JP4120412B2 - 圧縮比を変更可能な内燃機関と変速機とを備える動力出力装置 - Google Patents

圧縮比を変更可能な内燃機関と変速機とを備える動力出力装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、圧縮比を変更可能な内燃機関と変速機とを備える動力出力装置において、圧縮比を切り換える技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関は、小型でありながら比較的大きな動力を出力可能であるという優れた特性を備えることから、自動車や船舶、飛行機など各種の輸送機械の動力源として、あるいは定置式の各種機械の動力源として広く使用されている。これら内燃機関は、燃焼室内で圧縮した混合気を燃焼させ、このときに発生する燃焼圧力を機械的な仕事に変換して、動力を取り出すことを動作原理としている。また、内燃機関が出力する動力は、駆動しようとする対象(すなわち負荷)に対して、回転速度が高いことが多いので、適切な回転速度まで減速するべく、変速機と組み合わせて用いられることが一般的である。
【0003】
こうした内燃機関では、理論的には、混合気の圧縮割合を表す指標である圧縮比が高くなるほど、熱効率が向上することが知られている。しかし、実際には、圧縮比が高くなるほど、ノッキングと呼ばれる異常燃焼が発生し易くなる傾向にあり、ノッキングが発生した状態で内燃機関を運転していると内燃機関にダメージを与えることがある。このため、圧縮比が高い値に設定されている内燃機関では、特にノッキングが生じ易い高負荷の運転領域において、ノッキングの発生を回避するため点火時期を適正な時期から遅らせた時期に設定しておくことが行われる。点火時期を遅らせておけば、ノッキングの発生を確実に回避することが可能であるが、その一方で、内燃機関の出力や熱効率の低下を招くことになる。
【0004】
こうした点に鑑みて、内燃機関の圧縮比を変更可能とする技術が提案されている(特許文献1、特許文献2など)。これら技術では、内燃機関の運転条件に応じて圧縮比を変更可能として、ノッキングが発生し難い中低負荷の運転条件では圧縮比を高く設定し、逆に、ノッキングが発生し易い高負荷条件では圧縮比を低く設定する。こうすれば、中低負荷領域では、内燃機関を高圧縮比で運転することでことで高い熱効率を達成し、高負荷領域では低圧縮比で運転することでノッキングの発生を回避して大きな出力を発生させることが可能である。
【0005】
【特許文献1】
特開昭62−258153号公報
【特許文献2】
特開昭63−159642号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このように、内燃機関の圧縮比を変更可能とすれば、熱効率と最大出力とを同時に向上させることが可能となるものの、その一方で次のような課題も存在しており、効果的な解決手法の開発が要請されている。すなわち、内燃機関の圧縮比を切り換えるためには、ある程度のエネルギが必要となるので、圧縮比の切り換えを頻繁に行うと大きなエネルギを消費してしまい、内燃機関全体として見たときの熱効率が却って低下してしまうことが起こり得る。更に、圧縮比を頻繁に切り換えた場合には、切り換えのための機構が故障する確率も増加するという弊害も発生する。
【0007】
この発明は、従来の技術における上述した課題を解決するためになされたものであり、圧縮比を変更可能な内燃機関の優れた特性を損なうことなく、上記の課題を解決することが可能な技術の提供を目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】
上述の課題の少なくとも一部を解決するため、本発明の動力出力装置は次の構成を採用した。すなわち、
圧縮した混合気を燃焼させて動力を発生させる内燃機関と、該内燃機関の出力軸からトルクを受け取って回転速度を変更した後、駆動軸から出力する変速機と、該内燃機関および該変速機の動作を制御する制御手段とを備える動力出力装置において、
前記内燃機関は、前記混合気の圧縮割合を示す圧縮比を変更可能な内燃機関であり、
前記変速機は、前記出力軸の前記駆動軸に対する回転速度の比率によって示される減速比を変更可能な変速機であり、
前記制御手段は、
前記圧縮比を変更するための閾値となる閾値トルクを記憶しておく閾値トルク記憶手段と、
前記駆動軸から出力するべく要求された要求トルクを検出する要求トルク検出手段と
を備えるとともに、
前記要求トルクと前記減速比とに応じて定められ前記内燃機関が出力すべきトルクたる機関要求トルクが前記閾値トルクを超える場合には、該減速比の設定を大きな値に変更することによって、該機関要求トルクを該閾値トルク以下に抑制する手段であることを特徴とする。
【0009】
また、上記の動力出力装置に対応する本発明の制御方法は、
圧縮比を変更可能な内燃機関と、該内燃機関の出力軸からトルクを受け取って回転速度を変更した後に駆動軸から出力する変速機と、該内燃機関および該変速機の動作を制御する制御手段とを備える動力出力装置の制御方法において、
前記内燃機関の圧縮比を変更するための閾値となる閾値トルクを記憶しておく第1の工程と、
前記駆動軸から出力するべく要求された要求トルクを検出する第2の工程と、前記要求トルクと前記変速機の減速比とに応じて定められ前記内燃機関が出力すべきトルクたる機関要求トルクが前記閾値トルクを超える場合に、該変速機を制御して該減速比の設定を大きな値に変更することにより、該機関要求トルクを該閾値トルク以下に抑制する第3の工程と
を備えることを特徴とする。
【0010】
かかる動力出力装置および制御方法においては、前記機関要求トルクが前記閾値トルクを超えた場合には、前記減速比の設定を大きな値に変更する。減速比を大きくすれば、前記要求トルクを前記駆動軸から出力するために、内燃機関が出力しなければならない機関要求トルクは小さくなる。このことから、減速比を適切な値に変更することによって、機関要求トルクを閾値トルク以下の値に抑制することができる。その結果、圧縮比の切り換えが抑制され、延いては、圧縮比を頻繁に切り換えた場合に生じ得る種々の弊害の発生を、効果的に回避することが可能となる。
【0011】
こうした動力出力装置あるいは制御方法においては、減速比を連続的に変更可能な変速機を採用することが望ましい。
【0012】
減速比を連続的に変更することができれば、要求トルクに対して内燃機関の出すトルクも連続的に変更することができる。従って、機関要求トルクの設定の自由度が向上するので、内燃機関をより適切に運転することが可能となって好ましい。
【0013】
こうした動力出力装置においては、機関要求トルクが閾値トルクを越えている場合には、次のようにしても良い。前記内燃機関が出力するトルクを該閾値トルク以下の所定トルクに設定するとともに、前記駆動軸から出力するトルクが前記要求トルクに達するまで、前記変速機の減速比を増加させることとしてもよい。
【0014】
上述した動力出力装置においては、前記内燃機関の回転速度を検出し、該検出した回転速度が所定の閾値回転速度よりも大きく、且つ、前記機関要求トルクが前記閾値トルクを越える場合には、前記内燃機関の圧縮比を変更することとしてもよい。あるいは、前記検出した回転速度と前記機関要求トルクとを乗算した値が所定の許容値を超える場合には、前記内燃機関の圧縮比を変更することとしてもよい。
【0015】
内燃機関の回転速度が高くなり、出力するトルクが大きくなるほど、内燃機関が発生する騒音は大きくなる傾向がある。このことから、機関要求トルクが閾値トルクを超えた時の回転速度が所定の閾値回転速度よりも大きい場合には、減速比を大きくすると、騒音が増加することが懸念される。同様に、回転速度と出力トルクとを乗算することによって求められる出力馬力があまりに大きな値となる場合にも、騒音の増加が懸念される。従って、このような場合には、圧縮比を変更することで、大きな騒音が発生するおそれを回避することが可能である。
【0016】
また、内燃機関の回転速度を検出可能な動力出力装置においては、前記機関要求トルクが前記閾値トルクを越える場合に、該内燃機関の回転速度が所定の許容回転速度を超えない範囲で、前記減速比を大きな値に変更することとしてもよい。
【0017】
こうすれば、減速比をあまりに大きな値に変更したために、内燃機関の回転速度が許容された回転速度を超えて高くなるおそれを回避することが可能となるので好ましい。
【0018】
また、上述の動力出力装置あるいは制御方法においては、前記出力軸または前記駆動軸のいずれかに対してトルクを出力可能な電動機を設けておき、前記駆動軸から出力されるトルクが前記要求トルクに対して不足する場合に、不足分のトルクを該電動機から補うこととしても良い。
【0019】
減速比を変更している間は、駆動軸から出力されるトルクが不足する事態が生じ得るが、こうして不足するトルクを電動機によって補ってやれば、動力出力装置をより適切に運転することが可能となる。
【0020】
本発明の動力出力装置は、車両の動力源として好適に組み合わせることができ、従って本発明は、次のような車両の形態として把握することも可能である。すなわち、車両としての本発明は、
圧縮した混合気を燃焼させて動力を発生させる内燃機関と、該内燃機関の出力軸からトルクを受け取って回転速度を変更した後、車軸に向けて出力する変速機と、該内燃機関および該変速機の動作を制御する制御手段とを備える車両において、
前記内燃機関は、前記混合気の圧縮割合を示す圧縮比を変更可能な内燃機関であり、
前記変速機は、前記出力軸の前記車軸に対する回転速度の比率によって示される減速比を変更可能な変速機であり、
前記制御手段は、
前記圧縮比を変更するための閾値となる閾値トルクを記憶しておく閾値トルク記憶手段と、
前記車軸から出力すべく要求された要求トルクを検出する要求トルク検出手段と
を備えるとともに、
前記要求トルクと前記減速比とに応じて定められ前記内燃機関が出力すべきトルクたる機関要求トルクが前記閾値トルクを超える場合には、該減速比の設定を大きな値に変更することによって、該機関要求トルクを該閾値トルク以下に抑制する手段であることを特徴とする。
【0021】
かかる車両においても、機関要求トルクが閾値トルクを超えた場合には、減速比の設定を大きな値に変更することで、機関要求トルクを閾値トルク以下の値に抑制することができる。このため、圧縮比の切り換えが抑制され、延いては、圧縮比を頻繁に切り換えた場合に生じ得る種々の弊害の発生を、効果的に回避することが可能となる。
【0022】
こうした車両においては、出力軸または車軸のいずれかに対してトルクを出力可能な電動機を設けておき、車軸から出力されるトルクが要求トルクに対して不足する場合には、該電動機を用いて不足するトルクを補うこととしても良い。
【0023】
こうすれば、車両運転者の要求に応じて、車両を速やかに加速させることが可能となるので好適である。
【0024】
【発明の実施の形態】
本発明の作用・効果をより明確に説明するために、本発明の動力出力装置を車両に搭載した実施例を例にとって、次のような順序に従って説明する。
A.装置構成:
A−1.ハイブリッド車両の構成:
A−2.ハイブリッド車両の動作の概要:
A−3.可変圧縮比エンジンの構成:
B.運転制御の概要:
C.圧縮比切り換え制御:
D.変形例:
【0025】
A.装置構成:
A−1.ハイブリッド車両の構成:
図1は、本実施例の動力出力装置を搭載したハイブリッド車両100の概略構成を示す説明図である。図示するように、このハイブリッド車両100は、モータ・ジェネレータ1(MG1)120と、モータ・ジェネレータ2(MG2)130と、エンジン200を有し、エンジン200と2つのモータ・ジェネレータ(MG1,MG2)とはプラネタリギア140で互いに結合されている。詳細には後述するが、エンジン200は、運転条件に応じて圧縮比を変更可能ないわゆる可変圧縮比エンジンである。ハイブリッド車両100においては、エンジン200はもっぱら動力源として使用される。MG1およびMG2はいずれも、電気エネルギを用いて駆動力を発生する動力源としても、あるいは外力によって駆動されて電気エネルギを発生する発電機としても機能し得るが、MG1は主に発電機として、MG2は主に動力源として使用される。プラネタリギア140は、エンジン200およびMG2からの出力を、チェーンベルト174と車軸170とを介して駆動輪172に伝達する役割や、エンジン200からの出力を、MG1と駆動輪172とに振り分ける動力分割機構としての役割、更には、エンジン200の回転速度を減速あるいは増速して駆動輪172に伝達する変速機としての役割を有している。詳細には後述するが、プラネタリギア140での減速割合あるいは増速割合は、MG1およびMG2の回転速度によって変更可能であり、従って、エンジン200に加えて、MG1とMG2とプラネタリギア140とを含んだ全体が、本実施例の動力出力装置を構成すると考えることができる。
【0026】
エンジン200は、4つの燃焼室を備えており、各燃焼室内で空気と燃料との混合気を燃焼させることによって動力を発生させる。エンジン200は、燃焼室内に混合気を吸い込んで圧縮した後、燃焼させ、このときに発生する燃焼圧力を動力に変換して外部に出力する。エンジン200の動作は、エンジン制御用の電子制御ユニット(以下、エンジンECU)260によって制御されている。また、エンジン200は、混合気の圧縮比率を表す指標の圧縮比を、運転条件に応じて変更することが可能である。エンジン200の詳細な構造については、後述する。
【0027】
プラネタリギア140は、中心部に設けられたサンギア142と、サンギア142の外側に同心円状に設けられたリングギア148と、サンギア142とリングギア148との間に配置されてサンギア142の外周を自転しながら公転する複数のプラネタリピニオンギア144と、エンジンのクランクシャフト243の端部に結合されて各プラネタリピニオンギア144の回転軸を軸支するプラネタリキャリア146とから構成されている。サンギア142は、サンギア軸141を介してMG1のロータ123に結合され、リングギア148は、リングギア軸147を介してMG2のロータ133に結合されている。プラネタリキャリア146は、エンジンのクランクシャフト243に結合されている。
【0028】
このような構成のプラネタリギア140は、サンギア軸141、リングギア軸147、クランクシャフト243の3軸が動力の入出力軸とされ、3軸の中のいずれか2軸へ入出力される動力が決定されると、残余の1軸に入出力される動力が決定される。リングギア148にはチェーンベルト174が接続されており、動力はチェーンベルト174および車軸170を介して駆動輪172に伝達されて、ハイブリッド車両100を駆動する。
【0029】
MG1は、交流同期電動機であり、外周面に複数の永久磁石122を有するロータ123と、回転磁界を形成する三相コイル124が巻回されたステータ125などから構成されている。ステータ125はケース138に固定されており、ロータ123は、前述したように、プラネタリギア140のサンギア軸141に結合されている。また、サンギア軸141には、ロータ123の回転角度を検出するレゾルバ126が設けられている。MG1は、インバータ152を介してモータECU156に接続されている。モータECU156はインバータ152を制御することによって、バッテリ150から三相コイル124に適切な周波数で適切な電流値の交流電流を供給し、これによってMG1の動作を制御している。
【0030】
MG2も、MG1と同様の交流同期電動機であり、外周面に複数の永久磁石132を有するロータ133と、回転磁界を形成する三相コイル134が巻回されたステータ135などから構成されている。MG2のロータ133はプラネタリギア140のリングギア軸147に結合され、ステータ135はケース138に固定されている。また、リングギア軸147にはロータ133の回転角度を検出するレゾルバ136が設けられている。MG2は、インバータ154を介してモータECU156に接続され、モータECU156は、インバータ154を制御することによってMG2の動作を制御している。
【0031】
ハイブリッド車両100には、車両全体の制御を司るハイブリッドECU160が搭載されている。ハイブリッドECU160は、CPUや、RAM、ROM、A/D変換器、D/A変換器、タイマなどがバスを介して相互にデータをやり取り可能に接続された周知のマイクロコンピュータである。ハイブリッドECU160は、アクセルポジションセンサ162や、ブレーキスイッチ164、あるいはバッテリ150などの種々の情報を検出して車両全体としての運転条件を決定し、これに基づいてエンジンECU260およびモータECU156が、それぞれエンジン200およびMG1,MG2の動作を制御している。
【0032】
A−2.ハイブリッド車両の動作の概要:
以上のような構成を有するハイブリッド車両100の動作原理、特にプラネタリギア140の機能について説明する。プラネタリギア140は、サンギア軸141,リングギア軸147,クランクシャフト243の3軸の中のいずれか2軸へ入出力される動力(すなわち、回転速度およびトルク)が決定されると、残余の1軸に入出力される動力(回転速度およびトルク)が決定される構造となっている。これら3軸間に入出力される回転速度およびトルクの関係は、共線図を用いて容易に求めることができる。
【0033】
図2(a)は、プラネタリギア140の3軸に接続された各ギアの回転速度および回転方向の関係を示す共線図である。ここで、縦軸は各ギア(サンギア142,リングギア148,プラネタリキャリア146)の回転速度、すなわち、エンジン200,MG2,MG1の回転速度を表している。一方、横軸は各ギアのギア比を表している。リングギア148の歯数に対するサンギア142の歯数をρとすると、プラネタリキャリア146に対応する縦軸は、サンギア142とリングギア148との間を1:ρに内分する座標位置にくる。
【0034】
今、プラネタリキャリア146すなわちエンジン200の回転速度をNe とし、リングギア148すなわちMG2の回転速度をNr とする。図2(a)に示した共線図上で、プラネタリキャリアを表す座標軸Cに回転速度Ne をプロットし、リングギアを表す座標軸Rに回転速度Nr をプロットして、両プロット点を直線で結ぶ。このような直線を考えると、サンギア142すなわちMG1の回転速度Ns は、得られた直線とサンギアを表す座標軸Sとの交点の座標として求めることができる。このような直線は動作共線と呼ばれる。このように、プラネタリキャリア146,リングギア148,サンギア142の中のいずれか2つの回転速度が決定されれば、共線図上に2つの座標点をプロットして両プロット点を結ぶ動作共線を考えることにより、他の1つの回転速度を求めることができる。これは、次のようなことを意味している。今、車軸に接続されたリングギア148をある回転速度で回転させようとするとき、MG1に接続されたサンギア142の回転速度の選び方によって、プラネタリキャリア146の回転速度(すなわちエンジン200の回転速度)を任意に選択することが可能である。
【0035】
次に、プラネタリギア140の3軸間に入出力されるトルクの関係について説明する。共線図上でトルクの関係を求めるには、動作共線をあたかも剛体のように扱って、トルクを剛体に作用する力のように扱う。例えば、エンジン200がトルクTe を発生し、駆動輪172からトルクTr を出力する場合を考える。駆動輪172から出力するトルクは、動作共線上では座標軸R上にかかる反力トルクTr として表れる。
【0036】
今、座標軸Cの位置で動作共線に下からトルクTe を作用させる。そして、図2(a)に示すように、このトルクTe が、座標軸S上と座標軸R上とに分配されて作用していると考える。ここで、座標軸S上にかかるトルクをトルクTesとすると、トルクTesは、
Tes=Te・ρ/(1+ρ) …(1)
となり、また座標軸R上にかかるトルクをトルクTerとすると、トルクTerは、
Ter=Te/(1+ρ) …(2)
として表される。
【0037】
今、駆動輪172からトルクTr を出力しようとする場合、エンジン200からはトルクTerが分配されるから、不足分のトルクTr −TerをMG2から出力してやればよい。これを、動作共線上でトルクの釣り合いを考えることにより、次のように求めることもできる。先ず、駆動輪172からトルクTr を出力する場合、動作共線上では、座標軸Rの位置に反力トルクTr がかかる。そこで、座標軸R上で、エンジン200から分配されたトルクTerと、反力トルクTr と、MG2の出力トルクとを釣り合わせるために、MG2が出力すべきトルクTm2は、Tm2=Tr −Terと求めることができる。
【0038】
また、座標軸S上での釣り合いを考えれば、MG1が出力すべきトルクTm1を求めることができる。すなわち、座標軸Sには、エンジン200から分配されるトルクTesしかかかっていないから、MG1からは、これと同じ値のトルクを逆方向に出力してやればよい。図2では、MG1、MG2がそれぞれ発生するトルクは、白抜きの矢印で表されている。
【0039】
ここで、図2(a)の共線図の座標軸Sに示されているように、MG1の回転方向とトルクTm1の向きとは逆方向となっている。これは、MG1が発電機として動作していることを表している。また、座標軸Rに示されているように、MG2の回転方向とトルクTm2の向きとは同じ向きとなっている。これは、MG2が電動機として動作していることを表している。すなわち、図2(a)の共線図で表された動作状態は、MG1で発電しつつ、MG2で電力を消費している状態となっている。図2(a)の場合に限らず、MG1、MG2の回転速度と発生トルクとは、動作共線によって定まる所定の関係が成り立っており、通常の運転状態では、MG1で発電した分だけMG2で消費される関係が成り立つ。これを換言すれば、プラネタリギア140とMG1およびMG2は、次のようなトルク変換の機能を有していると考えることもできる。すなわち、リングギア148から、回転速度Nr でトルクTr を出力しなければならないとき、このときの仕事率(=回転速度×トルク)と等しい仕事率となるような回転速度およびトルクでエンジン200を運転しておきさえすれば、プラネタリギア140とMG1およびMG2の機能によって、回転速度とトルクをそれぞれNr およびTr に変換してリングギア148から出力することが可能と考えることもできる。ここで仕事率とは、単位時間あたりにする仕事、あるいは単位時間あたりに出力するエネルギである。
【0040】
次に、MG2の有するアシスト機能について説明する。先ず、リングギア148から出力するべきトルクTr がdTr だけ増加した場合を考える。このとき、座標軸Rに加わる反力トルクも増加するから、エンジンの出力トルクTe を、この反力トルクと釣り合うまで増加させればよい。しかし、エンジンが最大トルクで運転されているなど、トルクを増加させる余裕が残っていない場合は、MG2から出力するトルクを増加させることによって、座標軸R上でのトルクの釣り合いを取ることになる。図2(b)は、このように、エンジンの出力トルクTe はそのままに、MG2の出力トルクを増加させて、座標軸R上でのトルクを釣り合わせている様子を概念的に表している。図示した例では、反力トルクがdTr だけ増加していることに対応して、MG2の出力トルクをTasだけ増加させて、トルクの釣り合いを取っている。MG2の出力トルクを増加分は、MG1での発電によって賄うことはできないから、増加分の電力はバッテリ150に蓄えられた電力から供給されることになる。本明細書中では、このように、バッテリ150に蓄えられた電力を用いてMG2からトルクを出力することにより、エンジン200が出力している以上の動力を駆動軸に伝える機能を、「MG2のアシスト機能」と呼ぶ。エンジンが出力可能なトルクには限界があるから、アシスト機能を用いれば、駆動軸に対して更に大きな動力を出力することが可能となる。
【0041】
A−3.可変圧縮比エンジンの構成:
次に、圧縮比を変更可能なエンジン200の構成について説明する。図3は、本実施例のエンジン200の構成を概念的に示した説明図である。図示されているように、エンジン200は、大きくは、シリンダヘッド220と、シリンダブロックASSY230と、メインムービングASSY240と、吸気通路250と、排気通路258と、前述したエンジンECU260などから構成されている。
【0042】
シリンダブロックASSY230は、シリンダヘッド220が取り付けられるアッパーブロック231と、メインムービングASSY240が収納されているロアブロック232とから構成されている。また、アッパーブロック231とロアブロック232との間にはアクチュエータ233が設けられており、アクチュエータ233を駆動することで、アッパーブロック231をロアブロック232に対して上下方向に移動させることが可能となっている。また、アッパーブロック231の内部には円筒形のシリンダ234が形成されている。
【0043】
メインムービングASSY240は、シリンダ234の内部に設けられたピストン241と、ロアブロック232の内部で回転するクランクシャフト243と、ピストン241をクランクシャフト243に接続するコネクティングロッド242などから構成されている。これらピストン241、コネクティングロッド242、クランクシャフト243はいわゆるクランク機構を構成しており、クランクシャフト243が回転するとそれにつれてピストン241がシリンダ234内で上下方向に摺動し、逆に、ピストン241が上下に摺動すればクランクシャフト243がロアブロック232内で回転するようになっている。シリンダブロックASSY230にシリンダヘッド220を取り付けると、シリンダヘッド220の下面側(アッパーブロック231に接する側)とシリンダ234とピストン241とで囲まれた部分に燃焼室が形成される。従って、アクチュエータ233を用いてアッパーブロック231を上方に移動させれば、これに伴ってシリンダヘッド220も上方に移動して燃焼室内の容積が増加するので、圧縮比を小さくすることができる。逆に、アッパーブロック231とともにシリンダヘッド220を下方に動かせば、燃焼室内の容積が減少して圧縮比を大きくすることができる。
【0044】
シリンダヘッド220には、燃焼室内に空気を取り入れるための吸気ポート223と、燃焼室内から排気ガスを排出するための排気ポート224とが形成されており、吸気ポート223が燃焼室に開口する部分には吸気バルブ221が、また、排気ポート224が燃焼室に開口する部分には排気バルブ222が設けられている。吸気バルブ221および排気バルブ222は、ピストン241の上下動に合わせて、それぞれカム機構によって駆動される。こうしてピストンの動きに同期させて吸気バルブ221および排気バルブ222を、それぞれ適切なタイミングで開閉すれば、燃焼室内に空気を吸入したり、あるいは燃焼室内から排気ガスを排出することができる。また、シリンダヘッド220には、燃焼室内に形成された混合気に火花を飛ばして点火するための点火プラグ227も設けられている。
【0045】
シリンダヘッド220の吸気ポート223には、外気をシリンダヘッド220まで導くための吸気通路250が接続されており、吸気通路250の上流側端部にはエアクリーナ251が設けられている。燃焼室内に吸入される空気は、エアクリーナ251でゴミなどの異物を取り除かれた後、吸気通路250、吸気ポート223を経由して燃焼室に流入する。吸気通路250には、スロットルバルブ252や燃料噴射弁255などが設けられており、電動アクチュエータ253でスロットルバルブ252の開度を制御すれば、燃焼室内に流入する空気量を制御することができる。燃料は、燃料噴射弁255から吸気ポート223に向かって噴射される。噴射された燃料噴霧は、一部が吸気ポート223内で気化した状態で、残りは燃料噴霧あるいは燃料液膜の状態で燃焼室内に流入した後、燃焼室内で気化しつつ空気と混合して混合気を形成する。また、吸気通路250には吸気圧センサ256が設けられており、吸気通路内の圧力を検出することが可能となっている。
【0046】
シリンダヘッド220の排気ポート224には排気通路258が接続されており、燃焼室から排出された排気ガスは、排気通路258によって外部に導かれて放出される。
【0047】
圧縮比を切り換えるための制御は、エンジンECU260が司っている。エンジンECU260に内蔵されたROMには、エンジンに要求されるトルクとエンジン回転速度とをパラメータとするマップの形式で、運転条件に応じた圧縮比が設定されている。図4は、こうした圧縮比のマップを概念的に示した説明図であり、エンジンに要求されたトルクが閾値となるトルクTthよりも小さい場合には、エンジンは高圧縮比に設定され、逆に閾値トルクよりも大きい場合には、エンジンは低圧縮比に設定される。尚、図4では、圧縮比は高圧縮比および低圧縮比の二段階に切り換えるものとしているが、もちろん、より多くの圧縮比に切り換えることも可能である。
【0048】
エンジンECU260は、クランクシャフト243に設けられたクランク角センサ261の出力に基づいて、エンジン回転速度を検出する。また、エンジンが出力すべき要求トルクについては、ハイブリッドECU160から指示を受ける。エンジンECU260は、こうして得られた要求トルクとエンジン回転速度とに基づいて、図4に示すマップから設定すべき圧縮比を読み出し、アクチュエータ233を駆動することによってエンジン200の圧縮比を設定する。こうすれば、大きなトルクを出力する必要があるときには、圧縮比を低く設定することによってノッキングの発生を回避しつつ十分なトルクを発生させ、逆に、出力すべきトルクが小さいときには、圧縮比を高くすることでエンジンを高い熱効率で運転する。
【0049】
こうした圧縮比の切り換えの他にも、エンジンECU260は、クランクシャフト243に設けられたクランク角センサ261や、吸気圧センサ256などから必要な情報を取り込んで、点火プラグ227、燃料噴射弁255、電動アクチュエータ253などを駆動することにより、エンジン200全体の動作を制御している。
【0050】
上述したように、エンジン200は運転条件に応じて圧縮比を切り換えることが可能であり、これによって、熱効率と最大出力とを共に向上させることが可能である。とはいえ、圧縮比を切り換えるためには、ある程度のエネルギが必要であり、従って、頻繁に切り換えたのでは、このために大きなエネルギを消費して、エンジン全体としての効率が低下してしまう。更に、圧縮比の切り換えには、ある程度の時間が掛かるので、頻繁に圧縮比を切り換えたのでは、エンジンの操作者に違和感を与えることも懸念される。加えて、圧縮比が異なればエンジンの運転条件も異なるから、エンジンの出力も異なっているのが通常である。従って、圧縮比を頻繁に切り換えたのでは、出力の違いが操作者に違和感を与えるおそれがあり、これを回避するために複雑な制御をしなければならないことも考えられる。本実施例のハイブリッド車両100では、プラネタリギア140の減速比(リングギア軸147の回転速度に対するクランクシャフト243の回転速度の比)を適切に設定することで、エンジン200の有するこうした課題を効果的に解決している。以下、これについて説明する。
【0051】
B.運転制御の概要:
図5は、上述したハイブリッド車両100において、エンジン200、MG1、MG2の動作を制御することで、車両の運転状態を制御する処理の流れを示したフローチャートである。かかる処理は、主にハイブリッドECU160によって実行される。以下、図5のフローチャートに従って説明する。
【0052】
運転制御を開始すると、ハイブリッドECU160は先ず初めに、車両およびエンジンの運転状態を検出する処理を行う(ステップS100)。車両の運転状態としては、アクセルペダルの踏み込み量およびリングギア軸147の回転速度Nr を使用する。アクセルペダルの踏み込み量は、アクセルペダルに設けられたアクセルポジションセンサ162を用いて検出することができる。リングギア軸147の回転速度Nr は、MG2に設けられたレゾルバ136を用いて検出することができる。図1に示したように、リングギア軸147と車軸170とはチェーンベルト174によって接続されており、互いの回転速度は比例関係にあるので、検出したリングギア軸147の回転速度から車速を算出することが可能である。また、エンジンの運転状態としては、エンジン回転速度Ne を検出する。前述したように、エンジン回転速度Ne は、クランク角センサ261の出力から算出することが可能である。
【0053】
次いで、アクセルペダルの踏み込み量とリングギア軸147の回転速度Nr とに基づいて、車両に対する要求トルクTrvを算出する処理を行う(ステップS102)。ここで、車両に対する要求トルクTrvとは、車両の運転者の要求に応じて、リングギア軸147から出力すべきトルクである。車両に対する要求トルクTrvは、次のようにして算出する。
【0054】
アクセルペダルは、車両の運転者が出力トルクが足らないと感じたときに踏み込まれるものであるから、アクセルペダルの踏み込み量(アクセルポジションセンサ162の出力)は運転者の欲しているトルク(すなわち車両に対する要求トルクTrv)を反映したものとなっている。更に、アクセルペダルの操作量は、車両の走行速度(すなわちリングギア軸147の回転速度)によっても少しずつ異なっている。そこで、アクセルペダルの踏み込み量とリングギア軸の回転速度Nr とをパラメータとして、車両の運転者が要求するトルクを予め実験的に求めておき、マップの形式でハイブリッドECU160のROMに記憶しておく。ステップS102では、こうしたマップを参照することによって、車両に対する要求トルクTrvを算出する。
【0055】
こうして車両に対する要求トルクTrvが求められたら、エンジンに対する要求トルクTreを算出する(ステップS104)。ここで、エンジンに対する要求トルクTreとは、リングギア軸147から要求トルクTrvを出力するために、エンジン200が出力しなければならないトルクである。エンジンに対する要求トルクTreは次のようにして算出する。先ず、リングギア軸147の回転速度は現状の回転速度Nr から急には変わることができないから、車両に対して要求トルクTrvが要求されたと言うことは、とりもなおさず、リングギア軸から仕事率Trv×Nr で動力を出力するべく(換言すれば、単位時間あたりにTrv×Nr のエネルギを出力するべく)要求されていることに等しい。ここで、図2を用いて前述したように、プラネタリギア140とMG1、MG2とを用いれば、エンジン200の出力をトルク変換してリングギア軸147から出力することができるから、エンジン200からは仕事率Trv×Nr で動力を出力しておけば足りる。そして、エンジンの回転速度も現在の回転速度Ne から急には変わることができないから、結局、リングギア軸147から要求トルクTrvを出力するためには、エンジン200からは、(Trv×Nr )/Ne のトルクを出力しておけばよいことになる。このことからエンジン要求トルクTreは、
Tre=(Trv×Nr )/Ne
によって算出するできることが分かる。尚、上式中に含まれるNr /Ne は、プラネタリギア140の減速比の逆数を表している。従って、回転速度Ne およびNr から減速比を求めるのではなく、例えば機械的な接点などを用いて減速比の設定を検出し、エンジン要求トルクTreを算出することも可能である。図5のステップS104では、以上のようにしてエンジン要求トルクTreを算出する。
【0056】
こうして算出したエンジンに対する要求トルクTreに基づいて、実際にエンジン200からを出力するトルクを設定し(ステップS106)、エンジンの出力トルクの設定に合わせて、MG1およびMG2の運転状態(すなわち、それぞれのモータでの回転速度と発生トルク)を設定する処理を行う(ステップS108)。詳細には後述するが、本実施例のハイブリッド車両100は、こうして、エンジンに対する要求トルクTreに基づいて、エンジン200が出力するトルクを設定するとともに、MG1およびMG2の運転状態を設定することにより、エンジン200の圧縮比を適切に切り換えることが可能となっている。
【0057】
次いで、エンジン200を制御することにより、設定したトルクを出力するとともに、MG1およびMG2をそれぞれ設定された運転状態で運転する処理を行う(ステップS110)。前述したように、エンジン200の具体的な制御はエンジンECU260が司っている。エンジンECU260は、エンジン200が現在の回転速度で、設定されたトルクを出力するように、スロットルバルブ252の開度や、燃料噴射弁255、点火プラグ227の駆動タイミング、更には圧縮比などの制御を行う。また、MG1およびMG2の具体的な制御はモータECU156によって行われる。これらモータの回転速度は印加する交流電流の周波数によって、また、モータが発生するトルクは印加する電流値によって制御することが可能であり、モータECU156は、MG1およびMG2に供給される交流電流の周波数と電流値とが適切な値となるよう、インバータ152、154を制御することにより、MG1とMG2とを設定された運転状態で運転する。こうして、ハイブリッドECU160の制御の下で、エンジンECU260およびモータECU156が、それぞれエンジン200とMG1とMG2とを適切に制御することによって、車両の運転者の要求に応じた要求トルクTrvがリングギア軸147から出力される。
【0058】
以上のようにして、エンジン200とMG1およびMG2を適切に制御し、運転者が車両に対した要求した要求トルクTrvをリングギア軸147から出力したら、運転者によって車両の停止が指示されたか否かを判断する(ステップS112)。停止する旨の指示がされていない場合は、ステップS100に戻り、車両の停止が指示されるまで上述した一連の処理を繰り返す。
【0059】
C.圧縮比切り換え制御:
次に、上述した運転制御ルーチン中で、エンジン200の圧縮比を適切に切り換えるために行うエンジン出力トルク設定処理(図5のステップS106)およびモータ運転条件設定処理(図5中のステップS108)について説明する。図6は、エンジン出力トルク設定処理の流れを示したフローチャートである。かかる処理は、主にハイブリッドECU160によって実施される。以下、フローチャートに従って説明する。
【0060】
エンジン出力設定処理を開始すると、先ず初めに閾値トルクTthを取得する処理を行う(ステップS200)。図4に示したように、本実施例では、閾値トルクTthはエンジン回転速度に応じて設定されている。そこでステップS200では、図4に示すような、エンジンECU260内のROMに記憶されたマップを参照することにより、図5に示した運転制御ルーチン中で検出されたエンジン回転速度に対応する閾値トルクTthを取得する。
【0061】
次いで、こうして取得した閾値トルクTthと、運転制御ルーチン中で算出されたエンジンに対する要求トルクTreとの大小関係を比較する(ステップS202)。エンジンに対する要求トルクTreが閾値トルクより小さい場合は(ステップS202:yes)、要求されているトルクはそれほど大きなものではいことから、エンジンを高圧縮比に設定してもノッキングが発生することはないと考えることができる。そこで、エンジン200の圧縮比を高圧縮比に設定するよう、エンジンECU260に対して指示を出した後(ステップS204)、エンジン200の出力トルクを、要求トルクTreと同じ値に設定する(ステップS218)。
【0062】
一方、ステップS202において、エンジンに対する要求トルクTreが閾値トルクTthよりも大きいと判断された場合は(ステップS202:no)、エンジン200を高圧縮比のまま運転したのではノッキングが発生してしまう懸念がある。かと言って、単に圧縮比を低圧縮比に切り換えることとしたのでは、圧縮比の切り換えが頻繁に行われ、その結果、前述した種々の弊害を招いてしまうおそれがある。本実施例では、こうした点に鑑みて、ステップS202で「no」と判断された場合は、次のような処理を行う。
【0063】
先ず、エンジンに対して要求されている馬力PSrqを算出する(ステップS206)。馬力はトルクと回転速度とを乗算することで求めることができるから、現在のエンジン回転速度Ne とエンジンに対する要求トルクTreとを乗算することで、エンジンに要求されている馬力PSrqを算出することができる。
【0064】
次いで、エンジン200が、要求馬力PSrqを高圧縮比のまま出力可能か否かを判断する(ステップS208)。かかる処理の内容について、図7を参照しながら説明する。図7は、エンジン回転速度を横軸に、要求トルクを縦軸にとって、エンジン200の圧縮比が高圧縮比で運転される領域(高圧縮比領域)と低圧縮比で運転される領域(低圧縮比領域)とを概念的に示した説明図である。図7中で破線で示した4つの曲線a,b,c,dは、それぞれ馬力一定、すなわちエンジン回転速度と要求トルクとの乗算値が一定値となる曲線を例示したものである。例えば、エンジンに要求されている馬力PSrqが、図7中の曲線bで表される値であるとする。この場合、エンジン回転速度を高めてやると、出力すべきトルクは曲線bに沿って次第に低くなるから、エンジン回転速度を所定回転速度以上に高めてやれば、エンジンを高圧縮比に保ったまま要求馬力PSrqを出力することが可能である。一方、より高い馬力が要求され、例えば、図7中の曲線dで表されるような馬力が要求されている場合は、曲線dは高圧縮比領域をよぎらないので、エンジンの回転速度を如何に高めても、高圧縮比のままでは要求された馬力を出力することはできない。従って、この場合は、エンジンの圧縮比を低圧縮比に切り換えてやる必要がある。
【0065】
また、エンジンに要求された馬力が、図7中の曲線cで表されるような値である場合は、図中に斜線を付して示したような高回転で且つ高トルクの領域でエンジンを運転してやれば、圧縮比を高圧縮比に設定したままでも、要求された馬力を出力することができる。しかし、エンジンをこのように高回転且つ高トルクで運転すると、大きな騒音が発生してしまう。そこで本実施例では、こうしたことを避けるため、減速比を大きくしてエンジン回転速度を高めた結果、エンジンの運転条件が図7中で斜線を付した領域内に入ってしまう場合には、減速比を変更せずに、エンジンの圧縮比を低圧縮比に切り換えてやる。こうすれば、エンジンを比較的低い回転速度で運転することができるので、大きな騒音が発生することを回避することが可能となる。あるいは簡便に、エンジンに要求されたトルクTreが閾値トルクTthを超えたときのエンジン回転速度が、所定の回転数より高い場合には、圧縮比を低圧縮比に切り換えることとしても良い。
【0066】
尚、本実施例では、図7中に斜線で示されているように、要求トルクの値に関わらずエンジン回転速度が所定値以上とならないように、減速比の値が制限されている。こうすることで、エンジン200が許容された回転速度以上に高回転となることが回避されている。
【0067】
このように、エンジンに対して要求されている馬力PSrqが、図7の曲線aあるいは曲線bで表されるような馬力である場合は、エンジンの回転速度を高めてやることで、エンジンを高圧縮比に設定したまま、要求馬力PSrqを出力することができる。これに対して、要求されている馬力PSrqが、図7の曲線cあるいは曲線dで表されるような馬力である場合は、エンジンを低圧縮比に切り換えない限り、要求馬力PSrqを出力することはできない。以上の説明から明らかなように、エンジンを高圧縮比に設定したままで対応可能か否かは、要求馬力PSrqの値に応じて予め決定しておくことが可能である。図6に示したエンジン出力トルク設定処理中のステップS208では、要求馬力PSrqと所定の閾値とを比較して、要求馬力PSrqの方が小さければ、高圧縮比のまま対応可能と判断し、そうでなければ、高圧縮比のままでは対応不可能と判断する。
【0068】
そして、ステップS208において、高圧縮比では対応不可能と判断された場合は(ステップS208:no)、エンジン200の圧縮比を低圧縮比に設定した後(ステップS216)、エンジンの出力トルクを要求トルクTreと同じ値に設定する(ステップS218)。具体的には、エンジンECU260に対して、エンジン200の圧縮比を低圧縮比に設定するとともにトルクTreを出力するよう、ハイブリッドECU160から指示を出す。
【0069】
一方、ステップS208において、高圧縮比で対応可能と判断された場合は(ステップS208:yes)、エンジンに要求された馬力PSrqを高圧縮比のままで出力するための、エンジンの出力トルクとエンジン回転速度とを算出する(ステップS210)。かかる処理の内容について、再び図7を参照しながら説明する。
【0070】
今、エンジン200が、図7中に白抜きの星印で示した条件で運転されているときに、図中に破線の星印で示した条件まで、エンジンに対する要求トルクが増加したものとする。増加後の要求トルクは閾値トルクTthより大きいので(図6のステップS202:no)、エンジンに対する要求馬力PSrqを算出する(図6のステップS206)。ここでは、算出した要求馬力PSrqに対応する等馬力線が、図7中の曲線bであったものとする。前述したように、曲線bは高圧縮比で対応可能な曲線であり、エンジン回転速度を高めてやることで高圧縮比に設定したまま、要求馬力PSrqを出力可能である(図6のステップS208:yes)。そこで、エンジンの運転条件を曲線bに沿って移動させ、要求トルクが閾値トルクTthと等しくなるまでエンジン回転速度を上昇させる。こうして得られた新たな運転条件で運転してやれば、要求された馬力PSrqをエンジン200から出力することができる。あるいは、要求トルクが閾値トルクTthよりも所定トルクだけ小さな値となるように、曲線bに沿ってエンジン回転速度をより高い値に設定することとしても良い。図7中に示した黒い星印は、こうして定めた新たな運転条件を示している。図6中のステップS210では、以上のようにして、エンジンの目標トルクTteおよび目標回転速度Nteを決定する処理を行う。
【0071】
こうして、高圧縮比の状態で要求馬力PSrqを出力可能な新たな運転条件が決定されたら、エンジン200の圧縮比を高圧縮比とした後(ステップS212)、エンジン200の出力トルクを目標トルクTteに設定する(ステップS214)。具体的には、ハイブリッドECU160からエンジンECU260に対して、エンジン200の圧縮比を高圧縮比に設定するとともに、トルクTteを出力するよう指示を出す。
【0072】
以上のようにして、エンジン200の圧縮比と出力トルクとを設定したら、図6に示したエンジン出力トルク設定処理を抜けて、図5の運転制御ルーチンに復帰する。
【0073】
運転制御ルーチンでは、エンジン出力トルク設定処理から復帰すると、続いて、2つのモータの運転条件を設定する処理を開始する(図5のステップS108)。図8は、かかるモータ運転条件設定処理の流れを示すフローチャートであり、前述のエンジン出力トルク設定処理と同様に、主にハイブリッドECU160によって実施される。以下、フローチャートに従って説明する。
【0074】
モータ運転条件設定処理を開始すると、先ず初めに、要求トルクTreと出力トルクTteとが一致しているか、すなわち、図5に示した運転制御ルーチン中でエンジンに対して要求されたトルクTreと、図6に示したエンジン出力トルク設定処理中で設定されたエンジンの目標トルクTteとが一致しているか否かを判断する(ステップS300)。エンジンの目標とする出力トルクTteが、エンジンに対する要求トルクTreと異なっているということは、図7を用いて前述したように、減速比が変更されて、エンジンの運転条件が等馬力線に沿って変更されていることを意味している。逆に、目標の出力トルクTteが、エンジンに対する要求トルクTreと一致しているということは、こうした操作が行われていないことを意味している。そこで、要求トルクTreと目標トルクTteとが一致する場合は(ステップS300)、MG1およびMG2の回転速度を、それぞれ現状の回転速度Nm1、Nm2に設定し(ステップS302)、次いで、それぞれのモータでの出力トルクTm1、Tm2を設定する(ステップS310)。具体的には、前述した(1)式および(2)に従って出力トルクTm1、Tm2を算出した後、ハイブリッドECU160からモータECU156に対して、MG1およびMG2に印加すべき交流電流の周波数と電流値とを設定する。
【0075】
一方、ステップS300において、エンジンの目標トルクTteが要求トルクTreと一致していないと判断された場合は(ステップS300:no)、図7を用いて説明したように、エンジンの運転条件が等馬力線に沿って変更され、図中に黒い星印で示されるような新たな運転条件が設定されているものと考えられる。そこで、こうした新たな運転条件に対応するエンジンの目標回転速度Nteを取得する(ステップS304)。具体的には、新たな運転条件に対応する目標トルクTteおよび目標回転速度Nteは、図6に示したエンジン出力トルク設定処理中のステップS210において既に求められているので、目標回転速度Nteをメモリに記憶しておき、この値をメモリから読み出してやればよい。
【0076】
次いで、MG1の回転速度の目標値Ntsを算出する処理を行う(ステップS306)。MG1の目標の回転速度Ntsは、次のようにして算出する。前述したように、プラネタリギア140では、サンギア142、リングギア148、プラネタリキャリア146の中の、いずれか2つの回転速度が決定されると残余の回転速度が決定される。このうち、リングギア148は車軸170に接続されているので、リングギア148の回転速度は、現在の車速によって自ずから決まってしまう。また、プラネタリキャリア146はエンジンのクランクシャフト243に接続されているので、エンジンを目標回転速度Nteで運転しようとすると、プラネタリキャリア146の回転速度も自ずから決まってしまう。こうしてリングギア148およびプラネタリキャリア146の回転速度が決定されれば、残るサンギア142の回転速度も決定される。この関係を逆から見れば、MG1を駆動してサンギア142を適切な回転速度で回転してやれば、エンジンの回転速度を目標回転速度Nteに設定可能なことが了解される。
【0077】
こうしたMG1の回転速度の目標値Ntsは、前述した共線図を考えることにより、容易に求めることができる。図9は、共線図を用いてMG1の目標の回転速度Ntsを算出する様子を示した説明図である。図9(a)に示すように、初めはリングギア148、プラネタリキャリア146、サンギア142がそれぞれ回転速度Nm2 、Ne 、Nm1 で回転している。この状態から、エンジンの回転速度(すなわちプラネタリキャリア146の回転速度)を目標回転速度Nteに変更するためには、図9(b)に示すように、MG1の回転速度(すなわちサンギア142の回転速度)を回転速度Ntsに設定すればよい。リングギア148の回転速度は、現在の回転速度Nm2から急には変化することができないから、MG1を回転速度Ntsで回転させれば、エンジン200は目標回転速度Nteで運転されることになる。これを逆から見れば、次のように考えることもできる。すなわち、初めはエンジンの回転速度Ne がプラネタリギア140によって減速されて、回転速度Nr でリングギア軸147から出力されていたところを、プラネタリギア140での減速比を大きな値に変更することにより、リングギア軸147を回転速度Nr に保ったまま、エンジンの回転速度をNteまで高めたと考えることも可能である。
【0078】
図8のステップS306では、以上に説明したようにして、現在のリングギア148の回転速度(=MG2の回転速度Nm2)とエンジンの目標回転速度Nteとに基づいて、MG1の目標の回転速度Ntsを算出する処理を行う。
【0079】
こうして、エンジン200を目標回転速度Nteで運転させるための、MG1の回転速度Ntsが求められたら、求めた回転速度NtsをMG1の目標の回転速度として設定するとともに、MG2の目標の回転速度を、現在の回転速度Nm2に設定する(ステップS308)。
【0080】
次いで、図2の共線図を用いて説明した方法に従って、MG1およびMG2の出力トルクを設定する処理を行う(ステップS310)。簡単に説明すると、先ず、エンジン200が出力するトルクTteを、共線図上で座標軸Sと座標軸Rとに振り分ける。前述したように、座標軸Sには(1)式に従ってトルクTtes が振り分けられ、座標軸Rには(2)式に従ってトルクTter が振り分けられる。座標軸S上にかかるトルクを釣り合わせるためには、MG1を発電機として作動させて、トルクTtes と同じ大きさの負荷を加えてやればよい。こうしてMG1で発電した電力を用いて、MG2からトルクTm2を出力し、座標軸R上に振り分けられたエンジンのトルクTter をアシストしてやる。ここで、MG1で発生した電力を全てMG2に供給されるから、MG2の出力トルクTm2は、次式によって与えられる。
Tm2=Tm1・Nts/Nm2
こうして、MG2からトルクTm2を出力してやれば、エンジンから振り分けられたトルクTter と合わせたトルクはリングギア148に加わる反力トルクTr よりも大きくなるので、車両が次第に加速していくことになる。図8のステップS310では、こうしてMG1およびMG2の出力トルクTm1、Tm2をそれぞれ設定する処理を行う。
【0081】
以上のようにして求めたMG1およびMG2の回転速度および出力トルクに応じて、それぞれMG1およびMG2に印加すべき交流電流の周波数と電流値とを、ハイブリッドECU160からモータECU156に設定したら、図8に示したモータ運転状態設定処理を抜けて、図5に示す運転制御ルーチンに復帰する。
【0082】
本実施例のハイブリッド車両100においては、運転者が車両に対して要求している要求トルクTrvに基づいて、以上に説明したようにして、エンジンおよびMG1、MG2の運転状態を設定する。こうすることで、エンジン200の圧縮比を頻繁に切り換えることに伴って発生し得る種々の弊害の発生を回避することが可能となる。以下では、このことについて、図10を参照しながら説明する。
【0083】
今、エンジン200が、図10中に白抜きの星印で表された条件で運転されているものとして、エンジン200に対する要求トルクが、破線の星印で示した運転条件まで増加したものとする。破線の星印の運転条件は低圧縮比の領域に存在しているが、図6と図7とを参照しながら前述したエンジン出力設定処理、および、図8と図9を参照しながら前述したモータ運転条件設定処理を行うことにより、エンジン200は図10中で黒い星印で表された運転条件で運転される。すなわち、プラネタリギア140の減速比を大きな値に変更することにより、エンジン200は、エンジン回転数が高く且つ負荷が閾値トルクTthあるいは閾値トルクTthより少し低い運転条件で運転される。ここで、エンジンの負荷は、スロットルバルブ252を開閉するだけで変更することができ、エンジンの回転速度よりも迅速に変更することができるから、エンジン200の運転条件は、白抜きの星印の条件から黒い星印の条件へと、図10中に白抜きの矢印で示した経路を通って変化することになる。結局、エンジン200を、図10中で粗く右下がりの斜線を付した領域で運転しようとすると、プラネタリギア140の減速比が大きな値に変更されるために、実際には、エンジン200は、この領域ではなく高圧縮比領域で運転されることになる。このため、圧縮比の切り換え頻度を大きく抑制することが可能となる。
【0084】
尚、エンジンの回転速度を変更するには、負荷を変更する場合より時間がかかるとは言え、減速比を変更することでエンジン回転速度も速やかに変更することができる。従って、実際には、エンジン200の運転条件は白抜きの星印で示した運転条件から黒い星印の運転条件へと速やかに変更することができ、車両を速やかに加速することが可能である。
【0085】
また、エンジン200は、低圧縮比で運転した場合よりも高圧縮比で運転した方が熱効率が高いことから、こうした制御を行うことでエンジンの熱効率を更に向上させることも可能となる。
【0086】
D.変形例:
以上に説明した実施例には各種の変形例が存在する。以下では、これら変形例について簡単に説明する。
【0087】
(1)第1の変形例:
図2を用いて説明したように、本実施例のハイブリッド車両100では、MG2を用いてトルクをアシストすることが可能である。従って、エンジン200に対してトルクアップ要求があって、図11中で粗い右下がりの斜線を付した領域に入った場合には、エンジン200を高圧縮比領域で運転したまま、MG2からトルクをアシストすることとしても良い。モータは電流値を増加させると直ちに出力トルクが増加するので、MG2のアシスト機能を用いれば、トルクアップ要求に直ちに対応して、車両をより速やかに加速させることが可能となる。
【0088】
(2)第2の変形例:
上述した実施例では、エンジン200の出力はプラネタリギア140を介して車軸170に伝達され、プラネタリギア140はMG1およびMG2と組み合わされることで同時に無断変速機としても機能させている。もちろん、こうした構成に限定されることなく、周知の無断変速機を用いることも可能である。図12は、こうした第2の変形例の構成を例示した説明図である。
【0089】
図示されているように、第2の変形例では、エンジン200のクランクシャフト243に無断変速機300が接続され、無断変速機の出力軸175を介して負荷177が駆動される。上述した実施例のようにエンジン200を車両に搭載した場合には、出力軸175が車軸170に接続され、車両自体が負荷177となる。無断変速機としては、二組のプーリとベルトとを用いて構成する方式や、一組のディスクとロータとを用いて構成する方式など、種々の方式の無断変速機が知られているが、本変形例の無断変速機300としては、いずれの方式の変速機も適用することができる。
【0090】
無断変速機ECU302は、ハイブリッドECU160の制御の下で、無断変速機300の動作を制御している。ハイブリッドECU160は、負荷に対するトルクアップ要求があった場合には、無断変速機の減速比を大きな値に変更する。この結果、第2の変形例においても前述した実施例と同様に、エンジンの圧縮比が頻繁に切り換わることを効果的に抑制することが可能となる。
【0091】
(3)第3の変形例:
以上の説明においては、減速比は、連続的に変更可能であるものとして説明した。しかし、減速比は、必ずしも連続的に変更する必要はなく、例えばオートマチックトランスミッションなどのように、段階的にのみ変更可能な場合にも同様に適用することができる。図13は、減速比を段階的にのみ変更可能な場合に適用する原理を示す説明図である。
【0092】
今、エンジン200が、図13中で白抜きの星印で示した運転条件で運転されているところに、破線の星印の運転条件までトルクアップ要求があったものとする。破線の星印の運転条件は、図示されているように、低圧縮比領域に存在している。そこで、減速比を一段階だけ大きく(すなわち、シフトダウン)して、曲線bに沿って運転条件を移動させる。このように一段階だけシフトダウンさせると、エンジンの運転条件は、図中に斜線を付した星印の運転条件に移動することになる。こうして移動した運転条件が高圧縮比領域に入っていれば、新たな運転条件でエンジン200を運転すればよいが、高圧縮比領域に入っていない場合は、更にもう一段階シフトダウンさせる。図13に示した例では、斜線を付した星印は低圧縮比領域にあるので、もう一段階のシフトダウンを行うことで、エンジン200の運転条件を、高圧縮比領域に存在する黒い星印の運転条件まで移動させる。このように、減速比が段階的にのみ変更可能な場合でも、何段階かの変更を行うことにより、運転条件を高圧縮比の領域に移動させることができる。尚、説明の便宜上、ここでは、運転条件が高圧縮比領域に入ったか否かを確認しながら、一段階ずつシフトダウンを繰り返すものとして説明したが、もちろん、必要なシフトダウン量を予め見積もっておき、一度のシフトダウンを行うことによって、運転条件を高圧縮比領域に移動させることとしても構わない。こうしてシフトダウンして運転条件を高圧縮比領域に移動させれば、圧縮比が頻繁に切り換わることを抑制することが可能となる。
【0093】
以上、各種の実施例について説明してきたが、本発明は上記すべての実施例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することができる。例えば、上述した実施例では、ハイブリッド車両は、プラネタリギアを用いたいわゆる機械分配式のハイブリッド車両であるものとしたが、電気分配式のハイブリッド車両にも同様に適用することができる。
【0094】
また、内燃機関の圧縮比を変更する機構としては、図3に示したように、ロアブロック232に対して、シリンダヘッド220とアッパーブロック231とを移動させるものに限らず、周知な種々の機構を適用することができる。例えば、吸気バルブ221あるいは排気バルブ222の開閉時期を変更することによって、内燃機関の圧縮比を実質的に変更するものであっても構わない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本実施例の動力出力装置を搭載したハイブリッド車両の構成を示す説明図である。
【図2】 エンジンが出力する動力と2つのモータ・ジェネレータで発生する動力との関係を示す共線図である。
【図3】 可変圧縮機構を搭載した内燃機関の構成を例示した説明図である。
【図4】 エンジンの回転速度と要求トルクとに応じてエンジンの圧縮比が切り換わる様子を概念的に示した説明図である。
【図5】 本実施例の運転制御ルーチンの流れを示すフローチャートである。
【図6】 運転制御ルーチンにおいてエンジンの出力トルクを設定する処理の流れを示したフローチャートである。
【図7】 エンジンに対する要求馬力に基づいて、エンジンの運転条件を設定する考え方を示した説明図である。
【図8】 運転制御ルーチンにおいてモータ・ジェネレータの運転状態を設定する処理の流れを示すフローチャートである。
【図9】 共線図を用いてMG1の目標の回転速度Ntsを算出する様子を示した説明図である。
【図10】 減速比を変更することでエンジンの圧縮比が頻繁に切り換わることを抑制することができる原理を示す説明図である。
【図11】 モータによるアシストを利用する第1の変形例を例示した説明図である。
【図12】 無断変速機に適用した第2の変形例を例示した説明図である。
【図13】 減速比を段階的にのみ切り換え可能な変速機に適用した第3の変形例において、圧縮比の切り換えを抑制する原理を示した説明図である。
【符号の説明】
100…ハイブリッド車両
122…永久磁石
123…ロータ
124…三相コイル
125…ステータ
126…レゾルバ
132…永久磁石
133…ロータ
134…三相コイル
135…ステータ
136…レゾルバ
138…ケース
140…プラネタリギア
141…サンギア軸
142…サンギア
144…プラネタリピニオンギア
146…プラネタリキャリア
147…リングギア軸
148…リングギア
150…バッテリ
152…インバータ
154…インバータ
156…モータECU
160…ハイブリッドECU
162…アクセルポジションセンサ
164…ブレーキスイッチ
170…車軸
172…駆動輪
174…チェーンベルト
175…出力軸
177…負荷
200…エンジン
220…シリンダヘッド
221…吸気バルブ
222…排気バルブ
223…吸気ポート
224…排気ポート
227…点火プラグ
230…シリンダブロックASSY
231…アッパーブロック
232…ロアブロック
233…アクチュエータ
234…シリンダ
240…メインムービングASSY
241…ピストン
242…コネクティングロッド
243…クランクシャフト
250…吸気通路
251…エアクリーナ
252…スロットルバルブ
253…電動アクチュエータ
255…燃料噴射弁
256…吸気圧センサ
258…排気通路
260…エンジンECU
261…クランク角センサ
300…無断変速機
302…無断変速機ECU

Claims (9)

  1. 圧縮した混合気を燃焼させて動力を発生させる内燃機関と、該内燃機関の出力軸からトルクを受け取って回転速度を変更した後に駆動軸から出力する変速機と、該内燃機関および該変速機の動作を制御する制御手段とを備える動力出力装置において、
    前記内燃機関は、前記混合気の圧縮割合を示す圧縮比を変更可能な内燃機関であり、
    前記変速機は、前記出力軸の前記駆動軸に対する回転速度の比率によって示される減速比を変更可能な変速機であり、
    前記制御手段は、
    前記圧縮比を変更するための閾値となる閾値トルクを記憶しておく閾値トルク記憶手段と、
    前記駆動軸から出力するべく要求された要求トルクを検出する要求トルク検出手段と
    を備えるとともに、
    前記要求トルクと前記減速比とに応じて定められ前記内燃機関が出力すべきトルクたる機関要求トルクが前記閾値トルクを超える場合には、該減速比の設定を大きな値に変更することによって、該機関要求トルクを該閾値トルク以下に抑制する手段であることを特徴とする動力出力装置。
  2. 請求項1記載の動力出力装置であって、
    前記変速機は、前記減速比の値を連続的に変更可能な変速機である動力出力装置。
  3. 請求項2記載の動力出力装置であって、
    前記制御手段は、前記機関要求トルクが前記閾値トルクを越える場合には、前記機関要求トルクを該閾値トルク以下の所定トルクに設定するとともに、前記駆動軸から出力するトルクが前記要求トルクに達するまで、前記変速機の減速比を増加させる手段である動力出力装置。
  4. 請求項1または請求項2記載の動力出力装置であって、
    前記内燃機関の回転速度を検出する回転速度検出手段を備え、
    前記制御手段は、前記検出した回転速度が所定の閾値回転速度よりも大きく、且つ、前記機関要求トルクが前記閾値トルクを超える場合には、前記内燃機関の圧縮比を変更する手段である動力出力装置。
  5. 請求項1または請求項2記載の動力出力装置であって、
    前記内燃機関の回転速度を検出する回転速度検出手段を備え、
    前記制御手段は、前記機関要求トルクが前記閾値トルクを越える場合には、前記機関要求トルクを該閾値トルク以下の所定トルクに設定するとともに、該内燃機関の回転速度が所定の許容回転速度を超えない範囲で、前記減速比を大きな値に変更する手段である動力出力装置。
  6. 請求項1または請求項2記載の動力出力装置であって、
    前記出力軸または前記駆動軸のいずれかに対してトルクを出力可能な電動機を備え、
    前記制御手段は、前記駆動軸から出力されるトルクが前記要求トルクに対して不足するトルクを出力するべく、前記電動機の制御を行う手段である動力出力装置。
  7. 圧縮した混合気を燃焼させて動力を発生させる内燃機関と、該内燃機関の出力軸からトルクを受け取って回転速度を変更した後、車軸に向けて出力する変速機と、該内燃機関および該変速機の動作を制御する制御手段とを備える車両において、
    前記内燃機関は、前記混合気の圧縮割合を示す圧縮比を変更可能な内燃機関であり、
    前記変速機は、前記出力軸の前記車軸に対する回転速度の比率によって示される減速比を変更可能な変速機であり、
    前記制御手段は、
    前記圧縮比を変更するための閾値となる閾値トルクを記憶しておく閾値トルク記憶手段と、
    前記車軸から出力するべく要求された要求トルクを検出する要求トルク検出手段と
    を備えるとともに、
    前記要求トルクと前記減速比とに応じて定められ前記内燃機関が出力すべきトルクたる機関要求トルクが前記閾値トルクを超える場合には、該減速比の設定を大きな値に変更することによって、該機関要求トルクを該閾値トルク以下に抑制する手段であることを特徴とする車両。
  8. 請求項7記載の車両であって、
    前記出力軸または前記車軸のいずれかに対してトルクを出力可能な電動機を備え、
    前記制御手段は、前記車軸から出力されるトルクが前記要求トルクに対して不足するトルクを出力するべく、前記電動機の制御を行う手段である車両。
  9. 圧縮比を変更可能な内燃機関と、該内燃機関の出力軸からトルクを受け取って回転速度を変更した後に駆動軸から出力する変速機と、該内燃機関および該変速機の動作を制御する制御手段とを備える動力出力装置の制御方法において、
    前記内燃機関の圧縮比を変更するための閾値となる閾値トルクを記憶しておく第1の工程と、
    前記駆動軸から出力するべく要求された要求トルクを検出する第2の工程と、前記要求トルクと前記変速機の減速比とに応じて定められ前記内燃機関が出力すべきトルクたる機関要求トルクが前記閾値トルクを超える場合に、該変速機を制御して該減速比の設定を大きな値に変更することにより、該機関要求トルクを該閾値トルク以下に抑制する第3の工程と
    を備えることを特徴とする制御方法。
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