JP4120058B2 - インクジェットプリンタ用ヘッド装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェットプリンタ用のヘッド装置に関し、さらに詳しくは圧電セラミックと電極材とを交互に積層してなる圧電板の圧電歪みにより振動板を介してインク圧力室に容積変動を生じさせてインク滴を飛翔させるようにしたインクジェットプリンタ用ヘッド装置(本明細書においては、単にヘッド装置と称する。)に関する。
【0004】
【従来の技術】
オンデマンド型インクジェットプリンタは、記録画像等の解像度や画質の飛躍的な向上を可能とするプリンタとして実用化されている。オンデマンド型インクジェットプリンタは、そのヘッド装置により所定のインク滴が所定の場所、時間の制御が行われて紙やフィルム等の適宜の記録媒体に飛翔されて着弾することによって画像等の記録が行われる。ヘッド装置には、インク滴を飛翔させる方法として、バブルジェット方式や圧電方式が採用されている。
【0005】
バブルジェット方式は、インク滴を飛翔させるノズル孔の近傍に位置してインクを瞬間的に気化させるヒータが設けられ、このヒータによってインクが気化する際の膨張圧力によりインク滴を飛翔させる方式である。また、圧電方式は、ノズル孔の近傍に設けられたインキ溜まり部に圧電素子を設置し、この圧電素子に発生する歪み変形によりインク溜まり部に発生する容積変化に伴う圧力によりインク滴を飛翔させる方式である。
【0006】
ヘッド装置には、種々の特性が要求されるが、最も基本的な特性としてインク滴の大きさを精度良くコントロール可能であること、インク滴をできるだけ短い時間の間隔で連続的に飛翔させるための周波数応答特性が挙げられる。また、ヘッド装置は、最近の傾向として、印字速度を上げるためにインク滴を飛翔させるための一色あたりのノズル数を増やす対応が図られるとともに、特に色再現性を改善する目的で色数も増える傾向になっている。さらに、ヘッド装置は、インク滴の大きさについて、そのサイズを小さくして単位面積当たりのインク滴数を増やすことによって記録画像等の解像度を上げる対応が図られている。
【0007】
ところで、圧電型ヘッド装置においても、上述した基本特性の向上を図るために種々の対策が講じられている。圧電型ヘッド装置には、例えば圧電素子として、印加された電界と同方向に発生する歪み変形を利用してインク滴を飛翔させるようにした圧電素子や、印加された電界と直交する方向に発生する歪み変形を利用してインク滴を飛翔させるようにした圧電素子等が用いられている。例えば特開平4−1052号公報には、印加された電界と直交する方向に発生する歪み変形を利用してインク滴を飛翔させる圧電素子を備えた圧電型ヘッド装置が開示されている。
【0008】
すなわち、この先願圧電型ヘッド装置100は、図20及び図21に示すように、インク滴を飛翔させる多数個のノズル孔101が形成されたノズルプレート102と、各ノズル孔101に対応して多数個のインク圧力室103が形成されたインク溜めプレート104と、振動板105とが積層構成されてなるヘッド構体106と、このヘッド構体106に組み合わされた基台107と、多数個の圧電板108等を備えて構成される。
【0009】
各圧電板108は、詳細を省略するが圧電セラミックと電極材とを交互に積層してなる圧電素子構体を基台107に接合した状態でダイヤモンドカッタ等によって所定幅に分割することにより形成される。各圧電板108は、図21に示すように、それぞれその一方側面の基端部を基台107に接着固定してなる。各圧電板108は、基台107に接着される領域が、この基台107との間にせん断歪みの発生を防止するように圧電歪みを発生しないような内部電極構造となっている。各圧電板108は、基台107に固定された状態において、自由端が振動板105にそれぞれ接合される。
【0010】
以上のように構成された圧電型ヘッド装置100には、プリンタ本体より記録画像等に基づく制御信号が所定の圧電板108に印加される。圧電型ヘッド装置100は、制御信号に基づいて圧電板108が選択的に駆動されて歪み変形動作が生じる。圧電型ヘッド装置100は、この選択された圧電板108の歪み変形動作によって振動板105が駆動されて、対応するインク圧力室103に圧力を加える。圧電型ヘッド装置100は、この圧力によってインク圧力室103からインクが押し出されて、ノズル孔101から飛翔させる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
圧電型ヘッド装置100においては、上述したように各インク圧力室103に対応位置してそれぞれ多数個の圧電板108が設けられており、これら圧電板108に制御信号を印加してその印加方向と直交する方向の歪み変形を生じさせて振動板105を駆動するようにしている。したがって、圧電型ヘッド装置100は、機械的強度を保持するために各圧電板108がある程度の幅寸法を以って構成されている。圧電型ヘッド装置100は、各圧電板108がその幅寸法を大きく形成されることによって横振動の固有振動数が下がり、駆動振動数内での横振動が発生して振動板105の駆動効率が低下するといった問題が生じる。
【0012】
また、圧電型ヘッド装置100においては、動作インク滴が安定した状態でノズル孔101から飛翔されるために、振動板105が各圧電板108によって均一な状態で駆動される必要がある。圧電型ヘッド装置100は、各圧電板108がその自由端部108aを平坦に形成されて振動板105と接触されている。したがって、圧電型ヘッド装置100は、圧電板108と振動板105とが接触面において互いに均一な状態で接触するためにそれぞれ高精度に形成されなければならない。
【0013】
さらに、圧電型ヘッド装置100は、上述したように各圧電板108が基台107との接着領域108bにおいて圧電歪みを発生することができないために、その長さに対する発生変位の効率が悪いといった問題がある。さらにまた、圧電型ヘッド装置100は、基台107に接合した状態においてダイヤモンドカッタ等によって圧電板108を横方向に1個ずつ分割形成するために、その加工時間が長くなって生産効率が悪くなるとともに、各圧電板108がそれぞれ矩形の短冊状にしか形成することができないといった制約がある。
【0014】
ところで、圧電型ヘッド装置100においては、各圧電板108の振動板105に対する接触面積が分断後の幅×圧電素子厚みで決定されている。圧電型ヘッド装置100は、振動板105の効率的な駆動或いはインク滴の吐出量の調整等を目的として各圧電板108の振動板105に対する接触面積を減らす場合に、各圧電板108の幅寸法を小さくして分断する必要がある。圧電型ヘッド装置100は、このように各圧電板108を小幅に分断して構成した場合に機械的強度が劣化することから、分断幅に制約があるといった問題がある。
【0015】
したがって、本発明は、各圧電板部がインク圧力室に精密に対応位置されてインク滴の飛翔が安定しかつ高精度に行われ加工効率の向上を図ったインクジェットプリンタ用ヘッド装置を提供することを目的に提案されたものである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成する本発明にかかるインクジェットプリンタ用ヘッド装置は、 圧電セラミックと電極材とを交互に積層してなる圧電板を、それぞれその一端側を固定端とするとともに他端側を自由端として所定のピッチを以って配列し、自由端をノズル孔に連設されたインク圧力室を密閉する振動板にそれぞれ対向位置させてなる。インクジェットプリンタ用ヘッド装置は、各圧電板が、圧電セラミックと電極材とを交互に積層してなる圧電素子構体に分割溝を形成して下端面を基台に固定される連結部を介して固定部側を一体化し、それぞれが所定の幅を有して所定のピッチを以って形成されるとともに振動板と対向位置する自由端に凸部が形成されて他の部位よりも幅狭とされた多数個の短冊状圧電板部によって構成される。インクジェットプリンタ用ヘッド装置は、最外側部に位置する圧電板部が、その外側面側にも圧電素子構体に対する分割溝形成を施して形成される。また、インクジェットプリンタ用ヘッド装置は、最外側部に位置する圧電板部が、他の圧電板部の幅寸法よりも大きな幅寸法を以って分割形成される。
【0017】
以上のように構成された本発明にかかるインクジェットプリンタ用ヘッド装置によれば、最外側部に位置する圧電板部が、その外側面側にも圧電素子構体に対する分割溝形成を施して形成されることにより、内側の圧電板部との対称性やピットが精密に保持されるとともに振動板を均一な状態で振動動作させてインク圧力室の容積変動が安定して大きさが一定のインク滴をノズル孔から飛翔させ、画像等の正確かつ精密な記録が行われるようにする。
【0018】
インクジェットプリンタ用ヘッド装置によれば、各圧電板の振動板との対向面を構成する自由端部に幅方向の凸部が形成されてそれぞれ幅狭に構成されることから、各圧電板と所定のピッチと大きさで形成された各インク圧力室との位置合わせが容易かつ正確に行われるとともに各圧電板が振動板に対して安定した状態で接触するようになる。したがって、インクジェットプリンタ用ヘッド装置は、各圧電板の歪み変位によって振動板を介して所定のインク圧力室の容積を変動させて高精度にインク滴の飛翔を行い、記録画像等の記録を行う。
【0019】
インクジェットプリンタ用ヘッド装置によれば、圧電素子構体がその連結端部を介して片持ち状態で基台に固定されることで各圧電板部の全長の大半が歪み変形動作に寄与することから、各圧電板部によって振動板を駆動する駆動効率の向上が図られる。また、インクジェットプリンタ用ヘッド装置は、各圧電板部の振動板との接触面を構成する自由端部を他の部位に対してそれぞれ幅狭に構成することで、全体の機械的強度を保持されつつ横振動の固有振動数が上がって駆動振動数内での横振動が抑制されて駆動効率の向上が図られるようにする。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。本発明を適用した実施の形態として図面に示したヘッド装置1は、詳細を後述するが上述した従来の圧電型ヘッド装置100と同様に、印加された電界と直交する方向に歪み動作が発生する多数個の圧電板部11によって振動板8を駆動してインク滴をノズル孔2から飛翔させて紙やフィルム等の適宜の記録媒体に着弾させ画像等の記録を行う圧電型ヘッド装置である。
【0021】
ヘッド装置1は、図1及び図2に示すように、インク滴を飛翔させる多数個のノズル孔2が形成されたノズルプレート3と、このノズルプレート3を一方主面に接合するとともに各ノズル孔2に連通するインク流路5aを有するインク圧力室5及びインク溜め室6等が形成されたインク溜めプレート7と、このインク溜めプレート7の他方主面に接合された振動板8等とによって構成されたヘッド構体9を備える。また、圧電型ヘッド装置1は、基台10と、この基台10に支持されるとともに後述するように多数個の圧電板部11を分割形成した圧電素子構体12とによって、上述したヘッド構体9の振動板8を駆動する圧電駆動部が構成されている。また、圧電型ヘッド装置1には、ノズルプレート3に数個乃至数百個のノズル孔2が設けられるとともに、これらノズル孔2に対応してインク溜めプレート7に数個乃至数百個のインク圧力室5が形成され、また圧電素子構体12に数個乃至数百個の圧電板部11が分割形成されてなる。
【0022】
圧電型ヘッド装置1は、インク溜め室6に供給されたインキが、このインク溜め室6から流路6aを介してインク圧力室5内に供給されて溜められる。圧電型ヘッド装置1は、プリンタ本体より記録画像等に基づく制御信号が所定の圧電板部11に印加されると、詳細を後述するようにこの圧電板部11に歪み変形動作が生じて対応するインク圧力室5に圧力を加える。圧電型ヘッド装置1は、この圧力によってインク圧力室5内に容積変動が生じてインク圧力室5から流路5aを介してインクが押し出され、ノズル孔2からインク滴を飛翔させる。
【0023】
ノズルプレート3は、多数個の精密なノズル孔2の加工を可能とするとともにインク液に対する化学的な耐久性を有する適宜の金属或いはプラスチック材料によって形成されている。ノズルプレート3には、例えばレーザ加工、エッチング加工或いはプレス等の機械加工を施して、インク滴を飛翔させる多数個のノズル孔2が形成される。ノズル孔2は、インク滴の飛翔状態に大きな影響が生じることから精密に加工形成され、一般に数μm乃至数十μmの内径を有する丸孔によって構成される。勿論、ノズル孔2は、丸孔に限定されるものではなく、インク滴の飛翔に適した形状であるとともに形成することが可能な形状であればよく、例えば楕円形、多角形、三日月形或いはハート形等の精密な加工が可能な適宜の形状に形成してもよい。
【0024】
インク溜めプレート7は、上述したようにインク溜め室6に対して流路6aを介して各ノズル孔2に対応する多数個のインク圧力室5が連通して形成されており、さらにこれらインク圧力室5が流路5aを介して各ノズル孔2に連通されている。インク溜めプレート7は、インク滴を精密かつ正確に飛翔させるために、インク圧力室5や各流路5a、6aがその形状や位置を精密に形成される。したがって、インク溜めプレート7は、精密な機械加工を可能とするとともにインク液に対する化学的な耐久性を有する適宜の金属或いはセラミック材、プラスチック材料等によって形成されている。
【0025】
インク溜めプレート7は、図2に示すようにノズルプレート3が接合される一方主面7aに複数個のインク溜め室6が凹設されるとともに、これらインク溜め室6が一方の主面7aに接合したノズルプレート3によって閉塞されてなる。また、インク溜めプレート7は、同図に示すように他方の主面7bに開口する多数個のインク圧力室5が凹設されるとともに、これらインク圧力室5が他方の主面7bに接合された振動板8によって閉塞されてなる。
【0026】
振動板8は、図2に示すようにインク溜めプレート7の他方主面7bにインク圧力室5を密閉するようにして接合される。振動板8は、後述するように圧電板部11の歪み変形動作に基づいて振動動作してインク圧力室5内に容積変動を生じさせる。振動板8は、圧電板部11の歪み変形動作に対して減衰をできるだけ小さくして振動動作するとともにインク液に対する化学的な耐久性を有する適宜の材料、例えばポリイミド系のフィルム材によって形成されている。
【0027】
ヘッド装置1は、上述したヘッド構体9に対して基台10の主面10a上に片持ち支持された圧電素子構体12が組み合わされる。基台10は、図示しないヘッドシャーシに支持されており、図2に示すように支持部10bを介してヘッド構体9をその主面10aと平行な状態で支持している。基台10は、ヘッド構体9の支持部材を構成するとともに、後述するように電極部が形成されることによって圧電素子構体12に対する給電部材としても機能する。
【0028】
圧電素子構体12は、例えばチタン酸ジルコン酸鉛系の材料からなるペースト状圧電材料と、例えば銀パラジウムペーストからなる導電材料とを所定の厚みで交互に積層してこれを焼成することによって製作される。勿論、圧電素子構体12は、他の適宜の圧電材料と導電材料とを用いて製作してもよい。また、圧電素子構体12には、図2に示すように、スクリーン印刷法等によって第1の電極13と第2の電極14とが所定の部分に交互に積み重ねられるようにして成膜形成されている。第1の電極13と第2の電極14とは、互いに向かい合う電極間でそれぞれ絶縁を保持されている。
【0029】
第1の電極13は、詳細を後述するが、図3及び図4に示すようにその下方部が圧電素子構体12の下端面12a(図5参照)まで延長されるとともにその上方部が圧電板部11の上端面11aに露呈されないようにしてそれぞれ形成されている。第1の電極13は、圧電素子構体12の下端面12aに形成される共通電極13aによって互いに共通接続されている。第1の電極13は、圧電素子構体12が基台10に固定された状態において、共通電極13aがこの基台10の主面10a上に形成した共通表面電極15と電気的に接続されて共通電極を構成する。第2の電極14は、詳細を後述するが、図3に示すようにその上方部が圧電板部11の上端面11aに露呈されて詳細を省略する個別電極16と接続されている。また、第2の電極14は、その下方部が連結部19とほぼ同一高さ位置とされてそれぞれ形成されている。第2の電極14は、後述するフレキシブル基板17に接続されて各圧電板部11に対応する個別電極を構成する。
【0030】
圧電素子構体12は、第1の電極13と第2の電極14とに所定の温度条件下で所定の向きの電圧を印加することによって、所定の向きに分極されて圧電特性が生成される。圧電素子構体12は、電圧が印加されると、この電圧の向きと大きさに応じた所定の方向に振動変位が発生する。圧電素子構体12においては、図2において向かい合う第1の電極13と第2の電極14とに直交する高さ方向の振動変位が発生する。
【0031】
圧電素子構体12は、各インク圧力室5に対して個別に容積変動を生じさせるために、詳細を後述するように所定のピッチと幅寸法を有する高さ方向の多数個の分割溝18を形成する分割溝形成加工が施されて多数個の圧電板部11が分割形成されてなる。分割溝18は、それぞれ圧電素子構体12の上端面12bから所定の深さを以って形成されており、図3に示すように各圧電板部11の基端部を連結部19によって互いに一体的に連結する。したがって、圧電素子構体12は、全体が櫛歯状を呈して形成されてなる。
【0032】
圧電素子構体12は、連結部19の下端面を構成する下端面12aを基台10の主面10a上に接合することによって、この基台10上に高さ方向に一体的に立設された状態で固定される。圧電素子構体12は、この状態において、図2に示すように、各圧電板部11の上端面11aが各インク圧力室5にそれぞれ対応して振動板8の底面に当接される。
【0033】
圧電素子構体12には、詳細を後述するように、各圧電板部11の上端面11aに段部形成加工が施されることによって、図3に示すように幅方向の凸部20がそれぞれ形成されている。また、圧電素子構体12は、各圧電板部11がある程度の断面寸法を以って形成されることによって機械的強度を付与されて構成されている。換言すれば、圧電素子構体12は、各圧電板部11が、充分な機械的強度を有するとともに振動板8を直接駆動する部位がそれぞれ小さな外形寸法を以って構成されている。
【0034】
ヘッド装置1は、圧電素子構体12の下端面12aが基台10に固定されるとともに、この基台10の支持部10bにヘッド構体9が固定されている。したがって、ヘッド装置1は、インク溜めプレート7や圧電素子構体12の寸法精度とともに、各部材の組立精度のバラツキによって各圧電板部11と各インク圧力室5とに位置ズレが生じることがある。ヘッド装置1は、所定のピッチと大きさで形成された各インク圧力室5に対して各圧電板部11が正確に位置合わせされなければならない。
【0035】
ヘッド装置1においては、上述したように圧電素子構体12に分割溝形成加工を施して形成した各圧電板部11の上端面11aに段部形成加工を施してそれぞれ凸部20を形成したことによって、多少の位置ズレがあった場合でもこの凸部20が各インク圧力室5に対応した領域に正確に位置されて振動板8に接触されるようになる。また、ヘッド装置1は、振動板8に対して各圧電板部11が、上端面11aの全体による接触では無く実質的に幅狭とされた凸部20の端面によるより小さな接触面を以って接触することから安定した接触状態に保持されるようになる。ヘッド装置1は、かかる構成によって各圧電板部11の振動変位が振動板8を介して対応する各インク圧力室5に安定かつ確実に伝達されることから、画像等の正確かつ精密な記録が行われるようになる。
【0036】
圧電素子構体12には、上述したように第2の電極14に電圧を供給するためのフレキシブル基板17が接合されている。フレキシブル基板17には、詳細を省略するが分割溝形成加工を施して圧電素子構体12に分割形成された多数個の各圧電板部11の間隔と等しい間隔を以って露出導体部17aが印刷形成されている。フレキシブル基板17は、図1に示すように圧電素子構体12の連結部19の側面にあてがわれ、各露出導体部17aが対応する各圧電板部11と位置決めされた状態で例えば異方性導電膜等を介して第2の電極14と接続される。
【0037】
圧電素子構体12は、上述したようにその内部に第1の電極13と第2の電極14とが交互に積層された状態で形成されており、これら第1の電極13と第2の電極14とに電界を発生させると、圧電効果によって高さ方向にΔhの変位が発生する。この変位量Δhは、圧電素子構体12を形成する圧電材料の圧電常数がそれぞれ等しくかつ第1の電極13と第2の電極14との間の距離が等しくさらに電界の大きさが等しい条件下において、これら第1の電極13と第2の電極14の相対向する部位の長さ寸法Ldに比例する。したがって、圧電素子構体12は、必要な変位量Δhをできるだけ少ない電界によって得るためには、相対向する第1の電極13と第2の電極14との長さ寸法Ld(図4参照)をできるだけ長くする必要がある。
【0038】
圧電素子構体12は、上述したように基台10に対してその連結部19の下端面を接合されて片持ち状態で支持されることから、図4に示すように変位方向の全長L、換言すれば高さ寸法L分に対して拘束される部位を持たない構成となっている。したがって、圧電素子構体12は、その高さ寸法Lのほぼ全域において振動変位が可能となり、効率のよい電極長を得ることができる構成となっている。
【0039】
圧電素子構体12は、図4に示すように、全体の長さ(高さ)寸法をLとされるとともに、その上端面12bから多数個の分割溝18を形成することによって長さ寸法がLaの多数個の圧電板部11が形成される。すなわち、圧電板部11は、全長がLaであり、その上端面11aにそれぞれ高さ寸法がLbの凸部20が形成されてなる。圧電素子構体12は、各圧電板部11の基端部を連結する高さ寸法Lcの連結部19が形成されてなる。したがって、連結部19の高さ寸法Lcは、Lc=L−(La+Lb)となり、圧電素子構体12の非分割長さになる。
【0040】
一方、第1の電極13と第2の電極14電極とは、上述したように相対向する長さ寸法がLdである。第1の電極13は、上端側を凸部20が形成された圧電板部11の上端面11aに露呈されておらずまた下端側を共通表面電極15とそれぞれ接続されることから、連結部19の下端面、換言すれば圧電素子構体12の下端面12aからの高さ寸法Ld1が、Ld1<L−Lbとなっている。また、第2の電極14は、上端側を圧電板部11の表面に露呈されて個別電極16と接続されるとともに下端側を共通表面電極15と接続されないことから、圧電板部11の上端面11aからの高さ寸法Ld2が、Ld2<La+Lbとなっている。したがって、圧電素子構体12は、実際の振動変位領域が第1の電極13と第2の電極14との長さ寸法の和から圧電素子構体12の高さ寸法を差し引いた(Ld1+Ld2)−Lとなって、変位量Δhを生成する。
【0041】
上述した圧電素子構体12は、図5に示した段部形成加工と分割溝形成加工とが施されて製作される。圧電素子構体12は、同図Aー1及びAー2に示すように上述した圧電材料と導電材料とが積層されて全体薄板形状を呈している。圧電素子構体12には、基台10の主面10aに固定される下端面12aに第1の電極13の一端部がそれぞれ露呈されるとともに上端面12bに第2の電極14の一端部がそれぞれ露呈されている。
【0042】
圧電素子構体12には、図5(B)に示すように、上端面12bに対して段部形成加工が施されて、所定のピッチ、幅及び深さを以って段部形成凹部21が形成される。段部形成加工は、例えば適宜の砥石を用いた研削加工によって行われ、凸部20の高さ寸法と等しい深さ寸法と、圧電板部11のピッチと幅寸法とに等しい段部形成凹部21を形成する。圧電素子構体12は、これら段部形成凹部21によって上端面12bに露呈された第2の電極14がそれぞれ分割される。
【0043】
圧電素子構体12には、図5(C)に示すように、上述した段部形成加工によって形成された段部形成凹部21を対象として分割溝形成加工が施されることにより、分割溝18を介して分割された多数個の圧電板部11が形成される。この分割溝形成加工も、例えば適宜の砥石を用いた研削加工によって行われる。分割溝18は、その中心軸が段部形成凹部21の中心軸に一致され、左右に所定の幅寸法を有する圧電板部11を分割形成する。分割溝18は、圧電素子構体12を厚み方向に対して貫通するとともに、高さ方向に対して各圧電板部11を連結する連結部19を構成する底付き溝とされる。圧電素子構体12は、分割溝18によって各圧電板部11に対応して第1の電極13と第2の電極14とがそれぞれ分割される。
【0044】
圧電素子構体12は、図5(D)に示すように、その側面にフレキシブル基板17が接合される基板接合工程が施されて個別電極の外部取り出しが行われる。フレキシブル基板17は、上述したように各圧電板部11のピッチとほぼ等しいピッチを有する露出導体部17aが印刷形成されており、位置決めされた状態で分割形成された各圧電板部11の側面に異方性導電膜等を介して接合される。
【0045】
圧電素子構体12は、上述したフレキシブル基板17を用いた個別電極の外部取り出しに代えて、例えば図6に示した外部取出し端子部材22を用いて個別電極の外部取り出しを行うようにしてもよい。外部取出し端子部材22は、多数個の端子板23と、これらを各圧電板部11のピッチと等しいピッチで保持する支持板24とからなる。外部取出し端子部材22は、各端子板23が対応する各圧電板部11に対して位置合わせされた状態で、異方性導電膜等を介して接合される。
【0046】
以上の工程を経て製作された圧電素子構体12は、連結部19の下端面12aを基台10の主面10a上に接合されることによって組み合わされる。圧電素子構体12は、下端面12aに形成した共通表面電極と電気的に接続される。
【0047】
ところで、上述したヘッド装置1においては、圧電素子構体12が、単体の状態で段部形成加工及び分割溝形成加工を施こされて多数個の圧電板部11が形成された後に基台10に固定される。ヘッド装置1は、基台10が圧電素子構体12を固定するとともに支持部10bを介してヘッド構体9を組み立てている。本発明は、かかるヘッド装置1の構成に限定されるものではなく、例えば圧電素子構体12が予め基台10に固定された状態で上述した段部形成加工及び分割溝形成加工を施すようにしてもよい。
【0048】
すなわち、本発明の他の実施の形態として図7に示したヘッド装置30は、基台31が圧電素子構体12を支持する全体板状の圧電素子構体支持部材32と、ヘッド構体9を支持するヘッド構体支持部材33とによって構成されてなる。なお、ヘッド装置30は、その他の構成が上述したヘッド装置1と同等とされることから、対応する部材については同一符号を付すことによってその説明を省略する。
【0049】
圧電素子構体12は、予め圧電素子構体支持部材32の主面32a上に接合された状態で、上述した段部形成加工及び分割溝形成加工が施される。これら段部形成加工及び分割溝形成加工は、圧電素子構体12が板状の圧電素子構体支持部材32に接合された構成によって可能とされる。圧電素子構体12は、凸部20或いは各圧電板部11が形成された後に例えばフレキシブル基板17を用いた個別電極の外部取り出し等の工程が施される。
【0050】
ヘッド構体支持部材33は、ヘッド構体9を支持する柱部33aと、この柱部33aの下端部に一体に形成されて圧電素子構体支持部材32の側面に接合固定される基台部33bとからなる略L字状を呈している。ヘッド構体支持部材33は、上述した各加工を施された圧電素子構体支持部材32に対して接合固定されるとともにヘッド構体9が固定される。
【0051】
ヘッド装置30は、柱部33aと基台部33bとを組み合わせてヘッド構体支持部材33を構成することから、圧電素子構体支持部材32に接合された圧電素子構体12の各圧電板部11とヘッド構体9のインク溜めプレート7に形成されたインク圧力室5とに位置ズレが生じることがある。ヘッド装置30は、かかる位置ズレがあった場合でも、上述したように上端面にそれぞれ凸部20が形成されていることによって各圧電板部11が各インク圧力室5に対応した領域に正確に位置されて振動板8に接触されるようになる。
【0052】
圧電素子構体12の製作工程については、上述したように図5を参照して説明した。この製作工程では、1個の圧電素子構体12を対象として1列に配列されてなる多数個の圧電板部11が形成される。ヘッド装置1は、マトリックス状に配列された多数個のノズル孔2に対応して圧電素子構体12にそれぞれ圧電板部11が分割形成されてなる。したがって、圧電素子構体12の製造工程においては、図8(A)に示すように、多数個の圧電素子構体12n1乃至12nnが厚み方向に対して対して互いに密着された状態で積層されて供給される。圧電素子構体12の積層体には、この状態で同図(B)に示すように一括して段部形成加工と分割溝形成加工とが施されて凸部20と圧電板部11を構成する分割溝18が形成される。
【0053】
圧電素子構体12は、その厚み寸法が全長Lに対して小さく構成されている。したがって、圧電素子構体12の製作工程においては、図8に示すように各圧電素子構体12n1乃至12nnを厚み方向に積層した状態で上述した段部形成加工及び分割溝形成加工とを施すことによって、各圧電素子構体12を長さ方向に並べてこれら加工を施す場合と比較して単位時間当たりの加工対象数を増やすことが可能となり、生産性の向上が図られる。また、圧電素子構体12の製作工程においては、分割溝18や凸部20が砥石を用いた研削加工によって形成される。圧電素子構体12は、例えば形状の異なる数種類の砥石により加工する方法や所定形状の砥石を用いることによって適宜の形状を呈する分割溝18や凸部20が形成される。
【0054】
圧電素子構体12の製作工程においては、例えば図9(A)に示すように予め多数個の基台10m1乃至10mm上に所定のピッチを以って多数個の圧電素子構体12m1乃至12mmをそれぞれ接合し、この組立体を供給するようにしてもよい。圧電素子構体12には、上述した工程と同様に段部形成加工及び分割溝形成加工が施されて、同図(B)に示すように一括して分割溝18や凸部20が形成されて圧電板部11が分割形成される。なお、圧電素子構体12は、同図に示すように1個の基台10に対してそれぞれ幅方向に離間して2個が接合されているが、ノズル孔2の配列状態に応じて基台10に対する接合状態が適宜変更されることは勿論である。
【0055】
圧電素子構体12は、上述したように各圧電板部11の上端面11aに凸字状の凸部20が突設されている。圧電素子構体12は、かかる圧電板部11の構成に限定されるものではなく、適宜の砥石を用いることによって分割溝18や凸部20の形状を異にした圧電板部11を分割形成するようにしてもよい。また、圧電素子構体12は、分割溝18によって分割形成される圧電板部11の全体の幅寸法Waに対して凸部20の幅寸法Wbを異にして形成してもよい。
【0056】
図10に示した圧電板部11は、圧電素子構体12に分割溝形成加工を施してして分割形成されるが、その上端面に幅方向の両側縁に沿って面取り研削を施すことにより中央部に台形形状の凸部20を形成してなる。圧電板部11は、全体の幅寸法Waに対してやや小幅とされた幅寸法Wbの凸部20がその上端面に形成される。
【0057】
図11に示した圧電板部11は、上述した図10の圧電板部11と同様にその上端面に幅方向の両側縁に沿って面取り研削を施して凸部20を形成するが、同図に示すように円弧状の面取りを施してなる。圧電板部11は、全体の幅寸法Waに対してやや小幅とされた幅寸法Wbの凸部20がその上端面に形成される。圧電板部11は、図10の圧電板部11の加工に用いる砥石に対して例えば小径の砥石が用いられる。
【0058】
圧電素子構体12は、各圧電板部11が分割溝18によってそれぞれ矩形形状を以って分割形成されるが、かかる形状に限定されるものではない。圧電素子構体12は、上述した分割溝形成加工を施す際に適宜の砥石を用いて分割溝18を形成することによって、各圧電板部11がその固定部側の幅寸法Wcに対して自由端側の幅寸法Wdを変えた適宜の短冊形状として構成するようにしてもよい。圧電素子構体12は、各圧電板部11が固定部側の幅寸法Wcと自由端側の幅寸法Wdについて、Wc>Wdとなるように構成される。圧電素子構体12は、かかる構成を採用することによって、各圧電板部11の機械的強度の向上を図るとともにそれぞれの横振動の固有振動数を上げて駆動周波数内での横振動が抑制されるようになる。
【0059】
圧電素子構体12には、例えば図12に示すように開口幅寸法を次第に大ならしめた略逆台形状の分割溝18、換言すれば溝幅寸法が直線的に変化する分割溝18を形成する分割溝形成加工を施すようにしてもよい。圧電素子構体12は、かかる分割溝18によって同図に示すように連結部19から一体に立ち上がり形成される各圧電板部11が、その基端部から上端面11a側に向かって次第に幅寸法を小ならしめた略台形の短冊形状を以って形成される。各圧電板部11は、同図に示すように、固定部側の幅寸法Wcと自由端側の幅寸法WdとがWc>Wdとなるように構成される。勿論、各圧電板部11には、上端面11aに凸部20が一体に形成される。
【0060】
また、圧電素子構体12には、例えば図13に示すように開口幅寸法を次第に大ならしめた略半楕円形状の分割溝18、換言すれば溝幅寸法が曲線的に変化する分割溝18を形成する分割溝形成加工を施すようにしてもよい。圧電素子構体12は、かかる分割溝18によって同図に示すように連結部19から一体に立ち上がり形成される各圧電板部11が、その両側縁部を基端部から上端面11a側に向かって次第に幅寸法を小ならしめる円弧状とされた短冊形状を以って分割形成される。各圧電板部11は、同図に示すように、固定部側の幅寸法Wcと自由端側の幅寸法WdとがWc>Wdとなるように構成される。勿論、各圧電板部11には、上端面11aに凸部20が一体に形成される。
【0061】
さらに、圧電素子構体12には、例えば図14に示すように固定部側を幅狭とした縦長の第1の分割溝部18aとこの第1の分割溝部18aに連続する自由端部側の幅広の第2の分割溝部18bとからなる略逆凸字状の分割溝18、換言すれば溝幅が不連続に変化する分割溝18を形成する分割溝形成加工を施すようにしてもよい。なお、圧電素子構体12は、溝幅寸法が上端側に向かって多段に幅広に変化される多段の分割溝18によって多段の圧電板部11を分割形成するようにしてもよい。
【0062】
圧電素子構体12は、かかる分割溝18によって、同図に示すように各圧電板部11が固定部側の幅広の部位と自由端部側の幅狭の部位とからなる略凸字状の段付き形状の短冊形状を以って分割形成される。すなわち、各圧電板部11は、連結部19から一体に立ち上がり形成される固定部側が第1の分割溝部18aを介して幅広とされるとともに、所定の高さ位置から上端側が第2の分割溝部18bによって幅狭とされてなる。各圧電板部11は、同図に示すように、固定部側の幅寸法Wcと自由端側の幅寸法WdとがWc>Wdとなるように構成される。勿論、各圧電板部11には、上端面11aに凸部20が一体に形成される。
【0063】
圧電素子構体12には、上述したように種々の形状の分割溝18によって各圧電板部11がその幅寸法を固定部側の幅寸法Wcと自由端側の幅寸法WdについてWc>Wdとなるような適宜の分割溝形成加工が施される。この場合、圧電素子構体12は、多数個が互いに厚み方向に並べられて適宜の形状の砥石が用いられて分割溝18が形成される。
【0064】
圧電素子構体12には、分割溝18を形成する上述した各種の分割溝形成加工が施されて、基端部を連結部19によって連結した多数個の圧電板部11が分割形成される。各分割溝18は、砥石の磨耗によって図15に示すようにその底部18cがR面を呈しており、精密な直角を以って各圧電板部11を立ち上がり形成していない状態となっている。したがって、圧電素子構体12においては、各分割溝18によって分割形成される圧電板部11が、両側に形成される圧電板部11bと内側に形成される圧電板部11cとで連結部19からの立ち上がり部位の形状が異なった状態を呈することになる。換言すれば、両側の圧電板部11bは、同図に示すように根元部位において左右方向の対称性が崩れて左右方向にΔxの傾きが生じる。
【0065】
圧電素子構体12は、圧電板部11bに傾きが生じた場合に、各圧電板部11のピッチpに対してこの圧電板部11bと内側の圧電板部11との間隔がp+Δxとなって対応するインク圧力室5との間に位置ズレが生じてしまう。したがって、圧電素子構体12においては、両側の圧電板部11bを形成する際に、これら圧電板部11bが図16に示すように連結部19の端面からΔpの内側位置において立ち上がり形成されるようにする。圧電素子構体12は、かかる構成によって両側の圧電板部11bと内側の各圧電板部11cとがそれぞれ根元部位における左右方向の対称性が保持され、両側の圧電板部11bの傾きが抑制される。
【0066】
なお、圧電素子構体12は、上述した各形状の圧電板部11に対しても、その両側の圧電板部11bをかかる構成によって形成してもよい。圧電素子構体12は、両側の圧電板部11bと内側の各圧電板部11cとのピッチが精密に保持され、各圧電板部11が各インク圧力室5にそれぞれ対応位置されるようになる。
【0067】
ヘッド装置1は、上述したように基台10に対してヘッド構体9のインク圧力室5と圧電素子構体12の各圧電板部11とが互いに精密に位置決めされた状態で組み合わされてなる。圧電素子構体12は、各圧電板部11の凸部20が、ヘッド構体9を構成するインク溜めプレート7の各インク圧力室5に対応して振動板8に接触されてなる。ヘッド装置1は、図17に示すように振動板8が各インク圧力室5を閉塞するようにしてインク溜めプレート7に接合されてなる。各インク圧力室5は、インク溜めプレート7の他方主面7bに各隔壁7cによって互いに等間隔を以って区割りされて凹設されている。ところが、最外側に凹設されたインク圧力室5b1は、同図に示すようにインク溜めプレート7の外周部位7c1と隔壁7c2とによって区割りされる。
【0068】
したがって、振動板8は、図17に示すように内側に凹設された各インク圧力室5b2乃至5bnに対応する部位が各隔壁7c2乃至7cnによって支えられるのに対して、最外側に凹設されたインク圧力室5b1に対応する部位が隔壁7c2とインク溜めプレート7の外周部位7c1とによって支えられる。振動板8は、各隔壁7c2乃至7cnに対して外周部位7c1の剛性が大きいことから、最外側に凹設されたインク圧力室5b1に対応する部位の剛性が他のインク圧力室5b2乃至5bnに対応する部位の剛性よりも大きくなる。
【0069】
ヘッド装置1においては、所定の圧電板部11が駆動されて発生する振動変位により対応するインク圧力室5に容積変動を生じさせてノズル孔2からインク滴が飛翔する。したがって、ヘッド装置1は、各圧電板部11が同一の駆動力で駆動される場合に、最外側に凹設されたインク圧力室5b1の容積変動が他のインク圧力室5b2乃至5bnの容積変動に対して小さくなる。ヘッド装置1においては、これによってノズル孔2から飛翔するインク滴の大きさが変わって記録画像等の記録精度が多少劣化するといった問題を生じさせる。
【0070】
したがって、図18に示したヘッド装置40は、最外側に凹設されたインク圧力室5b1に生じる容積変動と他のインク圧力室5b2乃至5bnに生じる容積変動とがほぼ同等となるように構成されてなる。ヘッド装置40は、このためにインク溜めプレート7の最外側に凹設されたインク圧力室5b1に対応する圧電板部41が、その幅寸法Weを他のインク圧力室5b2乃至5bnに対応する圧電板部42の幅寸法Wfに対して大ならしめてなる圧電素子構体43が備えられる。なお、ヘッド装置40は、その他の構成について、上述したヘッド装置1と同様とすることから対応する部材等に対して同一符号を付すことによってその詳細な説明を省略する。
【0071】
すなわち、圧電素子構体43は、両側の圧電板部41がその幅寸法Weを他の圧電板部42の幅寸法Wfに対して大ならしめられることで、より大きな振動変位が生じて振動板8を駆動するように構成される。勿論、圧電素子構体43は、圧電板部41の幅寸法Weと圧電板部42の幅寸法Wfとの差が、振動板8の振動抵抗の差を補正するに足るように設定されてなる。したがって、ヘッド装置40においては、最外側に凹設されたインク圧力室5b1と他のインク圧力室5b2乃至5bnにおいて生じる容積変動とがほぼ同等となり、ノズル孔2からほぼ均一な大きさのインク滴が飛翔されて記録画像等の精密な記録が行われるようになる。勿論、かかるヘッド装置40の構成は、上述した各種の圧電板部11を有する圧電素子構体12を用いた場合にも適用されるものである。
【0072】
ヘッド装置1においては、上述したように段部形成加工と分割溝形成加工とを施して種々の形状の圧電板部11を分割形成した圧電素子構体12が、図5或いは図6に示すようにフレキシブル基板17や外部取出し端子部材22と端子板23を用いるとともに異方性導電接着材によって基台10側の共通表面電極15と接続するように構成してなる。これに対して図19に他の実施の形態として示したヘッド装置50においては、圧電素子構体12の各圧電板部11に形成された個別電極との接続が、振動板51に形成された電極導体部52によって行われるように構成したことを特徴とする。なお、ヘッド装置50は、電極導体部52が形成された振動板51以外の基本的な構成を上述したヘッド装置1とほぼ同等とすることから、同一部材については同一符号を付すことによってその詳細な説明を省略する。
【0073】
すなわち、ヘッド装置50には、振動板51の基台10と対向する主面51aに、各インク圧力室5にそれぞれ対応位置して、換言すれば各圧電板部11にそれぞれ対応位置して多数個の電極導体部52が形成されてなる。各電極導体部52は、例えば振動板8がベース材としてポリイミドやポリエステルを用いる場合にはこれに銅箔を接合して所定のパターンにエッチング処理を施して形成する。
【0074】
各電極導体部52は、同時にエッチング処理を施して形成したリード部53を介して振動板8の外方へと引き出されてプリンタ本体側の制御部と接続される。なお、リード部53は、ヘッド装置50のサイズや振動板51の主面51a上における引き回し経路、数等によって適宜に設計される。振動板51には、各圧電板部11が対応する電極導体部52に対して、その上端面11aに形成した凸部20の端面を接着樹脂や導電接着剤等によって接合固定されてなる。
【0075】
なお、圧電素子構体12は、その第1の電極13と第2の電極14とが上述したヘッド装置1或いはヘッド装置40の構成による接続に限定されるものではない。圧電素子構体12は、振動板8と基台10との両部材において第1の電極13と第2の電極14の接続が適宜行われるように構成してもよい。
【発明の効果】
【0076】
以上詳細に説明したように、本発明にかかるインクジェットプリンタ用ヘッド装置によれば、各圧電板が、その振動板との対向面を構成する自由端部に凸部形成加工を施して幅方向の凸部を形成されて実質的に幅狭に構成されることから、各圧電板と所定のピッチと大きさで形成された各インク圧力室との位置合わせが容易かつ正確に行われるとともに各圧電板が振動板に対して安定した状態で接触するようになる。したがって、インクジェットプリンタ用ヘッド装置においては、各圧電板の歪み変位によって振動板を介して所定のインク圧力室の容積変動が正確に行われて安定した大きさのインク滴を極く狭ピッチで形成されたノズル孔から飛翔させて画像等の正確かつ精密な記録が行われるようになる。
【0077】
また、インクジェットプリンタ用ヘッド装置においては、最外側部に位置する圧電板部 が、その外側面側にも圧電素子構体に対する分割溝形成を施して形成されることにより、両側の圧電板部を内側の圧電板部に対して対称性やピットが精密に保持されるようにするとともに、当該圧電板部を幅広として振動板を均一な状態で振動動作させることが可能となる。インクジェットプリンタ用ヘッド装置においては、インク圧力室の容積変動が安定して大きさが一定のインク滴をノズル孔から飛翔させて画像等の正確かつ精密な記録が行われるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明にかかるインクジェットプリンタ用ヘッド装置の実施の形態として示す要部斜視図である。
【図2】 同インクジェットプリンタ用ヘッド装置の要部縦断面図である。
【図3】 同インクジェットプリンタ用ヘッド装置に備えられる圧電駆動部の構成を説明する要部斜視図である。
【図4】 同インクジェットプリンタ用ヘッド装置における各部の構成説明図である。
【図5】 同インクジェットプリンタ用ヘッド装置に備えられる圧電素子構体の製作工程の説明図である。
【図6】 他の圧電素子構体の説明図である。
【図7】 本発明にかかるインクジェットプリンタ用ヘッド装置の他の実施の形態として示す要部縦断面図である。
【図8】 他の圧電素子構体の製作工程の説明図である。
【図9】 他の圧電素子構体の製作工程の説明図である。
【図10】 他の圧電体の構成を説明する要部側面図である。
【図11】 他の圧電体の構成を説明する要部側面図である。
【図12】 他の圧電素子構体の構成を説明する要部側面図である。
【図13】 他の圧電素子構体の構成を説明する要部側面図である。
【図14】 他の圧電素子構体の構成を説明する要部側面図である。
【図15】 圧電素子構体の構成を説明する要部側面図である。
【図16】 他の圧電素子構体の構成を説明する要部側面図である。
【図17】 インクジェットプリンタ用ヘッド装置の要部縦断面図である。
【図18】 他のインクジェットプリンタ用ヘッド装置の要部縦断面図である。
【図19】 他のインクジェットプリンタ用ヘッド装置の要部斜視図である。
【図20】 従来のインクジェットプリンタ用ヘッド装置の要部斜視図である。
【図21】 同インクジェットプリンタ用ヘッド装置に備えられる圧電駆動部の構成を説明する要部斜視図である。
【符号の説明】
1 インクジェットプリンタ用ヘッド装置(ヘッド装置)、2 ノズル孔、3 ノズルプレート、5 インク圧力室、7 インク溜めプレート、8 振動板、9 ヘッド構体、10 基台、11 圧電板部、12 圧電素子構体、13 第1の電極、14 第2の電極、15 共通表面電極、16 個別電極、17 フレキシブル基板、18 分割溝、19 連結部、20 凸部、21 段部形成凹部、22 端子部材、23 端子板、24 支持板、30 ヘッド装置、31 基台、32 圧電素子構体支持部材、33 ヘッド構体支持部材、40 ヘッド装置、41 圧電板部、42 圧電板部、43 圧電素子構体、50 ヘッド装置、51 振動板、52 電極導体部、53 リード部
Claims (2)
- 圧電セラミックと電極材とを交互に積層してなる圧電板を、それぞれその一端側を固定端とするとともに他端側を自由端として所定のピッチを以って配列し、上記自由端をノズル孔に連設されたインク圧力室を密閉する振動板にそれぞれ対向位置させてなるインクジェットプリンタ用ヘッド装置において、
上記各圧電板は、圧電セラミックと電極材とを交互に積層してなる圧電素子構体に分割溝を形成して下端面を基台に固定される連結部を介して固定部側を一体化し、それぞれが所定の幅を有して所定のピッチを以って形成されるとともに上記振動板と対向位置する自由端に凸部が形成されて他の部位よりも幅狭とされた多数個の短冊状圧電板部によって構成され、
最外側部に位置する圧電板部が、その外側面側にも圧電素子構体に対する分割溝形成を施して形成されることを特徴とするインクジェットプリンタ用ヘッド装置。 - 上記最外側部に位置する圧電板部が、他の圧電板部の幅寸法よりも大きな幅寸法を以って分割形成されることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットプリンタ用ヘッド装置。
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