JP4121231B2 - 光記録媒体の初期化方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、相変化型光記録媒体を初期化(記録層の結晶化)して、相変化型光記録媒体を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、高密度記録が可能で、しかも記録情報を消去して書き換えることが可能な光記録媒体が注目されている。書き換え可能型の光記録媒体のうち相変化型のものは、レーザービームを照射することにより記録層の結晶状態を変化させて記録を行い、このような状態変化に伴なう記録層の反射率変化を検出することにより再生を行うものである。相変化型の光記録媒体は単一のレーザービームの強度を変調することによりオーバーライトが可能であり、また、駆動装置の光学系が光磁気記録媒体のそれに比べて単純であるため、注目されている。
【0003】
相変化型の記録層には、結晶質状態と非晶質状態とで反射率の差が大きいこと、非晶質状態の安定度が比較的高いことなどから、Ge−Te系やGe−Sb−Te系等のカルコゲナイド系材料が用いられることが多い。また、この他、最近、カルコパイライトと呼ばれる化合物を応用することが提案されている。カルコパイライト型化合物は化合物半導体材料として広く研究され、太陽電池などにも応用されている。カルコパイライト型化合物は、化学周期律表を用いるとIb-IIIb-VIb2やIIb-IVb-Vb2で表わされる組成であり、ダイヤモンド構造を2つ積み重ねた構造を有する。カルコパイライト型化合物はX線構造解析によって容易に構造を決定することができ、その基礎的な特性は、例えば月刊フィジクスvol.8,No.8,1987,pp-441や、電気化学vol.56,No.4,1988,pp-228などに記載されている。これらのカルコパイライト型化合物の中で特にAgInTe2は、SbやBiを用いて希釈することにより、線速度7m/s前後の光記録媒体の記録層材料として使用できることが知られている(特開平3−240590号公報、同3−99884号公報、同3−82593号公報、同3−73384号公報、同4−151286号公報等)。このようなカルコパイライト型化合物を用いた相変化型光記録媒体の他、特開平4−267192号公報や特開平4−232779号公報、特開平6−166268号公報には、記録層が結晶化する際にAgSbTe2相が生成する相変化型光記録媒体が開示されている。
【0004】
一般に相変化型光記録媒体において情報を記録する際には、まず、記録層全体を結晶質状態としておき、記録層が融点以上まで昇温されるような高パワー(記録パワー)のレーザービームを照射する。記録パワーが加えられた部分では記録層が溶融した後、急冷され、非晶質の記録マークが形成される。一方、記録マークを消去する際には、記録層がその結晶化温度以上であってかつ融点未満の温度まで昇温されるような比較的低パワー(消去パワー)のレーザービームを照射する。消去パワーが加えられた記録マークは、結晶化温度以上まで加熱された後、徐冷されることになるので、結晶質に戻る。したがって、相変化型光記録媒体では、単一のレーザービームの強度を変調することにより、オーバーライトが可能である。
【0005】
相変化型光記録媒体では、真空成膜装置などを用いて記録層を形成しているため、形成直後の記録層は非晶質状である。これをオーバーライト可能な媒体として利用する場合には、一般に初期化と呼ばれる処理により、記録層を結晶化する必要がある。
【0006】
初期化の方法としては、成膜後に記録層の結晶化温度まで基板を加熱して結晶化させる方法(特開平2−3131号公報)、成膜後にレーザービームを照射して結晶化させる固相初期化と呼ばれる方法(特開平4−366424号公報、同2−201734号公報、同3−76027号公報)、高周波を用いて誘導加熱によって結晶化させる方法、成膜中に基板を加熱して結晶化させる方法(特開平2−98847号公報)、第1層目の誘電体を形成し、次いで記録層を形成した後、これを加熱して結晶化し、さらに誘電体を形成する方法(特開平2−5246号公報)などが提案されている。
【0007】
しかし、記録に利用するようなビームスポット径の小さなレーザービームを用いて1トラックごとに初期化を行うと、処理に長時間を要し、生産性を低下させる。また、媒体全体を加熱する方法では、安価な樹脂基板を使いにくいという問題がある。すなわち、初期化処理の際の加熱によって樹脂基板が歪み、トラッキングなどに支障をきたすようになってしまう。そこで、現在、工業的に適当な方法として利用されているのは、バルクイレーザーと呼ばれる装置を用いる方法である。バルクイレーザーは、出力の高いガスレーザーや半導体レーザーのビームをあまり絞らずに照射して、多数のトラックを一挙に結晶化させる装置である。バルクイレーザーでは、記録層を限定的に加熱できるため基板の温度上昇が小さくなるので、耐熱性の低い樹脂基板の利用が可能である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、バルクイレーザーを用いた場合でも、光記録ディスク1枚を初期化するために数分間程度の処理時間が必要で、生産工程上の律速となるので、処理速度をより向上させる必要がある。バルクイレーザーによる処理時間を短縮するためには、より高い出力のレーザーを用いた上で、ディスクの回転数を上げたり、レーザービームのビームスポット径を拡大すると共に送り量を増やしたり、両者を併用したりすればよい。すなわち、単位面積当たりに照射されるパワーを初期化処理に必要な値に保ったまま、単位時間当たりの照射面積を増やせばよい。しかし、レーザー出力の向上には限界がある。
【0009】
このような事情から、初期化処理に必要な単位面積当たりのレーザーパワーを低減できる手段が望まれている。単位面積当たりに必要なレーザーパワーを低減できれば、初期化処理速度の向上が可能であるほか、処理速度をやや犠牲にすればレーザーの全出力を抑制できるので、レーザー発振装置の寿命を延ばすことができる。
【0010】
本発明の目的は、単位面積当たりのレーザーパワーが低いレーザーを用いて、相変化型光記録媒体を初期化することができる相変化型光記録媒体の初期化方法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、下記(1)〜(4)の本発明により達成される。
(1)相変化型の記録層を有する光記録媒体を初期化する方法であって、
前記記録層の非晶質部における波長λIでの反射率をAI、結晶質部における波長λIでの反射率をCIとしたとき、
AI≦8.0%かつ
CI/AI≧3.0
となる波長λ I の光で初期化を行うことを特徴とする光記録媒体の初期化方法。
(2)記録光および/または再生光の波長をλRWとしたとき、
λI>λRW
であることを特徴とする上記(1)に記載の光記録媒体の初期化方法。
(3)λI−λRW≧100nm
であることを特徴とする上記(2)に記載の光記録媒体の初期化方法。
(4)前記光記録媒体が、基体上に、第1誘電体層、前記記録層、第2誘電体層および反射層を有し、第1誘電体の厚さをd 1 としたとき、
65 nm <d 1 ≦143 nm
であることを特徴とする上記(2)または(3)に記載の光記録媒体の初期化方法。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の光記録媒体は、相変化型の記録層を有する。
【0013】
初期化に使用する光の波長をλIとし、記録層の非晶質部における波長λIでの反射率をAI、結晶質部における波長λIでの反射率をCIとしたとき、本発明の光記録媒体では
AI≦8.0%、好ましくは
AI≦6.0%
であり、かつ、
CI/AI≧3.0、好ましくは
CI/AI≧3.5
である。
【0014】
まず、AIの限定理由を説明する。AIが上記のように低ければ、初期化時の記録層の光吸収率が大きくなるので、初期化処理に必要な単位面積当たりのレーザーパワーを低減することができる。なお、AIは低いほど好ましいので、記録再生特性を阻害しない範囲で、可能な限りAIを低くする光学的設計とすることが好ましい。ただしAIが低すぎると、初期化装置のフォーカス制御が困難となるので、好ましくは
AI≧3.0%
とする。
【0015】
次に、CI/AIの限定理由を説明する。初期化の際には、ビームスポット径の大きなレーザービームで走査することにより、結晶化が必要な領域の全面に満遍なくレーザービームを照射する。例えばディスク媒体の場合には、媒体を回転させながらレーザービームを照射し、1回転につきレーザービームのビームスポット径と同じかそれより少ない量だけ媒体半径方向にレーザービームを送る。このときの送り量をP、ビームスポット径をLとすると、L≧Pである。L=Pとすれば、計算上は必要な領域の全面を隙間なく照射することができるが、ビームスポットはエネルギー分布をもつため、スポット内全域を均一に初期化することが難しい。そのため、L>Pとしてビームスポットを重複して照射することが一般的である。この場合には、結晶化領域に再度レーザービームが照射されることになる。このとき、結晶化領域の反射率CIが低いと、結晶化領域において光エネルギーの吸収が大きくなって温度が上昇するので、結晶状態が変化してしまう。そのため、ビームスポットが重複照射された領域では、ビームスポットが1回しか照射されなかった領域に対し反射率が異なることになる。初期化時のレーザービームスポット径は記録トラック幅に比べ著しく大きいので、反射率の異なるトラックが周期的に存在することになり、また、ビームが横切ったトラックでは、トラック内で反射率変動が生じることになる。これに対しCI/AIを上記のように設定すれば、初期化前の非晶質領域では反射率が相対的に十分に低く、いったん結晶化した領域では反射率が相対的に十分に高くなるので、低パワーで初期化が行え、かつ、いったん結晶化した領域の結晶状態変化を防ぐことができる。
【0016】
なお、CI/AIは大きいほど好ましい。ただし、記録層の組成、反射層の有無、反射層の組成などの各種条件によっても異なるが、CIは一般に50%以下であり、また、上述したようにAIには好ましい下限が存在するので、これらに対応してCI/AIには上限が存在する。
【0017】
初期化には大パワーのレーザーが必要であり、一般に長波長のレーザーは大パワーを得やすい。一方、高密度記録およびその再生のためには短波長ほど好ましいので、本発明では
λI>λRW
であることが好ましい。なお、λRWとλIとが近接しすぎていると、初期化の際に短波長のレーザーを利用することになって大パワーを得にくくなるか、記録または再生の際に長波長のレーザーを利用することになって高密度記録に適用することが困難となる。そのため、好ましくは
λI−λRW≧100nm
とする。
【0018】
λIおよびλRWは特に限定されない。λIはAIおよびCI/AIが上記限定範囲内となるように決定すればよいが、現在のところ出力やコストの点で工業的に使いやすい範囲としては、一般に600〜850nm程度である。一方、λRWは、高密度記録を考慮すると700nm以下であることが好ましい。ただし、著しく短いλRWにおいて十分な記録再生特性が得られるように記録層組成や媒体構造を選択すると、AIおよびCI/AIを本発明で限定する範囲内とすることが難しくなるため、λRWは380nm以上であることが好ましい。
【0019】
本発明の光記録媒体の構成例を、図1に示す。この光記録媒体は、基体2上に、第1誘電体層31、記録層4、第2誘電体層32、反射層5および保護層6をこの順で有する。
【0020】
この構成の光記録媒体において、第1誘電体31の厚さをd1としたとき、本発明では、
65nm<d1≦143nm
であることが好ましく、
71.5nm≦d1≦143nm
であることがより好ましい。第1誘電体層31の厚さをこの範囲とすることにより、光学設計上、AIおよびCI/AIを上記限定範囲内に設定することが容易となり、かつ、その際に、λIを波長600〜850nm程度の長波長に設定することが容易となる。第1誘電体層31の厚さ変更により反射率は周期的に変化するため、143nm<d1であっても、AIを低くすることは可能である。しかし、その場合、第1誘電体層31が厚くなりすぎて内部応力が大きくなるので、高温、高湿環境下で保存したときにクラックが生じやすくなる。一方、d1が小さすぎると、基体2側に熱が逃げやすくなり、オーバーライト特性が悪化してしまう。なお、d1が143nmに近くなるにしたがって反射率が増大して記録感度が低下するため、好ましくは
d1<106nm
とし、より好ましくは
d1≦102nm
とする。
【0021】
なお、図1に示す構成では、初期化時のレーザービームの入射方向は記録再生時の入射方向と同じである。
【0022】
媒体構成
次に、図1に示す光記録媒体の各部の構成を説明するが、本発明は、図1に示される構造の光記録媒体に限らず、例えば図2に示す構成の媒体にも適用できる。図2に示す媒体は、基体2を通さずに記録再生光を照射する構成であり、基体2側から、反射層5、第2誘電体層32、記録層4および第1誘電体層31をこの順に積層し、最後に保護層6を形成したものである。
【0023】
基体2
図1に示す構成の光記録媒体では基体2を通して記録層4にレーザービームが照射されるので、基体2は、用いるレーザービームに対して実質的に透明である材質、例えば、樹脂やガラスなどから構成されることが好ましい。用いる樹脂は特に限定されず、例えばポリカーボネート、アモルファスポリオレフィン等のいずれであってもよい。基体2の厚さは、通常、0.1〜3mm程度であるが、本発明は基体の厚さが薄い場合に、特に0.8mm以下である場合に効果が高い。従来、初期化処理を高速に行うためには前述したように高パワーのレーザービームが必要であったが、高パワーで初期化処理を行うと、基体の反りが大きくなってしまう。この反りは、初期化パワーが高いほど大きくなる。例えば、初期化前後での樹脂基体の反り角の差は、基体厚さが1.2mmのとき、初期化パワー600mWでは0.01°、初期化パワーを900mWに上げても0.01°のままであるが、基体厚さが0.6mmであると、初期化パワー600mWでは0.14°と比較的小さいが、初期化パワーを900mWとした場合には0.44°にもなってしまう。これに対し本発明では、初期化処理を高速化するに際し初期化パワーを抑えることができるので、厚さ0.8mm以下の薄い基体をもつ媒体の初期化処理を、基体の反り増大を抑えた上で高速化することができる。
【0024】
第1誘電体層31、第2誘電体層32
第1誘電体層31は、媒体全体の光学特性(反射率等)の制御のため、また、記録層から基体に伝わる熱を制御して基体を保護するために設けられる。第2誘電体層32は、記録層を保護すると共に、記録後、記録層に残った熱の放出を調整するために設けられる。
【0025】
第1誘電体層および第2誘電体層に用いる誘電体材料は特に限定されず、各種誘電体やそれらの混合物、例えば、酸化ケイ素、窒化ケイ素、硫化亜鉛と酸化ケイ素との混合物など、透明な各種誘電体材料を用いればよく、また、各種ガラスなどを用いてもよい。また、例えば、La、Si、OおよびNを含有する所謂LaSiONや、Si、Al、OおよびNを含有する所謂SiAlON、あるいはYを含有するSiAlON等も好ましく用いることができる。
【0026】
第1誘電体層31の厚さは、前記条件を満足するように設定する。第2誘電体層32の厚さは、通常、10〜50nm程度の範囲から選択すればよい。
【0027】
各誘電体層は均質であってもよいが、組成分布が厚さ方向に段階的および/または連続的に変化するものであってもよい。
【0028】
誘電体層は、スパッタ法等の気相成長法により形成することが好ましい。
【0029】
記録層4
記録層の組成は特に限定されないが、以下に説明するIn−Ag−Te−Sb系組成やGe−Sb−Te系組成、特にIn−Ag−Te−Sb系組成とした場合に、本発明はより有効である。
【0030】
In−Ag−Te−Sb系組成の記録層では、構成元素の原子比を
式I {(InaAgbTe1-a-b)1-cSbc}1-dMd
で表したとき、好ましくは
a=0.1〜0.3、
b=0.1〜0.3、
c=0.5〜0.8、
d=0〜0.1
である。式Iにおける元素Mは、Ge、Sn、Pb、H、Si、C、V、W、Ta、Zn、Ti、Ce、TbおよびYから選択される少なくとも1種の元素である。
【0031】
Ge−Sb−Te系組成の記録層では、構成元素の原子比を
式II GeaSbbTe1-a-b
で表わしたとき、好ましくは
0.08≦a≦0.25、
0.20≦b≦0.40
である。
【0032】
記録層の厚さは、通常、10〜50nmとすることが好ましい。
【0033】
記録層は、スパッタ法等の気相成長法により形成することが好ましい。
【0034】
反射層5
反射層5の材質は特に限定されないが、通常、Al、Au、Ag、Pt、Cu等の単体あるいはこれらの1種以上を含む合金などの高反射率金属から構成すればよい。反射層は、スパッタ法や蒸着法等の気相成長法により形成することが好ましい。
【0035】
なお、相変化型光記録媒体では、記録マーク以外の領域(結晶状態)における光吸収率(Ac)と記録マーク(非結晶状態)における光吸収率(Aa)とが異なることが多く、一般にAc<Aaとなっている。このため、オーバーライト領域が結晶であったか非結晶であったかによって記録感度および消去率が異なることになる。この結果、オーバーライトによって形成される記録マークに長さおよび幅のばらつきが生じて、ジッターが大きくなり、エラーとなることもある。この問題を解決するためには、AcをAaに近づけ、好ましくはAc/Aa≧1とし、より好ましくは、潜熱の影響を考慮してAc/Aa>1とすることが望ましい。このためには、記録層やそれを挟んで設けられる誘電体層の厚さを制御すればよいが、通常の構造の媒体では、Ac/Aaを大きくしていくと記録マーク以外の領域における媒体からの反射率(Rc)と記録マークにおける媒体からの反射率(Ra)との差が小さくなって、C/Nが低くなるという問題が生じてしまう。このような事情から、例えば特開平8−124218号公報では、基体上に第1誘電体層、記録層、第2誘電体層、反射層、第3誘電体層、紫外線硬化樹脂層を順に積層した構成の光学情報記録媒体において、Ac>Aaとし、反射層として透過性の極薄金属膜、SiまたはGeを用い、第3誘電体層として屈折率が1.5より大きな誘電体を用いる旨の提案がなされている。光透過性の反射層と高屈折率の第3誘電体層とを設けることにより、Rc−Raを大きく保ったままAc/Aaを上記範囲とすることが可能となる。本発明は、このような媒体にも適用可能である。
【0036】
保護層6
保護層6は、耐擦傷性や耐食性の向上のために設けられる。この保護層は種々の有機系の物質から構成されることが好ましいが、特に、放射線硬化型化合物やその組成物を、電子線、紫外線等の放射線により硬化させた物質から構成されることが好ましい。保護層の厚さは、通常、0.1〜100μm程度であり、スピンコート、グラビア塗布、スプレーコート、ディッピング等、通常の方法により形成すればよい。
【0037】
【実施例】
射出成形によりグルーブ(幅0.3μm、深さ25nm、ピッチ0.74μm)を同時形成した直径120mm、厚さ0.6mmのディスク状ポリカーボネート基体2の表面に、第1誘電体層31、記録層4、第2誘電体層32、反射層5および保護層6を以下に示す手順で形成し、図1に示す構成を有する光記録ディスクサンプルとした。
【0038】
第1誘電体層31は、ターゲットとしてZnS(85モル%)−SiO2(15モル%)を用い、Ar雰囲気中においてスパッタ法により形成した。第1誘電体層31は、波長λRW(635nm)での屈折率が2.22であった。第1誘電体31の厚さd1を、表1に示す。
【0039】
記録層4は、ターゲットとしてIn−Ag−Te−Sb合金を用い、Ar雰囲気中においてスパッタ法により形成した。記録層4の組成は
(InaAgbTe1-a-b)1-cSbc
において
a=0.12、
b=0.16、
c=0.64
とした。記録層4の厚さは23nmとした。
【0040】
第2誘電体層32は、ターゲットとしてZnS(85モル%)−SiO2(15モル%)を用い、Ar雰囲気中においてスパッタ法により形成した。第2誘電体層32の厚さは25nmとした。
【0041】
反射層5は、ターゲットとしてAl−1.7モル%Cr合金を用い、Ar雰囲気中においてスパッタ法により形成した。反射層5の厚さは100nmとした。
【0042】
保護層6は、紫外線硬化型樹脂をスピンコート法により塗布後、紫外線照射により硬化して形成した。硬化後の保護層厚さは5μm であった。
【0043】
このようにして作製したサンプルについて、基体2を通して入射させた光の反射率を分光光度計により測定し、AIを求めた。また、各サンプルに初期化処理を施した後、同様にしてCIを求めた。なお、
λI=810nm
とした。また、初期化処理は、波長810nm、ビームスポット径100μm、送り量60μmのバルクイレーザーを用い、線速3m/sで行った。記録層の結晶化に要したレーザーパワーを、初期化パワーとして表1に示す。また、初期化後、反射率変動を調べた。結果を表1に示す。表1に示す反射率変動は、記録トラック1周における反射率の最高値をRtop、最低値をRbottomとして、
[(Rtop−Rbottom)/Rtop]×100 [%]
により算出した値である。なお、反射率変動の測定は、記録領域中央付近の10トラックについて行った。表1に示す値はその平均値である。
【0044】
また、各サンプルを80℃、80%RHの高温高湿環境下に50時間保存し、保存後に第1誘電体層31のクラックの有無を調べた。結果を表1に示す。
【0045】
また、各サンプルを光記録媒体評価装置に載せ、繰り返しオーバーライトに伴うジッターの変化を測定し、オーバーライト可能回数を調べた。結果を表1に示す。なお、この場合のオーバーライト可能回数とは、ジッターが13%以下に収まる最大のオーバーライト回数である。オーバーライトは下記条件で行った。
【0046】
オーバーライト条件
レーザー波長(λRW):635nm、
開口数NA=0.6、
記録パワー:表1に示す値(ジッターが最小になる値)、
消去パワー:6.0mW、
線速:3.5m/s
【0047】
【表1】
【0048】
表1から、AIが本発明で限定する範囲内にあるサンプルでは、初期化パワーを著しく低減できることがわかる。また、CI/AIが本発明で限定する範囲内にあるサンプルでは、反射率変動が10%以下であり、反射率の安定性が高いことがわかる。これに対し、AIが大きいサンプルでは大きな初期化パワーが必要であり、また、CI/AIが小さいサンプルでは、反射率変動が大きいことがわかる。
【0049】
サンプルNo.7では、143nm<d1となっているため、高温高湿環境下での保存において第1誘電体層にクラックが発生している。また、d1≦143nmを満足しても、d1が143nmに近くなると、サンプルNo.5のように記録に要するパワーが増大する、すなわち記録感度が悪くなることがわかる。また、d1=65nmであると、オーバーライト可能回数が著しく少なくなってしまうことがわかる。
【0050】
表1に示すサンプルNo.3および6について、波長400〜900nmの範囲で非晶質部の反射率ARと結晶質部の反射率CRとを測定した。サンプルNo.6(比較例)の分光反射率グラフを図3(A)に、サンプルNo.3の分光反射率グラフを図3(B)に、それぞれ示す。これらのグラフから、サンプルNo.3は波長660〜840nmの範囲でAR≦8.0%かつCR/AR≧3.0を満足するが、サンプルNo.6では、AR≦8.0%かつCR/AR≧3.0を満足する波長が存在しないことがわかる。
【0051】
【発明の効果】
本発明によれば、初期化処理に必要な単位面積当たりのレーザーパワーを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用される光記録媒体の構成例を示す部分断面図である。
【図2】本発明が適用される光記録媒体の構成例を示す部分断面図である。
【図3】(A)および(B)は、光記録媒体の分光反射率を示すグラフである。
【符号の説明】
2 基体
31 第1誘電体層
32 第2誘電体層
4 記録層
5 反射層
6 保護層
Claims (4)
- 相変化型の記録層を有する光記録媒体を初期化する方法であって、
前記記録層の非晶質部における波長λIでの反射率をAI、結晶質部における波長λIでの反射率をCIとしたとき、
AI≦8.0%かつ
CI/AI≧3.0
となる波長λ I の光で初期化を行うことを特徴とする光記録媒体の初期化方法。 - 記録光および/または再生光の波長をλRWとしたとき、
λI>λRW
であることを特徴とする請求項1に記載の光記録媒体の初期化方法。 - λI−λRW≧100nm
であることを特徴とする請求項2に記載の光記録媒体の初期化方法。 - 前記光記録媒体が、基体上に、第1誘電体層、前記記録層、第2誘電体層および反射層を有し、第1誘電体の厚さをd 1 としたとき、
65 nm <d 1 ≦143 nm
であることを特徴とする請求項2または3に記載の光記録媒体の初期化方法。
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JP2000306265A (ja) | 2000-11-02 |
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