JP4127745B2 - 輪転印刷機における版交換装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、版胴に巻き付けられた旧版を取り外し、新版を版胴に巻き付ける輪転印刷機における版交換装置に関し、特に、排出した旧版の保持と版胴に巻き付ける前の新版の保持構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の版交換装置として、特開平11−77968号公報に開示されたものがある。ここに開示されたものは、新版を装着する新版装着部および旧版を収納する旧版収納部が設けられフレームに揺動自在に支持されたカセットと、このカセットを版交換位置と退避位置との2位置に移動させるアクチュエータとが備えられている。そして、アクチュエータを作動させてカセットを版交換位置に移動させることにより、カセットの先端を版胴の版固定装置に対向させ、版胴を略1回転させると、版胴の版固定装置から版尻を排出された旧版がカセットの旧版収納部に収納される。次に、新版装着装置に装着された新版を版胴の版固定装置内に挿入させ、版胴を略1回転させることにより、新版が版胴に巻き付けられるものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来の版交換装置においては、カセットに、版胴に巻き付ける前の新版を保持する新版装着部と、排出した旧版を保持するための旧版収納部とが備えられている。このため、カセットの外形が大きくなり、これが印刷ユニット間における作業空間を狭くし、保守点検時における作業性を低下させていた。また、カセットを移動させるための大きなアクチュエータが必要になるため、装置が大型化するばかりか構造が複雑になるという問題もあった。
【0004】
本発明は上記した従来の問題に鑑みなされたものであり、第1の目的は作業性を向上させることにある。第2の目的は装置の小型化を図ることにある。第3の目的は構造を簡素化することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために、本発明は、版胴の刷版固定装置から旧版を排出し、新版を挿入する輪転印刷機における版交換装置において、新版を保持し版挿入位置に移動自在な版保持器と、排出された旧版を受ける開位置と閉位置との間を移動自在に支持された版受けとを備え、この版受けが閉状態にあるときに前記新版を支承する支承部材を前記版受けの外側に設け、前記版受けの内側は閉位置においてインキ壺と対向し、前記版受けの開位置は、当該版受けの内側とインキ壺との間に空間を作り、この空間に旧版が入ってくるものである。
したがって、版受けが版胴から排出された旧版と版胴に装着する新版の保持を兼ねる。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図を用いて説明する。図1は本発明に係る輪転印刷機の全体を示す概略構成図、図2は図1におけるII矢視図、図3は図2におけるIII 矢視図、図4は同じく版保持器の駆動部を拡大して示す側面図、図5は図4におけるV 矢視図である。図6は図2におけるVI-VI 線断面図、図7は図2におけるVII-VII 線断面図、図8(a)は図2におけるVIII(a)-VIII(a)線断面図、同図(b)は同図(a)におけるVIII(b)矢視図である。図9は同じく構成を示すブロック図、図10は全自動版交換と半自動版交換との切替えの動作を示すフローチャート、図11は全自動版替交換の前半の動作を示すフローチャート、図12は全自動版替交換の後半の動作を示すフローチャート、図13は半自動版交換の動作を示すフローチャートである。図14ないし図17は全自動版交換の動作を説明するための図2におけるXIIII-XIIII 線断面図である。図18ないし図21は半自動交換の動作を説明するための図2におけるXIIII-XIIII 線断面図である。
【0007】
図1において、全体を符号1で示すものは、両面刷用の枚葉輪転印刷機であって、給紙装置2と、表面印刷用の上側の4つの印刷ユニット3A〜3Dと、裏面印刷用の下側の4つの印刷ユニット4A〜4Dと、排紙装置5とから概略構成されている。給紙装置2には、紙積板10に積載された紙11をフィーダボード12に1枚ずつ送り出す従来から広く知られているサッカ装置(図示せず)が設けられている。フィーダボード12に送り出された紙11は、フィーダボード12の先端部に設けられた図示を省略したスイング装置によって、1色目の印刷ユニット3Aの渡し胴13の爪にくわえ替えられる。表面印刷用の4つの印刷ユニット3A〜3Dには、刷版が巻き付けられた版胴15と、この版胴15に対接するゴム胴16と、このゴム胴16に対接する倍径の圧胴17が設けられ、版胴15の上方にはインキ装置を収容するインキ部18が設けられている。渡し胴13の爪にくわえられた紙11は、圧胴17の爪にくわえ替えられ、ゴム胴16との間を搬送されるときに表面に1色目の印刷が行われる。
【0008】
裏面印刷用の4つの印刷ユニット4A〜4Dには、刷版が巻き付けられた版胴20と、この版胴20に対接するゴム胴21と、このゴム胴21に対接する倍径の圧胴22が設けられ、版胴20の下方には、図示を省略した多数のローラ群等からなるインキ装置を収容するインキ部23が設けられている。表面印刷用の印刷ユニット3Aの圧胴17の爪から裏面印刷用の印刷ユニット4Aの圧胴22の爪にくわえ替えられた紙11は、ゴム胴21との間を搬送されるときに裏面に1色目の印刷が行われる。このあと、順次、表面印刷用の印刷ユニット3Bないし3Dと、裏面印刷用の印刷ユニット4Bないし4Dによって、紙11の表面と裏面とに4色の印刷が行われる。
【0009】
4色目の裏面印刷用の印刷ユニット4Dの圧胴22の爪にくわえられた紙11は、排紙装置5の左右一対の排紙チェーン間に掛け渡された爪竿に設けられたくわえ爪装置にくわえ替えられる。くわえ爪装置にくわえられた紙11は、排紙チェーンによって搬送されたのち、カム機構によってくわえ爪装置によるくわえが解放されることによって、紙積板24上に落下し積載される。図3に示すように、版胴20の周面に形成した切欠き内には、くわえ側版万力25と尻側版万力26とが設けられ、これら両版万力25,26には、万力台25a,26a、くわえ板25b,26bがそれぞれ備えられている。くわえ側版万力25の万力台25aの上面には、版胴20の胴軸方向に並べられた一対の基準ピン27,27(一方は図示せず)が立設されている。これら基準ピン27,27には、新版P2のくわえ側端縁に形成された一対の切欠き7,7が係合し、新版P2の天地方向と幅方向の位置決めがなされる。以上説明した胴の配列ないし版万力装置については、従来から広く知られている両面印刷用の枚葉輪転印刷機の構成と格別変わるところはない。
【0010】
以下、図2ないし図21を用いて、裏面印刷用の印刷ユニット4Aないし4Dに採用された本発明の特徴である枚葉輪転印刷機における版交換装置について説明する。なお、それぞれの印刷ユニット4Aないし4Dに採用された版挿入装置は、いずれも全く同じ構造をもつものであるから、以下、印刷ユニット4Aに採用された版交換装置のみについて説明する。図2において、印刷ユニット4Aには、対向する左右一対のフレーム30,30が備えられており、これら左右のフレーム30,30の上部の内側には、左右一対のチェーンガイド31,31が固定されている。これらチェーンガイド31,31には、左右一対のチェーン32,32がそれぞれ上下方向に摺動自在に支持され、これら左右のチェーン32,32間には、複数枚の細長い遮蔽板33が横架されている。
【0011】
これら複数の遮蔽板33によって安全カバー34が形成され、この安全カバー34は、図3に示すように、チェーンガイド31内にその歯が臨むスプロケット35の駆動によって版胴20の前面側を開閉するように構成されている。すなわち、スプロケット35の歯がチェーン32と噛み合っており、スプロケット35は正逆方向に駆動する安全カバー駆動用モータ87(図9参照)によって図中時計、反時計方向に回転する。同図において、スプロケット35が時計方向に回転することにより、安全カバー34が上昇して版胴20の前面側が開放され、スプロケット35が反時計方向に回転することにより、安全カバー34が下降して版胴20の前面側が閉じられる。複数枚の遮蔽板33の最下方に位置付けられた遮蔽板33Aには、左右一対の基準ピン36,36が植設されている。
【0012】
次に、図2ないし図5を用いて、版挿入装置40について説明する。図5において、版挿入装置40は、新版P2のくわえ側を吸着して保持する版保持器41と、この版保持器41をガイドする左右一対の姿勢変換手段としての一対のガイドレール42,42と、版保持器41を移動させるアクチュエータ43とによって概略構成されている。アクチュエータ43は、2本の版保持器用第1のアクチュエータ43Aと、版保持器用第2のアクチュエータ43Bとからなり、これら2本のアクチュエータ43A,43Bとが合体されている。したがって、これらアクチュエータ43A,43Bは選択的な駆動により、版保持器41を後述するA点、B点、C点の三位置に位置付ける機能をもっている。版保持器41は細長い直方体に形成され、前面に多数の吸着パッド45が二列に設けられており、この吸着パッド45には吸引ポンプ86(図9参照)からの吸引エアが負圧として供給される。図4に示すように、この版保持器41の背面には、左右一対のめくら穴状の嵌挿孔46,46が設けられ、これら嵌挿孔46,46の開口部には、摩擦係数の小さい弾性材によってリング状に形成された支承部材47が固着されている。また、図5に示すように、版保持器41の左右端には、二対のころ48が回転自在に支持されている。
【0013】
一対のガイドレール42には、断面コ字状のガイド溝50がそれぞれ設けられ、図5に示すように、これら一対のガイド溝50が互いに対向するようにして、一対のガイドレール42,42が左右のフレーム30,30の内側に固定されている。図4に示すように、このガイドレール42は、下部側を形成する上下方向に略垂直に延在する第1の直線部42aと、上部側を形成する斜め上方に傾斜する第2の直線部42cと、これら第1の直線部42aと第2の直線部42cとの間に介在する曲線部42bとから形成されている。このうち、第2の直線部42cの傾きは、図16(b)に示すように、新版挿入時に所定の回動位置に位置付けられた版胴20のくわえ側版万力25の万力台25aの上面の傾きと略同一になるように形成されている。このガイドレール42のガイド溝50に上述した版保持器41のころ48を係入させることにより、版保持器41がこのガイド溝50に案内されるようにして移動自在に支持される。
【0014】
図5において、51は左右のフレーム30,30間に回転自在に支持された駆動軸であって、この駆動軸51の左右には一対の駆動レバー52,52が植設され、これら駆動レバー52,52は、上述した版保持器41の支承部材47に対して摺動自在となるようにして嵌挿孔46内に嵌挿されている。駆動軸51の両端部は、左右のフレーム30,30から突出し、この両端部には一対の中間レバー53,53の一端がそれぞれ固着されている。これら中間レバー53,53の他端部には回動子54が枢着され、この回動子54には版保持器用第1のアクチュエータ43Aのロッドが固着されており、版保持器用第2のアクチュエータ43Bのロッドの先端部がフレーム30に枢着されている。
【0015】
したがって、図4において、両アクチュエータ43A,43Bのロッドが共に後退した状態では、版保持器41がガイドレール42の第1の直線部42aのA点に位置付けられる。このA点においては、新版P2を版保持器41に装着できるように、吸着パッド45の吸着面が垂直状態になっており、この状態の版保持器41の姿勢を、新版P2を版保持器41に装着する第1の姿勢とし、このA点を第1の位置とする。したがって、この版保持器41の第1の姿勢においては、くわえ側が吸着パッド45に吸着される新版P2も垂直状態になっている。また、この第1の位置に位置付けられた版保持器41は、図3に示すように、閉じられた安全カバー34の最下方の遮蔽板33Aの直下に位置付けられている。
【0016】
一方の版保持器用第1のアクチュエータ43Aのロッドを前進させると、回動子54と中間レバー53とを介して駆動軸51が図4中時計方向に回動し、版保持器41がガイドレール42の曲線部42bのB点に位置付けられる。このB点においては、図16(a)に示すように、版保持器41の吸着パッド45の吸着面が水平面から角度αだけ傾斜しており、吸着パッド45に吸着される新版P2のくわえ側も角度αだけ傾斜した状態になる。この状態においては、吸着パッド45に吸着されている新版P2のくわえ側が旧版排出口62から退避し、旧版排出口62の前方が開放された状態となり、旧版排出口62からの旧版P1の排出が可能になる。
【0017】
したがって、このときの版保持器41の姿勢を、旧版P1の排出を可能とする第2の姿勢とし、このB点を第2の位置とする。さらに、他方の版保持器用第2のアクチュエータ43Bのロッドも前進させると、駆動軸51がさらに図4中時計方向に回動し、版保持器41がガイドレール42の第2の直線部42cのC点に位置付けられる。このC点に版保持器41が位置付けられると、図16(b)に示すように、版保持器41の吸着パッド45の吸着面の延長線上に、版胴20のくわえ側版万力25の万力台25aの上面が位置付けられる。したがって、このときの版保持器41の姿勢を、新版P2を万力台25aとくわえ板25bとの間に挿入可能とする第3の姿勢とし、このC点を第3の位置とする。
【0018】
次に、図2,図3,図6,図7を用いて、固定カバーと排版カバーについて説明する。図3において、第1の位置A点に位置付けられた版保持器41の直下に排版カバー55が設けられており、図2に示すように、この排版カバー55は下端が一対の蝶番56,56を介して固定カバー57に支持され、図6(b)に示すように、この蝶番56を回動中心として機内側に倒伏自在となっている。固定カバー57は図3に示すように、前面板58と水平板59と背面板60とによって断面がクランク状に形成され、左右両端が左右のフレーム30,30の内側に取り付けられている。水平板59の下方には、図3に示すように、インキ部23に収容されたインキ装置のインキ壺23aが設けられており、このインキ壺23aにインキの供給を行うために、固定カバー57の前面板58の下方は開口58aが形成されている。
【0019】
図6に示すように、固定カバー57の前面板58の裏面に左右一対のカバー開閉用アクチュエータ61,61の下端が枢着され、このカバー開閉用アクチュエータ61のロッド61aの先端が排版カバー55の裏面に枢着されている。したがって、ロッド61aが前進することによって、同図(a)に示すように、排版カバー55が蝶番56を回動中心として反時計方向に回動するので、印刷ユニット4Aの前面側が閉じられる。一方、ロッド61aが後退することによって、同図(b)に示すように、排版カバー55が蝶番56を回動中心として時計方向に回動するので、印刷ユニット4Aの前面側が開放され、旧版排出口62が形成される。
【0020】
図2と図6において、63はガイド部材であって、正面視コ字状のガイド部63aと、このガイド部63aの左端を図中背面側に直角に折り曲げ形成した一対の脚部63b,63bとを1本の棒部材によって一連に形成されている。このガイド部材63は、脚部63b,63bが固定カバー57の上部の左端側において植設され、ガイド部63aが固定カバー57と平行で、かつ左右方向に水平となるようにして右端側に延在している。図2において、固定カバー57の前面板58の左右端側には、一対の長方形の窓64,64が穿設されている。図2と図7において、固定カバー57の水平板59の左右端側には、一対の長細い長方形の嵌挿孔65,65が穿設されている。
【0021】
図2と図7において、66はリンク部材であって、上端が排版カバー55の裏面に固定されたレバー67に枢着され、下端が版進入規制部材68に枢着されている。図7に示すように、この版進入規制部材68は、基端部が固定カバー57の前面板58の裏面側に回動自在に支持され、排版カバー55が排版排出口62を閉塞している図7(a)の状態においては、揺動端部側が前記嵌挿孔65と平行となるようにして臨んでいる。この状態から、同図(b)に示すように、排版カバー55が蝶番56を回動中心として図中時計方向に回動すると、リンク部材66を介して、版進入規制部材68は基端部を回動中心として時計方向に回動するので、嵌挿孔65を通って開口58aの上部側を閉塞する。図2と図8において、前記窓64の背面側には版押出し部材70が臨んでおり、この版押出し部材70の下端部は、固定カバー57の前面板58に固定された版押出し用アクチュエータ71の回動軸に固着されている。したがって、版押出し用アクチュエータ71の回動軸が、図8(a)中反時計方向に回動すると、版押出し部材70も反時計方向に回動して、窓64から前面板58の外側に突出する。
【0022】
次に、図2,図3,図14を用いて版受け構造について説明する。図2と図3において、左右のフレーム30,30の下端部間には、ブラケット74が横架され、このブラケット74は側面視クランク状に形成され、上面部74aと下面部74bとが設けられている。75は平板状の版受けであって、正面視が細長い長方形に形成され、下端が蝶番76を介してブラケット74の下面部74bに連結され、この蝶番76を回動中心として回動自在に支持され、開口58aの下部側を開閉する。
【0023】
この版受け75の外側の左右には、一対の支承部材77,77が設けられ、これら支承部材77,77のそれぞれには、版受け75の内側に向かって指向する反射型の光電センサ77aが設けられている。78,78は左右一対の版受け駆動用アクチュエータであって、ブラケット74の上面部74aに枢着され、ロッド78aの先端は版受け75の内側に枢着されている。したがって、このアクチュエータ78のロッド78aを後退させると、版受け75が蝶番76を回動中心として図3中時計方向に回動し、開口58aの下部側を閉じる。一方、アクチュエータ78のロッド78aを前進させると、版受け75が蝶番76を回動中心として図3中反時計方向に回動し、開口58aの下部側を開放する。
【0024】
図14(a)に示すように、版受け75を閉じた状態にすると、後述するように、新版P2のくわえ側を版保持器41の吸着パッド45に吸着させるときに、支承部材77が新版P2の版尻を支承する。また、この状態から同図(b)に示すように、版受け75を開くと、新版P2の版尻は支承部材77から外れ、版受け75の先端に支承されるとともに、排版された旧版P1の版尻が版受け75の内側に支承される。このように、版受け75を旧版P1と新版P2の支承を兼ねているので、部費点数が削減されるとともに構造が簡素化される。
【0025】
図9において、80は全自動版替えボタン、81は半自動版替えボタン、82は吸引ポンプ86を作動させる版吸着ボタン、83は版受け駆動用アクチュエータ78を作動させる版受けボタンである。84は版替えスタートボタンであって、全自動版替え時において自動的に旧版を排版するとともに、新版を給版させる動作を起動させるためのボタンである。85は運転ボタンであって、半自動版替え時において新版P2を給版するために、くわえ側と尻側の両版万力開閉アクチュエータ89,90を駆動させるボタンである。88は印刷機全体の胴を回転させる駆動モータであって、版替え時において版胴20を正逆方向に所定量だけ回転される。91は上述したボタンの操作によって、上述したアクチュエータ等の作動を制御する制御装置である。
【0026】
89はくわえ側版万力開閉用アクチュエータであって、このくわえ側版万力開閉用アクチュエータ89を作動させると、図示を省略したレバーを介して、図3におけるくわえ側版万力25のくわえ側カム軸(図示せず)が所定量だけ正逆方向に回動する。このくわえ側カム軸の回動によってくわえ板25bが揺動し、万力台25aとの間で刷版のくわえ側のくわえ閉めとくわえ開きが行われる。一方、尻側版万力開閉用アクチュエータ90を作動させると、図示を省略したレバーを介して、図3における尻側版万力26の尻側カム軸(図示せず)が所定量だけ正逆方向に回動する。この尻側カム軸の回動によってくわえ板26bが揺動し、万力台26aとの間で刷版の尻側のくわえ閉めとくわえ開きが行われる。
【0027】
次に、図10、図11、図12と図14ないし図17を用いて、全自動によって刷版を交換する動作を説明する。図14(a)に示すように、あらかじめ版保持器用第1のアクチュエータ43Aと第2のアクチェータ43Bとを非作動状態にしておき、版保持器41を第1の位置に位置付けておく。図10において全自動版替えボタン80を操作してONにすることによって、刷版を全自動で交換する方法が選択される(S1)。図14(a)において、新版P2の版尻を版受け75の支承部材77上に支承させ、新版P2をガイド部材63のガイド部63aの外側を通すようにして、新版P2の切欠き7を安全カバー34の最下方の遮蔽板33Aの基準ピン36に係合させて、新版P2のくわえ側を版保持器41の吸着パッド45上に装着する(S3)。
【0028】
S4において、版吸着ボタン82を操作してONにすることにより、S5において、吸引ポンプ86が作動するので、新版P2のくわえ側は版保持器41の吸着パッド45に吸着され、新版P2は版保持器41に保持される。このとき、新版P2が吸着パッド45に対して摺動自在となるように吸着される程度に、吸引ポンプ86による吸引力を調整する。S6において、版受けボタン83を操作してONにすると、S7において、版受けアクチュエータ78が作動してロッド78aが前進する。したがって、図14(b)に示すように、版受け75が開き、新版P2の版尻が支承部材77から外れるので、版受け75の先端に支承され、新版P2の保持が完了する。このとき、新版P2は、くわえ側が版保持器41に保持され、版尻が版受け75の先端に支承されるので、この状態の新版P2の裏面が、排版排出口62から排出される後述する旧版P1の排出経路を覆うので、排出される旧版P1が隣接するユニット側に飛び出すのが規制される。
【0029】
S8において、版替えスタートボタン84を操作してONにすると、S9において、安全カバー駆動用モータ87が正方向に駆動されるので、図15(a)に示すように、スプロケット35が図中時計方向に回転する。したがって、安全カバー34が上昇し、版胴20の前面側が開放されるとともに、新版P2の切欠き7から遮蔽板33Aの基準ピン36が外れる。S10において、カバー開閉用アクチュエータ61が作動し、排版カバー55が回動するので、排版カバー55の上端が版胴20側に倒れ込み、旧版排出口62が開放される。同時に、この排版カバー55の倒れ込みによって、リンク部材66を介して版進入規制部材68が回動するので、開口58aの上部側を閉塞する。S11において、版保持器用第1のアクチュエータ43Aが作動し、図15(b)に示すように、版保持器41が第2の位置であるB点に位置付けられる。この第2の位置においては、上述したように、版保持器41が旧版P1の排版を可能にする第2の姿勢に切り替わる。
【0030】
S12において、駆動モータ88が逆方向に駆動され、版胴20が逆方向に所定量回動すると、S13において版胴20が停止し、S14において、くわえ側版万力開閉用アクチュエータ89が作動するので、版胴20のくわえ側版万力25のくわえが開き、旧版P1のくわえ側のくわえが解放される。S15において、版胴20が逆方向に所定量回動し、S16において版胴20が停止すると、S17において、尻側版万力開閉用アクチュエータ90が作動するので、版胴20の尻側版万力26のくわえが開き、旧版P1の尻側のくわえが解放される。S18において、版胴20が逆方向に回転すると、旧版P1の尻側が版胴20から外れ、排版カバー55によってガイドされので、旧版P1が旧版排出口62から機外に排出される。
【0031】
図16(a)に示すように、排出された旧版P1はガイド部材63のガイド部63aの内側を通って下方に導かれ、くわえ側がくわえ側版万力25のくわえから外れて、版尻が版受け75に支承される。このとき、旧版P1の版尻が光電センサ77aによって検出されるので、旧版P1が版受け75に収納されたことが確認され、旧版の排版が完了するので、制御装置91では光電センサ77aからの出力信号によって、S19において版胴20の回転を停止させる。このように、旧版P1の排版の完了を光電センサ77aによって検出するようにしたことによって、安全でかつ確実に、次の新版P2の給版を行うことができる。また、このとき、くわえ側版万力25がガイドレール42の第2の直線部42cの端面に対向するように位置付けられている。ここで、排版された旧版P1が、版尻を版受け75によって支承され、給版される新版P2が、くわえを版保持器41に保持されるとともに、版尻を版受け75によって支承された構造となっている。このように、排版された旧版P1と給版される新版P2の保持を、版胴20の近傍と印刷ユニットの下端部において行う構造としているので、隣接する印刷ユニット間にこれらの版P1,P2を保持する部材が介在していない。このため、印刷ユニット間が版を保持する部材によって狭められるようなことがないので、保守点検時等の作業性が向上する。
【0032】
S20において、版保持器用第2のアクチュエータ43Bが作動すると、図16(b)に示すように、版保持器41がガイドレール42の第2の直線部42cに移動し、第3の位置C点に位置付けられる。このとき、第2の直線部42cの傾きと、くわえ側版万力25の万力台25aの上端面の傾きとが略同一であり、第2の直線部42cに位置付けられている版保持器42の吸着パッド45の吸着面の延長上に万力台25aの上端面が位置付けられているので、吸着パッド45に吸着された新版P2のくわえ側が万力台25aとくわえ板25bとの間に挿入される。このとき、新版P2の切欠き7が基準ピン27に押圧されるように、版保持器41が第3の位置C点に位置付けられる。したがって、新版P2の切欠き7が基準ピン27に係合すると、新版P2が吸着パッド45の吸引力に抗して基準ピン27と反対側に移動するので、新版P2の切欠き7が基準ピン27側に押し付けられて、新版P2はくわえ側万力25に位置決めされる。S21において、くわえ側版万力開閉アクチュエータ89が作動することにより、くわえ板25bと万力台25aとの間で新版P2のくわえ側のくわえ閉めが行われる。
【0033】
S22において、吸引ポンプ86が非作動状態となり、版保持器41の吸着パッド45による新版P2の吸着が解除されることにより、新版P2はくわえ側版万力25のくわえにのみによって保持される。S23において、版胴20が正方向に所定量回動し、S24において停止すると、S25において、尻側版万力開閉アクチュエータ90が作動することにより、くわえ板26bと万力台26aとの間で新版P2の尻側のくわえ閉めが行われ、図17(a)に示すように、新版P2は版胴20に巻き付けられる。S26において、版保持器用第1,第2のアクチュエータ43A、43Bが共に非作動状態となり、図17(b)に示すように、版保持器41は第3の位置からガイドレール42に沿って第1の位置に位置付けられる。
【0034】
S27において、カバー開閉用アクチュエータ61が非作動状態になり、排版カバー55が排版排出口62を閉塞する。S28において、版押出し用アクチュエータ71が作動することによって、版押出し部材70が固定カバー57の窓64から突出するので、排版された旧版P1は、この版押出し部材70によって、固定カバー57の外側に押し出される。S29において、安全カバー駆動用モータ87が逆方向に駆動されるので、安全カバー34が下降し版胴20の前面側を閉じる。S30において、作業者が手によって旧版P1を排出し、S31において、版受けボタン83を操作してOFFにすると、S32において、版受け駆動用アクチュエータ78が非作動状態となり、版受け75が回動して開口58aの下部側を閉塞する。同時に、版押出し用アクチュエータ71が非作動状態となり、版押出し部材70が固定カバー57の内部に収納される。
【0035】
次に、図10、図13と図18ないし図21を用いて、半自動によって刷版を交換する動作を説明する。図10において、S1で全自動替えボタン80を操作せずに、S2で半自動版替えボタン81を操作してONにすることによって、刷版を半自動で交換する方法が選択される。図13において、S40で、版替えスタートボタン84を操作してONにすると、S41において、安全カバー駆動用モータ87が正方向に駆動され、安全カバー34が図18(a)の閉じた状態から同図(b)に示すように上昇するので、版胴20の前面側が開放される。S42において、版胴20が逆方向に所定量回動し、S43において版胴20が停止すると、S44において、くわえ側版万力開閉用アクチュエータ89が作動し、版胴20のくわえ側版万力25のくわえが開くので、旧版P1のくわえ側のくわえが解放される。
【0036】
S45において版胴20が逆方向に所定量回動し、S46において版胴20が停止すると、S47において、尻側版万力開閉用アクチュエータ90が作動し、版胴20の尻側版万力26のくわえが開くので、旧版P1の尻側のくわえが解放される。S48において、版胴20が逆方向に回転すると、図19(a)に示すように、旧版P1の尻側が版胴20から外れるので、同図(b)に示すように、この尻側を手によって把持する。さらに版胴20が逆方向に略1回転して、S49において、版胴20が停止すると、くわえ側も版胴20から外れるので、S50において、手によって旧版P1を排出する。
【0037】
S51において、新版P2を手によって把持し、図20(a)に示すように、版胴20のくわえ側版万力25の万力台25aとくわえ板25bの間に挿入し、S52において、運転ボタン85をONとする。S53において、くわえ側版万力開閉アクチュエータ89が作動することにより、くわえ板25bと万力台25aとの間で新版P2のくわえ側のくわえ閉めが行われる。S54において、再び運転ボタン85をONとすると、S55において、図20(b)に示すように、版胴20が正方向に所定量回動し、S56において停止する。S57において、尻側版万力開閉用アクチュエータ90が作動することにより、くわえ板26bと万力台26aとの間で新版P2の尻側のくわえ閉めが行われ、新版P2は版胴20に巻き付けられる。S58において、安全カバー駆動用モータ87が逆方向に駆動されることにより、図21に示すように、安全カバー34が下降し版胴20の前面側を閉じる。なお、新版P2の版尻を支承する部材として、支承部材77の替わりに、新版P2の版尻を吸着する吸着パッドを版受け75の外側に設けてもよい。また、本実施の形態においては、シート状の紙を印刷する枚葉輪転印刷機に適用した例を示したが、ウェブを印刷するウェブ輪転印刷機に適用できる。
【0038】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、版受けが版胴から排出された旧版と版胴に装着する新版の保持を兼ねるので、部品点数が削減されるだけではなく構造が簡素化される。また、版受けと版胴との間には版を保持する部材が介在しないので、装置の小型化を図ることができるとともに、印刷ユニット間を広く使用することができ、保守点検等の作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る輪転印刷機の全体を示す概略構成図である。
【図2】 図1におけるII矢視図である。
【図3】 図2におけるIII 矢視図である。
【図4】 本発明に係る輪転印刷機における版保持器の駆動部を拡大して示す側面図である。
【図5】 図4におけるV 矢視図である。
【図6】 図2におけるVI-VI 線断面図である。
【図7】 図2におけるVII-VII 線断面図である。
【図8】 図8(a)は図2におけるVIII(a)-VIII(a)線断面図、同図(b)は同図(a)におけるVIII(b)矢視図である。
【図9】 本発明に係る輪転印刷機における構成を示すブロック図である。
【図10】 本発明に係る輪転印刷機における版交換の動作を示すフローチャートであって、全自動版交換と半自動版交換との切替えを示す。
【図11】 本発明に係る輪転印刷機における版交換の動作を示すフローチャートであって、全自動版替交換の前半の動作を示す。
【図12】 本発明に係る輪転印刷機における版交換の動作を示すフローチャートであって、全自動版替交換の後半の動作を示す。
【図13】 本発明に係る輪転印刷機における版交換の動作を示すフローチャートであって、半自動版替交換の動作を示す。
【図14】 図2におけるXIIII-XIIII 線断面図であって、同図(a)は全自動版交換動作において新版を版保持器に装着した状態を示し、同図(b)は版受けを開いた状態を示す。
【図15】 図2におけるXIIII-XIIII 線断面図であって、同図(a)は全自動版交換動作において安全カバーを開いた状態を示し、同図(b)は版保持器を第2の位置に移動させた状態を示す。
【図16】 図2におけるXIIII-XIIII 線断面図であって、同図(a)は全自動版交換動作において旧版を排版した状態を示し、同図(b)は新版を版胴の版固定装置に挿入した状態を示す。
【図17】 図2におけるXIIII-XIIII 線断面図であって、同図(a)は全自動版交換動作において新版を版胴に巻き付けた状態を示し、同図(b)は安全カバーを閉じた状態を示す。
【図18】 図2におけるXIIII-XIIII 線断面図であって、同図(a)は半自動版交換動作において安全カバーを閉じている状態を示し、同図(b)は安全カバーを開いた状態を示す。
【図19】 図2におけるXIIII-XIIII 線断面図であって、同図(a)は半自動版交換動作において旧版を版胴の版固定装置の固定から外す状態を示し、同図(b)は旧版を排版している状態を示す。
【図20】 図2におけるXIIII-XIIII 線断面図であって、同図(a)は半自動版交換動作において新版を版胴の版固定装置に挿入している状態を示し、同図(b)は新版を版胴に巻き付けた状態を示す。
【図21】 図2におけるXIIII-XIIII 線断面図であって、半自動版交換動作において安全カバーを閉じた状態を示す。
【符号の説明】
1…枚葉輪転印刷機、41…版保持器、75…版受け、77…支承部材、78…版受け駆動用アクチュエータ、P1…旧版、P2…新版。
Claims (5)
- 版胴の刷版固定装置から旧版を排出し、新版を挿入する輪転印刷機における版交換装置において、新版を保持し版挿入位置に移動自在な版保持器と、排出された旧版を受ける開位置と閉位置との間を移動自在に支持された版受けとを備え、この版受けが閉状態にあるときに前記新版を支承する支承部材を前記版受けの外側に設け、前記版受けの内側は閉位置においてインキ壺と対向し、前記版受けの開位置は、当該版受けの内側とインキ壺との間に空間を作り、この空間に旧版が入ってくることを特徴とする輪転印刷機における版交換装置。
- 前記版受けは版胴の下方に位置付けられ、版胴から排出され落下する版を受け止めることを特徴とする請求項1記載の輪転印刷機における版交換装置。
- 前記版受けの閉位置から開位置への移動により、前記新版の前記支承部材による支承が外れることを特徴とする請求項1記載の輪転印刷機における版交換装置。
- 前記開位置における前記版受けにより、前記新版は前記版受けの先端に支承されることを特徴とする請求項1記載の輪転印刷機における版交換装置。
- 前記旧版が前記版受けに受けられたことを検出するセンサを設けたことを特徴とする請求項1記載の輪転印刷機における版交換装置。
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