JP4123334B2 - カルボン酸3−(ジメチルクロロシリル)プロピルエステルの製造方法 - Google Patents

カルボン酸3−(ジメチルクロロシリル)プロピルエステルの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、シランカップリング剤の合成中間体、変性シリコーンオイルの合成原料あるいはケイ素含有ポリマーを得るための重合性モノマー等として、産業上広く用いられているカルボン酸3−(ジメチルクロロシリル)プロピルエステルの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
下記一般式(2)で示されるカルボン酸3−(ジメチルクロロシリル)プロピルエステルは、シランカップリング剤の合成中間体、変性シリコーンオイルの合成原料あるいはケイ素含有ポリマーを得るための重合性モノマーとして使用されている。
RCOOCH2CH2CH2Si(CH32Cl (2)
(式中、Rは炭素数1〜10の1価炭化水素基を示す。)
【0003】
従来、上記一般式(2)で示されるカルボン酸3−(ジメチルクロロシリル)プロピルエステルは、一般的にはジメチルクロロシラン及び下記一般式(1)
RCOOCH2CH=CH2 (1)
(式中、Rは上記と同じ意味を示す。)
で示されるカルボン酸アリルエステルとを、白金触媒下で、ヒドロシリル化反応を行うことにより合成される。しかし、同反応では目的物以外に下記一般式(5)
【0004】
【化2】
Figure 0004123334
(式中、Rは上記と同じ意味を示す。)
で示されるカルボン酸2−(ジメチルクロロシリル)プロピルエステル(β付加異性体)が生成する副反応を生じる。さらに、下記一般式(6)
【0005】
【化3】
Figure 0004123334
で示されるカルボン酸アリルエステルの還元反応によるプロピレンとカルボン酸ジメチルクロロシリルエステルの生成反応や、ジメチルクロロシランの不均化反応によるジメチルジクロロシラン及びジメチルシランの生成反応、また、上記一般式(1)中のRが不飽和結合を持つ場合、Rの不飽和結合にジメチルクロロシランが付加する等の副反応も生じる。
【0006】
これらの副反応のため、目的物を高収率で得ることは困難であった。さらに上記一般式(5)で示されるβ付加異性体は、分子量が目的物と同じで沸点も近く、蒸留の操作では目的物と分離し難いため、目的物の高純度化を困難としていた。
【0007】
アクリル酸アリル又はメタクリル酸アリルのヒドロシリル化反応における異性体の生成を抑制する手段については、例えば特開平11−29584号公報等に記載されている。この方法により、アクリル酸又はメタクリル酸部分の二重結合のヒドロシリル化による異性体等の生成は低減できる。
【0008】
しかし、この方法においては、不均化反応や還元反応等は抑制することはできなかった。このため目的物の高純度化及び収率向上のために、ヒドロクロロシランとしてジメチルクロロシランを使用したときに起こる上記副反応を、十分に抑制する手段が切望されていた。
【0009】
本発明は、上記要望に応えるためになされたもので、上記式(1)のカルボン酸アリルエステルのヒドロシリル化反応における異性体生成や還元反応、不均化反応等の副反応を抑制したカルボン酸3−(ジメチルクロロシリル)プロピルエステルの製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、ジメチルクロロシランと下記一般式(1)
RCOOCH2CH=CH2 (1)
(式中、Rは炭素数1〜10の1価炭化水素基を示す。)
で示されるカルボン酸アリルエステルとを反応させ、下記一般式(2)
RCOOCH2CH2CH2Si(CH32Cl (2)
(式中、Rは上記の通り。)
で示されるカルボン酸3−(ジメチルクロロシリル)プロピルエステルを合成するヒドロシリル化反応において、下記一般式(3)
[Ir(R 5 )Y] 2 (3)
(式中、R 5 はジエン化合物、Yは塩素、臭素、ヨウ素のいずれかである。)
存在下で下記一般式(4)
【化1】
Figure 0004123334
(式中、R 1 、R 2 はそれぞれ炭素数1〜10の1価炭化水素基であり、又はR 1 とR 2 が結合して、これらが結合する炭素原子と共に合計炭素数3〜20の環を形成してもよく、R 3 、R 4 はそれぞれ水素原子又は炭素数1〜10の1価炭化水素基である。)
で示される化合物を添加剤として添加して反応を行うことにより異性体生成や還元反応、不均化反応等の副反応を低減できることを知見し、本発明を完成するに至った。
【0011】
従って、本発明はジメチルクロロシランと下記一般式(1)
RCOOCH2CH=CH2 (1)
(式中、Rは炭素数1〜10の1価炭化水素基を示す。)
で示されるカルボン酸アリルエステルとをヒドロシリル化反応をさせ、下記一般式(2)
RCOOCH2CH2CH2Si(CH32Cl (2)
(式中、Rは上記の通り。)
で示されるカルボン酸3−(ジメチルクロロシリル)プロピルエステルを合成する方法において、下記一般式(3)
[Ir(R 5 )Y] 2 (3)
(式中、R 5 はジエン化合物、Yは塩素、臭素、ヨウ素のいずれかである。)
で示されるイリジウム錯体の存在下で下記一般式(4)
【化1】
Figure 0004123334
(式中、R 1 、R 2 はそれぞれ炭素数1〜10の1価炭化水素基であり、又はR 1 とR 2 が結合して、これらが結合する炭素原子と共に合計炭素数3〜20の環を形成してもよく、R 3 、R 4 はそれぞれ水素原子又は炭素数1〜10の1価炭化水素基である。)
で示される化合物を添加剤として添加してヒドロシリル化反応を行うことを特徴とする、上記一般式(2)で示されるカルボン酸3−(ジメチルクロロシリル)プロピルエステルの製造方法を提供するものである。
【0012】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
本発明で用いる原料のカルボン酸アリルエステルは、下記一般式(1)
RCOOCH2CH=CH2 (1)
(式中、Rは炭素数1〜10の1価炭化水素基を示す。好ましくは、Rは非置換またはアルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、シアノ基、ハロゲン原子等によって置換されたアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基等を示す。)
で示される化合物である。具体的には、酢酸アリル、アクリル酸アリル、プロピオン酸アリル、メタクリル酸アリル、クロトン酸アリル、シクロプロパンカルボン酸アリル、ビニル酢酸アリル、酪酸アリル、イソ酪酸アリル、4−ペンチン酸アリル、3,3’−ジメチルアクリル酸アリル、2−ペンテン酸アリル、4−ペンテン酸アリル、α−メチルクロトン酸アリル、イソ吉草酸アリル、2−メチル酪酸アリル、トリメチル酢酸アリル、吉草酸アリル、1−シクロペンテン−1−カルボン酸アリル、3−シクロペンテン−1−カルボン酸アリル、2,4−ヘキサジエン酸アリル、シクロペンタンカルボン酸アリル、2−ヘキセン酸アリル、3−ヘキセン酸アリル、5−ヘキセン酸アリル、2−メチル−2−ペンテン酸アリル、t−ブチル酢酸アリル、2,2−ジメチル酪酸アリル、2−エチル酪酸アリル、ヘキサン酸アリル、2−メチル吉草酸アリル、3−メチル吉草酸アリル、4−メチル吉草酸アリル、安息香酸アリル、1−シクロヘキサン−1−カルボン酸アリル、3−シクロヘキサン−1−カルボン酸アリル、2,6−ヘプタジエン酸アリル、2−シクロペンテン−1−酢酸アリル、シクロヘキサンカルボン酸アリル、シクロペンチル酢酸アリル、2,2−ジメチル−4−ペンテン酸アリル、6−ヘプテン酸アリル、フェニル酢酸アリル、o−トルイル酸アリル、m−トルイル酸アリル、p−トルイル酸アリル、1,4−ジヒドロ−2−メチル安息香酸アリル、2−オクチン酸アリル、シクロヘプタンカルボン酸アリル、シクロヘキシル酢酸アリル、2−エチル−2−ヘキセン酸アリル、1−メチル−1−シクロヘキサンカルボン酸アリル、4−メチル−1−シクロヘキサンカルボン酸アリル、2−オクテン酸アリル、2,2’,3,3’−テトラメチルシクロプロパンカルボン酸アリル、2−エチルヘキサン酸アリル、オクタン酸アリル、フェニルプロピオン酸アリル、桂皮酸アリル、3−ビニル安息香酸アリル、4−ビニル安息香酸アリル、2,3−ジメチル安息香酸アリル、2,4−ジメチル安息香酸アリル、2,5−ジメチル安息香酸アリル、2,6−ジメチル安息香酸アリル、3,4−ジメチル安息香酸アリル、3,5−ジメチル安息香酸アリル、4−エチル安息香酸アリル、ヒドロ桂皮酸アリル、2−フェニルプロピオン酸アリル、o−トリル酢酸アリル、m−トリル酢酸アリル、p−トリル酢酸アリル、2−ノルボルナン酢酸アリル、シクロヘキサンプロピオン酸アリル、4−メチルシクロヘキサン酢酸アリル、ノナン酸アリル、α−メチル桂皮酸アリル、2−メチル桂皮酸アリル、3−メチル桂皮酸アリル、4−メチル桂皮酸アリル、1−フェニル−1−シクロプロパンカルボン酸アリル、2−フェニル−1−シクロプロパンカルボン酸アリル、4−イソプロピル安息香酸アリル、α−メチルヒドロ桂皮酸アリル、2−メチルヒドロ桂皮酸アリル、2−フェニル酪酸アリル、3−フェニル酪酸アリル、4−フェニル酪酸アリル、4−プロピル安息香酸アリル、3−(p−トリル)−プロピオン酸アリル、2,4,6−トリメチル安息香酸アリル、3−ノルアダマンタンカルボン酸アリル、シクロヘキサン酪酸アリル、デカン酸アリル、1−ナフトエ酸アリル、2−ナフトエ酸アリル、3−メチルインデン−2−カルボン酸アリル、1,2,3,4−テトラヒドロ−2−ナフトエ酸アリル、4−ブチル安息香酸アリル、4−t−ブチル安息香酸アリル、5−フェニル吉草酸アリル、10−ウンデセン酸アリル、4−ブチルシクロヘキサンカルボン酸アリル、シクロヘキサン吉草酸アリル、ウンデカン酸アリル等が例示される。
【0013】
カルボン酸アリルエステルの使用量は特に限定されないが、ジメチルクロロシラン1モルに対し0.5モル〜2.0モルが好ましく、特に0.9モル〜1.2モルが好ましい。
【0014】
本発明で用いるイリジウム触媒は、イリジウム塩又はイリジウム錯体等である。イリジウム塩としては具体的には、三塩化イリジウム、四塩化イリジウム、塩化イリジウム酸、塩化イリジウム酸ナトリウム、塩化イリジウム酸カリウム等が例示される。イリジウム錯体としては、下記一般式(3)
[Ir(R5)Y]2 (3)
(式中、R5は炭素数4〜20、好ましくは4〜10のジエン化合物、Yは塩素、臭素、ヨウ素のいずれかである。)
で示される化合物が特に好ましい。
【0015】
上記一般式(3)で示されるイリジウム錯体としては、具体的にはジ−μ−クロロビス(μ−1,5−ヘキサジエン)二イリジウム、ジ−μ−ブロモビス(μ−1,5−ヘキサジエン)二イリジウム、ジ−μ−ヨードビス(μ−1,5−ヘキサジエン)二イリジウム、ジ−μ−クロロビス(μ−1,5−シクロオクタジエン)二イリジウム、ジ−μ−ブロモビス(μ−1,5−シクロオクタジエン)二イリジウム、ジ−μ−ヨードビス(μ−1,5−シクロオクタジエン)二イリジウム、ジ−μ−クロロビス(μ−2,5−ノルボルナジエン)二イリジウム、ジ−μ−ブロモビス(μ−2,5−ノルボルナジエン)二イリジウム、ジ−μ−ヨードビス(μ−2,5−ノルボルナジエン)二イリジウム等が例示される。
【0016】
イリジウム触媒の配合比は特に限定されないが、ジメチルクロロシラン1モルに対し、イリジウム触媒をイリジウム原子として0.000001モル〜0.1モル、特に0.00001モル〜0.01モル用いることが好ましい。触媒量が0.000001モル未満では触媒の十分な効果が発現しない可能性があり、0.1モルを超えると、触媒量に見合うだけの反応促進効果がみられない可能性がある。
【0017】
本発明においては、ジメチルクロロシランと式(1)のカルボン酸アリルエステルとを上記イリジウム触媒の存在下に反応させるに際し、下記一般式(4)
【0018】
【化4】
Figure 0004123334
(式中、R1、R2はそれぞれ炭素数1〜10の1価炭化水素基であり、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基等の1価炭化水素基が好ましく、又はR1とR2が結合して、これらが結合する炭素原子と共に合計炭素数3〜20、特に好ましくは3〜10の環を形成してもよい。R3、R4はそれぞれ水素原子又は炭素数1〜10の1価炭化水素基であり、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基等の1価炭化水素基が好ましい。)
で示される化合物の存在下に反応を行うことが好ましい。上記一般式(4)で示される内部オレフィン化合物を添加することにより、触媒の失活を抑制することができ、少量のイリジウム触媒で反応を進行させることが可能になる。
【0019】
上記一般式(4)の化合物として具体的には、2−ヘキセン、3−ヘキセン、2−ヘプテン、2−オクテン、4−オクテン、2−デセン、5−デセン、シクロペンテン、シクロヘキセン、2−ノルボルネン、1,3−シクロヘキサジエン、1,4−シクロヘキサジエン、4−ビニル−1−シクロヘキセン、1,5−シクロオクタジエン、2,5−ノルボルナジエン、5−ビニル−2−ノルボルネン、リモネン等が例示され、反応性、触媒の安定化の点から、1,5−シクロオクタジエンが最も好ましい。
【0020】
上記一般式(4)で示される化合物の配合比は特に限定されないが、イリジウム触媒のイリジウム原子1モルに対し、0.5モル〜10,000モル、特に1モル〜1,000モルが好ましい。使用量が0.5モル未満では十分な効果が発現しない可能性があり、10,000モルを超えると、添加量に見合うだけの効果がみられない可能性がある。
【0021】
また、本発明ではヒドロシリル化反応を阻害しないならば、従来公知の重合禁止剤を反応時に存在させてもよい。
【0022】
具体的には、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル等のフェノール性化合物、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(6−t−ブチル−m−クレゾール)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシメチルフェノール、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、t−ブチルカテコール等のヒンダードフェノール系化合物等が挙げられる。これらの添加量には特に制限はなく、一般式(1)で示される化合物に対して重量基準で1ppmから10重量%の範囲で1種を単独で又は2種以上を組み合わせて添加することができる。
【0023】
なお、反応は無溶媒で進行するが、溶媒を用いることもできる。用いられる溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、アセトニトリル等の非プロトン性極性溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム等の塩素化炭化水素溶媒等が挙げられる。また、これらの溶媒は単独で使用してもよく、あるいは2種類以上を混合して使用してもよい。
【0024】
本発明においてヒドロシリル化の反応温度は通常0℃〜150℃、好ましくは20℃〜120℃である。また、圧力には制限はなく、常圧でも加圧でもかまわない。イリジウム触媒、補触媒、重合禁止剤の添加順序に特に制限はないが、触媒の失活を防ぐためカルボン酸アリルエステル、一般式(4)で示される内部オレフィン化合物、触媒、及び必要な場合には重合禁止剤を反応器に仕込み、ジメチルクロロシランをフィードする方法が最も好ましい。
【0025】
本発明では、上記反応によって下記一般式(2)
RCOOCH2CH2CH2Si(CH32Cl (2)
(式中、Rは炭素数1〜10の炭化水素基を示す。)
で示されるカルボン酸3−(ジメチルクロロシリル)プロピルエステルを得ることができる。
【0026】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0027】
参考例1]
滴下漏斗、ジムロート式冷却凝縮器、攪拌機、温度計を備えた100mlの四つ口フラスコを十分窒素置換した。次いで、酢酸アリル10.0g(0.1mol)、ジ−μ−クロロビス(μ−1,5−シクロオクタジエン)二イリジウム0.17g(イリジウム原子5.0×10-4molを含む)を仕込み、凝縮器の通気口に窒素通気をしつつ、70℃までフラスコの内容物を加熱した。次いで、ジメチルクロロシラン9.5g(0.1mol)をフィードした。滴下開始後直ちに鋭敏な発熱が観察され、ヒドロシリル化反応がスムーズに開始したことが確認された。その後、反応温度を60〜70℃に維持するように滴下速度や熱媒による調整をしながら、1時間かけて全量を滴下した。その後、室温まで冷却し、ガスクロマトグラフィーで組成を調べると、β付加異性体は検出されず、アセトキシジメチルクロロシランは1.2%、ジメチルジクロロシランは1.0%、酢酸3−(ジメチルクロロシリル)プロピルエステルは81.9%であり、副反応が極めて抑制されていた。
【0028】
[実施例
滴下漏斗、ジムロート式冷却凝縮器、攪拌機、温度計を備えた200mlの四つ口フラスコを十分窒素置換した。次いで、酢酸アリル50.1g(0.5mol)、1,5−シクロオクタジエン1.1g(1.0×10-2mol)、ジ−μ−クロロビス(μ−1,5−シクロオクタジエン)二イリジウム0.034g(イリジウム原子1.0×10-4molを含む)を仕込み、凝縮器の通気口に窒素通気をしつつ、75℃までフラスコの内容物を加熱した。次いで、ジメチルクロロシラン47.3g(0.5mol)をフィードした。滴下開始後直ちに鋭敏な発熱が観察され、ヒドロシリル化反応がスムーズに開始したことが確認された。その後、反応温度を75〜80℃に維持するように滴下速度や熱媒による調整をしながら、4時間かけて全量を滴下した。滴下終了後、混合物を80℃で1時間熟成した。その後、室温まで冷却し、ガスクロマトグラフィーで組成を調べると、β付加異性体は検出されず、アセトキシジメチルクロロシランは0.6%、ジメチルジクロロシランは0.1%、酢酸3−(ジメチルクロロシリル)プロピルエステルは87.5%であり、副反応が極めて抑制されていた。
【0029】
[比較例1]
滴下漏斗、ジムロート式冷却凝縮器、攪拌機、温度計を備えた200mlの四つ口フラスコを十分窒素置換した。次いで、酢酸アリル50.1g(0.5mol)、塩化白金(IV)酸の2−エチルヘキサノール溶液0.24g(Pt2.5×10-5molを含む)を仕込み、凝縮器の通気口に窒素通気をしつつ、75℃までフラスコの内容物を加熱した。次いで、ジメチルクロロシラン47.3g(0.5mol)をフィードした。滴下開始後直ちに鋭敏な発熱が観察され、ヒドロシリル化反応がスムーズに開始したことが確認された。その後、反応温度を75〜80℃に維持するように滴下速度や熱媒による調整をしながら、4時間かけて全量を滴下した。その後、室温まで冷却し、ガスクロマトグラフィーで組成を調べると、β付加異性体は1.7%、アセトキシジメチルクロロシランは5.2%、ジメチルジクロロシランは5.2%、酢酸3−(ジメチルクロロシリル)プロピルエステルは72.1%であった。β付加異性体は目的物に対して2.4%の割合で生成していた。
【0030】
[実施例
滴下漏斗、ジムロート式冷却凝縮器、攪拌機、温度計を備えた500mlの四つ口フラスコを十分窒素置換した。次いで、メタクリル酸アリル126.0g(1.0mol)、重合禁止剤としてBHT(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール)0.33g、1,5−シクロオクタジエン2.2g(2.0×10-2mol)、ジ−μ−クロロビス(μ−1,5−シクロオクタジエン)二イリジウム0.017g(イリジウム原子5.0×10-5molを含む)を仕込み、凝縮器の通気口に窒素通気をしつつ、60℃までフラスコの内容物を加熱した。次いで、ジメチルクロロシラン94.6g(1.0mol)をフィードした。滴下開始後直ちに鋭敏な発熱が観察され、ヒドロシリル化反応がスムーズに開始したことが確認された。その後、反応温度を60〜65℃に維持するように滴下速度や熱媒による調整をしながら、5.5時間かけて全量を滴下した。滴下終了後、混合物を60℃で0.5時間熟成した。その後、室温まで冷却し、ガスクロマトグラフィーで組成を調べると、β付加異性体は0.2%、メタクリロキシジメチルクロロシランは0.2%、ジメチルジクロロシランは0.8%、メタクリル酸3−(ジメチルクロロシリル)プロピルエステルは84.2%であった。β付加異性体の生成量は目的物に対して0.2%であり、副反応が極めて抑制されていた。
【0031】
また、この反応混合物を蒸留塔のない単蒸留装置にて蒸留精製した。2.4kPaで塔頂温度38〜48℃の低沸成分を留去した後、0.5kPaで塔頂温度48〜85℃のメタクリル酸3−(ジメチルクロロシリル)プロピルエステルを主成分とする留分179.9gを得た。この留分の組成をガスクロマトグラフィーで調べると目的物は98.8%、β付加異性体は0.2%であった。目的物の収率は81.5%であり、高純度の目的物を高収率で回収できた。
【0032】
[比較例2]
滴下漏斗、ジムロート式冷却凝縮器、攪拌機、温度計を備えた500mlの四つ口フラスコを十分窒素置換した。次いで、メタクリル酸アリル126.0g(1.0mol)、重合禁止剤としてBHT(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール)0.33g、塩化白金(IV)酸の2−エチルヘキサノール溶液0.49g(Pt5.0×10-5molを含む)を仕込み、凝縮器の通気口に窒素通気をしつつ、60℃までフラスコの内容物を加熱した。次いで、ジメチルクロロシラン94.6g(1.0mol)をフィードした。滴下開始後直ちに鋭敏な発熱が観察され、ヒドロシリル化反応がスムーズに開始したことが確認された。その後、反応温度を60〜65℃に維持するように滴下速度や熱媒による調整をしながら、3.5時間かけて全量を滴下した。その後、室温まで冷却し、ガスクロマトグラフィーで組成を調べると、β付加異性体は2.4%、メタクリロキシジメチルクロロシランは4.1%、ジメチルジクロロシランは2.4%、メタクリル酸3−(ジメチルクロロシリル)プロピルエステルは69.9%であった。β付加異性体は目的物に対して3.4%の割合で生成していた。
【0033】
また、この反応混合物を蒸留塔のない単蒸留装置にて蒸留精製した。2.4kPaで塔頂温度43〜47℃の低沸成分を留去した後、0.5kPaで塔頂温度47〜80℃のメタクリル酸3−(ジメチルクロロシリル)プロピルエステルを主成分とする留分160.1gを得た。この留分の組成をガスクロマトグラフィーで調べると目的物は95.1%、β付加異性体は2.7%であった。目的物の収率は72.6%であり、目的物の収率は低く、またβ付加異性体の混合量も多かった。
【0034】
【発明の効果】
本発明により、従来から問題であった副反応を十分に低減できることから、従来より高純度・高収率で目的のカルボン酸3−(ジメチルクロロシリル)プロピルエステルを得ることができる。

Claims (2)

  1. ジメチルクロロシランと下記一般式(1)
    RCOOCH2CH=CH2 (1)
    (式中、Rは炭素数1〜10の1価炭化水素基を示す。)
    で示されるカルボン酸アリルエステルとをヒドロシリル化反応をさせ、下記一般式(2)
    RCOOCH2CH2CH2Si(CH32Cl (2)
    (式中、Rは上記の通り。)
    で示されるカルボン酸3−(ジメチルクロロシリル)プロピルエステルを合成する方法において、下記一般式(3)
    [Ir(R 5 )Y] 2 (3)
    (式中、R 5 はジエン化合物、Yは塩素、臭素、ヨウ素のいずれかである。)
    で示されるイリジウム錯体の存在下で下記一般式(4)
    Figure 0004123334
    (式中、R 1 、R 2 はそれぞれ炭素数1〜10の1価炭化水素基であり、又はR 1 とR 2 が結合して、これらが結合する炭素原子と共に合計炭素数3〜20の環を形成してもよく、R 3 、R 4 はそれぞれ水素原子又は炭素数1〜10の1価炭化水素基である。)
    で示される化合物を添加剤として添加してヒドロシリル化反応を行うことを特徴とする、上記一般式(2)で示されるカルボン酸3−(ジメチルクロロシリル)プロピルエステルの製造方法。
  2. 上記一般式(4)で示される化合物が、1,5−シクロオクタジエンである請求項記載のカルボン酸3−(ジメチルクロロシリル)プロピルエステルの製造方法。
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