JP4115461B2 - 内燃機関のバルブタイミング制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、内燃機関の吸気弁,排気弁の開閉時期を運転状態に応じて可変にするいわゆるベーンタイプのバルブタイミング制御装置に関する。
従来のバルブタイミング制御装置としては、以下の特許文献1に記載されたベーンタイプのものが知られている。
概略を説明すれば、このバルブタイミング制御装置は、前記開口端がフロントカバーとリアカバーで閉塞されたタイミングプーリの筒状のハウジング内部に、カムシャフトの端部に固定されたベーンが回転自在に収納されていると共に、ハウジングの内周面に直径方向から互いに内方へ突出されたほぼ台形状の2つの隔壁部とベーンの2つの羽根部との間に進角側油圧室と遅角側油圧室が画成されている。そして、機関運転状態に応じて前記進角側と遅角側の各油圧室に油圧が給排されてベーンを正逆回転させることによりタイミングプーリとカムシャフトとの相対回動位相を変化させて、吸気弁の開閉時期を可変にするようになっている。
特開平8−121124号公報
しかしながら、前記従来のバルブタイミング制御装置によれば、進角側油圧室と遅角側油圧室との間の作動油のリークを防止するために、例えばベーンとフロントカバー及びリアカバーとの間の摺動隙間をきわめて小さく設定している。したがって、該ベーンと各カバーとの間の摺動摩擦抵抗が大きくなり、該ベーンの円滑な回転が阻害される可能性がある。この結果、機関運転状態の変化に応じたバルブタイミングの高い制御精度が得られないおそれがある。
また、この従来例では、前述のように両油圧室間の作動油のリークを防止するために、ベーンの基部側の巾長さと各隔壁部の先端側の巾長さとを規定するようになっている。すなわち、遅角側油圧室と進角側油圧室,別異の遅角側油圧室と進角側油圧室との間をそれぞれ軸方向の両端面でシールする各ベーンの最短距離を、遅角側油圧室と進角側油圧室,別異の遅角側油圧室と進角側油圧室との間を軸方向の両端面でシールする各隔壁部の最短距離とほぼ等しく設定することによって、ベーンとフロントカバー及びリアカバーとの間を通る各油圧室間の油の漏れを防止するようになっている。
このため、ベーンの巾長さや隔壁部の巾長さを必然的に大きく設定せざるを得ず、この結果、ベーンの羽根部を枚数やタイミングプーリとカムシャフトとの位相変換角度に自ずと制限が生じ、ベーンの羽根部の枚数を3つ以上に増加させることが困難になる。したがって、羽根部の枚数の制約に伴い該ベーンの回転による位相変換の応答性が低下し易くなると共に、位相変換角度の制約に伴ってバルブタイミング制御範囲が制約を受けて機関性能を十分に発揮させることができなくなる。
しかも、ベーンの一つの羽根部の外周面とハウジングの内周面との摺接面積が大きくなるため、両者間で摩擦抵抗がさらに大きくなるおそれがある。
本発明は、前記従来例のバルブタイミング制御装置の実情に鑑みて案出されたもので、請求項1記載の発明は、機関のクランクシャフトによって回転駆動する回転体と、カムシャフトの端部に固定されて、円環状の基部の外周側に複数の羽根部が一体に形成されたベーンと、該ベーンを回転自在に収容したハウジングと、該ハウジングの内周面に内方へ突設された複数の隔壁部と、前記各羽根部に設けられ、前記ハウジングの内周面に摺接するように外方に押圧されるシール部材と、前記隔壁部と前記各羽根部の両側面との間に画成された遅角側油圧室及び進角側油圧室と、該両油圧室に油圧を相対的に給排して前記ベーンを正逆回転させる油路と、該油路から供給される油圧が低い状態では、前記ベーンの回動位置を前記ハウジングに対して維持させるロック機構と、を備えたバルブタイミング制御装置であって、前記ベーンの前端面における摺動する面全体に潤滑油をコーティングしたことを特徴としている。
したがって、この請求項1に記載の発明によれば、ベーンの前端面にコーティングを施すことによって、前記遅角側油圧室と進角側油圧室間のシール作用が得られる。
図1〜図3は本発明に係る内燃機関のバルブタイミング制御装置の実施形態を示し、吸気弁側に適用したものを示している。
すなわち、機関の図外のクランクシャフトにより合成樹脂製のタイミングチェーンを介して回転駆動される回転体たるタイミングスプロケット1と、該タイミングスプロケット1に対して相対回動可能に設けられたカムシャフト2と、該カムシャフト2の端部に固定されてタイミングスプロケット1内に回転自在に収容されたベーン3と、該ベーン3を油圧によって正逆回転させる油圧回路4と、タイミングスプロケット1とベーン3との相対回動を所定位置でロックするか、あるいはロックを解除するロック機構10とを備えている。
前記タイミングスプロケット1は、図3にも示すように、外周にタイミングチェーンが噛合する歯部5aを有する回転部材5と、該回転部材5の前方に配置されてベーン3を回転自在に収容したハウジング6と、該ハウジング6の前端開口を閉塞する蓋体たる円板状のフロントカバー7と、ハウジング6と回転部材5との間に配置されてハウジング6の後端開口を閉塞するほぼ円板状のリアカバー8とから構成され、これら回転部材5とハウジング6及びフロントカバー7,リアカバー8は、4本の小径ボルト9によって軸方向から一体的に結合されている。
前記回転部材5は、ほぼ円環状を呈し、周方向の約90°の等間隔位置に各小径ボルト9が螺着する4つの雌ねじ孔5bが前後方向へ貫通形成されていると共に、内部中央位置に後述する通路構成用のスリーブ25が嵌合する段差径状の嵌合孔11が貫通形成されている。さらに、前端面には、前記リアカバー8が嵌合する円板状の嵌合溝12が形成されている。
また、前記ハウジング6は、前後両端が開口形成された円筒状を呈し、内周面の周方向の90°位置には4つの隔壁部13が突設されている。この隔壁部13は、横断面台形状を呈し、それぞれハウジング6の軸方向に沿って設けられて、各両端縁がハウジング6の両端縁と同一面になっていると共に、基端側には、小径ボルト9が挿通する4つのボルト挿通孔14が軸方向へ貫通形成されている。さらに、各隔壁部13の内端面中央位置に軸方向に沿って切欠形成された保持溝13a内にコ字形のシール部材15と該シール部材15を内方へ押圧する板ばね16が嵌合保持されている。
さらに、前記フロントカバー7は、中央に比較的大径なボルト挿通孔17が穿設されていると共に、前記ハウジング6の各ボルト挿通孔14と対応する位置に4つのボルト孔18が穿設されている。
また、リアカバー8は、後端面に前記回転部材5の嵌合溝12内に嵌合保持される円板部8aを有していると共に、中央にスリーブ25の小径な円環部25aが嵌入する嵌入孔8cが穿設され、さらに前記ボルト挿通孔14に対応する位置に4つのボルト孔19が同じく形成されている。
前記カムシャフト2は、シリンダヘッド22の上端部にカム軸受23を介して回転自在に支持され、外周面所定位置に吸気弁をバルブリフターを介して開作動させる図外のカムが一体に設けられていると共に、前端部にはフランジ部24が一体に設けられている。
前記べーン3は、焼結合金材で一体に形成され、フランジ部24と嵌合孔11に夫々前後部が嵌合した前記スリーブ25を介して軸方向から挿通した固定ボルト26によってカムシャフト2の前端部に固定されており、中央に前記固定ボルト26が挿通するボルト挿通孔27aを有する円環状の基部27と、該基部27の外周面の周方向の90°位置に一体に設けられた4つの羽根部28とを備えている。
前記第1〜第4羽根部28は、夫々断面ほぼ逆台形状を呈し、各隔壁部13間に配置されていると共に、各外周面の中央に軸方向に切欠された保持溝29にハウジング6の内周面6aに摺接するコ字形のシール部材30と該シール部材30を外方に押圧する板ばね31が夫々嵌着保持されている。また、この各羽根部28の両側と各隔壁部13の両側面との間に夫々4つの進角側油圧室32と遅角側油圧室33が隔成されている。
また、前記ベーン3の外面には、ドライフィルムコート50,51がコーティングされている。具体的には、このドライフィルムコート50,51は、テフロン(登録商標)あるいは二硫化モリブデンなどの材料から形成され、ベーン3のフロントカバー7の内端面7aと摺動する前端面3a全体と、各羽根部28のハウジング6の内周面6aと摺動する外周面28aとに夫々コーティングされている。また、このドライフィルムコート50,51は、図4及び図5に示すようにちどり格子状に形成されて、その格子間に矩形状の複数の凹部52が形成されている。
前記ロック機構10は、前記回転部材5の嵌合溝12の外周側所定位置に形成された係合溝20と、前記係合溝20に対応した前記リアカバー8の所定位置に貫通形成されて、内周面がテーパ状の係合孔21と、該係合穴21に対応した前記1つの羽根部28のほぼ中央位置に内部軸方向に沿って貫通形成された摺動用孔35と、該1つの羽根部28の前記摺動用孔35内に摺動自在に設けられたロックピン34と、該ロックピン34の後端側に弾装されたばね部材であるコイルスプリング39と、ロックピン34と摺動用孔35との間に形成された受圧室40とから構成されている。
前記ロックピン34は、鋼材で成形され、図1〜図3に示すように中央側の中径状の本体34aと、該本体34aの先端側にほぼ先細り円錐状に形成された係合部34bと、本体34aの後端側に形成された段差大径状のストッパ部34cとから構成されており、ストッパ部34cの内部凹溝34dの底面とフロントカバー7の内端面との間に弾装された前記コイルスプリング39のばね力によって係合穴21方向へ付勢されるようになっていると共に、前記本体34aとストッパ34cとの間の外周面及び摺動用孔35の内周面との間に形成された前記受圧室40内の油圧によって係合穴21から抜け出る方向に摺動するようになっている。また、この受圧室40は、前記羽根部28の側部に形成された通孔36によって前記遅角側油圧室33に連通している。また、ロックピン34の係合部34bは、ベーン3の最大遅角側の回動位置において係合部34bが係合穴21内に係入するようになっている。
また、この両者34b,21の係合時には、4枚の羽根部28のうちの一つの羽根部28を、これに対向する隔壁部13に当接させ、他の羽根部28,28とこれに対向するそれぞれの隔壁部13との間を微小隙間sをもって離間状態となるように、ロックピン34とその係合穴21との相対的な位置関係が設定されている。ここで、微小隙間sは、平均トルクや摺動フリクション及びベーン3の大きさによって決定されるようになっている。したがって、他のベーン3と隔壁部13との張り付きが防止されて、回転時の応答性を向上させることができる。尚、4枚の羽根部28の全てを離間状態に設定することも可能である。
前記受圧室40は、前記通孔36を介して遅角側油圧室33に連通し、該遅角側油圧室33から導入された油圧によってロックピン34をコイルスプリング39のばね力に抗して図中左方向、つまり係合部34bを係止穴21から抜け出す後退方向へ作動させるようになっている。
一方、コイルスプリング39は、そのばね力が機関作動中にカムシャフト2及びベーン3に発生する正負の交番変動トルクと前記受圧室40に供給される油圧との関係で設定されている。すなわち、コイルスプリング39のばね力は、正の変動トルクの最大ピーク値と負の変動トルクの最大ピーク値の平均値よりも高い油圧が受圧室40に作用した場合、つまり、平均値から正あるいは負の最大ピーク値までの範囲内のトルク値に等しい油圧が作用したときにはじめて圧縮変形するばね力に設定されている。
尚、図中60は、ロックピン34が前後移動する際において、摺動用孔35から空気が流入、流出する空気流通溝である。
前記油圧回路4は、図1〜図3に示すように進角側油圧室32に対して油圧を給排する第1油圧通路41と、遅角側油圧室33に対して油圧を給排する第2油圧通路42との2系統の油圧通路を有し、この両油圧通路41,42には、供給通路43とドレン通路44とが夫々通路切替用の電磁切替弁45を介して接続されている。前記供給通路43には、オイルパン46内の油を圧送するオイルポンプ47が設けられている一方、ドレン通路44の下流端がオイルパン46に連通している。
前記第1油圧通路41は、シリンダヘッド22内からカムシャフト2の軸心内部に形成された第1通路部41aと、固定ボルト26の内部軸線方向を通って頭部26a内で分岐形成されて第1通路部41aと連通する第1油路41bと、該頭部26aの小径な外周面とベーン3の基部27内のボルト挿通孔27aの内周面との間に形成されて第1油路41bに連通する油室41cと、ベーン3の基部27内にほぼ放射状に形成されて油室41cと各進角側油圧室32に連通する4本の分岐路41dとから構成されている。
一方、第2油圧通路42は、シリンダヘッド22内及びカムシャフト2の内部一側に形成された第2通路部42aと、前記スリーブ25の内部にほぼL字形状に折曲形成されて第2通路部42aと連通する第2油路42bと、回転部材5の嵌合孔11の外周側孔縁に形成されて第2油路42bと連通する4つの油通路溝42cと、リアカバー8の周方向の約90°の位置に形成されて、各油通路溝42cと遅角側油圧室33とを連通する4つの油孔42dとから構成されている。
前記電磁切替弁45は、4ポート2位置型であって、内部の弁体が各油圧通路41,42と供給通路43及びドレン通路44とを相対的に切り替え制御するようになっていると共に、コントローラ48からの制御信号によって切り替え作動されるようになっている。コントローラ48は、機関回転数を検出するクランク角センサや吸入空気量を検出するエアフローメータからの信号によって現在の運転状態を検出すると共に、クランク角及びカム角センサからの信号によってタイミングスプロケット1とカムシャフト2との相対回動位置を検出している。
以下、本実施形態の作用を説明する。まず、機関始動時及びアイドリング運転時には、コントローラ48から制御信号が出力された電磁切替弁48が供給通路43と第2油圧通路42を連通させると共に、ドレン通路44と第1油圧通路41とを連通させる。このため、オイルポンプ47から圧送された油圧は第2油圧通路42(油通路溝42c→油孔42d)を通って遅角側油圧室33に供給される一方、進角側油圧室32には、機関停止時と同じく油圧が供給されず低圧状態を維持している。
したがって、ベーン3は、図2に示すように各羽根部28が進角側油圧室32側の各隔壁部13の一側面に当接した状態になる。したがって、タイミングスプロケット1とカムシャフト2との相対回動位置が一方側(遅角側)に保持されて、吸気弁の開閉時期を遅角側に制御する。これによって、慣性吸気の利用による燃焼効率が向上して機関回転の安定化と燃費の向上が図れる。
一方、この運転状態における遅角側油圧室33内の油圧は、今まだ十分に高くならずに比較的低い状態になっているため、ベーン3は図示の位置に保持されるもののロックピン34は、通孔36から受圧室40へ供給される油圧よりもコイルスプリング39のばね力が打ち勝って係合部34aがリアプレート8の係合穴21内に係合した状態を維持する。したがって、ベーン3は、当該遅角側の位置に安定かつ確実に保持されて、遅角側油圧室33内の油圧の変動やカムシャフト2に発生する正負の変動トルクによる揺動振動の発生を防止でき、ひいては、各羽根部28と隔壁部13との衝突音を防止できる。
また、車両が走行を開始して所定の低回転低負荷域に移行すると、電磁切替弁45は現状の作動状態を維持し、遅角側油圧室33内の油圧が高くなると、同じく受圧室40内の油圧も高くなって、ロックピン34がコイルスプリング39を圧縮変形させながらばね力に抗して後退動し、係合部34aが係合穴21から抜け出して係合を解除する。このため、ベーン3は、自由な回動が許容されることになるが、遅角側油圧室33内の油圧が高くなっているので、図2に示す位置に安定に保持される。
その後、機関が中回転中負荷域に移行すると、コントローラ48からの制御信号によって電磁切替弁45が作動して、供給通路43と第1油圧通路41を連通させる一方、ドレン通路44と第2油圧通路42を連通させる。したがって、今度は遅角側油圧室33内の油圧が第2油圧通路42を通ってドレン通路44からオイルパン46内に戻されて遅角側油圧室33内が低圧になる一方、進角側油圧室32内に油圧が第1油路41a→41b→分岐路41dを経由して供給されて高圧となる。このため、ベーン3は、図2に示す位置から時計方向に回転して各羽根部28が反対側(遅角側油圧室側)の各隔壁部13の他側面に当接する位置まで最大に回転する。
また、この遅角側から進角側へ切り換えられた時点では、遅角側油圧室33の油圧が排出されて低圧になるものの、ベーン3の回転に伴って該遅角側油圧室33内の油圧が押圧されて該油圧も比較的高くなっているため、受圧室40内も高油圧に維持され、したがって、ロックピン34は、コイルスプリング39のばね力に抗して後退位置に保持された状態になっている。したがって、ベーン3は、自由な回転が規制されることなく、遅角側油圧室33方向へ速やかに回転する。
したがって、タイミングスプロケット1とカムシャフト2とは、他方側へ相対回動して吸気弁の開閉時期を進角側へ制御する。これによって、機関のポンプ損失が低減して出力の向上が図れる。
さらに、機関高回転高負荷域に移行すると、電磁切替弁45が作動してアイドリング運転時などと同じように供給通路43と第2油圧通路42,ドレン通路44と第1油圧通路41とを夫々連通させて、進角側油圧室32を低圧、遅角側油圧室33を高圧にするため、ベーン3は、図2に示すように反時計方向へ回動して、タイミングスプロケット1とカムシャフト2とを一方側へ相対回動させ、吸気弁の開閉時期を遅角側へ制御する。これによって、吸気充填効率の向上による出力の向上が図れる。
尚、機関停止時には、アイドリング運転等を経るためベーン3は、進角側油圧室32方向へ回転して図3に示す状態となり、ロックピン34の係合部34bがコイルスプリング39のばね力で係合孔21に係合する。また、万一アイドリング運転等を経ないで機関が停止しても、カムシャフト2に発生する変動トルクによりベーン3が進角側油圧室32方向へ回動して、ロックピン34が係合穴21に係合する。
また、各油圧室32,33には、機関の運転状態に応じて油圧を適宜給排することによりベーン3を所望の中間位置に保持することも可能である。
そして、本実施形態によれば、前記ベーン3の前端面3aと各羽根部28の外周面28aにコーティングされたドライフィルムコート50,51によってベーン3とハウジング6及びフロントカバー7との間の摺動摩擦抵抗が大巾に低減される。したがって、ベーン3の常時円滑な回転作用が得られ、この結果、機関運転状態の変化に対するバルブタイミング制御応答性が向上する。
しかも、ドライフィルムコート50,51は、ちどり格子状に配置されているため、該格子状の内側に作動油を貯留することができる。したがって、かかる貯留油によってベーン3とハウジング6及びフロントカバー7との間の潤滑性能が向上し、該ベーン3の回転摺動摩擦抵抗が一層低減され、ベーン3の回転性がより良好になる。
また、ドライフィルムコート50,51の存在によって、ベーン3とハウジング6内周面6aやフロントカバー7内端面7aとの間のシール作用が得られるため、各進角側油圧室32と各遅角側油圧室33との間の作動油のリークが防止される。
尚、ドライフィルムコート50は、図6に示すような菱形やリボン状に配置することも可能であり、また、図7に示すように各羽根部28の外周面28bの周方向に沿って複数の直線帯状に配置することも可能である。
さらに、本実施形態によれば、ロック機構10のコイルスプリング39のばね力を前述のように特異な設定値としたため、ロック解除初期における変動トルクによるベーン3の振動が抑制されて、隔壁部13との振動打音の発生が防止されると共に、ベーン3等の耐久性の向上が図れる。
図8は本発明の第2の実施形態を示し、ドライフィルムコート53,54を羽根部28ではなく、ベーン3基部27の外周面27aとハウジング6の内周面6aにそれぞれコーティングしたものである。
この実施形態によれば、ドライフィルムコート53,54によってベーン3の常時円滑な摺動性が確保できるとともに、シール機能をも十分に発揮させることができるので、各突起部13のシール機構15,16や各羽根部28のシール機構30,31を廃止することが可能になる。この結果、製造作業能率の向上とコストの低廉化が図れる。
本発明は前記実施形態の構成に限定されるものではなく、例えばロック機構10の受圧室40に供給される油圧を遅角側油圧室33からではなく、これらとは独立した油圧回路を利用することも可能である。また、ドライフィルムコートは、その形状を種々変更することが可能である。ただし、その材料および接着力は、外周面28aなどから簡単に剥がれずに、長期にわたりコーティング状態が維持できるできるものでなければならない。
本発明の第1の実施形態を示す図2のA−A線断面図。 図1のB−B線矢視図。 本実施形態の分解斜視図。 図2のC矢視図。 図4のD−D線断面図。 ドライフィルムコートの他例を示す図2のC矢視図。 ドライフィルムコートのさらに異なる例を示す図2のC矢視図。 本発明の第2の実施形態を示す図1のB−B線矢視図。
符号の説明
1…タイミングスプロケット(回転体)
2…カムシャフト
3…ベーン
3a…前端面
4…油圧回路
6…ハウジング
7…フロントカバー
10…ロック機構
13…隔壁部
27…基部
28…羽根部
28a…外周面
32…進角側油圧室
33…遅角側油圧室
40…受圧室
50,51,53,54…ドライフィルムコート(潤滑材)
52…凹部

Claims (1)

  1. 機関のクランクシャフトによって回転駆動する回転体と、
    カムシャフトの端部に固定されて、円環状の基部の外周側に複数の羽根部が一体に形成されたベーンと、
    該ベーンを回転自在に収容したハウジングと、
    該ハウジングの内周面に内方へ突設された複数の隔壁部と、
    前記各羽根部に設けられ、前記ハウジングの内周面に摺接するように外方に押圧されるシール部材と、
    前記隔壁部と前記各羽根部の両側面との間に画成された遅角側油圧室及び進角側油圧室と、
    該両油圧室に相対的に油圧を給排して前記ベーンを正逆回転させる油路と、
    該油路から供給される油圧が低い状態では、前記ベーンの回動位置を前記ハウジングに対して維持させるロック機構と、
    を備えたバルブタイミング制御装置であって、
    前記ベーンの前端面における摺動する面全体に潤滑剤をコーティングしたことを特徴とする内燃機関のバルブタイミング制御装置。
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