JP4114412B2 - 電気光学装置用基板、電気光学装置、電子機器および電気光学装置用基板の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気光学装置用基板に関し、特に、反射型および半透過反射型の電気光学装置に用いるのに好適な反射散乱層を有する基板およびその製造方法に関する。また、本発明は、そのような反射散乱層を有する基板を用いて構成される電気光学装置、及び、上記電気光学装置を用いて構成される電子機器に関する。
【0002】
【背景技術】
近年、携帯電話、携帯型パーソナルコンピュータなどの電子機器に液晶表示装置が搭載されており、特に、低消費電力化、薄型化、軽量化を達成できる反射型液晶表示装置は広く用いられている。この反射型液晶表示装置は、自然光や室内光などの外部光を採光し液晶表示装置に設けられた光反射膜で反射された光量を制御することにより、カラーまたは白黒表示を可能としている。
【0003】
反射型液晶表示装置の基本構造は、TN(ツイストネマテッィク)方式、STN(スーパーツイストネマテッィク)方式、GH(ゲストホスト)方式、PDLC(高分子分散)方式等を用いた液晶と、これをスイッチングするための素子と、液晶内部または外部に設けた反射膜とから構成される構造である。
【0004】
反射型液晶表示装置の表示性能には、液晶透過状態の場合、明るい表示性能を有することが求められる。この表示性能の向上を実現させる場合、外部より入射した光が、反射型液晶表示装置内で反射され、再び、外部に出射される際の光の散乱性能を制御することが重要である。
【0005】
光反射膜が散乱性能を持たず、膜表面が平坦面の場合、入射光に対する反射効率は高くなり、いわゆる鏡面反射になってしまう。従って、観察者が、表示画面を視認しようとすると、周囲の背景や室内照明が、画面上に映ってしまい、画面表示が見難いという問題が生じる。
【0006】
この問題を解決するため、液晶表示装置の観察者側に設けられたフィルムに散乱性を持たせた前方散乱方式、液晶表示装置の内部または外部に設置された反射板に散乱性能を持たせた方式、などが提案されている。
【0007】
これらの提案は、特開平8−338993号公報、特開平8−220532号公報、および特開平7−218906号公報などに記載されている。
【0008】
特開平8−338993号公報では、前方散乱方式の構造を示している。観察者側基板は、散乱シート、ガラス基板、カラーフィルタ、および、透明電極から構成されており、下側基板は、ガラス基板上に形成されたアクティブマトリクス駆動素子と平坦面からなる反射電極とから構成される。この基板の間に液晶層が配置されている。反射型液晶表示装置の光源である外光からの入射光は、散乱シート、ガラス基板、カラーフィルタ、透明電極および液晶層を順次通過し、反射電極板で反射されて観察者に視認される。ただし、反射膜は平坦面であるため、入射光は、反射膜への入射角度に対して、正反射方向に反射されて、反射光となり、この反射光は対向側の基板の散乱層で拡散されて表示装置外部へ出射する。散乱層としては、PETフィルム等の高分子フィルムの表面にエンボス加工等で凹凸を形成した拡散シートが用いられている。
【0009】
特開平8−220532号公報での反射膜は、液晶表示装置の画素電極としての機能も兼ね備えた上に、反射膜表面に、滑らかな凹凸が設けられている。この凹凸面により、散乱光が形成され、液晶表示装置外部にその散乱光が出射される。この凹凸を有する反射膜の製造方法としては、サンドブラスト法によりガラス表面を荒らし、さらにこの表面をフッ化水素酸水溶液でエッチングして、凹凸膜を形成し、その上部に高反射率を有するAl(アルミニウム)或いはAg(銀)等の金属材を形成するものである。
【0010】
また、これ以外の製造方法として、特開平7−218906号公報では、有機膜へのフォトリソグラフィ工程とエッチング工程とにより、凹凸膜を形成する方法が記載されている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記のような散乱層を有する反射型液晶表示装置の反射膜の性能は、その製造方法に大きく左右される。また、この散乱性能は、凹凸のサイズやその密度によって影響される。
【0012】
このうち、フォトリソグラフィ方式を用いた樹脂材料による凹凸膜は、容易に形成でき、制御しやすい方法である。しかし、この方式では、上記フォトリソグラフィ方式による凹凸膜とその下方に配置された膜との密着性、または、その凹凸膜とガラスやプラスチック基板との密着性の問題が懸念される。また、密着性の問題以外にも、凹凸膜形成時のパターン不良などが発生し、安定して作製できる好適な散乱膜の提供には、現在、至っていない。
【0013】
上述した散乱膜のはがれ箇所やパターン不良部分は、反射型表示モードの場合、表示装置から、良好な反射散乱光を出射することができないという問題を生じる。そのため、観測者に好適な反射光が至らず、観測者には、画面表示上にしみがあるように見えてしまう。
【0014】
また、反射または半透過型の液晶表示装置は、等ピッチのドットまたは画素が規則的に配列しているために、同一のドットまたは画素パターンを単位として周期的にマトリクス状に配置すると隣ドットまたは画素パターンからの反射光が、ある波長では必ず干渉し合うため、連続スペクトルを持つような太陽光下では虹干渉縞の発生をもたらす。
【0015】
この理由により、散乱層の凹凸は、立体的にランダム性を有した配置になることが望ましい。上述した干渉縞が発生する現象は、電気光学装置において、虹干渉縞やニュートンリングという言葉で表され、表示画面上には、虹色の縞が見えてしまう。これが発生しない画面表示を有する電気光学装置が求められている。
【0016】
したがって、本発明は、以上の点を鑑みてなされたものであり、反射散乱層を有する電気光学装置において、良好な光散乱性を有する散乱層を安定したプロセスで形成することにより、高画質で明るい表示品位を有する反射型液晶表示装置および半透過反射型液晶表示装置を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の電気光学装置用基板は、基板と、基板上に配置された第1の樹脂層と、第1の樹脂層の上に形成された第2の樹脂層と、第2の樹脂層の上に形成された光反射膜と、を備え、第1の樹脂層の上面には、第1の凹凸形状が形成され、第2の樹脂層の上面には、第2の凹凸形状が形成され、第1の凹凸形状と、前記第2の凹凸形状とは異なる形状であることを特徴とする。
また、第1の樹脂層、および第2の樹脂層は、ともに透明な樹脂から構成され、第1の凹凸形状、および第2の凹凸形状は、ともに平面的に無秩序に配置されていることが好ましい。
【0018】
上記のように構成された電気光学装置用基板によれば、ガラスやプラスチックなどの基板上に透明樹脂が複数の層に渡って形成され、その上に反射膜が形成される。よって、複数の透明樹脂層の形状により凹凸などを形成することができ、基板に所望の反射散乱性を持たせることができる。
【0019】
上記の電気光学装置用基板の一態様では、最上層の透明樹脂層の表面が凹凸形状を有するようにすることができる。これにより、下方の透明樹脂層の形状とは無関係に、最上層の透明樹脂層の凹凸形状により反射散乱性を決定することができる。
【0020】
上記の電気光学装置用基板の他の一態様では、前記凹凸形状を構成する複数の山部および複数の谷部が、互い立体的に無秩序性を有し配置される。これにより、基板に入射する光が散乱反射して得られる反射光の散乱性を高めることができる。
【0021】
上記の電気光学装置用基板のさらに他の一態様では、前記複数の透明樹脂層のうち最下層の透明樹脂層は、平坦性を有した膜で形成される。よって、最下層の透明樹脂層により、樹脂層全体と基板との高い密着性を得ることができる。
【0022】
上記の電気光学装置用基板のさらに他の一態様では、前記複数の透明樹脂層のうち最下層の透明樹脂層は、凹凸膜で形成されている構造を有する。これによれば、複数の透明樹脂層の凹凸形状が重ね合わせることにより、基板全体としての凹凸形状の無秩序性をより高めることができる。
【0023】
上記目的を達成するため、本発明の電気光学装置用基板の製造方法によれば、少なくとも反射表示が可能な電気光学装置に用いられる電気光学装置用基板の製造方法であって、基板上に第1の樹脂層を形成する工程と、第1の樹脂層に第1の凹凸形状を形成する工程と、第1の樹脂層上に第2の樹脂層を形成する工程と、第2の樹脂層に第2の凹凸形状を形成する工程と、第2の樹脂層の上に光反射膜を形成する工程と、を含み、第1の凹凸形状と、第2の凹凸形状とは、ともに同一のフォトマスクを用いたパターニングによって形成され、第1の凹凸形状を形成する工程におけるフォトマスクの平面的位置と、第2の凹凸形状を形成する工程におけるフォトマスクの平面的位置とを異ならせることを特徴とする。
【0024】
上記の電気光学装置用基板の製造方法では、ガラスやプラスチックなどの基板上に複数層に渡って透明樹脂層を形成し、その上に反射膜を形成する。ここで、透明樹脂層はフォトマスクを利用して形成されるので、フォトマスクのパターンを調整することにより、透明樹脂層の形状を決定することができ、所望の反射散乱性を有する基板を製造することができる。
【0025】
ここで、前記フォトマスクのマスクパターンは、平面的な楕円もしくは円の形状とすることができ、前記マスクパターンの穴径は、6μmよりも大きくすることができる。また、前記マスクパターンを、平面内で無秩序に並べることにより、基板の有する反射散乱性をよりランダムにすることができる。
【0026】
また、上記の電気光学装置用基板と、前記電気光学装置用基板と対向配置される他の基板と、前記光学装置用基板と前記他の基板との間にシール材を介して挟持される電気光学物質と、により電気光学装置を構成することができる。また、その電気光学装置を表示部などに利用して電子機器を構成することができる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0028】
〔反射散乱層を有する基板〕
以下、本発明による反射散乱層を有する基板について説明する。本発明の反射散乱層はフォトリソグラフィ工程により形成される。
【0029】
[第1実施形態]
まず、本発明による反射散乱層を有する基板の第1実施形態について説明する。本実施形態では、反射散乱層は2層の透明樹脂により構成され、下方に配置された透明樹脂は平坦性を有し、上方に配置された透明樹脂は、凹凸膜を有することを特徴とする。
【0030】
(マスク設計1)
まず、反射散乱層を形成する際に使用されるフォトマスクについて説明する。図1(a)は、本発明の実施形態による反射散乱層の製造方法で使用されるマスク100の平面図を示す。このマスク100は、光散乱用の凹凸形状を形成するために、楕円もしくは円状のマスクパターン101を平面内に無秩序に配置して構成されている。本実施形態で使用したマスクパターン101の穴径は、9μmΦを用いており、その穴間距離の平均値は約12μmである。なお、好適な凹凸膜を作製するため、このマスクパターン101の穴径は、6μmΦよりも大きい値が好ましい。
【0031】
本実施形態では、アクリル樹脂などと言ったポジ型透明樹脂を使用している。ただし、本発明では、ネガ型の透明樹脂を用いることも可能である。
【0032】
(散乱層の構造1)
上述のマスク100を使用して作製された反射散乱層の断面図を図1(b)に示す。この断面図は、マスク平面図である図1(a)におけるA−A’断面に対応する。
【0033】
図1(b)に示すように、ガラスやプラスチック等の基板1上に、アクリル樹脂などを用いた第1透明樹脂層2が形成されている。この第1透明樹脂層2は、凹凸形状を有さず、平坦な密着層として配置されている。
【0034】
上記第1透明樹脂層2の上に、さらに、アクリル樹脂などの第2透明樹脂層3を形成する。この第2透明樹脂層3の表面は凹凸形状を有し、その上に図示していないAl(アルミニウム)やAg(銀)などの高反射率を有する反射膜が形成される。この第2透明樹脂層3は、マスク100を用いたフォトリソグラフィ工程により作製されている。そのため、第2透明樹脂層3の表面には、無秩序な凹凸が形成されている。
【0035】
したがって、第1実施形態によれば上記平坦性を有する第1透明樹脂層2を設けることにより、基板1と第1透明樹脂層2の密着性が向上する。また、同時に、第2透明樹脂層3により光散乱性を持たせた反射散乱層を有する基板を提供できる。
【0036】
(反射散乱層を有する基板の製造方法)
第1実施形態の反射散乱層を有する基板形成工程例1を図2に示す。
【0037】
まず、図2の工程P1において、基板1上に第1透明樹脂層2を一様な厚さで塗布する。例えば、粘度9cpのアクリル樹脂材料を用いたポジ型の第1透明樹脂層2を、1000rpmの回転速度で10秒間スピンコートによって、1.3μm程度の膜厚で塗布する。
【0038】
次に、工程P2において、プリベークを行って、第1透明樹脂層2を固定する。例えば、100℃のホットプレート上で、120秒間のプリベークを行う。
【0039】
工程P3は一括露光方式の場合を示すものであるが、駆動用IC等を実装するための周辺領域が開口したマスクを通して、第1透明樹脂層2をi線(すなわち、波長365nmの光)で露光する。このとき、マスクと第1透明樹脂層2との距離、すなわちプロキシミテイ・ギャップGpは、例えばGp=60μmとする。また、i線の露光量は、60mJとする。このときの露光により、駆動用IC等を実装するための周辺領域の第1透明樹脂層2を除去することができる。
【0040】
次に工程P4において、現像処理を行って、周辺部に存在する第1透明レジスト層2を除去する。この時、例えば、ポジ型現像溶液である0.2wt%のTMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)水溶液で、90秒現像処理を行う。
【0041】
工程P5において、ポスト露光は、例えばi線を300mJで全面照射し、第1透明樹脂層2の脱色を行う。
【0042】
その後、工程P6において、ポストベーク220℃、50分加熱を行うことにより、第1透明樹脂層2を固定する。
【0043】
次に、工程P7において、基板1上に配置された第1透明樹脂層2の上に第2透明樹脂層3を一様な厚さで塗布する。これは、例えば、粘度9cpのアクリル樹脂材料を用いたポジ型の第2透明樹脂層3を、800rpmの回転速度で10秒間スピンコートすることによって、1.6μm程度の膜厚が塗布される。
【0044】
次に、工程P8において、プリベークを行って、第2透明樹脂層3を固定する。これは、例えば、100℃のホットプレート上で、120秒間のプリベークを行う。
【0045】
工程P9は一括露光方式の場合を示すものであるが、図1(a)に示したマスク100を通して、第2透明樹脂層3をi線(すなわち、波長365nmの光)で露光する。このとき、マスク100と第2透明樹脂層3との距離、すなわちプロキシミテイ・ギャップGpは、Gp=230μmとする。また、i線の露光量は、70mJとする。
【0046】
次に工程P10において、現像処理を行うことにより、図1(b)に示すように、第2透明樹脂層3をパターニングする。このパターニングによって、第2透明樹脂層3が一部除去され、除去された部分が、光反射膜の谷部となる。この時、例えば、ポジ型現像溶液である0.2wt%のTMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)水溶液で、90秒現像処理を行う。
【0047】
工程P11において、ポスト露光、例えばi線を300mJで全面照射し、第2透明樹脂層3の脱色を行う。
【0048】
その後、工程P12において、ポストベーク220℃、50分加熱を行うことにより、第2透明樹脂層3を固定する。
【0049】
プロキシミテイ・ギャップGpは、小さくすればする程、マスクパターン101を精密に形成することができる。しかし、本発明の散乱層の凹凸形成の製造方法は、なだらかな傾斜を有する凹凸形状を必要としているため、できる限り大きなプロキシミテイ・ギャップGpで実施しており、本実施形態の第2透明樹脂層3では、230μmに設定している。
【0050】
その後、工程P13において、反射膜材料、例えばAl(アルミニウム)膜をスパッタ法によって、0.2μm程度の一様な厚さで成膜する。
【0051】
さらに、工程P14において、フォトエッチング処理を行って、所定の反射膜5を作製する。このときのパターニングは、半透過反射型液晶表示装置の透過表示モード用の開口部の形成を行ったり、液晶パネルの周辺部に電子部品等を実装するための領域を確保したりする等のために行われるものである。
【0052】
以上により、第1透明樹脂層2および第2樹脂層3を有する散乱板4は、無秩序に配置された凹凸膜を有し、その上に成膜されたAl(アルミニウム)により、所望の反射膜5が形成される。
【0053】
なお、本実施形態では、第1透明樹脂層2が設けられていなくても、反射散乱板を作製することができる。しかし、散乱層4を第1透明樹脂層2及び第2透明樹脂層3からなる積層構造とすれば、基板と透明樹脂層3の間の密着性が良く、良好な凹凸膜を形成することができるので、この積層構造が好ましい。これにより、反射膜5において、鏡面反射が発生することを防止して、希望する光散乱を確実に得ることができる。
【0054】
[第2実施形態]
次に本発明による反射散乱層を有する基板の第2実施形態について説明する。本実施形態では、同一マスクにて凹凸膜を作製した2層の透明樹脂構造を特徴とする。なお、本実施形態の方法により2層構造だけでなく、2層以上の透明樹脂の積層構造も可能である。
【0055】
(マスク設計2)
まず、反射散乱層を形成する際に使用されるフォトマスクについて説明する。
【0056】
図3(a)は、本発明の実施形態による反射散乱層製造方法で第1露光時に使用されるマスク200を示す。このマスク200は、光散乱用の凹凸膜を形成するために、楕円形もしくは円形のマスクパターン201を平面内に無秩序に配置して構成されている。
【0057】
次に、図3(b)は、第2露光時に使用されるマスク200’を示す。このマスク200’は、マスク200と同一マスクであるが、マスク200を図示した矢印のように平行移動させて露光する。
【0058】
本実施形態でも、第1実施形態と同様、アクリル樹脂などと言ったポジ型透明樹脂を使用している。ただし、本実施形態でも、ネガ型の透明樹脂を用いることは可能である。
【0059】
(散乱層の構造2)
上述のマスク200とマスク200’を使用して作製された反射散乱層の断面図を図3(c)に示す。この断面図は、マスク平面図である図3(a)または(b)におけるB−B’断面に対応する。
【0060】
図3(c)に示すように、ガラスやプラスチック等の基板1上に、アクリル樹脂などを用いた第1透明樹脂層2が形成されている。この第1透明樹脂層2は、マスク200を用いたフォトリソグラフィ工程により作製されているため、無秩序な凹凸が形成されている。
【0061】
上記第1透明樹脂層2の上に、さらに、アクリル樹脂などの第2透明樹脂層3を形成する。この第2透明樹脂層3は、マスク200’を用いたフォトリソグラフィ工程により作製されている。そのため、第2透明樹脂層3の表面にも、更に複雑で無秩序な凹凸が形成されている。この第2透明樹脂層3の上に図示していないAl(アルミニウム)やAg(銀)などの高反射率を有する反射膜が形成される。
【0062】
このように、本実施形態では第1透明樹脂層2に凹凸性を持たせ、さらに、第2透明樹脂層3にも凹凸性を持たせているため、凹凸層の深さ方向の無秩序性および平面方向の無秩序性が高まる。そのため、基板1との密着性およびパターン不良が改善されるだけでなく、虹干渉縞の発生が低減される。よって、本実施例では、良好な反射散乱層を有した基板を提供できる。
【0063】
(反射散乱層を有する基板の製造方法2)
本発明の反射散乱層を有する基板形成工程例2を図4に示す。
【0064】
まず、図4の工程P’1において、基板1上に第1透明樹脂層2を一様な厚さで塗布する。例えば、粘度9cpのアクリル樹脂材料を用いたポジ型の第1透明樹脂層2を、800rpmの回転速度で10秒間スピンコートによって、1.6μm程度の膜厚で塗布する。
【0065】
次に、工程P’2において、プリベークを行って、第1透明樹脂層2を固定する。これは、例えば、100℃のホットプレート上で、120秒間のプリベークを行う。
【0066】
工程P’3において、図3(a)に示したマスク200を通して、第1透明樹脂層2をi線(すなわち、波長365nmの光)で露光する。このとき、マスク200と第1透明樹脂層2との距離、すなわちプロキシミテイ・ギャップGpは、例えばGp=200μmとする。また、i線の露光量は一括露光で、70mJとする。
【0067】
次に工程P’4において、現像処理を行うことにより、図3(c)に示すように、第1透明樹脂層2をパターニングする。このパターニングによって、第1透明樹脂層2が一部除去され、除去された部分が、光反射膜の谷部となる。この時、例えば、ポジ型現像溶液である0.2wt%のTMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)水溶液で、90秒現像処理を行う。
【0068】
工程P’5において、ポスト露光、例えばi線を300mJで全面照射し、第1透明樹脂層2の脱色を行う。
【0069】
その後、工程P’6において、ポストベーク220℃、50分加熱を行うことにより、第1透明樹脂層2を固定する。
【0070】
次に、工程P’7において、基板1上に配置された第1透明樹脂層2の上に第2透明樹脂層3を一様な厚さで塗布する。例えば、粘度9cpのアクリル樹脂材料を用いたポジ型の第2透明樹脂層3を、800rpmの回転速度で10秒間スピンコートすることによって、1.6μm程度の膜厚が塗布される。
【0071】
次に、工程P’8において、プリベークを行って、第2透明樹脂層3を固定する。例えば、100℃ホットプレート上で、120秒間のプリベークを行う。
【0072】
工程P’9において、図3(b)に示したマスク200’を通して、第2透明樹脂層3をi線(すなわち、波長365nmの光)で露光する。このとき、マスク200’と第2透明樹脂層3との距離、すなわちプロキシミテイ・ギャップGpは、Gp=200μmとする。また、i線の露光量は一括露光で、70mJとする。
【0073】
次に工程P’10において、現像処理を行うことにより、図3(c)に示すように、第2透明樹脂層3をパターニングする。このパターニングによって、第2透明樹脂層3が一部除去され、除去された部分が、光反射膜の谷部となる。この時、例えば、ポジ型現像溶液である0.2wt%のTMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)水溶液で、90秒現像処理を行う。
【0074】
工程P’11において、ポスト露光、例えばi線を300mJで全面照射し、第2透明樹脂層3の脱色を行う。
【0075】
その後、工程P’12において、ポストベーク220℃、50分加熱を行うことにより、第2透明樹脂層3を固定する。
【0076】
上述したようにプロキシミテイ・ギャップGpは、小さくすればする程、マスクパターン201並びにマスクパターン201’を精密に形成することができる。しかし、本発明の散乱層の凹凸形成の製造方法は、なだらかな傾斜を有する凹凸形状を必要としているため、できる限り大きなプロキシミテイ・ギャップGpで実施しており、本実施形態の第1透明樹脂層2および第2透明樹脂層3では、200μmに設定している。
【0077】
その後、工程P’13において、反射膜材料、例えばAl(アルミニウム)膜をスパッタ法によって、0.2μm程度の一様な厚さで成膜する。
【0078】
さらに、工程P’14において、フォトエッチング処理を行って、所定の反射膜5を作製する。
【0079】
以上により、第1透明樹脂層2および第2樹脂層3を有する散乱板4は、無秩序に配置された凹凸膜を有するようになり、その上に成膜されたAl(アルミニウム)により、所望の反射膜5が形成された。
【0080】
本実施形態では、第1透明樹脂層2に凹凸性を設け、さらに、第2透明樹脂層3にも凹凸性を持たせることにより、その散乱層4の凹凸は、立体的により高い無秩序性を有した配置を持つことが可能になる。そのため、基板と透明樹脂の間の密着性が良く、良好な凹凸膜を形成することができるので、この積層構造は、好適である。これにより、本実施形態は、反射膜5において、鏡面反射が発生することを防止して、虹干渉縞の発生が少ない、所望の光散乱を確実に得ることができる。
【0081】
[第3実施形態]
次に本発明による反射散乱層を有する基板の第3実施形態について説明する。本実施例では、2種類の異なるマスクにて凹凸膜を作製した2層の透明樹脂構造を特徴とするが、本発明は、2層構造だけでなく、2層以上の積層構造でも可能である。
【0082】
(マスク設計3)
まず、反射散乱層を形成する際に使用されるフォトマスクについて説明する。
【0083】
図5(a)は、本発明の実施形態による散乱反射膜製造方法で第1露光時に使用されるマスク300を示す。このマスク300は、光散乱用の凹凸膜を形成するために、楕円もしくは円状のマスクパターン301を平面内に無秩序に配置して構成されている。
【0084】
図5(b)は、第2露光時に使用されるマスク400を示す。このマスク400は、マスクパターン401を有しており、このマスクパターン401は、第1露光時に使用するマスクパターン301とは、穴径および穴の配置が異なっている。
【0085】
本実施形態でも、第1実施形態および第2実施形態と同様、アクリル樹脂などと言ったポジ型透明樹脂を使用している。ただし、本発明も、ネガ型の透明樹脂材料を用いることは可能である。
【0086】
(散乱層の構造3)
上述のマスク300とマスク400を使用して作製された反射散乱層の断面図を図5(c)に示す。この断面図は、マスク平面図である図5(a)または(b)におけるC−C’断面に対応する。
【0087】
図5(c)に示すように、ガラスやプラスチック等の基板1上に、アクリル樹脂などを用いた第1透明樹脂層2が形成されている。この第1透明樹脂層2は、マスク300を用いたフォトリソグラフィ工程により作製されているため、無秩序な凹凸が形成されている。
【0088】
上記第1透明樹脂層2の上に、さらに、アクリル樹脂などの第2透明樹脂層3を形成する。この第2透明樹脂層3は、マスク400を用いたフォトリソグラフィ工程により作製されている。そのため、第2透明樹脂層3の表面にも、更に複雑で無秩序な凹凸が形成されている。この第2透明樹脂層3の上に図示していないAl(アルミニウム)やAg(銀)などの高反射率を有する反射膜が形成される。
【0089】
上述より、第1透明樹脂層2には、マスクパターン301による凹凸が形成される。さらに、第2透明樹脂層3には、マスクパターン301とは穴径および配置の異なるマスクパターン401による凹凸が形成される。したがって、本実施形態は、深さ方向の無秩序性および平面方向の無秩序性が高い凹凸を有した散乱層4が形成される。そのため、基板1との密着性およびパターン不良が改善されるだけでなく、虹干渉縞の発生が実施形態2より、さらに低減される。よって、本実施例では、好適な反射散乱層を有した基板を提供できる。
【0090】
(反射散乱層を有する基板の製造方法3)
本発明の反射散乱層を有する基板の製造方法は、第1露光時にマスク300、第2露光の時にマスク400を使用する以外は第2実施形態2の製造方法と同様とすることができる。
【0091】
[液晶表示パネル]
次に、上述の反射散乱層を有する基板を利用した液晶表示パネルの構成について説明する。
【0092】
ただし、図6に示した液晶表示パネル500は、半透過反射型であり、スイッチング素子が形成された基板32と反対側の基板31に反射散乱層を有する場合を示している。要するに、反射散乱層の上方に、赤色カラーフィルタ6、緑色カラーフィルタ7、青色カラーフィルタ8が設置されている基板31を備えている。
【0093】
液晶表示パネル500では、ガラスやプラスチック基板などからなる基板31と基板32とが、シール材33を介して貼り合わせられ、このパネル内部に液晶34が封入されている。また、基板32の外面上には、位相差板35および偏光板36が順に配置され、基板31の外面上には、位相差板37および偏光板38が配置される。なお、偏光板の下方には、透過型表示を行う際に照明光を発するバックライト39が配置される。
【0094】
ただし、本発明は、スイッチング素子が形成された基板側に反射散乱層を設けた構成の液晶表示装置の作製も可能である
[液晶表示パネルの製造方法]
次に、図6に示す液晶表示パネル500を製造する方法について、図7を参照して説明する。図7は、表示パネル500の製造工程を示すフローチャートである。
【0095】
まず、上述した方法により、上記の実施形態による反射散乱層を有した基板31が製造される(工程S1)。さらに、赤色カラーフィルタ6、緑色カラーフィルタ7、青色カラーフィルタ8の上に設けられたオーバーコート層9の上に透明導電膜10をスパッタリング法により成膜し、フォトリソグラフィ方式によってパターニングを実施し、透明電極膜10を形成する(工程S2)。
【0096】
その後、透明電極膜10上に図示しないポリイミド樹脂などからなる配向膜を形成し、ラビング処理などを施す(工程S3)。
【0097】
一方、対向基板32を製作し(工程S4)、同様の方法で透明電極膜を形成し(工程S5)、さらに透明電極上に図示しない配向膜を形成し、ラビング処理などを施す(工程S6)。
【0098】
そして、シール材33を介して、上記の基板31と基板32を貼り合わせて、パネル構造を構成する(工程S7)。基板31と基板32とは、基板間に分散配置された図示しないスペーサーなどによって、ほぼ規定の基板間隔となるように貼り合わせられる。
【0099】
その後、シール材33の図示しない開口部から液晶34を注入し、シール材の開口部を紫外線硬化性樹脂などの封止材によって封止する(工程S8)。こうして主要なパネル構造が完成した後に、位相差板や偏向板などを必要に応じてパネル構造の外面上に貼着などの方法によって取り付け(工程S9)、図6に示す液晶表示パネル500が完成する。
【0100】
[電子機器]
次に、本発明による反射散乱層を備えた液晶表示パネルを電子機器の表示装置として用いる場合の実施形態について説明する。図8は、本実施形態の全体構成を示す概略構成図である。ここに示す電子機器は、上記の液晶表示パネル500と同様の液晶表示パネル500と、これを制御する制御手段510を有する。ここでは、液晶表示パネル500を、パネル構造体500Aと、半導体ICなどで構成される駆動回路500Bとに概念的に分けて描いてある。また、制御手段510は、表示情報出力源511と、表示情報処理回路512と、電源回路513と、タイミングジェネレータ514と、を有する。
【0101】
表示情報出力源511は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などからなるメモリと、磁気記録ディスクや光記録ディスクなどからなるストレージユニットと、デジタル画像信号を同調出力する同調回路とを備え、タイミングジェネレータ514によって生成された各種のクロック信号に基づいて、所定フォーマットの画像信号などの形で表示情報を表示情報処理回路512に供給するように構成されている。
【0102】
表示情報処理回路512は、シリアル−パラレル変換回路、増幅・反転回路、ローテーション回路、ガンマ補正回路、クランプ回路などの周知の各種回路を備え、入力した表示情報の処理を実行して、その画像情報をクロック信号CLKとともに駆動回路500Bへ供給する。駆動回路500Bは、走査線駆動回路、データ線駆動回路及び検査回路を含む。また、電源回路513は、上述の各構成要素にそれぞれ所定の電圧を供給する。
【0103】
次に、本発明に係る液晶表示パネルを適用可能な電子機器の具体例について図9を参照して説明する。
【0104】
まず、本発明に係る液晶表示パネルを、可搬型のパーソナルコンピュータ(いわゆるノート型パソコン)の表示部に適用した例について説明する。図9(a)は、このパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。同図に示すように、パーソナルコンピュータ610は、キーボード611を備えた本体部612と、本発明に係る液晶表示パネルを適用した表示部613とを備えている。
【0105】
続いて、本発明に係る液晶表示パネルを、携帯電話機の表示部に適用した例について説明する。図9(b)は、この携帯電話機の構成を示す斜視図である。同図に示すように、携帯電話機620は、複数の操作ボタン621のほか、受話口622、送話口623とともに、本発明に係る液晶表示パネルを適用した表示部624を備える。
【0106】
なお、本発明に係る液晶表示パネルを適用可能な電子機器としては、図9(a)に示したパーソナルコンピュータや図9(b)に示した携帯電話機の他にも、液晶テレビ、ビューファインダ型・モニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、ディジタルスチルカメラなどが挙げられる。
【0107】
[変形例]
本発明の電気光学装置は、パッシブマトリクス型の液晶表示パネルだけではなく、アクティブマトリクス型の液晶表示パネル(例えば、TFT(薄膜トランジスタ)やTFD(薄膜ダイオード)をスイッチング素子として備えた液晶表示パネル)にも同様に適用することが可能である。また、液晶表示パネルだけでなく、エレクトロルミネッセンス装置、有機エレクトロルミネッセンス装置、プラズマディスプレイ装置、電気泳動ディスプレイ装置、フィールド・エミッション・ディスプレイ(電界放出表示装置)などの各種の電気光学装置においても本発明を同様に適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)本発明の反射散乱層の製造に使用されるマスクの例を示す。
(b)本発明の実施形態による反射散乱層の断面図を示す。
【図2】本発明の反射散乱層を有する基板の形成工程を示す図である。
【図3】(a)本発明の反射散乱層の製造に使用されるマスクの例を示す。
(b)本発明の反射散乱層の製造に使用されるマスクの例を示す。
(c)本発明の実施形態による反射散乱層の断面図を示す。
【図4】本発明の反射散乱層を有する基板の形成工程を示す図である。
【図5】(a)本発明の反射散乱層の製造に使用されるマスクの例を示す。
(b)本発明の反射散乱層の製造に使用されるマスクの例を示す。
(c)本発明の実施形態による反射散乱層の断面図を示す。
【図6】本発明を適用した液晶表示パネルの構造を示す断面図である。
【図7】本発明を適用した液晶表示パネルの製造工程を示す図である。
【図8】本発明を適用した液晶表示パネルを利用する電子機器の構成を示す。
【図9】本発明を適用した液晶表示パネルを備えた電子機器の例を示す。
【符号の説明】
1 基板
2 第1透明樹脂層
3 第2透明樹脂層
4 散乱層
5 反射膜
6 赤色カラーフィルタ
7 緑色カラーフィルタ
8 青色カラーフィルタ
9 オーバーコート層
10 透明電極膜
100、200、300、400 マスク
101、201、301、401 マスクパターン
Claims (1)
- 少なくとも反射表示が可能な電気光学装置に用いられる電気光学装置用基板の製造方法であって、
基板上に第1の樹脂層を形成する工程と、
前記第1の樹脂層に第1の凹凸形状を形成する工程と、
前記第1の樹脂層上に第2の樹脂層を形成する工程と、
前記第2の樹脂層に第2の凹凸形状を形成する工程と、
前記第2の樹脂層の上に光反射膜を形成する工程と、を含み、
前記第1の凹凸形状と、前記第2の凹凸形状とは、ともに同一のフォトマスクを用いたパターニングによって形成され、
前記第1の凹凸形状を形成する工程における前記フォトマスクの平面的位置と、前記第2の凹凸形状を形成する工程における前記フォトマスクの平面的位置とを異ならせることを特徴とする電気光学装置用基板の製造方法。
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