JP4118004B2 - ハイドロフォーム成形品、同成形品のハイドロフォーム成形方法およびハイドロフォーム成形品を用いた車体部材 - Google Patents

ハイドロフォーム成形品、同成形品のハイドロフォーム成形方法およびハイドロフォーム成形品を用いた車体部材 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば一部の外形形状が他の部分より極端に小径な小径部をもつハイドロフォーム成形品、同成形品のハイドロフォーム成形方法およびハイドロフォーム成形品を用いた車体部材に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車(車両)のボディ(車体)は、ボディ側部からの衝突安全性を確保するために高い剛性強度が求められている。
【0003】
そこで、ボディ側部の骨格をなすセンタピラー部では、従来、図6(a),(b)に示されるようにサイドアウタパネル1にインナパネル2を組み付け、この構造物に対してセンタピラーリンフォース3を組み付けることが行われている。そして、さらに補強を必要とする個所にリンフォース、ここでは4種類のリンフォース4a〜4dを追加して補強することが行われている。
【0004】
ところで、こうした多くのリンフォースを組み付けて補強する構造は、組付精度がばらつきやすい。しかも、各種リンフォースは、所定の間隔を空けて行われるスポット溶接(アーク溶接)により組み付ける構造なので、求められる剛性強度が確保しにくい。
【0005】
そこで、閉断面形状を呈した1つの薄い板厚のリンフォースだけで、リンフォース類に置き換わる剛性強度を確保することが考えられている。
【0006】
具体的には、特開平8−337182号に示されるようなハイドロフォーム成形で形成された閉断面形状の部材を用いて、リンフォース部材とすることが考えられる。
【0007】
ハイドロフォーム成形は、上型と下型とがなす最終形状の型内に所定径(一定断面)の素管を収め、同素管内に水(加圧液)を圧入して内部からの加圧により素管を膨らませ(拡管)、膨らむ素管を上型と下型の型面になじませることにより、型面の形状にならう閉断面形状(口形状)の製品が成形される成形方法である。
【0008】
このハイドロフォーム成形で形成されるリンフォース部材は、連続した周壁で閉断面形状が形成されるだけでなく、素管の周壁が伸びることで生じる加工硬化により、薄い板厚でありながら、1部品で、複数種のリンフォース類に相当する高い剛性強度が得られる。しかも、スプリングバックがほとんどないので、製品精度がよく、組付精度の点にもよいことが挙げられる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ハイドロフォーム成形は、材料に過度に負担を強いたり、製品が破断したりすることがないよう、素管各部を均等に膨らませることが求められる。特にハイドロフォーム成形で良好な製品を得るためには、通常、拡管率は、ある範囲内(例えば0〜25%内)に収めることが求められる。
【0010】
ところで、車体のセンタピラー部は、上端側が小径で、下端側が大径で、上端側から下端側へ向かい断面が漸次変化する細長の形状をなしている。
【0011】
このため、ハイドロフォーム成形で、センタピラー部に組み付くリンフォースを成形する場合には、最終形状が小径となる部分を基準として素管を選び、これにハイドロフォーム成形を施すことになる。
【0012】
ところが、製品形状であるリンフォースの各部断面の大きさが異なるために、一定断面の素管は異なる拡管率で各部が膨らむ。特に小径部の有る上端部と大径部の有る下端部との両者間では、周長の差は著しく、小径側に比べ大径側は2倍、さらにはそれ以上となる。
【0013】
このため、拡管率は、通常の範囲内に収められず、ハイドロフォーム成形の成形品では、簡単には、センタピラー部のような、全長方向の一部に他の部分より小径な小径部を有する製品は得られなかった。
【0014】
本発明は上記事情に着目してなされたもので、その第1の目的とするところは、小径部を有する製品の品質向上が図れるハイドロフォーム成形品を提供することにある。
【0015】
また第2の目的とするところは、小径部を有する製品が、ハイドロフォーム成形により、拡管率をある範囲内に収めたまま行えるハイドロフォーム成形方法を提供することにある。
【0016】
また第3の目的とするところは、ハイドロフォーム成形品の特徴を用いて、剛性強度の向上が図れる車体部材を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記第1の目的を達成するために請求項1に記載のハイドロフォーム成形品は、ハイドロフォーム成形により、一定断面の素管から、全長方向の一部に他の部分より小径な小径部をもつ製品形状の製品に成形してなるハイドロフォーム成形品であって、前記製品は、前記ハイドロフォーム成形を行う前に、前記小径部となる周壁の前記素管の軸心方向に沿って、且つ、その周壁の円周方向の一箇所に、当該記小径部の周長を他の部分の周長と略一定にするための内側へ台形状に凹む部分をプレス加工により形成することで、前記ハイドロフォーム成形後前記凹む部分が前記小径部に残存されてなるようにした。
【0018】
上記第2の目的を達成するために請求項2に記載のハイドロフォーム成形方法は、ハイドロフォーム成形により、素管から、全長方向の一部に他の部分よりも小径な小径部をもつハイドロフォーム成形品を成形するに際し、前記素管の小径部が形成される周壁の前記素管の軸心方向に沿って、且つ、その円周方向の一箇所を内側へプレス加工により台形状に凹ませてから、前記ハイドロフォーム成形によって、前記凹みを前記小径部に残存させるとともに当該素管を製品形状に成形するようにした。
【0019】
上記第3の目的を達成するために請求項3に記載の車体部材は、断面形状が略コ字形で、一端側が小径に形成され他端が大径に形成され、かつ一方側から他方側へ向かい断面が漸次変化する細長のパネル部材と、前記パネル部材の内部に収容されて該パネル部材に取り付けられたリンフォース部材とを組み合わせたパネル構造のうち、リンフォース部材を、一定断面でかつ小径部に相当する周壁の前記素管の軸心方向に沿って、且つ、その円周方向の一箇所をプレス加工により台形状に凹ませた素管をハイドロフォーム成形によって、前記凹ませた周壁の一部を前記小径部に相当する周壁の一部に残存させたまま、前記パネル部材の内壁面にならう閉断面形状に成形した構成とした。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図1ないし図5に示す一実施形態にもとづいて説明する。
【0021】
図1は、自動車(車両)の車体側部に有るセンタピラー部11の構造の分解図を示している。センタピラー部11は、ルーフレール側に組み付く上端側の外形が小径で、サイドシル側に組み付く下端側の外形が大径で、かつ上端側から下端側へ向かい断面が漸次変化しながら上下方向に延びている細長の車体の骨格部分である。
【0022】
図中12は、このセンタピラー部11のうちの最も車外側に配置されるサイドアウタパネルを示している。このサイドアウタパネル12は、開口が車室内側に向く断面ハット型をなしている。そして、このサイドアウタパネル12の内部に補強用構造体13(本願の車体部材に相当)を組み付けて、剛性強度を高めている(補強)。
【0023】
この補強用構造体13には、1部品で図6中のインナパネル2およびリンフォース4a〜4dに置き換わる剛性強度をもたらすハイドロフォーム品製のリンフォース部材14(本願のハイドロフォーム成形品に相当)を、例えば図6中のセンタピラーリンフォース3(本願のパネル部材に相当)を用いて、サイドアウタパネル12内に組み付ける構造が採用されている。
【0024】
詳しくは、センタピラーリンフォース3は、断面形状が略コ字形、具体的には断面形状が略ハット型をなすパネル部品で形成されていて、外形は、サイドアウタパネル12と同様、上端側が細径で、下端側が大径で、上端側から下端側へ向かい断面が漸次変化する細長をなしている。
【0025】
リンフォース部材14は、断面が軸方向に沿って一定な断面の素管18にハイドロフォーム成形を施すことによって、センタピラーリンフォース3の内壁面にならう閉断面形状に成形した筒形の製品から形成されている。
【0026】
ここで、リンフォース部材14は、全長方向の一部である上端側に、他の部分、特に下部に有る大径部15aより著しく外径が小径な小径部15bを有しているから、単純に素管18を選んでハイドロフォーム成形(内部を加圧して素管を膨らませ型面になじませる成形)したのでは、小径側と大径側との拡管率が、良好な成形が行えるとされている範囲内(例えば0〜25%)に収まらない。
【0027】
そこで、良好な製品が得られる工夫が施してある。この工夫は、製品であるリンフォース部材14のうち、小径部15bが形成されている領域の周壁の一部、例えばリンフォース部材14の車室内に向く壁部分に、図1中の拡大した図に示されるように内側へ例えば台形状に凹む凹状部16を軸心方向沿いに形成して、当該凹状部16の内側に隠れた周壁部分16aで、同小径部15bの周長をかせで、小径部15bでありながら当該小径部15bの周長を、大径部15aを含む他の部分の周長と略一定にしたものである。
【0028】
これにより、リンフォース部材14は、大径部15aおよび小径部15bを含む全体が、素管18から制約されたある範囲内の拡管率(例えば0〜25%の範囲内)で成形された製品となるから、破断や過度な応力負担のない良好な品質の製品となる。しかも、内側に入り込んだ周壁部分16aにより、小径部15bの断面係数は高くなるので、同部分の剛性強度が飛躍的に高められる。そのうえ、上記工夫は、凹みを形成するだけなので、簡単である。
【0029】
また同製品の成形の仕方にも、この考えによる工夫が施してある。同成形方法は、リンフォース部材14(ハイドロフォーム成形品)を成形するときに、図2(a)〜(e)に示されるように一定断面の素管18のうち小径部15bが形成される周壁の一部に凹みを形成してから、当該素管18にハイドロフォーム成形を施して、制約されたある範囲内の拡管率での成形を可能にしたものである。
【0030】
具体的には、同ハイドロフォーム成形方法は、図2(a)に示されるように製品小径部より大きな外径をもち一定断面をもつ所定長さの素管18を用い、製品の小径部15bと対応する素管18の周壁部分の一部(製品の使用に際して、支障とならない部分)に、例えばプレス機20で、図2(b)に示されるように軸心方向に沿う細長の凹状部16(凹み)を形成する。続いて、図2(c)に示されるようにこの凹状部16で小径側の外径が小さくなった素管18を、ハイドロフォーム成形機21の上型22と下型23とがなす最終形状(製品形状)の型内に収める。そして、ハイドロフォーム成形機21を稼動させて、図2(c),(d)に示されるように同素管18内に水(加圧液)を圧入して内部からの加圧により素管18を膨らませ(拡管)、膨らむ素管18を上型22と下型23の型面になじませる。
【0031】
このとき、小径部15bが形成される素管部分は、凹みにより、他の部分(含む大径部15a)と同じ周長を有して外形が小さく(細)なっているから、素管18の各部は、いずれも素管18から、ある範囲内の拡管率(例えば0〜25%の範囲内)を保ったまま成形される。
【0032】
したがって、図2(e)に示されるような全長方向の一部に極端に小径となる部分をもつ製品、すなわち下端部に大径部15aを有し、上端部にそれより極端に外径が小さな小径部15bを有する矩形の閉断面形状をもつリンフォース部材14は、破断したりせずに良好に成形される。
【0033】
こうしたリンフォース部材14が、図3(a),(b)および図4に示されるようにセンタピラーリンフォース3内の上段から中段にかけての部位に嵌挿され、さらにアーク溶接で同部分に固定され、センタピラー部11の補強に適した補強用構造体13を構成している。なお、同図中、符号24はその溶接部分を示す。
【0034】
そして、今までの車体の組立ラインにおけるスポット溶接の組付工程をそのまま用いて、この補強用構造体13をサイドアウタパネル12に溶接してある。具体的には、センタピラーリンフォース3は、今までと同じ構造、すなわち両側にフランジ部3a,3aを有したハット型構造であるから、同リンフォース3をサブ組付部品として用いて、今までのスポット溶接による補強材の組付工程のときと同じく、図5(a)に示されるようにセンタピラーリンフォース3のコ字形部分をサイドアウタパネル12のコ字形部分内に嵌めつつ、センタピラーリンフォース3の両側のフランジ部3a,3aを、サイドアウトパネル12の両側のフランジ部12a,12aに重ねてから、図5(b)に示されるようにフランジ部同士をスポット溶接することにより、補強構造体13をサイドアウタパネル12に組み付けている。なお、図5(b)中、25はその溶接部分を示し、26は接合されたフランジ部3a,12aに組み付くフランジトリムを示す。
【0035】
これにより、剛性強度や組付精度に優れるハイドロフォーム成形品を利用して、車体の骨格部材であるセンタピラー部11の剛性強度が図れる。しかも、拡管率をある範囲内に収める凹状部16の開口を車室内側に配置して、同凹状部16の向き合う両側の壁部16a,16a(縦壁)を車内・外方向に向かせることによって、同部分を活用して、車体側部から加わる側面衝突やシートベルトアンカに加わる大入力の衝撃に対する圧縮側の補強が行える。
【0036】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施しても構わない。例えば実施形態では、車体の骨格部材となるセンタピラー部にハイドロフォーム成形品を用いた例を挙げたが、これに限らず、他の車体の部材に用いてもよい。むろん、ハイドロフォーム成形品は、コ字形やハット形のセンタピラーリンフォースなどのサブ組付部品を用いずに、直接、コ字形やハット形のサイドアウタパネルといったアウタパネル部材の内部に組み付けてもよく、またハイドロフォーム成形品そのものだけで車体の骨格部材を構成してもよい。もちろん、本発明は、車体に限らず、他の構造物に適用してもよい。また素管に形成する凹みの形成は、ハイドロフォーム成形機の前段で、別途、加工機で形成するのでなく、例えばハイドロフォーム成形機の上型に突起部を形成して、下型との型締め時に該突起部で素管の周壁に凹みを形成するようにしてもよく、凹みの形成の仕方には限定されるものではない。
【0037】
【発明の効果】
以上説明したように請求項1に記載の発明によれば、極端に小径な小径部が有る製品でも、凹みの形成により、ハイドロフォーム成形で、高品質な製品を得ることができる。
【0038】
請求項2に記載の発明によれば、小径部が形成される素管の周壁に凹みを形成してから、ハイドロフォーム成形を行う成形により、極端に小径な小径部をもつ製品でも、拡管率をある制約された範囲内に収めて成形でき、高品質の成形が約束できる。
【0039】
請求項3に記載の発明によれば、ハイドロフォーム成形品の特有の特徴を活かして剛性強度が図られた車体部材が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るハイドロフォーム成形品で形成されたリンフォース部材を、同部材が組み付く車両のセンタピラー部と共に示す分解斜視図。
【図2】同リンフォース部材がハイドロフォーム成形で成形される工程を説明するための図。
【図3】ハイドロフォーム成形品で形成されたリンフォースとサブ組付部品とが組み付けられたサブアッセンブリ部品を説明するための図。
【図4】図3(a)中のA−A線に沿うサブアッセンブリ部品の断面図。
【図5】同サブアッセンブリ部品がアウタパネル部材と組み付くまでを説明するための断面図。
【図6】(a)従来の車両のセンタピラー部の構造を説明するための分解斜視図。
(b)同組み上がるセンタピラー部の構造を示す平断面図。
【符号の説明】
3…センタピラーリンフォース(パネル部材)
11…センタピラー部
12…サイドアウタパネル(アウタパネル部材)
13…補強用構造体(車体部材)
14…リンフォース部材(ハイドロフォーム成形品)
15a…大径部
15b…小径部
16…凹状部(凹み)
18…素管
21…ハイドロフォーム成形機。

Claims (3)

  1. ハイドロフォーム成形により、一定断面の素管から、全長方向の一部に他の部分より小径な小径部をもつ製品形状の製品に成形してなるハイドロフォーム成形品であって、
    前記製品は、前記ハイドロフォーム成形を行う前に、前記小径部となる周壁の前記素管の軸心方向に沿って、且つ、その周壁の円周方向の一箇所に、当該記小径部の周長を他の部分の周長と略一定にするための内側へ台形状に凹む部分をプレス加工により形成することで、前記ハイドロフォーム成形後前記凹む部前記小径部に残存されてなる
    ことを特徴とするハイドロフォーム成形品。
  2. ハイドロフォーム成形により、素管から、全長方向の一部に他の部分よりも小径な小径部をもつハイドロフォーム成形品を成形するに際し、前記素管の小径部が形成される周壁の前記素管の軸心方向に沿って、且つ、その円周方向の一箇所を内側へプレス加工により台形状に凹ませてから、前記ハイドロフォーム成形によって、前記凹みを前記小径部に残存させるとともに当該素管を製品形状に成形する
    ことを特徴とするハイドロフォーム成形方法。
  3. 断面形状が略コ字形で、一端側が小径に形成され他端が大径に形成され、かつ一方側から他方側へ向かい断面が漸次変化する細長のパネル部材と、
    前記パネル部材の内部に収容されて該パネル部材に取り付けられるリンフォース部材とを有し、
    前記リンフォース部材は、一定断面でかつ小径部に相当する周壁の前記素管の軸心方向に沿って、且つ、その円周方向の一箇所をプレス加工により台形状に凹ませた素管をハイドロフォーム成形によって、前記凹ませた周壁の一部を前記小径部に相当する周壁の一部に残存させたまま、前記パネル部材の内壁面にならう閉断面形状に成形してなる
    ことを特徴とする車体部材。
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