JP4128086B2 - 可変動弁機構 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の運転状況に応じてバルブのリフト量及び作用角を連続的に又は段階的に変化させる可変動弁機構に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の可変動弁機構としては、二本のカムシャフトを回転させてロッカアームを揺動させると共に2本のカムシャフトの位相を相対的に変えることによりロッカアームの揺動角を変えて、バルブのリフト量又は作用角を連続的に変化させるようにしたものがある(例えば、非特許文献1参照。)。ところが、このタイプでは、二本の回転カムの位相を変えて回転させることが必要であるが駆動が難しいという問題があった。
そこで、本出願人は先に、図9に示すような可変動弁機構を提案した(特願2002−109042、本願出願時において未公開)。その可変動弁機構は、揺動することによりロッカアーム51の第一ローラ52を押圧してバルブ58をリフトさせる第一介在アーム53に、回転カム59と制御カム61との間に延びて回転カム59と制御カム61とにそれぞれ摺接する第二ローラ55と第三ローラ56とを先端に備えた第二介在アーム57の基端部を揺動可能に軸着したもので、バルブ58のリフト量又は作用角を連続的に変化させられる機能をそのままに、回転カム59のシャフトを一本に減らすことを可能にした。
【0003】
【非特許文献1】
「自動車工学・1999年12月号」株式会社鉄道日本社、平成11年、第86−87頁
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、特願2002−109042記載のタイプでは、第一介在アーム53に軸着されて上方に延びる第二介在アーム57を、第二介在アーム57のさらに上側に位置する回転カム59と制御カム61とにより駆動するので高さ方向に高くなり、エンジンヘッドが大型化してしまうといった問題があった。また、回転カム59の回転軸、制御カム61の回転軸、第二ローラ55の回転軸、第三ローラ56の回転軸に相対的に平行でない組み合わせがあると、第二ローラ55や第三ローラ56を偏磨耗させてしまう恐れがあった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、高さを低減してエンジンヘッドをコンパクトにすると共に、ローラの偏磨耗を防止することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の可変動弁機構は、ロッカアームのカム対応部の近傍に小角度回転可能に設けた制御シャフトに制御カムを形成し、カム対応部を押圧する押圧面を備えた介在アームを、制御シャフトを中心にその周りを制御カムの小角度回転とは独立して揺動可能に設け、介在アームを介してロッカアームを押圧しバルブをリフトさせる回転カムを回転可能に設け、介在アームに、制御カムと回転カムとに挟まれて、制御カム側の一部が制御カム摺接部となり、回転カム側の一部が回転カム摺接部となる介在部材をスライド可能に設け、制御カムが制御カム摺接部に当接して介在部材のスライドを規制した状態で、回転カムが回転カム摺接部を押圧することにより、介在部材が制御カムのカムプロフィールに沿って変位し、制御カムを小角度回転させて制御カムの配向角を内燃機関の運転状況に応じ連続的に又は段階的に変えることにより、介在部材をスライドさせて制御カム摺接部と制御カムとの当接位置を移動するとともに回転カム摺接部と回転カムとの当接位置を移動して介在アームの揺動開始角を変え、もってカム対応部に対する介在アームの押圧面の当接位置を介在アームの長さ方向に変えることにより、回転カムによるバルブのリフト量及び作用角を変化させるリフト制御装置を設け、前記介在部材が、前記スライドの方向と直行する面内で傾き可変に構成されたことを特徴としている。なお、カム対応部とは、回転カムにレバー及び介在アームを介して対応し押圧される部位という意味である。
【0007】
カム対応部は、特に限定されず、固定された硬質チップでも回転可能なローラでもよい。但し、摺動抵抗や摩耗を考慮すると、カム対応部はロッカアームに回転可能に軸着されたローラが好ましい。
【0008】
介在部材が、スライドの方向と直交する面内で傾き可変に構成されているので、ローラの偏磨耗を防止できる点で好ましい。
【0009】
回転カム摺接部又は制御カム摺接部は、特に限定されず、介在部材に固定された硬質チップでも、介在部材に回転可能に軸着されたローラでもよい。但し、摺動抵抗や摩耗を考慮すると、回転カム摺接部又は制御カム摺接部の少なくとも一方(好ましくは両方)は、介在部材に回転可能に軸着されたローラが好ましい。
【0010】
回転カム摺接部及び制御カム摺接部が共に回転可能なローラである場合、両ローラは同軸上に並設しても平行な別々の軸上に設けてもよい。また、いずれか一方のローラの1つを対称面にして他方のローラを2つ配するようにし、回転カム及び制御カムから受ける力がレバーにねじれ応力を生じさせないようにしてもよい。
【0011】
回転カム摺接部及び制御カム摺接部の一方のみが回転可能なローラである場合、他方としては、介在部材に形成されたローラ片持ち支持部や、ローラを両側から支持する介在部材に形成された一対のフォーク片等が例示できる。また、フォーク片間にローラの回転を妨げないようにローラの側周面の少なくとも一部を包み込むローラ包囲部が架設され、該ローラ包囲部を回転カム摺接部及び制御カム摺接部の他方側としてもよい。
【0012】
ロッカアーム、介在アーム及びローラは、別の面内で揺動又は回転してもよいが、スペース効率上、同一面内で揺動又は回転することが好ましい。
【0013】
ここで、ロッカアームは、次のいずれのタイプでもよい。
(a)ロッカアームの一端部に揺動中心部があり、中央部にカム対応部があり、他端端にバルブ押圧部があるタイプ。(いわゆるスイングアーム)
(b)ロッカアームの中央部に揺動中心部があり、一端部にカム対応部があり、他端端にバルブ押圧部があるタイプ。
【0014】
揺動中心部としては、次の二態様を例示できる。
(i)揺動中心部はピボットに支持された凹球面部である態様。
(ii)揺動中心部はシーソアームが回動可能に軸支された軸穴部である態様。
【0015】
上記(i)の態様では、揺動中心部にタペットクリアランス調整機構が設けられることが好ましい。例えば、ピボットに設けた雄ネジをピボット支持材に設けた雌ネジに螺入量調節可能に螺入するようにしたタペットクリアランス調整機構や、ピボットをピボット支持材に対して摺動可能に設けて、油圧でタペットクリアランスを自動調整するようにしたもの等を例示できる。
【0016】
回転カムと制御カムとに回転カム摺接部と制御カム摺接部とがそれぞれ常に摺接するように介在アームを付勢する付勢手段を設けることが好ましい。付勢手段としては、特に限定されないが、介在アームをその揺動方向に沿って付勢することでローラの回転カム摺接部と制御カム摺接部とが回転カムと制御カムとから離間しないようにレバーを付勢するバネ部材が好ましい。
具体的には、介在アームのアーム部又はアーム部とは別に設けられた突起とシリンダヘッドとの間に押し縮めたバネ部材を設けたもの等を例示できる。
【0017】
リフト制御装置としては、特に限定されないが、ヘリカルスプライン機構と、油圧を用いた駆動部と、マイクロコンピュータ等の制御装置とを備えたものを例示できる。
【0018】
なお、本発明の可変動弁機構は、吸気バルブ又は排気バルブの何れか一方に適用することもできるが、両方に適用することが好ましい。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体化した可変動弁機構の実施形態について、図を参照しながら説明する。
【0020】
まず、図1〜図7は、第一実施形態の可変動弁機構を示している。この可変動弁機構には、スイングアームタイプのロッカアーム1が二つ使用され、各ロッカアーム1の一端部は同部に形成された凹球面部2がピボット3に支持されてなる揺動中心部となっている。各ピボット3はネジによるタペットクリアランス調整機構を内蔵している。各ロッカアーム1の他端下部には、バルブ押圧部5が凹設され、バルブ6の基端部をバルブ押圧部5が押圧するようになっている。
【0021】
各ロッカアーム1の中央部に形成されたローラ配置穴7には、カム対応部としての第一ローラ8が、ロッカアーム1の上面からやや突出するように配され、該第一ローラ8はアーム側壁と直交する軸の周りに回転可能に軸着されている。
【0022】
ピボット3の軸下部に設けられた雄ネジは、ピボット支持材4に設けられた雌ネジに螺入量調節可能に螺入されて、タペットクリアランス調整機構が構成されている。なお、タペットクリアランス調整機構は、ピボット3をピボット支持材4に対して摺動可能な構成にして、油圧でタペットクリアランスが自動調整されるものに変更してもよい。
【0023】
第一ローラ8の上方近傍には、制御シャフト10が小角度回転可能に設けられるとともに、該制御シャフト10には制御カム11が形成されている。制御カム11は、制御シャフト10の外周面であるベース円11aと、ベース円11aから滑らかに繋がって突出量が漸増するノーズ漸増部11bとを備えており、同一形状の一対の制御カム11が制御シャフト10の長さ方向に所定間隔をおいて形成されている。
【0024】
また、第一ローラ8を押圧する押圧面22を備えた介在アーム21が、制御シャフト10を中心にその周りを制御カム11の小角度回転とは独立して揺動可能に設けられている。
【0025】
介在アーム21は、制御シャフト10に揺動可能に軸着された基端の円筒部23と、該円筒部23の軸線方向両端部からロッカアーム1でいう揺動中心部からバルブ押圧部側へ向かって平行に延びる一対のアーム部25とで構成されている。円筒部23のアーム部25側には、円筒部23の外周面から内周面まで貫通すると共に制御カム11と介在アーム21との干渉を防ぐ逃がし穴26が形成されており、制御カム11の配向角度に関わらず介在アーム21がバルブ6をリフトさせるのに十分な揺動量が得られるようになっている。
【0026】
各アーム部25の下面には、第一ローラ8を押圧するための押圧面22がそれぞれ形成されている。各押圧面22は、第一ローラ8の半径よりも大きい曲率半径の凹曲面に形成され、後述するように第一ローラ8に対する押圧面22の当接位置が介在アーム21の長さ方向に変わっても、押圧面22はその略垂線方向に第一ローラ8を押圧するようになっている。
【0027】
また、アーム部25のロッカアーム1でいうバルブ押圧部側には、介在アーム21を介してロッカアーム1を押圧しバルブ6をリフトさせる回転カム42が回転可能に設けられている。回転カム42は、ベース円42aと、突出量が漸増するノーズ漸増部42bと、最大突出量となるノーズ42cと、突出量が漸減するノーズ漸減部42dとからなり、回転可能に支持されたカムシャフト41に形成されている。
【0028】
また、介在アーム21には、制御カム11と回転カム42とに挟まれて、制御カム11側の一部が制御カム摺接部となり、回転カム42側の一部が回転カム摺接部となる介在部材30がスライド可能に設けられている。
【0029】
即ち、二つのロッカアーム1の間であって、円筒部23の下部には、丸棒状のガイドシャフト27が、制御シャフト10側から回転カム42側に向かって延びるように支持され、該ガイドシャフト27には、ガイドシャフト27の長さ方向と直交する面内で傾くことを許容されつつ、ガイドシャフト27の長さ方向に摺動可能に支持された介在部材30が設けられている。
【0030】
介在部材30は、ガイドシャフト27に摺回動可能に支持された基端部から上方に延びており、その先端に形成されたフォーク内には、周面の一部が回転カム摺接部となる第二ローラ33が配され、該フォークの両外側には周面の一部が制御カム摺接部となる二つの第三ローラ34が配されている。第二ローラ33と第三ローラ34とは、第二ローラ33を対称面にして二つの第三ローラ34が両脇に配され、フォークの内側壁と直交する同軸上に並設されると共に、その軸の周りにそれぞれ独立して回転可能に軸着されている。なお、第二ローラ33と第三ローラ34とは外径が同一であるが、異なっていてもよい。
【0031】
また、制御カム11が第三ローラ34に当接して、介在部材30のスライドが規制されるようになっていて、その状態で回転カム42が第二ローラ33を押圧することにより、介在部材30が制御カム11のカムプロフィールに沿って変位するようになっている。
【0032】
制御シャフト10には、制御カム11を小角度回転させて制御カム11の配向角を1回転以内の範囲で内燃機関の運転状況に応じ連続的に又は段階的(好ましくは三段階以上、さらに好ましくは四段階以上の多段階)に変えることにより、介在部材30をスライドさせて第三ローラ34と制御カム11との当接位置を移動するとともに、第二ローラ33と回転カム42との当接位置を移動して介在アーム21の揺動開始角(回転カム42のベース円42aが第二ローラ33に当接しているときの介在アーム21の角度であって、制御カム11と第三ローラ34との当接位置によって変化する)を変え、もって第一ローラ8に対する介在アーム21の押圧面22の当接位置を介在アーム21の長さ方向に変えることにより回転カム42によるバルブ6のリフト量及び作用角を変化させるリフト制御装置(図示略)が接続されている。
【0033】
リフト制御装置は、例えば、ヘリカルスプラインを設けたピストンが油圧により所定角の回転を伴いながら軸方向に移動し、該回転が制御シャフトを回転させることにより制御カム11の配向角を1回転以内の範囲で変える構造となっており、内燃機関の回転センサやアクセル開度センサ等からの検知値に基づいてマイクロコンピュータ等の制御装置により制御されるようになっている。
【0034】
また、介在アーム21には、アーム部25が第一ローラ8から遠ざかる方向に常に付勢すると同時に、介在部材30を回転カム42と制御カム11との間に深く進入するように付勢することにより、回転カム42と制御カム11とに第二ローラ33と第三ローラ34とがそれぞれ常に摺接するように介在アーム21を付勢する付勢手段(図示略)が設けられている。
【0035】
付勢手段は、例えば、介在アーム21のアーム部25又はアーム部25とは別に設けられた突起とシリンダヘッドとの間に、押し縮めたバネ部材を設けた構造になっており、アーム部25が第一ローラ8から遠ざかる方向に介在アーム21を常に付勢するようになっている。
【0036】
上記の構成により、制御カム11が二つの第三ローラ34に当接して、介在部材30がロッカアーム1のバルブ押圧部側から揺動中心部側に向かう方向にスライドするのを規制された状態で、回転カム42が第二ローラ33を介して介在部材30を、ロッカアーム1のバルブ押圧部側から揺動中心部に向かう方向にスライドさせる向きに斜め下方(ロッカアーム1でいうバルブ押圧部側から揺動中心部側に向かいながら下方へ)へ押圧することにより、第三ローラ34及び介在部材30が制御カム11のカムプロフィールに沿って下方に変位する。このときの介在部材30の変位の方向に対して、介在部材30のスライド方向(ガイドシャフト27の延びる方向)が異なるようにガイドシャフト27が設けられているので、介在部材30の変位により介在アーム21はガイドシャフト27を介して下方に押圧されて揺動する。すると、介在アーム21は押圧面22により第一ローラ8を押圧してロッカアーム1を揺動させるのでバルブ6がリフトされるようになっている。このとき、回転カム42により第二ローラ33を押圧された介在部材30は、第三ローラ34と制御カム11との当接位置を突出量の大きい側に移動させながら下方へ変位し、介在部材30を介して下方へ押圧された介在アーム21は所定の角度範囲で揺動する。
【0037】
またこのとき、制御カム11の配向角を変えると、介在部材30がガイドシャフト27に沿ってスライドして、第三ローラ34と制御カム11との当接位置がベース円11a又はノーズ漸増部11bの各所に移動するとともに、制御シャフト10から第二ローラ33までの距離が変化して、第二ローラ33と回転カム42との当接位置が移動して介在アーム21の揺動開始角も変わることになる。すると、第一ローラ8に対する介在アーム21の押圧面22の当接位置が介在アーム21の長さ方向に変わり、具体的には、介在アーム21の揺動開始角が高いときには押圧面22の当接位置はアーム部25基端側となり、介在アーム21の揺動開始角が低いときには押圧面22の当接位置はアーム部25先端側となる。
【0038】
さらに、介在部材30が、ガイドシャフト27に回動可能に支持されていることから、第三ローラ34と第二ローラ33とに制御カム11と回転カム42とがそれぞれ略均等に当接するように、介在部材30がガイドシャフト27に対して回動するようになっている。例えば、図3に一点鎖線で示す制御シャフト10に直交する面に対して図3に実線で示すカムシャフト41に直交する面がやや傾いた状態で組み立てられたとしても、介在部材30がガイドシャフト27の周りを自ら回動して、回転カム42と制御カム11とに第二ローラ33と第三ローラ34とが略均等に当たるようになっている。
【0039】
以上のように構成された可変動弁機構は、次のように作用する。
まず、図4は、最大リフト量・最大作用角が必要な運転状況下における制御カム11の配向角度とそれによる作用を示している。
図4(a)に示すように、最大リフト量・最大作用角が必要な運転状況下で、回転カム42の第二ローラ33に対する当接位置がベース円42aの位置(いわゆるベース時)であるとき、制御カム11はノーズ漸増部11bの大突出部付近が第三ローラ34に当接するように配向制御される。このとき、第三ローラ34が当接している制御カム11の当接位置がベース円11aに比べて大きな突出量を持っているので、第三ローラ34を備えた介在部材30はガイドシャフト27の先端寄りの位置にスライドする。すると、そのスライドに伴って制御シャフト10から第二ローラ33までの距離が長くなり、回転カム42のベース円42aに当接している第二ローラ33は、ベース円42aに沿って回転カム42の下側にやや潜り込んで介在部材30は下方へ変位する。この介在部材30の変位に伴って、ガイドシャフト27が押し下げられて介在アーム21が下方へやや傾き、その位置が最大リフト量・最大作用角が必要な運転状況下における介在アーム21の揺動開始角となる。このときの介在アーム21の揺動開始角は、下方へやや傾いた所といっても依然として高いため、第一ローラ8に対する介在アーム21の押圧面22の当接位置は、アーム部25基端側(詳しくは、円筒部23の押圧面22寄りの位置)であり、まだバルブ6のリフトは発生しない。
【0040】
次に、図4(a)から図4(b)までの間、すなわち回転カム42の第二ローラ33に対する当接位置がベース円42aからノーズ漸増部42bに移動するときには、第二ローラ33が回転カム42により左下方に押圧を受け、介在部材30が制御カム11のカムプロフィールに沿って下方へ変位するとともに、介在部材30が支持された介在アーム21は、付勢手段による付勢に抗して下方に傾きを増してゆく。このとき、第三ローラ34の制御カム11に対する当接位置が、ノーズ漸増部11bの下方のより突出量の大きい側へ移動するので、介在部材30はガイドシャフト27の更に先端側にスライドし始める。介在アーム21の二つの押圧面22は、二つの第一ローラ8に対する当接位置を円筒部23から押圧面22側に変位させながら二つの第一ローラ8を下方へ押圧し始める。二つのロッカアーム1は、二つの第一ローラ8がそれぞれ押圧され始めるのに対応して各ピボット3を中心として下方へ揺動を開始し、バルブ押圧部5が二つのバルブ6を下方に押圧して各バルブ6がリフトされ始める。
【0041】
次に、図4(b)に示すように、回転カム42のノーズ漸増部42bを経てノーズ42cが第二ローラ33に摺接する時(いわゆるノーズ時)、介在部材30は第三ローラ34の制御カム11に対する当接位置をノーズ漸増部11bの最大突出部付近に移動させ、ガイドシャフト27の最先端位置までスライドするとともに制御カム11のカムプロフィールに沿って最も下方に変位した状態になる。この介在部材30の変位に伴って、介在アーム21は付勢手段による付勢に抗して下方に最大揺動し、その位置が最大リフト量・最大作用角が必要な運転状況下における介在アーム21の揺動終了角となる。すると、第一ローラ8に対する介在アーム21の押圧面22の当接位置はアーム部25先端側に変わり、介在アーム21はロッカアーム1を下方へ最大に揺動させるので、バルブ6のリフト量は発生・増加して最大値Lmaxに達する。
また、ベース時に第一ローラ8が円筒部23の押圧面22寄りの位置に当接しており、介在アーム21の揺動開始角付近から揺動終了角までの広い範囲で二つのバルブ6がリフトされるようになっていることから作用角も最大となる。
なお、前記の通り、前記当接位置が変わっても、凹曲面に形成された押圧面22はその略垂線方向に第一ローラ8を押圧するので、介在アーム21にその長さ方向の応力成分がほとんど生じず、円筒部23と制御シャフト10との間に負担がかからない。
【0042】
次に、図5は、微小リフト量・微小作用角が必要な運転状況下における制御カム11の配向角度とそれによる作用を示している。
図5(a)に示すように、微小リフト量・微小作用角が必要な運転状況下で、回転カム42の第二ローラ33に対する当接位置がベース円42aの位置(いわゆるベース時)であるとき、制御カム11はノーズ漸増部11bの小突出部付近が第三ローラ34に当接するように配向制御される。このとき、第三ローラ34が当接している制御カム11の当接位置が図4(a)の時より突出量が小さくなるため、介在部材30は図4(a)の時よりもガイドシャフト27の基端側(詳しくはガイドシャフト27の中間部)にスライドする。この介在部材30のスライドに伴って、制御シャフト10から第二ローラ33までの距離が短くなり、回転カム42のベース円42aに当接している第二ローラ33は、ベース円42aに沿って回転カム42との当接位置を図4(a)の時よりも左上方へ移動させ、介在部材30は上方へ変位する。この介在部材30の変位に伴って、介在アーム21が図4(a)の時よりも上方へ傾き、その位置が微小リフト量・微小作用角が必要な運転状況下における介在アーム21の揺動開始角となる。このときの介在アーム21の揺動開始角は、下方へ僅かに傾いた所といっても依然として高いため、第一ローラ8に対する介在アーム21の押圧面22の当接位置は、アーム部25基端側(詳しくは、円筒部23の押圧面22からやや遠ざかった位置)であり、まだバルブ6のリフトは発生しない。
【0043】
次に、図5(a)から図5(b)までの間、すなわち回転カム42の第二ローラ33に対する当接位置がベース円42aからノーズ漸増部42bに変位するときには、第二ローラ33が回転カム42により左下方に押圧を受け、介在部材30が制御カム11のカムプロフィールに沿って下方に変位するとともに介在部材30を支持した介在アーム21は、付勢手段による付勢に抗して下方に傾きを増してゆく。このとき、第三ローラ34の制御カム11に対する当接位置が、制御カム11の下方の図5(a)の時よりも突出量の大きい側へ移動するので、介在部材30はガイドシャフト27の先端側にスライドし始める。介在アーム21の二つの押圧面22は、二つの第一ローラ8に対する当接位置を円筒部23から押圧面22側に変えながら二つの第一ローラ8を下方へ押圧し始める。二つのロッカアーム1は、二つの第一ローラ8がそれぞれ押圧され始めるのに対応して各ピボット3を中心として下方へ揺動を開始し、バルブ押圧部5が二つのバルブ6を下方に押圧して各バルブ6がリフトされ始める。
【0044】
次に、図5(b)に示すように、回転カム42のノーズ漸増部42bを経てノーズ42cが第二ローラ33に摺接するとき(いわゆるノーズ時)、介在部材30は第三ローラ34の制御カム11に対する当接位置を図5(a)の時よりもやや下側のノーズ漸増部11bの中間突出部付近に移動させ、介在部材30は図5(a)の状態よりガイドシャフト27の先端側にスライドするとともに制御カム11のカムプロフィールに沿って下方に変位した状態になる。この介在部材30の変位に伴って、介在アーム21は付勢手段による付勢に抗して下方に揺動し、その位置が微小リフト量・微小作用角が必要な運転状況下における介在アーム21の揺動終了角となる。しかし、第一ローラ8に対する介在アーム21の押圧面22の当接位置は、介在アーム21の基端(詳しくは、押圧面22の基端部)に留まるので、介在アーム21はロッカアーム1を下方へ僅かに揺動させ、バルブ6のリフト量Lは微小となる。
また、介在アーム21の揺動開始角が図4(a)の時よりも上方に傾いた所であり、バルブ6がリフトされるのが揺動終了角付近に限られるので作用角も微小となる。
【0045】
なお、図4と図5との中間的なリフト量・作用角が必要な運転状況下では、図4と図5との中間的な制御カム11の配向角度をリフト制御装置により連続的に又は段階的に作ることで、図7に示すように中間的なリフト量・作用角が連続的に又は段階的に得られる。
【0046】
次に、図6は、リフト休止が必要な運転状況下における制御カム11の配向角度とそれによる作用を示している。
図6(a)に示すように、リフト休止が必要な運転状況下で、回転カム42の第二ローラ33に対する当接位置がベース円42aの位置(いわゆるベース時)であるとき、制御カム11はノーズ漸増部11bの微小突出部付近が第三ローラ34に当接するように配向制御される。このとき、第三ローラ34が当接している制御カム11の当接位置が図5(a)の時より突出量が小さくなるため、介在部材30は図5(a)の時よりもガイドシャフト27の基端側に向かってスライドする。この介在部材30のスライドに伴って、制御シャフト10から第二ローラ33までの距離が最も短くなり、回転カム42のベース円42aに当接している第二ローラ33は、ベース円42aに沿って回転カム42との当接位置を図5(a)の時よりも左上方へ移動して介在部材30は最も上方へ変位する。この介在部材30の変位に伴って、介在アーム21が図5(a)の時よりも更に上方に傾いて、その位置がリフト休止が必要な運転状況下における介在アーム21の揺動開始角となる。このときの介在アーム21の揺動開始角は高いため、第一ローラ8に対する介在アーム21の押圧面22の当接位置は、介在アーム21の基端(詳しくは、円筒部23の図5(a)よりも押圧面22から遠ざかった位置)であり、バルブ6のリフトは発生しない。
【0047】
次に、図6(a)から図6(b)までの間、すなわち回転カム42の第二ローラ33に対する当接位置がベース円42aからノーズ漸増部42bに変位するときには、第二ローラ33は回転カム42により左下方に押圧を受け、介在部材30が制御カム11のカムプロフィールに沿って下方に変位するとともに介在部材30が支持された介在アーム21は、付勢手段による付勢に抗して下方に傾きを増してゆく。このとき、第三ローラ34の制御カム11に対する当接位置が、制御カム11の下方の図6(a)の時よりも突出量の大きい側へ移動するので、介在部材30はガイドシャフト27の先端側に向かってスライドし始める。介在アーム21の二つの押圧面22は、二つの第一ローラ8に対する当接位置を円筒部23から押圧面22側に向かって変えるが、当接位置が介在アーム21の基端(詳しくは、円筒部23内)に留まるため、二つの第一ローラ8は押圧されず、各バルブ6はリフトを開始しない。
【0048】
次に、図6(b)に示すように、回転カム42のノーズ漸増部42bを経てノーズ42cが第二ローラ33に摺接するとき、介在部材30は第三ローラ34の制御カム11に対する当接位置を図6(a)の時よりもやや下側のノーズ漸増部11bの小突出部付近に移動させ、介在部材30は図6(a)の状態よりガイドシャフト27の先端寄りの位置にスライドするとともに制御カム11のカムプロフィールに沿って下方に変位した状態になる。この介在部材30の変位に伴って、介在アーム21は付勢手段による付勢に抗して下方に揺動し、その位置がリフト休止が必要な運転状況下における介在アーム21の揺動終了角となる。しかし、第一ローラ8に対する介在アーム21の押圧面22の当接位置は、介在アーム21の基端(詳しくは、円筒部23内)に留まるので、介在アーム21はロッカアーム1を揺動させず、バルブ6はリフト休止状態となる。
【0049】
以上のような可変動弁機構によれば、介在部材30を介在アーム21にスライド可能に設けて、介在アーム21、介在部材30及び回転カム42を横方向に並べられるようにしたことにより、回転カム42の位置を低くしてエンジンヘッドをコンパクトにすることが可能となる。また、介在部材30がガイドシャフト27に直交する面内で傾き可変となっていることから、カムシャフト41、介在アーム21又は制御シャフト10のうちいずれか二つ以上の平行度が悪化しても、介在部材30がガイドシャフト27の周りを自ら回動して回転カム42と制御カム11とに第二ローラ33と第三ローラ34とが略均等に当接するようになるので、第二ローラ33又は第三ローラ34が偏磨耗するのを防止することができる。
【0050】
次に、可変動弁機構の参考実施形態について、図8を参照して第一実施形態と異なる部分についてのみ説明する。本実施形態の可変動弁機構は、介在部材の構成及び支持形態と制御カムの形態とにおいてのみ第一実施形態と相違するものである。
【0051】
本実施形態の介在アーム21には、ガイドシャフト27の代わりに、後述する介在部材31をアーム部25の長さ方向にスライド可能に支持する一対の長孔24が設けられている。各長孔24は、各アーム部25に制御シャフト10と平行に延びるように形成されるとともに、互いに平行且つ同一形状に形成されている。
【0052】
両方の長孔24の間には、第二ローラ33と、第二ローラ33を挟んだ二つの第三ローラ34と、第二ローラ33と第三ローラ34とを同軸上に支持するスライドシャフト35とからなる前述した介在部材31が設けられている。
【0053】
第三ローラ34は、第二ローラ33よりもやや大きい外径に形成され、第二ローラ33とともにそれらの中心部に形成された軸穴にスライドシャフト35が挿通されて、各ローラはスライドシャフト35の周りを独立回転可能に軸着されている。
【0054】
また、スライドシャフト35の両端は、一対のアーム部25に形成された長孔24に支持されて、介在部材31はアーム部25の長さ方向に傾くことを許容されつつアーム部25の長さ方向にスライド可能となっている。
【0055】
即ち、長孔24は各アーム部25の中央部から先端寄りの位置まで直線状に延びており、各長孔24は互いに平行且つ同一形状に設けられており、スライドシャフト35の両端は、両長孔24に該長孔24の幅方向にはガタつくことなく、長孔24の長さ方向には滑らかにスライドできるようになっている。また、両方の長孔24が直線状且つ互いに平行に設けられていることにより、スライドシャフト35はアーム部25の長さ方向に対して傾くことができるようになっている。
【0056】
また、第一実施形態では一対となっていた制御カム11を本実施形態では連続形状に変更しているが、第二ローラ33を第三ローラ34よりも小さい外径に形成することにより、第二ローラ33が制御カム11に接触するのを防いでいる。なお、第一実施形態と同様に一対の制御カム11を用いてもよい。
【0057】
本実施形態の可変動弁機構は、介在部材の構成及び支持形態と制御カムの形態とにおいて第一実施形態と異なるものの、基本的には第一実施形態と同様である。そして、本実施形態によれば、第一実施形態と同様の効果が得られる。
【0058】
なお、本発明は前記実施形態の構成に限定されるものではなく、例えば次のように、発明の趣旨から逸脱しない範囲で変更して具体化することもできる。
(1)リフト制御装置の構成や制御の仕方を適宜変更すること。
(2)中央部に揺動中心部があるロッカアームとすること。
(3)第一実施形態において、第三ローラ34と制御カム11とを一つずつ設け、第三ローラ34の両脇に第二ローラ33を一つずつ設け、第二ローラ33を押圧する回転カム42を二つ設けること。
(4)付勢手段の構成を適宜変更すること。
【0059】
【発明の効果】
以上詳述したように、請求項1、4又は5記載の可変動弁機構によれば、高さを低減してエンジンヘッドをコンパクトにすることができる。さらに、請求項2又は3記載の可変動弁機構によれば、上記の効果に加えてローラが偏磨耗しないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一実施形態に係る可変動弁機構を示す斜視図である。
【図2】同機構の介在部材を取り外した状態を示す斜視図である。
【図3】同機構による偏磨耗防止の作用を示す正面図である。
【図4】同機構の最大リフト量・作用角が必要なときの作用を示す側面図である。
【図5】同機構の微小リフト量・作用角が必要なときの作用を示す断面図である。
【図6】同機構のリフト休止が必要なときの作用を示す断面図である。
【図7】同機構により得られるバルブのリフト量及び作用角を示すグラフである。
【図8】 参考実施形態に係る可変動弁機構を示す斜視図である。
【図9】従来の可変動弁機構を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 ロッカアーム
6 バルブ
8 カム対応部としての第一ローラ
10 制御シャフト
11 制御カム
21 介在アーム
30 介在部材
33 回転カム摺接部としての第二ローラ
34 制御カム摺接部としての第三ローラ
22 押圧面
42 回転カム
Claims (3)
- ロッカアームのカム対応部の近傍に小角度回転可能に設けた制御シャフトに制御カムを形成し、
前記カム対応部を押圧する押圧面を備えた介在アームを、前記制御シャフトを中心にその周りを前記制御カムの小角度回転とは独立して揺動可能に設け、
前記介在アームを介して前記ロッカアームを押圧しバルブをリフトさせる回転カムを回転可能に設け、
前記介在アームに、前記制御カムと前記回転カムとに挟まれて、前記制御カム側の一部が制御カム摺接部となり、前記回転カム側の一部が回転カム摺接部となる介在部材をスライド可能に設け、
前記制御カムが前記制御カム摺接部に当接して前記介在部材のスライドを規制した状態で、前記回転カムが前記回転カム摺接部を押圧することにより、前記介在部材が前記制御カムのカムプロフィールに沿って変位し、
前記制御カムを小角度回転させて前記制御カムの配向角を内燃機関の運転状況に応じ連続的に又は段階的に変えることにより、前記介在部材をスライドさせて前記制御カム摺接部と前記制御カムとの当接位置を移動するとともに、前記回転カム摺接部と前記回転カムとの当接位置を移動して前記介在アームの揺動開始角を変え、もって前記カム対応部に対する前記介在アームの押圧面の当接位置を前記介在アームの長さ方向に変えることにより、前記回転カムによる前記バルブのリフト量及び作用角を変化させるリフト制御装置を設け、
前記介在部材が、前記スライドの方向と直交する面内で傾き可変に構成された可変動弁機構。 - 前記制御カム摺接部又は前記回転カム摺接部の少なくともいずれか一方が、前記介在部材に回転可能に軸着されたローラの外周面の一部となる請求項1記載の可変動弁機構。
- 前記回転カムと制御カムとに前記回転カム摺接部と制御カム摺接部とがそれぞれ常に摺接するように前記介在アームを付勢する付勢手段が設けられた請求項1又は2記載の可変動弁機構。
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