JP4126836B2 - 触媒コンバータ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は主としてエンジンの排気浄化に適用される触媒コンバータに関する。
【0002】
【従来の技術と解決すべき課題】
触媒担体を軸方向に多数配列し、またはメタル触媒の途中部分にスリットを形成した多段階構成の触媒コンバータが知られている(特開平8−193513号公報、特開平6−312141号公報、特表平10−501860号公報参照)。
【0003】
このような多段階構成の触媒コンバータによると、担体間の隙間部分で排ガスの乱れを生じるため排ガス内でのガス交換および触媒との接触が活発化し、これにより優れた転化効率が得られることが、後述するように本発明者の実験により明らかになった。
【0004】
しかしながら、このように多段階構成の触媒コンバータは良好な排気エミッション性能が得られるものの、部品点数が多く構造が複雑化するため製造コストが高くなるという欠点がある。またメタル担体を使用した場合には個々の担体部分の厚み(軸方向の寸法)が薄くなるので排ガスの圧力や振動により変形や破損を起こすおそれがあり、このため多段階化に限界を生じる。
【0005】
本発明はこのような問題点に着目してなされたもので、転化効率に優れた多段階構造の触媒コンバータの構造を改良することを目的としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、担体横断面の一部を残して担体の中央部を横断するスリットを軸方向に複数個形成したセラミクス製触媒担体を、該触媒担体の外周部を包囲する耐熱ファイバー製マットを介して触媒容器の内側に保持させ、かつ触媒担体の外周部に沿ってスリットの開放部を閉塞する部材を担体と同程度の線膨張係数を有する材料にて形成した触媒コンバータである。
【0013】
請求項2の発明は、担体横断面の一部を残して担体の中央部を横断するスリットを軸方向に複数個形成したセラミクス製触媒担体を、該触媒担体の外周部を包囲する耐熱ファイバー製マットを介して触媒容器の内側に保持させ、かつ触媒担体と耐熱ファイバー製マットとの間に耐熱材料からなる箔材を介装した触媒コンバータである。
【0014】
請求項3の発明は、上記箔材には触媒担体のスリット開放部と重畳しない位置に多数の開口部を形成したものとする。
【0015】
【作用・効果】
本発明による効果を説明するにあたり、まず多段階構成の触媒担体(以下「多段担体」という。)を有する触媒コンバータと、これと同容量の単一構成の触媒担体(以下「リファレンス担体」という。)を有する触媒コンバータとを比較した実験結果につき説明する。図6はこの実験の概要を図示したものである。触媒担体はこの場合何れも断面1平方インチあたり400セル(1平方センチメートルあたり約62セル)のメタル担体であり、多段担体の各触媒担体の合計容量およびリファレンス担体の担体容量は各々約0.3リットル、触媒貴金属はPd、触媒貴金属使用量は3.5g/Lである。多段担体の各担体の外径はφ74、長さは5mm、担体間の間隔は2mmで15個の担体を配列してある。リファレンス担体の外径はφ74、全長は75mmである。
【0016】
実験は、実使用状態下での性能をシミュレートするために、各触媒ともに内部温度850℃、50時間の耐久運転を行ってある程度劣化させたものを使用し、冷間状態から毎分1.1リットルのエンジン排ガスを供給して、排ガスの供給開始からHC転化率が50%に達するまでの時間を計測した。この結果、単一触媒担体であるリファレンス担体を用いた触媒コンバータでは45秒であったのに対して、多段担体を用いたものでは35秒という優秀な成績が得られた。
【0017】
このように、多段担体を用いた触媒コンバータは担体間の間隙での乱流化作用により良好な排気エミッション性能が得られるが、既述したように部品点数が多く構造が複雑化するため製造コストが高くなり、またメタル担体を使用した場合には強度および耐久性の面で不安が生じるという問題がある。
【0018】
これに対して上記本発明によれば、セラミクス製触媒担体の軸方向に沿って、横断面上の一部を残して担体の中央部を横断する複数のスリットを形成した構成であるので、触媒の個数が増えて構造が複雑化したり組立工数が増大したりするようなことがなく、またセラミクス製触媒担体は必要な強度が得られる軸方向寸法がメタル担体に比較して小さいので、スリット間の厚みをより小さくして多段階化を促進し、それだけ優れた排気エミッション性能を発揮させることが可能である。
【0019】
スリットは、担体中心周りに順次角度を変化させながら形成する。担体横断面上スリットの一側方にのみ非スリット部を有するもの、あるいはスリットの両側方に非スリット部を有するものなど種々の態様で形成することができる。特にスリットを角度を変えて形成することにより、担体断面のどの部分を排ガスが通過するかによらずスリット部分を排ガスが通過する機会を確保できるので、より安定した触媒性能を期待することができる。
【0020】
また、スリットを、触媒入口端側のピッチ(スリットまでの担体厚さ)が大となるように形成してもよい。触媒入口端は最も排ガスの圧力が強く作用する部分であるので、入口端のピッチを大とすることにより必要十分な強度を持たせることができる。換言すれば、比較的排ガス圧力の影響を受けにくい下流側についてはスリットのピッチを小さくして多段階化の効果を促進することができる。
【0021】
スリットは、担体中央部の段数が周辺部よりも大となるように形成する。さらに、非スリット部の担体横断面に対する面積割合が40%未満となるように形成することが望ましい。こうすることにより触媒担体の中央部分を通過する排ガスは周辺部分を通過する排ガスに比較してスリット部分を通過する機会が増大する。また、中央部分を通過する排ガスがスリット部分を通過することにより、触媒担体の周辺部分に拡散する機会が増大する。触媒担体は一般に中央部の排ガス流量が周辺部に比較して大きくなる傾向を有するので、担体中央部でのスリット通過機会を大きくすることは、排ガス流量との関係から転化効率の向上に寄与する。
【0022】
触媒担体の外周部に沿ってスリットの開放部を閉塞する部材を担体と同程度の線膨張係数を有する材料にて形成した場合、担体の強度または剛性を高められると共に、触媒容器に保持させた場合の保持強度を高めることができる。特に、上記スリット入りの触媒担体を耐熱ファイバー製マットを介して触媒容器の内側に保持させた触媒コンバータを構成した場合、スリットを閉塞しておくことにより排ガスに晒される部分の風蝕によるマットの損耗を防止できるという利点もある。
【0023】
マットの風蝕を防止するには、このようにスリット開放部を閉塞する代わりに、触媒担体と耐熱ファイバー製マットとの間にスチールあるいはステンレス等の耐熱材料からなる箔材を介装した構成とする。この場合さらに、箔材の触媒担体のスリット開放部と重畳しない位置に多数の開口部を形成し、これにより箔材とマットとの間の滑りを防止して排圧や振動による触媒担体の軸方向の位置ずれを防止することができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
図1〜図3に本発明による触媒コンバータに用いる触媒担体の実施形態を、図4と図5に本発明による触媒コンバータの実施形態をそれぞれ示す。図1〜図3において、1はセラミクス製ハニカム触媒担体、2はスリット、3は非スリット部をそれぞれ示している。また、各図中の(a)は前記触媒担体1の側面形状を、(b)は排気入口側(図中のA矢視方向)から見たスリット形成方向の説明図を表している。
【0025】
図1に示した実施形態では、スリット2を、触媒担体1を直径方向に貫通しかつ両側に非スリット部3が残るような態様に形成してある。このスリット2は、(b)図に示したように触媒担体1の軸方向下流側に向けて90度ずつ回転させながら所定の軸方向間隔で形成してある。図2と図3の実施形態では、スリット2は一方側にのみ非スリット部3が残るように半径方向に開放した態様に形成してある。図2の実施例ではこのようなスリット2を180度ずつ回転させながら形成してあるのに対して、図3の実施例では90度ずつ、矢視A方向から見て時計方向に回転させながら形成してある。これらのスリット2は、セラミクス担体の製造過程で型抜きまたはカッターを用いた機械加工を施すことにより形成する。
【0026】
図1〜3の各図中(b)には、スリット数をa個とした場合における担体の段数を示している。これから明らかなように、担体中央部の段数が周辺部よりも大となっている。こうすることにより触媒担体の中央部分を通過する排ガスは周辺部分を通過する排ガスに比較してスリット部分を通過する機会が増大する。また、中央部分を通過する排ガスがスリット部分を通過することにより、触媒担体の周辺部分に拡散する機会が増大する。触媒担体は一般に中央部の排ガス流量が周辺部に比較して大きくなる傾向を有するので、担体中央部でのスリット通過機会を大きくすることは、排ガス流量との関係から転化効率の向上に寄与する。
【0027】
上記各実施形態において、入口端の触媒厚t1が下流側の触媒厚t2よりも大となるように各スリット2のピッチを設定してある。具体的には、例えばt1を30mmとすればt2は20mm程度に設定する。またスリット幅bは2mm程度である。このように入口端の厚さを大とすることにより排ガスの圧力が最も強く作用する最上流側部分の強度を確保することができる。
【0028】
また、これらの実施例では担体横断面に対する非スリット部3の割合が40%未満となるように設定してある。これにより触媒担体1の中央部を流れる排ガスが最も多くのスリットを通過することになるので効率よく排気浄化を行わせることができる。一方、複数のスリット2を互いに角度をずらして設けたことにより、触媒担体1の横断面上のどの部分から流入した排ガスに対してもスリットを通過する機会が与えられるので、全体として優れた転化効率が発揮される。
【0029】
図4は上記触媒担体1を用いた触媒コンバータの第1の実施形態である。図中の1は触媒担体、4は触媒容器、5はセラミクスファイバーあるいはアルミナファイバーなどからなる耐熱マットである。触媒担体1はその外周部に巻回された耐熱マット5を介して触媒容器4内に固定される。この実施形態では、触媒担体1のスリット2の開放部分の外周を触媒担体1と同一の線膨張係数を有する充填材6で埋めてある。充填材6の半径方向の幅dは例えば2mm程度である。このように充填材6を設けることにより、スリット2を抜けてきた排気によりマット5が風蝕されて摩耗する不具合を防止することができる。また、触媒担体1と同一の線膨張係数を有する充填材6を用いることにより、触媒担体1の強度を確保できる。
【0030】
図5は触媒コンバータの第2の実施形態である。これはマット5の風蝕を防止するために、充填材6を設ける代わりに、触媒担体1とマット5との間にステンレスあるいはスチールからなる箔材7を介装してマット5のスリット2に面する部分が排ガスに晒されないようにしたものである。箔材7の厚さとしては例えば30〜50μm程度である。この実施形態ではさらに、スリット開放部からの排ガスが直接マット5に触れないように、箔材7にスリット開放部と重畳しない位置に多数の開口部8を形成してある。この開口部8を設けたことにより、マット5の一部が開口部8に入り込むため、マット5と箔材7との間の滑りが防止され、これにより排圧や振動により触媒担体1が軸方向に位置ずれしてしまう不具合を防止することができる。
【0031】
なお、以上の図1〜図5はスリットの形成態様や触媒コンバータの構造を説明するための図面であり、スリットの幅やピッチなどは説明の便宜のために実際とは異なる寸法または比率で描いてある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による触媒コンバータに用いる触媒担体の第1の実施形態の形状説明図。
【図2】本発明による触媒コンバータに用いる触媒担体の第2の実施形態の形状説明図。
【図3】本発明による触媒コンバータに用いる触媒担体の第3の実施形態の形状説明図。
【図4】本発明による触媒コンバータの第1の実施形態の縦断面図。
【図5】本発明による触媒コンバータの第2の実施形態の縦断面図。
【図6】多段担体を有する触媒コンバータの効果を単一担体を有する触媒コンバータと比較した実験についての説明図。
【符号の説明】
1 触媒担体
2 スリット
3 非スリット部
4 触媒容器
5 マット
6 充填材
7 箔材
8 開口部
Claims (3)
- 担体横断面の一部を残して担体の中央部を横断するスリットを軸方向に複数個形成したセラミクス製触媒担体を、該触媒担体の外周部を包囲する耐熱ファイバー製マットを介して触媒容器の内側に保持させ、かつ触媒担体の外周部に沿ってスリットの開放部を閉塞する部材を担体と同程度の線膨張係数を有する材料にて形成した、
ことを特徴とする触媒コンバータ。 - 担体横断面の一部を残して担体の中央部を横断するスリットを軸方向に複数個形成したセラミクス製触媒担体を、該触媒担体の外周部を包囲する耐熱ファイバー製マットを介して触媒容器の内側に保持させ、かつ触媒担体と耐熱ファイバー製マットとの間に耐熱材料からなる箔材を介装した、
ことを特徴とする触媒コンバータ。 - 箔材には触媒担体のスリット開放部と重畳しない位置に多数の開口部を形成した請求項2に記載の触媒コンバータ。
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