JP4115164B2 - 手切れ性に優れた積層二軸延伸ポリエステルフィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、食品をはじめとして、医薬品、日用品、コスメティックスなどの包装材料として有用な手切れ性に優れたポリエステルフィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
二軸延伸ポリエステルフィルムは、耐久性、防湿性、力学的強度、耐熱性、耐油性が優れており、チューブラー法、フラット式同時二軸延伸法、フラット式逐次二軸延伸法などを用いて製造され、各種分野において幅広く使用されている。しかしながら二軸延伸ポリエステルフィルムは、一般的に力学的強度が高いため切断されにくく、たとえば各種包装材料や粘着テープとして用いた際に、手で容易に開封、切断ができないという問題点があった。
【0003】
一方、手切れ性に優れたフィルムとしてセロハンが知られているが、セロハンは吸湿性が高く、吸湿により寸法が変化しやすいため、季節により特性が変動し、一定の品質の製品を供給することが困難であった。またセロハンは手切れ性が良好である反面、二次加工工程においてフィルム切断などのトラブルが多いため、手切れ性と力学的強度のバランスに優れるフィルムが望まれていた。
【0004】
二軸延伸ポリエステルフィルムに手切れ性を付与する方法として、フィルム端部にノッチを付与する方法が挙げられる。しかしながらこのような方法ではノッチ以外の場所から引裂くことはできないため、開封方法の自由度が低く、またノッチからの引裂きに失敗した場合には手切れ性が失われるという問題点があった。
【0005】
二軸延伸ポリエステルフィルムの手切れ性を改良する方法として、ポリエチレンテレフタレート(以下PETと称す)に所定量のジエチレングリコールを共重合する方法(特開昭50−103574号公報)、比較的高分子量のPETに対し低分子量のPETを混合する方法(特開昭51−104618号公報)、極限粘度が0.35〜0.58の範囲にあり特定の屈折率分布を付与する方法(特公昭62−20016号公報)、多官能モノマーを共重合した架橋ポリエステルを用いる方法(特開平2−47038号公報)、高融点ポリエステルと低融点ポリエステルからなる多層フィルムを2軸延伸後、低融点層の融点より10℃低い温度以上、高融点層の融点未満で熱処理する方法(特開平5−104618号公報)などが開示されている。
【0006】
しかしながら、特開昭50−103574号公報に記載された方法ではジエチレングリコールの共重合量が比較的多いため、融点降下によりPETの耐熱性が損なわれるといった問題や、得られたフィルムの引張強度(約170MPa)がセロハンの一般的な引張強度約50〜70MPaに比して非常に大きく、このフィルムの手切れ性はセロハンには全くおよばないという問題があった。
特開昭51−104618号公報に記載された方法では、十分な手切れ性を付与するためには低分子量のPET樹脂を比較的多量に高分子量PETに混合する必要があるために、樹脂の溶融張力低下が著しく安定な未延伸フィルム製膜が困難となることや、低分子量体のブリードアウトが起こりやすいという問題点があった。
特公昭62−20016号公報に記載された方法により得られたフィルムは、極限粘度が非常に小さい場合には、セロハンに近い手切れ性を示すものの、極限粘度の小さい、すなわち溶融張力の小さい樹脂を用いた場合には、未延伸フィルムの製膜が困難になることや、強度が低いため延伸時にフィルムの破断が起こりやすいという問題があった。
特開平2−47038号公報に記載された方法では、架橋性コモノマーと他のコモノマー成分を併用した場合に良好な手切れ性を示すフィルムが得られるものの、重合時に生成するゲルにより、フィルムにフィッシュアイが発生しやすいといった問題や、フィルムが脆いために延伸時にフィルム破断やトリミング不良などのトラブルが発生しやすいという問題点があった。
特開平5−104618号公報に記載された方法によると手切れ性の非常に良好なフィルムが得られるが、低融点層の配向緩和とともに比較的サイズの大きい結晶が生成するためフィルムの透明性が悪化したり、また結晶化に伴う寸法変化により寸法安定性が損なわれる問題があった。さらに低融点層の配向緩和を均一に起こさせることが困難であるために、フィルムの平坦性が損なわれやすいといった問題点があった。またこのような問題は製袋加工においてヒートシールされる場合に起こりやすく、製品化の点で問題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題を解決し、セロハンの有する良好な手切れ性を実現しつつ、ポリエステルフィルムの優れた力学特性、耐熱性、防湿性、透明性および二次加工性を具備するフィルムを工業的に安定に供給することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記問題点を解決するために検討を行った結果、結晶性ポリエステル樹脂層に、非晶性ポリエステル樹脂層を特定の割合で積層することにより上記課題が解決できることを見いだし、本発明に至った。
すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)テレフタル酸を主とする二塩基酸成分と、1,4−シクロヘキサンジメタノールを10〜70モル%含むジオール成分とからなる非晶性ポリエステル樹脂層と融点が220℃以上の結晶性ポリエステル樹脂層とを少なくとも一層ずつ有する積層ポリエステルフィルムであって、非晶性ポリエステル樹脂層の厚みが、積層ポリエステルフィルム全厚みに対し20〜67%であり、フィルムの端裂抵抗が40〜70Nであり、引張強度が83〜170MPaであることを特徴とする手切れ性に優れた積層二軸延伸ポリエステルフィルム。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明において用いられる非晶性ポリエステル樹脂とは、実質的に結晶性を示さないポリエステル樹脂のことを指す。すなわちガラス転移温度から融点までの温度領域においてその樹脂を放置した際に、結晶化度が5%以下の樹脂のことをいう。このような非晶性ポリエステル樹脂として例えばポリエチレンテレフタレートを酸変性、および/またはジオール変性した非晶性共重合ポリエステルが好ましい。
【0010】
共重合に用いられる酸変性成分としては、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸、無水マレイン酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などのジカルボン酸や、4−ヒドロキシ安息香酸、ε−カプロラクトン、乳酸などのオキシカルボン酸や、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸などの多官能化合物などが挙げられる。これらの酸変性成分は単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0011】
また、共重合に用いられるジオール変性成分として、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,6−へキサンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールAやビスフェノールSのエチレンオキシド付加体などのグリコールや、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトールなどの多官能化合物などが挙げられる。これらのジオール変性成分は単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0012】
このような非晶性ポリエステル樹脂の中でも、耐熱性、力学的特性、透明性などの観点から、テレフタル酸を主とする二塩基酸成分と、1,4−シクロヘキサンジメタノールを10〜70モル%含むジオール成分とからなるポリエステル樹脂が好ましい。
【0013】
本発明において用いられる非晶性ポリエステル樹脂には、必要とされる特性が損なわれない範囲において、他の高分子成分が含まれてもよい。これらの高分子成分は分子論的に相溶であっても、非相溶であっても構わない。
【0014】
本発明において用いられる非晶性ポリエステル樹脂の固有粘度は特に限定されるものではないが、温度20℃における固有粘度が0.5〜0.8程度のものを用いるのが好ましい。これより固有粘度が小さいと、フィルムの力学的特性が低下したり、押出成型時にドローダウンが発生するため好ましくない。またこれより固有粘度が大きいと押出成型時に負荷が大きくなるため好ましくない。
【0015】
本発明の積層ポリエステルフィルムは、非晶性ポリエステル樹脂層と結晶性ポリエステル樹脂層によって構成される。結晶性ポリエステル樹脂を用いることにより、非晶性ポリエステル樹脂のみによっては得られない耐熱性、力学的特性および良好な延伸性、厚み精度が付与される。
このような結晶性ポリエステル樹脂としては通常融点が220℃以上のものが用いられ、中でもPETを主骨格とするポリエステル樹脂が好適に用いられる。このような結晶性ポリエステル樹脂には、必要とされる特性が損なわれない限り他の共重合成分が共重合されていてもよい。
【0016】
共重合成分としては、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸、無水マレイン酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などのジカルボン酸が挙げられる。また、4−ヒドロキシ安息香酸、ε−カプロラクトン、乳酸などのオキシカルボン酸、ならびに1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,6−へキサンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールAやビスフェノールSのエチレンオキシド付加体などのグリコールや、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトールなどの多官能化合物などが挙げられる。これらの共重合成分は単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。
【0017】
本発明において用いられる結晶性ポリエステル樹脂には、必要とされる特性が損なわれない範囲において他の高分子成分が含まれていてもよい。これらの高分子成分は分子論的に相溶であっても、非相溶であっても構わない。
【0018】
本発明において用いられる結晶性ポリエステル樹脂の温度20℃における固有粘度は特に限定されるものではないが、通常0.5〜0.9程度のものを用いるのが好ましい。これより固有粘度が小さいと、フィルムの力学的特性が低下したり、押出成型時に溶融粘度が低くなりすぎるため好ましくない。またこれより固有粘度が大きいと溶融粘度が高くなりすぎ押出が困難となるため好ましくない。
【0019】
本発明の積層ポリエステルフィルムは、非晶性ポリエステル樹脂層(A)と結晶性ポリエステル樹脂層(B)とを少なくとも一層ずつ有することが必要である。積層ポリエステルフィルムの具体的な層構成としては、A/B、B/A/B、をはじめ、A/B/A、B/A/B/A/B等が挙げられる。好ましい構成としては、B/A/Bが挙げられる。また、本発明の積層ポリエステルフィルムには、上記非晶性ポリエステル樹脂層と結晶性ポリエステル樹脂層以外に、層間接着性を付与するために、接着剤層等を積層してもよい。
【0020】
本発明の積層ポリエステルフィルムにおいて、非晶性ポリエステル樹脂層の厚み構成比は、全厚みの20〜95%であることが必要であり、30〜90%であることが好ましい。ここでいう厚み構成比とは、フィルムの全厚みに対する非晶性ポリエステル樹脂層厚みのパーセンテージのことである。非晶性ポリエステル樹脂層の厚みが全厚みの95%を超えると、結晶性ポリエステル層の寄与により得られる耐熱性、力学的特性および良好な延伸性、厚み精度が損なわれるため好ましくない。また非晶性ポリエステル樹脂層の厚みが全厚みの20%未満の場合、目的とする手切れ性が得られにくくなるため好ましくない。
【0021】
本発明の積層ポリエステルフィルムは、JIS C 2318 6.3.4項に準じて測定されたフィルムの端裂抵抗(平均値)が5〜70N、好ましくは10〜60N、さらに好ましくは15〜50Nであることが好ましい。端裂抵抗がこれより大きい場合、目的とするフィルムの手切れ性が得られにくくなり、これより小さい場合はフィルムの強度が低すぎ、延伸工程や、スリット、印刷、製袋などの2次加工工程において切断トラブルが発生しやすくなるため好ましくない。
【0022】
また本発明の積層ポリエステルフィルムはJIS K 6732に準じて測定されたフィルムの引張強度が40〜170MPa、好ましくは40〜160MPa、さらに好ましくは40〜150MPaであることが好ましい。引張強度が170Mpaより大きい場合は目的とする手切れ性が得られにくくなるか、または手切れ性を改良するためにフィルムを薄くしなければならず、二次加工などにおいてハンドリングが困難となるため好ましくない。また引張強度が40MPaより小さいと延伸工程や、スリット、印刷、製袋などの2次加工工程において切断トラブルが発生しやすくなるため好ましくない。本発明においては、非晶性ポリエステル樹脂層と結晶性ポリエステル樹脂層の厚み構成比により引張強度をコントロールすることによって、強度と厚みのバランスのよいフィルムを得ることができる。その結果、手切れ性と加工性のバランスに優れたポリエステルフィルムを得ることができる点が本発明の特徴である。
【0023】
本発明の積層ポリエステルフィルムの厚みは特に限定されるものではなく、結果的にフィルムの端裂抵抗が本発明に規定された範囲内にあればよい。通常、5〜50μmの範囲であり、好ましくは7〜40μm、さらに好ましくは9〜30μmの範囲内が好ましい。フィルムが厚すぎると目的とする手切れ性が得られにくく、薄すぎるとハンドリングが困難となるため好ましくない。
【0024】
本発明の積層ポリエステルフィルムは、本発明の効果を阻害しない範囲で、公知の各種添加剤、例えば他の高分子、スリップ剤、無機フィラー、酸化防止剤、帯電防止剤などを含んでいてもよい。スリップ剤はフィルムのアンチブロッキング性、透明性の観点から平均粒子径0.1〜4μmの不活性粒子、例えばシリカなどを0.005〜1.0質量%、好ましくは0.01〜0.5質量%添加することが好ましい。
【0025】
本発明の積層ポリエステルフィルムには必要に応じて、他の高分子素材、例えば高密度ポリエチレン樹脂、低密度ポリエチレン樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂、変性ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、変性ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、および/またはそれらからなるフィルムを、接着剤層の存在下または非存在下に少なくとも一層以上積層してもよい。積層する方法としてはドライラミネート法、押出ラミネート法、熱ラミネート法など任意の公知の方法が挙げられる。
【0026】
また、本発明の積層ポリエステルフィルムには必要に応じて、無機膜、例えば二酸化珪素、アルミナ、二酸化亜鉛、またはこれらの混合物などからなる層を積層してもよい。積層する方法としては物理蒸着法、化学蒸着法など任意の公知の方法が挙げられる。
【0027】
さらに、本発明の積層ポリエステルフィルムには必要に応じて、金属膜、例えばアルミニウムからなる層を積層してもよい。積層する方法として例えば蒸着法、ドライラミネート法など任意の公知の方法が挙げられる。
【0028】
非晶性ポリエステル樹脂層と結晶性ポリエステル樹脂層とを積層する方法として、複数の押出機等の中で、別々に樹脂を溶融し、ダイス出口から押出して未延伸フィルムに成形し、次いで未延伸フィルム同士を加温状態でラミネートする方法が挙げられる。別の方法としては一方の未延伸フィルムの表面に、他方の溶融フィルムを溶融ラミネートする方法が挙げられる。さらに別の方法としては共押出し法により積層した状態でダイス出口より押出してフィルムを成形する方法が挙げられる。
【0029】
次に本発明の積層ポリエステルフィルムの製造法の一例を説明する。十分に乾燥した非晶性ポリエステル樹脂(A)及び結晶性ポリエステル樹脂(B)をそれぞれ別の2台の押出機に供給し、溶融押出しし、複合アダプターを通過させ、2種2層(A/B)または2種3層(B/A/B)としてTダイのダイオリフィスからシート状に押出し吐出する。ダイオリフィスから吐出された軟化状態にあるシートは、冷却ドラムに密着して巻きつけられて冷却される。続いて、得られた未延伸シートを90〜140℃の温度で、通常、縦横それぞれ3.0〜5.0倍の延伸倍率で二軸延伸する。延伸温度が90℃未満であると均質な延伸フィルムを得ることができない場合があり、140℃を超えると、結晶性ポリエステル樹脂(B)の結晶化が促進されて透明性が悪くなる場合がある。また、延伸倍率が3.0倍未満であると強度が小さく、袋にしたときにピンホールが発生しやすく、5.0倍を超えると延伸が困難になる。
二軸延伸されたフィルムは、続いて、結晶性ポリエステル層の融点以下の温度で熱処理される。熱処理温度が高すぎるとフィルムが溶断するため好ましくない。
なお、二軸延伸方法としては、テンター同時二軸延伸法、ロールとテンターによる逐次二軸延伸方法、あるいはチューブラー法のいずれでもよい。
【0030】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明する。
なお、実施例及び比較例の評価に用いた原料及び測定方法は、次の通りである。
【0031】
〔原料〕
PET:
ユニチカ社製ポリエチレンテレフタレート樹脂、固有粘度0.67、融点256℃。
AP:
グリコール成分としてエチレングリコールと、酸成分としてテレフタル酸、共重合比1mol%のトリメリット酸、および共重合比5mol%のイソフタル酸をエステル化槽に仕込み、240℃で4時間反応させ、エステル化物を得た。次に、三酸化アンチモン触媒下、1.3hPaの減圧下、300℃で溶融重合し、固有粘度0.63、融点232℃のポリエステル樹脂APを得た。
PETG:
イーストマンケミカル社製EASTER 6763(エチレングリコールと1,4−シクロヘキサンジメタノール31.5mol%、およびテレフタル酸を共重合したポリエステル)、固有粘度0.75。
APET:
イーストマンケミカル社製EASTER 9921(エチレングリコールと1,4−シクロヘキサンジメタノール3.4mol%、およびテレフタル酸を共重合したポリエステル)、固有粘度0.80、融点234℃。
IPET:
ユニチカ社製共重合ポリエステル樹脂IP−11(テレフタル酸とイソフタル酸11mol%、およびエチレングリコールを共重合したポリエステル)、固有粘度0.67、融点211℃。
【0032】
〔端裂抵抗の測定〕
端裂抵抗は、JIS C 2318 6.3.4項に準じ、フィルムのMD方向について測定した。
〔引張強度の測定〕
引張強度はJIS K 6732に準じ、フィルムのMD方向について測定した。
【0033】
〔手切れ性の評価〕
100mm角に切り出されたフィルムサンプルの端部を両手で引き裂くことによりフィルムのハンドカット性能を3段階で評価した。容易に手で引き裂けたものを○、やや抵抗が高かったが引き裂きは可能なものを△、手で引き裂くのが非常に困難であったものを×とした。
【0034】
実施例1〜3、参考例1〜3
非晶性ポリエステル樹脂層を構成する樹脂(A)としてPETG、結晶性ポリエステル樹脂層を構成する樹脂(B)としてPETを各々温度270℃で別々の押出機により溶融し、この溶融体を複合アダプターで合流させた後にTダイより押出し、冷却ドラムで急冷してB/A/B構成の3層の未延伸積層フィルムを得た。この時、最終的な積層ポリエステルフィルムにおいてPETおよびPETGの厚み構成が表1の割合になるように各押出機の吐出量を調整した。
未延伸積層フィルムをまずロール延伸法により縦方向に約90℃で3.5倍、次いでテンター延伸法により横方向に約110℃で3.8倍に延伸した後、横方向に3%の弛緩を行いつつ225℃の温度で熱処理を行った。さらにフィルムを冷却した後、巻取機によりロール状に巻き取り、表1に示した厚み構成を有する積層二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。このフィルムの評価結果を表1に示した。
本フィルムは製膜及びスリット時にも破断等のトラブルは無く生産性も良好であった。
【0035】
実施例4
PETをAPに変更した以外は全て実施例1と同じ方法、条件、厚み構成で、厚み12μmの積層二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。このフィルムのB/A/B各層の厚み構成および評価結果を表1に示した。
【0036】
比較例1
実施例1と同じ原料、方法で、B/A/B各層の厚み構成のみ5/2/5に変更して、厚み12μmの積層二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。このフィルムのB/A/B各層の厚み構成および評価結果を表1に示した。
【0037】
比較例2
PETGをAPETに変更した以外は全て実施例2と同じ方法、条件、厚み構成で、厚み12μmの積層二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。このフィルムのB/A/B各層の厚み構成および評価結果を表1に示した。
【0038】
比較例3
PETGをIPETに変更した以外は全て実施例2と同じ方法、条件、厚み構成で、厚み12μmの積層二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。このフィルムのB/A/B各層の厚み構成および評価結果を表1に示した。
【0039】
【表1】
【0040】
【発明の効果】
本発明においては、非晶性ポリエステル樹脂層と結晶性ポリエステル樹脂層の厚み構成比により引張強度をコントロールすることができ、強度と厚みのバランスのよいフィルムを得ることができる。その結果、手切れ性と加工性のバランスに優れたポリエステルフィルムを得ることができる。本発明の方法によれば、食品をはじめとする、医薬品、日用品、コスメティックスなどの包装材料や粘着テープとして有用な手切れ性に優れたフィルムを工業的かつ容易に提供することが可能である。
Claims (1)
- テレフタル酸を主とする二塩基酸成分と、1,4−シクロヘキサンジメタノールを10〜70モル%含むジオール成分とからなる非晶性ポリエステル樹脂層と融点が220℃以上の結晶性ポリエステル樹脂層とを少なくとも一層ずつ有する積層ポリエステルフィルムであって、非晶性ポリエステル樹脂層の厚みが、積層ポリエステルフィルム全厚みに対し20〜67%であり、フィルムの端裂抵抗が40〜70Nであり、引張強度が83〜170MPaであることを特徴とする手切れ性に優れた積層二軸延伸ポリエステルフィルム。
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