JP4121355B2 - プリント配線基板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、ストランドが互いに直交する補強繊維布を有し、外周形状の少なくとも一部に直線部を有するプリント配線基板および繊維補強合成樹脂材料のルーターを用いた切断方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、例えば特許文献1の図4および第2頁に記載されているように、ストランドが90°で交差する2軸織りのガラスクロスを用いたプリント配線基板が知られている。これらを製造する工程は次のとおりである。
【0003】
まず、ストランドが直交するように織られたガラスクロスに、プラスチック樹脂を染み込ませプリプレグを製造する。このプリプレグをストランドの方向を揃えながら数枚重ね、さらに必要に応じて銅箔を重ねた上でプレスするとともに加熱して、プラスチック樹脂を硬化させプリント配線基板用基材を製造する。
【0004】
このプリント配線基板用基材は、通常1m角に切断され、このときプリント配線基板用基材の四辺と、補強ガラスクロスの各ストランドとは、平行または直角となるように構成されている。このプリント配線基板用基材はこの状態で次工程に運ばれ、配線パターンを形成した後、所定の形状に切断される。
【0005】
この切断においては、従来はプレス加工が多く用いられていた。プレス加工に伴う作業環境悪化等の問題を解決するため、近年ルーター切断が多く用いられるようになっている。プリント配線基板用基材1から、プリント配線基板11を切り出すにあたっては、図8に示すように、この切断における基準直交座標Cを、四辺と平行または直角となるよう設定している。この基準直交座標Cに従い、たとえば長方形のプリント配線基板11を切り出す場合には、プリント配線基板11の各辺が、プリント配線基板用基材1と平行となるように切断する。プリント配線基板用基材1の四辺と、補強ガラスクロスのストランドとは平行または直角となるように構成されているので、図9に示すように、ルータによる切断線16と補強ガラスクロスのストランドの方向(矢印A、矢印B)とは、平行または直角となる。したがって、切り出されたプリント配線基板11の四辺とストランドとは平行または直角である。
【0006】
【特許文献1】
特開平4−246883号公報 (第2頁、図4)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
プリント配線基板の切り出しにおいて、ルーターなどの工具寿命が問題となっている。ルーターなどの工具が早期に摩耗すると、不良品が発生しやすくなり、またコストアップの要因となるためである。
【0008】
したがって、この発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、工具寿命の延長を図ることができる、プリント配線基板および繊維補強合成樹脂材料の切断方法を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
この発明に基づいたプリント配線基板に従えば、ストランドが互いに直交する補強繊維布を有し、外周形状の少なくとも一部に直線部を有するプリント配線基板であって、上記直線部が上記直交するストランドの一方に平行な部分と上記ストランドの方向に対して0.2°以上の傾斜角をなした部分とを含み、上記傾斜角をなしている直線部の全長の合計が、外周全長の40%以上となるように構成している。この構成によると、工具寿命の延長が顕著となる。
【0017】
従来の基材からプリント配線基板を切り出す工程においては、ルーターなどの工具による主な切断線の方向と、補強繊維布のストランドの方向とが、平行または直角となるように行なわれていた。本発明においては、それを0.2°以上傾斜させることによって、工具寿命の延長を図るものである。その要因は完全には解明されていないが、たとえばルーターを例にとると、ルーターの切断線と補強繊維布のストランドとが平行または直角な場合には、平行なストランドとルーターとの間で、ルーターをこするような摩擦が発生し、これによる摩耗が発生していることが要因であると考えられる。
【0018】
本発明の上記プリント配線基板において、直線部の方向が、ストランドに対して0.2°以上の傾斜をなすように構成した場合には、この直線部においては、ルーターによる切断線とストランドとが平行とならず交差する。これにより直線部をルーターで切断する工程において、ルーターとストランドとの摩擦を減少させることができるので、ルーターの寿命を延長させることができる。その結果プリント配線基板の不良品が減少して品質管理が容易となり、またプリント配線基板のコスト低減を図ることができる。
【0019】
上記プリント配線基板において好ましくは、上記傾斜角が、5°以上となるように構成する。この構成によると、工具寿命の延長をより効果的に行なうことができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本実施の形態におけるプリント配線基板および繊維補強合成樹脂材料の切断方法について、図を参照しながら説明する。
【0022】
(実施の形態1)
以下、本実施の形態におけるプリント配線基板およびその製造方法について、図1から図3を参照して説明する。なお、図1は、本実施の形態におけるプリント配線基板の切断工程を示す説明図である。図2は、同プリント配線基板における補強ガラスクロスのストランドの方向を示す拡大図である。図3および図4は、切断実験における切断線のパターンおよび方向を示す説明図である。
【0023】
プリント配線基板11を製造するに先だって、プリント配線基板用基材1を製造する。このプリント配線基板用基材1は、ストランドが直交するように織られた補強繊維布としてのガラスクロスに、プラスチック樹脂を染み込ませプリプレグを製造し、このプリプレグをストランドの方向を揃えながら数枚重ね、さらに必要に応じて銅箔を重ねた上でプレスするとともに加熱して、プラスチック樹脂を硬化させて製造される。
【0024】
このプリント配線基板用基材1は、通常1m角に切断され、このときプリント配線基板用基材11の四辺と、補強ガラスクロスの各ストランドとは、平行または直角となる。このプリント配線基板用基材1はこの状態で次工程に運ばれ、配線パターンを形成した後、所定の形状に切断する。本実施の形態においては、ルーターを用いて切断する。
【0025】
図1には、この切断の一例として外周形状が長方形の場合を示している。図1に示すように、補強ガラスクロスのストランドの織り方向は、直交する矢印Aおよび矢印Bで示す方向であり、これらはプリント配線基板用基材1の外周形状に対して平行または直角である。
【0026】
ルーター切断の切断方向の基準となる基準直交座標Cは、図1に示すように、切り出されるプリント配線基板11の外周形状(長方形)を構成する各辺(直線部)を基準に定めている。この基準直交座標Cは、プリント配線基板11の各辺と平行である。
【0027】
基準直交座標Cと、ストランドの織り方向とは、図1に示すように傾斜角θだけ傾斜させるようにしている。この傾斜角θは、0.2°以上89.8°以下に設定する。このように設定することで、プリント配線基板11の外周形状を構成する直線、すなわちルーター切断における切断線16は、図2に示すようにストランドの織り方向に対して傾斜角θだけ傾斜することとなる。
【0028】
このようにストランドの織り方向に対して、0.2°以上の傾斜角をなすようにルーター切断することにより、切断線とストランドの織り方向を一致させた場合に比べてルーターの工具寿命を長くすることができる。そのメカニズムは必ずしも明らかではないが発明者らは、次のような実験を行なうことでこれを実証した。
【0029】
JIS規格R3414に定められたガラスクロスEP18Bを8層重ねた厚み1.6mm、1m角の両面銅張板(FR4)からなるプリント配線基板を準備し、これを2枚重ねて被削材とした。この被削材を、直径1.0mmの超硬合金(住友電気工業製 材質名:F0)のルーターを用いて、回転数40,000rpm、送り0.8m/minの切削条件で、傾斜角θを種々変化させて、図3に示すような切断線16のパターンで40m切断した。切断終了後にルーターの摩耗量を測定した結果を表1に示す。このプリント配線基板のガラスクロスのストランドは、図3に示すように、その織り方向(矢印A、矢印B)が各辺に対して平行または直角方向である。
【0030】
【表1】
【0031】
表1に示すように、切断線16の傾斜角θが、0°または、0.1°(89.9°、179.9°)の場合には、摩耗量が大きく、また、ルーターの刃先状態も好ましくない状態であり、切断終了後には、これ以上使用できない状態であった。
【0032】
これに対し、傾斜角θが、上記以外のものについては、摩耗量も少なく、刃先状態も好ましいものであり、正常な切断を継続できる状態であった。また、傾斜角θが45°(135°)に近づくほど、ルーターの摩耗量が少なくなることが分かる。さらに、表1から、傾斜角θが0.2°以上でルーターの工具寿命を延長する効果があるが、傾斜角θが5°以上であればその効果がさらに顕著になることが分かる。
【0033】
このように、ルーター切断によるプリント配線基板の外周形状の加工において、外周形状に直線部が含まれる場合には、その直線部の方向が補強繊維布のストランド方向に対して、0.2°以上の傾斜角をなすようにすることで、ルーターの摩耗を減らすことができ、ルーターの工具寿命を延長することができる。この実施の形態の場合には、プリント配線基板の外周形状が長方形であるので、その外周形状を基準として定めた基準直交座標Cを傾斜させれば、全ての辺(直線部)が傾斜することとなり、最も好ましい状態である。
【0034】
発明者らは、図4(a)に示すような、上底と下底が平行な等脚台形を切り出す次のような実験も行なった。図4に示す各辺の寸法a,b,cを種々変化させ、さらにその切断方向も図4(a)に示すパターン1の場合と、図4(b)に示すパターン2の場合の2種類について切り出しを行なって、切り出し後のルーターへの影響を調べた。全てのケースにおいて、外周の全長は800mmであるが、これをそれぞれ50枚切り出した。従って、切断線の総延長は、40mとなる。なお、上記以外の実験条件は、前述の実験と同じである。
【0035】
ここで、パターン1においては、台形の上底と下底がストランドの方向(図4において矢印A、矢印Bで示す)と一致し、斜辺がストランドの方向に対して45°傾斜する。一方、パターン2においては、台形の斜辺がストランドの方向と一致し、上底と下底がストランドの方向に対して45°傾斜する。
【0036】
【表2】
【0037】
この実験結果を表2に示す。この表2では、各形状、パターンごとに、外周全長に対する、ストランドの方向に対して45°傾斜した辺の長さの割合、ルーターの摩耗量、ルーターの摩耗形態を表示している。この表から分かるように、ストランドの方向に対して傾斜した辺の長さの割合が増加するに従って、ルーターの摩耗量が減少する。その割合が39.1%のNo.5においては、切断終了後にはルーターの摩耗量が大きく、すでに使用できない状態であった。41.3%のNo.7においては、摩耗量も少なく、さらに切断を継続できる状態であった。従って、切断するプリント基板の外周全長に占めるストランドの方向に傾斜した直線部の割合は、40%以上が好ましい。
【0038】
プリント配線基板11には様々のものが考えられる。たとえば以下の実施の形態に示すような形状の場合には、それぞれ下記のように設定することで、ルータ切断の切断線とストランドの方向を傾斜させることができて、ルーターの工具寿命を延長することができる。以下に説明する実施の形態において特に説明しない構成については、実施の形態1と同一の構成を有している。
【0039】
(実施の形態2)
本実施の形態では、図5に示すような、六角形の外周形状を有するプリント配線基板11をルーター切断している。その切断においては、まず各直線部の長さL11〜L32を各方向ごとに区分して積算する。ここでは、L11およびL12を第1の区分、L21およびL22を第2の区分、L31およびL32を第3の区分とし、各区分ごとにその長さを積算する。すなわち、第1の区分においてはL11+L12、第2の区分においてはL21+L22、第3の区分においては、L31+L32を計算する。この実施の形態においては、第1の区分が最長となる。そこで、最長となる第1の区分に含まれる、直線部の方向(L11およびL12に対応する方向)を基準として、基準直交座標Cを設定し、この基準直交座標Cをストランドの方向(矢印A、矢印B)に対して傾斜角θだけ傾斜させてルーター切断している。
【0040】
このようにすることで、総延長が最長の直線部の方向が、ストランドの方向に対して傾斜角θだけ傾斜する。この実施の形態においては、L11およびL12が同時に最長の直線部であり、その意味でもこの方向を基準に基準直交座標Cを定めることが好ましい。
【0041】
(実施の形態3)
本実施の形態では、図6に示すような長方形の一辺と直角三角形の斜辺を一致させたような外周形状のプリント配線基板を加工する場合に、直交する直線部の総延長が最長となる直交方向を基準直交座標C1とし、これをストランドの方向(矢印A、矢印B)に対して傾斜角θだけ傾斜させている。
【0042】
この外周形状においては、長方形部分を基準として設定する基準直交座標C1と、直角三角形部分を基準として設定する基準直交座標C2の二つが考えられる。この場合には、直交する直線部の組ごとにその総延長を計算し、その最長となる方を選択すればよい。すなわち、この場合であれば、基準直交座標C1に対応する直線部の長さL11とL12とL13との合計と、基準直交座標C2に対応する直線部の長さL21とL22との合計を比較し、この場合であれば、基準直交座標C1に対応する直線部の長さL11とL12とL13の合計の方が大きいので、これを基準として基準直交座標を定める。
【0043】
このようにして選択した基準直交座標C1をストランドの方向に対して傾斜角θだけ傾斜させるので、最も総延長が長い直交する直線部をストランドに対して傾斜させることができる。
【0044】
(実施の形態4)
全ての直線部を斜辺を傾斜させることが好ましいが、必ずしも全ての辺が傾斜していなくてもある程度の効果は得られる。たとえば図7に示すような、長方形の角を斜めに切断したような形状のプリント配線基板11を考える。従来は、この形状を切断するには、図7(a)に示すように、四辺がストランドの方向と一致するように切断していた。この場合には、斜辺のみがストランドの方向に対して傾斜する。
【0045】
それを傾けて図7(b)に示すような方向で切断するようにするだけでも、かなりの効果を得ることができる。この場合には、斜辺のみがストランドの方向と一致し、他の四辺は全てストランドの方向に対して傾斜することになり、ストランドに対して斜めに切断する切断線の総延長が大きく増加するからである。
【0046】
上記実施の形態においては、切断に用いる工具としてルーターを用いたが、スリッターやメタルソーなどの刃が回転する切削工具のほか、他の手段により切断する場合でも、同様の効果がある。
【0047】
また、上記実施の形態においては、プリント配線基板の補強繊維布がガラスクロスの場合を説明したが、他の補強繊維布であってもよいことは言うまでもない。
【0048】
さらには、上記実施の形態においては、プリント配線基板のみについて説明したが、他の繊維補強合成樹脂材料のルーター切断にも本発明は適用することができる。
【0049】
なお、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本発明の技術的範囲は、上記した実施の形態のみによって解釈されるのではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明に基づいた実施の形態1におけるプリント配線基板を切り出す工程を示す説明図である。
【図2】 この発明に基づいた実施の形態1におけるプリント配線基板における補強繊維布のストランドの方向を示す拡大図である。
【図3】 切断実験における切断線のパターンおよび方向を示す説明図である。
【図4】 切断実験におけるプリント配線基板の形状を示す説明図である。
【図5】 この発明に基づいた実施の形態2におけるプリント配線基板を切り出す工程を示す説明図である。
【図6】 この発明に基づいた実施の形態3におけるプリント配線基板を切り出す工程を示す説明図である。
【図7】 この発明に基づいた実施の形態4におけるプリント配線基板を切り出す方向を説明する説明図である。
【図8】 従来のプリント配線基板を切り出す工程を示す説明図である。
【図9】 従来のプリント配線基板における補強繊維布のストランドの方向を示す拡大図である。
【符号の説明】
1 プリント配線基板用基材、11 プリント配線基板、C 基準直交座標。
Claims (3)
- ストランドが互いに直交する補強繊維布を有し、外周形状の少なくとも一部に直線部を有するプリント配線基板であって、
前記直線部が前記直交するストランドの一方に平行な部分と前記ストランドの方向に対して0.2°以上の傾斜角をなした部分とを含み、前記傾斜角をなしている直線部の全長の合計が、外周全長の40%以上である、プリント配線基板。 - 前記傾斜角が、5°以上である、請求項1に記載のプリント配線基板。
- 前記直線部のうち、最も総延長が長い直交する一対の直線部をストランドに対して傾斜させた、請求項1または2に記載のプリント配線基板。
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