JP4118019B2 - 患者に液状薬を投与する装置 - Google Patents

Description

【０００１】
（技術分野）
本発明は、患者に液状薬を投与する装置に関し、この装置は、投与部分と固定部分とから構成される。液状薬が流れる投与部分は、例えば、カニューレスタッド、カテーテルスタッド、または、フィルターである。投与部分は、固定部分によって、例えば、患者の肌、衣服、ベッド、点滴スタンド、または、その他の物にしっかりと固定される。
【０００２】
（背景技術）
通常、投与部分は、投与部分の上に貼ったばんそう膏によって患者の体に固定される。特に、フィルターの場合、見境なくばんそう膏をくっつけると、もうフィルターを点検できない。フィルターが詰まっていないか調べるためには、患者の肌からばんそう膏を取り外すことが必要である。特に、異なる薬剤が、同一の経路で患者に投与される時は、頻繁にフィルターを調べることが重要である。なぜなら、異なる薬剤は、相互に作用し、結晶化することができるからである。これは、結果として、フィルターをふさぐことを可能にする。フィルターの上をばんそう膏でくっつけると、医者の管理が及ばなくなり、フィルターを連続的に調べることができない。さらに、点滴の場合には、フィルターを、長時間かけてバクテリアや粒子をろ過するために使用するので、一定の時間間隔で交換しなければならない。
【０００３】
肌表面の刺傷跡付近に固定された短いカテーテルの一部は、翼の形状のプラスチック製のスタッドを含んでいる。短いカテーテルを固定するために、翼の形状のスタッドの上にばんそう膏を貼る。この方法で、患者の肌にフィルターやカテーテルを固定すると、患者は自由に動き回ることが制限され、動いた場合には、けがをする可能性がある。
【０００４】
米国特許５４５６６７１号から、カテーテルをばんそう膏で、患者の肌に固定することが知られている。このために、ばんそう膏は、カテーテルが挿入される細長い縦穴のある第１結合部分を含んでいる。患者の肌からばんそう膏を取り外すことなく、カテーテルを結合部分から離すことは可能であるが、カテーテルは結合部分に保持され、患者が自由に動きまわることをかなり制限し続ける。
【０００５】
（発明の開示）
（発明が解決しようとする技術的課題）
本発明の目的は、患者の体やその他の運搬装置に簡単に固定することができ、容易にすばやく離すことが可能で、患者の自由に動き回ることに対する制限を最小限におさえるような、患者に液状薬を投与する装置を提供することである。
【０００６】
（その解決方法）
この目的は、請求項１記載の特徴をもつ発明によって解決される。
【０００７】
投与部分は、ばんそう膏としての役割を果たす固定部分によって固定され、その固定部分は、投与部分に備えられた第２結合部分と取り外し可能な状態で結合する第１結合部分を含む。本発明によると、２つの結合部分のうち１つは、差し込み式ピンとして作られ、もう１つの結合部分は丸い挿入穴として作られる。本発明による、この結合部分の形状のために、投与部分は、ばんそう膏に対して回転することが可能である。これは、患者が動き回る自由度を増し、動き回る間のけがの危険性を減らす。投与部分が回転できると、例えば、静脈に差し込まれる針が、患者が動く時に静脈に入り込んでしまうことを防ぐことができる。
【０００８】
ばんそう膏は、肌表面や物の表面に貼り付けられる。投与部分は結合部分によって、簡単な方法で固定部分と取り外しが可能である。このように、投与部分が固定される時、ばんそう膏が投与部分の上に貼られたり、投与部分を覆い隠したりする必要はない。もし投与部分がフィルターであれば、前記のフィルターを容易に調べることができる。フィルターは結合部分を経由して、固定部分に取り外し可能な状態で結合されるので、フィルターの底部を調べたり、フィルターを交換したりする時には、固定部分を患者の肌や物の表面から外すことなく、フィルターをすばやく、容易に取り外すことが可能である。
【０００９】
これらの結合部分は、２つの投与部分の一方を他方の投与部分に留めることによって、投与部分が取り外し可能なように作られることが可能であるし、あるいは、結合部分が、かぎをかけるピンまたはそれに似たようなものを備え、結合部分を離すことは、ただ結合部分にかぎをかけないということだけで可能である。
【００１０】
２つの結合部分は、取り外し可能な、スナップ構成部分として作られることが好ましい。２つのスナップ構成部分の少なくとも１つは、少なくとも部分的に弾性であり、スナップは、２つあわせた場合、一対の結合部分となる。スナップ結合を離すために、スナップ部分は、投与部分がばんそう膏から取り外される前に、一方のスナップ構成部分の弾性部分を、手で押し戻さなければならないように作られることが可能である。スナップ部分は、投与部分を、ばんそう膏のスナップ構成部分を取り外すことによって離すことができるように作られることが好ましい。このために、一方のスナップ構成部分の弾性部分は弓状であり、投与部分が取り外される時に自動的に押し戻されるようになっている。スナップ構成が、このような方法で作られていると、一方のスナップ構成部分の弾性部分を手で押し戻す必要はない。
【００１１】
患者が、大いに自由に動き回ることができるように、差し込み式のピンは、少なくとも部分的に球形部分を含む。そのような差し込み式ピンの形状は、投与部分が差し込み式ピンの縦軸の周りに回転できるようになるだけではなく、投与部分を縦軸に対して傾けることも可能にする。このように、挿入穴を備えた差し込み式ピンの結合は、ボールソケット型接合である。
【００１２】
ばんそう膏を、とても薄い柔軟な物質から作り、水平でない平面に対してもくっ付くようにするために、差し込み式ピンをプラスター上に、挿入穴を投与部分に備えることが好ましい。挿入穴はポケットホールまたはスルーホールとして作られることが可能である。
【００１３】
（発明の実施の形態）
以下に、好ましい実施の形態と図とを参照して、本発明を詳細に説明する。
【００１４】
図１から図３で示される、患者に液状薬を投与する装置は、パーティクルやバクテリアをろ過するためのフィルター１０の形式の投与部と、フィルター１０が、以下に述べられるように取り外し可能な状態で結合する、ばんそう膏１１とから成る。フィルター１０は、雄ねじ１３のついた円筒状の注入スタッド１２を含んでいる。貯蔵タンクに結合された注射筒１４、または、投与管は、円筒スタッド１５を経由して注入スタッド１２に確実に結合される。このように、点滴と注入のための装置は両方とも、フィルター１０、または、他の投与部分と結合されることが可能である。このためにスタッド１５は、スタッド１５と同心に配置された円筒状の結合部分１６を含む。結合部分１６の外径は、フィルター１０の注入スタッド１２の内径に相当する。注射筒１４がフィルター１０に確実に結合されるように、スタッド１５は、注入スタッド１２の雄ねじ１３とかみあう雌ねじ１７を含んでいる。
【００１５】
フィルター１０の注入スタッド１２は、液状薬が、注射筒１４を経由して、上部のフィルター部分２１に流れ込むように、上部フィルター部分２１に結合される（図２）。下部のフィルター部分２２は、上部のフィルター部分に、薄膜フィルター２３で結合されており、この薄膜フィルターは、２つのフィルター部分の分離面に配置されている。液状薬は、薄膜フィルターを通して、上部のフィルター部分２１から下部のフィルター部分２２に流れ込む。下部のフィルター部分２２は、円筒状の排出スタッド２４を含み、この排出スタッドは、注射筒１４のスタッド１５に相当する、同心結合部分２５と雌ねじ２６を備えている。フィルター１０の排出スタッド２４は、カヌーレスタッド３０と結合するように適合している。このため、カヌーレスタッド３０は円筒状の先端３１を含み、この先端の外径は、フィルター１０の排出スタッド２４の内径に相当する。カヌーレスタッド３０の円筒形の先端３１においては、フィルター１０の排出スタッド２４の雌ねじ２６とかみあう突出部３２、または、雄ねじが備えられ、フィルター１０はカヌーレスタッド３０に、確実に、しっかりと結合される。カヌーレスタッド３０は、患者の体につながるカヌーレ３３に結合されている。
【００１６】
ばんそう膏１１は、底部に粘着性フィルムが備えられ、患者の肌３７、または、患者のベッドや保育器ような物の表面に貼り付けることが可能である。柔軟性のある物質で作られたばんそう膏１１は、中心に配置された差し込み式ピン３８を含む。この差し込み式ピンは、ばんそう膏１１が表面に貼り付けられると、表面から垂直に突出する。差し込み式ピン３８は、太い頭部をもち、頭部には弾性部分３９を含む。そしてこの弾性部分３９は、図１で示されている位置から、差し込み式ピン３８の頭部がより細くなるように圧縮することが可能である。差し込み式ピンの弾性部分３９に、圧力がかからなくなるとすぐに、弾性部分３９は、図１で示される元の位置に自動的に戻る。
【００１７】
フィルター１０をばんそう膏１１に固定するために、フィルター１０は、挿入穴４３を備える。挿入穴４３は、内部に広がるポケットホールの役割を果たす（図２）。従って、フィルター１０は、差し込み式ピン３８上に設置されることにより、スナップ式に固定されることが可能である。弾性部分３９の湾曲した形状と挿入穴４３の形が一致しているために、フィルター１０から、差し込み式ピン３８を簡単に取り外すことができる。スナップ結合を分離するのに、さらに追加の処理を行う必要がない。挿入穴４３は円形なので、フィルター１０は、プラスター１１に対してひねり回すことが可能である。
【００１８】
挿入穴４３が丸い形状であることと、差し込み式ピン３８の頭部が、太く球形になっていることから、フィルター１０の底部が表面３７にもはや平行に広がらないように、差し込み式ピン３８の縦軸の周りにフィルター１０を回転させて傾斜させることが可能である。これは患者の動きの自由度を増大させる。
【００１９】
図２に示されるように、ポケットホールとして作られた挿入穴４３の深さは、差し込み式ピン３８の長さと比較して選択され、フィルター１０が表面３７に対して、ある一定の距離に調節されるようになっている。このことは、もし表面３７が患者の肌であるなら、フィルター１０によって患者の肌が押されて痛くなることを防ぐ。さらに、差し込み式ピン３８の長さは、使用されるフィルター１０と投与管１４の半径に左右され、投与管１４が表面３７に支えられるように選択される。差し込み式ピン３８の形状により、フィルター１０を傾けることが可能であるので、投与管１４の半径と、差し込み式ピン３８の長さの、寸法の違いが補正されることが可能である。それ故、フィルター１０と投与管１４間の結合であるボールソケット型形状は、もし、全く一致しないフィルター１０と投与管１４が使われるなら、補正の目的にかなうものである。もし、長い半径をもつ注射器が、短期間、フィルター１０の注入スタッド１２に結合されるなら、フィルター１０から、ばんそう膏１１の差し込み式ピン３８が取り外され、注射器から液状薬が投与される時に、フィルター１０が、再び差し込み式ピン３８上に設置される。フィルター１０を固定する粘着性ストリップの、痛みを伴う除去は必要としない。
【００２０】
フィルター１０が、ばんそう膏１１を用いずに、患者の肌３７に直接固定されるように、ばんそう膏１１に面する側面４４は、丸こぶ４５を備え、空気がフィルター１０と肌表面３７の間で自由に循環できるようになっている。半球形で、目立つように配置された、丸こぶ４５は、肌がひりひりするのを、フィルターの底側のリブやそれによく似たものよりも小さい程度に抑え、押されることによる痛みやするどい角による傷を防ぐ。
【００２１】
ばんそう膏１１の除去を容易にするために、ばんそう膏１１は、粘着性のもので覆われていないフラップ４６を含む。
【００２２】
図３からわかるように、ばんそう膏１１は、フィルター１０よりもより大きい半径をもつ。フィルター１０が、ばんそう膏１１の差し込み式ピン３８上に設置されるとき、差し込み式ピン３８と挿入穴４３は、真上からは見ることができない。差し込み式ピン３８と挿入穴４３は両方とも、ばんそう膏１１とフィルター１０の中心に、それぞれ配置されているので、プラスターには、フィルター１０の半径よりもやや長い半径をもつ円板４７が取りつけられ、ばんそう膏に対して、フィルター１０を真上から容易に中心にあわせることができるようになっている。これは、ばんそう膏１１の差し込み式ピン３８と、フィルター１０の結合をかなり容易にする。
【００２３】
図４と５は、投与装置の第２の実施の形態を示している。例えば、フィルター５０は、液状薬を注入するために、長期間使用され、患者の肌、衣服、または、寝具に装着されることが可能である。示されている実施の形態において、フィルター５０は、実質的に三角形で平坦である。注入過程では、液状薬が患者の体に注入されるのといっしょに、汚染菌や気泡が運ばれないことが保証されなくてはならない。フィルター５０が間違って結合されないことを確実にするために、フィルター５０は、実質的に三角形の形状をしており、三角形の頂点は、流れの方向を指している。流れる方向がはっきりと確認できるように、フィルターは、漏斗の形状であるか、または、よく似た形状であることが可能である。
【００２４】
図５に示されるように、液状薬は、投与管５１を経由して、フィルター５０の左半分のフィルター５２に流れ込む。左半分のフィルター５２は、吸水性薄膜５４によって右半分のフィルター５３と分離されている。注入過程では起こらないが、比較的高圧になるまで、液状薬のみが吸水性薄膜５４にしみ込み、気体が全くしみ込まないというのが、この吸水性薄膜５４の特徴である。フィルターの上部では、液状薬ではなく、気体のみがしみ込む、疎水性薄膜５５が配置されている。吸水性薄膜は、フィルター５０から気体を抜くための２つの穴６１を含んでいる。排出管６０を通って、患者の体に通じるカヌーレに流れ込む液状薬のみが、吸水性薄膜５４にしみ込み、右半分のフィルター５３に流入することができる。
【００２５】
フィルター５０を患者の肌表面や物の表面に固定するために、第１の実施の形態で述べられたばんそう膏１１を使用することができる。フィルターの形状が平坦であると、フィルター部分のポケットホールへの供給は困難であるので、フィルター５０はスタッド６２を含み、これは、上部に投与管５１を保持したフィルター５０の上部にしっかりと結合されている。平坦なスタッド６２は、差し込み式のピン３８の軸の半径よりも大きく、差し込み式のピン３８の頭部の半径よりは小さい半径をもつ丸い挿入穴６３を含んでいる。このフィルター５０をばんそう膏１１に固定するために、フィルター５０は、差し込み式のピン３８の上に設置され、差し込み式のピン３８の弾性部分３９が、挿入穴６３によって圧縮され、弾性部分が挿入穴６３に入ったとき、元の形状に戻るようになっている。このように、フィルター５０は、取り外し可能なスナップ結合によって、ばんそう膏１１上に保持される。第１の実施の形態のように、フィルター５０から、差し込み式のピン３８を簡単に取り外すことによって、フィルター５０を離すことが可能である。
【００２６】
ばんそう膏１１が固定される肌表面や物の表面に、フィルター５０がよりかかるのを防ぐために、差し込み式ピンは、ばんそう膏１１に面した端にふくらみを持ち、その半径は、挿入穴６３よりも大きい。さらに、フィルター５０は、挿入穴をもつもう１つのスタッドを含み、フィルター５０が、数カ所で、ばんそう膏の差し込み式ピンに結合されることが可能となっている。
【００２７】
さらに、スタッド６２は、長方形の穴６４を備えている。テープを長方形の穴６４に通すことが可能で、フィルター５０が、テープやテープに備わる留め機能を使って患者の衣服に固定されるようになっている。フィルターは、長方形の穴６４に通されたテープによって、点滴スタンド、衣服、または、その他の物に固定されることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図１】 第１の好ましい実施の形態の図式的な斜視図。
【図２】 第１の好ましい実施の形態の図式的な側面図。
【図３】 第１の好ましい実施の形態の図式的な上面図。
【図４】 第２の好ましい実施の形態の図式的な上面図。
【図５】 第２の好ましい実施の形態の図式的な側面図。
【符号の説明】
１０、５０ 投与部分（フィルター）
１１ ばんそう膏
１２ 注入スタッド
１３ 雄ねじ
１４ 投与管（注射筒）
１５ 円筒スタッド
１６、２５ 結合部分
１７、２６ 雌ねじ
２１ 上部フィルター部分
２２ 下部フィルター部分
２３ 薄膜フィルター
２４ 排出スタッド
３０ カヌーレスタッド
３１ カヌーレスタッドの先端
３２ カヌーレスタッドの突出部
３３ カヌーレ
３７ 患者の肌
３８ 差し込み式ピン
３９ 弾性部分
４３、６３ 挿入穴
４４ 投与部分の表面
４５ 丸こぶ
４６ フラップ
４７ 円板
５１ 投与管
５２ 左半分フィルター
５３ 右半分フィルター
５４ 吸水性薄膜
５５ 疎水性薄膜
６０ 排出管
６１ 空気を逃がす穴
６２ 平坦スタッド
６４ 長方形穴

Claims (8)

1. 液状薬が流れる投与部分（１０、５０）と、投与部分（１０、５０）を固定するためのばんそう膏（１１）とから構成され、ばんそう膏（１１）は、投与部分（１０、５０）に備えられた第２連結部分（４３、６３）と取り外し可能な状態で結合する第１連結部分（３８）を備え、
   上記の２つの連結部分（３８、４３、６３）のうち一方は、差し込み式ピン（３８）として作られ、もう一方は、丸い挿入穴（４３、６３）として作られ、
   投与部分（１０、５０）は、ばんそう膏（１１）に対して、ばんそう膏の平面に垂直な軸の周りに回転が可能であることを特徴とする、患者に液状薬を投与する装置。
2. 上記の２つの連結部分（３８、４３、６３）が、スナップ構成部分として作られていることを特徴とする、請求項１記載の装置。
3. 上記の差し込み式ピン（３８）が、ばんそう膏（１１）が貼り付けられる表面に対して、投与部分（１０、５０）をある一定の距離で保持することを特徴とする、請求項１、または、２記載の装置。
4. 上記の差し込み式ピン（３８）がばんそう膏（１１）に備えられ、上記の挿入穴（４３、６３）が投与部分（１０、５０）に備えられていることを特徴とする、請求項１から３のいずれかに記載の装置。
5. ばんそう膏（１１）が、非粘着性フラップを含む、請求項１から４のいずれかに記載の装置。
6. 上記の投与部分（５０）が、さらに、テープで投与部分（５０）を固定するための長方形の穴（６４）を含む、請求項１から５のいずれかに記載の装置。
7. ばんそう膏（１１）に面した投与部分（１０）の表面（４４）が、丸こぶ（４５）を備えている、請求項１から６のいずれかに記載の装置。
8. 差し込み式ピン（３８）が、投与部分（１０、５０）が傾くように、丸く太い頭部を含むことを特徴とする、請求項１から７のいずれかに記載の装置。

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