JP4125382B2 - コバルト基合金、この合金から製造された製品及びその製造方法 - Google Patents
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Description
本発明は、高温において、特に、ファイバー引き用溶融ガラスの製造のための機械の部品のような、熱い条件の下でのガラスの製造および/または変形のための製品の製造に使用され得る、溶融ガラスのような酸化性または腐蝕性媒体中において、機械的強度を有するコバルト基合金に関する。
発明の背景
ファイバー引き技術は、その垂直軸の周りに非常に高回転速度で回転する回転部品のアセンブリー内に液体ガラスを連続的に落下させることからなる。分配“カップ”と呼ばれている内部部品の底部による初期の落下が停止すると、ガラスは、この同じ部品の、孔が開けられた円筒壁に向かう遠心力の効果の下で広がる。これらの孔は、やはり遠心力の効果の下で、先行する孔よりも小さい、孔が開けられている“スピナー”として知られている外部部品の“バンド”として知られている壁に向かって分布しており、それを通してガラスを通過させる。ガラスは、やはり遠心力の下で、どこでも溶融ガラスのフィラメントの形で、スピナーのバンドを通過する。バンドの外壁を走行する下降流を生成する、スピナーの外側の上に位置する環状バーナーは、それらを線引きしつつ、これらフィラメントを下方に方向転換させる。後者は、その後、ガラスウールの形に固化する。“カップ”および“スピナー”として知られている部品は、非常に熱的に(動作開始および停止の際の熱的ショック)、機械的に(遠心力、ガラスの通過によるエロージョン)、および化学的に(溶融ガラスによる、かつディスク用バーナーから出る熱ガスによる酸化および腐蝕)ストレスを受けるファイバー引きツールである。
なお、操作温度は、ガラスが適切な粘度を示すためには、少なくとも1000℃のオーダーである。
これらの条件の下で、これらの部品に対するダメージの主要な形は、垂直壁のクリープによる変形、水平または垂直のクラックの出現、またはファイバー引きオリフィスのエロージョンであり、これらは、部品の純粋で単純な交換を必要とする。従って、それらの構成材料は、プロセスの技術的および経済的制限に適合するに充分に長い製造期間に堪えなければならない。
適切な材料が、文献FR−A−2,536,385に開示されている。それは、2つの形態で存在する、(W,Cr)23C6型の炭化クロムおよび炭化タングステンにより強化されたニッケルをベースとするスーパーアロイである。2つの形態とは、全体の剛性を保証する連続粒子間ネットワーク構造における粒界に分布する共融炭化物と、粒子間クリープへの耐性に寄与する、ニッケルマトリクスの粒子内に緻密で均一に分布する微細炭化物(二次析出)である。
使用温度における、酸化および腐蝕に対する耐性は、酸化性媒体と接触する部品の表面に保護酸化クロム層を形成する、合金の高クロム含量により提供される。腐蝕の最前線に向かうクロムの連続拡散は、亀裂または他の損傷の際の酸化クロム層の再生を可能とする。
しかし、この合金が成功をもって使用される動作温度は、1000〜1050℃の最大値に限定される。この最大温度を越えると、この材料は、亀裂をもって表わされる機械的強度の欠如、および亀裂が材料への腐蝕性媒体の侵入を許容する耐腐蝕性の欠如を示す。
比較的高温における急激な劣化のこの問題は、この型の合金を、1100℃以下の温度で線引きをすることが出来ない、(玄武岩のような)非常に粘性のガラスからの鉱物ウールの製造に用いることを不可能にする。
ガラスによる、良好な機械的強度、および良好な酸化および腐蝕に対する耐性を示す材料に対するこの要求に適合させるために、ニッケルより優れた固有強度を有する元素であるコバルトをベースとするスーパーアロイを用いることが提供された。
これらの合金は、炭化物の析出による強化効果を得るために、一般に炭素およびタングステンとともに、耐酸化性のためにクロムを含有する。これらはまた、すべての温度において面心立方である、コバルトの結晶格子を安定化させる、固溶体中にニッケルを含んでいる。
しかし、これらの元素の存在のみでは、期待される特性を達成するには充分ではなく、コバルト基合金の特性を更に改良するために、多くの試みがなされている。
これらの試みは、一般に、合金の組成に対する反応性元素の添加に基づいている。
このように、FR−A−2,699,932は、レニウムを含有し、付加的に、特にニオブ、イットリウム、または他の希土類金属、ボロン、および/またはハフニウムを含み得るコバルト基合金を開示している。US−A−4,765,817は、ボロンおよびハフニウムをも含有する、コバルト、クロム、ニッケル、およびタングステンをベースとする合金を開示している。FR−A−2,576,914はまた、ハフニウムを用いている。EP−A−0,317,579は、ボロンを含み、ハフニウムを欠いているが、イットリウムを含有する合金を開示している。US−A−3,933,484はまた、ボロンを含む合金に関する。US−A−3,984,240およびUS−A−3,980,473は、イットリウムおよびジスプロシウムの使用を開示している。
これらの元素は、非常に高価であり、それらの劣った含有効率は、一般に、合金の加工の際の過剰な含有を必要とし、それは、材料のコストにおける出発物質の役割を増加させる。この点において、これらの多くの文献は、高価でもある、(35〜36%のオーダーの)高クロム含量の使用を示している。
これらの非常に高度に反応性の元素の存在は、かなりの投資を要する装置により、真空下での溶融と鋳込みの困難な技術により合金が製造されることを必要とする。
更に、これらの合金は、溶融ガラスのような腐蝕性媒体中、高温下で脆いという顕著な危険を示している。
このように、高温下、特に酸化性および/または腐蝕性媒体中で、良好な機械的特性を有し、加えて製造が容易で比較的安価である、新規な合金の要求が依然として残っている。
発明の要旨
この目的、および後に明らかになるであろう他の目的は、その割合が合金の重量%で示される、基本的に以下の元素からなる合金により達成された。
Cr 26−34%
Ni 6−12%
W 4−8%
Ta 2−4%
C 0.2−0.5%
Fe 3%未満
Si 1%未満
Mn 0.5%未満
Zr 0.1%未満
残部はコバルトおよび不可避的不純物からなり、炭素に対するタンタルのモル比は、0.4〜1のオーダーである。
本発明は、合金の構成元素、特に炭素およびタンタルの比率の非常に正確な選択により、合金の強化の形態を最適化することを可能とする。このように、本発明による合金は、従来例に対し比較的低い炭素含量を示すが、炭化物の析出による強化は、材料内の炭化物の分布を最適にすることにより改善することが可能となった。
以下の説明は、合金の構成成分およびそのそれぞれの比率の重要性について、更に詳細におこなわれる。
本発明による合金のベースを構成するコバルトは、その耐火性(1495℃の融点)により、高温におけるマトリクスの固有の機械的強度に貢献する。
コバルトの結晶構造を安定化する元素として、固溶体の形で合金中に存在するニッケルは、合金の6〜12重量%のオーダー、より有利には8〜10重量%の通常の比率範囲で使用される。
クロムは、一部が固溶体に存在するマトリクスの固有機械的強度に貢献する。それはまた、粒界または微細分散体の形で粒子内に存在するM=(Cr,W)を有するM23C6の炭化物の形で合金の強化に貢献する。粒界では、M=(Cr,W)は、粒子間スリップを妨げ、粒子内では、M=(Cr,W)は、耐粒子間クリープ性に貢献する。そのすべての形において、クロムは、酸化性媒体にさらされる面において保護層を形成する酸化クロムの前駆体として、耐食性に貢献する。この保護層の形成および維持のために、最小量のクロムが必要である。しかし、過剰の高クロム含量は、過剰の剛性、および高温でのストレスに適合しないストレス下での過度に低い延性を生ずるが故に、機械的強度および高温での靭性に対し有害である。
一般に、本発明の合金のクロム含量は、26〜34重量%、好ましくは28〜32重量%、より有利には約29〜30重量%であろう。
しかし、粒子間および粒子内(Cr,W)23C6炭化物の形成におけるクロムとともにタングステンの析出もまた、マトリクスにおける固溶体に見出され、そこでは、重質元素が局部的に格子をゆがめ、材料が機械的ストレスを受けるときに、転位の進行を妨げ、阻止する。高温では安定ではない炭化クロムC7C3に損傷を与えて、M23C6型を促進させるためには、クロム含量との組合せで、最小量が望ましい。この元素は、機械的強度に対し良好な影響を与えるが、それにもかかわらず、WO3のような非常に揮発性の形で高温で酸化されるという欠点を示す。合金中の過剰に高含量のタングステンは、腐食に関し、一般に不満足な挙動により反映される。
本発明によると、4〜8重量%、好ましくは5〜7重量%、より有利には約5.5〜6.5重量%のタングステン含量により、良好な妥協が達成される。
コバルトマトリクスにおける固溶体中にも存在するタンタルは、タングステンと同様に、マトリクスの固有強度に対し、付随的な貢献を行う。加えて、それは、特に非常に高温(例えば、1100℃のオーダーの)下で、高温下でのより大きな安定性のため、(Cr,W)23C6炭化物を補完する、粒子間強化に貢献する、粒界に存在するTaCを、炭素とともに形成し得る。本発明において、合金中のタンタルの存在は、耐腐食性に良好な効果を与える。
所望の強度を得ることを可能とする最小のタンタル含量は、2%のオーダーであり、上限は約4%に選択することが可能である。
合金の他の基本的構成成分は、金属炭化ぶつの析出物の形成に必要な炭素である。本発明者らは、合金の特性に対する炭素含量の影響を示した。
驚くべき事に、従来技術は、0.5重量%を越える、比較的高含量の炭素の使用を教えているが、低炭素含量が、それから生ずる炭化物の低比率にもかかわらず、酸化および腐食に対する非常に良好な耐性とともに、高温下での優れた機械的特性を与えている。
本発明によると、0.2〜0.5重量%の炭素含量が、有効な粒子間および粒子内機械的強化に十分に緻密な炭化物の析出を生ずるのに十分である。特に、合金の粒界において不連続に分布する粒子間炭化物は、粒子同士のスリップおよびクリープを阻止することにより、一般に炭化物の場合にそうであるように、クラックの伝播を促進することなく、機械的特性に有利に貢献する。
炭素含量は、0.3〜0.45重量%が有利であり、0.35〜0.42重量%が好ましい。
本発明によると、一方において、分子間炭化物の適切な(不連続の)分布により、他方において、炭化物の適切な質、即ち粒界における所定の比の炭化タンタルの存在により、比較的低い炭素含量が補償される。
本発明者らは、分子間相を構成する金属炭化物の性質が、Ta/C比に依存すること、および少なくとも約0.4の炭素に対するタンタルのモル比が、粒界において、M23C6炭化物に対する十分な比率のTaCの析出を可能とすることを発見した。
クロム中の豊富なM23C6型の分子間炭化物の存在は、粒界に沿って或る程度のクロムを拡散させるために、やはり望ましく、またその結果、本発明は、0.4〜1のオーダーのTa/Cモル比(6.0〜15.1のオーダーの重量比に相当する)を提供する。好ましくは、Ta/Cモル比は、0.45〜0.9、非常に有利には、0.48〜0.8、特に、0.5〜0.7のオーダー(重量比では、好ましくは、6.8〜13.6、非常に有利には、7.2〜12.1、特に、7.5〜10.6のオーダー)である。
このように、本発明の合金の強度は、機械的特性と耐腐蝕性の観点からみて、補償された特性を有する2つの型の炭化物の存在により最適化される。即ち、(Cr,W)23C6は、クロム源として、および高温までの機械的強化材として機能し、TaCは、非常な高温下での機械的強化材としての機能を引継ぎ、酸化性および/または腐蝕性条件の下で、酸化性または腐蝕性媒体の侵入を妨げる。
上で示した成分は、ホウ素、イットリウム、または他の希土類金属、ハフニウム、レニウム等のような、高価な、または少なくとも非常に反応性で、製造に多大な注意を要する追加の元素に頼ることなく、本発明の合金の優れた特性を確保するのに充分である。そのような元素は、任意に本発明の合金に含ませることが出来るが、コストおよび製造の容易さに関する利点が失われるので、好ましい態様ではないであろう。
それにもかかわらず、合金は、他の通常の成分元素、または不可避的不純物を含有することが出来る。それは、一般に、合金の製造及び成形中の溶融金属の脱酸剤としての、1重量%未満の割合のシリコン、これも脱酸剤としての、0.5重量%未満の割合のマンガン、硫黄または鉛のような不所望の元素の除去剤としての、0.1重量%未満の割合のジルコニウム、材料の特性に有害な影響を与えない、3重量%までの範囲であり得る割合の鉄を含み、合金の基本的成分に不純物として導入された他の元素の累積量は、合金組成の1重量%未満を示すのが有利である。
本発明の合金の特に好ましい例は、元素が以下のオーダーの比率である組成を有する。
好ましくは、B、Hf、Y、Dy、Re及び他の希土類元素がないのがよい。
本発明の他の好ましい例は、元素が以下のオーダーの比率である組成を有する。
好ましくは、B、Hf、Y、Dy、Re及び他の希土類元素がないのがよい。
本発明の合金は、B、Hf、またはY、Dy、およびReを含む希土類金属のような高度に反応性の元素がないときに、通常の手段による、特に少なくとも部分的不活性雰囲気下での誘導溶融、および砂型での鋳造による、標準的溶融および鋳造によって、非常に容易に成型され得る。
鋳造後、以下の2段階熱処理により、所望の微細構造を有利に達成することが出来る。
1100〜1250℃、特に1200℃のオーダーの温度、特に1〜4時間、より有利には2時間のオーダーの時間のアニールを含む固溶体形成熱処理の段階。
850〜1050℃、特に1000℃のオーダーの温度、特に5〜20時間、より有利には10時間のオーダーの時間のアニールを含む炭化物の析出の段階。
本発明の他の主題は、上述のように、熱処理段階を用いて、合金から鋳造することによる製品の製造プロセスである。
このプロセスは、鋳造の後および/または熱処理の第1段階の後、かつ熱処理の結果として、少なくとも1つの冷却段階を含んでいる。
例えば、特に周囲温度に戻して、空気で冷却することにより、中間および/または最終冷却を実施することが出来る。
本発明の合金は、高温で機械的に応力を受ける、および/または酸化性または腐蝕性媒体内で操作される、あらゆる種類の部品を製造するために、用いることが出来る。更に、本発明の主題は、上述の合金から、特に鋳造により製造された製品である。
そのような用途の中で、熱条件の下でガラスの製造および変形に使用し得る製品、例えばミネラルウールを製造するための、線引きスピナーを挙げることが出来る。
本発明の合金の、腐蝕性媒体中、高温下での顕著な機械的強度は、溶融ガラスを成型するための装置の寿命を実質的に増加させることを可能とする。
本発明は、以下の実施例、および本発明の合金の構造の顕微鏡写真を示す単独の図面により例示される。
実施例1
以下の組成の溶融原料が、不活性雰囲気(特にアルゴン)下で誘導加熱技術により調製され、次いで砂型における単純鋳造により成型される。
残部はコバルトからなる。
鋳造の後に、1200℃で2時間の固溶体形成熱処理の段階と、1000℃で10時間の二次炭化物の析出の段階を含む熱処理が行われる。
通常の金属顕微鏡技術および任意にX線微量分析による、光学的または電子顕微鏡により示された、得られた合金の微細構造は、固溶体中に様々な元素、即ちCr、Ta、W、および粒子中ならびに粒界に様々の炭化物を含み、ニッケルの存在により面心立方構造として安定化されたコバルトマトリクスからなる。この構造は、単独の図面で見ることが出来、即ち、用いられた倍率の顕微鏡では現れない粒界が、ライン1により表わされている。粒界1により限定された粒子内には、粒子内相が、小さな点のかたちで現れる、マトリクス中に均一に析出した、(Cr,W)23C6型の微細な二次炭化物から構成される。粒界では、暗部として現れる共融(Cr,W)23C6炭化物と、相互に分離した、小さな透明な小島の形で現れる、TaC炭化物4から構成される、緻密ではあるが、不連続の粒子間相が見られる。
合金の組成中の炭化物に対するタンタルのモル比は、0.51であり、粒子間相は、約50体積%が炭化クロムおよび炭化タングステンからなり、約50体積%が炭化タンタルからなる。
合金の高温における機械的特性は、以下の3つのテストにおいて評価されている。
それぞれ9mmの長さの、引張り装置に取り付けるための2つの端部と、4mmの径と22mmの長さの中間可動部を含む40mmの全長の円筒状試験試料に対し、900℃で2mm/分の引っ張り速度で破断した際の引張り応力(MPa)の測定。
上記条件で900℃で破断した際の引張り伸び(%)の測定。
それぞれ17.5mmの長さの、引張り装置に取り付けるための2つの端部と、6.4mmの径と45mmの長さの中間可動部を含む80mmの全長の円筒状試験試料に対し、1050℃で35MPaでのクリープ強度(時間)の測定。
空気による酸化およびガラスによる腐蝕に対する耐性は、10mmの径と100mmの長さの円筒状試料を、半分を以下の型の溶融ガラスに1080℃で125時間浸漬して、回転させることからなる試験で評価された。その結果は、試験試料−溶融ガラス−熱空気の3点のレベルでの浸蝕領域の深さ(mm)により与えられる。ガラスの組成は、ほぼ以下の通り(重量部)である。
その結果は、以下の表2にそろえられている。
溶融ガラスを成型するための装置を構成するために用いられる、この合金の能力は、ガラスウールの製造への適用において評価された。400mmの径で通常の形状を有するファイバー引きスピナーが、鋳造および上述の熱処理により製造され、次いで1080℃で最初のガラスをファイバー引きするための工業的条件の下で使用された。
スピナーは、目で見える劣化により、または生成されたファイバーの質が不満足になることにより示される、スピナーの破壊の後に、その停止が決定されるまで使用される。このようにして測定されたスピナーの寿命(時間)は、540時間である。
同様の条件で、ニッケルをベースとするスーパーアロイから作られたファイバー引きスピナーの寿命は、実施例1と同様の熱処理に供された以下の組成の、FR−A−2、536、385によるニッケルをベースとする合金の場合、150時間である。
この合金の微細構造は、マトリクス中に均一に分散し、連続分子間相を形成するM23C6=(Cr,W)23C6の炭化物を含むニッケルマトリクスから構成される。
実施例1の合金は、特に、その優れたクリープ強度およびその非常に良好な耐腐蝕性により、スピナーの寿命を、通常の合金の3.6倍に増加させることを可能とする。
実施例2
以下の組成を有する本発明の合金が、実施例1と同様に製造され、その特性が同様に評価される。
残部はコバルトからなる。
その微細構造は、低炭素含量のため、不連続であるが緻密ではなく、かつ主としてTaC炭化タンタル(Ta/Cモル比=0.91)から構成される粒子間相により、実施例1の合金から区別される。
機械的挙動および腐蝕に関する挙動の試験結果が、表1に現れている。
この合金は、特にその機械的特性、ことに900℃での破断時の伸びにより表わされる熱延性、およびかなりのクリープ強度、従来のニッケルをベースとする合金に対し、増加したテンフォールド(tenfold)について、顕著である。
工業的条件の下でのファイバー引き試験により示されるように、その熱ショックに耐える能力は、それを、ガラスウールの製造のためのファイバー引きスピナーを構成する有利な材料とする。即ち、実施例2の合金の腐蝕に向かう傾向にもかかわらず、ディスクの寿命は、ほぼ720時間である。ガラスによる攻撃から生ずる脆さは、その合金の良好な機械的特性により補償される。(実施例1とは異なる)同一の条件の下では、実施例1に示すニッケルをベースとするスーパーアロイから作られたファイバー引きスピナーの寿命は、わずか250時間である。
比較例1〜9
比較のため、本発明の外側の成分元素含量を選択することにより、他の合金を製造した。その組成を表2に示す。それぞれの合金では、本発明に従っていない含量には、下線が引かれている。
比較例1の合金は、コバルトから構成される代わりにニッケルであるマトリクスにおいて、本発明の合金と異なっているに過ぎない。強化の形態は本発明の合金と同一(本発明による炭素含量およびTa/C比)であるが、この合金は、本発明の合金よりも30倍低いクリープ強度および低い延性(3倍低い破断時の伸び)を有している。
比較例2の合金は、上で明記した条件の下で、わずか74時間のクリープ強度を有しており、試験試料を回転させる試験で0.83mmの深さの浸蝕領域を有し、腐蝕に向かう非常に強い傾向を示した。この劣った挙動は、からなり低い炭素含量と、過度に低いタンタル含量により説明され、M23C6の炭化物とTaCの低い密度を生じ、不十分な粒子間および粒子内強化と、粒界におけるクロムの過度に低い利用をもたらし、腐蝕前線に向かうクロム原子の拡散速度を制限する。
比較例3の合金はまた、その高い炭素含量にもかかわらず、0.80mmの深さの浸蝕領域を有し、腐蝕に向かう非常に強い傾向を示した。この合金の微細構造の特徴は、80%の炭化クロムと20%の炭化タンタルから構成される炭化物の、非常に緻密な連続粒子間ネットワークの存在を示した。実施例1で述べたニッケルをベースとするスーパーアロイのように、この合金は、過度の高炭素含量により不利益を受けており、炭化物の不連続粒子間相により強化された本発明の合金のよりも劣った性能を有している。加えて、タングステンが全く無いので、炭化クロムは、共融炭化物(Cr,W)23C6よりも、高温での耐性が劣っており、高温で、より大きな機械的弱さを生ずる。
比較例4の合金は、実質的に腐蝕に向かう傾向(0.33mmの腐蝕深さ)をもって、200時間のオーダーの普通のクリープ強度を有している。この例は、機械的強度および耐腐蝕性における炭化タンタルの重要性を示している。これは、この合金が、タンタルの事実上の不在により特徴づけられ、炭化クロムの独占的析出を生ずるためである。より耐火性の炭化タンタルの欠如、および比較的低いタングステン含量のため、高温での機械的性能の劣化は、腐蝕に関し、弱さを補償ぜす、その材料の腐蝕媒体中、高温下での使用に不適合とする(高温での優れた機械的特性により腐蝕に向かう傾向を補償する、実施例2の合金に比較して)。
比較例5の合金は、非常に高いタンタル含量および1より大きいTa/C比により、炭化タンタルから独占的に構成される、緻密で均一な粒子間析出を示す微細構造を有する。このため、すべてのクロムがマトリクスにおける固溶体にあるので、明らかにマトリクスクロムの過度に遅い拡散の結果として、酸化クロム保護層が良好な条件の下で形成されず、腐蝕試験において、実質的な浸蝕を生ずる。
比較例6の合金は、回転試験試料による試験で2.50mmの深さの浸蝕領域を有し、腐蝕に対しそれ自体非常に鋭敏である。このとき、この挙動の原因であるのは、表面Cr2O3層の形成および維持には不十分である、過度に低いクロム含量である。加えて、比較的高いタンタル含量は、十分な量の粒子間炭化クロムの形成を促進しない。
比較例7の合金は、それ自体、過度に高いクロム含量を有し、それは、その固化微細構造を、他の合金から異なる金属系に変化させ、針状析出物の形、および炭化クロムおよびクロム化合物から構成される緻密な粒子間ネットワアークの形の、二次析出物を有する。このため、それは、わずか1.5%の破断時の伸びにより反映される、過度に大きな剛性を示す。
比較例8の合金は、900℃で、257MPaの、破断時の引っ張り応力と、約300時間のクリープ強度を有し、腐蝕へ向かう或る傾向を有している(浸蝕深さ040mm)。炭化物の密度は、炭素含量により固定されているので、この合金の低いタングステン含量は、固溶体における低い硬化により反映され、熱条件および低いクリープ強度の下で、低い引っ張り機械的強度に至る。
比較例9の合金は、腐蝕試験において、浸蝕深さ1.50mmという非常に強い腐蝕へ向かう傾向を有している。その組成における過度に大きなタングステンの存在は、腐蝕に関する挙動の劣化の原因となる、WO3型の揮発性化合物の形でのタングステンの酸化により、高温での材料の実質的な変性をに至る。
以上の例に示すように、成分の注意深い選択、特にクロム、タングステン、およびことに炭素およびタンタルの選択により、特に本発明の合金の腐蝕媒体の存在下での高温における良好な機械的強度は、以下の組合せの結果である。即ち、粒子間炭化タンタルおよび任意に粒子間炭化クロムおよび炭化タングステンによる粒界の強化、制限された量の粒子間炭化クロムおよび炭化タングステンの不連続分散による亀裂の阻止、炭化タンタルの存在による腐蝕性媒体の侵入の阻止、および析出された形のクロムの利用性である。
溶融ガラスの成型というより特殊な場合について説明された本発明は、この特定の用途に限定されず、良好な耐高温性を有する材料が必要なすべての分野に関するものである。
Claims (10)
- 質量%で、
Cr 26−34%
Ni 6−12%
W 4−8%
Ta 2−4%
C 0.2−0.5%
Fe 3%未満
Si 1%未満
Mn 0.5%未満
Zr 0.1%未満
残部はコバルトおよび不可避的不純物からなり、炭素に対するタンタルのモル比は、0.4〜1のオーダーである、酸化性または腐蝕性媒体内での高温下機械的強度を有するコバルト基合金。 - 元素の比率が質量%で以下の範囲である請求項1に記載の合金。
Cr 28−32%
Ni 8−10%
W 5−7%
Ta 2.5−3.5%
C 0.3−0.45% - カーボンに対するタンタルのモル比は、0.45〜0.9である請求項1または2に記載の合金。
- 元素の比率が質量%で以下の範囲である請求項3に記載の合金。
Cr 29%
Ni 8.5%
C 0.38%
W 5.7%
Ta 2.9% - 元素の比率が質量%で以下の範囲である請求項3に記載の合金。
Cr 28%
Ni 8.5%
C 0.22%
W 5.7%
Ta 3% - 炭化物の不連続粒子間層を示す請求項1〜5のいずれかの項に記載の合金。
- 請求項1〜6のいずれかの項に記載の合金から、鋳造により作られた、加熱条件の下でのガラスの製造または変形に使用され得る製品。
- 鋳造により得られ、および合金を鋳造した後に熱処理に供された請求項7に記載の製品。
- ミネラルウールの製造のためのファイバー引きスビナーからなる、請求項7または8に記載の製品。
- 溶融合金の適切な型での鋳造、および成型された製品の熱処理を含み、前記熱処理は、1100〜1250℃での第1の熱処理、および850〜1050℃での第2の熱処理を含む、請求項8の製品の製造方法。
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