JP4124578B2 - 熱転写受像シート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱転写受像シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、熱転写方式の採用により、従来の銀塩写真に匹敵する高画質、高精細の画像が簡単に得られるようになった。このような昇華転写画像を葉書サイズにすることで、絵葉書の感覚で.これを郵送することも広く行われるようになってきた。郵便葉書として利用する際には裏面に住所、宛名等の印字及び切手の貼付が必要である。これまで、受像シートの裏面に筆記性を付与するためには、例えば、特開平6−239036や特開平9−175052及び特開平9−175048等に開示されているように、熱転写受像シートの裏面に親水性フィラーを用いて多孔質層を形成したり、硬質フィラーや硬質樹脂によって微細凹凸を付与して筆記性を持たせることが知られている。しかし、上記の従来の方法では、一般に筆記具による記入に関しては問題はないものの、インクジェットプリンターを用いて印字する場合には、印字がにじんだり、印字部分の乾燥が遅い等の問題があった。また市販のインクジェットプリンタ用インクを使用する場合、各メーカーによりインクの組成、溶剤組成が異なっており、そのため印字後の滲み程度がインクによって異なり一様な印字品質を得ることは難しい。
【0003】
そのため、界面活性剤などの各種添加剤を含有させインクの吸収や、滲みを調製する方法が知られているが、これらの添加物は温度や湿度などの環境変化に対する安定性が低いため、性能を維持するには不向きであり、またブロッキングの原因ともなり得る。また、一般的に、インクジェットのインク組成物を吸収するためには、インク受容層を基材上に非常に厚く塗布しなければならない。このため、グラビアコーターやバーコーターなど塗布量の少ないものに対して有利な生産設備ではインクジェット印字を可能とする層を設けるのが困難である。更に、筆記性を持たせるには微細凹凸を付与させるため、凹凸の程度によっては熱転写受像シートの品位を損なう場合がある。
【0004】
また、熱転写受像シートの裏面は、筆記性能のほかに、受像面との摩擦をより小さくし安定した給排紙特性を備えることが重要である。例えば、特開平7−101163や特開平7−223384に開示されているように特定のフィラーや樹脂を使用して摩擦を低減する方法が知られている。しかし、これらの従来の方法では、給排紙特性に優れていても、同時に十分な筆記性、切手接着性を付与することは困難であった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、裏面の凹凸による品位を損なうことなく、低塗布量でインクジェットプリンター及び各種筆記具による筆記性が良好であり、且つ切手貼付性を満足し、またプリンターにおける搬送性に優れ、高温、高温多湿保存後も性能を安定して発揮できる熱転写受像シートを提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、上記の課題を解決するもので、基材シートの少なくとも一方の面に染料受容層を備える熱転写受像シートにおいて、染料受容層を形成した面とは反対側の基材シートの面に第1層として熱可塑性樹脂と親水性多孔質粒子を主成分とする親水性多孔質層を形成し、更にその上に第2層としてポリビニルアセタール樹脂、シリコーン変性アクリル樹脂及びナイロン樹脂粒子を含有した裏面塗工層を形成したことを特徴とする。
【0007】
本発明において、シリコーン変性アクリル樹脂の含有量が、第2層中の全固形分の5〜35重量%であることが好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に、好ましい本発明の実施の形態を挙げて、本発明について詳細に説明する。
本発明の熱転写受像シートは、図1に示すように、基材シート1の少なくとも一方の面に染料受容層2を備える熱転写受像シートにおいて、染料受容層2を形成した面とは反対側の基材シート1の面に熱可塑性樹脂と親水性多孔質粒子を主成分とする親水性多孔質層3を形成し、更にその上にポリビニルアセタール樹脂、シリコーン変性アクリル樹脂及びナイロン樹脂粒子を含有した裏面塗工層4を備える。また、図2に示すように、染料受容層2と基材シート1の間に中間層5を設けることができる。
【0011】
次に本発明の熱転写受像シートの構成要素に関して説明する。
(1)基材シート1
本発明において、基材シート1に使用できる材料は紙類では、各種紙単体もしくは加工紙等の何れも使用可能で、例えば、上質紙、コート紙、アート紙、キャストコート紙、板紙等の他、樹脂エマルジョンや合成ゴムラテックス等の含浸紙、合成樹脂内添紙などが挙げられる。また、更にこれらと各種プラスチックフィルムのラミネート紙も使用できる。
【0012】
また、合成紙としては、ポリオレフィン系合成紙やポリスチレン系合成紙を使用でき、プラスチックフィルムでは、ポリオレフィン系樹脂フィルム、ポリエステル系樹脂フィルム、ポリスチレンフィルムなどが使用できる。これらのプラスチックフィルムは、透明なフィルムだけでなく、白色顔料や、充填剤を加えて成膜した白色不透明のフィルム、或いは発泡させたフィルムも使用でき、特に限定されない。
【0013】
尚、プラスチックフィルムを使用する場合には、フィルムの剛性を調節するために必要に応じて可塑剤等を添加してもよい。そして、これらの材料はそれぞれ単独でも使用できるが、先に述べたように、プラスチックフィルムを他の材料と組み合わせた積層体を使用することもできる。またこれらの基材シート上に中間層や染料受容層を形成する際、必要に応じてコロナ放電処理、プラズマ放電処理等を施してもよい。この基材シートの厚さは、一般的には、1μm 〜400μm 程度の範囲であり、100μm 〜300μm 程度が好ましい。
【0014】
(2)染料受容層2
本発明の熱転写受像シートにおいて、染料受像シート2は、昇華生熱転写方式に使用されている公知のものを使用でき、特に限定はされないが、例えば、下記のような材料が挙げられる。
(イ)エステル結合を有する樹脂
ポリエステル樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、スチレンアクリレート樹脂など。
(ロ)ウレタン結合を有する樹脂
ポリウレタン樹脂など。
(ハ)アミド結合を有する樹脂
ポリアミド樹脂など。
(ニ)尿素結合を有する樹脂
尿素樹脂など。
(ホ)その他極性の高い結合を有する樹脂
ポリカプロラクトン樹脂、スチレン−無水マレイン酸樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂など。
以上のような合成樹脂に加えて、これらの混合物或いは共重合体なども使用できる。
【0015】
尚、染料受容層は、転写の際に、熱転写受像シートと合わせてサーマルヘッド等により加熱圧着されるため、熱転写受像シートは粘着しやすく、通常、上記のような樹脂に染料透過性の離型剤を含有させて形成している。このような離型剤としては、固形ワックス類、フッ素系或いは燐酸エステル系の界面活性剤、シリコーンオイル類では油状のものも用いることはできるが、反応硬化型のものが好ましく、例えば、アミノ変性シリコーンとエポキシ変性シリコーンの組み合わせ等が好ましい。
【0016】
これらの離型剤の添加量は、固形ワックスの場合、前記樹脂中に樹脂の重量の0.5〜50重量%、好ましくは0.5〜10重量%である。また硬化型シリコーンオイルの場合は、べたつきがないため多量に用いることも可能で、樹脂重量の0.5〜30重量%の範囲で添加できる。何れの場合も少なすぎると離型効果が不十分となり、多すぎると染料の受容性が低下し、十分な記録濃度が得られない等の悪影響がでる。
【0017】
また、染料受容層の離型性を付与する方法としては、上述のように染料受容層に離型剤を含有させる方法以外に、染料受容層の上に離型層を別に積層することも可能であり、何れの方法をとってもよい。更に染料受容層には必要に応じて微粉末シリカ、酸化チタン等の無機充填剤や酸化防止剤、紫外線吸収剤等を含有させる場合もある。
【0018】
染料受容層は基材シート上に形成する方法は、例えば、これらの材料を有機溶剤に溶解したり、或いは有機溶剤や水に分散した液をグラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースロールコート法、ダイコート法等により塗布、乾燥して形成できる。また、材料の種類によっては、有機溶剤や水を使わず溶融押し出しコーティング法によって形成することも可能である。以上のように形成される染料受容層は、任意の厚さでよいが、一般的には1〜50μm の厚さに形成される。
【0019】
(3)中間層5
受容層と基材シートの間には、受容層との接着性、カール防止性等の付与を目的とし、従来公知のあらゆる中間層を設けることができる。中間層に用いるバインダー樹脂としてはポリウレタン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリスルフォン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、エポキシ樹脂、セルロース系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等が挙げられ、これらの樹脂のうち活性水素を有するものについてはさらにそれらのイソシアネート硬化物を中間層とすることができる。
【0020】
また、白色度、隠蔽性を付与するために酸化チタン、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム等のフィラーを添加するのが好ましい。更に、白色度を高めるためにスチルベン系化合物、ベンゾイミダゾール系、ベンゾオキサゾール系化合物等を蛍光増白剤として添加したり、印画物の耐光性を高めるためにヒンダートアミン系化合物、ヒンダードフェノール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物を紫外線吸収剤或いは酸化防止剤として添加したり、或いは帯電防止性を付与するために、カチオン系アクリル樹脂、各種の導電性フィラー等を添加することができる。
【0021】
(4)裏面層
裏面層は2層構成をとっており、第1層(親水性多孔質層3)は主として次に述べる3つの役割を果たす。その1つ目は、基材シート及び第2層(裏面塗工層4)への良好な接着性、2つ目は各種筆記具のインク及びインクジェットプリンタのインク吸収性、3つ目は鉛筆などの筆記に必要な、ある程度の硬度と凹凸の付与である。
【0022】
また、第2層(裏面塗工層4)は主として、次に述べる3つの役割を果たす。その1つ目はインクジェットプリンターの印字の滲み防止とインクの定着、2つ目は切手貼付性、3つの目は高い滑り性である。
【0023】
第1層(親水性多孔質層3)は、基材表面に対する良好な接着性を有する熱可塑性樹脂成分と、各種筆記具のインク及びインクジェットプリンタ用のインク組成物を速やかに吸収し、また硬度及び凹凸を付与するための親水性多孔質粒子を含んでなる。
【0024】
好ましい熱可塑性樹脂成分としては、バインダーとして有効な樹脂が使用され、ポリビニルアセタール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルブチラール、セルロースアセテート、ニトリルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、澱粉、ゼラチンなどの樹脂や、水溶性アクリル系樹脂、水溶性ウレタン樹脂、またこれらの混合物、共重合体などが挙げられるが、材料の組み合わせを考慮した場合、中でもブチラール樹脂或いはアセタール樹脂が、第2層との接着性が高いので好ましい。
【0025】
また、上記した熱可塑性樹脂に添加する親水性多孔質粒子としては、シリカ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、酸化亜鉛、酸化チタンなどが用いられる。中でも吸収性の高いシリカ粒子が好ましい。粒子の平均粒径は0.1〜20μm 、好ましくは1〜15μm の範囲が望ましい。粒径が0.1μm 未満では鉛筆等の筆記に必要な凹凸を維持できず、また20μm を超えると、表面の手触りが悪くなるほか、塗膜強度が弱くなり粒子が剥離する危険もある。
【0026】
また、インクの吸収と保持機能をより好ましい状態にするには、第1層における粒子/樹脂の重量比は、1.0〜3.0、特に好ましくは、1.5〜2.0であることが好ましい。
【0027】
第1層には上記した組成物に必要に応じて添加剤を加え、適当な有機溶剤や水に溶解・分散した溶液または分散系組成物を、例えば、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースコーティング法等の形成手段により塗布及び乾燥を行い、第1層を基材シート1上に0.5〜20g/m2程度、更に好ましくは1.0〜10g/m2程度の塗布量で形成するのが好ましい。
【0028】
第2層は、前記したように、ポリビニルアセタール樹脂、シリコーン変性アクリル樹脂及びナイロン樹脂粒子を含む。ポリビニルアセタール樹脂はインクジェットプリンタ用のインク組成物を定着させる役目とバインダーとしての役目を担う。シリコーン変性アクリル樹脂は各種筆記具のインク及びインクジェットプリンタ用インク組成物の滲みを防止し、且つ滑り性発現の役割を担う。また、ナイロン樹脂粒子は第1層へ速やかにインク組成物を移行させ且つ滑り性を発現させる役割を担う。
【0029】
ポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度は、一般に2〜40モル%の範囲であり、好ましくは3〜30モル%、更に好ましくは5〜20モル%の範囲にある。アセタール化度が低い場合は、インクの定着性が悪化する場合がある。
【0030】
シリコーン変性アクリル樹脂は、アクリル樹脂にポリオルガノシロキサンをグラフト共重合或いはブロック型共重合させたものが利用できる。また、水系の場合は、シリコーン変性アクリル樹脂の水溶液及びエマルジョン分散型水溶液が利用できる。シリコーン変性アクリル樹脂の第1層の熱可塑性樹脂と親和性の高いアクリル主鎖が基材シートとの接着を保持し、逆に第1層樹脂との親和性の低いシリコーン部は基材シートの反対側、即ち熱転写受像シートの裏面の表面に存在し、撥水性を伴った表面改質を行う作用をする。ある程度の撥水性により、非常に滲みやすい筆記具のインク及びインクジェットのインクの浸透が調節が可能となり滲みを防止することができる。また、シリコーン部が熱転写受像シートの裏面表面に存在することにより、受像面と重ね合わせた場合の滑り性が向上し、受像シートの安定した搬送性が提供できる。
【0031】
エマルジョン分散型水溶液の場合、エマルジョン粒子径は40〜150nmが好ましく、更に好ましくは60〜100nmが望ましい。40nm未満は、作製困難なところがありコストも高くなる。一方150nmより大きくなると、各種筆記具のインクの滲みが発生しやすくなる。
【0032】
シリコーン変性アクリル樹脂の含有量は、第2層中の全固形分に対して、5〜35重量%が好ましい。5重量%未満ではインクの滲み防止効果が発揮されず筆記性の低下につながる。一方、35重量%より多くなるとインクの定着性が低下する。
【0033】
ナイロン樹脂粒子は分子量10万〜90万で、球状であり、平均粒子径が0.01〜30μm のものが好ましい。また、ナイロン樹脂粒子の種類ではナイロン6やナイロン66と比較してナイロン12フィラーが耐水性に優れ、吸収による特性変化もないためより好ましい。
【0034】
平均粒子径が0.01μ未満であると、フィラーが第2層中に隠れてしまい、インクジェット印字の速乾性に乏しくなり、また、滑り性の機能を果たさない。一方、粒子径が30μm より大きすぎると裏面層からの突出が大きくなり、手触りが悪くなり品位が低下するほか、各種筆記具による筆記時に滲みが発生し筆記性の低下につながる。
【0035】
第2層におけるナイロン樹脂粒子/樹脂の重量比は、0.25〜2.0、好ましくは0.5〜1.0の範囲であることが望ましい。重量比が0.25未満ではインクジェット印字の速乾性に乏しくなり、また滑り性の低下につながる。一方2.0を超えると皮膜強度が落ち、インクジェット印字のインクの定着性が低下し、また、各種筆記具の筆記時のインクの滲みが大きくなる。
【0036】
第2層は上記のような組成物に必要に応じて添加剤を加え、適当な有機溶剤や水に溶解・分散した溶液または分散系組成物を、例えば、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースコーティング法等の形成手段により塗布及び乾燥を行い、第1層上に0.3〜20g/m2程度、好ましくは0.5〜5.0g/m2の塗布量で形成することが好ましい。
【0037】
以下実施例を挙げて本発明について詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例の内容に限定されるものではない。尚、実施例、比較例において特に断らない限り、「部」は「重量%」及び「重量部」を示す。
(実施例1)
基材シート(厚さ150μm の合成紙(FPG#150 ユポコーポレーション製)に下記の組成の組成物からなる第1層を乾燥時1.5g/m2の塗布量になるように塗布及び乾燥を行い、その上に下記の組成の組成物からなる第2層を乾燥時0.7g/m2になるように塗布及び乾燥を行い、熱転写受像シートの裏面を形成し実施例1の熱転写受像シートを作製した。
第1層を構成する組成物の組成
ポリビニルブチラール樹脂 … 100 部
(電気化学工業(株)製、#3001−1)
マイクロシリカ(平均粒子径3.0μm ) … 100 部
(富士シリシア(株)製、サイリシア730)
マイクロシリカ(平均粒子径1.4μm ) … 80 部
(富士シリシア(株)製、サイリシア310)
水/イソプロピルアルコール=1/1 … 200 部
第2層を構成する組成物の組成
ポリビニルアセタール樹脂(積水化学工業(株)製、KX−5)… 100 部
ナイロンフィラー(平均粒子径7.5μm ) … 100 部
(神東塗料(株)製、MW330)
シリコーン変性アクリル樹脂(JSR製) … 11 部
水/イソプロピルアルコール=1/1 …2000 部
【0038】
上記のようにして作製した実施例1の熱転写受像シートについて下記のような評価法で評価を行った。
評価法
1.インクジェットプリンター印字適性
作製した熱転写受像シートの裏面にインクジェットプリンターで印字を行ったものについて、性能の評価を行った。尚、使用したプリンターはセイコーエプソン(株)製のPM770C及びCanon(株)製のBJF850を用い、インクは各メーカー指定の純正インクを使用した。
(1) インクの滲み
任意の文字印字における滲みを下記の基準で目視評価した。
○ 滲みなし
△ 滲みが少々ある
× 滲みが著しい
(2) インク定着性
インク定着性は、熱転写受像シートの裏面に印字後、白紙を印字を行った面上におき、34gf/cm2の圧力で5秒押し付け、白紙に裏移りしなくなった時間を測定し、評価した。
○ 120秒以内でインク移り無し
△ 300秒以内でインク移り無し
× 300秒経ってもインク移り有り
2.筆記性
熱転写受像シートの裏面に代表的な筆記具として、油性ペン、水性ペン、鉛筆、ボールペンを用いて文字を書き、下記の基準で筆記性の評価を行った。
○ 十分な濃度で滑らかに筆記でき、滲みも無く、定着性もよい。
△ 文字がやや薄いもの。または若干の滲みの出るもの。
× 指で軽く擦る程度で文字が読めなくなるもの。または筆記困難なもの。
3.プリンター搬送性
A6サイズにカットした熱転写受像シートを30枚重ねて、黒べた画像の連続印刷を行った。これを5セット、合計150枚実施し、紙詰まりなどの給紙エラーの発生回数により、搬送性について評価を行った。プリンターにはOLIMPUS製P−330を使用した。
○ 給排紙トラブルなし
× 給排紙トラブルがおこり、実用上問題がある。
4.表面ざらつき
裏面の凹凸具合を手による官能評価を行った。
○ 凹凸が無く高品位と感じられる
△ 凹凸が少々あり質感が低く感じられる
× 凹凸が多く質感が損なわれている
5.切手貼付性
日本郵便切手の接着面の半分に水道水を塗り、熱転写受像シートの裏面に貼りつけた。5時間放置後、水道水を塗らなかった部分を手で持ち、切手を受像シートから剥離し、以下の基準で評価した。
○ 切手が剥がされた後、熱転写受像シートの裏面に切手の一部が残存し痕跡が残る
× 切手が熱転写受像シートの裏面から簡単に剥離し、痕跡が残らない
6.環境安定性
受像シートは温度60度、湿度Free及び40度、湿度90%の条件下で7日間保存した後、前記のインクジェットプリンターによる印字評価及び筆記性の評価を行った。○ 滲みの発生無し及び筆記具での筆記可能
× 滲みが発生または筆記具での筆記困難
【0039】
上記した評価法による評価の結果、インクジェットプリンターによる印字テストの結果、PM770C及びBJF850の両機種について滲み及びインク定着性とも問題はなく、筆記性は良好であり、プリンター搬送性は問題なく、表面のざらつきなく、切符貼付性を有し、環境安定性を有することが分かった。
【0040】
( 実施例2)
実施例1と同様にして但し第2層の構成材料を下記の組成物に替えて実施例2の熱転写受像シートを作製した。
第2層を構成する組成物の組成
ポリビニルアセタール樹脂(積水化学工業(株)製、KX−5)… 100 部
ナイロンフィラー(平均粒子径7.5μm ) … 100 部
(神東塗料(株)製、MW330)
シリコーン変性アクリル樹脂(JSR製) … 107 部
水/イソプロピルアルコール=1/1 …2000 部
【0041】
上記のようにして作製した熱転写受像シートについて実施例1で行ったのと同様な評価法で評価を行った。その結果、インクジェットプリンターによる印字テストの結果PM770C及びBJF850の両機種について滲み及びインク定着性とも問題はなく、筆記性は良好であり、プリンター搬送性は問題なく、表面のざらつきなく、切符貼付性を有し、環境安定性を有することが分かった。
【0042】
(実施例3)
実施例1と同様にして但し第2層の構成材料を下記の組成物に替えて実施例3の熱転写受像シートを作製した。
第2層を構成する組成物の組成
ポリビニルアセタール樹脂(積水化学工業(株)製、KX−5)… 100 部
ナイロンフィラー(平均粒子径7.5μm ) …27.75部
(神東塗料(株)製、MW330)
シリコーン変性アクリル樹脂(JSR製) … 11 部
水/イソプロピルアルコール=1/1 …2000 部
【0043】
上記のようにして作製した熱転写受像シートについて実施例1で行ったのと同様な評価法で評価を行った。その結果、インクジェットプリンターによる印字テストの結果PM770C及びBJF850の両機種について滲み及びインク定着性とも問題はなく、筆記性は良好であり、プリンター搬送性は問題なく、表面のざらつきなく、切符貼付性を有し、環境安定性を有することが分かった。
【0044】
(実施例4)
実施例1と同様にして但し第2層の構成材料を下記の組成物に替えて実施例4の熱転写受像シートを作製した。
第2層を構成する組成物の組成
ポリビニルアセタール樹脂(積水化学工業(株)製、KX−5)… 100 部
ナイロンフィラー(平均粒子径7.5μm ) ) … 240 部
(神東塗料(株)製、MW330)
シリコーン変性アクリル樹脂(JSR製) … 20 部
水/イソプロピルアルコール=1/1 …2000 部
【0045】
上記のようにして作製した熱転写受像シートについて実施例1で行ったのと同様な評価法で評価を行った。その結果、インクジェットプリンターによる印字テストの結果PM770C、及びBJF850の両機種について滲み及びインク定着性とも問題はなく、筆記性は良好であり、プリンター搬送性は問題なく、表面のざらつきなく、切符貼付性を有し、環境安定性を有することが分かった。
【0046】
(実施例5)
実施例1と同様にして但し第1層の構成材料を下記の組成物に替えて実施例5の熱転写受像シートを作製した。
第1層を構成する組成物の組成
ポリビニルブチラール樹脂 … 100 部
(電気化学工業(株)製、#3001−1)
マイクロシリカ(平均粒子径3.0μm ) … 50 部
(富士シリシア(株)製、サイリシア730)
マイクロシリカ(平均粒子径1.4μm ) … 50 部
(富士シリシア(株)製、サイリシア310)
水/イソプロピルアルコール=1/1 … 300 部
【0047】
上記のようにして作製した熱転写受像シートについて実施例1で行ったのと同様な評価法で評価を行った。その結果、インクジェットプリンターによる印字テストの結果PM770C及びBJF850の両機種について滲み及びインク定着性とも問題はなく、筆記性は良好であり、プリンター搬送性は問題なく、表面のざらつきなく、切符貼付性を有し、環境安定性を有することが分かった。
【0048】
(実施例6)
実施例1と同様にして但し第1層の構成材料を下記の組成物に替えて実施例6の熱転写受像シートを作製した。
第1層を構成する組成物の組成
ポリビニルブチラール樹脂 … 100 部
(電気化学工業(株)製、#3001−1)
マイクロシリカ(平均粒子径3.0μm ) … 150 部
(富士シリシア(株)製、サイリシア730)
マイクロシリカ(平均粒子径1.4μm ) … 150 部
(富士シリシア(株)製、サイリシア310)
水/イソプロピルアルコール=1/1 … 300 部
【0049】
上記のようにして作製した熱転写受像シートについて実施例1で行ったのと同様な評価法で評価を行った。その結果、インクジェットプリンターによる印字テストの結果PM770C及びBJF850の両機種について滲み及びインク定着性とも問題はなく、筆記性は良好であり、プリンター搬送性は問題なく、表面のざらつきなく、切符貼付性を有し、環境安定性を有することが分かった。
【0050】
(比較例1)
実施例1と同様にして但し第1層のみを基材シートの裏面に塗工形成して比較例1の熱転写受像シートを作製した。
【0051】
上記のようにして作製した比較例1の熱転写受像シートについて実施例1で行ったのと同様な評価法で評価を行った。その結果、インクジェットプリンターによる印字テストの結果PM770C及びBJF850の両機種について滲みが著しく且つインク定着性がなくインク移りが見られた。
【0052】
(比較例2)
実施例1と同様にして但し第2層のみを基材シートの裏面に塗工形成して比較例2の熱転写受像シートを作製した。
【0053】
上記のようにして作製した比較例2の熱転写受像シートについて実施例1で行ったのと同様な評価法で評価を行った。その結果、インクジェットプリンターによる印字テストの結果PM770C及びBJF850の両機種についてインク定着性が劣り、定着に時間を要し.また水性ペンによる筆記性及び鉛筆による筆記性に劣るところが見られた。
【0054】
(比較例3)
実施例1と同様にして但し第2層の構成材料を下記の組成物に替えて比較例3の熱転写受像シートを作製した。
第2層を構成する組成物の組成
ナイロンフィラー(平均粒子径7.5μm ) … 100 部
(神東塗料(株)製、MW330)
シリコーン変性アクリル樹脂(JSR製) … 100 部
水/イソプロピルアルコール=1/1 …2000 部
【0055】
上記のようにして作製した比較例3の熱転写受像シートについて実施例1で行ったのと同様な評価法で評価を行った。その結果、インクジェットプリンターによる印字テストの結果PM770C及びBJF850の両機種について滲みが著しく且つインク定着性がなくインク移りが見られた。水性ペンによる筆記性に欠けることが分かった。
【0056】
(比較例4)
実施例1と同様にして但し第2層の構成材料を下記の組成物に替えて比較例4の熱転写受像シートを作製した。
第2層を構成する組成物の組成
ポリビニルアセタール樹脂(積水化学工業(株)製、KX−5)… 100 部
シリコーン変性アクリル樹脂(JSR製) … 11 部
水/イソプロピルアルコール=1/1 …2000 部
【0057】
上記のようにして作製した比較例4の熱転写受像シートについて実施例1で行ったのと同様な評価法で評価を行った。その結果、給排紙トラブルがおこり、プリンター搬送性に関して実用上問題があることが分かった。
【0058】
(比較例5)
実施例1と同様にして但し第2層の構成材料を下記の組成物に替えて比較例5の熱転写受像シートを作製した。
第2層を構成する組成物の組成
ポリビニルアセタール樹脂(積水化学工業(株)製、KX−5)… 100 部
ナイロンフィラー(平均粒子径30μm ) … 100 部
(日本リルサン(株)製、オルガソール2002 ES−3)
シリコーン変性アクリル樹脂(JSR製) … 11 部
水/イソプロピルアルコール=1/1 …2000 部
【0059】
上記のようにして作製した比較例5の熱転写受像シートについて実施例1で行ったのと同様な評価法で評価を行った。その結果、表面の凹凸が悪く質感が劣ることが分かった。
【0060】
(比較例6)
実施例1と同様にして但し第2層の構成材料を下記の組成物に替えて比較例5の熱転写受像シートを作製した。
第2層を構成する組成物の組成
ポリビニルアセタール樹脂(積水化学工業(株)製、KX−5)… 100 部
ナイロンフィラー(平均粒子径7.5μm ) … 100 部
(神東塗料(株)製、MW330)
水/イソプロピルアルコール=1/1 …2000 部
【0061】
上記のようにして作製した比較例6の熱転写受像シートについて実施例1で行ったのと同様な評価法で評価を行った。その結果、インクジェットプリンターによる印字テストの結果BJF850について著しい滲みが認められた。
またPM770Cに関しても滲みが少々認められた。
【0062】
(比較例7)
実施例1と同様にして但し第2層の構成材料を下記の組成物に替えて比較例5の熱転写受像シートを作製した。
第2層を構成する組成物の組成
ポリビニルアセタール樹脂(積水化学工業(株)製、KX−5)… 100 部
ナイロンフィラー(平均粒子径7.5μm ) … 100 部
(神東塗料(株)製、MW330)
界面活性剤(大日本インキ(株)製、メガファックF470) … 2 部
水/イソプロピルアルコール=1/1 …2000 部
【0063】
上記のようにして作製した比較例7の熱転写受像シートについて実施例1で行ったのと同様な評価法で評価を行った。その結果、この熱転写助像シートはインクジェットプリンター印字適性、筆記性、プリンター搬送性、裏面の表面状態、切手貼付性の何れも満足するが環境安定性に欠けることが分かった。
【0064】
(比較例8)
実施例1と同様にして但し第2層の構成材料を下記の組成物に替えて比較例8の熱転写受像シートを作製した。
第2層を構成する組成物の組成
ポリビニルアセタール樹脂(積水化学工業(株)製、KX−5)… 100 部
ナイロンフィラー(平均粒子径7.5μm ) … 100 部
(神東塗料(株)製、MW330)
アクリル樹脂(ダイセル化学工業(株)製) … 11 部
水/イソプロピルアルコール=1/1 …2000 部
【0065】
上記のようにして作製した比較例8の熱転写受像シートについて実施例1で行ったのと同様な評価法で評価を行った。その結果、インクジェットプリンターによる印字テストの結果、PM770Cについて滲みが少々あり、またBFJF850については滲みが著しいことが分かった。
【0066】
表1に実施例1〜6及び比較例1〜8の熱転写受像シートに関する評価の結果を示す。
【0067】
【表1】
【0068】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように本発明の熱転写受像シートは、基材シートの少なくとも一方の面に染料受容層を備える熱転写受像シートにおいて、染料受容層を形成した面とは反対側の基材シートの面に第1層として熱可塑性樹脂と親水性多孔質粒子を主成分とする親水性多孔質層を形成し、更にその上に第2層としてポリビニルアセタール樹脂、シリコーン変性アクリル樹脂及びナイロン樹脂粒子を含有した裏面塗工層を形成したものであるので、通常の環境は勿論、高湿、高温多湿での保存後も各種筆記具及びインクジェットプリンターでの印字を可能にし、切手貼付性を有し、尚且つ表面のざらつきはなく高品位に感じられる上、プリンター内での安定した搬送性を発現することができる、非常に実用的価値の高いという利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の熱転写受像シートの断面図である。
【図2】本発明の熱転写受像シートの別の実施の態様の断面図である。
【符号の説明】
1 基材シート
2 染料受容層
3 親水性多孔質層
4 裏面塗工層
5 中間層
Claims (2)
- 基材シートの少なくとも一方の面に染料受容層を備える熱転写受像シートにおいて、染料受容層を形成した面とは反対側の基材シートの面に第1層として熱可塑性樹脂と親水性多孔質粒子を主成分とする親水性多孔質層を形成し、更にその上に第2層としてポリビニルアセタール樹脂、シリコーン変性アクリル樹脂及びナイロン樹脂粒子を含有した裏面塗工層を形成したことを特徴とする熱転写受像シート。
- シリコーン変性アクリル樹脂の含有量が、第2層中の全固形分の5〜35重量%であることを特徴とする請求項1に記載の熱転写受像シート。
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