JP4122980B2 - ブロック化芳香族イソシアナート類、ブロック化脂環式イソシアナート類及び脂環式イソシアナート類の製造方法 - Google Patents

ブロック化芳香族イソシアナート類、ブロック化脂環式イソシアナート類及び脂環式イソシアナート類の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ブロック化芳香族イソシアナート類の製造方法に関する。
詳しくは、水素添加反応により脂環式イソシアナート類のブロック化物を製造するに際して、原料として好適なブロック化芳香族イソシアナート類を製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
有機イソシアナート類は、エラストマー原料、塗料、接着剤等のポリウレタンの原料モノマーとして広く用いられている。また、有機合成化学における合成中間体としても、医薬、農薬などの分野で利用されている。
【0003】
有機イソシアナート類の中でも特に芳香族イソシアナート類は安価かつ大量に製造されているためにポリウレタン原料として広汎に使用されている。しかし、芳香族イソシアナート類を用いて製造したポリウレタンは、日光により黄変する性質があるため無黄変性のポリイソシアナートモノマーが要望されている。しかし、無黄変性を有する脂肪族イソシアナート類は比較的高価であることからそれほど広く用いられていない。
【0004】
脂肪族イソシアナートには、ヘキサメチレンジイソシアナートやイソホロンジイソシアナートのような、もともと主鎖が脂肪族であるものに加えて、ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート(H12MDI)のような、対応する芳香族化合物を核水素化することにより誘導されるものがある。事実、H12MDIは、メチレンジアニリンをルテニウム触媒により核水素化して脂環式ジアミンとした後、ホスゲン化することにより製造されている。
【0005】
また別の方法として、脂環式イソシアナート類の製造方法として、ジフェニルメタンジイソシアナート(MDI)をε−カプロラクタムによりブロックし、これをロジウム触媒で水素化した後熱解離を伴う蒸留により、H12MDIを製造する方法が開示されている(特許文献1)。この方法は従来工程に比べ、反応条件が穏和であり、またH12MDIの異性体比がシス−シス型に富んでいることが特徴である。しかしながらこの方法を実際に行おうとすると、カプロラクタムでブロック化したMDIの芳香環をロジウム触媒で水素化する工程において、該水素化反応の途中でロジウム触媒が失活してしまい、水素化反応を100%完結させることは困難である。
【0006】
【特許文献1】
特開昭56−16455号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、この原因について検討した結果、ε−カプロラクタムによりブロック化を行っても、イソシアナート基のブロック化が完全には行われず、ブロック化されていないイソシアナート基が少量残存し、このイソシアナート基が、ブロック化MDI中に極微量存在するだけで水素化反応に重大な影響を及ぼす、つまり、水素化触媒を被毒し、著しく活性を低下させることを見出した。市販されているMDIはその組成の大部分が4,4’−MDIであるが、不純物として2,4’−MDIおよび2,2’−MDIを数%含んでいる。MDIにおいて芳香環の2−位に置換されたイソシアナート基は、その立体的な障害のためにブロック化を受けにくい。MDIをブロック化する際に残留する未ブロック化イソシアナート基の割合は、MDI中の2,4’−MDIおよび2,2’−MDIの含量が多い場合に著しい。この2,4’−MDIおよび2,2’−MDIを取り除くことは、MDIの蒸留を精密に実施することにより達成されうるが、効率が悪く、装置上の負担も大きいものとなる。
本発明は、ブロック化芳香族イソシアナート類を水素化反応させて脂環式イソシアナート類を製造する際に、水素化触媒の活性を損なうことのない原料のブロック化芳香族イソシアナート類の製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、水添反応に供するブロック化芳香族イソシアナート類の残存イソシアナート量を低減させる方法につき鋭意検討を行った結果、芳香族イソシアナート類のイソシアナート基のブロック化を特定のブロック化剤を用いて2段階で行うことにより、得られるブロック化芳香族イソシアナート類を、ブロック化されていない残存イソシアナート基を実質上含まないものとすることができ、その結果、水素添加反応に供した際に水素化触媒の活性低下を防止し、触媒の寿命を向上させることができることを見出し本発明を完成するに到った。
即ち本発明の第1の要旨は、芳香族イソシアナート類をブロック化剤と反応させることによりイソシアナート基をブロック化する第1工程、第1工程により得られるブロック化物を、アミン類、アルコール類及び水から選ばれる少なくとも1種であって、第1工程において使用するブロック化剤よりも芳香族イソシアネート類中のイソシアナート基との反応性の大きいブロック化剤によりブロック化する第2工程、の2段階でブロック化を行うことを特徴とするブロック化芳香族イソシアナート類の製造方法、に存する。
【0009】
本発明の第2の要旨は、上記方法により得られるブロック化芳香族イソシアナート類を、貴金属触媒存在下に水素化を行うことによりブロック化脂環式イソシアナート類を製造することを特徴とするブロック化脂環式イソシアナート類の製造方法、に存する。
本発明の第3の要旨は、上記方法により得られるブロック化脂環式イソシアナート類を脱ブロック化することにより脂環式イソシアナート類を製造することを特徴とする脂環式イソシアナート類の製造方法、に存する。
【0010】
【発明の実施の形態】
<芳香族イソシアナート類>
本発明において使用される芳香族イソシアナート類としては、ジフェニルメタンジイソシアナート(MDI)、ポリメリックMDI(PMDI)、ナフタレンジイソシアナート、メタキシリレンジイソシアナート、トリレンジイソシアナート(TDI)などの、分子量160〜1000程度の芳香族ポリイソシアナート類、およびこれらを構成単位として含む分子量1000〜10000程度のプレポリマー類、トリメチロールプロパン−トリレンジイソシアナート付加物の如き芳香族ポリイソシアナートを構成単位として含む分子量200〜5000程度のアダクト類、または、フェニルイソシアナート、トリルイソシアナートなどの分子量100〜1000程度のモノイソシアナート類が挙げられる。
中でも、MDI、PMDIおよびTDIならびにこれらのポリオールアダクト類が好ましく用いられる。
【0011】
<芳香族イソシアナート類のブロック化>
本発明においては、異なる二種類以上のブロック化剤を用いて少なくとも2段階でブロック化を行う。即ち、第1工程において、第2工程で用いるブロック化剤よりも芳香族イソシアナート類のイソシアネート基との反応性が小さい、即ち、後に加熱により比較的容易に脱ブロック化が可能なブロック化剤を用いて芳香族イソシアナート類中の大部分をブロック化した後、第2工程において、残存イソシアナート基との反応性の高い、後述する別のブロック化剤を用いてさらにブロック化を実施する。
【0012】
イソシアナート基との反応性については、例えば、クロロベンゼン等の適当な溶媒中で、イソシアナート基と当量のブロック化剤を反応させ、見かけ上の2次反応とした条件においてNMRあるいはIRで反応を観測し、その反応速度定数を比較することによって簡便に評価することが出来る。イソシアナート基とブロック化剤すなわち活性水素化合物との反応性に関する研究はよく調べられていて、例えば神津治雄著 合成樹脂塗料 高分子刊行会 1970年 193頁には、主なブロック化剤の反応性は次のようにまとめられている。
第1級アミン>アンモニア>水>第1級アルコール>第2級アルコール>第3級アルコール>活性メチレン化合物、フェノール>カルボン酸。
【0013】
本ブロック化工程の第1工程において使用するブロック化剤の種類は、活性水素を有する化合物であって、イソシアナート基に付加することができ、且つ加熱により容易に脱離してイソシアナート基を再生するものであって、その後、芳香環水素化反応を行う場合に水素化を阻害しないものである。またこの生成物をポリウレタン用途に使用する場合には、熱解離によるブロック化が起こりやすい、即ち解離温度がより低いブロック化剤を選択することが好ましい。
【0014】
このようなブロック化剤の例として、例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウムなどの亜硫酸塩、コハク酸イミド、マレイン酸イミド、フタル酸イミドなどのイミド類、アセチルアセトン、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチルなどの活性メチレン化合物、メチルメルカプタン、ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、フェニルメルカプタンなどのメルカプタン類、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、ブチルフェノール、ナフトール、ヒドロキシ安息香酸などのフェノール類、イミダゾール、2−メチルイミダゾールなどのイミダゾール類、N−フェニルカルバミン酸フェニルなどのカルバミン酸類、ホルムアルドオキシム、アセトアルドオキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム、アセトキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシムなどのオキシム類、アセトアニリド,酢酸アミド,ε−カプロラクタム,δ−バレロラクタム,γ−ブチロラクタムなどの酸アミド類等が挙げられる。これらは単独または、混合して用いてもよい。この中でも、活性メチレン化合物、フェノール類、オキシム類、及び酸アミド類が好ましく用いられる。特に酸アミド系ブロック化剤が好ましく用いられ、γ−ブチロラクタムあるいはε−カプロラクタムが最も好ましく用いられる。
【0015】
芳香族イソシアナート類の第1ブロック化工程は、通常行われている公知の方法により容易に実施することができる。たとえば、芳香族イソシアナートをトルエン、2−ブタノン、メチルイソブチルケトンなどの溶媒に溶解し、ブロック化剤をイソシアナート基に当量以上加えることによりブロック化を行う。好ましくは、下限が1当量以上であり、上限が50当量以下である。また、用いる溶媒の水分量は通常5%以下であり、好ましくは2%以下である。
用いられる溶媒の重量は、用いられるイソシアナート類とブロック化剤をあわせた重量に対して、下限が通常、0.02倍以上、好ましくは0.2倍以上であり、上限が通常、100倍以下、好ましくは20倍以下である。
【0016】
あるいは加熱によりイソシアナートが融解する場合には、無溶媒でブロック化剤と混合するだけでブロック化を行うこともできる。また、ブロック化剤それ自身を溶媒と兼ねて用いることもできる。
ブロック化の反応温度は、ブロック化剤の種類とイソシアナート類の種類の組合せにより若干異なる。高すぎると脱ブロック化反応が起こり、低すぎると反応が進行しなくなる。通常、下限が0℃以上、好ましくは25℃以上であり、上限が通常、200℃以下、好ましくは120℃以下である。また、ブロック化時間は、通常、下限が0.1時間以上、好ましくは0.5時間以上であり、上限が、通常、12時間以下、好ましくは、6時間以下である。
過剰に用いたブロック化剤は、水に溶解するブロック化剤にあっては水洗、その他のブロック化剤にあっては蒸留など適切な分離操作を施すことにより除去することができる。このようにして得られたブロック化芳香族イソシアナート類中に含まれている未反応のイソシアナート基含量は少ないほど好適であり、全イソシアナート基の95%以上をブロック化することがより好ましい。
【0017】
本ブロック化工程の第2ブロック化工程において用いられるブロック化剤は、アミン類、アルコール類及び水から選ばれる少なくとも1種である。つまり、活性水素を有する化合物であって、第1工程において使用するブロック化剤に比してイソシアナート基との反応性が十分高い別のブロック化剤、即ち第1工程にて使用したブロック化剤よりもpKaの大きいブロック化剤を使用する。以上の要件を満たすブロック化剤としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、n−ヘキサノール、2−エチルヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、ベンジルアルコールなどの炭素数1〜20のアルコール類、エチレンイミン,ポリエチレンイミンなどのイミン類、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ(n−ブチル)アミン、ジ(イソプロピル)アミン、アニリン、ピペリジンなどのアミン類などが挙げられる。また、水も使用することができる。これらは単独または、混合して用いてもよい。中でもアルコール類が好適に用いられ、炭素数5以下の脂肪族アルコール類および水が特に好ましい。
【0018】
また、第1工程において複数種のブロック化剤を用いた場合は、その全てのブロック化剤よりもイソシアナート基との反応性の大きいブロック化剤を用いる。残存イソシアナート基の測定方法は、通常の赤外分光光度計を用い、KBr錠剤法または溶液法(好ましくはスペーサー厚み0.1m/m、石英製窓板の溶液セルを使用)による。溶液法にあっては残存イソシアナート基の定量が可能であり、ブロック化イソシアナートを適当な溶媒、好ましくはクロロホルムに溶解し、2280cm-1付近に観測される芳香族イソシアナート基の吸光度に基づき、原料のイソシアナート類を用いて作成された検量線により決定される。
第2工程において用いられるブロック化剤の量は、残存イソシアナート基に対して少なくとも当量以上、好ましくは、10当量以上であり、上限として好ましくは10000当量以下で実施される。反応溶媒としては、原料のブロック化芳香族イソシアナートを溶解しうる溶媒が用いられるが、ブロック化剤を溶媒と兼ねて使用することもできる。好ましくはベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族溶剤、ジクロロメタン、クロロホルムなどの有機ハロゲン溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル溶剤であり、原料重量の通常、下限が1倍以上、好ましくは1.2倍以上であり、上限が100倍以下、好ましくは20倍量以下使用する。
【0019】
後段のブロック化反応の温度は、通常下限が20以上、好ましくは40℃以上であり、上限が通常、150℃以下、好ましくは90℃以下で行われる。ブロック化時間は、通常、下限が0.1時間以上、好ましくは0.5時間以上であり、上限が通常、10時間以下、好ましくは3時間以下であり、反応物を通常の赤外分光分析により分析し、2280cm-1付近に現れる残存イソシアナート基の吸収が見られなくなるまで行う。
処理後のブロック化芳香族イソシアナートは、ろ過、再結晶、溶媒除去などの公知方法により回収することができる。また、後段の水素化反応で使用できる溶媒を用いる場合には、ブロック化芳香族イソシアナートを分離回収することなく混合物のまま次の水素化反応に供することができる。
【0020】
以上の二工程のブロック化方法は、第1工程終了後の反応物を分離した後、第2工程のブロック化を行っても良いし、第1工程終了後に生成物を単離することなく同一の反応器内で連続して実施することも可能である。
【0021】
<ブロック化芳香族イソシアナート類の水素化>
上述の方法により製造されたブロック化芳香族イソシアナート類はあ水素化反応を行って、ブロック化脂環式イソシアナート類を製造することができる。水素化反応時において使用される触媒は、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、白金等の周期表8〜10族の金属を活性炭、カーボンブラック、アルミナ、ケイソウ土などの担体上に担持したもの等が使用できる。金属の担持量としては、通常、下限が0.05重量%以上、好ましくは、0.2重量%以上であり、上限が通常、20重量%以下、好ましくは10重量%以下のものが用いられる。これらの水素化触媒の中で、活性炭担持ロジウム触媒が好ましく用いられる。
【0022】
水素化反応に使用される触媒の量は、原料のブロック化芳香族イソシアナートの重量を基準として、下限が通常、0.01%以上、好ましくは0.02%以上であり、上限が通常、200%以下、好ましくは100%以下の範囲である。
【0023】
水素化反応の反応形式は、回分式あるいは流通式のいずれの条件でも実施することができる。流通式の場合、触媒を懸濁させるか、または固定床として反応に使用することができる。反応液と水素ガスは向留または並流的に操作が可能であり、水素ガスは再循環させながら実施しても良い。
【0024】
水素化反応の反応温度は、ブロック化剤が熱解離反応を起こす温度以下で実施されることが必要であるが、通常、下限が20℃以上、好ましくは50℃以上であり、上限が通常、200℃以下、好ましくは120℃以下の範囲である。反応は反応容器の水素吸収が停止するまで行うが、通常、0.5時間以上、好ましくは1時間以上であり、上限が10時間以下、好ましくは6時間以下である。
【0025】
<ブロック化脂環式イソシアナート類の脱ブロック化>
上記のブロック化脂環式イソシアナート類はウレタン塗料の原料としてそのまま使用することができるが、必要であればこのものをさらに加熱してブロック化剤を熱解離させることにより遊離のイソシアナート基を再生させることが出来る。さらに、これらを分留などの適切な操作を施すことにより、脂環式イソシアナートを分離することができる。
【0026】
脱ブロック化反応は、ブロック化脂環式イソシアナートを適当な溶媒中若しくは無溶媒下に加熱することにより実施することができる。用いる溶媒は、ブロック化剤の解離温度よりも高い沸点を有し、かつ、イソシアナートと反応しないものであれば何でも良いが、中でも、沸点の下限値が通常250℃以上、好ましくは280℃以上であり、上限値が通常600℃以下、好ましくは沸点500℃以下のパラフィン類が好適に用いられる。
用いられる溶媒の量は、ブロック化脂環式イソシアナートの重量に対して下限値が通常0.5倍以上、好ましくは1倍以上であり、上限値が通常1000倍以下、好ましくは100倍量以下である。
【0027】
反応温度は、用いるブロック化剤と脂環式イソシアナート類の組合せにもよるが、低すぎると脱ブロック化が進行せず、高すぎるとイソシアナート基の分解が起こる傾向があるので、下限値が通常80℃以上、好ましくは120℃以上であり、上限値が通常350℃以下、好ましくは250℃以下の範囲である。
反応時間は、反応温度により影響を受けるが、反応時間を長くすると、遊離するイソシアナート基の変質や分解が起こりやすくなるので、下限値が通常、0.2時間以上、好ましくは0.5時間以上であり、上限値が通常5時間以下、好ましくは2時間以下である。
【0028】
また本工程においては触媒を使用することができる。触媒の種類はスズ、鉛、ビスマス、亜鉛、バリウム、ジルコニウム、コバルト、マグネシウムなどの金属系触媒もしくはジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)などの第三級アミン類が用いられ、好ましくはスズまたは鉛系触媒であり、より好ましくはジブチル錫ジカルボン酸塩類である。用いられる触媒の量はブロック化脂環式イソシアナートの重量に対して、下限値が通常1ppb以上、好ましくは0.1ppm以上であり、上限値が通常50%以下、好ましくは5%以下である。分解後に遊離した脂環式イソシアナートとブロック化剤および溶媒を、減圧蒸留や再結晶により分離することも可能である。用いたブロック化剤および溶媒は回収され、繰り返し使用することができる。
本発明における脱ブロック化工程は、最終生成物の使用目的にもよるが、第1工程および第2工程でブロック化されたブロック化剤をすべて脱ブロック化させてもよく、あるいは一部を脱ブロック化させずに残存させたままでもよい。
【0029】
【実施例】
以下に、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらの実施例によって限定されるものではない。
合成例1<ε−カプロラクタムブロック化MDIの製造>
100cc滴下ロート、機械式かきまぜ器、還流冷却器を装置した300cc4つ口フラスコに、ε−カプロラクタム(東京化成社製) 20g、脱水トルエン(関東化学社製、水分量分析値0.001%以下)35ccを入れ、反応混合物の温度を60℃にして溶解させ均一溶液とする。滴下ロートにMDI(ダウ社製・アイソネート125Mを蒸留した後液体窒素で急速冷凍して凝結させ、0℃にて保管したものを固体状態で使用)20gと脱水トルエン35ccを混合した溶液を入れ、4つ口フラスコ内の反応液温度を60℃に保ち30分間かけて滴下した。滴下終了後、さらに3時間反応液温度60℃で反応させた。反応途中で白色粉末が析出した。その後約20分間かけて80℃まで昇温し、さらに3時間80℃で撹拌した。その後、反応液を氷浴下10℃以下に冷却し、白色の析出粉末をろ取した。この粉末を蒸留水(150cc×5回)で洗浄して過剰のε−カプロラクタムを除去した。粉末を通気乾燥して、ε−カプロラクタムブロック化MDIを白色粉末として34.0g回収した。このブロック化MDIを赤外分光分析KBr錠剤法により測定したところ、芳香族イソシアナート基が示す吸収波数である2280cm-1に微弱な吸収が観測され、ごく微量の遊離イソシアナート基が残留していることが確認された。
【0030】
実施例1<2段ブロック化芳香族イソシアナート類の製造>
ε−カプロラクタムブロックMDI(合成例1で作成したもの) 22.6gを脱水トルエン 220 cm3に50℃で加えた後、メタノール 30cm3を加えて64℃、メタノール還流下加熱溶解させ無色透明の均一溶液としたのち、1時間撹拌した。その後、容器を氷冷して反応液温度を10℃以下に冷却したのち、溶媒を半分量減圧下除去して析出した白色粉末をろ過し、通気乾燥した。白色粉末が21.7g回収された。このものを赤外分光分析KBr錠剤法により測定したところ、2280cm-1にみられる芳香族イソシアナート基による吸収バンドは検出されなかった。
【0031】
実施例2<ブロック化脂環式イソシアナート類の製造>
ステンレス製オートクレーブ(内容積70cm3)に、実施例1の方法で製造したε−カプロラクタムブロックMDI 0.50g、5%−Rh/活性炭(エヌ・イー・ケムキャット社製) 0.050g、および2−プロパノール(国産化学社製、特級) 9.5 cm3をいれて密封した後、室温で容器内を水素4MPaで2回フラッシュしたのち13MPaまで加圧しガス漏洩試験を行った。その後、10MPaまで減圧して、80℃まで15分間で昇温し、引き続き80℃で1時間反応させた。反応後、室温まで冷却して、水素圧力を解放し、回収された反応液から触媒を濾別し、さらに濾液から溶媒を減圧下除去したところ、白色粉末が定量的に回収(0.52g)された。このもののGC分析より、核水素化率は100%、シス体選択率は78.5%であり、より詳細な生成物の異性体比は、シス−シス体:シス−トランス体:トランス−トランス体=61.5:34.0:4.5であった。1H−NMRで分析したところ、ε−カプロラクタムブロック保持率は99%以上であった。
【0032】
実施例3<脂環式イソシアナートの製造方法>
Vigreux式分留管(内径7mm×長さ50mm)が接続されている30ccフラスコに、実施例2の方法により製造したカプロラクタムブロック−水素化MDI 2.00gと、n−トリアコンタン(東京化成製) 2.00gおよび磁石式撹拌子を入れ、3 mmHgに減圧して容器をオイルバスに浸し、バス温度を室温から200℃まで30分間かけて昇温した。仕込み混合物は融解して無色透明の均一溶液に変化し、速やかに沸騰した。その後、バス温度は200〜210℃に保ち、45分間、塔頂の留出物温度が85℃(3mmHg)に達するまでの留出成分を除去したのち、減圧を窒素気流下に解放した。留出物は室温下白色固体として670mg回収され、1H-NMRおよび13C[1H]-NMR分析からε−カプロラクタム(純度95%以上)と同定された。一方、フラスコ内の反応混合物の一部を取り出し、IR分析(KBr錠剤法)を行ったところ、2260cm-1に遊離のイソシアナート基の振動に起因する強い吸収が観測された。さらに、このものと、H12MDIの標品(バイエル社製・デスモジュールW)との比較による1H-NMR分析の結果、脱ブロック化率は88%であり、H12MDIとしては76%以上生成していることを確認した。
【0033】
比較例1<ブロック化脂環式イソシアナート類の製造>
ステンレス製オートクレーブ(内容積70cm3)に、反応例1の方法で製造したε−カプロラクタムブロックMDI未処理品 0.50g、5%−Rh/活性炭(エヌ・イー・ケムキャット社製) 0.050g、および2−プロパノール(国産化学社製、特級)9.5cm3をいれて密封した後、室温で容器内を水素4MPaで2回フラッシュしたのち13MPaまで加圧しガス漏洩試験を行った。その後、10MPaまで減圧して、80℃まで15分間で昇温し、引き続き80℃で1時間反応させた。反応後、室温まで冷却して、水素圧力を開放した後回収された反応液は灰色の懸濁液であった。これにクロロホルム40ccを加え有機物を再溶解させたのち、触媒を濾別し、濾液から溶媒を減圧下除去したところ、白色固体が定量的(0.51g)に回収された。このものをGC分析したところ、核水素化率は31.0%、シス体選択率は70.7%であり、さらに、1H−NMRで分析したところ、ε−カプロラクタムブロック保持率は99%以上であった。
【0034】
【発明の効果】
本発明の製造方法により得られるブロック化芳香族イソシアナート類は、水素化反応を行った際に水素化触媒の活性を損なうことなく効率的にブロック化脂環式イソシアナート類を製造することができる。

Claims (4)

  1. 芳香族イソシアナート類をブロック化剤と反応させることによりイソシアナート基をブロック化する第1工程、第1工程により得られるブロック化物を、アミン類、アルコール類及び水から選ばれる少なくとも1種であって、第1工程において使用するブロック化剤よりも芳香族イソシアネート類中のイソシアナート基との反応性の大きいブロック化剤によりブロック化する第2工程、の2段階でブロック化を行うことを特徴とするブロック化芳香族イソシアナート類の製造方法。
  2. 第1工程において使用するブロック化剤が、活性メチレン化合物、フェノール類、オキシム類及び酸アミド類から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載のブロック化芳香族イソシアナート類の製造方法。
  3. 請求項1または2のいずれかの方法により得られるブロック化芳香族イソシアナート類を、貴金属触媒存在下に水素化を行うことによりブロック化脂環式イソシアナート類を製造することを特徴とするブロック化脂環式イソシアナート類の製造方法。
  4. 請求項3の方法により得られるブロック化脂環式イソシアナート類を熱解離により脱ブロック化することを特徴とする脂環式イソシアナート類の製造方法。
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