、分離層16まで延在させることにより、逆方向バイアス電流IRの導通がより一層容易となり、逆方向バイアス状態における半導体装置10の耐電圧は向上し、チャンネル40における破壊を回避することが可能となる。
【0100】
また、埋め込み型のp+型半導体領域38同士の距離をL4とし、分離層16に最も近いSIThy12における埋め込み型のp+型半導体領域38と埋め込み型のp+型半導体領域50との距離をL5とした場合、L4≧L5とすることでも半導体装置10の高電圧化及び大電流化を実現可能である。特に幅L2との関連において、L2>L4、L2>L5とすれば、上記した破壊を回避する効果がより一層顕著なものとなる。すなわち、幅L2と比較して距離L4とL5を小さくすることによって、SIThy12が逆方向バイアス状態に至ったときに、チャンネル40を通過する電子76の導通を阻止し、結果的に逆方向バイアス電流IRの導通を阻止することが可能となる。従って、逆方向バイアス電流IRはダイオード14を導通する。例えば、距離L4を2μm〜3μm、距離L5を0.1μm以下にそれぞれ設定し、幅L2を20μm程度まで拡張して半導体装置10を構成した場合、順方向バイアス状態では、チャンネル40を電子76が容易に通過することが可能となり、順方向バイアス電流IFの導通を促進させることができる。一方、逆方向バイアス状態では、L2>L4であるので、チャンネル40における電子76の導通は阻止され、逆方向バイアス電流IRはダイオード14を導通する。
【0101】
これに対して、半導体装置10においてL2≦L4、L2≦L5の場合、逆方向バイアス状態では、ダイオード14に逆方向バイアス電流IRが流れる。しかし、p+型半導体領域48又は埋め込み型のp+型半導体領域50とn+型半導体領域34とは近接するため、p+型半導体領域48、50からn+型半導体領域34への前記逆方向バイアス電流の分流が発生する。この分流によって、SIThy12における破壊は促進されるおそれがある。さらに、チャンネル40を電子76が導通しやすくなり、逆方向バイアス電流IRの導通が助長され、チャンネル40における破壊が発生するおそれは高まる。
【0102】
また、距離L4が3μmを超えたとき、又は距離L5が0.1μmを超えたときには、上記したおそれがより一層高まる。
【0103】
図5は、本実施の形態に係る半導体装置10をスイッチング素子として図12のパルス大電流発生装置126のSIThy100と交換し、かつ、放電ギャップ148における絶縁破壊が不発であったときに半導体装置10を流れる放電電流I3の時間的変化72と、逆方向バイアス電圧V2の時間的変化74を示す。
【0104】
図12のパルス大電流発生装置126のスイッチング素子がSIThy100のみである場合、図14に示すように逆方向バイアス電流IRが流れ、かつ、逆方向バイアス電圧V1が降伏電圧VBを超えるとSIThy100の破壊が発生する。ところが、半導体装置10を使用した場合、逆方向バイアス電流IRが降伏電流IBに達したとしても逆方向バイアス電圧V2は増加せず、SIThy12のチャンネル40における破壊は発生しない。すなわち、絶縁破壊が失敗したとしても、その影響を半導体装置10が被ることはない。
【0105】
そこで、図5の結果について、半導体装置10が順方向バイアス状態である場合と、逆方向バイアス状態である場合についてそれぞれ考察する。
【0106】
図6は、半導体装置10が順方向バイアス状態であるときの電子76と正孔78の動作を概略的に示したものである。この場合、SIThy12は順方向バイアス状態となり、SIThy12の第2アノード電極30からカソード電極22の方向に順方向バイアス電流IFが流れる。このとき、p+型半導体領域44からn型半導体領域42と基板18のn-型半導体を介して埋め込み型のp+型半導体領域38へ正孔78が移動する。これに対して、電子76は、n+型半導体領域34からチャンネル40を経由してp+型半導体領域44の方向に移動する。なお、このとき、ダイオード14は逆方向バイアス状態である。
【0107】
図7は、半導体装置10が逆方向バイアス状態であるときの電子76と正孔78の動作を概略的に示したものである。この場合、SIThy12は逆方向バイアス状態となると共に、ダイオード14は順方向バイアス状態となる。従って、逆方向バイアス電流IRは、第1アノード電極26からダイオード14のpn接合部54、56、58を介して第2アノード電極30に流れる。そのため、逆方向バイアス電流IRはSIThy12を流れない。
【0108】
逆方向バイアス電流IRの導通について、電子76の移動と正孔78の移動の観点から考察する。
【0109】
図7に示すように、SIThy12が逆方向バイアス状態である場合、SIThy12の内部に存在する電子76と正孔78の移動は抑制される。すなわち、図6の順方向バイアス状態における電子76の移動と比較して、逆方向バイアス状態に置かれた電子76は、チャンネル40の近傍からn+型半導体領域34に移動するのみである。また、逆方向バイアス状態に置かれた正孔78も、埋め込み型のp+型半導体領域50からn型半導体領域42の方向へ、又は基板18のn-型半導体からn型半導体領域42のわずかな距離を移動するのみである。
【0110】
ところが、ダイオード14においては、逆方向バイアス電流IRの導通方向と、pn接合部54、56、58の順方向が一致しているので、前記ダイオード14は順方向バイアス状態となり、多数の正孔78がp+型半導体領域48又は埋め込み型のp+型半導体領域50から欠落部52の方向に向かって移動する。
【0111】
一方、欠落部52と第2アノード電極30とのショットキー結合80が形成されているので、ショットキー効果によって電子76が第2アノード電極30から欠落部52へ注入される。電子76はp+型半導体領域48又は埋め込み型のp+型半導体領域50の方向に向かって移動し、電子76と正孔78は、欠落部52又は基板18において再結合に至る。前記ショットキー効果とその効果による前記再結合によって、ダイオード14における逆方向バイアス電流IRがより一層促進される。従って、ショットキー接合80を形成することによって、半導体装置10の高電圧化と大電流化を実現することが可能となる。
【0112】
なお、仮に、欠落部52が存在せず、第2アノード電極30に対向する他方の表面28にp+型半導体領域44が形成されていた場合、p+型半導体領域48又は埋め込み型のp+型半導体領域50から移動してくる正孔78とp+型半導体領域44の多数キャリアである正孔78との間にクーロン力による反発力が作用するので、逆方向バイアス電流IRの導通が妨げられる。そのため、逆方向バイアス電流IRは、SIThy12のn+型半導体領域34からチャンネル40を経由してp+型半導体領域36又は埋め込み型のp+型半導体領域38に流れる。従って、チャンネル40は熱降伏と破壊に至るおそれがある。
【0113】
ショットキー接合80を利用することによって、ダイオード14における逆方向バイアス電流IRの導通は促進されるが、もう一つの効果として、半導体装置10が順方向バイアス状態であるとき、順方向バイアス電流IFのダイオード14への導通を阻止する効果も併せ持つ。すなわち、ショットキー接合80は1導通型接合であるため、半導体装置10が順方向バイアス状態である場合、順方向バイアス電流のダイオード14への導通を阻止し、ダイオード14における熱降伏と破壊を回避する効果を達成することができる。
【0114】
このようなショットキー接合80を構成するには、図7に示すn型半導体領域42と第2アノード電極30に限定されるものではなく、種々の構成を取り得ることは勿論である。
【0115】
図8Aは、ショットキー接合80を基板18のn-型半導体と第2アノード電極30とによって形成した第1の変形例を示す。
【0116】
図8Bは、ショットキー接合80をn+型半導体領域82と第2アノード電極30とによって形成した第2の変形例を示す。n+型半導体領域82は不純物濃度の高いn型半導体の層であるため、n型半導体又はn-型半導体よりも多数キャリアである電子が豊富に存在する。そのため、逆方向バイアス電流IRの導通時には、第2アノード電極30からの電子76の注入に加え、n+型半導体領域82の電子76のドリフトによって正孔78との再結合がより一層促進される。
【0117】
また、ショットキー接合80に代えてオーミック接合84を選択することも可能である。この場合には、順方向バイアス状態及び逆方向バイアス状態であっても、該オーミック接合84を介して電流は導通する。しかし、半導体装置10が順方向バイアス状態の場合には、順方向バイアス電流IFがSIThy12を流れ、逆方向バイアス状態の場合には、逆方向バイアス電流IRがダイオード14を流れるので、オーミック接合84を選択することが可能である。
【0118】
図8Cは、オーミック接合84を基板18のn-型半導体と第2アノード電極30とによって形成した第3の変形例を示す。
【0119】
図8Dは、オーミック接合84をn型半導体領域86と第2アノード電極30とによって形成した第4の変形例を示す。
【0120】
図8Eは、オーミック接合84をn+型半導体領域88と第2アノード電極30とによって形成した第5の変形例を示す。
【0121】
図9は、埋め込み型のp+型半導体領域50を円形状に構成した第6の変形例を示す。この場合、L4<L5とならないように分離層16の幅L2を調整する。
【0122】
ところで、半導体装置10におけるダイオード14の配置箇所は、図1に示したSIThy12の中心に限定されないことは勿論である。すなわち、前記ダイオード14をゲート電極24の近傍に配置しても構わない。この場合には、主としてp+型半導体領域36を保護する目的で使用される。また、複数の半導体装置10が存在する場合には、半導体装置10の間に該ダイオード14を構成するようにしてもよい。
【0123】
なお、本実施の形態では、能動素子部としてSIThy12を使用した半導体装置10についての好適な実施の形態を示したが、前記能動素子部としては、前記SIThy12に限定されることはなく、静電誘導型トランジスタ、電力用サイリスタ、電力用トランジスタ等、制御電極によってオン状態とオフ状態の切り換えが可能である能動素子部にも適用可能であることは勿論である。
【0124】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る半導体装置によれば、例えば逆導通サイリスタ等の半導体装置に用いた場合において、逆方向バイアス電流の導通を容易にすることで、高耐圧化と大電流化を共に達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る半導体装置の構成を示す断面図である。
【図2】本実施の形態に係る半導体装置を示す等価回路図である。
【図3】半導体装置における順方向バイアス状態の特性を示す図である。
【図4】半導体装置における逆方向バイアス状態の特性を示す図である。
【図5】半導体装置における逆方向バイアス状態の時間的変化を示す図である。
【図6】順方向バイアス電流が導通したときの電子及び正孔の移動を示す説明図である。
【図7】逆方向バイアス電流が導通したときの電子及び正孔の移動を示す説明図である。
【図8】図8Aは半導体装置の第1の変形例を示す説明図であり、図8Bは半導体装置の第2の変形例を示す説明図であり、図8Cは半導体装置の第3の変形例を示す説明図であり、図8Dは半導体装置の第4の変形例を示す説明図であり、図8Eは半導体装置の第5の変形例を示す説明図である。
【図9】半導体装置の第6の変形例を示す説明図である。
【図10】従来技術に係る静電誘導型サイリスタ(SIThy)の構造を示す断面図である。
【図11】従来技術に係るSIThyを示す等価回路図である。
【図12】パルス大電流発生装置を示す回路図である。
【図13】パルス大電流のパルス幅と大きさを示す図である。
【図14】SIThyを流れる放電電流とゲート端子とカソード端子との間に発生する電圧の時間変化を示す図である。
【図15】従来技術に係るSIThyの構造を示す断面図である。
【図16】図15のSIThyを示す等価回路図である。
【図17】従来技術に係るSIThyの構造を示す断面図である。
【図18】図17のSIThyを示す等価回路図である。
【符号の説明】
10…半導体装置 12、100…SIThy
14…ダイオード 16…分離層
18…基板 22…カソード電極
24…ゲート電極 26…第1アノード電極
30…第2アノード電極
34、82、88…n+型半導体領域
36、44、48…p+型半導体領域
38、50…埋め込み型のp+型半導体領域
40…チャンネル 42、86…n型半導体領域
46、52…欠落部
Claims (17)
- 第1導電型半導体基板の一方の表面に形成された第1電極と、前記第1導電型半導体基板の他方の表面に形成された第2電極とを備え、かつ、前記一方の表面側において、前記第1電極と電気的に絶縁して形成されていると共に、前記第1導電型半導体基板を介して前記第2電極から前記第1電極に流れる電流の導通を制御する制御電極とを有する能動素子部と、
前記第1電極と前記第2電極との間で、前記能動素子部と並列に、前記第1導電型半導体基板を介して前記第1電極から前記第2電極に電流を導通させる逆導通機能を備えた整流部とを備え、
前記整流部は第1導電型半導体と第2導電型半導体による複数の接合部から構成され、
前記整流部の第1電極近傍には、第2導電型半導体からなる埋め込み型の第2導電型半導体領域が形成されていると共に、
前記能動素子部の第1電極と前記整流部の第1電極との間を電気的に絶縁する分離層が前記第1導電型半導体基板表面に形成され、
前記整流部の第1電極に対向する第1導電型半導体基板表面には、第2導電型半導体からなる第2導電型半導体領域が形成され、
前記埋め込み型の第2導電型半導体領域と、前記整流部の第1電極に対向する第1導電型半導体基板表面に形成される第2導電型半導体領域との距離L1は、10μm以下であること
を特徴とする半導体装置。 - 請求項1記載の半導体装置において、
前記埋め込み型の第2導電型半導体領域は、前記整流部の第1電極に対向する第1導電型半導体基板表面に形成される第2導電型半導体領域と電気的に絶縁されていると共に、
前記制御電極に対向する第1導電型半導体基板表面に形成される第2導電型半導体からなる第2導電体型半導体領域と電気的に接続されていること
を特徴とする半導体装置。 - 請求項1又は2記載の半導体装置において、
前記整流部の第2電極と前記第2電極に対向する第1導電型半導体基板表面との間には、オーミック接合が形成されていること
を特徴とする半導体装置。 - 請求項1又は2記載の半導体装置において、
前記整流部の第2電極に対向する第1導電型半導体基板表面には、前記第1導電型半導体基板を構成する第1導電型半導体とは不純物濃度が異なる第1導電型半導体が形成されると共に、
前記不純物濃度が異なる第1導電型半導体と前記整流部の第2電極との間にはオーミック接合が形成されていること
を特徴とする半導体装置。 - 請求項1〜4のいずれか1項に記載の半導体装置において、
前記分離層に対向する第1導電型半導体基板中に、整流部に形成された埋め込み型の第2導電型半導体領域が延在していること
を特徴とする半導体装置。 - 第1導電型半導体基板の一方の表面に形成された第1電極と、前記第1導電型半導体基板の他方の表面に形成された第2電極とを備え、かつ、前記一方の表面側において、前記第1電極と電気的に絶縁して形成されていると共に、前記第1導電型半導体基板を介して 前記第2電極から前記第1電極に流れる電流の導通を制御する制御電極とを有する能動素子部と、
前記第1電極と前記第2電極との間で、前記能動素子部と並列に、前記第1導電型半導体基板を介して前記第1電極から前記第2電極に電流を導通させる逆導通機能を備えた整流部とを備え、
前記整流部は第1導電型半導体と第2導電型半導体による複数の接合部から構成され、
前記整流部の第1電極近傍には、第2導電型半導体からなる埋め込み型の第2導電型半導体領域が形成されていると共に、
前記能動素子部の第1電極と前記整流部の第1電極との間を電気的に絶縁する分離層が前記第1導電型半導体基板表面に形成され、
前記整流部の第2電極と前記第2電極に対向する第1導電型半導体基板表面との間には、ショットキー接合が形成されていること
を特徴とする半導体装置。 - 第1導電型半導体基板の一方の表面に形成された第1電極と、前記第1導電型半導体基板の他方の表面に形成された第2電極とを備え、かつ、前記一方の表面側において、前記第1電極と電気的に絶縁して形成されていると共に、前記第1導電型半導体基板を介して前記第2電極から前記第1電極に流れる電流の導通を制御する制御電極とを有する能動素子部と、
前記第1電極と前記第2電極との間で、前記能動素子部と並列に、前記第1導電型半導体基板を介して前記第1電極から前記第2電極に電流を導通させる逆導通機能を備えた整流部とを備え、
前記整流部は第1導電型半導体と第2導電型半導体による複数の接合部から構成され、
前記整流部の第1電極近傍には、第2導電型半導体からなる埋め込み型の第2導電型半導体領域が形成されていると共に、
前記能動素子部の第1電極と前記整流部の第1電極との間を電気的に絶縁する分離層が前記第1導電型半導体基板表面に形成され、
前記能動素子部の第1電極近傍に、少なくとも1以上の埋め込み型の第2導電型半導体領域が形成され、前記埋め込み型の第2導電型半導体領域と前記制御電極に対向する第1導電型半導体基板表面に形成される第2導電体型半導体領域とは電気的に接続されていると共に、
前記分離層の幅L2と、前記能動素子部の第1電極に対向する第1導電型半導体基板表面に形成される第1導電型半導体領域と、前記能動素子部の近傍に形成された埋め込み型の第2導電型半導体領域との距離L3との間では、L2>L3であること
を特徴とする半導体装置。 - 請求項7記載の半導体装置において、
幅L2は20μm以下であること
を特徴とする半導体装置。 - 請求項7又は8記載の半導体装置において、
前記能動素子部の第1電極近傍に形成された埋め込み型の第2導電型半導体領域同士の距離L4と、分離層に最も近い前記第2導電型半導体領域と整流部に形成されている埋め込み型の第2導電型半導体領域との距離L5との間では、L4≧L5であり、L2>L4であること
を特徴とする半導体装置。 - 請求項9記載の半導体装置において、
距離L4は3μm以下であること
を特徴とする半導体装置。 - 請求項9又は10記載の半導体装置において、
距離L5は0.1μm以下であること
を特徴とする半導体装置。 - 請求項7〜11のいずれか1項に記載の半導体装置において、
L1>L3であること
を特徴とする半導体装置。 - 請求項1〜12のいずれか1項に記載の半導体装置において、
前記整流部は、前記制御電極の近傍に形成されていること
を特徴とする半導体装置。 - 請求項1〜12のいずれか1項に記載の半導体装置において、
前記整流部は、前記能動素子部の中央部に形成されていること
を特徴とする半導体装置。 - 請求項1〜12のいずれか1項に記載の逆導通機能を有する半導体装置において、
前記整流部は、前記第1導電型半導体基板に形成された複数の能動素子部の間に形成されていること
を特徴とする半導体装置。 - 請求項1〜15のいずれか1項に記載の半導体装置において、
前記整流部の第1電極が前記第1導電型半導体基板の一方の表面側を占有する割合は、10%以下であること
を特徴とする半導体装置。 - 請求項1〜16のいずれか1項に記載の半導体装置において、
前記能動素子部の第1電極から前記第2電極の方向に電流を導通させた場合、
前記能動素子部の第1電極と前記整流部の第1電極との間に発生する逆方向バイアス電圧V1と、前記能動素子部の第1電極と前記制御電極との間で発生する逆方向バイアス電圧V2との間では、V1>V2であること
を特徴とする半導体装置。
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