JP4116141B2 - 結晶シリコン膜の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、多結晶シリコン膜(ポリシリコン膜)の製造方法に係り、特にその結晶化率を容易に判別を可能とするものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、トランジスタのキャリア(nチャネルでは電子、pチャネルでは正孔)の動きやすさを示す指数として「移動度」が知られている。
この移動度は、数値が大きいほどトランジスタの駆動能力が大きくなり、高速に動作することを意味している。この数値は、半導体の結晶の乱れや不純物により、キャリアの走行が妨害されると移動度が低下する。シリコン中の電子の場合、単結晶では約1000の移動度があるが、ポリシリコンを用いた薄膜トランジスタでは、結晶の乱れにより10〜100程度、アモルファスシリコンの薄膜トランジスタではさらに、0.3〜1といわれている。
【0003】
このような中、ポリシリコンは単結晶とは異なり、ガラス基板等の上にも形成できるため、特に液晶表示装置(LCD)の駆動回路部を構成する素子への適用が試みられている。
【0004】
例えば、ポリシリコンを一例とすると、図3に示すような多数の結晶粒で形成され、平均結晶粒径が大きくなる程、移動度が増大する。ここでいう平均結晶粒径は、少なくとも2つ以上の結晶粒の平均値である。LCDにおいて、駆動素子となる薄膜トランジスタ(TFT)の活性層となるポリシリコン膜の移動度の向上は、その高微細化を達成する上で重要であり、またその移動度のばらつきは、画質に大きな影響を与えているため、ポリシリコン膜の結晶粒径を均質に管理する必要がある。
【0005】
この管理方法としては、ポリシリコンの結晶粒径そのものを測定するのが最も確実の手法である。即ち、検査用のサンプルを最初や途中の製造ロットの中に混ぜたり、製品を無作為に抜き取り、製造工程において形成したポリシリコン膜の結晶粒径を電子顕微鏡により直接観察して測定していた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
前述した従来の評価技術のようにポリシリコンの結晶粒径の電子顕微鏡で観察する検査は、人為的な労力と測定結果がでるまでに時間がかかるため、製造現場では不向きである。
【0007】
特に液晶用大型ガラス基板の場合は、電子顕微鏡の試料台に載置できないため、割って小さくしなければならず、破壊検査となっている。
また結晶粒径を観察するためにポリシリコン膜の表面をエッチングしたり、特殊な処理を施すため、それらの影響をポリシリコン膜が受けていることも想定され、電子顕微鏡により、直接測定したとしても実際の膜質が正確に測定されているとは限らない。
【0008】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みて成されたものであり、簡単な手法で多結晶シリコンの結晶化率の評価を可能とし、これにより製造ばらつきのない、または、製造歩留まりの高い多結晶シリコン膜の製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成するために、基板上に配置されたシリコン膜にエネルギーを印加し、多結晶シリコン膜を形成する工程と、前記多結晶シリコン膜の鏡面光沢を測定する工程と、前記鏡面光沢に基づいて前記多結晶シリコン膜を選別する工程とを備える多結晶シリコン膜の製造方法を提供する。
【0010】
また前記シリコン膜は、非結晶シリコン膜で形成され、エキシマレーザーのエネルギー照射により、多結晶シリコン膜に形成され、その鏡面光沢をJISZ8741の鏡面光沢度測定方法に基づき測定する。前記JISZ8741の鏡面光沢度測定方法に用いる光源及び受光器は、前記多結晶シリコン膜を形成する基板の法線に対して、互いに対向した15°〜30°の範囲内に設定される。
【0011】
以上のような多結晶シリコンの製造方法は、多結晶シリコンの製造工程で、非結晶シリコンへエキシマレーザを照射にして薄膜形成された多結晶シリコン膜の光沢度をJISZ8741で規定される光沢度の測定方法に基づき測定する。この測定で、結晶粒径が大きくなりかつ顆粒が発生していない状態であるとき、電気伝導度は高くなっていき、且つエキシマレーザアニールされた薄膜表面の光沢度が低くなり、つまり反射率が低下してくる。
【0012】
この光沢度が最も低くなる状態が最も電気伝導度が良くなることを利用して、鏡面光沢が減少する範囲内でエネルギーの照射の最適条件を設定し、製造ばらつきの低減や製造歩留まりを高める。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明による多結晶シリコン(ポリシリコン)の製造方法は、形成されたポリシリコン膜の鏡面光沢度を測定するものであり、例えばJISZ8741に規定される鏡面光沢度測定方法を利用するものである。
【0014】
本発明者による実施の結果、形成されたポリシリコンの結晶粒径が最も大きく且つ、顆粒が発生していない状態であるとき、電気伝導度は高くなり、且つエキシマレーザアニール(ELA)された薄膜表面の光沢度は最も低くなることが判明した。
【0015】
本実施形態では、この光沢度が最も低くなる状態つまり、反射率が低くなる状態が最も電気伝導度が良くなることを利用して、エキシマレーザアニールの最適条件を求める。また測定結果に基づいて、不良品が判別し、次の製造工程への流れ込みを阻止し、若しくはELAのエネルギー密度にフィードバックし、常に、最適条件により、結晶化されたポリシリコンを製造することで製造歩留まりを向上させるものである。
【0016】
図1には、本発明による一実施形態に係るポリシリコン結晶化率の評価方法及び、それを利用したポリシリコンの製造方法を実現するための構成例を示す図である。
【0017】
まず、500mm×600mm程度の大判のガラス基板1上にプラズマCVD法により、少なくとも一層以上に積層された薄膜の最上層にあるアモルファスシリコン膜にエキシマレーザを照射して結晶化し、平均結晶粒径の異なるポリシリコン膜2の試料を用意する。
【0018】
本実施形態では、前記ガラス基板1上に窒化膜及び酸化膜がそれぞれ150nm厚で積層された基板を用いて、測定角度θを20°と設定し、光沢度計3による測定では、図2に示すような電子顕微鏡で測定した平均結晶粒径と、ELAエネルギー密度( mJ/cm2 )即ち光沢度との相関が得られた。
【0019】
図2によれば、ポリシリコンの結晶粒径が最大のとき、光沢度は、極値をとる傾向があり、例えば、膜厚40nm〜60nmの範囲のポリシリコン膜で光沢度約200〜1600が得られる。
【0020】
そして光沢度が極値をとる場合に電気伝導度は高くなることから、本実施形態においては、ポリシリコンの膜厚40nmで、ELAエネルギー密度が370( mJ/cm2 )の時に、光沢度が極値となり、光沢度1200となる。また、ポリシリコンの膜厚60nmで、ELAエネルギー密度が370( mJ/cm2 )の時に、光沢度が極値となり、光沢度200となる。そしてELAエネルギー密度が更に、25( mJ/cm2 )上昇すると、顆粒が発生する傾向がある。
【0021】
従って、光沢度が極値をとるように、レーザアニールの最適条件を確定し、ポリシリコンの結晶化率を評価することにより、電気伝導度の最もよいポリシリコン膜を製造することができる。
【0022】
実際の製造工程においては、本実施形態のポリシリコン結晶化率の評価方法による液晶ディスプレイの製造方法が非破壊及び非接触による検査で実施できることから、従来のように製造ロットの中にサンプルを入れる必要もなく、適宜、製品を抜き取って或いは全数の評価を行うことができ、特に、レーザアニール装置に光沢度計を備え付けることにより、装置外に取り出さずに評価することができる。
【0023】
例えば、予め求められた最適な光沢度を実際の光沢度と比較し、最適な光沢度を100以上上回っている基板は、不良品と見なし、次の製造工程への流れ込みを阻止する。また、この測定結果に基づいて、最適な光沢度となるようにレーザアニールのエネルギー密度を即座に調整し、製造歩留まりを向上させる。
【0024】
本実施形態では、説明の関係から光沢度計を1つとして1箇所の測定で説明しているが、実施する場合には、ガラス基板の面内の均一性を見る必要があるため、ガラス基板を移動させて複数の箇所で測定を行うか、複数の光沢度計を配置して、複数の箇所を測定することが望ましい。
【0025】
本実施形態では、結晶粒径が最大のときに光沢度が極値を取ったが、極値を取らなくても光沢度を絶対値あるいは相対値により結晶粒径を判定することができればよい。また本実施形態では、光沢測定角度20°で測定したが、ポリシリコンの膜厚または下地膜の種類や膜厚により、相関関係がとれる角度であればよく、必ずしも20°に限定されるものではない。しかしながら、本発明等の実験によれば、15°〜30°の範囲が適しており、特に20°における相関が顕著であることが確認されている。
【0026】
以上説明したように、本実施形態によれば、光沢度からエキシマレーザアニールの最適照射条件が非接触で確定することができた。また、上記結晶粒径を評価して、不良品の早期排除または、エキシマレーザアニールの最適照射条件の設定により高い製造歩留まりを確保することができる。
【0027】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明によれば、形成されるポリシリコンの平均結晶粒径の大きさにより、表面の光沢が異なることを利用し、光沢度計を用いて、大型基板の実製品を非接触及び非破壊で評価し、製造ばらつきの少なく、不良品の早期排除により製造歩留まりの高い多結晶シリコン膜の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるポリシリコン結晶化率の評価方法について説明するための構成を示す図である。
【図2】ELAエネルギー密度と光沢度の関係の実験結果の一例を示す図である。
【図3】ポリシリコンの結晶粒径の一例を示す図である。
【符号の説明】
1…ガラス基板
2…ポリシリコン膜
3…光沢度計
Claims (13)
- 基板上に配置されたシリコン膜にエネルギーを印加し、多結晶シリコン膜を形成する工程と、
前記多結晶シリコン膜の鏡面光沢を測定する工程と、
前記鏡面光沢に基づいて前記多結晶シリコン膜を選別する工程と、
を具備することを特徴とする多結晶シリコン膜の製造方法。 - 請求項1記載の多結晶シリコン膜の製造方法において、
前記シリコン膜は、非結晶シリコン膜であり、前記エネルギーがエキシマレーザーの照射によることを特徴とする多結晶シリコン膜の製造方法。 - 請求項1記載の多結晶シリコン膜の製造方法において、
前記多結晶シリコン膜の鏡面光沢を測定する工程が、JISZ8741の鏡面光沢度測定方法に基づくことを特徴とする多結晶シリコン膜の製造方法。 - 請求項3記載の多結晶シリコン膜の製造方法において、
前記JISZ8741の鏡面光沢度測定方法に用いる光源及び受光器が、前記多結晶シリコン膜を形成する基板の法線に対して、互いに対向した15°〜30°の範囲内に設定されることを特徴とする多結晶シリコン膜の製造方法。 - 請求項1記載の多結晶シリコン膜の製造方法において、
前記基板上に形成された多結晶シリコン膜の膜厚が40nm〜60nmの範囲で有ることを特徴とする多結晶シリコン膜の製造方法。 - 請求項5記載の多結晶シリコン膜の製造方法において、
前記多結晶シリコン膜の光沢度が、0〜1400の範囲で形成されることを特徴とする多結晶シリコン膜の製造方法。 - 基板上に配置されたシリコン膜にエネルギーを印加し、多結晶シリコン膜を形成する工程と、
前記多結晶シリコン膜の鏡面光沢を測定する工程と、
前記鏡面光沢に基づいて前記エネルギーの密度を調整する工程と、
を具備することを特徴とする多結晶シリコン膜の製造方法。 - 請求項5記載の多結晶シリコン膜の製造方法において、
前記鏡面光沢が減少する範囲内で前記エネルギーの密度を高めることを特徴とする多結晶シリコン膜の製造方法。 - 請求項7記載の多結晶シリコン膜の製造方法において、
前記シリコン膜は、非結晶シリコン膜であり、前記エネルギーがエキシマレーザーの照射によることを特徴とする多結晶シリコン膜の製造方法。 - 請求項7記載の多結晶シリコン膜の製造方法において、
前記多結晶シリコン膜の鏡面光沢を測定する工程が、JISZ8741の鏡面光沢度測定方法に基づくことを特徴とする多結晶シリコン膜の製造方法。 - 請求項10記載の多結晶シリコン膜の製造方法において、
前記JISZ8741の鏡面光沢度測定方法に用いる光源及び受光器が、前記多結晶シリコン膜を形成する基板の法線に対して、互いに対向した15°〜30°の範囲内に設定されることを特徴とする多結晶シリコン膜の製造方法。 - 請求項7記載の多結晶シリコン膜の製造方法において、
前記基板上に形成された多結晶シリコン膜の膜厚が40nm〜60nmの範囲で有ることを特徴とする多結晶シリコン膜の製造方法。 - 請求項12記載の多結晶シリコン膜の製造方法において、
前記多結晶シリコン膜の光沢度が0〜1400の範囲で形成されることを特徴とする多結晶シリコン膜の製造方法。
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