JP4117554B2 - モータ制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、交流回転電機の制御装置に関し、特に交流回転電機の磁気騒音低減を実現するモータ制御装置に関する。
近年、電気自動車、ハイブリッド自動車、燃料電池自動車などが実用レベル又は開発レベルとなっている。これらの自動車では大出力の交流回転電機が走行動力発生用の主要要素となっているが、このような大出力交流回転電機ではその磁気騒音が大きいという問題があった。また、種々の用途において、静粛な交流モータが要望されており、交流回転電機の磁気騒音低減に関する種々の技術が提案されている。たとえば、特許文献1は、電動機の誘起電圧に含まれる高調波成分を打ち消す電圧成分をインバータの出力電圧に重畳することによりトルク脈動やそれによる騒音を低減することを提案している。
その他、たとえば、特許文献2は、通電電流の基本周波数成分に対してその高調波成分を積極的に重畳してトルク脈動の低減を図るとことを提案している。
特許第2928594号公報 特開平11−55986号公報
しかしながら、上記した従来の高調波重畳式磁気騒音低減技術にもかかわらず、交流回転電機の低騒音化は満足できる水準に達していると言えるものではなかった。この理由について以下に説明する。
騒音は振動体(ここでは交流回転電機の鉄心)の機械的振動により発生するため、何らかの振動手段を付加して、減衰すべき周波数の振動エネルギーと同一周波数、逆位相、等しい振幅をもつ振動エネルギーを加えれば、振動体のこの周波数における振動をキャンセルできるはずである。また、電機子電流の基本周波数成分に対してなんらかの高調波成分を加えることにより磁気騒音を低減できる知見自体は上記したように以前より種々主張されている。
しかしながら、これら先行技術文献は、交流回転電機の所定周波数の磁気騒音(音響エネルギー)を低減するために、その電機子コイルにどのような周波数、位相、振幅を重畳すればよいか、すなわち低減すべき音響(振動エネルギー)と通電電流との数量的関係について具体的に記載しておらず、ある特定周波数の磁気騒音を低減するためのどのような電流を流すべきかが不明であったため、その実用化は困難であった。更に、この磁気騒音とそれを抑制するための電流との間の関係は交流回転電機の構造やその使用状態により種々変動するはずであり、その結果、上記高調波重畳式磁気騒音低減技術は理念としては知られていてもいまだ実用されたものはなかった。
本発明は上記問題点に鑑み、種々の交流回転電機の磁気騒音を良好に低減可能な交流回転電機の磁気騒音低減方法及びそれを用いるモータ制御装置を提供することをその目的としている。
請求項1記載のモータ制御装置は、m(mは3以上の正の整数)相の車両用同期交流回転電機の回転位置を検出する回転角検出要素と、検出された前記回転位置に基づいて前記交流回転電機の電機子の各相巻線に所定の基本周波数及び振幅を有する相電流を個別に加えるモータ電流制御要素とを備えるモータ制御装置において、
前記各相巻線を流れる相電流を検出する相電流検出要素を有し、
前記モータ電流制御要素は、前記回転角センサの出力信号により指定される前記相電流の基本周波数成分のd−q軸座標系に前記各相電流の検出値を座標変換して、d軸検出値Idおよびq軸検出値Iqを出力する相電流検出値座標系変換要素と、前記相電流の基本周波数成分の目標値である基本波指令値の前記d−q軸座標系上のd、q軸成分であるd軸基本波指令値Id1*およびq軸基本波指令値Iq1*を出力する基本波指令値出力要素と、6k+1(kは整数、基本周波数成分のkは0)次の高調波電流成分の目標値である高調波指令値の前記d−q軸座標系上のd、q軸成分であるd軸高調波指令値Id6k+1*およびq軸高調波指令値Iq6k+1*を出力する高調波指令値出力要素と、(id1*)+(Id6k+1*)−(Id)を演算してd軸電流偏差ΔIdを求め、かつ、(Iq1*)+(Iq6k+1*)−(Iq)を演算してq軸電流偏差ΔIqを求める電流偏差演算要素と、前記d軸電流偏差ΔIdおよびq軸電流偏差ΔIqに基づいて前記各相巻線に印加する相電圧を制御して、前記d軸電流偏差ΔIdおよびq軸電流偏差ΔIqを0に向けて収束させる相電圧制御要素とを備え、
前記高調波指令値出力要素は、前記交流回転電機が発生する又は外部から前記交流回転電機に入力される加振力により前記交流回転電機の回転軸の軸心を中心として放射状に発生する振動である径方向振動のうちの前記基本周波数成分の6k(次)倍の高調波成分を、前記d軸高調波指令値Id6k+1*およびq軸高調波指令値Iq6k+1*の前記d軸基本波指令値Id*およびq軸基本波指令値Iq*への重畳処理により減衰させるものであることを特徴としている。
請求項2記載のモータ制御装置は、m(mは3以上の正の整数)相の車両用同期交流回転電機の回転位置を検出する回転角検出要素と、検出された前記回転位置に基づいて前記交流回転電機の電機子の各相巻線に所定の基本周波数及び振幅を有する相電流を個別に加えるモータ電流制御要素とを備えるモータ制御装置において、
前記モータ電流制御要素は、前記相電流の基本周波数成分の目標値である基本波指令値のd−q軸座標系上のd、q軸成分であるd軸基本波指令値Id1*およびq軸基本波指令値Iq1*を出力する基本波指令値出力要素と、6k+1(kは整数、基本周波数成分のkは0)次の高調波電流成分の目標値である高調波指令値の前記d−q軸座標系上のd、q軸成分であるd軸高調波指令値Id6k+1*およびq軸高調波指令値Iq6k+1*を出力する高調波指令値出力要素と、(id1*)+(Id6k+1*)を演算してd軸電流指令値Id*を求め、かつ、(Iq1*)+(Iq6k+1*)を演算してq軸電流指令値Iq*を求める電流指令値演算要素と、d軸電流指令値Id*およびq軸電流指令値Iq*に基づいて前記各相巻線に印加する相電圧を制御して、前記相巻線にd軸電流指令値Id*およびq軸電流指令値Iq*に相当する相電流を通電する相電圧制御要素とを備え、
前記高調波指令値出力要素は、前記交流回転電機が発生する又は外部から前記交流回転電機に入力される加振力により前記交流回転電機の回転軸の軸心を中心として放射状に発生する振動である径方向振動のうちの前記基本周波数成分の6k(次)倍の高調波成分を、前記d軸高調波指令値Id6k+1*およびq軸高調波指令値Iq6k+1*の前記d軸基本波指令値Id*およびq軸基本波指令値Iq*への重畳により減衰させるものであることを特徴としている。
請求項3記載の発明は請求項1又は2記載のモータ制御装置において、前記kは1および/又は2であることを特徴としている。
すなわち、これらの発明では、径方向における6k次(モータ電流の基本周波数成分の6k倍)の周波数の振動、騒音を低減するために、モータ電流に6k+1次の高調波電流成分を重畳する。その位相および振幅は、実験などによりもしくは後述する式により適宜設定すればよい。このようにすれば、交流回転電機が発生する又は外部から交流回転電機に入力される加振力により交流回転電機の回転軸の軸心を中心として放射状に発生する径方向振動のうちのk次の高調波成分を良好に低減でき、いわゆる磁気騒音を良好に低減することが実用レベルにて初めて可能となった。
以下、更に詳しく説明する。
磁気騒音は、交流回転電機の鉄心の磁気力(磁気加振力)により形成される振動(磁気振動ともいう)に起因し、この磁気振動は周方向振動と径方向振動の合成振動となる。
鉄心の周方向振動はトルクリップルを生じさせるが、ステータ鉄心又はロータ鉄心はほぼ円筒形状又は円柱形状を有しているため、これら鉄心が周方向に周期的に振動したとしても、この振動による鉄心に接する空気の振動すなわち磁気騒音は小さい。これに対して、鉄心の径方向の振動はステータ鉄心又はロータ鉄心の外周面又は内周面の径方向振動を生じさせるが、これら外周面又は内周面は空気に接しているため、ステータ鉄心又はロータ鉄心の径方向振動により、これら外周面又は内周面が径方向に振動し、大きな磁気騒音を生じさせる。すなわち、磁気加振力の周方向成分を低減することにより主としてトルク脈動が低減され、磁気加振力の径方向成分を低減することにより主として磁気騒音が低減される。
この知見に鑑み、本発明では、通常はロータ起磁力及びステータ電流(基本周波数成分)により形成される磁気加振力の径方向成分(径方向磁気的加振力ともいう)の所定次数の高調波成分を低減するために、この磁気加振力の高調波成分とのベクトル和の振幅が減少する(元の状態よりも小さくなる)位相、振幅をもつ磁気加振力を追加するべく、この磁気加振力(径方向磁気振動成分)の次数よりも1だけ大きい次数の径方向振動低減用高調波電流を上記ステータ電流(多相交流電流)に重畳させる。このようにすれば、磁気騒音を良好に低減できることがわかった。
なお、この径方向振動低減用高調波電流の重畳により、上記ロータ起磁力及びステータ電流(基本周波数成分)により形成される磁気加振力の径方向成分の他、交流回転電機のその他の径方向振動、たとえば外部から入力される径方向振動も低減することができる。
以下、本発明の好適態様を図面を用いて説明する。
(原理説明)
以下、本発明を多相交流回転電機に適用した場合の原理を以下に説明する。
図1は、N相交流回転電機の一相分の磁気回路を模式図示した図であり、図2は図1の等価磁気回路図である。同期機では磁束φはロータの磁極(コイル又は永久磁石により形成される)により形成され、ロータ起磁力Fmagは磁気回路におけるロータの磁極の起磁力すなわち磁界強度であり、ステータ起磁力Fcoilは、ステータ電流により磁気回路に形成される起磁力すなわち磁界強度である。Rgはステータとロータとの間のギャップの磁気抵抗である。
図1、図2から、1相あたりの、磁束φ、磁気エネルギーW、径方向の磁気加振力fが、
により定義される。すなわち、磁気加振力fは、ロータ起磁力の2乗と、ステータ起磁力の2乗と、ロータ起磁力とステータ起磁力との積との合計として定義される。
上記図及び数式において、Icoilはステータ電流(電機子の相電流)、xはギャップ幅、Sはギャップ部対向面積、μ0は空気の透磁率、Nは電機子の各相コイルのターン数である。
この多相交流回転電機の第1相、第2相、第(N-1)相のロータ起磁力Fmagとステータ電流(相電流)Icoilとを、
に示す。当業者であれば容易に理解されるので、残りの相のロータ起磁力Fmag及びステータ電流Icoilの記載は省略する。
なお、Fiはロータ起磁力のi次成分の振幅、Iiはステータ電流のi次成分の振幅、θはロータの回転角、α、β、γ、δ、s、t、uは位相角、j、k、L、m、nは整数値である。
これらの式において、ロータ起磁力Fmagは高調波としてj、k、L次の高調波成分だけをもち、ステータ電流Icoilは高調波としてm、n次の高調波成分だけをもつとしたが、更に他の高調波をもっていてもよいことは明白である。単純化のために、三相交流回転電機に限定すると、数4、数5、数6は下記のようになる。
数7を数3に代入して得られる数10によりU相加振力fuが得られる。
数8を数3に代入して得られる数11によりV相加振力fvが得られる。
数9を数3に代入して得られる数12によりW相加振力fwが得られる。
数4〜数6において、θは基本波の角度である。θは基本波の角速度をωとすればωtに等しく、また基本波の周波数(基本周波数)をfとすれば2πftに等しいことは当然である。また、数4〜数6において、360、120、240という数値は、実際の計算では、2π、2π/3、4π/3にそれぞれ読み替えるのが簡単である。
磁気音は上記各相加振力のベクトル和に正相関を有するわけであるが、各相加振力は、数41、数42、数43に示されるように多数の項の一次関数(和また差の式)となっている。各相加振力の合計は、各相の各項を互いに同一の次数ごとに(各周波数ごとに)別々にベクトル加算した項(以下、ベクトル加算項ともいう)の一次関数(和また差の式)となる。磁気音は、各ベクトル加算項において、ベクトル加算項を構成する各項が同位相(似た位相)で強めあう場合に問題となり、各ベクトル加算項を構成する各項の位相が大きく異なる場合にはベクトル加算項の振幅が小さくなるため、ほとんど問題とはならない。
すなわち、数10、数11、数12を加算した場合、ベクトル加算項を構成する各項が同位相となってベクトル加算項の振幅が上記各項の振幅に対して大幅に大きくなるのは、(m−1)次、(n−1)次、(n−m)次となる。
数10、数11、数12から、ステータ電流Icoilにm次高調波電流成分、n次高調波電流成分を重畳すると、常に、(m−1)次、(n−1)次、(n−m)次の加振力成分を顕著に生じさせることがわかる。
ということは、ある位相をもつx次の高調波電流成分を重畳することにより、(x−1)次の加振力を発生することができることがわかる。
したがって、現在発生している磁気音の原因となる磁気音の(x−1)次成分をキャンセルするために、この磁気音の(x−1)次成分と逆位相、等振幅をもつ加振力を発生するx次の高調波電流を重畳することにより、磁気音をキャンセルすることができる。また、位相が完全に逆位相となっていなくても、振幅が完全に等しくなくても、ベクトル加算されたそれらの和の振幅を小さくすることにより、大幅に低減することができる。
また、現在発生している磁気音の原因となる磁気音の(x−1)次成分を変更(増大又は低減)するために、この磁気音の(x−1)次成分と逆位相、等振幅をもつ加振力を発生するx次の高調波電流をステータ電流の基本周波数成分に重畳することにより、磁気音を変更(増大又は低減)することができる。つまり、ベクトル加算されたそれらの和の振幅が増加したり、減少したりすることができる。
交流回転電機の(x−1)次の磁気音を増加又は低減するために、x次の高調波電流を好適位相、好適振幅で重畳すればよいという知見は、従来知られていなかったものであり、今後の低騒音モータの開発において非常に重要である。
同様に、数10、数11、数12から、ステータ電流Icoilにm次高調波電流成分とn次高調波電流成分とを重畳することにより、(m−1)次、(n−1)次、(n−m)次の磁気加振力成分を同時に変更(増加又は低減)することもできる。ただし、この場合、重畳するm次高調波電流成分の位相及び振幅と、n次高調波電流成分の位相及び振幅とによって、(m−1)次、(n−1)次、(n−m)次の加振力が生じるために、これらの加振力と、本来存在する(m−1)次、(n−1)次、(n−m)次の磁気音とのそれぞれの次数でのベクトル和がすべて0となることは容易ではない。しかし、各次の加振力のベクトル和の振幅ができるだけ小さくなるようにもしくは所望の大きさになるように重畳電流の位相及び振幅を調整することができる。
交流回転電気の(m−1)次、(n−1)次、(n−m)次の磁気音を同時に変更(低減又は増大)するために、m次、n次の高調波電流を好適位相、好適振幅にて加算すればよいという知見は、従来知られていなかったものであり、今後の低騒音モータの開発において非常に重要である。
数10、数11、数12にて表される各項のうち、ベクトル和が0となる項を消去して簡略化した式を以下に示す。
三相交流回転電機のロータ起磁力Fmagの高調波としては、3次高調波成分と5次高調波成分と7次高調波成分がほかの次数の高調波成分よりも格段に優勢であるので、ロータ起磁力Fmagの基本波成分と3次高調波成分と5次高調波成分と7次高調波成分とをもち、磁気音変更のための高調波電流を重畳しない場合について、生じる磁気音(磁気音)を以下に説明する。
整数値(次数値)は、j=3、k=5、L=7となるので、これを数7〜数9に代入すると、下記の式となる。
これら数16、数17、数18を数3に代入し、高調波電流重畳しないので、m=0(Im=0)、n=0(In=0)とすれば、下記の式が得られる。
数19、数20、数21において、ベクトル和が0となる項を消去し、同位相で強め合う項と直流成分項とを抜粋すると、下記の式となる。
したがって、数22、数23、数24を加算して得られる各相加振力の合計は、下記の数25となる。
数8において、○で囲んだ数字を丸数字というものとすると、丸数字1で示される項は加振力合計の直流成分項、丸数字2で示される項はロータ起磁力Fmagの3次の高調波により生じる6次の高調波成分、丸数字3で示される項はロータ起磁力Fmagの1次と5次の高調波により生じる6次の高調波成分、丸数字4で示される項はロータ起磁力Fmagの1次と7次の高調波により生じる6次の高調波成分、丸数字5で示される項はロータ起磁力Fmagの5次と7次の高調波により生じる12次の高調波成分、丸数字6で示される項はロータ起磁力Fmagの5次の高調波とステータ電流の1次電流成分(基本波)により生じる6次の高調波成分、丸数字7で示される項はロータ起磁力Fmagの7次の高調波とステータ電流の1次電流成分(基本波)により生じる6次の高調波成分となる。
すなわち、三相交流回転電機の磁気音は、ロータ起磁力Fmagの基本波成分と3次高調波成分と5次高調波成分と7次高調波成分により、6次と12次の磁気音成分に起因することが数25からわかる。
そこで、これら6次と12次の磁気音成分の変更(低減又は増大)のために、ステータ電流Icoilに7次高調波成分と13次高調波成分を重畳した場合を以下に説明する。
この場合、数7、数8、数9において、j=3、k=5、L=7、m=7、n=13とすれば、下記の式となる。
数26、数27、数29を用いて、数10、数11、数12を計算すると、下記の式が得られる。
数29、数30、数31において、ベクトル和が0となる項を消去し、同位相で強め合う項と直流成分項とを抜粋すると、下記の式が得られる。
これらの式を数25と同様に整理すると、各相加振力の総和は、下記の式となる。
この数35において、
丸数字1で示される項は直流成分項、
丸数字2で示される項はロータ起磁力Fmagの3次の高調波により生じる6次の高調波成分、
丸数字3で示される項はロータ起磁力Fmagの1次と5次の高調波により生じる6次の高調波成分、
丸数字4で示される項はロータ起磁力Fmagの1次と7次の高調波により生じる6次の高調波成分、
丸数字5で示される項はロータ起磁力Fmagの5次と7次の高調波により生じる12次の高調波成分、
丸数字6で示される項はロータ起磁力Fmagの5次の高調波とステータ電流の1次電流成分(基本波)により生じる6次の高調波成分、
丸数字7で示される項はロータ起磁力Fmagの7次の高調波とステータ電流の1次電流成分(基本波)により生じる6次の高調波成分となる。
丸数字8で示される項はロータ起磁力Fmagの1次の成分(基本波)とステータ電流の7次の高調波により生じる6次の高調波成分、
丸数字9で示される項はロータ起磁力Fmagの1次の成分(基本波)とステータ電流の13次の高調波により生じる12次の高調波成分、
丸数字10で示される項はロータ起磁力Fmagの5次の高調波とステータ電流の7次の高調波により生じる12次の高調波成分、
丸数字11で示される項はロータ起磁力Fmagの5次の高調波とステータ電流の13次の高調波により生じる18次の高調波成分、
丸数字12で示される項はロータ起磁力Fmagの7次の高調波とステータ電流の13次の高調波により生じる6次の高調波成分、
丸数字13で示される項はステータ電流の1次の成分(基本波)と7次の成分により生じる6次の高調波成分、
丸数字14で示される項はステータ電流の1次の成分(基本波)と13次の成分により生じる12次の高調波成分、
丸数字15で示される項はステータ電流の7次の成分と13次の成分により生じる6次の高調波成分である。
結局、数12で示される各相加振力の合計は、6次、12次の高調波となるので、上記丸数字2、3、4、6、7、8、12、13、15の項の位相角や各振幅を設定すれば、上記丸数字2、3、4、6、7、8、12、13、15の項のベクトル和を0、又は、小さくしたり、又は、大きくしたりすることができ、磁気音の6次の騒音をキャンセル乃至低減(乃至増大)を実現することができる。
同様に、上記丸数字5、9、10、14の項の位相角や各振幅を設定すれば、上記丸数字5、9、10、14の項のベクトル和を0、又は、小さくしたり、又は、大きくしたりすることができ、磁気音の12次の騒音をキャンセル乃至低減(乃至増大)を実現することができる。
つまり、数35において、7次の高調波電流成分と13次の高調波電流成分との位相と振幅とを調整することにより、数35に示す直流項以外の項の和を0として三相交流回転電機において最も重要となる磁気音の6次の高調波成分と12次の高調波成分をキャンセルしたり、数35に示す直流項以外の項の和を所定レベル以下として三相交流回転電機において最も重要となる磁気音の6次の高調波成分となる12次の高調波成分を低減(乃至増大)したりすることができる。
磁気音の6次高調波のキャンセル条件を下記の式に示す。
数36において、破線にて示す各項の和または差は磁気音成分となる径方向磁気加振力の6次高調波のベクトル和を表し、実線にて示す各項の和または差はキャンセル用の高調波電流による加振力の6次高調波のベクトル和を示す。したがって、数36において、これら両者のベクトル和が0となるように、位相角と振幅を定めればよい。磁気音の12次高調波のキャンセル条件を下記の式に示す。
数37において、破線にて示す各項の和または差は磁気音成分となる12次高調波のベクトル和を表し、実線にて示す各項の和または差はキャンセル用の高調波電流による加振力の12次高調波のベクトル和を示す。したがって、数37において、これら両者のベクトル和が0となるように、位相角と振幅を定めればよい。
なお、上記した数35、数36、数37において、回転数の関数としてのθは刻々と変化するので、基本波の回転数や位相や振幅の時間変化につれて、数35に示す磁気音の総和を所定レベルとするための高調波電流の振幅と位相とは刻々と変化する。同様に、数36、数37を満足する高調波電流の振幅と位相も刻々と変化する。このため、重畳する高調波電流の振幅と位相とは、基本波電流の周波数、位相、振幅に応じて所定時間ごとに演算される。
(変形態様)
上記した実施例では、3、5、7次高調波を含むロータ起磁力Fmagにより生じる6次、12次の磁気音を7次、13次の高調波電流成分の重畳によりキャンセル又は低減する場合を示した。同様に、ある次数の高調波電流を重畳することによりこの次数より1だけ低い次数の磁気音(磁気音)を低減できるという手法を採用することにより、任意の次数の磁気音の高調波を1種類だけ、あるいは互いに異なる次数をもつ複数種類の高調波を低減乃至キャンセルできる。
たとえば、上記説明した式において、6次の磁気音(磁気音)だけをキャンセル乃至低減することもでき、12次のそれだけをキャンセル乃至低減することも、数91、数92、数93の該当項を0とすることにより簡単に実施することができる。また、三相交流回転電機とは異なる多相交流回転電機であっても、ある次数の高調波電流を重畳することにより、この次数より1だけ低い次数の磁気音(磁気音)を低減できるという知見が成立することは、上記各式を相の変更に合わせて変更すれば容易にわかる。
(変形例)
また、分布巻きと呼ばれる多スロット構成(たとえば毎相毎極2乃至3スロットの構成)においても、この実施例を適用することができることは当然である。
(変形例)
上記した説明では、ステータ電流Icoilを静止座標軸(角度θ)を基準に説明を行ったが、ステータ電流Icoilをその基本周波数成分の回転座標系(d、q軸)を基準として表示することも当然可能である。
次に、上記した磁気音低減を実現するモータ制御回路の例を以下に説明する。
(実施例1)
上記した高調波電流の重畳制御を図3〜図6を参照して説明する。図3はこの実施例のモータ制御装置を示すブロック回路図、図4は座標変換回路2の一例を示すブロック回路図、図5は回路各部の信号波形(回転座標系表示)を示す波形図、図6は回路各部の信号波形(静止座標系表示)を示す波形図である。
このモータ制御装置はモータ電流をフィードバック制御を行う実施例であって、1は基本波指令値発生回路、2は高調波指令値発生回路、3、4は加算器、5、6は減算器、7、8はPIアンプ(比例−積分回路)、9は座標変換回路、10はPWM電圧発生回路、11は三相インバータ、12は2つの電流センサ(相電流検出要素)、13は三相同期電動発電機(車両用同期交流回転電機)、14はレゾルバ(回転角検出要素)、15は位置信号処理回路、16は遅れ補償回路、17は座標変換回路である。
上記各構成要素1〜17のうち三相同期電動発電機13を除く構成要素は、本発明で言うモータ制御装置を構成しており、上記各構成要素1〜17のうち電流センサ(相電流検出要素)12、三相同期電動発電機(車両用同期交流回転電機)13およびレゾルバ(回転角検出要素)をのぞく構成要素(回路)は、本発明で言うモータ電流制御要素を構成している。
また、構成要素(回路)17は本発明で言う相電流検出値座標系変換要素を構成し、構成要素(回路)1は本発明で言う基本波指令値出力要素を構成し、構成要素(回路)2は本発明で言う高調波指令値出力要素を構成し、構成要素(回路)3〜6は本発明で言う電流偏差演算要素を構成し、構成要素(回路)7〜11は本発明で言う相電圧制御要素を構成している。いうまでもなく、三相インバータ11は直流電源から給電されて三相交流電圧を発生する。
基本波指令値発生回路(基本波指令値出力要素)1は、入力されるトルク指令値および回転数指令値に対応する基本波電流の目標値を、そのd軸電流成分であるd軸基本波指令値Id1*、および、そのq軸電流成分であるq軸基本波指令値Iq1*に変換する公知の回路である。上記トルク指令値は、たとえば車両制御ECUなどの外部制御装置から入力され、この基本波指令値発生回路1はそれにも基づいてd軸基本波指令値Id1*およびq軸基本波指令値Iq1*を決定する。このd軸基本波指令値Id1*およびq軸基本波指令値Iq1*の決定において必要であれば、トルク指令値以外に更に三相インバータ11の電圧やレゾルバ14の出力信号などが基本波指令値発生回路1に入力される。
高調波指令値発生回路2(高調波指令値出力要素)は、あらかじめ設定された6k+1(kは整数、基本周波数成分のkは0)次の高調波電流の目標値を、そのd軸電流成分であるd軸高調波指令値Id6k+1*、および、そのq軸電流成分であるq軸高調波指令値Iq6k+1*に変換する回路である。更に言えば、この高調波指令値発生回路2は、三相同期電動発電機13の径方向振動を低減する高調波電流指令値を発生するための回路である。
高調波指令値発生回路2の具体例を図4に示すブロック図を参照して説明する。図4において、21は7次電流指令値発生回路、22は13次電流指令値発生回路、24、25は座標変換回路、27、28は加算器である。ただし、この実施例では、高調波指令値発生回路2は6次および12次の径方向振動低減のために7次および13次の高調波指令値だけを発生するが更に高次の高調波指令値を発生して加算器27、28にて同様に重畳させてもよい。
7次電流指令値発生回路21は、基本波指令値発生回路1から入力されるd軸指令値Id*およびq軸指令値Iq*と、6次径方向振動相殺用の7次高調波指令値の振幅I7*および位相角β7*との関係を記載するテーブルである。すなわち、7次高調波指令値の振幅I7*および位相角β7*は、基本波回転座標系上のd軸指令値Id*およびq軸指令値Iq*を変数とする関数値となる。なお、ここでは、7次高調波指令値の振幅I7*および位相角β7*は基本波回転座標系上の値とするが、静止座標系上においても同じ値となる。
同じく、13次電流指令値発生回路22は、基本波指令値発生回路1から入力されるd軸指令値Id*およびq軸指令値Iq*と、12次径方向振動相殺用の13次高調波指令値の振幅I13*および位相角β13*との関係を記載するテーブルである。すなわち、13次高調波指令値の振幅I13*および位相角β13*は、基本波回転座標系上のd軸指令値Id*およびq軸指令値Iq*を変数とする関数値となる。なお、ここでは、13次高調波指令値の振幅I13*および位相角β13*は基本波回転座標系上の値とするが、静止座標系上においても同じ値となる。これらのデータI7*、β7*、I13*、β13*は7次、13次電流指令値発生回路21、22のROM(図示せず)に格納されている。d軸指令値Id*およびq軸指令値Iq*を回路21、22に代入して得られたこれらのデータI7*、β7*は座標変換回路24へ、これらのデータI13*、β13*は座標変換回路25に出力される。
座標変換回路24は、7次電流指令値発生回路21から入力された7次高調波電流の振幅I7*と位相角(基本波の位相角θを基準として決定する)β7*とにより基本波回転座標系(d−q軸座標系又は基本波dq座標系ともいう)表示の7次高調波電流指令値のd軸成分であるd軸高調波指令値Id7*、および、そのq軸成分であるq軸高調波指令値Iq7*を演算する。
座標変換回路25は、13次電流指令値発生回路22から入力された13次高調波電流の振幅I13*と位相角(基本波の位相角θを基準として決定する)β13*とにより基本波回転座標系(d−q軸座標系又は基本波dq座標系ともいう)表示の13次高調波電流指令値のd軸成分であるd軸高調波指令値Id13*、および、そのq軸成分であるq軸高調波指令値Iq13*を演算する。この演算は、次に示す数38の演算により行われる。
なお、数38において、θvは、後述する遅れ補償回路(位相補償回路)16から出力されるモータ回転角θを位相補償して得た位相補償回転角信号である。
ただし、上記説明では、回路21、22は、d軸指令値Id*、q軸指令値Iq*と出力すべき高調波指令値の振幅、位相角とのテーブルを記憶したが、この検出した回転角、電圧、電流と、出力すべき高調波指令値の振幅、位相角とのテーブルを記憶しておき、このテーブルに回転角、電圧、電流の検出値を代入して出力すべき高調波指令値の振幅、位相角を演算してもよい。
次に、7次d軸高調波指令値Id7*と13次d軸高調波指令値Id13*とは加算器27により加算されてd軸高調波指令値Id6n+1*とされ、7次q軸高調波指令値Iq7*と13次q軸高調波指令値Iq13*とは加算器28により加算されてq軸高調波指令値Iq6n+1*とされる。もちろん、19次高調波指令値など更に高次の高調波指令値を形成して加算器27、28にて同様に加算してもよい。
このようにして求めたd軸高調波指令値Id6n+1*は加算器3によりd軸基本波指令値Id1*に加算されてd軸指令値Id*とされ、同様に、q軸高調波指令値Iq6n+1*は加算器4によりq軸基本波指令値Iq1*に加算されてq軸指令値Iq*とされる。これにより、簡単な演算により騒音キャンセル電流指令値を決定することができる。すなわち、各次高調波指令値は数38に示すように単一周波数成分だけを演算すればよいので簡単となる。
位置信号処理回路15は、レゾルバ14からの回転角信号に基づいて静止座標
系の回転角θを演算し、遅れ補償回路16および座標変換回路17に出力する。遅れ補償回路16は、位相補償回路であって、位相補償された回転角θvを座標変換回路24、25および後述する座標変換回路9に出力し、これらの回路の演算遅れなどを補償する。座標変換回路17は、電流センサ12で検出されたU相電流IuとV相電流Ivとを座標変換処理することにより、回転座標系表示の電流検出値としてのd軸検出値Idとq軸検出値Iqとを出力する。
減算器5は、上記の演算により求められたd軸指令値Id*からd軸検出値Idを減算して偏差ΔIdを求め、減算器6は、q軸指令値Iq*からq軸検出値Iqを減算して偏差ΔIqを求める。PIアンプ7は、偏差ΔIdを0に収束させるべく偏差ΔIdをPI(比例−積分)増幅して対応するd軸電圧Vdを出力し、PIアンプ8は、偏差ΔIqを0に収束させるべく偏差ΔIqをPI(比例−積分)増幅して対応するq軸電圧Vqを出力する。
座標変換回路9は、入力される位相補償回転角信号θvを用いてこれらの電圧Vd、Vqを回転座標系の三相交流電圧Vu、Vv、Vwに変換し、PWM電圧発生回路10は三相交流電圧Vu、Vv、VwをPWM信号電圧Uu、Uv、Uwに変換し、三相インバータ11は入力されるPWM信号電圧Uu、Uv、Uwに基づいて内蔵の6つのスイッチング素子を断続制御して三相交流電圧を作成し、それを三相同期電動発電機13の各相端子に印加する。上記したモータ制御回路は、高調波指令値発生回路2をのぞいて通常のモータ制御方式と同じであり、この種のPWMフィードバック制御自体はもはや周知であるので、詳細な説明は省略する。
これにより、モータにおいて騒音の主要要因となっている6次、12次高調波騒音のレベルを大幅に低減することができる。
以下、この実施例の利点を以下に説明する。
まず、この実施例によれば、構成要素(回路)5〜11、17が、基本波指令値および高調波指令値の両方を一括してフィードバック制御するので回路系を簡素化することができる。したがって、座標変換回路17には、検出された三相交流電流Iu、Ivを基本周波数成分と高調波成分とに周波数分離せずにそのまま座標変換することができるので、この周波数分離のためのフィルタによる位相遅れを防止することができ、それによる演算誤差や制御遅れによる騒音キャンセル効果の劣化を抑止することができる。
また、高調波指令値の振幅、位相角のテーブルは、変動が少ないd軸基本波指令値Id1*、q軸基本波指令値Iq1*に対応して設定されているため、読み込み頻度を低減することができる。
(実施例2)
その他の実施例を図7を参照して以下に説明する。この回路構成例は、図3に示すフィードバック型の回路構成例1の高調波指令値発生回路2で生成するd軸高調波指令値Id6k+1*、および、そのq軸電流成分であるq軸高調波指令値Iq6k+1*を、座標変換回路17で生成する回転座標系表示の電流検出値としてのd軸検出値Idおよびq軸検出値Iqから、減算器20および21により減算し、電流検出値としてのId1とIq1を生成する。上記手段にて生成したId1、Iq1を減算器5、6にて減算し、ΔIdとΔIqを生成する。その後段の処理は回路構成例1の回路構成と同じであるため、説明を省略する。
(実施例3)
その他の実施例を図8を参照して以下に説明する。この回路構成例は、図3に示すフィードバック型の回路構成例1から電流センサ12、座標変換回路17を省略し、減算器5、6およびPIアンプ7、8を電流制御器18に置換して、オープン制御型の回路に変更したものであり、電流制御器18は、d軸指令値Id*およびq軸指令値Iq*をそれぞれ所定の大きさのd軸電圧指令値およびq軸電圧指令値に変換し、座標変換回路9がこれらの回転座標系の電圧指令値を静止座標系の電圧指令値Vu、Vv、Vwに変換するものである。
(実施例4)
他の実施例を図9に示すフローチャートを参照して以下に説明する。
この回路構成例は、図4に示す基本波指令値発生回路1および高調波指令値発生回路2をマイコンによるソフトウエア処理とし、かつ、必要に応じて基本波指令値(回転座標系表示)への高調波指令値(回転座標系表示)の重畳の実施を特定の条件に応じて行うものである。
まず、ステップS100にて基本波指令値を演算した後、別に演算した所定の判定結果に基づいて径方向振動低減のための高調波重畳を行うか否かを判定し(S102)する。高調波重畳処理を行わないと判定した場合には、ステップS103にてd軸指令値Id*をd軸指令値Id1*とし、q軸指令値Iq*をq軸指令値Iq1*として、以下に説明する高調波重畳処理を行わない。高調波重畳処理を行うと判定した場合にはステップS104に進む。
なお、この高調波重畳の実施の是非は、たとえば回転数が所定値未満かどうかを判定し、そうであれば高調波重畳を指令し、そうでなければ高調波重畳を行わないようにすればよい。これにより、径方向振動騒音が目立つ低回転数域での高調波重畳による騒音低減を実現し、それ以上の回転域では電力消費の低減などを図ることができる。また、エンジン始動時など必要発生トルクが所定値以上である場合に高調波重畳を禁止しして、モータの最大トルクを増加することができる。
ステップS104では、求めた基本波指令値(d軸指令値Id1*、q軸指令値Iq1*)をテーブルに代入して7次高調波指令値の振幅、位相角を求め、この7次高調波指令値の振幅およびその位相角と入力された補正回転角度θvとに基づいて基本波指令値の回転座標系基準の7次高調波指令値を求める。
ステップS108、ステップS110における同様の処理にて13次高調波指令値を求め、更にステップS112、ステップS114における同様の処理にて6k+1次高調波指令値を求め、ステップS116にてこれら各高調波指令値をすべて加算して、合成d軸高調波指令値Id6n+1*、合成q軸高調波指令値Iq6n+1*を求める。
次に、ステップS118にて、合成d軸高調波指令値Id6n+1*にd軸基本波指令値Id1*を加算し、合成q軸高調波指令値Iq6n+1*にq軸基本波指令値Iq1*を加算して、d軸指令値Id*とq軸指令値Iq*とを求める。なお、ステップS116、ステップS118は一括して演算してもよく、専用ハードウエアで演算してもよい。更に、ステップS104、S106と、ステップS108、S110とは専用ハードウエアにて並列に演算してもよく、アナログ回路にて演算してもよい。
(実験例)
実験用の同期機(8極、24スロット、IPM)において、隣接する3個のティースに加わる磁気音を縦軸に、回転角度(電気角)を横軸とした場合における磁気音の波形図を図10に示す。
図10において、大きな波形は電機子コイルに基本波電流を通電した場合の径方向加振力であり、小さい波形は上記基本波波電流(角速度θ)に第7高調波(角速度7θ)の高調波電流を通電した場合の径方向加振力を示す。図10から大幅な磁気音低減を実現できることがわかった。
上記実験機における回転数を変更した場合の磁気音(周波数6θ)測定結果を図11(電動時)、図12(発電時)に示す。すべての回転数にて磁気音を格段に低減できることが実測された。
(変形態様)
上記各構成では、径方向振動の低減について説明したが、同時に、周方向磁気加振力(トルクリップル)低減のための高調波電流を更に重畳することもできる。交流回転電機としては、種々の構成の同期機の他、誘導機を採用することもでき、電動モードおよび発電モードのどちらで利用しても良い。また、すべての回転域で径方向振動低減用高調波電流を重畳してもよく、特に磁気騒音が問題となる回転域でのみ径方向振動低減用高調波電流を重畳してもよい。所定の一つの次数の径方向振動低減用高調波電流を重畳することにより所定の一つの次数の径方向振動を低減してもよく、複数の次数の径方向振動低減用高調波電流を重畳することにより複数の次数の径方向振動を低減してもよい。回転域により、径方向振動低減用高調波電流の重畳とトルクリップル低減用の高調波電流の重畳とを切り替えてもよい。
多相交流回転電機の一相分の磁気回路を模式図示した図である。 図1の等価磁気回路図である。 本発明の磁気騒音低減型モータ制御回路の一実施例を示すブロック回路図である。 図3に示す回路2の一例を示すブロック回路図である。 図3における各部信号波形(基本波回転座標系)を示す波形図である。 図3における各部信号波形(静止座標系)を示す波形図である。 他の実施例を示すブロック回路図である。 他の実施例を示すブロック回路図である。 他の実施例を示すフローチャートである。 FEMにて計算した径方向加振力の波形図である。 磁気音の測定結果(電動時)を示す図である。 磁気音の測定結果(発電時)を示す図である。
符号の説明
1 基本波指令値発生回路(基本波指令値出力要素)
2 高調波指令値発生回路(高調波指令値出力要素)
3、4 加算器(電流偏差演算要素)
5、6は減算器(電流偏差演算要素)
7、8 PIアンプ(比例−積分回路、相電圧制御要素)
9 座標変換回路(相電圧制御要素)
10 PWM電圧発生回路(相電圧制御要素)
11 三相インバータ(相電圧制御要素)
12 電流センサ(相電流検出要素)
13 三相同期電動発電機(車両用同期交流回転電機)
14 レゾルバ(回転角検出要素)
15 位置信号処理回路(回転角検出要素)
16 遅れ補償回路(回転角検出要素)
17 座標変換回路(相電流検出値座標系変換要素)

Claims (3)

  1. m(mは3以上の正の整数)相の車両用同期交流回転電機の回転位置を検出する回転角検出要素と、
    検出された前記回転位置に基づいて前記交流回転電機の電機子の各相巻線に所定の基本周波数及び振幅を有する相電流を個別に加えるモータ電流制御要素と、
    を備えるモータ制御装置において、
    前記各相巻線を流れる相電流を検出する相電流検出要素を有し、
    前記モータ電流制御要素は、
    前記回転角センサの出力信号により指定される前記相電流の基本周波数成分のd−q軸座標系(回転座標系)上へ前記各相電流の検出値(静止座標系)を座標変換して、d軸検出値Idおよびq軸検出値Iqを出力する相電流検出値座標系変換要素と、
    前記相電流の基本周波数成分の目標値である基本波指令値の前記d−q軸座標系上のd、q軸成分であるd軸基本波指令値Id1*およびq軸基本波指令値Iq1*を出力する基本波指令値出力要素と、
    6k+1(kは整数、基本周波数成分のkは0)次の高調波電流成分の目標値である高調波指令値の前記d−q軸座標系上のd、q軸成分であるd軸高調波指令値Id6k+1*およびq軸高調波指令値Iq6k+1*を出力する高調波指令値出力要素と、
    (id1*)+(Id6k+1*)−(Id)を演算してd軸電流偏差ΔIdを求め、かつ、(Iq1*)+(Iq6k+1*)−(Iq)を演算してq軸電流偏差ΔIqを求める電流偏差演算要素と、
    前記d軸電流偏差ΔIdおよびq軸電流偏差ΔIqに基づいて前記各相巻線に印加する相電圧を制御して、前記d軸電流偏差ΔIdおよびq軸電流偏差ΔIqを0に向けて収束させる相電圧制御要素と、
    を備え、
    前記高調波指令値出力要素は、
    6k次の径方向振動高調波成分相殺可能な6k+1次のd軸高調波指令値Id6k+1*およびq軸高調波指令値Iq6k+1*と、d軸基本波指令値Id1*およびq軸基本波指令値Iq1*との関係を記憶するマップを有し、
    入力されたd軸基本波指令値Id1*およびq軸基本波指令値Iq1*を前記マップに代入して、6k次の径方向振動高調波成分相殺用の6k+1次のd軸高調波指令値Id6k+1*およびq軸高調波指令値Iq6k+1*を求め、
    前記交流回転電機が発生する又は外部から前記交流回転電機に入力される加振力により前記交流回転電機の回転軸の軸心を中心として放射状に発生する振動である径方向振動のうちの前記基本周波数成分の6k(次)倍の高調波成分を、前記d軸高調波指令値Id6k+1*およびq軸高調波指令値Iq6k+1*の前記d軸基本波指令値Id*およびq軸基本波指令値Iq*への重畳処理により減衰することを特徴とするモータ制御装置。
  2. m(mは3以上の正の整数)相の車両用同期交流回転電機の回転位置を検出する回転角検出要素と、
    検出された前記回転位置に基づいて前記交流回転電機の電機子の各相巻線に所定の基本周波数及び振幅を有する相電流を個別に加えるモータ電流制御要素と、
    を備えるモータ制御装置において、
    前記モータ電流制御要素は、
    前記相電流の基本周波数成分の目標値である基本波指令値のd−q軸座標系上のd、q軸成分であるd軸基本波指令値Id1*およびq軸基本波指令値Iq1*を出力する基本波指令値出力要素と、
    6k+1(kは整数、基本周波数成分のkは0)次の高調波電流成分の目標値である高調波指令値の前記d−q軸座標系上のd、q軸成分であるd軸高調波指令値Id6k+1*およびq軸高調波指令値Iq6k+1*を出力する高調波指令値出力要素と、
    (id1*)+(Id6k+1*)を演算してd軸電流指令値Id*を求め、かつ、(Iq1*)+(Iq6k+1*)を演算してq軸電流指令値Iq*を求める電流指令値演算要素と、
    d軸電流指令値Id*およびq軸電流指令値Iq*に基づいて前記各相巻線に印加する相電圧を制御して、前記相巻線にd軸電流指令値Id*およびq軸電流指令値Iq*に相当する相電流を通電する相電圧制御要素と、
    を備え、
    前記高調波指令値出力要素は、
    6k次の径方向振動高調波成分相殺可能な6k+1次のd軸高調波指令値Id6k+1*およびq軸高調波指令値Iq6k+1*と、d軸基本波指令値Id1*およびq軸基本波指令値Iq1*との関係を記憶するマップを有し、
    入力されたd軸基本波指令値Id1*およびq軸基本波指令値Iq1*を前記マップに代入して、6k次の径方向振動高調波成分相殺用の6k+1次のd軸高調波指令値Id6k+1*およびq軸高調波指令値Iq6k+1*を求め、
    前記交流回転電機が発生する又は外部から前記交流回転電機に入力される加振力により前記交流回転電機の回転軸の軸心を中心として放射状に発生する振動である径方向振動のうちの前記基本周波数成分の6k(次)倍の高調波成分を、前記d軸高調波指令値Id6k+1*およびq軸高調波指令値Iq6k+1*の前記d軸基本波指令値Id*およびq軸基本波指令値Iq*への重畳処理により変更することを特徴とするモータ制御装置。
  3. 請求項1又は2記載のモータ制御装置において、
    前記kは1および/又は2であることを特徴とするモータ制御装置。
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