JP4119129B2 - 電子天びん - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は電子天びんに関し、更に詳しくは、比較的簡単な構成のもとに、感度較正機能並びに直線性較正機能の双方を備えた電子天びんに関する。
【0002】
【従来の技術】
電子天びんにおいては、一般に、皿が係合される荷重感応部から、皿上荷重に対応する荷重検出信号を出力し、その荷重検出出力を感度係数(スパン係数)を用いて質量値に換算し、計量値として表示器に表示する。感度係数は、例えば天びんメカニズムの経年変化や温度などによって変化し、従ってこのこの感度係数は感度較正によって随時に更新される。電子天びんにおける感度較正は、通常、荷重感応部に既知質量の分銅等を負荷し、そのときの計量値が既知質量に一致するように感度係数を更新することによって行われる。
【0003】
高精度の電子天びんにおいては、頻繁に感度較正を行うことが好ましく、このような電子天びんでは、上記した質量既知の分銅を内蔵するとともに、その内蔵分銅を荷重感応部に対して負荷/負荷解除するための分銅加除機構を備え、感度較正指令を与えることによって内蔵分銅を加除し、内蔵分銅を負荷していない状態での荷重検出出力と、負荷状態での荷重検出出力を用いて、自動的に感度係数を更新する機能を備えたものが多い。
【0004】
また、電子天びんの荷重感応部には、一般に、その出力の直線性の誤差が存在する。この直線性誤差とは、皿上荷重と荷重感応部による荷重検出出力の直線性からの逸脱を言い、この直線性の誤差は例えば天びん秤量近傍の質量を含む複数の質量の分銅を用いなければ計測することができず、これはメーカにおいて計測され、その結果に基づいて直線性補正係数が定められて記憶される。そして、電子天びんの使用時においては、荷重感応部からの荷重検出出力はこの直線性補正係数を用いて補正されたうえで質量の換算に供される。
【0005】
そして、この直線性補正係数についても、高精度の電子天びんにおいては較正できるようになっているものがある。この直線性の較正機能を備えた電子天びんにおいては、質量が既知の2つの内蔵分銅、例えば天びんの秤量近傍の内蔵分銅とその1/2程度の質量の内蔵分銅と、その各内蔵分銅を荷重感応部に対して加除するための加除機構を備え、図3に誇張したグラフで示すように、荷重感応部に対して内臓分銅を負荷していない状態での荷重検出出力Wad0 と、2つの内臓分銅をそれぞれ負荷した状態での荷重検出出力Wads1およびWads2、並びにこれらの各内蔵分銅の質量値M01およびM02とを用いて、メーカにおいてあらかじめ記憶している直線性誤差の補正曲線Lの近似式にこれらの各値を当てはめ、その相違分δを用いて、新たな補正曲線L′の近似式の係数を求め直してこれを更新するように構成されている。なお、このような直線性較正機能を備えた電子天びんでは、2つの内臓分銅のうち、秤量近傍の内臓分銅を負荷したときの荷重検出出力Ws2と無負荷状態の荷重検出出力W0 を用いて感度較正を行う。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、電子天びんの直線性は、感度ほど変化しないものの、経年的にある程度変化することがあり、従って、高精度の計量を行うためには、感度較正のみならず、直線性較正をもある程度頻繁に行うことが望ましい。しかしながら、感度較正機能と直線性較正機能の双方を備えた電子天びんでは、2つの内臓分銅と、その各内臓分銅を荷重感応部に対して加除するための2つの分銅加除機構を備える必要があり、高価となってしまうという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、1つの内臓分銅とその加除機構を備えた比較的簡単な構成のもとに、感度較正機能と直線性較正機能の双方を備え、もって安価で高精度の測定が可能な電子天びんを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明の電子天びんは、皿に係合し、その皿上に作用する荷重に対応した荷重検出信号を出力する荷重感応部と、その荷重検出出力を感度係数を用いて質量値に換算する質量演算手段と、質量既知の内蔵分銅と、その内蔵分銅を上記荷重感応部に対して負荷/負荷解除するための分銅加除機構と、内蔵分銅の負荷時および非負荷時における荷重感応部の出力を用いて上記感度係数を更新する感度較正手段を備えた電子天びんにおいて、直線性補正係数を用いて上記荷重検出出力の直線性を補正する直線性補正演算手段と、指令を与えた後に上記内蔵分銅と異なる質量の既知質量の少なくとも1つの外部分銅を上記皿上に載せたときの荷重検出出力を記憶する記憶手段と、その外部分銅の質量値を入力するための入力手段と、上記記憶手段の記憶内容と、上記内蔵分銅を荷重感応部に負荷したときの荷重検出出力を用いて上記直線性補正係数を更新する直線性較正手段を備えていることによって特徴づけられる。
【0009】
本発明は、感度較正用の1つの内臓分銅を備えた電子天びんにおいて、ユーザが持つ分銅(外部分銅)を有効利用し、その外部分銅を用いて直線性の較正を実現することで、所期の目的を達成するものである。
【0010】
すなわち、本発明においては、感度較正用の1つの内蔵分銅とその加除機構を備えるとともに、複数の質量を負荷しなければ較正できない直線性の較正は、内蔵分銅と、それとは異なる質量の少なくとも1つの外部分銅を用いて行う。そのため、本発明においては、指令を与えて既知質量の外部分銅を皿上に載せたときの荷重検出出力を記憶手段に記憶するとともに、その外部分銅の質量値を入力するための入力手段を備える。これにより、直線性較正手段では、既知質量の内蔵分銅の荷重感応部への負荷時における荷重検出出力と、外部分銅の皿上への負荷時における荷重検出出力およびその質量の入力値の、少なくとも2点の既知質量をそれぞれ荷重感応部に負荷したときの荷重検出出力が得られることになり、直線性の較正が可能となる。
【0011】
従って、本発明によれば、1つの内蔵分銅とその加除機構を備えた比較的簡単な構成のもとに、感度較正機能と直線性較正機能の双方を併せ持った電子天びんが得られる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明の実施の形態の構成図で、機械的構成を表す模式図と、電気的構成を表すブロック図とを併記して示す図である。
【0013】
試料を載せるための皿1は、皿持ち出し部材2を介してパラレルガイド3の可動柱31に支承されている。パラレルガイド3は、互いに平行で、かつ、両端部に可撓部eを備えた上下の梁32a,32bによって可動柱31を固定柱33に連結した構造を持ち、可動柱31は連結部材41を介してレバー4の一端に連結されている。
【0014】
レバー4は支点42を中心として回動自在に支持されており、その他端の変位は変位センサ5によって検出される。また、レバー4には電磁力発生装置6のフォースコイル61が固着されている。電磁力発生装置6は、永久磁石を主体とする磁気回路62とそれが作る静磁場中に変位自在に配置されたフォースコイル61によって構成されており、フォースコイル61に流れる電流の大きさに応じた電磁力を発生する。このフォースコイル61に流れる電流は、変位センサ5によるレバー4の変位検出値が常に0となるように動作するサーボ機構によって制御され、従って、レバー4は皿1ないしは皿持ち出し部材2に作用する荷重によって回動変位しようとするが、その変位が常に0となるような電磁力がレバー4に作用する結果、レバー4は一定姿勢の平衡状態に保たれる。
【0015】
サーボ機構の具体的な構成について説明すると、変位センサ5の出力はA−D変換器10aを介して制御部11のPID演算部111に取り込まれてPID(比例・積分・微分)演算が行われた後、D−A変換器10bでアナログ信号に変換され、更にパワーアンプ12によって電流に変換されたうえでフォースコイル61に流される。これにより、レバー4はその変位が0の平衡状態に維持される。そして、このレバー4の平衡状態においてフォースコイル61に流れる電流の大きさから、皿1ないしは皿持ち出し部材2を介して可動柱31に作用する荷重の大きさが求められる。
【0016】
すなわち、フォースコイル61に流れる電流は精密抵抗Rなどによって電圧信号に変換されたうえで、A−D変換器10cでデジタル化された後、制御部11に取り込まれる。
【0017】
制御部11は、実際にはマイクロコンピュータとその周辺機器によって構成され、インストールされているプログラムに従って動作するのであるが、説明の便宜上、この図1においてはそのプログラムが有している機能ごとのブロック図で示している。また、この制御部11には、計量値等を表示するための表示器13と、当該制御部11に対して各種指令等を与えるためのキー群並びにテンキーを備えた操作部14が接続されている。
【0018】
さて、通常の測定モードにおいては、A−D変換器10cによってデジタル化されたフォースコイル61に流れる電流の大きさに対応するデータ、つまり荷重検出データは、制御部11の平均化処理部112に所定の微小時間間隔で刻々と取り込まれ、ここで平均化処理された後、直線性誤差補正演算部113で直線性の誤差が補正されるとともに、質量換算部114で質量値に換算されて、計量値として表示器13に表示される。
【0019】
直線性誤差補正演算部113は、あらかじめ係数記憶部115に記憶している直線性誤差補正用の関数式を用いて荷重検出データの直線性を補正し、また、質量換算部114では、直線性を補正した後の荷重検出データに、同じくあらかじめ係数記憶部115に記憶している感度係数を乗じることによって荷重検出データを質量値に換算する。
【0020】
天びんケース7の上面部分には貫通孔71が形成されており、皿持ち出し部材2はその先端部分がこの貫通孔71を介して天びんケース7の外方に突出し、その突出部分に皿1が配置されている。そして、天びんケース7には、貫通孔71の周辺部分に円形状に上方に膨出する膨出部72が形成されており、この膨出部72の形成位置に対応する天びんケース7の内部に、1つの質量既知の内蔵分銅8が設けられている。そして、この内蔵分銅8には、分銅加除機構9によって上下動されて、図示のように天びんケース7の膨出部72の下面に押しつけられて皿持ち出し部材2に対して接触しない非負荷状態か、あるいは図2に要部を示すように、皿持ち出し部材2に対する負荷状態のいずれかの状態に維持される。
【0021】
分銅加除機構9は、出力軸9aが鉛直下方を向くように配置されたモータ91と、そのモータ91の出力を減速するための歯車列92と、上下動自在に支承された分銅押し上げ棒93によって構成されている。
【0022】
歯車列92は、この例において2つの平歯車によって構成されており、モータ91の出力軸91aに固着された小歯車92aと、回転自在の鉛直軸92bに固着され、小歯車92aよりも大径で、かつ、その上端面にカム輪郭が形成されてなる端面カム歯車92cによって構成されている。端面カム歯車92cの上端面のカム輪郭は、この例において単純な斜面としている。
【0023】
分銅押し上げ棒93は、その下端部が端面カム歯車92cの上端面のカム輪郭形成部に当接しており、従ってモータ91を駆動して端面カム歯車92cを回動させることによって、その回動位置に応じて分銅押し上げ棒93が上下動する。そして、この分銅押し上げ棒93の上端部は内蔵分銅8の下面に当接しており、この分銅押し上げ棒93の上下動によって内蔵分銅8が上下動し、図1に示すような無負荷状態と、図2に示すような負荷状態のいずれかの状態を維持するように構成されている。この内臓分銅8の無負荷/負荷状態は、端面カム歯車92cの上端面に対向配置されたセンサ94によって当該端面カム歯車92cの回動位置の検知により検出され、その検出出力は制御部11の後述する動作制御部116に取り込まれるようになっている。
【0024】
前記した操作部14には、感度較正指令キーと直線性較正指令キーが含まれており、これらを操作することによって以下に示す動作によって感動較正並びに直線性較正が実行される。
【0025】
感度較正指令キーを操作すると、まず、図1に示す無負荷状態における荷重検出データWad01が一時記憶部117に記憶され、次に動作制御部116から分銅加除機構9のモータ91にドライバ(図示せず)を介して駆動信号が供給され、図2のように内蔵分銅8が下降して皿持ち出し部材2の上に負荷され、その状態における荷重検出データWads1が一時記憶部117に記憶された後、再度分銅加除機構9のモータ91に駆動信号が供給されて内蔵分銅8が上昇して図1の無負荷状態に戻され、その状態における荷重検出データWad02が一時記憶部117に記憶される。そして、この一時記憶部117の記憶内容を用いて、感度較正演算部118が以下の演算によって新たな感度係数を算出する。
【0026】
すなわち、内臓分銅8の負荷前後における無負荷状態での荷重検出データWad01およびWad02の平均値と、内臓分銅8の負荷状態における荷重検出データWads1の差{Wads1−(Wad01+Wad02)/2}によって、あらかじめ記憶している内臓分銅8の既知質量M01を除した値を新たな感度係数とし、係数記憶部115に記憶されている感度係数を新たな感度係数に更新する。
【0027】
一方、直線性較正指令キーを操作すると、上記と同様の動作により、内蔵分銅8を皿持ち出し部材2の上に負荷し、その負荷状態での荷重検出データWads1と、その負荷前後における無負荷状態での荷重検出データWad01およびWad02を一時記憶部117に記憶する。次に、表示器13に、ユーザの手持ちの質量既知の外部分銅20を皿1上に載せる旨、および、その質量値を操作部14から入力する旨の表示を行う。オペレータがその表示に従って外部分銅20を皿上に載せ、かつ、その質量値を入力すると、その外部分銅20の負荷状態での荷重検出データWads2を一時記憶部117に記憶する。次に、表示器13にその外部分銅20を除去する旨表示を行う。外部分銅を除去して再び無負荷状態における荷重検出データWad03を記憶する。そして、この一時記憶部117の記憶内容を用いて、直線性較正演算部119が以下の手法によって直線性補正用の演算式の係数、つまり直線性補正係数を更新する。
【0028】
すなわち、外部分銅20の負荷前後における無負荷状態での荷重検出データWad02とWad03の平均値と、外部分銅20の負荷状態における荷重検出値Wads2の差{Wads2−(Wad02+Wad03)/2}と、入力された外部分銅20の質量値M02を、工場出荷時等においてあらかじめ係数記憶部115に記憶している前記した図3に例示した直線性誤差の補正曲線Lの近似式に当てはめ、その相違分δを用いて、従来の2つの内蔵分銅を備えた電子天びんと同様に、新たな補正曲線L′の近似式の係数を算出し直し、係数記憶部115の内容を更新する。
【0029】
従って、以上の本発明の実施の形態によると、感度較正用の1つの内蔵分銅8を備えているにも係わらず、ユーザの手持ちの質量既知の外部分銅20を皿1上に載せてその質量値を入力することによって、実質的に2つの内蔵分銅を備えた電子天びんと同様に、感度較正並びに直線性較正を行うことができる。
【0030】
なお、以上の実施の形態では、内蔵分銅8のほかに、外部分銅20を1つだけ載せて直線性較正を行う例を示したが、複数の外部分銅を1つずつもしくは複数個ずつ皿1上に載せるとともに、その各負荷質量値を入力することにより、新たな直線性誤差の補正曲線L′を多点のデータを用いて近似することが可能となり、より高精度の較正を行うことが可能となる。
【0031】
また、本発明は、天びんメカニズムや分銅加除機構については、上記した実施の形態において例示したメカニズムに限られることなく、任意の公知のメカニズムを備えた電子天びんに等しく適用し得ることは勿論である。
【0032】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、1つの内蔵分銅とその加除機構を備えた比較的簡単な構成の電子天びんでありながら、質量既知の外部分銅を皿上に載せるとともに、その質量値を入力することによって、従来の内蔵分銅を2つ備えた電子天びんと同様に、感度較正並びに直線性較正を行うことができ、安価で高精度の測定が可能な電子天びんが得られる。また、ユーザが有している既知質量の外部分銅を有効利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の構成図で、機械的構成を表す模式図と電気的構成を表すブロック図とを併記して示す図である。
【図2】本発明の実施の形態の要部構成図で、内蔵分銅8の負荷状態を示す図である。
【図3】電子天びんにおける直線性誤差の補正曲線とその更新手法の説明図である。
【符号の説明】
1 皿
2 皿持ち出し部材
3 パラレルガイド
4 レバー
5 変位センサ
6 電磁力発生装置
7 天びんケース
8 内蔵分銅
9 分銅加除機構
11 制御部
111 PID演算部
112 平均化処理部
113 直線性誤差補正演算部
114 質量換算部
115 係数記憶部
116 動作制御部
117 一時記憶部
118 感度較正演算部
119 直線性較正演算部
13 表示器
14 操作部
20 外部分銅
Claims (1)
- 皿に係合し、その皿上に作用する荷重に対応した荷重検出信号を出力する荷重感応部と、その荷重検出出力を感度係数を用いて質量値に換算する質量演算手段と、質量既知の1つの内蔵分銅と、その内蔵分銅を上記荷重感応部に対して負荷/負荷解除するための分銅加除機構と、内蔵分銅の負荷時および非負荷時における荷重感応部の出力を用いて上記感度係数を更新する感度較正手段を備えた電子天びんにおいて、直線性補正係数を用いて上記荷重検出出力の直線性を補正する直線性補正演算手段と、指令を与えた後に上記内蔵分銅と異なる質量の既知質量の少なくとも1つの外部分銅を上記皿上に載せたときの荷重検出出力を記憶する記憶手段と、その外部分銅の質量値を入力するための入力手段と、上記記憶手段の記憶内容と、上記内蔵分銅を荷重感応部に負荷したときの荷重検出出力を用いて上記直線性補正係数を更新する直線性較正手段を備えていることを特徴とする電子天びん。
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