JP4117412B2 - 仕切壁へ架け渡す通水性板材の架渡し構造、濾床室及び浄化槽 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、家庭等から排出される屎尿や雑排水などの処理に用いられる浄化槽、その槽内の一室に濾床を形成させるため、仕切壁に架け渡される通水性板材の架渡し構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般によく知られた浄化槽は、その浄化槽内が仕切壁によって仕切られた複数の室(槽ともいう。)が形成され、各槽には処理方式に応じて、固形物の物理的除去も兼ねた嫌気的生物処理や好気的生物処理のほか、更には仕上げとしての沈殿、処理水(処理済み水)の貯留、消毒等の機能が加えられている。特に、固形物の物理的除去も兼ねた嫌気的生物処理や好気的生物処理が行われる槽、例えば、嫌気処理槽や好気処理槽には、処理効率を上げるために濾材(生物の棲み家となる。接触材、生物担体とも呼ばれる。)が充填されることが多い。濾材を充填し形成される層は濾層(又は濾床)と呼ばれ、また、濾床を有する槽は濾床槽と、濾材を充填した嫌気処理槽は嫌気濾床槽と、濾材を充填した好気処理槽は好気濾床槽と、呼ばれる。
【0003】
浄化槽に用いられる濾床は、充填された濾材が水流に乗って流出したり、又は水面上に浮上したりするのを防止するために、水は通すが濾材を通さない通水性板材が水平方向に配置される。通常は、濾材の沈降性及び浮上性に関係なく、濾床の上下に通水性板材を配置し、この間に濾材を充填する。ただし、比重が1以上の沈降性濾材を充填するとき、濾床の底部のみに通水性板材を配置し、この上側に濾材を充填する場合や、比重が1未満の浮遊性濾材を充填するとき、濾床の上に通水性板材を配置し、この下側に濾材を充填する場合もある。また、濾床の下部から上部に向かって、通水性板材−濾材−通水性板材−濾材−通水性板材と配置させ、垂直方向に複数の濾床を形成させる場合もある。
【0004】
従来の浄化槽内に形成される濾床槽の一例を図6に示した。浄化槽の一画に設けられる濾床槽は、浄化槽の外槽と対向する一対の仕切壁で平面視略四角形に形成され、その濾床は、図示するように立設する支持架台上に通水性板材が配置され(図6では上中下の3個所)、その通水性板材の間に濾材が充填され、上下2つの濾床が形成されている。
濾床を形成する手順は、通水性板材及び支持架台を下部から順に載置し、最上部の通水性板材の上に押え棒を載せ、押え棒を仕切壁に取り付けた固定具(C字形)と嵌合させ、固定(着脱可能)する。
また、充填された濾材の状態を時々確認する必要があるために、通水性板材及び支持架台は上側(マンホール)から順次取り出せる構造に組み立てられている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、この方法では、押え棒を着脱する際に固定具が破損したり、浮上性濾材を用いた場合にその濾材の浮力が最上部に位置する押え棒に大きくかかって押え棒が固定具から外れたりすることもある。また、浄化槽の埋設後、土圧や水圧により仕切壁が変形し、通水性板材が外れなくなることもある。
【0006】
本発明は、このような問題を解消すること、すなわち、通水性板材の支持架台や通水性板材の押え棒を不要とし、また、通水性板材を容易に着脱でき、かつ、浮上性濾材を用いた場合にも押え部材が外れたり、土圧や水圧によって仕切壁が変形して通水性板材が外れなくなる等のトラブルを起こしにくい、通水性板材の架渡し構造を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明では次の構成をとった。すなわち、本発明は、浄化槽内の対向する仕切壁の二面へ架け渡す通水性板材の架渡し構造において、前記通水性板材が、スライドしながら伸縮する一組の板材(A,B)と、板材の重合せ部分に設けられた穴と、この穴に固定し一組の板材が伸縮しないように固定する連結具とを有し、前記対向する仕切壁の二面には、前記通水性板材と嵌合する形状の凹部が形成されている、架渡し構造、である。ここで、上記通水性板材(4,5,6)は、一段につき、一組の板材(A,B)を複数組用いることができる。
【0008】
また、本発明は、浄化槽内の一室を区画する仕切壁(3a,3b)に、上記の架渡し構造によって通水性板材(4,5,6)を複数段に架け渡し、その通水性板材(4,5,6)の間に濾材8を充填して濾床を形成させた濾床室、にも関する。
更に、本発明は、嫌気処理室と、好気処理室と、処理水室24もしくは沈殿分離室と、消毒室25とを備える浄化槽であって、前記嫌気処理室及び前記好気処理室のいずれかは上記の濾床室である浄化槽、にも関する。
なお、本発明で、仕切壁に形成させる(通水性板材を係止できる)凹部は、種々の形状が可能であり、仕切壁の外側に張り出す水平方向の溝状凹部、仕切壁の内側に張り出す溝状凹部等があり、凹部は溝のように連続的なものでも、あるいは不連続な凹部でもよい。また、凹部の断面形状は、略U字状、略V字状などがある。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、発明の実施の形態を図面により更に具体的に説明する。
図1は本発明で用いられる一例の通水性板材の斜視図である。通水性板材6は、一組の板材(6A,6B)からなり、図示するように、板材6Aは板材6Bの上をスライドしながら引き出し、伸ばすことができる。また、水を自由に通すが濾材は通さないための通り道(スリット状孔、網目状孔、打ち抜き穴等)が多数設けられている(図では、一部の孔のみが書かれていて、大部分の孔は省略。)。更に、適当な位置まで引き伸ばしてその端部を仕切壁に形成された凹部にはめ込んだのち動かないように固定するため、側面に穴(この穴に、ボルト・ナット等の連結具16が取り付けられる)が板材6Aと板材6Bとの重合せ部分に複数個あけられている。この穴は丸穴でも、横長の穴でもよい。なお、連結具16が取り付けられる通水性板材6の側面は、連結具が取り付けやすいように略垂直な面とすることが好ましい。
【0010】
通水性板材としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、硬質ポリ塩化ビニル、FRP、ジシクロペンタジエン等のプラスチック製、またはステンレス、アルミニウム、鉄等の金属製の成形物や加工品が用いられる。
【0011】
図2は本発明に係る通水性板材の架渡し構造を示すもので、(a)は仕切壁に通水性板材を架け渡した後の平面図、(b)は同正面図である。なお、図3に通水性板材(最上段)を架け渡す前の図(平面図(a)及び正面図(b))を示す。また、図4に図1のイ部及びロ部の拡大図を示す。
濾床槽2は、浄化槽1の外槽及び一対の対面する仕切壁3a、3bで囲まれ、平面視略四角形である。対面する一対の仕切壁3a、3bは、浄化槽1の底部から垂直に立設されている。そして、一対の仕切壁3a、3bには、通水性板材4,5,6の配置位置に対応させて外側へ張り出す溝状凹部(膨出部)11,12,13が上中下の3つの水準に設けられていて、その溝状凹部(11,12,13)は各々の通水性板材(4,5,6)の端部と隙間なく嵌合する形状となっている。また、仕切壁3a,3bの下部には、濾床槽2の槽内液を他槽へ移流させる移流口14が設けられている。濾床槽2が好気濾床槽である場合には各濾床の下部又は下方に散気管(図示せず)を配置させる。
【0012】
仕切壁3a,3bの溝状凹部(11,12,13)に嵌合できる通水性板材(4,5,6)は、濾材8が濾床から流出したり、水面より上側に浮上しないように保持するものである。
通水性板材(4,5,6)と仕切壁3a,3bとの間に濾材8がすり抜けるような隙間が生じるときには、仕切壁3a,3bから塞ぎ板を張り出させ、その隙間を封じるようにしてもよい。
【0013】
連結具16について図4を用いて説明する。通水性板材6の側面に取り付ける連結具16は、通水性板材6を溝状凹部13に嵌め込まれるまでスライドさせた通水性板材6(6A,6B)の重合せ部分に取り付け、通水性板材6Aと6Bとを固定するとともに、隣接する通水性板材どうし(通水性板材6−1と6−2、又は6−2と6−3)も連結するものである。
【0014】
設置された通水性板材を取り出す場合には、連結具16を外し(又は緩め)、通水性板材をスライドさせながら縮めて溝状凹部から外し、これをマンホールから濾床槽2外へ取り出す。
【0015】
また、通水性板材(4,5,6)は、濾床槽2が小さい場合には一枚物とすることもできるが、通常は、取扱性を考慮して、図2(又は図3)で示したように、複数枚の分割物とする。そのような場合には、通水性板材は、溝状凹部を設けた一対の仕切壁と直交する方向に複数に分割する。
【0016】
浄化槽内の区画された一室の仕切壁に、上記架渡し構造によって通水性板材を複数段に架け渡し、その通水性板材の間に濾材を充填して濾床を形成させ濾床室(槽)とすることができる。この濾床室(槽)は、浄化槽の嫌気濾床室(槽)に用いられても、好気濾床室(槽)に用いられてもよい。また、これは、浄化槽内の一室を利用したものであっても、また別体でつくって浄化槽に内蔵させたものでもよい。
【0017】
図5は、本発明に係る浄化槽1の概略構成図である。上流側から、嫌気濾床槽第一室21、嫌気濾床槽第二室22、好気濾床槽23、処理水槽24及び消毒槽25の各槽に区画され、本発明の架渡し構造(又は濾床室)は好気濾床槽23に用いられている。
【0018】
嫌気濾床槽第一室21及び嫌気濾床槽第二室22には、網様円筒状濾材等の濾材を充填することができる。ここでは、嫌気的微生物による嫌気的(無酸素状態)分解が進む。
【0019】
好気濾床槽23は、本発明の架渡し構造を利用した通水性板材によって分けられる上濾床と下濾床とを有し、これらの濾床には濾材(スポンジ担体等。比重が1.0前後の水中で浮上しやすい浮上性濾材は、軽く、取り扱いやすく好ましい)が充填されている。
上濾床の下には散気管が設けられ、また、下濾床の下にも濾床洗浄用散気管が設けられている。また、下濾床の下方にはエアリフトポンプの液吸込口となる洗浄排水引抜口が設けられている。
【0020】
好気濾床槽23における汚水処理は、上濾床においては、散気管から散気・導入される空気(溶存酸素)の存在下に、濾材中に生息する好気性微生物によって好気処理される。すなわち、ここでは主として、生物化学的酸素要求量(BOD)の酸化・分解と、アンモニアの硝化が進行する。
【0021】
また、下濾床においては、通常の運転(洗浄時以外の運転)では洗浄用散気管からは散気しない。上濾床からの流下液の持ち越み酸素(溶存酸素)を消費しつつ引き続き(半)好気処理すると共に、静止状態の濾材を利用してSSを効率よく捕捉(濾過)する。下濾床の詰まりを解除するため、時々、下濾床を洗浄する。SS含みの洗浄排水は洗浄排水引抜口から引き抜き、嫌気濾床槽第一室21へ返送される構造である。
【0022】
処理水槽24は、好気濾床槽23との仕切壁の下部で移流口14を介して好気濾床槽23に連通している。ここでは、処理された液(処理水)が貯留される。処理水は、最後に消毒室25で消毒されて、外へ放流される。
【0023】
【発明の効果】
本発明の通水性板材の架渡し構造、濾床室又は浄化槽によれば、従来のような、通水性板材の支持架台や通水性板材の押え棒が不要である。また、通水性板材を容易に着脱できる上、浮上性濾材を用いた場合にも押え部材が外れたり、土圧や水圧によって仕切壁が変形して通水性板材が外れなくなる等のトラブルを起こしにくい。通水性板材を容易に着脱できるので、濾材や散気管の点検等も容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で用いられる通水性板材の斜視図。
【図2】本発明に係る通水性板材の架渡し構造の図で、(a)は仕切壁に通水性板材を架け渡したときの平面図、(b)はこれを正面側から見透した図。
【図3】本発明に係る通水性板材の架渡し構造の図で、(a)は仕切壁に通水性板材(最上段)を架け渡す前の平面図、(b)はこれを正面側から見透した図。
【図4】図2のイ部及びロ部の拡大図。
【図5】本発明に係る浄化槽の概略構成図。
【図6】従来の浄化槽における通水性板材の架渡し構造を示す図で、(a)は仕切壁に通水性板材を掛け渡したときの平面図、(b)はこれを正面側から見透した図。
【符号の説明】
1:浄化槽、2:一濾床槽、3a,3b:仕切壁、4,5,6:通水性板材、7,8:濾材、9,10:濾床、11、12,13:溝状凹部(膨出部)、14:移流口、15:マンホール、16:連結具、21:嫌気濾床槽第1室、22:嫌気濾床槽第2室、23:好気濾床槽、24:処理水槽、25:消毒槽、26,27:散気管、28:エアリフトポンプ
Claims (4)
- 浄化槽内の対向する仕切壁の二面へ架け渡す通水性板材の架渡し構造において、前記通水性板材が、スライドしながら伸縮する一組の板材(A,B)と、板材の重合せ部分に設けられた穴と、この穴に固定し一組の板材が伸縮しないように固定する連結具とを有し、前記対向する仕切壁の二面には、前記通水性板材と嵌合する形状の凹部が形成されている、架渡し構造。
- 通水性板材は、一段につき、一組の板材(A,B)の複数個からなるものである、請求項1の架渡し構造。
- 浄化槽内の一室を区画する仕切壁に、請求項1又は2の架渡し構造を利用して通水性板材を複数段に架け渡し、その通水性板材の間に濾材を充填して濾床を形成させた濾床室。
- 嫌気処理室と、好気処理室と、処理水室もしくは沈殿分離室と、消毒室とを備える浄化槽であって、前記嫌気処理室及び前記好気処理室のいずれかは請求項3の濾床室である、浄化槽。
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