JP4126588B2 - 金属化層を有する窒化アルミニウム焼結体及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は半導体やIC用の基板、パッケージの材料として有用な、金属化層を有する窒化アルミニウム焼結体及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
窒化アルミニウム焼結体は熱伝導率が高いため放熱性に優れると共に、電気絶縁性や機械的強度にも優れているため、発熱量の大きな半導体やICを搭載する基板、パッケージ材料として用いられることが多い。
【0003】
窒化アルミニウム焼結体を基板やパッケージとして用いる場合には、この窒化アルミニウム焼結体の表面及び/又は内部に金属化層を形成することが必要となる。
ところが、窒化アルミニウムは金属との濡れ性に劣るため、金属化が困難である。そこで、従来から、濡れ性を改善し、金属化した時の窒化アルミニウムとの接着強度を確保するために、様々な接着増強用成分が検討されてきた。
【0004】
このような接着増強用成分を配合してなる金属化層形成材料を用いることにより、窒化アルミニウム焼結体母材と金属化層との接合強度を高めている従来例を挙げると次の通りである。
【0005】
(特開平8−109084号公報)
Mo、W、Taから選ばれた1種以上の金属に、Al及び希土類元素から選ばれた1種以上、ならびにTi、Zr、Hfから選ばれた1種以上からなる接着増強用成分を添加したものを金属化層の形成材料とすることにより接合強度を高めている。
【0006】
(特開昭63−115393号公報)
W及び/又はMoの金属に、SiO2、Al2O3、CaOを主成分とし、これに必要に応じてMgO、BaO、B2O3のいずれか1種以上を混合した接着増強用成分を添加したものを金属化層の形成材料とすることにより接合強度を高めている。
【0007】
(特開昭63−195183号公報)
W及び/又はMoの金属に、CaO、BaO、SrO、Y2O3、CeO2、Gd2O3の1種以上と、Al2O3、AlNの一種以上とからなる接着増強用成分を添加したものを金属化層の形成材料とすることにより接合強度を高めている。
【0008】
(特開平6−116068号公報)
Mo、W、Taから選ばれた1種以上を含有する第1の金属化層に第2の金属化層を積層し、第2の金属化層には少なくともSiO2又はAl2O3を含有した接着増強用成分を含ませることにより接合強度を高めている。
【0009】
一方で、近年金属化層には低抵抗化が要求されることがあり、金属化層厚を厚くする必要が出てきた。通常金属化層厚は0.02mm程度であるが、場合によると0.1mm程度にすることもある。また、近年パッケージとして窒化アルミニウムを用いることが多くなったが、この場合、多層配線基板構造への要求が高く、層間の導通を確保するためにスルーホール(ビアホール)を金属化した導通部であるビアを形成する必要がある。従来ビア径は焼成前で0.2〜0.25mmであった。焼結後は一般的に0.15〜0.2mmとなる。ところが、ビアに対しても低抵抗化への要求が強く、近年0.3〜0.45mm、焼結後で0.25〜0.4mmというビア径が求められることが多い。
【0010】
ところが、従来取られていた方策によれば、金属化層と窒化アルミニウムとの接合強度は向上するものの、金属化層が厚くなったり、スルーホールに金属化層を充填しようとすると、金属の内部にクラックが生じることがあることが判った。すなわち、通常の金属化の厚みである0.02mm程度では、接合強度は問題なく強く、金属化層内にクラック等の不具合は全く発生していないが、金属化層の厚みが0.lmm程度と厚くなると金属化層内にクラックが生じ、金属化層自体の強度が小さくなり、ひどい場合には金属化層が破壊するという問題が発生した。
また、スルーホールに金属化層を充填しようとする場合にも、同様な問題が生じた。従来のスルーホール径のスルーホールの金属化では問題なかったものの、スルーホール径が焼結前で0.3mmと大きくなったときに問題が生じたことより、金属化層が厚くなった場合と同じ原因と考えられた。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、金属化層が厚くなった場合でも、金属化層内にクラックが生じるのを防ぐと共に、窒化アルミニウムと金属化層との接合強度が高い、金属化層を有する窒化アルミニウム焼結体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明は次の構成を有する。
(1)表面及び/又は内部に金属化層を有する窒化アルミニウム焼結体において、前記金属化層は導体高融点金属とマッチング用無機物とからなり、前記導体高融点金属はWであり、前記マッチング用無機物がスピネル(Al 2 O 3 ・MgO)であることを特徴とする金属化層を有する窒化アルミニウム焼結体。
【0013】
(2)窒化アルミニウムを主成分とするセラミックスグリーンシートに導体高融点金属とマッチング用無機物とを含むペーストを塗布した後、全体を同時に焼結することにより、金属化層を有する窒化アルミニウム焼結体を製造する方法において、前記ペーストに含まれる導体高融点金属がWであり、前記マッチング用無機物がスピネル(Al 2 O 3 ・MgO)であることを特徴とする金属化層を有する窒化アルミニウム焼結体の製造方法。
【0014】
(3)窒化アルミニウムを主成分とするセラミックスグリーンシートにスルーホールを穿孔し、該スルーホール内部に導体高融点金属とマッチング用無機物とを含むペーストを充填した後、全体を同時に焼結することにより、金属化層を有する窒化アルミニウム焼結体を製造する方法において、前記ペーストに含まれる導体高融点金属がWであり、前記マッチング用無機物がスピネル(Al 2 O 3 ・MgO)であることを特徴とする金属化層を有する窒化アルミニウム焼結体の製造方法。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の金属化層を有する窒化アルミニウム焼結体を構成する窒化アルミニウム焼結体母材は、窒化アルミニウム粉末を主成分とし、これに焼結助剤として広く知られているイットリウム、希土類金属、アルカリ金属等の化合物の粉末を0.1〜10wt%程度添加した焼結用粉末を成形し、焼結して得られる。
【0016】
成形方法としては、窒化アルミニウム粉末と焼結助剤粉末にポリビニルブチラール(PVB)等の樹脂結合剤、ジブチルフタレート(DBP)等の可塑剤を混合し、これを造粒した後、プレス等で成形を行っても良いし、混合後、ドクターブレード法でグリーンシートを作製しても良い。また、押し出し法等も適用することができる。
【0017】
ただし、多層構造とするためには、窒化アルミニウムと金属化層とを焼結前に積層し、同時焼成する必要がある。この場合、プレス成形では困難であるため、グリーンシートを用いることが多い。また、スルーホールやビアを形成する場合もプレス成形では困難であるので、グリーンシートを用いて、同時焼成を行うのが一般的である。以下では、主にグリーンシートを用いた同時焼成による作製方法について説明する。
【0018】
グリーンシートには必要に応じて、パンチ等を用いてスルーホールを形成する。このスルーホールには後述する組成のペーストが充填される。充填する方法としては、スクリーン印刷など周知の方法を適用することができる。更に、必要に応じて回路配線等を同様に後述する組成のペーストを塗布して形成する。塗布方法としては、スクリーン印刷、刷毛塗り、スピンローラー塗りなど周知の方法を適用することができる。
【0019】
本発明において、ビア、回路配線形成に用いるペーストは、導体粉末、マッチング用無機物粉末、樹脂結合剤、溶剤からなり、前記導体粉末としてはW粉末を用いる。これは、本グリーンシートは窒化アルミニウムと導体形成用組成物とを同時に焼結する必要があるが、窒化アルミニウム粉末とW粉末とは焼結温度を近くすることができ、さらに熱膨張率も近いため、導体粉末としてW粉末を用いることが好ましいからである。
【0020】
ただし、窒化アルミニウム粉末とW粉末の焼結温度を近づけるためには、W粉末の平均粒径を1μm以上、5μm以下にすることが好ましい。W粉末は平均粒径の異なるものを数種類混合して用いることも多いが、その場合、平均粒径が1μm以上、5μm以下のW粉末を50wt%以上用いることが好ましい。
【0021】
W粉末の平均粒径が1μmより小さくなると、Wの焼結開始温度が窒化アルミニウムの焼結温度に比べて低くなりすぎるため、Wや窒化アルミニウムとWの界面にクラックが生じやすくなる。一方、W粉末の平均粒径が5μmより大きくなると、Wの焼結性が著しく悪化し、窒化アルミニウムの焼結温度でWの焼結が充分に行われないため、好ましくない。
【0022】
また、前記マッチング用無機物粉末は、その融点が窒化アルミニウムの焼結温度よりも高いことが好ましい。窒化アルミニウムは金属との濡れ性に劣るため、金属化が困難である。そのため、従来マッチング用無機物が窒化アルミニウムと金属の接着を担っており、マッチング用無機物が無いと窒化アルミニウムと金属の接着は不可能であると考えられてきた。そのため、マッチング用無機物は、窒化アルミニウムの焼結温度以下で溶融する必要があると考えられてきた。これは溶融した無機物が窒化アルミニウムと金属の両方に適度に拡散することにより、窒化アルミニウムと金属とが接着されると考えられるからである。
【0023】
しかし、窒化アルミニウムの焼結温度以下の融点を持つマッチング用無機物を用いた場合、印刷状態が均一であれば問題は無いが、不均一な部分が存在すると、融点以上で溶融したマッチング用無機物が印刷の不均一な部分に流れ込み、偏析しやすいという問題が生じる。特に、印刷膜厚が0.1mm以上と厚い場合や、スルーホールに金属化層を形成する場合、印刷膜厚が厚いため不均一部分が生じやすいことが判った。偏析したマッチング用無機物は窒化アルミニウムやWと焼結特性などが異なるため、偏析部分が起点となってクラックなどが生じやすくなる。
【0024】
一方、窒化アルミニウムと金属との接合メカニズムを解析すると、窒化アルミニウム粒子と、W粒子やマッチング用無機物粒子とが機械的に噛み合うインターロックによる接合の寄与度が大きく、このため、マッチング用無機物が溶融しなくても、窒化アルミニウムと金属、マッチング用無機物の接合は可能であることが判った。このように、マッチング用無機物を溶融させないことにより、印刷の不均一な部分にマッチング用無機物が流れ込んで偏析するのを防止することができる。
【0025】
マッチング用無機物を溶融させないためには、少なくともマッチング用無機物の融点が窒化アルミニウムの焼結温度より高いことが必要である。しかし、マッチング用無機物の種類によっては、マッチング用無機物の融点が窒化アルミニウムの焼結温度より高くても、両者の温度が近ければ、流動性を持つことがある。一般的な窒化アルミニウムの焼結温度は1800℃から1900℃であるが、マッチング用無機物の融点が2000℃以上であれば、これらの問題は生じない。
【0026】
ペースト中に含有させるマッチング用無機物の含有量、すなわち、金属化層中に占めるマッチング用無機物の含有量は、1〜20wt%が望ましい。含有量が1wt%より少なくなると、マッチング用無機物の効果が現れない。マッチング用無機物は窒化アルミニウムの焼結中に溶融することなく、窒化アルミニウム粒子及びW粒子と噛み合うことによって生じるインターロック効果により、窒化アルミニウムと金属化層の密着強度を高める働きをするのであるが、その含有量が1wt%よりも少ないと、十分なインターロック効果を得ることができないため、密着強度が低下する。一方、含有量が20wt%を超えると、金属化層の抵抗値の増加が無視できなくなるため、好ましくない。
【0028】
ペースト中のマッチング用無機物としてはスピネル(Al 2 O 3 ・MgO)を用いる。
スピネル(Al 2 O 3 ・MgO)を使用することにより、金属化層内に生じるクラックを効率的に防ぐことができる。
【0029】
これらの粉末をエチルセルロース、ニトロセルロース等の樹脂結合剤とブチルカルビトール、テルピネオール等の溶剤に分散させることによってペーストを得る。通常、樹脂結合剤は、W粉末及びマッチング用無機物を100重量部とした場合、1〜3重量部混合し、溶剤は3〜15重量部程度混合する。
【0030】
これまでに述べてきたようなペーストを窒化アルミニウムのグリーンシートのスルーホールに充填、もしくは回路印刷した後、必要に応じてグリーンシートを積層する。積層はシートをモールド中にセットした後に、プレス機により50℃〜80℃程度に熱しながら、5〜10MPa程度の圧力を10〜20分程度かけて熱圧着することにより行う。シート間には必要に応じて溶剤や接着剤を塗布してもよい。
【0031】
積層したシートは、任意の形に切断された後に焼結される。焼結に先立ち、窒化アルミニウムのグリーンシートの樹脂結合剤、可塑剤、及びペーストの媒体を除去するために、例えば300℃〜800℃というような温度で脱脂処理をしてもよい。
【0032】
焼結は非酸化性雰囲気中で行うが、窒素雰囲気中で行うのが好ましい。焼結温度、焼結時間は、焼結後の窒化アルミニウム焼結体が熱伝導率等の特性が所望の値となるように設定される。一般的に焼結温度は1600℃〜2000℃であり、焼結時間は1時間〜5時間程度に設定される。
【0033】
前記のようにすることによって、金属化層が厚くなった場合でも、金属化層内にクラックの発生がなく、窒化アルミニウムとの接合強度も高い本発明の金属化層を有する窒化アルミニウム焼結体を得ることができる。また今まで主に述べてきたグリーンシートを用いた同時焼結法によらなくても、例えば、窒化アルミニウム焼結体単体を一旦焼結によって得た後に、本発明の金属化層を実現するペーストを基板に塗布し、非酸化雰囲気中、1600℃〜2000℃で焼結することによっても、金属化層が厚くなった場合でも、金属化層内にクラックの発生がなく、窒化アルミニウムとの接合強度も高い金属化層を有する窒化アルミニウム焼結体を得ることができる。
【0034】
【実施例】
[実施例1]
97重量部の窒化アルミニウム粉末と3重量部のY2O3粉末とを混合し、これに樹脂結合剤としてポリビニルブチラールを、また、可塑剤としてジブチルフタレートをそれぞれ10重量部、5重量部混合して、ドクターブレード法にて0.5mm厚のグリーンシートを成形した。これを金型を使用して100mm×100mmに打ち抜いた後、パンチャーにてφ0.3mmのスルーホールを形成した。
【0035】
また、一方で、表1に示したような配合組成のペースト試料を作製した。表1にはマッチング用無機物粉末合計を100とした場合のAl2O3、SiO2、MgOの配合割合も示した。表1に示した各ペースト試料は、スルーホールの金属化層中に占める無機物粉末の割合が15wt%となるように、W粉末85重量部とマッチング用無機物粉末15重量部とを、樹脂結合剤としての5重量部のエチルセルロースと、溶媒としての5重量部のブチルカルビトールに分散させることにより作製した。W粉末は平均粒径2μmのものを使用した。また、試料7においては、マッチング用無機物粉末としてスピネルを用いた。
表1に示した無機物の融点は、マッチング用無機物だけで評価ペレットを作製して測定した値である。
【0036】
【表1】
【0037】
このペースト試料をスクリーン印刷機を用いて前記スルーホールに充填した。
さらに、同じペーストに5重量部のブチルカルビトールを混合して粘度を低下させ、スクリーン印刷機にて325メッシュ、乳剤厚20μmのスクリーンを用いて回路印刷を行った。
【0038】
次に、印刷後のシートを2枚重ねて積層した。積層はモールドにシートを2枚重ねてセットし、プレス機にて50℃に熱しつつ、10MPaの圧力で2分間熱圧着することによって行った。
その後、窒素雰囲気中で600℃にて脱脂を行い、窒素雰囲気中で1800℃、3時間の条件で焼結を行った。
【0039】
焼結後、窒化アルミニウム焼結体上の、回路印刷部分には10μmの厚みの金属化層が形成されており、また、ビア部分にはφ0.25mmのスルーホールに金属化層が形成されていた。この状態で、回路印刷部分及びビア部分におけるクラックの発生の有無を40倍の顕微鏡で確認した。
【0040】
次に、この金属化層が形成された窒化アルミニウム基板の金属化層の上に、無電解めっき法にて厚み3〜5μmのNiめっき層を形成した。次に800℃のホーミングガス中でめっき層をアニールし、次にφ0.5mm、引っ張り強度500MPaのFe−Ni−Co合金ピンを銀ろうを用いてろう付けした。ろう付け温度は800℃、雰囲気は水素と窒素との混合ガス雰囲気とした。
次に、窒化アルミニウム基板を固定し、Fe−Ni−Co合金ピンを引っ張って強度を測定し、破壊モードを観察した。さらに、回路印刷部分、ビア部分でのクラックの発生の有無を確認するために、断面を研磨し、電子顕微鏡(1000倍)によって観察した。
【0041】
これらの評価結果を表1に示す。上述の評価は各試料を20個作製して行ったが、表1の引っ張り強度については、20回中の最低強度を示し、クラックについてはクラックの発生確率を示した。本発明範囲内のペースト配合では回路印刷面、ビア部分ともにクラックは生じていなかった。一方、本発明の範囲外のものに関しては、ビアにクラックが認められた。特に試料1、2のように融点の低いマッチング用無機物の場合、クラックの大きさが大きく、その発生確率も100%と高かった。クラックが生じた部分を詳細に観察すると、マッチング用無機物が偏析している様子が観察されたビアが多数存在した。
【0042】
引張強度及び破壊モードについては、本発明範囲内のペースト配合では、引っ張り強さ20MPaで金属化層とFe−Ni−Co線とのろう付け部分が破断した。これより、窒化アルミニウムと金属化層との接合強度は20MPa以上であることが判る。一方、本発明の範囲外のペースト配合によって形成された金属化層は、接合強度が20MPaより低いものがあり、ビアの真上の金属化層内で破壊が生じていた。
【0043】
[実施例2]
実施例1の各試料について、窒化アルミニウムの焼結条件を1850℃、10時間に変更して、実施例1と同様の試験を行った。
その結果、試料1〜7については、実施例1とほぼ同様の結果が得られたが、試料8については、引っ張り強度が18MPaに劣化していた。但し、クラックの発生確率は0%で変化がなかった。
引張り強度が劣化した本実施例の試料8について、断面を研磨して電子顕微鏡(1000倍)によって観察した。その結果、ビア周辺に異常成長した粒子が認められた。一方、実施例1の試料8について同様な観察を行ったが、異常成長した粒子は認められなかった。
[実施例3]
実施例1の試料7に関して、スルーホールの金属化層中に占める無機物の割合を変化させて、その影響を調べた。変化させた割合を表2に示す。実験方法等は、スルーホール径が焼結後φ0.1mmとなるようにパンチャーを変更したことを除いては実施例1と同じとした。
【0044】
試料は、焼結後に試料表面の研磨を行い、電子顕微鏡によってクラックの有無を1000倍で確認した。また、試料の上下面の導通をテスターにて測定し、導通したビアの良品率を測定した。結果を表2に示す。無機物のスルーホールの金属化層中に占める割合が1〜20wt%であれば、クラックは発生せず、導通も良好であった。この割合が1wt%より小さくなるとビアにクラックが認められた。逆に20wt%より大きくなると導通のないビアが認められた。
【0045】
【表2】
【0046】
[実施例4]
実施例1の試料7に関して、使用するW粉末の平均粒径を変更して、その影響を調べた。実験方法等は実施例1と同じとした。
試料は、実施例1と同様にピンの引張強度とビア、窒化アルミニウムのクラックの発生の有無により評価した。W粉末の平均粒径1μm〜5μmで特に特性に変化は認められなかった。
【0047】
【表3】
【0048】
【発明の効果】
本発明によれば、窒化アルミニウム焼結体に形成する、導体高融点金属とマッチング用無機物からなる金属化層において、導体高融点金属として窒化アルミニウムと熱膨張率の近いWを選択し、さらにはマッチング用無機物の融点を窒化アルミニウムの焼結温度以上、好ましくは2000℃以上にすることで、金属化層が0.1mm程度に厚くなったり、スルーホールに金属化層を形成する場合でも、クラックの発生を防ぎ、窒化アルミニウムとの密着強度を高くすることが出来る。このため、窒化アルミニウムをIC用の基板、パッケージとして好適に用いることができる。
Claims (3)
- 表面及び/又は内部に金属化層を有する窒化アルミニウム焼結体において、前記金属化層は導体高融点金属とマッチング用無機物とからなり、前記導体高融点金属はWであり、前記マッチング用無機物がスピネル(Al 2 O 3 ・MgO)であることを特徴とする金属化層を有する窒化アルミニウム焼結体。
- 窒化アルミニウムを主成分とするセラミックスグリーンシートに導体高融点金属とマッチング用無機物とを含むペーストを塗布した後、全体を同時に焼結することにより、金属化層を有する窒化アルミニウム焼結体を製造する方法において、前記ペーストに含まれる導体高融点金属がWであり、前記マッチング用無機物がスピネル(Al 2 O 3 ・MgO)であることを特徴とする金属化層を有する窒化アルミニウム焼結体の製造方法。
- 窒化アルミニウムを主成分とするセラミックスグリーンシートにスルーホールを穿孔し、該スルーホール内部に導体高融点金属とマッチング用無機物とを含むペーストを充填した後、全体を同時に焼結することにより、金属化層を有する窒化アルミニウム焼結体を製造する方法において、前記ペーストに含まれる導体高融点金属がWであり、前記マッチング用無機物がスピネル(Al 2 O 3 ・MgO)であることを特徴とする金属化層を有する窒化アルミニウム焼結体の製造方法。
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